(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134594
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】RFIDシステム
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20240927BHJP
G06K 7/00 20060101ALI20240927BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G06K19/07 260
G06K7/00 095
G06K7/10 144
G06K19/07 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044861
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】梅津 駿
(72)【発明者】
【氏名】水沼 義博
(57)【要約】
【課題】周波数特性が互いに異なる複数の個別RFIDタグを用いたシステムについて作業を煩雑にすることなく検査を行う。
【解決手段】非接触通信が可能な検査用RFIDタグ10を有するRFIDシステムであって、検査用RFIDタグ10は、外部から印加される電圧に応じてキャパシタンス値が変動する容量手段を有し、非接触通信のための周波数特性がキャパシタンス値に応じて周波数の高低方向に変動し、さらに、容量手段に電圧を印加する電圧印加手段と、電圧印加手段によって容量手段に印加される電圧を可変に制御する電圧調整手段とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触通信が可能な検査用RFIDタグを有するRFIDシステムであって、
前記検査用RFIDタグは、
非接触通信のためのアンテナと、
前記アンテナと接続され、前記アンテナを介して非接触通信を行うICチップと、
前記アンテナと接続され、外部から印加される電圧に応じてキャパシタンス値が変動する容量手段と、を有し、
前記アンテナを介した非接触通信のための周波数特性が前記キャパシタンス値に応じて周波数の高低方向に変動し、
さらに、
前記容量手段に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段によって前記容量手段に印加される電圧を可変に制御する電圧調整手段と、を有する、RFIDシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のRFIDシステムにおいて、
前記非接触通信のための周波数特性が互いに異なる複数の個別RFIDタグ毎に、前記検査用RFIDタグの周波数特性を当該個別RFIDタグの周波数特性とするために前記容量手段に印加される電圧を特定可能な情報が登録された第1のデータベースを有し、
前記電圧調整手段は、前記第1のデータベースに登録された情報に基づいて、前記電圧印加手段によって前記容量手段に印加される電圧を可変に制御する、RFIDシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のRFIDシステムにおいて、
前記検査用RFIDタグと非接触通信を行うリーダと、
予め決められたタイミングにおいて前記リーダが前記検査用RFIDタグと非接触通信を行った結果を第2のデータベースに登録する登録手段と、
前記登録手段にて登録された結果に基づいて、当該RFIDシステムの環境が変化したかどうかを判断する判断手段と、を有する、RFIDシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のRFIDシステムにおいて、
前記電圧調整手段は、前記リーダに内蔵されている、RFIDシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信が可能なRFIDタグを有するRFIDシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触状態にて情報の書き込みや読み取りが可能なRFIDタグが様々な用途に利用されている。例えば、特許文献1には、商品に無線タグを取り付けるとともに、商品陳列棚に無線タグ読取手段のアンテナ部を配置しておき、アンテナ部を介して無線タグから情報を読み取ることで商品を管理する物品管理システムが開示されている。
【0003】
このようにRFIDタグを用いて物品を管理する場合、複数のRFIDタグに対して一括で情報を書き込んだり読み取ったりすることができることで、物品の管理等にかかる業務の効率化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなRFIDタグを有するRFIDシステムにおいては、RFIDタグから情報を読み取るためのリーダの性能や、RFIDシステムにおけるRFIDタグからの情報の読み取り環境が、システム構築時から変動しないことが望まれる。そのため、システムを構築した後、システムを納入する際や、その後、運用時の定期的なタイミングにおいて、これらに変動が生じていないか検査を行う場合がある。
【0006】
このような検査は、実際に用いられるRFIDタグと同一の周波数特性を有する検査用RFIDタグを用いて行うことになる。そのため、システムを納入した顧客毎に、その顧客が実際に運用に用いるRFIDタグと同一の周波数特性を有する検査用RFIDタグを準備しなければならず、作業が非常に煩雑になってしまうという問題点がある。また、検査を行う度に、顧客に応じて検査用RFIDタグを取り替えなければならず、これによっても作業が煩雑になってしまう。さらに、検査用RFIDタグが破損した場合、検査用RFIDタグからの情報の読み取り結果の変動が、リーダの性能や読み取り環境の変動によるものなのか、検査用RFIDタグが破損したことによるものなのかの判断が難しい場合もある。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、周波数特性が互いに異なる複数の個別RFIDタグを用いたシステムについて作業を煩雑にすることなく検査を行うことができるRFIDシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
非接触通信が可能な検査用RFIDタグを有するRFIDシステムであって、
前記検査用RFIDタグは、
非接触通信のためのアンテナと、
前記アンテナと接続され、前記アンテナを介して非接触通信を行うICチップと、
前記アンテナと接続され、外部から印加される電圧に応じてキャパシタンス値が変動する容量手段と、を有し、
前記アンテナを介した非接触通信のための周波数特性が前記キャパシタンス値に応じて周波数の高低方向に変動し、
さらに、
前記容量手段に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記電圧印加手段によって前記容量手段に印加される電圧を可変に制御する電圧調整手段とを有する。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、電圧印加手段から検査用RFIDタグの容量手段に印加される電圧が電圧調整手段によって可変に制御されることで、容量手段のキャパシタンス値が変動する。そしてそれにより、検査用RFIDタグにおけるアンテナを介した非接触通信のための周波数特性が周波数の高低方向に変動する。このように、1つの検査用RFIDタグに対して、容量手段に印加される電圧を可変に制御することで、アンテナを介した非接触通信のための周波数特性を設定することができる。そのため、顧客が実際に運用に用いるRFIDタグの周波数特性が互いに異なるものであっても、1つの検査用RFIDタグの周波数特性をそれに応じたものとすることができ、作業を煩雑にすることなく検査を行うことができるようになる。
【0010】
また、前記非接触通信のための周波数特性が互いに異なる複数の個別RFIDタグ毎に、前記検査用RFIDタグの周波数特性を当該個別RFIDタグの周波数特性とするために前記容量手段に印加される電圧を特定可能な情報が登録された第1のデータベースを有し、前記電圧調整手段が、前記第1のデータベースに登録された情報に基づいて、前記電圧印加手段によって前記容量手段に印加される電圧を可変に制御する構成としてもよい。
【0011】
このように構成されたものにおいては、顧客が実際に運用に用いる個別RFIDタグ毎に第1のデータベースに登録された情報に応じた電圧が容量手段に印加されることで、検査用RFIDタグの周波数特性が、顧客が実際に運用に用いる個別RFIDタグの周波数特性に応じたものとされる。
【0012】
また、前記検査用RFIDタグと非接触通信を行うリーダと、予め決められたタイミングにおいて前記リーダが前記検査用RFIDタグと非接触通信を行った結果を第2のデータベースに登録する登録手段と、前記登録手段にて登録された結果に基づいて、当該RFIDシステムの環境が変化したかどうかを判断する判断手段とを有する構成としてもよい。
【0013】
このように構成されたものにおいては、予め決められたタイミングにおいてRFIDシステムの環境が変化したかどうかが判断される。
【0014】
また、前記電圧調整手段が、前記リーダに内蔵されている構成としてもよい。
【0015】
このように構成されたものにおいては、電圧調整手段がリーダに内蔵されていることで、システム構成が複雑化しない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つの検査用RFIDタグに対して、容量手段に印加される電圧を可変に制御することで、アンテナを介した非接触通信のための周波数特性を設定することができる。これにより、周波数特性が互いに異なる複数の個別RFIDタグを用いたシステムについて作業を煩雑にすることなく検査を行うことができる。
【0017】
また、非接触通信のための周波数特性が互いに異なる複数の個別RFIDタグ毎に、検査用RFIDタグの周波数特性を当該個別RFIDタグの周波数特性とするために容量手段に印加される電圧を特定可能な情報が登録された第1のデータベースを有し、電圧調整手段が、第1のデータベースに登録された情報に基づいて、電圧印加手段によって容量手段に印加される電圧を可変に制御するものにおいては、顧客が実際に用いる個別RFIDタグ毎に第1のデータベースに登録された情報に応じた電圧が容量手段に印加されることで、検査用RFIDタグの周波数特性を、顧客が実際に運用に用いる個別RFIDタグの周波数特性に応じたものとすることができる。
【0018】
また、検査用RFIDタグと非接触通信を行うリーダと、予め決められたタイミングにおいてリーダが検査用RFIDタグと非接触通信を行った結果を第2のデータベースに登録する登録手段と、登録手段にて登録された結果に基づいて、当該RFIDシステムの環境が変化したかどうかを判断する判断手段とを有するものにおいては、予め決められたタイミングにおいてRFIDシステムの環境が変化したかどうかを判断することができる。
【0019】
また、電圧調整手段がリーダに内蔵されているものにおいては、システム構成が複雑化することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のRFIDシステムの一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した検査用RFIDタグの一構成例を示す図であり、(a)は全体の物理的な構成を示す図、(b)は(a)に示したバリアブルキャパシタの回路構成図である。
【
図3】
図1に示した管理用パソコンの一構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示したRFIDリーダの一構成例を示すブロック図である。
【
図5】物品の管理のため等に運用されるRFIDシステムにて実際に用いられる個別RFIDタグの周波数特性の例を示す図である。
【
図6】
図2に示したバリアブルキャパシタの印加電圧対キャパシタンス値の特性の一例を示す図である。
【
図7】
図1に示した調整値データベースの一例を示す図である。
【
図8】
図1に示したRFIDシステムが適用される環境の一例を示す図である。
【
図9】
図1に示した検査結果データベースの一例を示す図である。
【
図10】
図1に示した検査結果データベースの一例を示す図である。
【
図11】
図1に示したRFIDシステムが適用される環境の他の例を示す図である。
【
図12】本発明のRFIDシステムの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
《システム構成》
〈全体構成〉
図1は、本発明のRFIDシステムの一実施形態を示す図である。
【0023】
本実施形態は
図1に示すように、検査用RFIDタグ10と、管理用パソコン20と、RFIDリーダ30と、リーダアンテナ40と、D/A変換器50と、調整値データベース61と、検査結果データベース62とを有している。
【0024】
〈検査用RFIDタグ10〉
図2は、
図1に示した検査用RFIDタグ10の一構成例を示す図であり、(a)は全体の物理的な構成を示す図、(b)は(a)に示したバリアブルキャパシタ14の回路構成図である。
【0025】
検査用RFIDタグ10は、
図2(a)に示すように、ベース基材13の一方の面上に、アンテナ12が形成されているとともに、ICチップ11と、バリアブルキャパシタ14とが実装されている。
【0026】
ベース基材13は、例えばフィルム等の非導電性材料から構成されている。
【0027】
アンテナ12は、検査用RFIDタグ10にてリーダアンテナ40を介してRFIDリーダ30と非接触通信を行うためのものである。アンテナ12は、ベース基材13の一方の面に、2つの二等辺三角形の導体12a,12bが空隙を介して並ぶようにして形成されている。なお、アンテナ12の形状としてはこれに限らず、2つの帯状の導体が空隙を介して直線上に並んだもの等、様々なものが考えられる。
【0028】
ICチップ11は、2つのアンテナ端子(不図示)が設けられており、アンテナ端子が設けられた面が搭載面となって、ベース基材13のアンテナ12が形成された面に搭載され、異方性導電ペースト(不図示)によって固定されている。ICチップ11の2つのアンテナ端子は2つの導体12a,12bにそれぞれ接続されており、異方性導電ペーストによって、アンテナ端子とアンテナ12とが導通している。この際、2つの導体12a,12bの二等辺三角形の頂点が給電点となり、この給電点にICチップ11が接続されている。ICチップ11は、アンテナを介した非接触通信によって得た電力によって動作し、ICチップ11内に予めエンコードされた情報となる固有のIDを、アンテナ12を介して非接触送信する。このようにしてICチップ11は、アンテナ12を介して非接触通信を行う。
【0029】
バリアブルキャパシタ14は、本願発明にて容量手段の一例となるものである。バリアブルキャパシタ14は、ベース基材13のアンテナ12が形成された面に搭載され、異方性導電ペースト(不図示)によって固定されている。バリアブルキャパシタ14は、
図2(b)に示すように、電圧印加端子15と、2つの接続端子16a,16bと、GND端子17とを有している。電圧印加端子15には、バリアブルキャパシタ14のキャパシタンス値を変動させるための電圧が印加される。例えば、ベース基材13にD/A変換器50と接続されるための端子(不図示)が設けられており、電圧印加端子15はこの端子に接続されている。GND端子17は接地されている。接続端子16a,16bは、アンテナ12を構成する2つの導体12a,12bの給電点に接続されている。
【0030】
このように構成されたバリアブルキャパシタ14は、電圧印加端子15に外部から印加される電圧に応じてキャパシタンス値が変動する。そして、接続端子16a,16bが2つの導体12a,12bの給電点に接続されていることで、検査用RFIDタグ10のマッチング回路の一部として機能する。それにより、検査用RFIDタグ10は、アンテナ12を介した非接触通信のための周波数特性が、バリアブルキャパシタ14のキャパシタンス値に応じて周波数の高低方向に変動することになる。
【0031】
なお、
図2(a)に示す検査用RFIDタグ10の構成はあくまでも一例である。検査用RFIDタグ10としては、印加される電圧に応じてキャパシタンス値が変動するバリアブルキャパシタ14を有し、アンテナ12を介した非接触通信のための周波数特性がバリアブルキャパシタ14のキャパシタンス値に応じて周波数の高低方向に変動するものであればよい。
【0032】
〈管理用パソコン20〉
図3は、
図1に示した管理用パソコン20の一構成例を示すブロック図である。なお、
図3においては、管理用パソコン20の構成のうち本発明に直接関係しない構成の図示及びその説明を省略している。
【0033】
図1に示した管理用パソコン20は
図3に示すように、通信部21と、読み取り制御部22と、調整値登録/取得部23と、電圧変更命令部24と、読取結果登録/取得部25と、環境判断部26と、出力部27とを有している。
【0034】
通信部21は、RFIDリーダ30と有線で接続され、RFIDリーダ30との間にて情報を送受信する。
【0035】
読み取り制御部22は、検査用RFIDタグ10や、
図1に示したRFIDシステムの実際の運用時においては個別RFIDタグ(不図示)から情報を読み取るための命令をRFIDリーダ30に通信部21を介して送信する。また、読み取り制御部22は、RFIDリーダ30にて検査用RFIDタグ10や個別RFIDタグから読み取られた情報を通信部21を介して受信する。また、RFIDリーダ30にてリーダアンテナ40から放射する電波の出力を制御するための命令を出力する。
【0036】
調整値登録/取得部23は、バリアブルキャパシタ14に印加する電圧を調整値として特定可能に調整値データベース61に登録する。具体的には、後述する調整値設定フェーズにおいて、RFIDシステムにて実際の運用に用いられる個別RFIDタグの周波数特性に応じた調整値を調整値データベース61に登録する。調整値データベース61は、本願発明にて第1のデータベースの一例となるものである。また、調整値登録/取得部23は、調整値データベース61に登録された調整値を取得する。
【0037】
電圧変更命令部24は、調整値登録/取得部23にて取得された調整値に基づいて、バリアブルキャパシタ14に印加する電圧を変更するための命令を、通信部21を介してRFIDリーダ30に対して出力する。
【0038】
読取結果登録/取得部25は、本願発明にて登録手段の一例となるものである。読取結果登録/取得部25は、読み取り制御部22にて通信部21を介してRFIDリーダ30から受信した情報を検査結果データベース62に登録する。検査結果データベース62は、本願発明にて第2のデータベースの一例となるものである。また、読取結果登録/取得部25は、RFIDリーダ30にて検査用RFIDタグ10から情報が読み取られた際にリーダアンテナ40から放射された電波の出力を検査結果データベース62に登録する。また、読取結果登録/取得部25は、検査結果データベース62に登録された情報を取得する。
【0039】
環境判断部26は、本願発明にて判断手段の一例となるものである。環境判断部26は、読取結果登録/取得部25にて検査結果データベース62から取得した情報に基づいて、RFIDシステムの環境が変化したかどうかを判断する。すなわち、RFIDリーダ30にて検査用RFIDタグ10から情報が読み取られた際にリーダアンテナ40から放射された電波の出力が変化したかどうかによって、RFIDシステムの環境が変化したかどうかを判断する。また、RFIDリーダ30の性能についても評価することができる。詳細は後述する。
【0040】
出力部27は、ディスプレイ等から構成され、読取結果登録/取得部25にて検査結果データベース62から取得した情報を表示する。
【0041】
なお、本形態においては管理用パソコン20を例に挙げて説明するが、上述した構成を有するものとしては、携帯型端末等も含め、RFIDリーダ30の制御が可能なコンピュータ等の制御装置であればよい。また、上述した管理用パソコン20の構成をRFIDリーダ30に搭載したものとしてもよい。
【0042】
〈RFIDリーダ30〉
図4は、
図1に示したRFIDリーダ30の一構成例を示すブロック図である。
【0043】
図1に示したRFIDリーダ30は、本願発明にてリーダの一例となるものであって、リーダアンテナ40を介して検査用RFIDタグ10や個別RFIDタグと非接触通信を行う。RFIDリーダ30は
図4に示すように、共用器31と、タグデータ送信処理部32と、デジタル信号変換部33と、通信部34a,34bと、送信レベル調整部35と、RF送信部36aと、RF受信部36bと、タグデータ受信処理部37と、電源供給部38と、電圧調整部39とを有している。
【0044】
共用器31は、RF送信部36aから出力された信号を、リーダアンテナ40を介して電波信号として送信し、また、リーダアンテナ40にて受信された電波信号をRF受信部36bに出力する。
【0045】
タグデータ送信処理部32は、ポーリングにおいて検査用RFIDタグ10や個別RFIDタグを検知するための信号を出力し、また、検査用RFIDタグ10や個別RFIDタグから非接触通信にて情報を読み取るための信号を出力する。
【0046】
デジタル信号変換部33は、タグデータ送信処理部32から出力された信号をアナログ信号に変換して送信レベル調整部35に出力し、また、RF受信部36bにて受信された信号をデジタル信号に変換してタグデータ受信処理部37に出力する。
【0047】
通信部34aは、管理用パソコン20と有線で接続されており、管理用パソコン20との間にて情報を送受信する。
【0048】
通信部34bは、D/A変換器50と有線で接続されており、D/A変換器50に電源を供給するためのものである。
【0049】
送信レベル調整部35は、デジタル信号変換部33にてアナログ信号に変換された信号についてRF送信部36aを介したリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを、管理用パソコン20から出力された命令に従って調整することで制御する。
【0050】
RF送信部36aは、送信レベル調整部35にて電波の放射出力レベルが調整された信号を搬送波に乗せて共用器31及びリーダアンテナ40を介して送信する。
【0051】
RF受信部36bは、RF送信部36aから送信された信号に対する検査用RFIDタグ10からの応答信号をリーダアンテナ40及び共用器31を介して受信する。
【0052】
タグデータ受信処理部37は、デジタル信号変換部33にてデジタル信号に変換された信号を、検査用RFIDタグ10や個別RFIDタグから読み取った情報として通信部34aを介して管理用パソコン20に送信する。
【0053】
電源供給部38は、本願発明にて電圧印加手段の一例となるものである。電源供給部38は、検査用RFIDタグ10のバリアブルキャパシタ14に印加するための電圧を出力する。
【0054】
電圧調整部39は、本願発明にて電圧調整手段の一例となるものである。電圧調整部39は、管理用パソコン20の電圧変更命令部24から出力された命令を通信部34aを介して受信し、受信した命令に応じて、電源供給部38から出力された電圧を可変に制御し、通信部34bを介してデジタル値として出力する。
【0055】
《RFIDシステムの動作》
以下に、上記のように構成されたRFIDシステムの動作について説明する。
【0056】
RFIDタグを有するRFIDシステムにおいては、システムを構築した後、システムを納入する際や日々の運用時において、リーダの性能やRFIDタグからの読み取り環境が変化していないか検査が行われる場合がある。このようなRFIDシステムにおいては、運用に用いられる個別RFIDタグがシステム毎に異なるものとなるため、個別RFIDタグの周波数特性も、個別RFIDタグに用いられるベース基材等の材料やアンテナの特性によって互いに異なるものとなる。
【0057】
図5は、物品の管理のため等に運用されるRFIDシステムにて実際に用いられる個別RFIDタグの周波数特性の例を示す図である。
【0058】
図5に示すように、物品の管理のため等に運用されるRFIDシステムにて実際に用いられる個別RFIDタグには、図中実線で示す周波数特性を有するものや、図中破線で示す周波数特性を有するものや、図中一点鎖線で示す周波数特性を有するもの等、周波数特性が互いに異なるものが存在している。そのため、上述したような検査においては、RFIDシステム毎に実際に運用に用いられる個別RFIDタグと同等の周波数特性を有するRFIDタグを用いて行われることが好ましい。また、RFIDシステムの製造時と出荷時、あるいは日々の運用時においてRFIDシステムの環境に変化がないか検査する場合、各検査時において互いに異なる周波数特性を有するRFIDタグを用いて検査をすると、誤った検査結果が得られてしまう虞がある。RFIDタグに対する情報の読み取りは、例えば920MHzといった一定の読み取り周波数で行われる。そのため、RFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグとは異なる周波数特性を有するRFIDタグを用いて検査を行うと、RFIDタグとの通信可能となる距離を正確に検査することができずに好ましくない。また、検査の度に、RFIDシステム毎に実際に運用に用いられる個別RFIDタグと同等の周波数特性を有するRFIDタグを準備することは作業の煩雑化を招く。
【0059】
そこで、
図1及び
図2に示した検査用RFIDタグ10を用いて、1つの検査用RFIDタグ10にて、任意の周波数特性を有する個別RFIDタグを実質的に構成して検査を行う。
【0060】
図1及び
図2に示した検査用RFIDタグ10は、マッチング回路の一部としてバリアブルキャパシタ14を有している。そのため、バリアブルキャパシタ14のキャパシタンス値は、検査用RFIDタグ10のアンテナ12を介した非接触通信のための周波数特性を決める1つの要因となっている。すなわち、バリアブルキャパシタ14のキャパシタンス値を変動させることで、検査用RFIDタグ10の周波数特性を変動させることができる。
【0061】
図6は、
図2に示したバリアブルキャパシタ14の印加電圧対キャパシタンス値の特性の一例を示す図である。
【0062】
図6に示すように、
図2に示したバリアブルキャパシタ14は、電圧印加端子15に印加される電圧に応じてキャパシタンス値が変動する。具体的には、電圧印加端子15に印加される電圧が高くなるほどキャパシタンス値は小さくなり、また、電圧印加端子15に印加される電圧が低くなるほどキャパシタンス値は大きくなる。
【0063】
一方、
図1及び
図2に示した検査用RFIDタグ10は、バリアブルキャパシタ14のキャパシタンス値が小さくなるほど周波数特性が高周波側に移動し、また、バリアブルキャパシタ14のキャパシタンス値が大きくなるほど周波数特性が低周波側に移動する。
【0064】
〈調整値設定登録フェーズ〉
そこでまず、調整値設定登録フェーズとして、
図1及び
図2に示した検査用RFIDタグ10の周波数特性を、RFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグの周波数特性と同等のものとするための調整値が設定される。この設定値は、検査用RFIDタグ10のバリアブルキャパシタ14に印加する電圧が特定可能なものであって、調整値データベース61に登録される。
【0065】
調整値設定登録フェーズにおいては、まず、例えば、現在の検査用RFIDタグ10の周波数特性が
図5の実線で示すものであり、検査を行うRFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグの周波数特性が
図5の破線で示すものである場合、電圧変更命令部24から電圧を下げる命令が出力される。
【0066】
この命令はRFIDリーダ30の通信部34aを介して電圧調整部39にて受信される。電圧調整部39においては、電源供給部38から出力された電圧が低くなるように制御され、その電圧が通信部34bを介してデジタル値として出力される。
【0067】
そして、D/A変換器50にてアナログ値に変換された電圧が検査用RFIDタグ10のバリアブルキャパシタ14に印加される。これにより、検査用RFIDタグ10の周波数特性が低周波側(
図5中矢印A方向)に移動し、これを段階的に行うことで、検査用RFIDタグ10の周波数特性を、検査を行うRFIDシステムにて実際に運用に用いられるRFIDタグの周波数特性に合わせることができる。
【0068】
また、現在の検査用RFIDタグ10の周波数特性が
図5の実線で示すものであり、検査を行うRFIDシステムにて実際に運用に用いられるRFIDタグの周波数特性が
図5の一点鎖線で示すものである場合、電圧変更命令部24から電圧を上げる命令が出力される。
【0069】
この命令はRFIDリーダ30の通信部34aを介して電圧調整部39にて受信される。電圧調整部39においては、電源供給部38から出力された電圧が高くなるように制御され、その電圧が通信部34bを介してデジタル値として出力される。
【0070】
そして、D/A変換器50にてアナログ値に変換された電圧が検査用RFIDタグ10のバリアブルキャパシタ14に印加される。これにより、検査用RFIDタグ10の周波数特性が高周波側(
図5中矢印B方向)に移動し、これを段階的に行うことで、検査用RFIDタグ10の周波数特性を、検査を行うRFIDシステムにて実際に運用に用いられるRFIDタグの周波数特性に合わせることができる。
【0071】
このようにして、検査用RFIDタグ10の周波数特性が、検査を行うRFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグの周波数特性と同等のものとなった後、調整値登録/取得部23において、その際にバリアブルキャパシタ14に印加した電圧が調整値データベース61に特定可能に登録される。
【0072】
図7は、
図1に示した調整値データベース61の一例を示す図である。
【0073】
図7に示すように、
図1に示した調整値データベース61には、複数のRFIDシステムのそれぞれにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグ毎に調整値が登録されている。この調整値は、検査用RFIDタグ10の周波数特性をその個別RFIDタグの周波数特性と同等のものとするためにバリアブルキャパシタ14に印加した電圧を特定可能とするものである。すなわち、バリアブルキャパシタ14に印加した電圧の値そのものでもよいし、管理用パソコン20にてバリアブルキャパシタ14に印加する電圧と対応づけられている値でもよい。さらには、バリアブルキャパシタ14に印加する電圧のデフォルト値を基準として設定されたものであってもよい。
【0074】
また、RFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグは、設置場所によっても周波数特性が変動するため、
図7に示すように同一の個別RFIDタグについて設置場所毎に調整値が登録されていてもよい。
【0075】
このようにして、検査用RFIDタグ10の周波数特性を、検査を行うRFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグの周波数特性に合わせるためにバリアブルキャパシタ14に印加する電圧を、調整値データベース61に調整値として特定可能に登録しておく。
【0076】
〈出力レベル登録フェーズ〉
次に、出力レベル登録フェーズとして、調整値データベース61に登録された調整値に応じた電圧がバリアブルキャパシタ14に印加された場合に検査用RFIDタグ10から情報を読み取ることができるリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが登録される。この出力レベルは、検査結果データベース62に登録される。
【0077】
図8は、
図1に示したRFIDシステムが適用される環境の一例を示す図である。
【0078】
図1に示したRFIDシステムは例えば
図8に示すような箱体70を有する環境に適用される。箱体70は、収納部72と蓋部71とから構成され、収納部72に収納される物品に個別RFIDタグを添付して使用される。蓋部71には、リーダアンテナ40が取り付けられており、このリーダアンテナ40を介して個別RFIDタグから情報が読み取られることで物品が管理されることになる。このような構成において、収納部72の底板73に検査用RFIDタグ10を取り付けておき検査を行う。
【0079】
その際、まず、RFIDシステムの出荷時等において、検査用RFIDタグ10から実際に情報が読み取り可能となる、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを登録しておく。
【0080】
まず、調整値登録/取得部23において、RFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグの調整値が調整値データベース61から取得される。調整値データベース61には、上述したように、複数のRFIDシステムのそれぞれにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグ毎に調整値が登録されている。そのため、調整値登録/取得部23において、RFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグの調整値を調整値データベース61から取得することができる。
【0081】
次に、電圧変更命令部24において、検査用RFIDタグ10のバリアブルキャパシタ14に印加する電圧を、調整値登録/取得部23にて取得した調整値に応じた電圧とするための電圧制御命令が出力される。この電圧制御命令は通信部21を介してRFIDリーダ30に送信され、RFIDリーダ30の通信部34aを介して電圧調整部39にて受信される。
【0082】
電圧調整部39においては、管理用パソコン20から受信した電圧制御命令に応じて、電源供給部38から出力された電圧が制御され、通信部34bを介してデジタル値としてD/A変換器50に出力される。
【0083】
そして、D/A変換器50にてアナログ値に変換された電圧が検査用RFIDタグ10のバリアブルキャパシタ14に印加される。
【0084】
また、管理用パソコン20の読み取り制御部22において、検査用RFIDタグ10からリーダアンテナ40を介して情報を読み取るための読み取り命令が通信部21を介してRFIDリーダ30に送信される。この際、読み取り命令には、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを、例えば、設定された最低レベルとする送信レベル設定命令が含まれている。なお、上述したRFIDリーダ30における検査用RFIDタグ10からの情報の読み取りに先立ってポーリング処理が実行されるが、ここではその説明は省略する。
【0085】
管理用パソコン20から送信されてきた読み取り命令は、RFIDリーダ30の通信部34aにて受信される。
【0086】
すると、検査用RFIDタグ10から情報を読み取るための信号がタグデータ送信処理部32から出力され、デジタル信号変換部33にてアナログ信号に変換される。この際、検査用RFIDタグ10から読み取る情報は、例えば検査用RFIDタグ10に記憶された固有のIDとなる。
【0087】
また、送信レベル調整部35において、通信部34aにて受信した読み取り命令に含まれる送信レベル設定命令に従って、デジタル信号変換部33にてアナログ信号に変換された信号のリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが調整される。例えば、リーダアンテナ40から放射される電波の出力が、設定された最低レベルとされる。
【0088】
その後、RF送信部36aにおいて、送信レベル調整部35にて電波の放射出力レベルが調整された信号が搬送波に乗せられ、共用器31及びリーダアンテナ40を介して送信される。
【0089】
このRF送信部36aから共用器31及びリーダアンテナ40を介して送信された信号が検査用RFIDタグ10にて受信されると、検査用RFIDタグ10から、例えば固有のIDが応答信号としてRFIDリーダ30に送信される。
【0090】
検査用RFIDタグ10から送信された検査用RFIDタグ10の固有のIDは、リーダアンテナ40及び共用器31を介してRF受信部36bにて受信され、デジタル信号変換部33にてデジタル信号に変換される。そしてその後、タグデータ受信処理部37において、デジタル信号に変換された検査用RFIDタグ10の固有のIDが判別されて通信部34aを介して管理用パソコン20に送信される。
【0091】
RFIDリーダ30から送信された検査用RFIDタグ10の固有のIDは、管理用パソコン20の通信部21を介して読み取り制御部22にて受信される。
【0092】
すると、読取結果登録/取得部25において、検査用RFIDタグ10の固有のIDがRFIDリーダ30にて読み取られた際のリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが検査結果データベース62に登録される。この際、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルは、調整値登録/取得部23にて調整値データベース61から取得された調整値と対応づけて検査結果データベース62に登録されることになる。なお、検査用RFIDタグ10から情報を読み取るための読み取り命令には、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを設定するための送信レベル設定命令が含まれている。そのため、読み取り制御部22において、検査用RFIDタグ10の固有のIDがRFIDリーダ30にて読み取られた際のリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを特定することができる。
【0093】
一方、RFIDリーダ30からリーダアンテナ40を介して送信された信号が検査用RFIDタグ10にて受信されない場合は、検査用RFIDタグ10の固有のIDは管理用パソコン20にて受信されない。その場合は、管理用パソコン20の読み取り制御部22において、検査用RFIDタグ10から情報を読み取るための読み取り命令に、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを例えば1段階上げる送信レベル設定命令を含ませる。そして、上記同様にして、検査用RFIDタグ10からの固有のIDの読み取りが試みられる。
【0094】
その後、管理用パソコン20にて検査用RFIDタグ10の固有のIDが受信されるまで、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが段階的に上げられていく。そして、検査用RFIDタグ10の固有のIDが受信された際に、その際のリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが、調整値登録/取得部23にて調整値データベース61から取得された調整値と対応づけて検査結果データベース62に登録される。
【0095】
図9は、
図1に示した検査結果データベース62の一例を示す図である。
【0096】
図9に示すように、
図1に示した検査結果データベース62には、検査用RFIDタグ10の固有のIDが読み取り可能となるリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが、その際にバリアブルキャパシタ14に印加された電圧を特定可能な調整値と対応づけて登録される。
【0097】
なお、上述した例においては、まず、リーダアンテナ40から放射される電波の出力が、設定された最低レベルとされ、その後、管理用パソコン20にて検査用RFIDタグ10の固有のIDが受信されるまで、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが段階的に上げられている。しかしながら、リーダアンテナ40から放射される電波の出力を、RFIDシステム毎に予め決められた値としてその値にて、管理用パソコン20にて検査用RFIDタグ10の固有のIDが受信されるかどうかを検出してもよい。
【0098】
〈検査フェーズ〉
その後、検査フェーズとして、例えば、システムが構築された後、システムを納入する際や日々の運用時において、RFIDシステムに対する検査が行われる。検査が行われた結果は、検査結果データベース62に登録されていく。
【0099】
上記のようにして、検査用RFIDタグ10の固有のIDが読み取り可能となるリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが、その際にバリアブルキャパシタ14に印加された電圧を特定可能な調整値と対応づけて検査結果データベース62に登録された後、RFIDシステムに対する検査が行われる。
【0100】
検査フェーズにおいては、まず、調整値登録/取得部23において、RFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグに対応する調整値が調整値データベース61から取得される。
【0101】
そして、上記同様にして、調整値登録/取得部23にて取得された調整値に応じた電圧が検査用RFIDタグ10のバリアブルキャパシタ14に印加される。
【0102】
また、管理用パソコン20の読取結果登録/取得部25において、調整値登録/取得部23にて取得された調整値に対応づけて検査結果データベース62に登録されたリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが取得される。
【0103】
そして、読み取り制御部22において、読取結果登録/取得部25にて取得された出力レベルが送信レベル設定命令として読み取り命令に含められてRFIDリーダ30に送信される。
【0104】
その後、上記同様にして、管理用パソコン20から送信された読み取り命令に含まれる送信レベル設定命令に従って、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが調整され、検査用RFIDタグ10から固有のIDが読み取られる。そして、検査用RFIDタグ10の固有のIDは、RFIDリーダ30を介して管理用パソコン20にて受信される。
【0105】
管理用パソコン20においては、検査用RFIDタグ10の固有のIDが受信された場合、その際のリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが、調整値データベース61から取得された調整値と対応づけて検査結果データベース62に登録される。この際、検査用RFIDタグ10から情報を読み取るための読み取り命令には、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを設定するための送信レベル設定命令が含まれている。そのため、読み取り制御部22において、検査用RFIDタグ10の固有のIDがRFIDリーダ30にて読み取られた際のリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを特定することができる。
【0106】
一方、RFIDリーダ30からリーダアンテナ40を介して送信された信号が検査用RFIDタグ10にて受信されない場合は、検査用RFIDタグ10の固有のIDは管理用パソコン20にて受信されない。その場合は、管理用パソコン20の読み取り制御部22において、検査用RFIDタグ10からリーダアンテナ40を介して情報を読み取るための読み取り命令に、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルを例えば1段階上げる送信レベル設定命令を含ませる。そして、上記同様にして、検査用RFIDタグ10からの固有のIDの読み取りを試みる。
【0107】
その後、管理用パソコン20にて検査用RFIDタグ10の固有のIDが受信されるまで、リーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが段階的に上げられていく。そして、検査用RFIDタグ10の固有のIDが受信された際に、その際のリーダアンテナ40からの電波の放射出力レベルが、調整値登録/取得部23にて調整値データベース61から取得された調整値と対応づけて検査結果データベース62に登録される。
【0108】
この一連の動作が、例えば、システムが構築された後、システムを納入する際や日々の運用時において行われ、その度毎に検査結果として検査結果データベース62に登録され、検査結果データベース62が更新されていく。
【0109】
図10は、
図1に示した検査結果データベース62の一例を示す図であり、
図9に示したものから更新された状態を示す。
【0110】
図10に示すように、検査用RFIDタグ10を用いて、調整値データベース61に登録された調整値毎に、システムの構築時、システムの納入日、さらには、日々の運用時等の予め決められたタイミングにおいて上記検査が行われる。そして、その度毎に、検査結果データベース62が更新されていく。
【0111】
検査結果データベース62に登録された検査結果は、読取結果登録/取得部25にて取得される。
【0112】
そして、管理用パソコン20の環境判断部26において、読取結果登録/取得部25にて取得された情報に基づいて、RFIDシステムの環境が変化したかどうかが判断される。例えば、検査結果データベース62に登録された検査結果が
図10に示したものの場合、システム納品時やX月Y日の検査においては、検査用RFIDタグ10から固有のIDを読み取ることができる電波の放射出力レベルがシステム構築時と同じである。そのため、RFIDシステムの環境がシステム構築時から変化していないと判断される。また、X月Z日の検査においては、検査用RFIDタグ10から固有のIDを読み取ることができる電波の放射出力レベルが、システム構築時や納品時のものから大きくなっている。そのため、X月Z日において、RFIDシステムの環境が変化したと判断される。また、RFIDリーダ30の性能が劣化したと判断することもできる。
【0113】
またその際、読取結果登録/取得部25にて検査結果データベース62から取得した情報を出力部27に出力することもできる。
【0114】
このようにして、検査用RFIDタグ10から固有のIDを読み取ることができる電波の放射出力レベルがシステム構築時と同じかどうかを検査することで、RFIDシステムの環境や性能が変化していない旨を判断することができる。また、RFIDシステムの環境が変化していないことで、日々の検査の品質を担保することができる。
【0115】
上述したように本実施形態においては、1つの検査用RFIDタグ10に対して、バリアブルキャパシタ14に印加される電圧を可変に制御することで、非接触通信のための周波数特性を任意に設定することができる。そのため、顧客が実際に運用に用いる個別RFIDタグの周波数特性が互いに異なるものであっても、1つの検査用RFIDタグ10の周波数特性をそれに応じたものとすることができ、作業を煩雑にすることなく検査を行うことができるようになる。
【0116】
また、本実施形態においては、検査用RFIDタグ10の周波数特性を変動させるためにバリアブルキャパシタ14に印加される電圧に応じた調整値が個別RFIDタグ毎に調整値データベース61に登録されている。それにより、検査用RFIDタグ10の周波数特性を、容易に個別RFIDタグの周波数特性に応じたものとすることができる。
【0117】
なお、本実施形態においては、RFIDシステムの検査を行う場合に、そのRFIDシステムにて実際に運用に用いられる個別RFIDタグに対応する調整値に応じた電圧をバリアブルキャパシタ14に印加している。そして、その際に検査用RFIDタグ10から情報が読み取り可能となる電波の放射出力レベルが変化しているかどうかを検査している。しかしながら、1つのRFIDシステムにおいて、複数の調整値に応じた電圧をバリアブルキャパシタ14に印加し、その際に検査用RFIDタグ10から情報が読み取り可能となる電波の放射出力レベルを複数の調整値のそれぞれについて確認する構成とすることも考えられる。これにより、検査用RFIDタグ10から情報を読み取ることが可能な電波の出力を複数の周波数にて確認することで、1つのRFIDシステムにおける検査の精度を向上させることもできる。
【0118】
なお、
図8に示したような箱体70を有する環境に適用した場合、検査用RFIDタグ10を収納部72の底板73に常時取り付けておいてもよい。その場合、検査以外の通常の運用時においては、バリアブルキャパシタ14に印加する電圧を調整することで、リーダアンテナ40を介して検査用RFIDタグ10から情報を読み取ることができる距離を限りなく短くしておくことが好ましい。これにより、
図8に示したような箱体70を有する環境における通常の運用時において、検査用RFIDタグ10からは情報が読み取られることがなくなり、RFIDリーダ30にて不要な情報が読み取られることが回避される。
【0119】
〈検査環境の他の例〉
図11は、
図1に示したRFIDシステムが適用される環境の他の例を示す図である。
【0120】
図1に示したRFIDシステムは例えば
図11に示すような検査ライン80を有する環境に適用することもできる。検査ライン80は、コンベヤー等から構成され、RFIDシステムにて個別RFIDタグが取り付けられた物品が搬送されてくる。そして、検査ライン80に対向するようにリーダアンテナ40を設置し、このリーダアンテナ40を介して個別RFIDタグから情報を読み取ることで物品が管理されることになる。
【0121】
そのため、検査ライン80上に、リーダアンテナ40に対して一定の間隔d1を介して検査用RFIDタグ10を対向設置し、上記同様の検査を行うことで、周波数特性が互いに異なる複数の個別RFIDタグを用いたシステムについて作業を煩雑にすることなく検査を行うことができる。
【0122】
(他の実施形態)
図12は、本発明のRFIDシステムの他の実施形態を示す図である。
【0123】
本実施形態は
図12に示すように、
図1に示したものに対して、制御マイコン90を有する点が異なる。また、本実施形態のRFIDリーダ130は、
図4に示した電源供給部38、電圧調整部39及び通信部34bを有していない。そのため、制御マイコン90において、
図4に示した電源供給部38、電圧調整部39及び通信部34bの機能を実現している。制御マイコン90は、管理用パソコン20とUSB等の有線で接続されている。また、RFIDリーダ130は、管理用パソコン20とUSBやLAN等の有線で接続されている。
【0124】
このように構成されたRFIDシステムにおいても、
図1に示したものと同様に、1つの検査用RFIDタグ10に対して、バリアブルキャパシタ14に印加される電圧を可変に制御することで、非接触通信のための周波数特性を設定することができる。それにより、顧客が実際に運用に用いる個別RFIDタグの周波数特性が互いに異なるものであっても、1つの検査用RFIDタグ10の周波数特性をそれに応じたものとすることができ、作業を煩雑にすることなく検査を行うことができるようになる。ただし、
図1に示したもののように、電源供給部38及び電圧調整部39がRFIDリーダ30に内蔵されているものにおいては、システム構成が複雑化することを回避できる。
【符号の説明】
【0125】
10 検査用RFIDタグ
11 ICチップ
12 アンテナ
12a,12b 導体
13 ベース基材
14 バリアブルキャパシタ
15 電圧印加端子
16a,16b 接続端子
17 GND端子
20 管理用パソコン
21,34a,34b 通信部
22 読み取り制御部
23 調整値登録/取得部
24 電圧変更命令部
25 読取結果登録/取得部
26 環境判断部
27 出力部
30,130 RFIDリーダ
31 共用器
32 タグデータ送信処理部
33 デジタル信号変換部
35 送信レベル調整部
36a RF送信部
36b RF受信部
37 タグデータ受信処理部
38 電源供給部
39 電圧調整部
40 リーダアンテナ
50 D/A変換器
61 調整値データベース
62 検査結果データベース
70 箱体
71 蓋部
72 収納部
73 底板
80 検査ライン
90 制御マイコン