(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013459
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】中性点キャップの製造方法および中性点端子装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/10 20060101AFI20240125BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20240125BHJP
H02K 3/38 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H02K15/10
H02K15/04 Z
H02K3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115554
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 一男
(72)【発明者】
【氏名】久田 秀樹
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604CC01
5H604DB26
5H604PB02
5H604PC04
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP14
5H615QQ02
5H615RR02
5H615RR04
5H615SS03
5H615SS11
5H615SS16
5H615SS18
5H615SS24
(57)【要約】
【課題】必要部分に重点的に絶縁紙を使用する中性点端子装置および中性点キャップの製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば中性点キャップの製造方法は、第1絶縁紙とその所定の範囲をカバーする第2絶縁紙とを重ねて積層絶縁紙とする積層ステップS01と、積層絶縁紙を巻回方向に巻いて巻回方向に垂直な方向を長手方向とする巻回体を形成する巻回ステップS02と、巻回体の長手方向の中間部を溶着させ溶着部を形成する溶着ステップS03と、溶着部の長手方向の中央を切断し溶着部を閉止部とする2つの中性点キャップを得る切断ステップS04と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁紙と前記第1絶縁紙内の所定の範囲をカバーする第2絶縁紙とを重ねて積層絶縁紙とする積層ステップと、
前記積層絶縁紙を巻回方向に巻いて前記巻回方向に垂直な方向を長手方向とする円筒を形成する巻回ステップと、
前記円筒の長手方向の中間部を溶着させ溶着部を形成する溶着ステップと、
前記溶着部の長手方向の中央を切断し、前記溶着部を閉止部とする2つの中性点キャップを得る切断ステップと、
を有することを特徴とする中性点キャップの製造方法。
【請求項2】
前記第2絶縁紙の前記巻回方向の幅は、前記積層絶縁紙において、前記巻回方向に前記第1絶縁紙の両端近傍に前記第2絶縁紙が重ならない幅であることを特徴とする請求項1に記載の中性点キャップの製造方法。
【請求項3】
前記積層絶縁紙において、前記巻回方向に前記第1絶縁紙の中央部分を除いた両側の部分に前記第2絶縁紙が当該第1絶縁紙にそれぞれ重なることを特徴とする請求項1に記載の中性点キャップの製造方法。
【請求項4】
前記積層絶縁紙において、前記第2絶縁紙は、前記第1絶縁紙の端部より前記巻回方向に突出していることを特徴とする請求項3に記載の中性点キャップの製造方法。
【請求項5】
前記切断ステップの後に、前記第2絶縁紙を、前記第1絶縁紙の前記閉止部まで挿入する押し込みステップをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の中性点キャップの製造方法。
【請求項6】
回転電機の多相巻線における中性点線の先端近傍部に被せられた金属スリーブと、
前記金属スリーブを覆うように、複数回巻かれた積層絶縁紙の一方の端部に閉止部が形成され他方の端部に開口部が形成された中性点キャップと、
を具備し、
前記積層絶縁紙は、
前記中性点キャップを構成する長方形の少なくとも一つの第1絶縁紙と、
長手方向に前記閉止部と前記開口部との間の所定の範囲に配された長方形の少なくとも一つの第2絶縁紙と、
を有することを特徴とする中性点端子装置。
【請求項7】
前記閉止部は前記第1絶縁紙のみに形成され、
前記所定の範囲は、前記中性点線の先端部の絶縁に必要な範囲である、
ことを特徴とする請求項6に記載の中性点端子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性点キャップの製造方法および中性点端子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の固定子巻線の中性点を形成する中性点端子装置は、固定子巻線のコイルエンド部とともにフレーム内に収納されている。中性点端子装置においては、各相の中性点線と各相の固定子巻線との間には、絶縁処理が施されている。具体的には、絶縁紙を材料とし複数回巻いて片端を溶着したキャップ、あるいは二重にキャップを被せている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中性点の中でも特に絶縁強度が必要な部分は、中性点線の先端部の銅線の切断面がむき出しになった部分である。しかしながら、端子先端部に対比して絶縁強度を必要としない部分まで、先端部と同様の構成材料で覆われており、絶縁紙材料を過剰に使用している。
【0005】
本発明の目的は、必要部分に重点的に絶縁紙を使用する中性点端子装置および中性点キャップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る中性点キャップの製造方法は、第1絶縁紙と前記第1絶縁紙内の所定の範囲をカバーする第2絶縁紙とを重ねて積層絶縁紙とする積層ステップと、前記積層絶縁紙を巻回方向に巻いて前記巻回方向に垂直な方向を長手方向とする円筒を形成する巻回ステップと、前記円筒の長手方向の中間部を溶着させ溶着部を形成する溶着ステップと、前記溶着部の長手方向の中央を切断し、前記溶着部を閉止部とする2つの中性点キャップを得る切断ステップと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る中性点端子装置を含む固定子巻線の構成を示す接続図である。
【
図2】第1の実施形態に係る中性点端子装置の構成を示す概念的な説明図である。
【
図3】第1の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順を示すフロー図である。
【
図4】第1の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第1の説明図である。
【
図5】第1の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第2の説明図である。
【
図6】第1の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第3の説明図である。
【
図7】第1の実施形態に係る中性点キャップの製造方法により製造された中性点キャップを示す第4の説明図である。
【
図8】第2の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第1の説明図である。
【
図9】第2の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第2の説明図である。
【
図10】第2の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第3の説明図である。
【
図11】第2の実施形態に係る中性点キャップの製造方法により製造された中性点キャップを示す第4の説明図である。
【
図12】第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順を示すフロー図である。
【
図13】第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第1の説明図である。
【
図14】第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第2の説明図である。
【
図15】第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順に沿った中性点端子装置に至る状態を示す第3の説明図である。
【
図16】第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法により製造された中性点キャップを示す第4の説明図である。
【
図17】第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法により製造された中性点キャップの仕上げ調整方法を示す第1の概念的な説明図である。
【
図18】第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法により製造された中性点キャップの仕上げ調整方法を示す第2の概念的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る中性点キャップの製造方法および中性点端子装置について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る中性点端子装置100を含む固定子巻線10の構成を示す接続図である。
【0010】
固定子巻線10は、U相巻線10a、V相巻線10b、およびW相巻線10cを有する。
図1は、三相交流回転電機において固定子巻線10がスター結線の場合を示している。
【0011】
U相巻線10a、V相巻線10bおよびW相巻線10cのそれぞれの第1の端部はU相端子11a、V相端子11bおよびW相端子11cに接続されている。U相巻線10a、V相巻線10bおよびW相巻線10cのそれぞれの第2の端部は、中性点端子装置100において、互いに接続されている。
【0012】
図1では、固定子巻線10が、U相巻線10a、V相巻線10b、およびW相巻線10cのスター結線を2組有する場合を示している。2組のスター結線は、
図1に示すように、U相端子11a、V相端子11bおよびW相端子11cにおいてそれぞれの相が接続されている。この場合、固定子巻線10は、2つの中性点端子装置100を有する。
【0013】
それぞれの中性点端子装置100は、図示しない固定子の軸方向の端部の外側において、固定子端部巻線とともに、図示しないフレーム内に収納されている。
【0014】
図2は、第1の実施形態に係る中性点端子装置100の構成を示す概念的な説明図である。
【0015】
中性点端子装置100は、中性点端子110および中性点キャップ120を有する。
【0016】
中性点端子110は、中性点線111の先端近傍部111a、および先端近傍部111aの外側を覆うように設けられた金属スリーブ112を有する。
【0017】
中性点線111は、U相巻線10a、V相巻線10bおよびW相巻線10cのそれぞれの第2の端部側が束ねられたものである。金属スリーブ112は、元々、円筒状であり、中性点線111の先端近傍部111aを覆った後に、加熱されかしめられる。この結果、金属スリーブ112は、断面が例えば楕円状あるいはトラック状となっている。金属スリーブ112が加熱されかしめられることにより、内側の先端近傍部111aの表面の例えばエナメルなどの絶縁材料が溶融し、金属スリーブ112と機械的および電気的に接続されている。
【0018】
なお、先端近傍部111aの先端は、外部から先端近傍部111aの金属スリーブ112内への収納の確認を容易とするために、通常、金属スリーブ112よりたとえば1mm程度突出するように金属スリーブ112が取り付けられる。
【0019】
中性点キャップ120は、巻回された積層絶縁紙122、積層絶縁紙122の長手方向の一方の端部に形成された閉止部125、および他方の端部に形成された開口部126を有する。
【0020】
中性点キャップ120は、その開口部126からその内部に、中性点端子110が挿入可能な寸法に形成される。
【0021】
図3は、第1の実施形態に係る中性点キャップ120の製造方法の手順を示すフロー図である。また、
図4ないし
図7は、第1の実施形態に係る中性点キャップ120の製造方法の手順に沿った中性点端子装置100に至る状態を示す第1ないし第4の説明図である。以下、
図3に沿って、
図4ないし
図7を引用しながら中性点キャップ120の製造方法の手順を説明する。
【0022】
まず、
図4に示すように、第1絶縁紙121aとその所定の範囲をカバーする第2絶縁紙121bとを重ねて積層絶縁紙122とする(ステップS01)。この際、接着剤を用いてもよいが、たとえば、接着剤を使用せずに、手押しで密着させて重ね合わせることでも充分である。
【0023】
第1絶縁紙121aと第2絶縁紙121bは、それぞれ長方形の絶縁紙である。絶縁紙としては、絶縁機能および中性点端子110を収納するに必要な強度を有していれば、特に材料は限定されないが、通常、樹脂を混入した絶縁紙が用いられる。このような絶縁紙としては、たとえば、河村産業株式会社の接着剤レス積層絶縁材料「ナムリ」(登録商標)、デュポン帝人アドバンスドパーパ「Nomex Type410」(Nomexは登録商標)等を用いることができる。
【0024】
図4に示すように、第1絶縁紙121aと所定の範囲をカバーする第2絶縁紙121bは、それぞれの辺が互いに平行となるように重ね合わされる。
【0025】
巻回方向には、第1絶縁紙121aと第2絶縁紙121bは、互いにほぼ同じ長さを有するが、必要な強度に合わせて第2絶縁紙121bを第1絶縁紙121aより短くすることでもよい。ここで、巻回方向とは、次のステップで巻回する方向を意味する。また、ほぼ同じ長さとは、同じ長さが好ましいが、たとえば1mm程度までの微小な範囲内では、いずれかが外側になっていてもよいことを意味する。巻回方向の長さは、後述するステップS02による巻回体123(
図5)における第1絶縁紙121aと第2絶縁紙121bの層数、あるいは、これらの厚みの合計が、後述するステップS03で適切に溶着が可能な上限値以下となるように設定される。
【0026】
長手方向には、第1絶縁紙121aの長さは、最終的な中性点キャップ120の長さを考慮してその2倍の長さに、さらに円筒から一部溶着のための変形による長さの減少分を考慮した余裕を加えた長さとする。第2絶縁紙121bの長手方向の長さは、第1絶縁紙121aの長手方向の長さより短い所定の長さを有する。また、第2絶縁紙121bの長手方向の両端は、第1絶縁紙121aより内側となるように積層される。
【0027】
ここで、所定の長さとは、最終的に中性点キャップ120が完成した状態において、第2絶縁紙121bが、中性点端子110の金属スリーブ112の最低限先端部分を覆うに必要な範囲となる長さを言うものとする。ただし、最内周の長手方向の長さが短い場合、金属スリーブ112挿入時の妨げとなる場合があることから、巻回方向の長さを最内周分短くすることでもよい。この所定の長さは、完成した中性点キャップ120の状態を確認しながら決定することができる。
【0028】
なお、以上の例では、第1絶縁紙121aと第2絶縁紙121bとがそれぞれ1枚ずつ用いられている場合を例にとって説明したが、いずれかあるいは両者が複数枚で積層絶縁紙122を形成する場合であってもよい。以下の実施形態でも同様である。
【0029】
次に、
図5に示すように、積層絶縁紙122を巻回して円筒状として巻回体123を形成する(ステップS02)。
【0030】
ステップS02では、ステップS01で作られた積層絶縁紙122を巻回方向に巻いて、巻回体123とする。巻回に際しては、巻芯を用いて行い、その後に巻芯を抜き取る方法によってもよい。
【0031】
巻回時の内径あるいは巻芯の外径は、巻回体123の内径が、最終的な中性点キャップ120の開口部126の周長に対応する寸法となるような径とする。
【0032】
次に、
図6に示すように、巻回体123の長手方向の中間部を溶着させ溶着部124を形成する(ステップS03)。
【0033】
ここで、溶着部124の長手方向の幅は、最終的な中性点キャップ120の閉止部125の長手方向の幅の2倍とする。
【0034】
溶着は、巻回体123の長手方向の中間部を押しつぶした状態で、たとえば、超音波によって行う。この際、前述のように、第1絶縁紙121aと第2絶縁紙121bの層数、あるいはこれらの厚みの合計が適切な範囲に設定されていることから、溶着が確実に行われる。
【0035】
この結果、第1絶縁紙121aおよび第2絶縁紙121bに混入された樹脂が溶融して溶着部124が形成される。
【0036】
次に、
図7に示すように、溶着部124の長手方向の中央で切断する(ステップS04)。
【0037】
この結果、2つの中性点キャップ120が得られる。それぞれの中性点キャップ120に中性点端子110を挿入することにより中性点端子装置100が形成される。
【0038】
このようにして得られた中性点端子装置100においては、中性点キャップ120の外表面部分は第1絶縁紙121aであるが、中性点端子110が挿入された範囲では第1絶縁紙121aに加えて第2絶縁紙121bが存在する積層絶縁紙122の領域となっている。この結果、必要部分に重点的に第2絶縁紙が配され、中性点端子110による中性点キャップ120の突き破り、あるいはエッジ切り等の不具合を防止することができる。
【0039】
[第2の実施形態]
図8ないし
図11は、第2の実施形態に係る中性点キャップ120aの製造方法の手順に沿った中性点端子装置100に至る状態を示す第1ないし第4の説明図である。
【0040】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、
図3のフロー図に示した中性点キャップ120の製造方法の手順は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態における第2絶縁紙121bに代えて2つの第2絶縁紙121cを用いる点が異なる。この点以外は、第1の実施形態と同様である。以下、
図3に沿って、
図8ないし
図11を引用しながら中性点キャップ120aの製造方法の手順を説明する。
【0041】
まず、
図8に示すように、第1絶縁紙121aとその所定の範囲をカバーする2つの第2絶縁紙121cとを重ねて積層絶縁紙122aとする(ステップS01a)。
【0042】
2つの第2絶縁紙121cは、それぞれ長方形の形状であり、巻回方向には、第1絶縁紙121aとほぼ同じ長さを有する。
【0043】
2つの第2絶縁紙121cは、長手方向に、互いに間隙部を介して隣接している。また、それぞれの第2絶縁紙121cの他方との隣接側と反対側の端辺は、第1絶縁紙121aより内側となるように積層される。
【0044】
2つの第2絶縁紙121c同士の間隙部の幅は、後のステップの溶着部124の長手方向の幅に余裕を加えた幅となるように設定される。ここで、余裕とは、第2絶縁紙121cが溶着部124の範囲に確実に入らないようにするために設けるものである。
【0045】
それぞれの第2絶縁紙121cの長手方向の長さは、最終的に中性点キャップ120が完成した状態において、第2絶縁紙121cが、中性点端子110の金属スリーブ112部分を覆うに必要な範囲となる長さとなるように設定される。
【0046】
次に、
図9に示すように、積層絶縁紙122aを巻回して円筒状として巻回体123aを形成する(ステップS02)。本ステップの内容は、第1の実施形態と同様である。
【0047】
次に、
図10に示すように、巻回体123aの長手方向の中間部を溶着させ溶着部124を形成する(ステップS03)。
【0048】
この際、溶着部124には、前述のように第2絶縁紙121cは存在せず、第1絶縁紙121aのみである。したがって、溶着を確実に行わせるために、第1の実施形態では、第1絶縁紙121aと第2絶縁紙121bの両者の層数あるいは厚みの合計を適切な範囲に設定するのに対して、本実施形態では、第1絶縁紙121aのみの層数あるいは厚みの合計を適切な範囲に設定すればよい。逆に言えば、第1絶縁紙121aと第2絶縁紙121bの両者の層数あるいは厚みの合計を、第1の実施形態におけるものより大きくすることができる。
【0049】
次に、
図11に示すように、溶着部124の長手方向の中央で切断する(ステップS04)。
【0050】
この結果、2つの中性点キャップ120aが得られる。それぞれの中性点キャップ120aに中性点端子110を挿入することにより中性点端子装置100が形成される。
【0051】
このようにして得られた中性点端子装置100においては、中性点キャップ120aの第1絶縁紙121aおよび第2絶縁紙121bの層数あるいは厚みの合計を大きくすることができ、中性点端子110による中性点キャップ120aの突き破り、あるいはエッジ切り等の不具合の防止効果を高めることができる。
【0052】
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法の手順を示すフロー図である。また、
図13ないし
図16は、第3の実施形態に係る中性点キャップ120bの製造方法の手順に沿った中性点端子装置100に至る状態を示す第1ないし第4の説明図である。
【0053】
本実施形態は、第2の実施形態の変形であり、ステップS01bが第2の実施形態のステップS01aと異なる点、およびステップS05をさらに有する点が、第2の実施形態と異なる。以下、
図12に沿って、
図13ないし
図16を引用しながら中性点キャップ120bの製造方法の手順を説明する。
【0054】
まず、
図13に示すように、第1絶縁紙121aとその所定の範囲をカバーする2つの第2絶縁紙121dとを重ねて積層絶縁紙122aとする(ステップS01b)。
【0055】
2つの第2絶縁紙121dは、それぞれ長方形の形状であり、巻回方向には、第1絶縁紙121aとほぼ同じ長さを有する。
【0056】
2つの第2絶縁紙121dは、第2の実施形態と同様に、長手方向に、互いに間隙部を介して隣接している。一方、それぞれの第2絶縁紙121cの他方との隣接側と反対側の端辺は、第2の実施形態とは異なり、第1絶縁紙121aより外側となるように積層される。
【0057】
2つの第2絶縁紙121c同士の間隙部の幅は、後のステップの溶着部124の長手方向の幅となるように設定される点は第2の実施形態と同様である。
【0058】
次に、
図14に示すように、積層絶縁紙122bを巻回して円筒状として巻回体123bを形成する(ステップS02)。本ステップの内容は、第2の実施形態と同様である。
【0059】
次に、
図15に示すように、巻回体123bの長手方向の中間部を溶着させ溶着部124を形成する(ステップS03)。この際、溶着部124には、第1絶縁紙121aのみである点は、第2の実施形態と同様である。
【0060】
次に、
図11に示すように、溶着部124の長手方向の中央で切断する(ステップS04)。この結果、2つの中性点キャップ120bが得られる。
【0061】
次に、ステップS04で得られた中性点キャップ120bの第2絶縁紙121dを閉止部125側に押し込み、ギャップg(
図17)を解消する(ステップS05)。以下、ステップS05の詳細を説明する。
【0062】
図17および
図18は、それぞれ、第3の実施形態に係る中性点キャップの製造方法により製造された中性点キャップ120bの仕上げ調整方法を示す第1および第2の概念的な説明図である。
【0063】
図17は、ステップS04で得られた中性点キャップ120bの状態を示す第1の概念的な断面図である。
【0064】
ステップS01では、2つの第2絶縁紙121d同士の間隙部の幅は、溶着部124の長手方向の幅に余裕を加えた幅となるように設定される。この結果、ステップS04で得られた中性点キャップ120bにおいては、
図17のG部に示すように、第2絶縁紙121dは、溶着部124により形成された閉止部125との間に、多かれ少なかれ、ギャップgが存在する。
【0065】
ギャップgが有意に存在する場合は、このギャップ部分では中性点キャップ120bは第1絶縁紙121aのみで構成されることになり、中性点端子110による中性点キャップ120bの突き破り、あるいはエッジ切り等の不具合の防止効果の低減要因となる。
【0066】
ギャップgは、開口部126側に第1絶縁紙121aより突出している第2絶縁紙121dの端部に力Fを加えて、第2絶縁紙121dを閉止部125に至るまで押し込むことにより解消することができる。第2絶縁紙121dの押し込みは、力Fを静的に加えてもよいし、あるいは、第2絶縁紙121dの開口部側の端部を軽く叩きながら押し込んでもよい。あるいは、平らな物の上で、開口部126を下にして中性点キャップ120bを立てて、閉止部125に力Fを静的に加えてもよいし、あるいは、閉止部125を軽く叩くことにより行ってもよい。
【0067】
図18は、ステップS04で得られた中性点キャップ120bの状態を示す第2の概念的な断面図である。第2絶縁紙121dを閉止部125に至るまで押し込んで、最終的な中性点キャップ120fが得られた状態を示している。
【0068】
以上のように、本第3の実施形態では、第2絶縁紙121dを閉止部125に至るまで押し込むことによって、特に中性点端子110の先端部を接触する部分に確実に第2絶縁紙121dを配することができる。この結果、中性点端子110による中性点キャップ120bの突き破り、あるいはエッジ切り等の不具合の防止効果をさらに確実に確保することができる。
【0069】
以上、説明した実施形態によれば、必要部分に重点的に絶縁紙を使用する中性点端子装置および中性点キャップの製造方法を提供することが可能となる。
【0070】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
10…固定子巻線、10a…U相巻線、10b…V相巻線、10c…W相巻線、11a…U相端子、11b…V相端子、11c…W相端子、100…中性点端子装置、110…中性点端子、111…中性点線、111a…先端近傍部、112…金属スリーブ、120、120a、120b…中性点キャップ、121…絶縁紙、121a…第1絶縁紙、121b、121c…第2絶縁紙、122、122a、122b…積層絶縁紙、123、123a、123b…巻回体、124…溶着部、125…閉止部、126…開口部