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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134587
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/36 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B41J3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044854
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】平馬 寿洋
【テーマコード(参考)】
2C055
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC01
(57)【要約】
【課題】筐体内での浸水を効果的に抑制することができるサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】サーマルプリンタ1は、筐体(ケーシング2)と、印字ユニットと、ケーシング2に開閉可能に構成されるペーパーカバーと、ペーパーカバーの開ボタン4と、誘導形状部6と、を備える。誘導形状部6は、サーマルプリンタ1の平置き姿勢において、開ボタン4とケーシング2との隙間S1よりも下方であって、かつこの隙間S1と対応する位置に設けられる。誘導形状部6は、上下方向に沿って延びる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
プラテンローラを有するプラテンユニット及びヘッドユニットを有し、前記筐体に収容される印字ユニットと、
前記筐体に開閉可能に構成されるカバーと、
前記カバーの開ボタンと、
前記カバーと前記筐体との間に設けられる紙排出口が上方を向くように載置された状態である平置き姿勢において、前記開ボタンと前記筐体との隙間よりも下方であって、かつ前記隙間と対応する位置に設けられるとともに上下方向に沿って延びる誘導形状部と、
を備えるサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記誘導形状部は、前記筐体と、前記筐体の内部に収容された対向部品と、の間に設けられる、
請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記誘導形状部は、前記対向部品よりも下方まで延びている、
請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記対向部品よりも下方に設けられる基板を有し、
前記基板は、前記上下方向から見て前記対向部品よりも前記筐体の内側に配置され、
前記誘導形状部は、前記上下方向から見て前記基板と重ならない位置に設けられる、
請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記開ボタンは、下方へ向かって突出する下方突出部を有し、
前記誘導形状部は、前記下方突出部と対応する位置に設けられる、
請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記誘導形状部は、前記筐体の内壁に形成されたリブである、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記誘導形状部は、吸水部材により形成されている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
前記筐体の底面に、前記誘導形状部によって誘導された液体を滞留させる滞留部を有する、
請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙(感熱紙)に対して印刷を行うプリンタとして、サーマルプリンタが知られている。このようなサーマルプリンタにおいては、例えば屋外作業時の雨水や使用者の手に付着した水等の液体によりプリンタの内部が浸水することを抑制するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、携行時の姿勢である携行姿勢において、筐体に浸入した液体を滞留させる滞留部と、筐体に浸入した液体を滞留部に案内する流通路と、を有するサーマルプリンタの構成が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、滞留部を設けることにより、液体の排水を行う排水孔を大きくすることなく、筐体内部での浸水を抑制できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-87534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、携行姿勢とは異なる姿勢、例えば紙の排出口が上方を向くように床面に載置された状態である平置き姿勢において、水等の液体がかかった場合に浸水を効果的に抑制できないおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、筐体内での浸水を効果的に抑制することができるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一つの形態のサーマルプリンタは、筐体と、プラテンローラを有するプラテンユニット及びヘッドユニットを有し、前記筐体に収容される印字ユニットと、前記筐体に開閉可能に構成されるカバーと、前記カバーの開ボタンと、前記カバーと前記筐体との間に設けられる排出口が上方を向くように載置された状態である平置き姿勢において、前記開ボタンと前記筐体との隙間よりも下方であって、かつ前記隙間と対応する位置に設けられるとともに上下方向に沿って延びる誘導形状部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、液体が浸入し易い開ボタンと筐体との隙間と対応する位置に、上下方向に沿う誘導形状部が設けられるので、誘導形状部の上部に付着した液体を誘導形状部に沿わせて下方へ誘導することができる。これにより、開ボタンと筐体との隙間から筐体内部に液体が浸入した場合であっても、基板等の電子部品への被水を抑制できる。また、液体が誘導形状部を伝って下方へ流れることにより、浸入した液体を比較的狙った位置へ案内することができる。これにより、筐体内の意図しない箇所での浸水を抑制できる。さらに、誘導形状部は開ボタンと筐体との隙間の真下に設けられるので、筐体の隙間から浸入した液体が誘導形状部に当たることにより、液体の勢いを弱めてより確実に誘導形状部に沿わせて下方へ案内することができる。
したがって、筐体内での浸水を効果的に抑制することができるサーマルプリンタを提供できる。
【0009】
また、前記サーマルプリンタは、前記誘導形状部は、前記筐体と、前記筐体の内部に収容された対向部品と、の間に設けられる。
【0010】
この構成によれば、浸入した液体の流通経路が筐体と対向部品とにより狭められるので、筐体の隙間から浸入した液体が誘導形状部と接触し易くなる。これにより、液体を誘導形状部と接触させて液体の勢いを弱め、かつ誘導形状部に沿わせて液体を下方へ案内することができる。よって、より効果的に筐体内での浸水を抑制できる。
【0011】
また、前記サーマルプリンタは、前記誘導形状部は、前記対向部品よりも下方まで延びている。
【0012】
この構成によれば、誘導形状部が対向部品よりも下方まで延びているので、筐体と対向部品との間を通過した後も、液体を誘導形状部に沿わせることができる。これにより、筐体と対向部品との間を流れてきた液体が、対向部品の終端部分(すなわち対向部品の下端部)で飛び散ることを抑制し、浸入した液体を狙った位置へ案内することができる。よって、特に対向部品よりも下方に電子部品等を配置する構成とした場合などに、これらの電子部品等への被水を抑制し、筐体内での浸水を効果的に抑制できる。
【0013】
また、前記サーマルプリンタは、前記対向部品よりも下方に設けられる基板を有し、前記基板は、前記上下方向から見て前記対向部品よりも前記筐体の内側に配置され、前記誘導形状部は、前記上下方向から見て前記基板と重ならない位置に設けられる。
【0014】
この構成によれば、基板は対向部品よりも筐体の内側に設けられるので、筐体と対向部品との間を通って流れた液体を基板にかかり難くすることができる。よって、筐体内の特に基板への浸水を抑制できる。基板と誘導形状部とが上下方向から見て重ならないように配置されるので、誘導形状部を伝って流れた液体が基板にかかることを抑制できる。よって、誘導形状部により基板への被水をより効果的に抑制できる。
【0015】
また、前記サーマルプリンタは、前記開ボタンは、下方へ向かって突出する下方突出部を有し、前記誘導形状部は、前記下方突出部と対応する位置に設けられる。
【0016】
この構成によれば、筐体と開ボタンとの隙間から浸入した液体は、開ボタンの下方突出部を伝って筐体内部へ浸入する。さらに、下方突出部と対応する位置(例えば下方突出部の真下)に誘導形状部が設けられることにより、下方突出部を伝って流れた液体が誘導形状部に到達し易くなる。これにより、液体を誘導形状部に沿わせて下方へ案内することができる。
【0017】
また、前記サーマルプリンタは、前記誘導形状部は、前記筐体の内壁に形成されたリブである。
【0018】
この構成によれば、簡素な構成により誘導形状部を形成できる。特に筐体とリブとを一体形成した場合には、部品点数及び製造コストを削減することができる。
【0019】
また、前記サーマルプリンタは、前記誘導形状部は、吸水部材により形成されている。
【0020】
この構成によれば、誘導形状部が液体の少なくとも一部を吸収するので、筐体内に浸入した液体の勢いをより効果的に弱めることができる。また、液体が誘導形状部の内部又は外表面を伝って下方へ流れるので、液体を誘導形状部に沿わせて下方へ案内することができる。
【0021】
また、前記サーマルプリンタは、前記筐体の底面に、前記誘導形状部によって誘導された液体を滞留させる滞留部を有する。
【0022】
この構成によれば、誘導形状部を伝って下方へ案内された液体は、筐体の底面の滞留部に溜まる。滞留部に溜まった液体は、例えばサーマルプリンタを携行姿勢にしたときに筐体内部の流路を通って排水孔から排水される。このため、平置き姿勢用の排水孔を別途設ける必要がなく、また排水孔を大きくする必要もない。よって、構成の複雑化及び大型化を抑制しつつ、筐体内に浸入した液体を排出できる。また、滞留部が設けられることにより、誘導形状部を伝って下方に案内された液体が集められるので、下方に案内された液体による基板等への被水を抑制できる。よって、効果的に筐体内での浸水を抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、筐体内での浸水を効果的に抑制することができるサーマルプリンタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るサーマルプリンタの平置き姿勢での状態を示す斜視図。
図2】第1実施形態に係るサーマルプリンタのペーパーカバーが開いたときの状態を示す斜視図。
図3】開ボタンの斜視図。
図4図1のIV-IV線に沿う断面図。
図5】第1実施形態に係るサーマルプリンタにおいてケーシングの内側を下方から見た斜視図。
図6図5のVI部拡大図。
図7】第2実施形態に係るサーマルプリンタにおいてケーシングの内側を下方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。図中において、FRは前方を、LHは左方を、UPは上方をそれぞれ示す。
【0026】
(第1実施形態)
(サーマルプリンタ)
図1は、サーマルプリンタ1の平置き姿勢での状態を示す斜視図である。図2は、サーマルプリンタ1のペーパーカバー3が開いたときの状態を示す斜視図である。
本実施形態のサーマルプリンタ1は、机や床面等に載置されて使用される場合や使用者に携行されて使用される場合など、複数の姿勢で使用されることがある。本実施形態では、サーマルプリンタ1が図1に示すように紙の排出口32が上方を向くように机や床面等に載置された状態を平置き時の姿勢として想定された平置き姿勢とし、この平置き姿勢にあるサーマルプリンタ1について説明する。なお、サーマルプリンタ1が使用者に携行されて使用される場合には、例えば図1における前方側が上方を向くような姿勢で使用される。
【0027】
(ケーシング)
図1及び図2に示すように、サーマルプリンタ1は、筐体であるケーシング2と、ペーパーカバー3(請求項のカバー)と、開ボタン4と、印字ユニット5と、誘導形状部6(図5参照)と、を備える。
ケーシング2は、ポリカーボネート等の樹脂材料や金属材料により形成されている。ケーシング2の前部は、上壁13を有する直方体状に形成される。一方、ケーシング2の後部は、上方に向けて開口する開口部11を有する箱型形状に形成されている。ケーシング2の上壁13における前部には、サーマルプリンタ1の各種操作を行う操作部15が配設されている。操作部15としては、電源スイッチやFEEDスイッチ等の各種機能スイッチ16が配設されるとともに、機能スイッチ16に隣接して電源スイッチのON/OFFの情報を知らせるPOWERランプや、サーマルプリンタ1のエラー等を知らせるERRORランプ等の各種ランプ17等が配設されている。ケーシング2の上壁13と側壁14との間には、ペーパーカバー3を開くための開ボタン4が設けられている。
【0028】
図2に示すように、ケーシング2の後部には、開口部11を通してロール紙Rが収容されるロール紙収容部20が形成されている。ロール紙収容部20は、ロール紙Rを保持している。ロール紙収容部20とペーパーカバー3の内面との間でロール紙Rを覆うようにしてロール紙Rが保持されている。ロール紙収容部20は、左右方向から見た断面視で下面が弧状に形成され、その内周面にロール紙Rの外周面が接触した状態でロール紙Rを保持するとともに、ロール紙Rから引き出された記録紙Pを印字ユニット5まで案内する。本実施形態で用いられる記録紙Pは、感熱紙であって、各種ラベルや、レシート、チケットの印刷等に好適に使用される。この記録紙Pは、ロール状に巻回されることで、中空孔を有するロール紙Rを形成している。そして、印字ユニット5は、記録紙Pのうち、ロール紙Rから引き出された部分に対して印刷を行う。
【0029】
図1に示すように、ケーシング2の底部には、後述する誘導形状部6により誘導された液体が滞留する滞留部26が設けられている。滞留部26は、サーマルプリンタ1の平置き姿勢において、ケーシング2の底部に流れてきた液体を所定量滞留させることが可能である。滞留部26は、例えばケーシング2の底部に形成された凹部である。滞留部26は、ケーシング2の後部(後述するペーパーカバー3のヒンジ構造31の近傍)に設けられた不図示の排水孔と連通している。サーマルプリンタ1が、ヒンジ構造31が下方に位置する状態であるサーマルプリンタ1の携行姿勢となった際に、滞留部26に滞留していた液体が排水孔を介してケーシング2の外部へ排出される。
【0030】
(ペーパーカバー)
ペーパーカバー3は、ケーシング2の開口部11を開閉するカバーである。ペーパーカバー3は、ポリカーボネート等の樹脂材料により形成されている。図2に示すように、ペーパーカバー3の後方には、ペーパーカバー3を枢支するヒンジ構造31が設けられている。ペーパーカバー3は、ヒンジ構造31によりケーシング2に対して回動可能にされる。ペーパーカバー3の前端(図2の開状態では上端)は、後述するプラテンユニット52を介してケーシング2に係止可能とされている。そして、開ボタン4を押下することにより、ケーシング2とペーパーカバー3との係止が解除され、ペーパーカバー3が図1に示す閉位置から図2に示す開位置へ回動する。図1に示すペーパーカバー3の閉位置において、ペーパーカバー3の上端縁とケーシング2の上壁13における後端縁との間に形成された隙間は、印字ユニット5によって印字される記録紙Pが排出される排出口32(請求項の紙排出口)を形成している。
【0031】
排出口32の開口縁には、排出口32から排出される記録紙Pを切断する切断刃35が設けられている。切断刃35は、ケーシング2の上壁13における後端縁(開口縁のうち、前側に位置する部分)及びペーパーカバー3の前端縁にそれぞれ一体で形成されている。排出口32から排出された記録紙Pを切断刃35に向けて引き倒すことにより、記録紙Pが切断される。
【0032】
なお、ケーシング2の下面や前部には、ストラップやフック等が取り付け可能とされてもよい。例えば使用者等がサーマルプリンタ1を携行する場合には、ストラップを首や肩に掛けたり、フックを腰ベルトに取り付けたりなどしてサーマルプリンタ1を携行して使用することが可能である。
【0033】
(開ボタン)
図3は、右下方から見た開ボタン4の斜視図である。
図1及び図3に示すように、開ボタン4は、ケーシング2の上壁13と側壁14(本実施形態では左側壁14)との間に設けられている。開ボタン4は、ペーパーカバー3を開くためのボタンであり、開ボタン4を下方へ向けて押下することにより、ペーパーカバー3を開くことが可能となっている。
【0034】
図3に示すように、開ボタン4は、本体部41と、位置決め部42と、係止部45と、下方突出部47と、を有する。開ボタン4がケーシング2に取り付けられた状態において、位置決め部42、係止部45及び下方突出部47は、少なくとも一部がケーシング2に設けられたボタン収容部21に収容されている。
本体部41は、使用者が押す部分である。ケーシング2に設けられたボタン収容部21に開ボタン4が収容された状態において、本体部41は外部に露出している。本体部41の上面は、左右方向から見て、上方に凸となるような緩やかな円弧状に形成されている。
【0035】
位置決め部42は、本体部41よりも左右方向の背面側(本実施形態では右側)に設けられている。位置決め部42は、本体部41と接続されている。位置決め部42は、上下方向に沿って延びるピン挿入穴43を内側に有する筒状に形成されている。ピン挿入穴43には、ケーシング2と一体形成された不図示のピンが挿入される。これにより開ボタン4は、ケーシング2に対して前後及び左右方向への移動が規制されるとともに、ケーシング2に対して上下方向にのみ移動可能に取り付けられる。また、開ボタン4は、不図示の付勢部材(バネ等)によってケーシング2に対して常に上方へ向けて付勢されている。
【0036】
係止部45は、本体部41よりも左右方向の背面側(本実施形態では右側)であって、かつ位置決め部42よりも後方に設けられている。係止部45は、上下方向に沿って延びるとともに左右方向を厚み方向とする板状に形成されている。係止部45の上端部は本体部41と接続されている。係止部45の下端部には、ケーシング2と係合する爪部46が形成されている。よって、ケーシング2のボタン収容部21に開ボタン4を上から挿入すると、係止部45の板状の部分が左右方向に弾性変形し、爪部46がケーシング2の不図示の被係止部を乗り越えてケーシング2と係合する。これにより、開ボタン4の上方への抜けが規制される。このようにして開ボタン4がケーシング2に取り付けられる。
【0037】
下方突出部47は、本体部41よりも左右方向の背面側(本実施形態では右側)に設けられている。下方突出部47は、本体部41と接続されている。下方突出部47は、上下方向に沿って延びている。下方突出部47は、位置決め部42及び係止部45よりも下方への突出量が大きい。本実施形態において、下方突出部47は、第一の下方突出部48と第二の下方突出部49との合計2個設けられている。
【0038】
第一の下方突出部48は、前後方向において位置決め部42よりも前方に設けられている。第一の下方突出部48は、ケーシング2に設けられた挿通部71に挿入されることにより、ケーシング2の内側まで突出している(図6参照)。第一の下方突出部48は、長手方向と直交する断面視においてL字状に形成されている。
第二の下方突出部49は、前後方向において係止部45よりも後方に設けられている。第二の下方突出部49は、ケーシング2に設けられた挿通部72に挿入されることにより、ケーシング2の内側まで突出している(図6参照)。第二の下方突出部49は、長手方向と直交する断面視において、後方に開口するU字状に形成されている。
【0039】
(印字ユニット)
図2に示すように、印字ユニット5は、ケーシング2に収容されている。印字ユニット5は、ケーシング2の上壁13における後端部に設けられたヘッドユニット51と、ペーパーカバー3の前端部(図2の開状態における上端部)に設けられたプラテンユニット52と、を有する。プラテンユニット52は、ペーパーカバー3の開閉操作に伴いヘッドユニット51に対して着脱可能に組み合わされる。プラテンユニット52は、ペーパーカバー3に取り付けられるプラテンフレーム53と、プラテンフレーム53に回転可能に支持されたプラテンローラ54と、を有する。
【0040】
プラテンローラ54は、左右方向に沿う軸線Cを回転中心として、プラテンフレーム53に回転可能に支持されている。プラテンローラ54の右側端部には、プラテン用ギヤ55が設けられている。また、ヘッドユニット51には、このプラテン用ギヤ55に組み合わされる不図示の輪列機構及び輪列機構に接続されたモータが設けられている。プラテン用ギヤ55は、プラテンユニット52とヘッドユニット51とが組み合わされたとき、ヘッドユニット51側に設けられた輪列機構に噛合して、モータの回転駆動力をプラテンローラ54に伝達する。また、プラテンユニット52とヘッドユニット51とが組み合わされたとき、プラテンローラ54の外周面にヘッドユニット51におけるサーマルヘッドが圧接される。
【0041】
(誘導形状部)
図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、第1実施形態に係るサーマルプリンタ1においてケーシング2の内側を下方から見た斜視図である。図6は、図5のVI部拡大図である。
図4から図6に示すように、誘導形状部6は、サーマルプリンタ1の平置き姿勢において、開ボタン4とケーシング2との隙間S1よりも下方であって、かつこの隙間S1と対応する位置に設けられる。誘導形状部6は、少なくとも上下方向に沿って延びる要素を有して形成される。
【0042】
具体的に、本実施形態において、誘導形状部6は、上下方向に沿って延びるリブである。図6に示すように、誘導形状部6(リブ)は、前後方向に離間して一対設けられている。2個のリブは同等の形状となっている。誘導形状部6は、筐体の内壁に一体形成されている。図4に示すように、誘導形状部6は、前後及び左右方向において、開ボタン4とケーシング2との隙間S1と対応する位置に設けられる。換言すれば、上下方向から見て、誘導形状部6と、開ボタン4とケーシング2との隙間S1と、が重なる。より詳細には、誘導形状部6は、図6に示すように、前後及び左右方向において第二の下方突出部49と対応する位置に設けられる。誘導形状部6は、第二の下方突出部49の真下に設けられる。
【0043】
図4に示すように、ケーシング2の内部には、開ボタン4より下方においてリリースレバー23(請求項の対向部品)が収容されている。リリースレバー23は、ケーシング2の内壁に対して距離Lだけ内側に配置されている。距離Lは、例えば数mmである。誘導形状部6は、この距離Lだけ互いに離間したケーシング2とリリースレバー23との間に設けられている。誘導形状部6の左右方向に沿う高さHは、ケーシング2とリリースレバー23との離間距離Lよりも小さい(H<L)。
【0044】
本実施形態において、誘導形状部6は、上下方向においてリリースレバー23よりも下方まで延びている。具体的に、誘導形状部6の上端部65は、上下方向においてリリースレバー23の上面とほぼ同じ高さに位置している。誘導形状部6の下端部66は、上下方向においてリリースレバー23の下端部よりも下方に位置している。なお、誘導形状部6の上端部65は、リリースレバー23の上面よりも上方に位置してもよい。
【0045】
ケーシング2の内部には、リリースレバー23よりも下方において基板24が設けられている。基板24は、例えば印字ユニット5や操作部15等と通電する電子基板等である。図4に示すように、基板24は、左右方向においてリリースレバー23よりもケーシング2の内側に配置されている。誘導形状部6は、上下方向から見て基板24と重ならない位置に設けられる。換言すれば、誘導形状部6は、基板24の外端部よりも左右方向の外側(ケーシング2の内壁側)に設けられる。
【0046】
誘導形状部6が設けられることにより、例えば平置き姿勢においてケーシング2と開ボタン4との隙間S1からケーシング2内部に水等の液体(以下、単に液体と言う場合がある。)が浸入した場合、以下に説明する手順で液体が流れる。すなわち、まず、平置き姿勢においてサーマルプリンタ1に液体がかかると、一部の液体がケーシング2と開ボタン4との隙間S1からケーシング2内部に浸入する場合がある。隙間S1からケーシング2内部に浸入した液体は、開ボタン4の下方突出部47(図3及び図6における第二の突出部)を伝って下方へ流れる(図4の矢印A参照)。下方突出部47の下端に到達した液体は、自重により下方へ落下する。このとき、下方突出部47の真下に誘導形状部6が設けられるので、落下した液体が誘導形状部6に接触することにより、液体の勢いが弱められる。また、リリースレバー23とケーシング2の内壁とにより狭い隙間S2が形成されるので、液体はこの狭い隙間S2及び誘導形状部6を伝って下方へ案内される。
【0047】
誘導形状部6の下端に到達した液体は、自重により下方へ落下、或いはケーシング2の内壁を伝って下方へ落下する。このとき、液体に作用する慣性力及び自重により、液体は、誘導形状部6に沿って流れた方向とほぼ同じ方向、すなわち上下方向に沿って落下する。また、誘導形状部6によって液体の勢いが弱められているので、液体が基板24側へ飛散することなく、ケーシング2の底部へ向かって液体が案内される(図4の矢印B参照)。その後、液体は滞留部26へ案内される。滞留部26に滞留している液体は、サーマルプリンタ1が平置き姿勢から携行姿勢へ変わった際に、不図示の排水孔まで流れ、排水孔からケーシング2の外部へ排出される。これにより、ケーシング2と開ボタン4との隙間S1からケーシング2内部に浸入した液体が、基板24等を浸水させることなく外部へ排出される。
【0048】
(作用、効果)
次に、上述のサーマルプリンタ1の作用、効果について説明する。
本実施形態のサーマルプリンタ1によれば、サーマルプリンタ1は、ケーシング2(請求項の筐体)と、印字ユニット5と、ペーパーカバー3(請求項のカバー)と、開ボタン4と、平置き姿勢において開ボタン4と筐体との隙間S1よりも下方かつ隙間S1と対応する位置に設けられるとともに、上下方向に沿って延びる誘導形状部6と、を備える。この構成によれば、液体が浸入し易い開ボタン4とケーシング2との隙間S1と対応する位置に、上下方向に沿う誘導形状部6が設けられるので、誘導形状部6の上部に付着した液体を誘導形状部6に沿わせて下方へ誘導することができる。これにより、開ボタン4とケーシング2との隙間S1からケーシング2内部に液体が浸入した場合であっても、基板24等の電子部品への被水を抑制できる。また、液体が誘導形状部6を伝って下方へ流れることにより、浸入した液体を比較的狙った位置へ案内することができる。これにより、ケーシング2内の意図しない箇所での浸水を抑制できる。さらに、誘導形状部6は開ボタン4とケーシング2との隙間S1の真下に設けられるので、ケーシング2の隙間S1から浸入した液体が誘導形状部6に当たることにより、液体の勢いを弱めてより確実に誘導形状部6に沿わせて下方へ案内することができる。
したがって、ケーシング2内での浸水を効果的に抑制することができるサーマルプリンタ1を提供できる。
【0049】
誘導形状部6は、ケーシング2と、ケーシング2の内部に収容されたリリースレバー23(請求項の対向部品)と、の間に設けられる。この構成によれば、浸入した液体の流通経路がケーシング2とリリースレバー23とにより狭められるので、ケーシング2の隙間S1から浸入した液体が誘導形状部6と接触し易くなる。これにより、液体を誘導形状部6と接触させて液体の勢いを弱め、かつ誘導形状部6に沿わせて液体を下方へ案内することができる。よって、より効果的にケーシング2内での浸水を抑制できる。
【0050】
誘導形状部6は、リリースレバー23よりも下方まで延びている。この構成によれば、誘導形状部6がリリースレバー23よりも下方まで延びているので、ケーシング2とリリースレバー23との間を通過した後も、液体を誘導形状部6に沿わせることができる。これにより、ケーシング2とリリースレバー23との間を流れてきた液体が、リリースレバー23の終端部分(すなわちリリースレバー23の下端部)で飛び散ることを抑制し、浸入した液体を狙った位置へ案内することができる。よって、特にリリースレバー23よりも下方に基板24等の電子部品を配置する構成とした場合などに、これらの電子部品等への被水を抑制し、ケーシング2内での浸水を効果的に抑制できる。
【0051】
リリースレバー23よりも下方には基板24が設けられる。基板24は、上下方向から見てリリースレバー23よりもケーシング2の内側に配置される。誘導形状部6は、上下方向から見て基板24と重ならない位置に設けられる。この構成によれば、基板24はリリースレバー23よりもケーシング2の内側に設けられるので、ケーシング2とリリースレバー23との間を通って流れた液体を基板24にかかり難くすることができる。よって、ケーシング2内の特に基板24への浸水を抑制できる。基板24と誘導形状部6とが上下方向から見て重ならないように配置されるので、誘導形状部6を伝って流れた液体が基板24にかかることを抑制できる。よって、誘導形状部6により基板24への被水をより効果的に抑制できる。
【0052】
誘導形状部6は、開ボタン4の下方突出部47(本実施形態では第二の下方突出部49)と対応する位置に設けられる。この構成によれば、ケーシング2と開ボタン4との隙間S1から浸入した液体は、開ボタン4の下方突出部47を伝ってケーシング2内部へ浸入する。さらに、下方突出部47と対応する位置(例えば下方突出部47の真下)に誘導形状部6が設けられることにより、下方突出部47を伝って流れた液体が誘導形状部6に到達し易くなる。これにより、液体を誘導形状部6に沿わせて下方へ案内することができる。
【0053】
誘導形状部6は、ケーシング2の内壁に形成されたリブである。この構成によれば、簡素な構成により誘導形状部6を形成できる。特にケーシング2とリブとを一体形成した場合には、部品点数及び製造コストを削減することができる。
【0054】
ケーシング2の底面には、誘導形状部6によって誘導された液体を滞留させる滞留部26が設けられる。この構成によれば、誘導形状部6を伝って下方へ案内された液体は、ケーシング2の底面の滞留部26に溜まる。滞留部26に溜まった液体は、例えばサーマルプリンタ1を携行姿勢にしたときにケーシング2内部の流路を通って排水孔から排水される。このため、平置き姿勢用の排水孔を別途設ける必要がなく、また排水孔を大きくする必要もない。よって、構成の複雑化及び大型化を抑制しつつ、ケーシング2内に浸入した液体を排出できる。また、滞留部26が設けられることにより、誘導形状部6を伝って下方に案内された液体が集められるので、下方に案内された液体による基板24等への被水を抑制できる。よって、効果的にケーシング2内での浸水を抑制できる。
【0055】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係るサーマルプリンタ201においてケーシング2の内側を下方から見た斜視図である。図7は、第1実施形態の図6と対応する斜視図である。
第2実施形態では、誘導形状部206の形状及び材質等が上述した第1実施形態と相違している。
【0056】
図7に示すように、第2実施形態のサーマルプリンタ201は、第1実施形態と同様、開ボタン4とケーシング2との隙間S1(図4参照)よりも下方であって、かつこの隙間S1と対応する位置に設けられる誘導形状部206を有する。誘導形状部206は、少なくとも開ボタン4の第二の下方突出部49の真下に設けられている。本実施形態において、誘導形状部206は、左右方向から見て矩形状に形成されている。誘導形状部206は、ケーシング2の内壁からケーシング2の内側に向かって突出するように設けられている。また、誘導形状部206は、吸水部材により形成されている。すなわち、本実施形態の誘導形状部206は、例えば矩形状に形成された吸水性を有する部材(吸水部材)をケーシング2に張り付けることにより形成されている。この場合、矩形状の誘導形状部206のうち前後方向を向く一対の側面61,61が、誘導形状部206における上下方向に沿って延びる要素とされている。よって、第2実施形態において誘導形状部206は、左右方向から見て必ずしも縦長な形状である必要は無い。
【0057】
第2実施形態のサーマルプリンタ201によれば、誘導形状部206が液体の少なくとも一部を吸収するので、ケーシング2内に浸入した液体の勢いをより効果的に弱めることができる。また、液体が誘導形状部206の内部又は外表面(例えば、一対の側面61,61等)を伝って下方へ流れるので、液体を誘導形状部206に沿わせて下方へ案内することができる。
また、誘導形状部206がリブ状に形成された第1実施形態と比較して、誘導形状部206の上面62の面積を大きくできる。これにより、ケーシング2と開ボタン4との隙間S1から浸入した液体が誘導形状部206の上面62に接触し易くなり、液体の勢いを弱めることができる。よって、液体の飛散を抑制し、液体を効果的に誘導形状部206に沿わせて下方へ案内することができる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態ではリリースレバー23を対向部品としたが、これに限られない。ケーシング2に収容されたリリースレバー23以外の部品を対向部品としてもよい。この場合、その対向部品とケーシング2の内壁との間に誘導形状部6が設けられてもよい。
【0059】
開ボタン4は下方突出部47を1個のみ有してもよい。或いは、下方突出部47が3個以上設けられてもよい。開ボタン4が複数の下方突出部47を有する場合、そのうちいずれかの下方突出部47の真下に誘導形状部6を設けてもよい。複数の下方突出部47のうち特定の複数の下方突出部47の真下にそれぞれ誘導形状部6を設けてもよい。
【0060】
誘導形状部6が複数設けられてもよい。誘導形状部6が複数設けられた場合には、ケーシング2及び開ボタン4の隙間S1から浸入した液体と接触する面(上面)の面積が増加することで、液体の勢いをより弱め易い点で優位性がある。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 サーマルプリンタ
2 ケーシング(筐体)
3 ペーパーカバー(カバー)
4 開ボタン
5 印字ユニット
6,206 誘導形状部
23 リリースレバー(対向部品)
24 基板
26 滞留部
32 排出口(紙排出口)
47 下方突出部
51 ヘッドユニット
52 プラテンユニット
54 プラテンローラ
S1 (開ボタンとケーシングとの)隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7