(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134590
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】シート取出装置およびシート取出方法
(51)【国際特許分類】
B65H 3/64 20060101AFI20240927BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20240927BHJP
B65H 3/50 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65H3/64 A
B65H3/48 310
B65H3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044857
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐子
(72)【発明者】
【氏名】石川 美里
(72)【発明者】
【氏名】砂押 貴光
(72)【発明者】
【氏名】小久保 高弘
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FA14
3F343FA20
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA16
3F343JD09
3F343JD13
3F343JD27
3F343JD28
3F343JD33
3F343JD40
3F343KB03
3F343KB04
3F343KB05
3F343LA13
3F343LB01
3F343LB08
(57)【要約】
【課題】容易にシートを分離して取り出すシート取出装置およびシート取出方法を提供する。
【解決手段】実施形態のシート取出装置は、底面部と、駆動機構と、搬送部と、制御部と、を持つ。前記底面部は、シートが積載される積載空間を上方に有する。前記駆動機構は、前記上方から前記シートを吸着可能な吸着部を有し、前記吸着部を移動可能である。前記搬送部は、前記シートを搬送可能であり、前記底面部よりも前記シートの搬送方向における下流側に設けられている。前記制御部は、前記駆動機構および前記搬送部を制御可能である。前記吸着部は、前記シートの前記搬送方向における上流側の端部を吸着し、前記シートの前記上流側の端部を最大分離角度以上に前記上方に曲げる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載される積載空間を上方に有する底面部と、
前記上方から前記シートを吸着可能な吸着部を有し、前記吸着部を移動可能な駆動機構と、
前記シートを搬送可能であり、前記底面部よりも前記シートの搬送方向における下流側に設けられた搬送部と、
前記駆動機構および前記搬送部を制御可能な制御部と、
を備え、
前記吸着部は、前記シートの前記搬送方向における上流側の端部を吸着し、前記シートの前記上流側の端部を最大分離角度以上に前記上方に曲げる、
シート取出装置。
【請求項2】
前記吸着部は、前記最大分離角度以上に曲げた前記シートである第一シートを前記上方に凸になるように湾曲させ、前記第一シートと、前記第一シートの下方に位置する前記シートである第二シートとを離間する、
請求項1に記載のシート取出装置。
【請求項3】
前記シートの剛性は、普通紙よりも高い、
請求項1に記載のシート取出装置。
【請求項4】
前記シートは、マグネットシートである、
請求項3に記載のシート取出装置。
【請求項5】
前記底面部の前記上流側に設けられ、前記下流側に送気可能な送気部を有する分離部をさらに備え、
前記分離部は、前記最大分離角度以上に曲げた前記シートである第一シートと、前記第一シートの下方に位置する前記シートである第二シートとの間に送気し、前記第一シートと前記第二シートとを離間する、
請求項1に記載のシート取出装置。
【請求項6】
前記底面部の前記上流側に設けられ、前記搬送方向と略垂直な前記シートの幅方向に延びる可動部材をさらに備え、
前記可動部材は、前記最大分離角度以上に曲げた前記シートである第一シートと、前記第一シートの下方に位置する前記シートである第二シートとの間を前記搬送方向に移動し、前記第一シートと前記第二シートとを離間する、
請求項1に記載のシート取出装置。
【請求項7】
前記底面部の前記下流側に設けられ、前記搬送方向と略垂直な前記シートの幅方向に延びる前壁部と、
前記底面部の前記幅方向における一方側に設けられ、前記搬送方向に延びる第一側壁部と、
前記底面部の前記幅方向における他方側に設けられ、前記搬送方向に延びる第二側壁部と、
前記シートの上下方向における高さを検出可能な検知部と、
をさらに備え、
前記底面部は、前記上下方向に移動可能である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシート取出装置。
【請求項8】
底面部の上方に積載された複数のシートを分離して取り出すシート取出装置におけるシート取出方法であって、
前記シートである第一シートの搬送方向における上流側の端部を最大分離角度以上に前記上方に曲げ、
前記第一シートを前記上方に凸になるように湾曲させ、
前記第一シートと、前記第一シートの下方に位置する前記シートである第二シートとを離間して前記第一シートを取り出す、
シート取出方法。
【請求項9】
底面部の上方に積載された複数のシートを分離して取り出すシート取出装置におけるシート取出方法であって、
前記シートの搬送方向における上流側の端部を最大分離角度以上に前記上方に曲げた前記シートである第一シートと、前記第一シートの下方に位置する前記シートである第二シートとの間に送気し、前記第一シートと前記第二シートとを離間して前記第一シートを取り出す、
シート取出方法。
【請求項10】
底面部の上方に積載された複数のシートを分離して取り出すシート取出装置におけるシート取出方法であって、
前記シートの搬送方向における上流側の端部を最大分離角度以上に前記上方に曲げた前記シートである第一シートと、前記第一シートの下方に位置する前記シートである第二シートとの間に、前記搬送方向と略垂直な前記シートの幅方向に延びる可動部材を前記搬送方向に移動させて前記第一シートと前記第二シートとを離間して前記第一シートを取り出す、
シート取出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シート取出装置およびシート取出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグネットシート等の着磁性を有する用紙を活用した広告、ポップ、掲示物、装飾用シート等の印刷物がある。これらの印刷物は、デジタル複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)等の手差しトレイに用紙(シート)を給紙して印刷される。マグネットシート等のシート間密着力が強力なシートにおいて、シート束から一枚のみを分離させることが困難であり、手差しトレイに一枚ずつ手動で給紙する必要があるために手間がかかる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、容易にシートを分離して取り出すシート取出装置およびシート取出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のシート取出装置は、底面部と、駆動機構と、搬送部と、制御部と、を持つ。前記底面部は、シートが積載される積載空間を上方に有する。前記駆動機構は、前記上方から前記シートを吸着可能な吸着部を有し、前記吸着部を移動可能である。前記搬送部は、前記シートを搬送可能であり、前記底面部よりも前記シートの搬送方向における下流側に設けられている。前記制御部は、前記駆動機構および前記搬送部を制御可能である。前記吸着部は、前記シートの前記搬送方向における上流側の端部を吸着し、前記シートの前記上流側の端部を最大分離角度以上に前記上方に曲げる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態に係るシート取出装置を備える画像形成装置の一例を示す斜視図。
【
図2】第一実施形態および第二実施形態に係るシート取出装置を模式的に示す斜視図。
【
図4】同シート取出装置におけるシート搬送動作を示す断面図。
【
図5】同シート取出装置における分離角度を示す断面図。
【
図6】同シート取出装置における最大分離角度および吸着部動作角度を示す断面図。
【
図7】同シート取出装置におけるシート曲げ方向を示す平面図。
【
図8】第一実施形態に係るシート取出装置におけるシート搬送動作を示す断面図。
【
図9】第二実施形態に係るシート取出装置におけるシート搬送動作を示す断面図。
【
図10】第三実施形態に係るシート取出装置を模式的に示す斜視図。
【
図11】同シート取出装置におけるシート搬送動作を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のシート取出装置およびシート取出方法を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0008】
(第一実施形態)
図1から
図8を参照して、第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るシート取出装置を備える画像形成装置の一例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係るシート取出装置を模式的に示す斜視図である。
【0009】
本実施形態では、
図2に示すように、シート取出装置160における鉛直方向を「上下方向V」、鉛直上向きを上下方向Vにおける「上方UP」、鉛直下向きを上下方向Vにおける「下方LO」と定義する。また、シートの搬送経路における搬送方向を「搬送方向D」、シートが搬送される向きを搬送方向Dにおける「下流側FR」、反対向きを搬送方向Dにおける「上流側RR」と定義する。また、シートにおける搬送方向と垂直な幅方向を「幅方向H」、下流側FRから見たときの左向きを幅方向Hにおける「左方LT」、反対向きを幅方向Hにおける「右方RT」と定義する。
【0010】
画像形成装置100は、シート(用紙)へ画像の形成を行う装置である。例えば、画像形成装置100は、MFP(Multi-Function Peripherals)、プリンタ、複写機等である。以下では、画像形成装置100が
図1に示すようなMFPである場合の例を説明する。
【0011】
画像形成装置100は、ディスプレイ110と、コントロールパネル120と、プリンタ部130と、シート収容部140と、画像読取部150と、シート取出装置160と、を備える。
【0012】
ディスプレイ110は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。ディスプレイ110は、画像形成装置100に関する種々の情報を表示する。
【0013】
コントロールパネル120は、複数のボタンを有する。コントロールパネル120は、ユーザの操作を受け付ける。コントロールパネル120は、ユーザによって行われた操作に応じた信号を、画像形成装置100を制御する制御装置(不図示)に出力する。なお、ディスプレイ110とコントロールパネル120とは一体のタッチパネルとして構成されてもよい。
【0014】
プリンタ部130は、ディスプレイ110、コントロールパネル120、および画像読取部150等から出力された各種情報を用いて、一連の印刷動作を行う。一連の印刷動作は、画像情報を入力する動作、画像を形成する動作、形成した画像をシートに転写する動作、およびシートを搬送する動作などを含む。
【0015】
シート収容部140は、シートを収容するシートカセットであり、シートが収容される。ユーザは、シート収容部140を引き出してシートを収容できる。画像形成装置100には、複数のシート収容部140が設けられてもよい。シート収容部140に収容されたシートはプリンタ部130に搬送され、印刷動作を施される。
【0016】
画像読取部150は、読み取り対象の画像情報を例えばCCDセンサで読み取る。画像読取部150は、読み取られた画像情報を記録する。記録された画像情報は、ネットワークを介して他の情報処理装置に送信されてもよい。記録された画像情報は、プリンタ部130によってシート上に画像形成されてもよい。
【0017】
シート取出装置160は、シート収容部140の内部に設けられ、収容されたシートの搬送動作を行う。
【0018】
図3は、
図2に外観を示したシート取出装置160の機能ブロック図である。
シート取出装置160は、底面部10と、第一側壁部21と、第二側壁部22と、前壁部23と、搬送部30と、検知部40と、駆動機構50と、吸着脱着機構70と、制御部90と、を備える。なお、検知部40は、
図2には図示していない。
【0019】
底面部10は、シート束Sを収容する基部であり、シートが積載される積載空間10sを上方UPに有する。底面部10は、上方UPの面にシート束Sを積載するのに十分な面積を有する平板状の部材である。本実施形態において、底面部10の上方UPの面は、A4サイズのシートを積載可能な面積を有する。また、上方UPからの平面視において、底面部10は長方形をしており、長辺が搬送方向Dに延びている。底面部10の形状はこれに限られず、上方UPにシート束Sを積載可能な形状を有していればよい。
【0020】
また、底面部10は、上下方向Vに移動可能である。底面部10は、例えば、底面部10の下方LOに、電動モータによって上下方向Vに駆動する装置を設ける。または、下方LOに圧縮バネを有し、圧縮バネの付勢力によって上下方向Vに移動する。底面部10の上下方向Vにおける移動の詳細については後述する。
【0021】
第一側壁部21は、底面部10の左方LT(幅方向Hにおける一方側)に設けられ、搬送方向Dに延びる平板状の部材である。
図2に示すように、第一側壁部21の上下方向Vにおける高さは、底面部10の上方UPの面よりも高い。そのため、第一側壁部21は、底面部10の積載空間10sに積載されるシートにおける幅方向Hの位置を規制するためのガイド機能を有する。第一側壁部21の高さは、積載するシートの枚数や厚さによって任意の高さを採用できる。
【0022】
また、第一側壁部21の搬送方向Dにおける寸法は、シートのガイドとして機能するための十分な長さを有していればよく、積載するシートのサイズによって任意の寸法を採用できる。
【0023】
第二側壁部22は、底面部10の右方RT(幅方向Hにおける他方側)に設けられ、搬送方向Dに延びる平板状の部材である。
図2に示すように、第二側壁部22の上下方向Vにおける高さは、底面部10の上方UPの面よりも高い。そのため、第二側壁部22は、底面部10の積載空間10sに積載されるシートにおける幅方向Hの位置を規制するためのガイド機能を有する。第二側壁部22の高さは、積載するシートの枚数や厚さによって任意の高さを採用できる。
【0024】
また、第二側壁部22の搬送方向Dにおける寸法は、シートのガイドとして機能するための十分な長さを有していればよく、積載するシートのサイズによって任意の寸法を採用できる。
【0025】
前壁部23は、底面部10の下流側FRに設けられ、幅方向Hに延びる平板状の部材である。
図2に示すように、前壁部23の上下方向Vにおける高さは、底面部10の上方UPの面よりも高い。そのため、前壁部23は、底面部10の積載空間10sに積載されるシートにおける搬送方向Dの位置を規制するためのガイド機能を有する。前壁部23の高さは、積載するシートの枚数や厚さによって任意の高さを採用できる。
【0026】
また、前壁部23の幅方向Hにおける寸法は、シートのガイドとして機能するための十分な長さを有していればよく、積載するシートのサイズによって任意の寸法を採用できる。
【0027】
また、積載空間10sに積載されたシート束Sにおいて、最も上方UPに位置するシートは、搬送部30によって下流側FRへ搬送される。このとき、前壁部23は、上方UPから2枚目以降に位置するシートが、下流側FRに移動するのを防ぐ機能を有する。そのため、前壁部23の上下方向Vにおける高さは、積層されたシートにおける最も上方UPに位置するシートよりも低く、上方UPから2枚目に位置するシートが位置する高さと同程度が望ましい。
【0028】
搬送部30は、第一搬送部31と、第二搬送部32と、第三搬送部33と、を備える。搬送部30は、積載空間10sに積載されたシート束Sにおいて、最も上方UPに位置するシートを下流側FRに搬送する。搬送部30によって搬送されたシートは、プリンタ部130に送られ、印刷を施される。
【0029】
第一搬送部31は、底面部10の下流側FRの端部(前端)に設けられている。また、第一搬送部31は、積載空間10sに積載されたシートよりも上方UPに設けられている。
【0030】
第一搬送部31は、幅方向Hに延びる略円柱又は略円筒であり、中心軸を回転中心として回転可能なローラーである。本実施形態において、第一搬送部31は、左方LTから見たとき、反時計回りに回転する。
【0031】
左方LTから見たときに反時計回りに回転する第一搬送部31と、シートの上方UPの面とが接触することで、シートは、第一搬送部31によって下流側FRへ搬送される。
【0032】
第二搬送部32は、前壁部23の下流側FRに設けられている。また、第二搬送部32は、前壁部23の上端よりも上方UPに設けられている。また、第一搬送部31と第二搬送部32との上下方向Vにおける位置は、ほぼ同じである。
【0033】
第二搬送部32は、幅方向Hに延びる略円柱又は略円筒であり、中心軸を回転中心として回転可能なローラーである。本実施形態において、第二搬送部32は、左方LTから見たとき、反時計回りに回転する。
【0034】
第三搬送部33は、前壁部23の下流側FRに設けられている。また、第三搬送部33は、第二搬送部32の下方LOに設けられている。
【0035】
第三搬送部33は、幅方向Hに延びる略円柱又は略円筒であり、中心軸を回転中心として回転可能なローラーである。本実施形態において、第三搬送部33は、左方LTから見たとき、時計回りに回転する。
【0036】
第一搬送部31によって下流側FRへ搬送されたシートは、続いて第二搬送部32および第三搬送部33によってさらに下流側FRへ搬送される。シートは、左方LTから見たときに反時計回りに回転する第二搬送部32と、左方LTから見たときに時計回りに回転する第三搬送部33との間に上下方向Vに挟まれ、第二搬送部32および第三搬送部33と接触することで下流側FRへ搬送される。そのため、第二搬送部32に対する第三搬送部33の上下方向Vにおける位置は、シートの厚さによって任意の位置を設定できる。
【0037】
なお、第三搬送部33は、シートが2枚重なって下流側FRへ搬送されるのを抑制するように、左方LTから見たときに反時計回りに回転してもよい。例えば、第三搬送部33にワンウェイクラッチ構造を設け、第二搬送部32と第三搬送部33との間を通過するシートが1枚のときは左方LTから見たときに時計回りに回転するようにし、シートが2枚のときは左方LTから見たときに反時計回りに回転するようにして2枚目(下方LO)のシートが下流側FRに搬送されるのを防ぐようにしてもよい。
【0038】
検知部40は、積載空間10sに積載されたシート束Sにおける最も上方UPに位置するシートの高さを検出可能な検出器である。検知部40は、例えば、フォトセンサなどである。具体的には透過型フォトセンサと回転動作するレバーを一体化させたセンサを用いると、シート束Sの最上面が所定の高さに到達した時にレバーに接触して回動動作させることにより、フォトセンサの光路をレバーで遮断することで高さを検知することが可能である。
【0039】
また、搬送前のシートの上方UPの面と第一搬送部31とが接触するように第一搬送部31を配置し、第一搬送部31の高さを検知部40によって検出することでシートの高さを検出してもよい。このとき、搬送前のシートの上方UPの面に第一搬送部31が常に接触するように第一搬送部31が上下方向Vに移動してもよいし、底面部10における上下方向Vの移動によってシートの上方UPの面と第一搬送部31とが接触するようにしてもよい。
【0040】
例えば、底面部10の下方LOに前述の圧縮バネを設ける。シートが下流側FRへ搬送されることで積載されたシート束Sの枚数が減った場合、シート束Sの重さによって底面部10を下方LOへ押す力よりも、圧縮バネの付勢力によって底面部10を上方UPへ押す力が強くなることで底面部10が上方UPへ移動し、底面部10の上下方向Vにおける高さが一定に維持される。そのため、シート束Sの枚数が減っても、第一搬送部31の高さは変えずに、シートの上方UPの面と第一搬送部31とが接触するようにできる。
検知部40によって検出された検出結果は、制御部90へ送信される。
【0041】
駆動機構50は、吸着部60を先端に有し、吸着部60を任意の軌道で移動可能である。駆動機構50は、例えば、多軸リンク機構であり、その先端についている吸着部60を様々な位置姿勢に保持することが可能である。また、駆動機構50は、吸着部60が所定の軌道で移動できればよく、吸着部60を一定の軌道で移動可能にするレール機構等であってもよい。
【0042】
吸着部60は、シートを吸着可能な吸着パッドである。吸着部60は、駆動機構50によって所定の位置に移動し、シートを吸着して保持する。例えば、ゴムまたは樹脂製で胴体が蛇腹状となっており、吸着部先端が把持する物体にならいやすいものなどが挙げられる。
【0043】
吸着脱着機構70は、吸着部60における吸着および解放動作を制御する装置である。吸着脱着機構70は、例えば真空ポンプであり、吸気管61を介して吸着部60と連通している。吸着脱着機構70が駆動されることで、吸着部60内の圧力が大気圧よりも低くなり、吸着部60によりシートが吸着保持される。
【0044】
また、吸着脱着機構70は、大気解放を実施する解放弁を備える。吸着脱着機構70は、解放弁を開いて大気解放し、吸着部60内の圧力を大気圧と同程度にすることでシートを吸着部60から解放する。
【0045】
制御部90は、搬送部30、検知部40、駆動機構50および吸着脱着機構70を制御可能である。また、制御部90は、底面部10を制御可能であってもよい。底面部10の上下方向Vにおける移動において、例えば、底面部10の下方LOに、電動モータによって上下方向Vに駆動する装置を設け、制御部90によって電動モータを制御することで底面部10の高さを変更してもよい。また、制御部90は、検知部40が検出した検出結果に基づいて底面部10の高さを変更してもよい。
【0046】
シート取出装置160は、制御部90によって制御され、シートの搬送(取出し)動作を行う。制御部90は、画像形成装置100の全体を制御してもよい。また、制御部90は、シート取出装置160に含まれず、画像形成装置100のプリンタ部130等を制御する制御装置に含まれてもよい。
【0047】
制御部90は、例えば、プロセッサとメモリと記憶部等を備えたプログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。制御部90の各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)又はGPU(Graphics Processing Unit;グラフィックスプロセッサ)のような1つ以上のプロセッサがプログラムメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。ただし、これら機能の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。また、上記機能の全部又は一部は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。記憶部は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory;読み出し専用メモリ)、又はRAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)等により実現される。
【0048】
次に、シート取出装置160におけるシート取出方法について説明する。
図4は、シート取出装置160におけるシート搬送動作を示す断面図である。ここで、底面部10の上方UPに積載されたシートは、A4サイズのマグネットシートである。シートは、マグネットシートに限られず、普通紙より剛性が高く、かつ、シート間の密着力が大きいシートであればよい。
【0049】
制御部90は、駆動機構50および吸着脱着機構70を制御することで、吸着部60に以下のシート取出動作を実現させる。
まず、吸着部60は、シートの上方UPに吸着し、シートを吸着保持する(
図4(a))。このとき、吸着部60は、シートの上流側RRの端部(後端)を吸着保持する。
【0050】
ここで、吸着部60が吸着保持しているシートは、シート束Sの最も上方UPに位置する第一シートS1である。また、第一シートS1の下方LOに位置する2枚目のシートを、第二シートS2とする。
【0051】
次に、吸着部60は、第一シートS1を上方UPへ持ち上げつつ回転し、第一シートS1を上方UPに曲げる(
図4(b))。ここで、吸着部60は、左方LTから見たとき、時計回りに回転して第一シートS1を曲げる。このとき、シートの下流側FRの端部の位置が上流側RRに引き込まれる力が極力働かないような軌道を吸着部60はとる。また、このとき、シート間の密着力が大きいため、第一シートS1と第二シートS2は密着したままであることが多い。
【0052】
次に、吸着部60は、さらに時計回りに回転して第一シートS1を上方UPへ曲げる(
図4(c))。このとき、吸着部60は、第一シートS1から第二シートS2が分離する時の角度(分離角度)以上に第一シートを曲げるように吸着部60を動作させる。ここで、分離角度を
図5を用いて詳細に説明する。
図5は、シート取出装置160における分離角度αを示す断面図である。分離角度αは、シート束Sの最上面のシート(第一シートS1)の上流側RRの端部(後端)を吸着部60で吸着保持し、シート束Sの最上面を基準に第一シートS1を
図5の時計回りに曲げたときに、第一シートS1に密着して一緒に曲げられた後続のシート(第二シートS2)が第一シートS1と分離するときの、吸着面と基準面とがなす角度である。この分離角度αはシート間によってばらつく。そこで、シートがとりうる分離角度αの最大値を予め計測しておき、最大分離角度を求めておく。第一シートS1を吸着保持した吸着部60の先端部(後述の吸着部先端64)を最大分離角度以上に曲げることで、第一シートS1と第二シートS2とが離間し、第一シートS1のみが吸着部60に吸着保持されている。ここで、曲げによってシートに折れ目などのキズが付かないように、吸着部60を動作させるときは、曲げ半径Rを大きくとることが望ましいが、シートにダメージを与えない曲げ半径であれば、曲げ半径Rが小さい方が吸着部の高さ方向を低くできるメリットもある。
【0053】
このとき、第一シートS1および第二シートS2は、普通紙より剛性が高いシートである。そのため、第二シートS2は、第二シートS2の剛性によって、最大分離角度以上に曲げられた第一シートS1に追従せず、第一シートS1から離間する。
【0054】
シートの剛性によって第二シートS2が第一シートS1から離間する力(シートの分離力)は、第一シートS1と第二シートS2との密着力(シート間磁力)よりも大きい。また、吸着部60が第一シートS1を吸着する力(シート吸着力)は、シート分離力よりも大きい。
【0055】
本実施形態において、マグネットシートの分離角度αを実測すると100度±15度であった。(なお、はじめから第二シートが第一シートに密着しない場合もあった。)本シートの場合、誤差も含めて最大分離角度を120度とみなした。吸着部60の先端部を最大分離角度以上まで動作させることで確実にシートを分離できる。ここで、吸着部を動作させる角度とシートの分離角度とは異なっていてもよい。
図6は、最大分離角度α
maxおよび吸着部動作角度βを示す断面図である。吸着部60は、
図6に示すように、吸着支持部62と、吸着部胴体63と、吸着部先端64と、を有する。吸着部動作角度βは、吸着支持部62と基準面とがなす角度である。吸着部胴体63が蛇腹形状等を有して変形可能な場合、シートを吸着保持している吸着部先端64と基準面とのなす角度である最大分離角度α
maxと、吸着部動作角度βとは一致するとは限らない。そのため、吸着部先端64を最大分離角度α
max以上(例えば120度)にするには、吸着部を動作させる角度(吸着部動作角度β)は吸着パッドの変形分なども考慮して余分に角度を大きく設定する必要があることに留意する。
搬送するシートの種類、サイズ、向きなどによって予め最大分離角度α
maxや許容される曲げ半径Rを求めておき、吸着部動作角度βや吸着部60の動作軌跡をシートに応じて設定し、シートに最適な条件で運用すると汎用性が広がる。
吸着部動作角度βは、
図4(c)に示す工程において、第一シートS1を上方UPに曲げて第一シートS1と第二シートS2とを離間できる角度である。このとき、第一シートS1および第二シートS2の上流側RRの端部が離間し、下流側FRの端部は密着したままである。
【0056】
また、第一シートS1を曲げる曲げ半径Rおよび吸着部動作角度βは、シートに折れ目がつかない範囲内で設定する。
【0057】
ここで、吸着部60が第一シートS1を最大分離角度α
max以上に曲げる際の曲げ方向について説明する。
図7は、シート取出装置160におけるシート曲げ方向を示す平面図である。
図7(a)は、吸着部60が、第一シートS1の上流側RRの端部において、幅方向Hにおける中心を吸着保持したときの平面図である。
図7(b)は、吸着部60が、第一シートS1の上流側RRの端部において、幅方向Hにおける左方LTの端部を吸着保持したときの平面図である。
【0058】
吸着部60は、吸着保持した第一シートS1を上方UPに曲げるとき、第一シートS1の中心Oに向かう方向に曲げるのが望ましい。第一シートS1の上流側RRの端部を吸着保持した吸着部60において、第一シートS1の中心Oに向かう方向に第一シートS1を曲げることで、第二シートS2と密着した第一シートS1を容易に上方UPへ持ち上げることができる。また、第一シートS1を最大分離角度αmax以上に曲げて第一シートS1と第二シートS2とを離間させるとき、第一シートS1の中心Oに向かう方向に第一シートS1を曲げることで、第一シートS1と第二シートS2とを容易に離間させることができる。
【0059】
吸着部60が第一シートS1を曲げる方向は、第一シートS1の中心Oに向かう方向に限られず、例えば、
図7(b)に示す吸着部60の場合、第一シートS1の幅方向Hにおける中心に向かう方向(右方RT)へ曲げてもよいし、右方RTに対して下流側FRへ45度傾いた方向に曲げてもよい。
【0060】
なお、吸着部60が吸着保持する第一シートS1における上流側RRの端部は、最も上流側RRの端の部分に限られず、例えば、吸着部60は、第一シートS1の上流側RRの端から下流側FRに10mmの部分を吸着保持してもよい。吸着部60は、第一シートS1において、中心Oよりも上流側RRを吸着保持するのが望ましく、上流側RRの端の近傍を吸着保持するのがより望ましい。
本明細書において、第一シートS1(シート)の上流側RRの端部とは、第一シートS1における上流側RRの端の近傍を示す。
【0061】
図8は、シート取出装置160におけるシート搬送動作を示す断面図である。
図8は、
図4に示すシート搬送動作の続きの動作である。
【0062】
吸着部60は、
図4(c)で最大分離角度α
max以上に曲げた第一シートS1において、第一シートS1が上方UPに凸になるように湾曲させる(
図8(a))。このとき、吸着部60は、第一シートS1を最大分離角度α
max以上に曲げたときと反対方向に回転する。すなわち、吸着部60は、左方LTから見たとき、反時計回りに回転することで、上方UPに凸になるように第一シートS1を湾曲させる。
【0063】
吸着部60は、第一シートS1を上方UPに凸になるように湾曲させることで、下流側FRにおいて、第一シートS1と第二シートS2とを離間する。
【0064】
このとき、第一シートS1および第二シートS2は、普通紙より剛性が高いシートである。そのため、第二シートS2は、第二シートS2の剛性によって、上方UPに凸になるように湾曲した第一シートS1に追従せず、第一シートS1から離間する。
【0065】
次に、吸着部60は、第一シートS1を下流側FRへ搬送する。ここで、第一搬送部31はある程度上下方向Vに移動できると、第一シートS1の剛性により第一搬送部31の下方LOの第一シートS1と第二シートS2間が離間しやすくなり、なおよい。第一シートS1を下流側FRへ搬送するのとほぼ同時に搬送部30を回転させ、第一シートS1を下流側FRへ搬送する(
図8(b))。また、このとき、制御部90は、吸着脱着機構70を制御し、搬送部30を回転させるのとほぼ同時に吸着部60を大気解放し、第一シートS1を吸着部60から解放する。吸着部60から解放された第一シートS1は、搬送部30によって下流側FRに取り出される。
図8(b)で吸着部60が第一シートS1を解放した後、吸着部60は動作角度を初期の0度に戻しながら次の最上面シート(この場合、第二シートS2)の上流側RRの端部(後端)上方のある位置に戻る(この位置をホームポジションとする)。以降、ホームポジションから
図4、
図8に示した動作を繰り返すことにより、次々とシートを取り出すことができる。
ここで、次のシートを吸着する動作(
図4(a))は、前のシートの後端(上流側RR側)が第一搬送部31を超える前にすることでシートの搬送時間の短縮になる。さらには、前のシート搬送中に、次のシートを吸着しておくことにより、前のシートによって次のシートが引きずられることを防止できるため、重送防止にもなる。
また、次のシートを上方UPに凸に変形させ前進させる動作(
図8)は、前のシートの後端が第二搬送部32と第三搬送部33間を超えてから行うことでシートの重送防止になる。
【0066】
上述のシート取出方法によって、第一シートS1と第二シートS2における上流側RRおよび下流側FRが離間し、第一シートS1のほぼ全面は、第二シートS2から離間する。第二シートS2から離間した第一シートS1を搬送部30によって下流側FRへ搬送することで、シート束Sから第一シートS1のみを分離させて取り出すことができる。
【0067】
また、上述のシート取出方法を繰り返すことで、シート束Sにおける上方UPから1枚目のシートを2枚目のシートから分離して、シート束Sから1枚ずつシートを下流側FRへ搬送する。シート束Sの枚数が減るにつれてシート束Sの上下方向Vにおける高さが低くなるが、底面部10を上方UPに移動させることでシート束Sにおける上方UPの高さを維持できる。このとき、底面部10の高さを変えずに、搬送部30や前壁部23の上下方向Vにおける位置を制御部90によって制御してもよい。
【0068】
本実施形態のシート取出装置160によれば、シート取出装置160は、シートが積載される積載空間10sを上方UPに有する底面部10と、駆動機構50に設けられてシートを吸着可能な吸着部60と、シートを下流側FRに搬送可能な搬送部30と、制御部90と、を備える。制御部90によって駆動機構50を制御し、第一シートS1を吸着した吸着部60を所定の軌道で移動させることで、第一シートS1と第二シートS2とを分離し、搬送部30によって第一シートS1のみを下流側FRへ取り出す。
【0069】
具体的には、吸着部60は、第一シートS1の上流側RRの端部を吸着し、第一シートS1を上方UPに最大分離角度αmax以上に曲げることで第一シートS1と第二シートS2とを分離する。最大分離角度αmax以上に曲げた第一シートS1において、第一シートS1が上方UPに凸になるように湾曲させることで、第一シートS1の全面を第二シートS2から分離させることができる。その結果、第一シートS1と第二シートS2との密着力が大きいマグネットシート等のシートであっても、シート束Sから第一シートS1のみを分離させて搬送部30によって下流側FRへ取り出すことができる。
【0070】
(第二実施形態)
第二実施形態に係るシート取出装置160Aについて、
図2および
図9を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0071】
シート取出装置160Aは、
図2に示すように、底面部10と、第一側壁部21と、第二側壁部22と、前壁部23と、搬送部30と、検知部40と、駆動機構50と、吸着脱着機構70と、分離部80Aと、制御部90Aと、を備える。
【0072】
分離部80Aは、底面部10の上流側RRに設けられ、下流側FRへ送気可能な送気装置である。分離部80Aは、分離部80Aの下流側FRに設けられた送気部81Aから下流側FRへ送気する。
【0073】
制御部90Aは、搬送部30、検知部40、駆動機構50、吸着脱着機構70および分離部80Aを制御可能である。制御部90Aによって分離部80Aを制御することで、送気部81Aから下流側FRへ送気を行う。
【0074】
また、制御部90Aは、底面部10を制御し、底面部10の高さを変更してもよい。また、制御部90Aは、検知部40が検出した検出結果に基づいて底面部10の高さを変更しても良い。
【0075】
シート取出装置160Aは、制御部90Aによって制御され、シートの搬送(取出し)動作を行う。制御部90Aは、画像形成装置100の全体を制御してもよい。また、制御部90Aは、シート取出装置160Aに含まれず、画像形成装置100のプリンタ部130等を制御する制御装置に含まれてもよい。
【0076】
制御部90Aは、例えば、プロセッサとメモリと記憶部等を備えたプログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。制御部90Aの各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)又はGPU(Graphics Processing Unit;グラフィックスプロセッサ)のような1つ以上のプロセッサがプログラムメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。ただし、これら機能の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。また、上記機能の全部又は一部は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。記憶部は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory;読み出し専用メモリ)、又はRAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)等により実現される。
【0077】
次に、シート取出装置160Aにおけるシート取出方法について説明する。
図9は、シート取出装置160Aにおけるシート搬送動作を示す断面図である。
図9(a)は、第一実施形態の
図4(c)と同様に、吸着部60によって最大分離角度α
max以上に曲げた第一シートS1を示す断面図である。本実施形態に係るシート取出方法において、第一シートS1を最大分離角度α
max以上に曲げる動作については、第一実施形態にて説明した
図4に示す吸着部60の動作と同様である。
【0078】
本実施形態に係るシート取出装置160Aにおいて、分離部80Aは、最大分離角度α
max以上に曲げた第一シートS1と最大分離角度α
max以上に曲げることによって第一シートS1から離間した第二シートS2との間に送気部81Aから送気する(
図9(b))。このとき、
図9(b)に示すように、吸着部60は、第一シートS1を最大分離角度α
max以上に曲げたときと反対方向に回転する。すなわち、吸着部60は、左方LTから見たとき、反時計回りに回転する。また、吸着部60を反時計回りに回転させるのとほぼ同時に送気部81Aから下流側FRへ送気する。
【0079】
図9(a)に示すように、第一シートS1を最大分離角度α
max以上に曲げることで第一シートS1と第二シートS2とは上流側RRにおいて離間する。上流側RRが離間した第一シートS1および第二シートS2の間に送気部81Aから送気することで、送気された空気の風圧によって第一シートS1と第二シートS2との下流側FRが離間する。
【0080】
また、このとき、最大分離角度αmax以上に曲げた第一シートS1の上流側RRの端部において、吸着部60を反時計回りに回転させて第一シートS1の角度を戻すことで、送気部81Aから送気された空気が第一シートS1よりも上方UPに漏れることを抑制し、第一シートS1と第二シートS2との間に十分な量の空気を送気することができる。
【0081】
また、シート束Sの左方LTおよび右方RTは第一側壁部21および第二側壁部22によって覆われているため、送気した空気が左方LT又は右方RTに漏れるのを抑制できる。送気部81Aから送気する空気の流量や流速等は、搬送するシートの密着力や重量等によって任意の値を設定できる。
【0082】
次に、吸着部60から第一シートS1を解放し、第一シートS1を解放するのとほぼ同時に搬送部30を回転させ、第一シートS1を下流側FRへ搬送して取り出す(
図9(c))。
【0083】
本実施形態のシート取出装置160Aによれば、シート取出装置160Aは、シートが積載される積載空間10sを上方UPに有する底面部10と、駆動機構50に設けられてシートを吸着可能な吸着部60と、シートを下流側FRに搬送可能な搬送部30と、下流側FRに送気可能な送気部81Aを有する分離部80Aと、制御部90Aと、を備える。最大分離角度αmax以上に曲げた第一シートS1と、第二シートS2との間に送気部81Aから空気を送気することで、風圧によって第一シートS1および第二シートS2における下流側FRの端部を離間させる。
【0084】
その結果、第一シートS1と第二シートS2との密着力が大きいマグネットシート等のシートであっても、シート束Sから第一シートS1のみを分離させて搬送部30によって下流側FRへ取り出すことができる。
本実施形態のメリットは、隙間を開けるためにエア分離を使うことで
図8(a)および
図8(b)に示した吸着部60の動きが不要となり、その動作範囲が小さくなることで、駆動部(駆動機構50)を小型にすることができ、カセット付近の狭い空間内に駆動機構50を省スペースで配することができる点にある。
【0085】
(第三実施形態)
第三実施形態に係るシート取出装置160Bについて、
図10および
図11を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0086】
図10は、第三実施形態に係るシート取出装置160Bを模式的に示す斜視図である。
シート取出装置160Bは、底面部10と、前壁部23と、搬送部30と、検知部40と、駆動機構50と、吸着脱着機構70と、分離部80Bと、制御部90Bと、を備える。なお、検知部40は、
図10には図示していない。
【0087】
分離部80Bは、レール部82Bと、支持部83Bと、可動部材84Bと、ガイド部85Bと、を備える。
【0088】
レール部82Bは、例えば、電動モータ、ボールねじおよびリニアガイドで構成されたリニアスライダである。
図10に示すように、レール部82Bは、底面部10の右方RTに設けられ、搬送方向Dに延びる平板状の部材である。また、レール部82Bの上方UPの面には、リニアスライダにおけるレール部分が設けられている。
【0089】
また、レール部82Bの上下方向Vにおける高さは、底面部10の上方UPの面よりも高い。レール部82Bは、第一実施形態における第二側壁部22と同様に、底面部10の積載空間10sに積載されるシート束Sにおける幅方向Hの位置を規制するためのガイド機能を有していてもよい。レール部82Bの高さは、積載するシートの枚数や厚さによって任意の高さを採用できる。
【0090】
支持部83Bは、レール部82Bにおける搬送方向Dに延びるレール上を移動可能である。支持部83Bは、例えば、リニアスライダのキャリッジ(ブロック)であり、電動モータによりボールねじが回転することでレール部82Bに沿って搬送方向Dに移動する。
【0091】
可動部材84Bは、支持部83Bから左方LTに延びる略棒状の部材である。また、可動部材84Bは、底面部10の上流側RRに設けられている。本実施形態において、可動部材84Bは、長軸が搬送方向Dに延びる楕円状の断面形状を有する。可動部材84Bの形状はこれに限られず、三角形や方形の断面形状を有していてもよい。また、幅方向Hにおいて、可動部材84Bは、ガイド部85Bの上方UPまで伸びている。
可動部材84Bは、支持部83Bとともに搬送方向Dに移動可能である。
【0092】
ガイド部85Bは、底面部10の左方LTに設けられ、搬送方向Dに延びる平板状の部材である。底面部10の上下方向Vにおける高さは、底面部10の上方UPの面よりも高い。ガイド部85Bは、第一実施形態における第一側壁部21と同様に、底面部10の積載空間10sに積載されるシート束Sにおける幅方向Hの位置を規制するためのガイド機能を有していてもよい。ガイド部85Bの高さは、積載するシートの枚数や厚さによって任意の高さを採用できるが、レール部82Bと同等の高さが望ましい。
【0093】
ガイド部85Bは、搬送方向Dに移動する可動部材84Bにおける左方LTの端部(先端)を下方LOから支持する。ガイド部85Bによって下方LOから支持することで、可動部材84Bは、安定して搬送方向Dに移動できる。可動部材84Bとガイド部85Bとは、上下方向Vに接触していてもよいし、僅かに隙間を有していてもよい。
【0094】
レール部82Bとガイド部85Bとの配置は逆でもよく、底面部10において、レール部82Bが左方LTに設けられ、ガイド部85Bが右方RTに設けられていてもよい。その場合、可動部材84Bは、支持部83Bから右方RTに延びている。
【0095】
制御部90Bは、搬送部30、検知部40、駆動機構50、吸着脱着機構70および分離部80Bを制御可能である。制御部90Bによって分離部80Bを制御することで、可動部材84Bを搬送方向Dに移動させる。
【0096】
また、制御部90Bは、底面部10を制御し、底面部10の高さを変更してもよい。また、制御部90Bは、検知部40が検出した検出結果に基づいて底面部10の高さを変更しても良い。
【0097】
シート取出装置160Bは、制御部90Bによって制御され、シートの搬送(取出し)動作を行う。制御部90Bは、画像形成装置100の全体を制御してもよい。また、制御部90Bは、シート取出装置160Bに含まれず、画像形成装置100のプリンタ部130等を制御する制御装置に含まれてもよい。
【0098】
制御部90Bは、例えば、プロセッサとメモリと記憶部等を備えたプログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。制御部90Bの各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)又はGPU(Graphics Processing Unit;グラフィックスプロセッサ)のような1つ以上のプロセッサがプログラムメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。ただし、これら機能の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。また、上記機能の全部又は一部は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。記憶部は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory;読み出し専用メモリ)、又はRAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)等により実現される。
【0099】
次に、シート取出装置160Bにおけるシート取出方法について説明する。
図11は、シート取出装置160Bにおけるシート搬送動作を示す断面図である。
図11(a)は、第一実施形態の
図4(c)と同様に、吸着部60によって最大分離角度α
max以上に曲げた第一シートS1を示す断面図である。本実施形態に係るシート取出方法において、第一シートS1を最大分離角度α
max以上に曲げる動作については、第一実施形態にて説明した
図4に示す吸着部60の動作と同様である。
【0100】
本実施形態に係るシート取出装置160Bにおいて、分離部80Bは、最大分離角度α
max以上に曲げた第一シートS1と第二シートS2との間に可動部材84Bを挿入する(
図11(b))。
【0101】
図11(a)に示すように、第一シートS1を最大分離角度α
max以上に曲げることで第一シートS1と第二シートS2とは、上流側RRにおいて離間する。可動部材84Bを搬送方向Dに移動させ、上流側RRが離間した第一シートS1および第二シートS2の間に可動部材84Bを挿入することで、可動部材84Bによって第一シートS1と第二シートS2との下流側FRが離間する。
【0102】
このとき、可動部材84Bの先端において、上下方向Vにおける位置をガイド部85Bによって規制することで、可動部材84Bは、第一シートS1と第二シートS2との間を安定して移動できる。可動部材84Bが十分な剛性を有し、ガイド部85Bによって規制されなくても安定して搬送方向Dに移動できる場合は、シート取出装置160Bはガイド部85Bを有さなくてもよい。
【0103】
次に、吸着部60から第一シートS1を解放し、第一シートS1を解放するのとほぼ同時に搬送部30を回転させて第一シートS1を下流側FRへ搬送して取り出す(
図11(c))。
【0104】
本実施形態のシート取出装置160Bによれば、シート取出装置160Bは、シートが積載される積載空間10sを上方UPに有する底面部10と、駆動機構50に設けられてシートを吸着可能な吸着部60と、シートを下流側FRに搬送可能な搬送部30と、幅方向Hに延びる可動部材84Bと、制御部90Bと、を備える。可動部材84Bが最大分離角度αmax以上に曲げた第一シートS1と第二シートS2との間を搬送方向Dに移動することで、第一シートS1および第二シートS2における下流側FRの端部を離間させる。
【0105】
その結果、第一シートS1と第二シートS2との密着力が大きいマグネットシート等のシートであっても、シート束Sから第一シートS1のみを分離させて搬送部30によって下流側FRへ取り出すことができる。
【0106】
上記第三実施形態では、支持部83Bおよび可動部材84Bは、レール部82Bに沿って搬送方向Dに移動していた。可動部材84Bは、支持部83Bが回転することで第一シートS1と第二シートS2との間に挿入されてもよい。例えば、支持部83Bは、搬送方向Dに移動せず、上下方向Vに延びる回転軸を回転中心としてその場で回転する。支持部83Bに接続された可動部材84Bは、支持部83Bとともに回転し、可動部材84Bの先端は、回転動作によって下流側FRへ移動する。その結果、可動部材84Bが第一シートS1と第二シートS2との間に挿入され、下流側FRにおいて、第一シートS1と第二シートS2とを離間できる。
【0107】
上記各実施形態では、シート取出装置は、シート束Sにおける搬送方向Dの位置を規制可能な前壁部23を有していた。シート取出装置は、底面部10の上流側RRに設けられ、幅方向Hに延びる平板状の後壁部を有していてもよい。上流側RRに後壁部を設けることで、ユーザは、積載空間10sにシート束Sを積載する際に、後壁部によってシート束Sの搬送方向Dにおける位置決めをできる。
本実施形態のメリットは、隙間を開けるための
図8(a)および
図8(b)に示した吸着部60の動きが不要となり、その動作範囲が小さくなることで、駆動部(駆動機構50)を小型にすることができ、カセット付近の狭い空間内に駆動機構50を省スペースで配することができる点にある。また、第二実施形態と比較するとコストメリットがある。
【0108】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第一シートの上流側の端部を吸着した吸着部を所定の軌道で移動させることで、第一シートと第二シートとを分離して第一シートを取り出すことができる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0110】
100…画像形成装置、160…シート取出装置、160A…シート取出装置、160B…シート取出装置、10…底面部、10s…積載空間、21…第一側壁部、22…第二側壁部、23…前壁部、30…搬送部、40…検知部、50…駆動機構、60…吸着部、70…吸着脱着機構、80A…分離部、81A…送気部、80B…分離部、84B…可動部材、90…制御部、90A…制御部、90B…制御部、V…上下方向、UP…上方、LO…下方、D…搬送方向、RR…上流側、FR…下流側、H…幅方向、LT…左方、RT…右方、S1…第一シート、S2…第二シート、αmax…最大分離角度