(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134580
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】位置推定装置、自動運転システム、位置推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044844
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹原 成晃
(72)【発明者】
【氏名】森 考平
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB15
2F129BB20
2F129BB23
2F129BB33
2F129BB41
2F129BB42
2F129BB66
2F129EE02
2F129EE78
2F129GG17
2F129GG18
(57)【要約】
【課題】 車両の挙動を検出するセンサの特性に応じた誤差が抑制された車両の位置推定を行うことができる位置推定装置、自動運転システム、位置推定方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 位置推定装置(2)は、車両Aの角速度に基づく車両Aの第1のヨー角情報と、車両Aの左右車輪の移動距離に基づく車両Aの第2のヨー角情報と、車両Aの操舵角および車速に基づく車両Aの第3のヨー角情報に設定する重みを判定する重み判定部(21)と、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を取得するヨー情報取得部(22)と、判定された重みを設定した第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を合成した合成ヨー角情報を生成する合成部(23)と、車両Aの測位情報、車両Aの車速および合成ヨー角情報を用いて、車両Aの位置を推定する位置推定部(24)とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行状態または前記車両の周辺状態に基づいて、前記車両の角速度に基づく前記車両の第1のヨー情報と、前記車両の左右車輪の移動距離差に基づく前記車両の第2のヨー情報と、前記車両の操舵角および車速に基づく前記車両の第3のヨー情報とに設定する重みを判定する重み判定部と、
前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を取得するヨー情報取得部と、
判定された前記重みを設定した前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報を生成する合成部と、
前記車両の測位情報、前記車両の車速および前記合成ヨー情報を用いて前記車両の位置を推定する位置推定部と、を備えた
ことを特徴とする位置推定装置。
【請求項2】
前記ヨー情報取得部は、
前記車両の角速度に基づいて、前記車両の第1のヨー角情報を算出する第1のヨー角算出部と、
前記車両の左右車輪の移動距離差に基づいて、前記車両の第2のヨー角情報を算出する第2のヨー角算出部と、
前記車両の操舵角および車速に基づいて、前記車両の第3のヨー角情報を算出する第3のヨー角算出部と、を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記重み判定部は、
前記車両の車速が第1の閾値以上であり、前記車両の角速度が第2の閾値未満であり、前記車両の角速度の誤差が除去されない時間が一定時間未満である場合、前記第1のヨー角情報の重みを大きくして、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報の重みを小さくし、
前記車両の角速度の誤差が除去されない時間が一定時間以上である場合には、前記第1のヨー角情報の重みを小さくして、前記第2のヨー角情報の重みを大きくする
ことを特徴とする請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記重み判定部は、
前記車両の車速が前記第1の閾値未満であり、前記車両の角速度が前記第2の閾値未満である場合、前記第2のヨー角情報の重みを大きくして、前記第1のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報の重みを小さくする
ことを特徴とする請求項3に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記重み判定部は、
前記車両の車速が前記第1の閾値未満であり、前記車両の角速度が前記第2の閾値以上である場合に、前記第3のヨー角情報の重みを大きくして、前記第1のヨー角情報の重みを小さくし、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、
前記車両の車速が前記第1の閾値以上であり、前記車両の角速度が前記第2の閾値以上である場合は、前記第1のヨー角情報の重みを大きくして、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報に対する重みを小さくする
ことを特徴とする請求項3に記載の位置推定装置。
【請求項6】
前記重み判定部は、前記車両が走行している路面の起伏が第3の閾値以上である場合、前記第1のヨー角情報の重みを大きくして、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報に対する重みを小さくする
ことを特徴とする請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項7】
前記重み判定部は、前記車両が走行している路面の滑り度合いが第4の閾値以上である場合、前記第1のヨー角情報の重みを大きくして、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報に対する重みを小さくする
ことを特徴とする請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項8】
前記重み判定部は、
前記車両が走行する走行経路における区間ごとに、前記第1のヨー角情報、前記第2のヨー角情報および前記第3のヨー角情報に設定する重みを判定する第1の重み設定部と、
前記車両が走行しているときの前記走行経路の状態の変化に応じて、前記第1のヨー角情報、前記第2のヨー角情報および前記第3のヨー角情報に設定する重みを変更する第2の重み設定部と、を備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項9】
前記第1のヨー情報は、前記車両の角速度に基づいた第1のヨーレート情報であり、
前記第2のヨー情報は、前記車両の左右の車輪の移動距離に基づいた第2のヨーレート情報であり、
前記第3のヨー情報は、前記車両の操舵角および車速に基づいた第3のヨーレート情報である
ことを特徴とする請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の位置推定装置と、
位置推定装置によって推定された前記車両の位置に基づいて当該車両の移動を制御する車両自動制御装置と、を備えた
ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項11】
位置推定装置の位置推定方法であって、
重み判定部が、車両が走行状態または前記車両の周辺状態に基づいて、前記車両の角速度に基づく前記車両の第1のヨー情報と、前記車両の左右車輪の移動距離差に基づく前記車両の第2のヨー情報と、前記車両の操舵角および車速に基づく前記車両の第3のヨー情報とに設定する重みを判定するステップと、
ヨー情報取得部が、前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を取得するステップと、
合成部が、判定された前記重みを設定した前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報を生成するステップと、
位置推定部が、前記車両の測位情報、前記車両の車速および前記合成ヨー情報を用いて前記車両の位置を推定するステップと、を備えた
ことを特徴とする位置推定方法。
【請求項12】
コンピュータを、
車両が走行状態または前記車両の周辺状態に基づいて、前記車両の角速度に基づく前記車両の第1のヨー情報と、前記車両の左右車輪の移動距離差に基づく前記車両の第2のヨー情報と、前記車両の操舵角および車速に基づく前記車両の第3のヨー情報とに設定する重みを判定する重み判定部、
前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を取得するヨー情報取得部、
判定された前記重みを設定した前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報、および前記第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報を生成する合成部、
前記車両の測位情報、前記車両の車速および前記合成ヨー情報を用いて前記車両の位置を推定する位置推定部、として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置推定装置、自動運転システム、位置推定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
絶対位置測位は、測位の間隔で取得されなかったデータの補間、トンネルまたは建物等の遮蔽による未測位区間のデータの補償または測位精度の監視が必要である。このため、絶対位置測位と相対位置測位との組み合わせによる車両の位置推定が行われている。絶対位置測位は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星測位である。車両の自律航法である相対位置測位は、走行時の車両の挙動を検出するセンサからのセンサ情報を用いて車両の位置を推定するものである。
【0003】
走行時の車両の挙動を検出するセンサには、例えば、車速センサ、ジャイロセンサ、車輪速センサ、および、操舵角センサがある。例えば、相対位置測位には、ジャイロセンサが検出した車両の角速度を用いる第1の測位方式、車輪速センサが検出した左右車輪の移動距離差を用いる第2の測位方式、および、操舵角センサが検出した車両の操舵角を用いる第3の測位方式がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、外界センサからの情報が途絶した場合、内界センサで検出した車両の移動量の蓄積に基づいて車両の位置を推定する慣性航法装置が記載されている。
特許文献1において、外界センサは、車両以外の状況を検知するものである。内界センサは、走行時の車両の挙動を示す3軸の角速度(ピッチレート、ロールレートおよびヨーレート)と3軸の加速度(前後加速度、横加速度および上下加速度)が検出可能なIMU(Inertial Measurement Unit)、車速センサ、および操舵角センサ等の、車両自身の状態を検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
相対位置測位である第1の測位方式、第2の測位方式および第3の測位方式には、それぞれの特性に応じた誤差が発生するという課題があった。
特許文献1に記載される従来の技術は、第1の測位方式および第3の測位方式のうち、車両の加速度、角速度および操舵角のセンサ値を一定条件下で選択し、選択したセンサ値を用いる測位方式で車両の位置を推定している。このため、誤差の小さい測位方式が適切に選択されなかった場合、精度よく車両の位置を推定することができない。
【0007】
本開示は上記課題を解決するものであり、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる、位置推定装置、自動運転システム、位置推定方法およびプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る位置推定装置は、車両が走行状態または車両の周辺状態に基づいて、車両の角速度に基づく車両の第1のヨー情報と、車両の左右車輪の移動距離差に基づく車両の第2のヨー情報と、車両の操舵角および車速に基づく車両の第3のヨー情報とに設定する重みを判定する重み判定部と、第1のヨー情報、第2のヨー情報および第3のヨー情報を取得するヨー情報取得部と、判定された重みを設定した第1のヨー情報、第2のヨー情報および第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報を生成する合成部と、車両の測位情報、車両の車速および合成ヨー情報を用いて車両の位置を推定する位置推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両が走行状態または車両の周辺状態に基づいて、車両の角速度に基づく第1のヨー情報と、車両の左右車輪の移動距離差に基づく第2のヨー情報と、車両の操舵角および車速に基づく第3のヨー情報とに設定する重みを判定し、判定した重みを設定した第1のヨー情報、第2のヨー情報および第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報、車両の測位情報、車両の車速および合成ヨー情報を用いて車両の位置を推定する。これにより、本開示に係る位置推定装置は、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る自動運転システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る位置推定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1における重み判定部の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係る位置推定方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは実施の形態1に係る位置推定装置の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
(自動運転システムの概要)
図1は、実施の形態1に係る自動運転システム1の構成を示すブロック図である。
図1において、自動運転システム1は、車両Aの走行を自動的に制御するシステムであり、位置推定装置2、絶対位置検出部3A、路面検出部3B、姿勢検出部3C、ジャイロセンサ3D、車輪速センサ3E、操舵角センサ3F、車速センサ3Gおよび車両自動制御装置4を備える。なお、位置推定装置2は、位置推定対象である車両Aに搭載される装置に限定されるものではなく、車両Aに搭載されたセンサ3A~3Gと車両自動制御装置4との間でデータのやり取りが可能な車外装置であってもよい。
【0012】
(位置推定装置の概要)
位置推定装置2は、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて、車両Aの角速度に基づく第1のヨー情報と、車両Aの左右車輪の移動距離差に基づく第2のヨー情報と、車両Aの操舵角および車速に基づく車両Aの第3のヨー情報とに設定する重みを判定し、判定された重みを設定した第1のヨー情報、第2のヨー情報および第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報を生成し、車両Aの測位情報、車両Aの車速および合成ヨー情報を用いて車両Aの位置を推定する。
【0013】
以下では、特段の説明がない場合、位置推定装置2の機能の全部を1台のコンピュータが備えているものとする。ただし、位置推定装置2の機能については、その全部が、1台のコンピュータによって実現されていてもよいし、複数台のコンピュータによって実現されていてもよい。位置推定装置2の詳細については、後述する。
【0014】
第1のヨー情報は、第1の測位方式により、車両Aの角速度に基づいて算出された第1のヨー角情報である。第2のヨー情報は、第2の測位方式により、車両Aの左右車輪の移動距離差に基づいて算出された第2のヨー角情報である。第3のヨー情報は、第3の測位方式により、車両Aの操舵角および車速に基づいて算出された第3のヨー角情報である。
【0015】
第1の測位方式は、ジャイロセンサ3Dが検出した車両Aの角速度を用いる測位方式である。第1の測位方式では、ジャイロセンサ3Dが検出した車両Aの角速度を用いて、車両Aの左右方向の移動量が算出される。車両Aの左右方向の移動量は、車両Aのヨー軸周りの角速度(以下、ヨー角と記載する。)を示す第1のヨー角情報である。さらに、車速センサ3Gが検出した車両Aの車速または車輪速パルスを用いて、車両Aの前後方向の移動量が算出される。これらの算出結果を用いて車両Aの相対的な位置が算出される。
【0016】
ジャイロセンサ3Dは、車両Aの横滑りを含む角速度を検出する。ジャイロセンサ3Dのオフセットまたはドリフト誤差は、車両Aの走行において蓄積される積分誤差である。例えば、ジャイロセンサ3Dには、時間経過に伴いゼロ点がオフセットされる誤差が発生する。このため、第1の測位方式においては、時間が経過するにつれて、ジャイロセンサ3Dが検出したセンサ値に蓄積された誤差を除去する、いわゆる学習を行う必要がある。例えば、学習には、静止している車両Aでジャイロセンサ3Dのゼロ点であると仮定し、誤差を除去するものがある。また、学習には、衛星測位結果を用いてジャイロセンサ3Dが検出したセンサ値から誤差を除去するものもある。
【0017】
衛星測位は、例えば、1秒程度の一定の時間間隔で測位が行われる。このため、車両Aが高速で走行している場合、車両Aの位置推定装置2が衛星測位結果を取得する取得頻度が少なくなるので、学習の頻度も減少し、第1の測位方式による測位精度は低下する。
また、車両Aが低速で走行している場合であっても衛星測位結果を用いた車両Aの方位の推定精度が低下するので、第1の測位方式による測位精度は低下する。
さらに、位置推定装置2がトンネルのような衛星測位結果を取得できない場所を車両Aが走行している間は、学習が行えず、第1の測位方式による測位に誤差が生じる。
【0018】
第2の測位方式は、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動距離を用いる測位方式である。第2の測位方式においては、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動距離差とトレッド長とを用いて、幾何学的に算出される車両Aのヨーレートを積分することにより第2のヨー角情報が算出される。
さらに、車両Aの左右車輪の移動速度の平均値を用いて、車両Aの前後方向の移動量が算出される。第2の測位方式では、これらの算出結果を用いて、車両Aの相対的な位置が算出される。
【0019】
また、第2の測位方式では、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動量差(回転差)を用いて、第2のヨー角情報を算出するものである。第2のヨー角情報は、車両Aが長距離を走行しても、誤差が大きくなりにくい。その一方、車両Aが旋回している場合、第2のヨー角情報の推定精度は低下する。これは、車両Aのタイヤの着力点が変化することで、トレッドが変化することが関係している。具体的には、車両Aの旋回運動により、タイヤの幅方向に力がかかる場所が変化し、タイヤ幅の中心が最も力のかかる場所ではなくなる。従って、タイヤの一回転で車両Aが進む距離(スケールファクタ)が車両Aの旋回運動により変化する。スケールファクタの変化は、第2の測位方式による測位の誤差の要因となる。
【0020】
第3の測位方式は、操舵角センサ3Fが検出した車両Aの操舵角を用いる測位方式である。第3の測位方式においては、操舵角センサ3Fが検出した車両Aのハンドルの操舵角と、車速センサ3Gが検出した車両Aの車速とを用いて、運動方程式に従って算出される車両Aのヨーレートを積分することにより第3のヨー角情報が算出される。
さらに、車速センサ3Gが検出した車両Aの車速を用いて、車両Aの前後方向の移動量が算出される。第3の測位方式では、これらの算出結果を用いて車両Aの相対的な位置が算出される。
【0021】
また、第3の測位方式において、操舵角センサ3Fが検出した車両Aの操舵角を用いたヨーレート(一定時間におけるヨー角の変化量)の算出は、車両Aが定常円旋回を行っていることを前提としている。車両Aの車速が大きくなると、車両Aの横力の発生によって車両Aの横滑り角が発生するので、第3の測位方式による測位の誤差が大きくなる。
その一方、第3の測位方式による測位結果には、基本的に温度等によるドリフトが発生せず安定しているので、IMUに比べて積分誤差が少ない。
【0022】
第1の測位方式、第2の測位方式および第3の測位方式は、例えば、(1)から(3)の利用態様がある。位置推定装置2は、(1)から(3)の利用態様に基づく重みを判定し、判定した重みで第1の測位方式、第2の測位方式および第3の測位方式のヨー情報を合成した合成ヨー情報を用いて、車両Aの位置および方位を推定する。これにより、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる。
(1)車両Aの運動が直線に近い場合、学習の状態がよければ、第1の測位方式で求めたヨー情報を用いた位置推定を行い、学習の状態が悪ければ、第2の測位方式で求めたヨー情報を用いた位置推定を行う。
(2)車両Aの運動が旋回に近く、かつ車両Aが低速である場合には、第3の測位方式で求めたヨー情報を用いた位置推定の精度がよい。
(3)車両Aの運動が旋回に近く、かつ車両Aが高速である場合には、第1の測位方式で求めたヨー情報を用いた位置推定の精度がよい。
【0023】
絶対位置検出部3Aは、車両Aの絶対位置を検出するセンサである。例えば、絶対位置検出部3Aは、1秒程度の測位間隔でGPS衛星からGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる、車両Aの緯度および経度といった地球上での絶対位置と、車両Aの方位と、測位絶対位置の信頼度とを検出する。これらの検出情報は、車両Aの測位情報として、絶対位置検出部3Aから位置推定装置2に出力され、絶対位置記憶部5に記憶される。
【0024】
また、絶対位置検出部3Aは、衛星測位に限定されるものではなく、車両Aの絶対位置の検出が可能なものであればよい。
例えば、絶対位置検出部3Aは、車両Aに搭載されたカメラまたはLiDAR(Light Detection And Ranging)により検出された情報と、地図情報とを用いて、車両Aの絶対位置を算出してもよい。
さらに、絶対位置検出部3Aは、例えば、UWB(Ultra Wide Band)の無線通信を用いた測位手段を用いてもよい。
【0025】
路面検出部3Bは、車両Aが走行している道路の路面状態を検出するセンサであって、路面の凹凸状態、凍結状態、および、濡れ状態を検出する。
例えば、路面検出部3Bは、路面画像を撮影するカメラと、カメラが撮影した画像解析した結果を用いて路面の状態を検出する画像解析部を備える。また、路面検出部3Bは、ジャイロセンサ3Dが検出した車両Aのピッチレートおよびロールレートの変化量を、路面状態情報として検出してもよい。
車両Aのピッチレートおよびロールレートのうちの少なくとも一方が大きく変化した場合、車両Aが振動するほど路面の起伏が十分に大きいと判定することができる。
【0026】
姿勢検出部3Cは、車両Aの姿勢を検出するセンサである。車両Aの姿勢は、例えば、車両Aのロール角およびピッチ角である。具体的には、姿勢検出部3Cは、車両Aの前後方向に延びるロール軸周りのロール角と、車両Aの左右方向に延びるピッチ軸周りのピッチ角を検出する。姿勢検出部3Cは、車両Aのロール角およびピッチ角を含む姿勢情報を位置推定装置2に出力する。
【0027】
ジャイロセンサ3Dは、車両Aのヨー軸周りのヨー角速度(すなわち、ヨーレート)を検出するセンサである。
例えば、ジャイロセンサ3Dは、振動させた素子に加わるコリオリの力に基づいて、車両Aの角速度を検出する振動ジャイロセンサである。
また、ジャイロセンサ3Dは、サニャック効果を用いた光ファイバジャイロセンサ、または、リングレーザジャイロ等の光学式ジャイロセンサであってもよい。ジャイロセンサ3Dは、車両Aの垂直軸であるヨー軸周りのヨー角速度(ヨーレート)を検出する。
【0028】
ジャイロセンサ3Dは、車両Aの前後方向の加速度、車両Aの左右方向の加速度、車両Aの垂直方向の加速度、ロール軸周りの角速度、ピッチ軸周りの角速度、および、ヨー軸周りの角速度を検出する6軸センサであってもよい。すなわち、ジャイロセンサ3Dは、IMUであってもよい。
また、ジャイロセンサ3Dは、車両Aのロール軸方向の加速度および車両Aのピッチ軸方向の加速度を検出するセンサと組み合わされた3軸センサであってもよい。
【0029】
車輪速センサ3Eは、車両Aの左右車輪の車輪速を検出するセンサである。例えば、車輪速センサ3Eは、車両Aの左右車輪の回転から、左側の前後車輪の車輪速と、右側の前後車輪の車輪速とを算出する。また、車輪速センサ3Eは、左右車輪の車輪速を示す車輪速情報を位置推定装置2に出力する。
【0030】
操舵角センサ3Fは、車両Aのハンドルの回転角度である操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ3Fは、操舵角を示す操舵角情報を位置推定装置2に出力する。
【0031】
車速センサ3Gは、車両Aの車速を検出するセンサである。例えば、車速センサ3Gは、車両Aの車輪の回転に伴って発生されるパルス信号である車輪速パルスを計測することにより、車両Aの車速を検出する。なお、車速センサ3Gは、車速を示す車速情報を位置推定装置2に出力する。
【0032】
車両自動制御装置4は、位置推定装置2が推定した車両Aの位置、または、位置推定装置2が推定した車両Aの位置および方位に基づいて、車両Aの移動を制御する。例えば、車両自動制御装置4は、位置推定装置2が推定した、車両Aの位置、または、車両Aの位置および方位を基準として、車両Aが次に移動すべき位置および方位を決定し、決定した位置および方位になるように車両Aの移動を制御する。
【0033】
(位置推定装置の詳細)
図2は、位置推定装置2の構成を示すブロック図である。
図2において、絶対位置記憶部5および地図情報記憶部6は、位置推定装置2とは独立して設けられた記憶部である。経路算出部7は、
図2において図示しないナビゲーション装置が備える。位置推定装置2は、例えば、
図2において図示しないネットワークを介して絶対位置記憶部5および経路算出部7にアクセス可能であり、絶対位置記憶部5から車両Aの測位情報を取得することができ、経路算出部7から車両Aの走行経路情報を取得することができる。
【0034】
(絶対位置記憶部)
絶対位置記憶部5は、絶対位置検出部3Aが検出した車両Aの測位情報を記憶している記憶部である。例えば、絶対位置記憶部5は、位置推定装置2とは独立して設けられ、位置推定装置2からアクセスが可能な記憶装置である。
なお、絶対位置記憶部5は、位置推定装置2が備えてもよい。
【0035】
(地図情報記憶部)
地図情報記憶部6は、地図情報を記憶している記憶部である。例えば、地図情報記憶部6は、位置推定装置2とは独立して設けられ、位置推定装置2からアクセスが可能な記憶装置である。なお、地図情報記憶部6は、位置推定装置2が備えてもよいし、上記ナビゲーション装置が備えてもよい。
【0036】
(経路算出部)
経路算出部7は、地図情報記憶部6から読み出した地図情報を用いて車両Aが走行する走行経路を算出する。例えば、経路算出部7は、車両Aの自動走行のための目標走行経路を算出する。なお、車両自動制御装置4は、位置推定装置2が推定した、車両Aの位置、または、車両Aの位置および方位を基準として、車両Aが目標走行経路を走行するように制御を行う。
【0037】
位置推定装置2は、
図2に示すように、重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24を備える。位置推定装置2が備える、
図2において図示しない演算部が情報処理アプリケーションを実行することにより、重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24の各機能が実現される。
【0038】
(重み判定部)
重み判定部21は、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて、車両Aの角速度に基づく車両Aの第1のヨー角情報と、車両Aの左右車輪の移動距離差に基づく車両Aの第2のヨー角情報と、車両Aの操舵角および車速に基づく車両Aの第3のヨー角情報とに設定する重みを判定する。車両Aが走行状態は、例えば、車両Aの角速度または車両Aの車速のうちの少なくとも一方が示す状態である。車両Aの周辺状態は、例えば、車両Aの測位情報により決定される、車両Aが走行している走行経路の路面状態である。
【0039】
例えば、重み判定部21は、車両Aの車速が第1の閾値以上であり、車両Aの角速度が第2の閾値未満であり、車両Aの角速度の誤差が除去されない時間が一定時間未満である場合、第1のヨー角情報の重みを大きくして、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報の重みを小さくしてもよい。ここで、第1の閾値は、車両Aが低速であるか高速であるかを判定するための車速に関する閾値である。さらに、第2の閾値は、車両Aの旋回量が小さいか大きいかを判定するための角速度に関する閾値である。
すなわち、車両Aの車速が第1の閾値以上であり、車両Aの角速度が第2の閾値未満である場合、車両Aは、旋回量が小さい状態で高速で走行している。
【0040】
車両Aの旋回量が小さくかつ高速である場合、車両Aの運動は直線に近い。この場合、利用態様(1)に示したように、ジャイロセンサ3Dが検出したセンサ値についての学習の状態がよければ、第1の測位方式で求めたヨー情報を用いた位置推定を行い、学習の状態が悪ければ、第2の測位方式で求めたヨー情報を用いた位置推定を行う。
車輪速センサ3Eが検出する車輪速を用いた第2のヨー角情報は、車両Aが旋回するとその検出精度が低下する。その一方で、車両Aの角速度の誤差が除去されない時間が一定時間未満であるので、ジャイロセンサ3Dが検出したセンサ値に誤差があまり蓄積されておらず、学習状態がよい。このため、ジャイロセンサ3Dが検出したセンサ値を用いる、第1の測位方式は、第2の測位方式および第3の測位方式に比べて安定してヨー角情報を検出することができる。
そこで、重み判定部21は、ジャイロセンサ3Dが検出した角速度を用いる第1のヨー角情報の重みを大きくし、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報の重みを小さくする。
【0041】
例えば、重み判定部21は、車両Aの車速が第1の閾値以上であり、車両Aの角速度が第2の閾値未満であり、かつ、車両Aの角速度の誤差が除去されない時間が一定時間以上である場合、第1のヨー角情報の重みを小さくし、第2のヨー角情報の重みを大きくしてもよい。車両Aの角速度が第2の閾値未満で車両Aがほぼ旋回していない場合に、車輪速センサ3Eが検出する車輪速を用いた第2のヨー角情報は、その検出精度が維持される。
一方、トンネルなどの衛星測位結果を取得できない場所を車両Aが走行するなどして、ジャイロセンサ3Dが検出する車両Aの角速度の誤差が除去されない時間が一定時間以上である場合、ジャイロセンサ3Dが検出したセンサ値には誤差が十分に蓄積されている。
そこで、重み判定部21は、ジャイロセンサ3Dが検出した角速度を用いる第1のヨー角情報の重みを小さくし、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動距離差を用いる第2のヨー角情報の重みを大きくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aの位置推定に用いる合成ヨー情報を安定して算出することができる。
【0042】
重み判定部21は、車両Aの車速が第1の閾値未満であり、車両Aの角速度が第2の閾値未満である場合には、第2のヨー角情報の重みを大きくして、第1のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報の重みを小さくする。
車両Aの車速が第1の閾値未満であり、車両Aの角速度が第2の閾値未満である場合、車両Aの旋回量が小さくかつ低速である。
車両Aの旋回量が小さくかつ低速である場合、車両Aの運動は直線に近い。この場合、車両Aがほぼ旋回していない場合、車輪速センサ3Eが検出する車輪速を用いた第2のヨー角情報は、その検出精度が維持され、第2のヨー角情報の信頼性が高い。
そこで、重み判定部21は、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動距離差を用いる第2のヨー角情報の重みを大きくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aの位置推定に用いる合成ヨー情報を安定して算出することができる。
【0043】
重み判定部21は、車両Aの車速が第1の閾値未満であり、車両Aの角速度が第2の閾値以上である場合に、第3のヨー角情報の重みを大きくして、第1のヨー角情報の重みを小さくし、第2のヨー角情報の重みを小さくする。
車両Aの旋回量が大きくかつ低速である場合、車両Aの運動が旋回に近く、かつ車両Aが低速である。この場合、車両Aの横力が発生せず車両Aの横滑り角が発生しないので、利用態様(2)に示したように、第3の測位方式で求めた第3のヨー角情報を用いた位置推定の精度がよくなる。そこで、重み判定部21は、操舵角センサ3Fが検出した操舵角を用いる第3のヨー角情報の重みを大きくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aの位置推定に用いる合成ヨー情報を安定して算出することができる。
【0044】
また、重み判定部21は、車両Aの車速が第1の閾値以上であり、車両Aの角速度が第2の閾値以上である場合は、第1のヨー角情報の重みを大きくして、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報に対する重みを小さくする。
車両Aの旋回量が大きくかつ高速である場合、車両Aの運動が旋回に近くかつ車両Aが高速である。この場合、車両Aの横力が発生して車両Aの横滑り角が発生するので、利用態様(3)に示したように、第1の測位方式で求めた第1のヨー情報を用いた位置推定の精度がよくなる。
そこで、重み判定部21は、ジャイロセンサ3Dが検出した角速度を用いる第1のヨー角情報の重みを大きくして、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動距離差を用いる第2のヨー角情報の重みを小さくし、操舵角センサ3Fが検出した操舵角を用いる第3のヨー角情報の重みを小さくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aの位置推定に用いる合成ヨー情報を安定して算出することができる。
【0045】
なお、車速に関する第1の閾値および角速度に関する第2の閾値は、経験的に決定した固定値であってもよいし、車両Aの車速または角速度の大きさに応じて動的に変更されるものであってもよい。
【0046】
重み判定部21は、車両Aが走行している路面の起伏が第3の閾値以上である場合に、第1のヨー角情報の重みを大きくし、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報に対する重みを小さくしてもよい。
第3の閾値は、路面の起伏に関する閾値であり、例えば、車両Aが振動しているかどうかを判定するためのピッチレートの変化量とロールレートの変化量である。
路面の起伏が第3の閾値以上である場合、路面上の車両Aは振動してしまい、車輪速センサ3Eによる車両Aの左右車輪の移動距離差の検出精度が低下し、操舵角センサ3Fによる操舵角の検出精度が低下する状態にある。
そこで、重み判定部21は、車両Aの振動に影響を受けにくい第1のヨー角情報の重みを大きくし、車両Aの振動に影響を受けて誤差が大きくなっている第2のヨー角情報および第3のヨー角情報の重みを小さくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aの位置推定に用いる合成ヨー情報を安定して算出することができる。
【0047】
重み判定部21は、車両Aが走行している路面の滑り度合いが第4の閾値以上である場合、第1のヨー角情報の重みを大きくして、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報に対する重みを小さくしてもよい。第4の閾値は、路面の滑り度合いに関する閾値であり、例えば、路面を撮影した画像における路面の濡れ具合または積雪の度合いを示す特徴量に関する閾値である。
路面の滑り度合いが第4の閾値以上である場合、路面上の車両Aは、車輪速センサ3Eによる車両Aの左右車輪の移動距離差の検出精度が低下し、操舵角センサ3Fによる操舵角の検出精度も低下する状態にある。
そこで、重み判定部21は、車両Aの振動に影響を受けにくい第1のヨー角情報の重みを大きくし、車両Aの振動に影響を受けて誤差が大きくなっている第2のヨー角情報および第3のヨー角情報の重みを小さくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aの位置推定に用いる合成ヨー情報を安定して算出することができる。
【0048】
なお、路面の起伏に関する第3の閾値および路面の滑りやすさに関する第4の閾値は、経験的に決定した固定値であってもよいし、車両Aの車速または角速度の大きさに応じて動的に変更されるものであってもよい。
【0049】
(ヨー情報取得部)
ヨー情報取得部22は、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を取得する。例えば、ヨー情報取得部22は、姿勢検出部3Cが検出した車両Aの姿勢角(ロール角およびピッチ角)、ジャイロセンサ3Dが検出した車両Aの角速度、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の車輪速、操舵角センサ3Fが検出した車両Aの操舵角、および、車速センサ3Gが検出した車両Aの車速を用いて、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を算出する。また、ヨー情報取得部22は、位置推定装置2とは独立して設けられた図示しない演算装置が算出した車両Aのヨー角情報を取得するものであってもよい。
すなわち、ヨー情報取得部22によるヨー情報の取得には、外部装置からヨー情報を入力することに加え、ヨー情報を算出することも含まれる。
ヨー角情報を算出するヨー情報取得部22は、
図2に示すように、第1のヨー角算出部221、第2のヨー角算出部222、第3のヨー角算出部223を備える。
【0050】
(第1のヨー角算出部)
第1のヨー角算出部221は、車両Aの角速度に基づいて車両Aの第1のヨー角情報を算出する。例えば、第1のヨー角算出部221は、ジャイロセンサ3Dが検出した車両Aの角速度(ヨーレート)を1サンプリング時間ごとに積分することにより、第1のヨー角情報を算出する。
【0051】
(第2のヨー角算出部)
第2のヨー角算出部222は、車両Aの左右車輪の移動距離差に基づいて、車両Aの第2のヨー角情報を算出する。例えば、第2のヨー角算出部222は、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動距離差とトレッド長とを用いて幾何学的に車両Aのヨーレートを算出し、算出したヨーレートを1サンプリング時間ごとに積分することにより、第2のヨー角情報を算出する。
【0052】
(第3のヨー角算出部)
第3のヨー角算出部223は、車両Aの操舵角および車速に基づいて、車両Aの第3のヨー角情報を算出する。例えば、第3のヨー角算出部223は、操舵角センサ3Fが検出した車両Aのハンドルの操舵角と、車速センサ3Gが検出した車両Aの車速とを用いて、運動方程式に従って車両Aのヨーレートを算出し、算出したヨーレートを1サンプリング時間ごとに積分することにより、第3のヨー角情報を算出する。
【0053】
(合成部)
合成部23は、重み判定部21によって判定された重みを設定した第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を合成した合成ヨー角情報を生成する。
例えば、合成部23は、判定された重みに基づいて、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報の合成比率を調整し、合成ヨー角情報を算出する。
第1のヨー角情報γ1の合成比率をK1とし、第2のヨー角情報γ2の合成比率をK2とし、第3のヨー角情報γ3の合成比率をK3とした場合、合成ヨー角情報γsumは、下記式(1)にて求まる。
γsum=K1γ1+K2γ2+K3γ3 (1)
K1+K2+K3=1
【0054】
なお、合成部23は、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を合成する前に、これらのヨー角情報の座標系を合わせる。
例えば、車両Aの姿勢が世界座標系に対してロールしている場合には、合成部23が、車両Aの左右車輪の移動距離差に基づく第2のヨー角情報を、車両座標系から世界座標系に変換することにより、その値が小さくなる。これにより、車両Aのロールによる影響が低減された合成ヨー角情報γsumを算出することができる。
【0055】
合成部23は、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態の変化に基づいて重み判定部21が重みを動的に変更すると、変更された重みを第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報に逐次設定して、合成ヨー角情報を生成する。
なお、重み判定部21および合成部23は、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態を示す情報と、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報が入力されると、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報の合成ヨーレート情報を出力する学習済モデルを用いるAI(Artificial Intelligence)であってもよい。これにより、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態の変化に応じた合成ヨー角情報を生成することが可能である。
【0056】
(位置推定部)
位置推定部24は、車両Aの測位情報、車両Aの車速および合成ヨー角情報を用いて、車両Aの位置を推定する。例えば、位置推定部24は、車両Aの進行方向をx軸、車両Aの左右方向をy軸とした場合、位置推定の基準位置からの車両Aの位置(x,y)を下記式(2)に基づいて算出する。下記式(2)において、Lは、車両Aの移動距離であり、γsumは、合成ヨー角である。
x=L・sin(γsum)、y=L・cos(γsum) (2)
【0057】
なお、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報は、フィルタ処理を施して、値のばらつきおよび異常値を除去したものであってもよい。
例えば、第1のヨー角算出部221、第2のヨー角算出部222、第3のヨー角算出部223が、ヨー角情報を算出した後、算出したヨー角情報にフィルタ処理を施す。これにより、ヨー角情報のばらつきおよび異常値に起因した車両Aの位置推定の精度低下を抑制することができる。
【0058】
図3は、重み判定部21の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、重み判定部21は、第1の重み設定部211および第2の重み設定部212を備える。
重み判定部21は、車両Aの周辺状態の変化に基づいて、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報にそれぞれ設定する重みを動的に変更する。
【0059】
(第1の重み設定部)
第1の重み設定部211は、車両Aが走行する走行経路における区間ごとに第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報に設定する重みを判定する。例えば、第1の重み設定部211は、経路算出部7から走行経路情報を取得して、取得した走行経路情報が示す経路を、道路形状等に基づく複数の区間に区分けする。
トンネルを含み、ジャイロセンサ3Dの誤差についての学習不可の時間が一定時間以上になると予想される区間について、第1の重み設定部211は、第1のヨー角情報の重みを小さくし、第2のヨー角情報の重みを大きくする。
また、車両Aの走行初期において低速で、かつ車両Aが直線に近い移動をする区間では、第1の重み設定部211は、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動距離差を用いる第2のヨー角情報の重みを大きくし、ジャイロセンサ3Dが検出した角速度を用いる第1のヨー角情報の重みを小さくする。
さらに、車両Aが高速かつ車両Aが直線に近い移動をする区間では、第1の重み設定部211は、ジャイロセンサ3Dが検出した角速度を用いる第1のヨー角情報の重みを大きくし、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報の重みを小さくする。
さらに、道路のカーブを含み、車両Aが旋回しかつ低速で走行すると考えられる区間では、重み判定部21は、操舵角センサ3Fが検出した操舵角を用いる第3のヨー角情報の重みを大きくして、車輪速センサ3Eが検出した車両Aの左右車輪の移動距離差を用いる第2のヨー角情報の重みを小さくする。
さらに、重み判定部21は、例えば、高速道路におけるカーブが含まれ、車両Aが高速で旋回すると考えられる区間では、第1のヨー角情報の重みを大きくして、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報に対する重みを小さくする。
これにより、位置推定装置2は、車両Aの位置推定に用いる合成ヨー情報を安定して算出することができる。
【0060】
(第2の重み設定部)
第2の重み設定部212は、車両Aが走行しているときの走行経路の状態の変化に応じて、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報に設定する重みを変更する。例えば、第2の重み設定部212は、車両Aが走行している路面の起伏が大きければ、車両Aが走行している区間において第1の重み設定部211が設定した重みのうち、第1のヨー角情報の重みを大きくし、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報の重みを小さくする。また、第2の重み設定部212は、車両Aが走行している路面の滑りやすい状態であれば、第1のヨー角情報の重みを大きくし、車両Aの振動に影響を受けて誤差が大きくなっている第2のヨー角情報および第3のヨー角情報の重みを小さくする。
これにより、位置推定装置2は、車両Aの位置推定に用いる合成ヨー情報を安定して算出することができる。
【0061】
(位置推定方法)
図4は、実施の形態1に係る位置推定方法を示すフローチャートであり、位置推定装置2が実行する位置推定方法の一連の処理を示している。
図4に示す一連の処理は、車両Aが走行している間、繰り返し実行されるものとする。
重み判定部21は、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて、第1のヨー角情報と、第2のヨー角情報と、第3のヨー角情報とに設定する重みを判定する(ステップST1)。
ヨー情報取得部22は、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を取得する(ステップST2)。
合成部23は、重み判定部21によって判定された重みを設定した第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を合成した合成ヨー角情報を生成する(ステップST3)。
位置推定部24は、車両Aの測位情報、車両Aの車速および合成ヨー角情報を用いて、車両Aの位置および方位を推定する(ステップST4)。
なお、
図4では、車両Aの位置および方位を推定する場合を示したが、位置推定装置2は、少なくとも車両Aの位置を推定すればよい。すなわち、車両自動制御装置4は、位置推定装置2が推定した車両Aの位置に基づいて、車両Aの移動を制御することができる。
図4に示す位置推定方法を位置推定装置2が実行することで、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる。
【0062】
(補足)
なお、実施の形態1において、第1の測位方式、第2の測位方式および第3の測位方式に用いられるセンサは、可能な限り誤差要因に対して学習されているものとする。
例えば、ジャイロセンサ3Dの学習状況が悪い場合は、ジャイロセンサ3Dが検出したセンサ値を、車両Aの走行初期から、車両Aの位置推定に使わなくてもよい。
これは、車輪速センサ3Eおよび操舵角センサ3Fにおいても同様である。すなわち、上述したような車輪速センサ3Eの検出精度または操舵角センサ3Fの検出精度が悪い状態であれば、これらのセンサ値を、車両Aの走行初期から、車両Aの位置推定に使わなくてもよい。
【0063】
次に、位置推定装置2の機能を実現するハードウェア構成について説明する。
位置推定装置2が備える重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24の機能は、処理回路により実現される。すなわち、位置推定装置2は、
図4に示したステップST1からステップST4までの処理を実行するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいが、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0064】
図5Aは、位置推定装置2の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。
図5Bは、位置推定装置2の機能を実現するソフトウェアを実行するハードウェア構成を示すブロック図である。
図5Aおよび
図5Bにおいて、入力インタフェース100は、位置推定装置2がセンサ3A~3Gから取得する検出データ、絶対位置記憶部5から取得する車両Aの絶対位置情報、および、経路算出部7から取得する車両Aの走行経路情報を中継するインタフェースである。出力インタフェース101は、位置推定装置2から車両自動制御装置4へ出力される車両Aの位置推定結果を中継するインタフェースである。
【0065】
処理回路が
図5Aに示す専用のハードウェアの処理回路102である場合、処理回路102は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。位置推定装置2が備える重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24の機能を別々の処理回路で実現してもよく、これらの機能をまとめて一つの処理回路で実現してもよい。
【0066】
処理回路が
図5Bに示すプロセッサ103である場合、位置推定装置2が備える重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24の機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。なお、ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述されてメモリ104に記憶される。
【0067】
(プログラム)
プロセッサ103は、メモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、位置推定装置2が備える重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24の機能を実現する。
例えば、位置推定装置2は、プロセッサ103によって実行されるときに、
図4に示したステップST1からステップST4の処理が結果的に実行されるプログラムを記憶するためのメモリ104を備えている。
これらのプログラムは、重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24が行う処理の手順または方法を、コンピュータに実行させるものである。
メモリ104は、コンピュータを、重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24として機能させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
【0068】
メモリ104は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically-EPROM)(登録商標)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDなどが該当する。
【0069】
位置推定装置2が備える重み判定部21、ヨー情報取得部22、合成部23および位置推定部24の機能の一部を、専用のハードウェアで実現し、他の一部はソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、ヨー情報取得部22の機能は専用のハードウェアである処理回路102により実現し、重み判定部21、合成部23および位置推定部24の各機能は、プロセッサ103がメモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせにより上記機能を実現することが可能である。
【0070】
なお、位置推定装置2は、第1の測位方式、第2の測位方式、および第3の測位方式のそれぞれで求めたヨーレートを合成した合成ヨーレート情報を用いて車両Aの位置を推定してもよい。この場合、第1のヨー情報は、車両Aの角速度に基づいた第1のヨーレート情報であり、第2のヨー情報は、車両Aの左右の車輪の移動距離に基づいた第2のヨーレート情報であり、さらに、第3のヨー情報は、車両Aの操舵角および車速に基づいた第3のヨーレート情報である。
例えば、ヨー情報取得部22は、第1のヨーレート情報、第2のヨーレート情報および第3のヨーレート情報を取得する。重み判定部21は、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて、第1のヨーレート情報と第2のヨーレート情報と第3のヨーレート情報とを合成する際の重みを判定する。合成部23は、判定された重みが設定された第1のヨーレート情報と第2のヨーレート情報と第3のヨーレート情報とを合成した合成ヨーレート情報を生成する。位置推定部24は、車両Aの測位情報、車両Aの車速および合成ヨーレート情報を用いて、車両Aの位置を推定する。
このように構成された位置推定装置2であっても、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる。
【0071】
以上のように、実施の形態1に係る位置推定装置2は、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて、車両Aの角速度に基づく車両Aの第1のヨー角情報と、車両Aの左右車輪の移動距離差に基づく車両Aの第2のヨー角情報と、車両Aの操舵角および車速に基づく車両Aの第3のヨー角情報に設定する重みを判定する重み判定部21と、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を取得するヨー情報取得部22と、判定された重みを設定した第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を合成した合成ヨー角情報を生成する合成部23と、車両Aの測位情報、車両Aの車速および合成ヨー角情報を用いて、車両Aの位置を推定する位置推定部24とを備える。
第1の測位方式、第2の測位方式および第3の測位方式において算出された、3種類のヨー情報を、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて判定した重みで組み合わせることで、車両Aのヨー情報を安定して算出することができ、車両Aの位置および方位(姿勢角)の推定精度が向上する。これにより、位置推定装置2は、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる。
【0072】
実施の形態1に係る位置推定装置2において、ヨー情報取得部22は、車両Aの角速度に基づいて、車両Aの第1のヨー角情報を算出する第1のヨー角算出部221と、車両Aの左右車輪の移動距離差に基づいて、車両Aの第2のヨー角情報を算出する第2のヨー角算出部222と、車両Aの操舵角および車速に基づいて車両Aの第3のヨー角情報を算出する第3のヨー角算出部223と、を備える。
第1の測位方式、第2の測位方式および第3の測位方式において算出された、3種類のヨー角情報を、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて判定した重みで組み合わせることができ、車両Aの位置および方位(姿勢角)の推定精度が向上する。これにより、位置推定装置2は、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる。
【0073】
実施の形態1に係る位置推定装置2において、重み判定部21は、車両Aの車速が第1の閾値以上であり、車両Aの角速度が第2の閾値未満であり、車両Aの角速度の誤差が除去されない時間が一定時間未満である場合、第1のヨー角情報の重みを大きくして、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報の重みを小さくし、車両Aの角速度の誤差が除去されない時間が一定時間以上である場合には、第1のヨー角情報の重みを小さくして、第2のヨー角情報の重みを大きくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aのヨー情報を安定して算出することができる。
【0074】
実施の形態1に係る位置推定装置2において、重み判定部21は、車両Aの車速が第1の閾値未満であり、車両Aの角速度が第2の閾値未満である場合、第2のヨー角情報の重みを大きくして、第1のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報の重みを小さくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aのヨー情報を安定して算出することができる。
【0075】
実施の形態1に係る位置推定装置2において、重み判定部21は、車両Aの車速が第1の閾値未満であり、車両Aの角速度が第2の閾値以上である場合に、第3のヨー角情報の重みを大きくして、第1のヨー角情報の重みを小さくし、第2のヨー角情報の重みを小さくし、車両Aの車速が第1の閾値以上であり、車両Aの角速度が第2の閾値以上である場合は、第1のヨー角情報の重みを大きくして、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報に対する重みを小さくする。これにより、位置推定装置2は、車両Aのヨー情報を安定して算出することができる。
【0076】
実施の形態1に係る位置推定装置2において、重み判定部21は、車両Aが走行している路面の起伏が第3の閾値以上である場合、第1のヨー角情報の重みを大きくして、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報に対する重みを小さくする。
これにより、位置推定装置2は、車両Aのヨー情報を安定して算出することができる。
【0077】
実施の形態1に係る位置推定装置2において、重み判定部21は、車両Aが走行している路面の滑り度合いが第4の閾値以上である場合、第1のヨー角情報の重みを大きくし、第2のヨー角情報の重みを小さくし、第3のヨー角情報に対する重みを小さくする。これにより、位置推定装置2は車両Aのヨー情報を安定して算出することができる。
【0078】
実施の形態1に係る位置推定装置2において、重み判定部21は、車両Aが走行する走行経路における区間ごとに、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報に設定する重みを判定する第1の重み設定部211と、車両Aが走行しているときの走行経路の状態の変化に応じて、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報に設定する重みを変更する第2の重み設定部212と、を備える。
これにより、位置推定装置2は、車両Aのヨー情報を安定して算出することができる。
【0079】
実施の形態1に係る位置推定装置2において、第1のヨー情報は、車両Aの角速度に基づいた第1のヨーレート情報であり、第2のヨー情報は、車両Aの左右の車輪の移動距離に基づいた第2のヨーレート情報であり、第3のヨー情報は、車両Aの操舵角および車速に基づいた第3のヨーレート情報である。
第1の測位方式、第2の測位方式および第3の測位方式において算出された、3種類のヨーレート情報を、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて判定した重みで組み合わせることで、車両Aのヨーレート情報を安定して算出することができ、車両Aの位置および方位の推定精度が向上する。これにより、位置推定装置2は、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる。
【0080】
実施の形態1に係る自動運転システム1において、位置推定装置2と、位置推定装置2によって推定された車両Aの位置に基づいて、当該車両Aの移動を制御する車両自動制御装置4と、を備える。自動運転システム1は、位置推定装置2から取得した、測位方式の特性に応じた誤差を抑制した車両Aの位置推定結果を用いて、車両Aの移動を正確に制御することができる。
【0081】
実施の形態1に係る位置推定方法において、重み判定部21が、車両Aが走行状態または車両Aの周辺状態に基づいて、車両Aの角速度に基づく車両Aの第1のヨー角情報と、車両Aの左右車輪の移動距離差に基づく車両Aの第2のヨー角情報と、車両Aの操舵角および車速に基づく車両Aの第3のヨー角情報とに設定する重みを判定するステップと、ヨー情報取得部22が、第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を取得するステップと、合成部23が、判定された重みを設定した第1のヨー角情報、第2のヨー角情報および第3のヨー角情報を合成した合成ヨー角情報を生成するステップと、位置推定部24が、車両Aの測位情報、車両Aの車速および合成ヨー角情報を用いて車両Aの位置を推定するステップと、を備える。これにより、実施の形態1に係る位置推定方法は、測位方式の特性に応じた誤差を抑制することができる。
【0082】
実施の形態1に係るプログラムは、1または複数のコンピュータに実行されることで、1または複数のコンピュータを、測位方式の特性に応じた誤差を抑制可能な位置推定装置2として機能させることができる。
【0083】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0084】
(付記1)
車両が走行状態または前記車両の周辺状態に基づいて、前記車両の角速度に基づく前記車両の第1のヨー情報と、前記車両の左右車輪の移動距離差に基づく前記車両の第2のヨー情報と、前記車両の操舵角および車速に基づく前記車両の第3のヨー情報とに設定する重みを判定する重み判定部と、
前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を取得するヨー情報取得部と、
判定された前記重みを設定した前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報を生成する合成部と、
前記車両の測位情報、前記車両の車速および前記合成ヨー情報を用いて前記車両の位置を推定する位置推定部と、を備えた
ことを特徴とする位置推定装置。
(付記2)
前記ヨー情報取得部は、
前記車両の角速度に基づいて、前記車両の第1のヨー角情報を算出する第1のヨー角算出部と、
前記車両の左右車輪の移動距離差に基づいて、前記車両の第2のヨー角情報を算出する第2のヨー角算出部と、
前記車両の操舵角および車速に基づいて、前記車両の第3のヨー角情報を算出する第3のヨー角算出部と、を備えた
ことを特徴とする付記1に記載の位置推定装置。
(付記3)
前記重み判定部は、
前記車両の車速が第1の閾値以上であり、前記車両の角速度が第2の閾値未満であり、前記車両の角速度の誤差が除去されない時間が一定時間未満である場合、前記第1のヨー角情報の重みを大きくして、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報の重みを小さくし、
前記車両の角速度の誤差が除去されない時間が一定時間以上である場合には、前記第1のヨー角情報の重みを小さくして、前記第2のヨー角情報の重みを大きくする
ことを特徴とする付記2に記載の位置推定装置。
(付記4)
前記重み判定部は、
前記車両の車速が前記第1の閾値未満であり、前記車両の角速度が前記第2の閾値未満である場合、前記第2のヨー角情報の重みを大きくして、前記第1のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報の重みを小さくする
ことを特徴とする付記3に記載の位置推定装置。
(付記5)
前記重み判定部は、
前記車両の車速が前記第1の閾値未満であり、前記車両の角速度が前記第2の閾値以上である場合に、前記第3のヨー角情報の重みを大きくして、前記第1のヨー角情報の重みを小さくし、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、
前記車両の車速が前記第1の閾値以上であり、前記車両の角速度が前記第2の閾値以上である場合は、前記第1のヨー角情報の重みを大きくして、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報に対する重みを小さくする
ことを特徴とする付記3または付記4に記載の位置推定装置。
(付記6)
前記重み判定部は、前記車両が走行している路面の起伏が第3の閾値以上である場合、前記第1のヨー角情報の重みを大きくして、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報に対する重みを小さくする
ことを特徴とする付記3から付記5のいずれか1項に記載の位置推定装置。
(付記7)
前記重み判定部は、前記車両が走行している路面における滑り度合いが第4の閾値以上である場合、前記第1のヨー角情報の重みを大きくして、前記第2のヨー角情報の重みを小さくし、前記第3のヨー角情報に対する重みを小さくする
ことを特徴とする付記3から付記6のいずれか1項に記載の位置推定装置。
(付記8)
前記重み判定部は、
前記車両が走行する走行経路における区間ごとに、前記第1のヨー角情報、前記第2のヨー角情報および前記第3のヨー角情報に設定する重みを判定する第1の重み設定部と、
前記車両が走行しているときの前記走行経路の状態の変化に応じて、前記第1のヨー角情報、前記第2のヨー角情報および前記第3のヨー角情報に設定する重みを変更する第2の重み設定部と、を備えた
ことを特徴とする付記3から付記7のいずれか1項に記載の位置推定装置。
(付記9)
前記第1のヨー情報は、前記車両の角速度に基づいた第1のヨーレート情報であり、
前記第2のヨー情報は、前記車両の左右車輪の移動距離差に基づいた第2のヨーレート情報であり、
前記第3のヨー情報は、前記車両の操舵角および車速に基づいた第3のヨーレート情報である
ことを特徴とする付記1に記載の位置推定装置。
(付記10)
付記1から付記9のいずれか1項に記載の位置推定装置と、
位置推定装置によって推定された前記車両の位置に基づいて当該車両の移動を制御する車両自動制御装置と、を備えた
ことを特徴とする自動運転システム。
(付記11)
位置推定装置の位置推定方法であって、
重み判定部が、車両が走行状態または前記車両の周辺状態に基づいて、前記車両の角速度に基づく前記車両の第1のヨー情報と、前記車両の左右車輪の移動距離差に基づく前記車両の第2のヨー情報と、前記車両の操舵角および車速に基づく前記車両の第3のヨー情報とに設定する重みを判定するステップと、
ヨー情報取得部が、前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を取得するステップと、
合成部が、判定された前記重みを設定した前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報を生成するステップと、
位置推定部が、前記測位情報、前記車両の車速および前記合成ヨー情報を用いて前記車両の位置を推定するステップと、を備えた
ことを特徴とする位置推定方法。
(付記12)
コンピュータを、
車両が走行状態または前記車両の周辺状態に基づいて、前記車両の角速度に基づく前記車両の第1のヨー情報と、前記車両の左右車輪の移動距離差に基づく前記車両の第2のヨー情報と、前記車両の操舵角および車速に基づく前記車両の第3のヨー情報とに設定する重みを判定する重み判定部、
前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を取得するヨー情報取得部、
判定された前記重みを設定した前記第1のヨー情報、前記第2のヨー情報および前記第3のヨー情報を合成した合成ヨー情報を生成する合成部、
前記測位情報、前記車両の車速および前記合成ヨー情報を用いて前記車両の位置を推定する位置推定部、として機能させるためのプログラム。
【0085】
なお、実施の形態の任意の構成要素の変形もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 自動運転システム、2 位置推定装置、3A 絶対位置検出部、3B 路面検出部、3C 姿勢検出部、3D ジャイロセンサ、3E 車輪速センサ、3F 操舵角センサ、3G 車速センサ、4 車両自動制御装置、5 絶対位置記憶部、6 地図情報記憶部、7 経路算出部、100 入力インピーダンス、101 出力インピーダンス、102 処理回路、103 プロセッサ、104 メモリ、211 第1の重み設定部、212 第2の重み設定部、221 第1のヨー角算出部、222 第2のヨー角算出部、223 第3のヨー角算出部。