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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134596
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】受変電設備自動遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20240927BHJP
   G01R 11/00 20060101ALI20240927BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R11/00 A
H02J13/00 301A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044868
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】397058909
【氏名又は名称】エネサーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深尾 勲
【テーマコード(参考)】
2G014
5G064
【Fターム(参考)】
2G014AA04
2G014AB02
5G064AA04
5G064AC09
5G064BA02
5G064BA04
5G064CB08
5G064CB16
5G064DA03
(57)【要約】
【課題】高圧電路においては微地絡が発生した絶縁劣化した箇所が負荷側にあるのか電源側にあるのかを判別することと、変圧器二次側の低圧電路においてはB種接地線に流れる漏洩電流を監視することができる、受変電設備自動遠隔監視システムを提供する。
【解決手段】受変電設備自動遠隔監視システム1は、電源11から負荷12に電気を供給する高圧電路10の責任分界点に設けられたPAS13に引込ケーブル15を介して接続される受変電設備14の状態を計測する複数のセンサと、複数のセンサが接続された少なくとも1つの計測監視装置4#1と、計測監視装置4#1による計測データを遠隔監視する遠隔監視センター5と、を備え、高圧電路においては方向判別点よりも負荷12側で微地絡が発生したか否かを判定するとともに、変圧器二次側の低圧電路においてはB種接地線に流れる漏洩電流を監視する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷に電気を供給する高圧電路の責任分界点に設けられた高圧気中開閉器に、引込ケーブルを介して接続される受変電設備の状態を計測する複数のセンサと、
前記複数のセンサが接続された少なくとも1つの計測監視装置と、
少なくとも1つの前記計測監視装置による計測データを遠隔監視する遠隔監視センターと、を備える受変電設備自動遠隔監視システムであって、
少なくとも1つの前記計測監視装置は、計測モジュールと、通信モジュールと、を着脱可能に実装し、
各前記計測監視装置は、機能モジュールと通信I/Fを介して接続可能であり、
前記複数のセンサは、
前記引込ケーブルに取付けられた第一零相変流器と、
引込ケーブルの前記受変電設備側の端部から引き出されて接地されたシールド線に、接地点側の極性を前記第一零相変流器の前記電源側の極性と同一にして取付けられた第二零相変流器と、
前記高圧電路に設置された変圧器の二次側のB種接地線に取り付けられた低圧漏洩計測用電流センサと、を含み、
前記計測モジュールは、
前記第一零相変流器により検出された第一零相電流の波形を比較波形として取得する比較波形取得部と、
前記比較波形のゼロクロスポイントを検出する比較波形ゼロクロス検出部と、
前記第二零相変流器により検出された第二零相電流の波形を基準波形として取得する基準波形取得部と、
前記基準波形のゼロクロスポイントを検出する基準波形ゼロクロス検出部と、
前記基準波形のゼロクロスポイントの時刻を基準とする前記比較波形のゼロクロスポイントの時間差を算出する時間差算出部と、
前記時間差算出部により算出された時間差を、前記基準波形の位相を基準とする前記比較波形の位相差に変換する位相差算出部と、
前記位相差算出部により算出された位相差が、前記第一零相電流と前記第二零相電流の極性が同じとなる位相差範囲内にあるときに、前記責任分界点よりも前記負荷側で微地絡が発生したと判定する地絡方向判定部と、を備え、
前記機能モジュールは、前記低圧漏洩計測用電流センサにより検出された漏洩電流を監視する機能を有し、
前記通信モジュールは、前記地絡方向判定部による判定結果と、前記機能モジュールによる監視結果を前記遠隔監視センターに送信することを特徴とする受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項2】
少なくとも2つの前記計測監視装置が、前記計測モジュールを着脱可能に実装していることを特徴とする請求項1に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項3】
前記計測モジュールは、
前記比較波形ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される周期ごとに、前記比較波形の実効値を算出する高圧漏洩電流実効値演算部と、
前記高圧漏洩電流実効値演算部により算出された前記比較波形の実効値を複数周期にわたって平均した平均値を算出する高圧漏洩電流平均値算出部と、
前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値があらかじめ定められた高圧漏洩電流閾値を超えたか否かを判断し、前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値が前記高圧漏洩電流閾値を超えた場合に高圧漏洩電流警報信号を発報する高圧漏洩電流警報要否判断部と、を更に含み、
前記通信モジュールは、前記高圧漏洩電流警報信号と、前記高圧漏洩電流実効値演算部により算出された前記比較波形の実効値と、前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値と、を前記遠隔監視センターに送信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項4】
前記複数のセンサは、前記高圧電路に設置された変流器の二次側に取り付けられた受電電流計測用電流センサを更に含み、
前記計測モジュールは、
前記受電電流計測用電流センサにより検出された受電電流の波形を受電電流波形として取得する受電電流波形取得部と、
前記受電電流波形のゼロクロスポイントを検出する受電電流ゼロクロス検出部と、
前記受電電流ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される周期ごとに、前記受電電流波形の実効値を算出する受電電流実効値演算部と、
前記受電電流実効値演算部により算出された前記受電電流波形の実効値を複数周期にわたって平均した平均値を算出する受電電流平均値算出部と、
前記受電電流平均値算出部により算出された平均値があらかじめ定められた受電電流閾値を超えたか否かを判断し、前記受電電流平均値算出部により算出された平均値が前記受電電流閾値を超えた場合に受電電流警報信号を発報する受電電流警報要否判断部と、を更に含み、
前記通信モジュールは、前記受電電流警報信号と、前記受電電流実効値演算部により算出された前記受電電流波形の実効値と、前記受電電流平均値算出部により算出された平均値と、を前記遠隔監視センターに送信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項5】
前記計測モジュールは、
前記受電電流ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される1周期分の前記受電電流波形を抽出する波形抽出部と、
前記波形抽出部により抽出された1周期分の前記受電電流波形をフーリエ変換して、前記受電電流波形の基本波成分と複数の高調波成分を算出するフーリエ変換演算部と、
前記複数の高調波成分の合計と前記基本波成分との比である合計歪率を算出する合計歪率算出部と、
前記合計歪率算出部により算出された合計歪率があらかじめ定められた合計歪率閾値を超えたか否かを判断し、前記合計歪率算出部により算出された合計歪率が前記合計歪率閾値を超えた場合に合計歪率警報信号を発報する合計歪率警報要否判断部と、を更に含み、
前記通信モジュールは、前記合計歪率警報信号と、前記合計歪率算出部により算出された合計歪率と、を前記遠隔監視センターに送信することを特徴とする請求項4に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項6】
前記遠隔監視センターは、前記通信モジュールから前記遠隔監視センターに送信された情報のうちの少なくとも一部を表示する表示装置を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項7】
前記遠隔監視センターとインターネットを介して接続された閲覧用端末と、を更に備え、
前記遠隔監視センターは、前記通信モジュールから前記遠隔監視センターに送信された情報のうちの少なくとも一部を前記閲覧用端末に表示させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受変電設備自動遠隔監視システムに関し、特に、高圧電路又は低圧電路で微地絡が発生した際に、高圧電路においては地絡点が構内又は構外のいずれにあるかを判定し、変圧器二次側の低圧電路においてはB種接地線に流れる漏洩電流を監視する、受変電設備自動遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、高圧又は特別高圧の受変電設備は、電気事業法により定期的な保守点検が義務付けられている。受変電設備には、例えば、電力ケーブル、避雷器、電力変圧器、進相コンデンサ、計器用変圧器、変流器などの各種の電気設備が接続されている。これら各種の電気設備における絶縁劣化により、構内設備の停電を伴う地絡事故が発生することがある。
【0003】
この絶縁劣化状態の監視では、高圧電路との接続点である責任分界点から負荷側を構内と称し、責任分界点から電源側を構外と称している。
【0004】
設備類の経年等で絶縁劣化が進行すると、地絡電流は漸増する傾向があるため、構内高圧電路に流入する地絡電流を常時監視することにより、地絡事故の前兆である微地絡を発見する自動保安点検システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7015627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された方法においては、微地絡が発生した絶縁劣化した箇所が、負荷側にあるのか電源側にあるのかを判別できないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、高圧電路においては微地絡が発生した絶縁劣化した箇所が負荷側にあるのか電源側にあるのかを判別することと、変圧器二次側の低圧電路においてはB種接地線に流れる漏洩電流を監視することができる、受変電設備自動遠隔監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、電源から負荷に電気を供給する高圧電路の責任分界点に設けられた高圧気中開閉器に、引込ケーブルを介して接続される受変電設備の状態を計測する複数のセンサと、前記複数のセンサが接続された少なくとも1つの計測監視装置と、少なくとも1つの前記計測監視装置による計測データを遠隔監視する遠隔監視センターと、を備える受変電設備自動遠隔監視システムであって、少なくとも1つの前記計測監視装置は、計測モジュールと、通信モジュールと、を着脱可能に実装し、各前記計測監視装置は、機能モジュールと通信I/Fを介して接続可能であり、前記複数のセンサは、前記引込ケーブルに取付けられた第一零相変流器と、引込ケーブルの前記受変電設備側の端部から引き出されて接地されたシールド線に、接地点側の極性を前記第一零相変流器の前記電源側の極性と同一にして取付けられた第二零相変流器と、前記高圧電路に設置された変圧器の二次側のB種接地線に取り付けられた低圧漏洩計測用電流センサと、を含み、前記計測モジュールは、前記第一零相変流器により検出された第一零相電流の波形を比較波形として取得する比較波形取得部と、前記比較波形のゼロクロスポイントを検出する比較波形ゼロクロス検出部と、前記第二零相変流器により検出された第二零相電流の波形を基準波形として取得する基準波形取得部と、前記基準波形のゼロクロスポイントを検出する基準波形ゼロクロス検出部と、前記基準波形のゼロクロスポイントの時刻を基準とする前記比較波形のゼロクロスポイントの時間差を算出する時間差算出部と、前記時間差算出部により算出された時間差を、前記基準波形の位相を基準とする前記比較波形の位相差に変換する位相差算出部と、前記位相差算出部により算出された位相差が、前記第一零相電流と前記第二零相電流の極性が同じとなる位相差範囲内にあるときに、前記責任分界点よりも前記負荷側で微地絡が発生したと判定する地絡方向判定部と、を備え、前記機能モジュールは、前記低圧漏洩計測用電流センサにより検出された漏洩電流を監視する機能を有し、前記通信モジュールは、前記地絡方向判定部による判定結果と、前記機能モジュールによる監視結果を前記遠隔監視センターに送信する構成である。
【0009】
この構成により、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、第一零相変流器により検出された第一零相電流のゼロクロスポイントと、第二零相変流器により検出された第二零相電流のゼロクロスポイントとに基づいて、第一零相電流と第二零相電流の位相差を算出することにより、微地絡が発生した絶縁劣化した箇所が負荷側にあるのか電源側にあるのかを判別することができる。また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、変圧器二次側の低圧電路においてはB種接地線に流れる漏洩電流を監視することができる。また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、取得した地絡方向の判定結果と、B種接地線に流れる漏洩電流の監視結果を遠隔監視センターで遠隔監視することができる。
【0010】
また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、少なくとも2つの前記計測監視装置が、前記計測モジュールを着脱可能に実装している構成であってもよい。
【0011】
この構成により、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、少なくとも2つの計測監視装置が計測モジュールをそれぞれ着脱可能に実装する場合には、例えば、複数のセンサを2つ以上の計測モジュールに振り分けて接続することができる。これにより、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、いずれかの計測監視装置の計測モジュールが故障したとしても、他の計測監視装置の計測モジュールからの計測データや警報信号を遠隔監視センターに送信することができ、データ損失の被害を最小限にとどめることができる。
【0012】
また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、前記計測モジュールが、前記比較波形ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される周期ごとに、前記比較波形の実効値を算出する高圧漏洩電流実効値演算部と、前記高圧漏洩電流実効値演算部により算出された前記比較波形の実効値を複数周期にわたって平均した平均値を算出する高圧漏洩電流平均値算出部と、前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値があらかじめ定められた高圧漏洩電流閾値を超えたか否かを判断し、前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値が前記高圧漏洩電流閾値を超えた場合に高圧漏洩電流警報信号を発報する高圧漏洩電流警報要否判断部と、を更に含み、前記通信モジュールは、前記高圧漏洩電流警報信号と、前記高圧漏洩電流実効値演算部により算出された前記比較波形の実効値と、前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値と、を前記遠隔監視センターに送信する構成であってもよい。
【0013】
この構成により、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、第一零相変流器により検出された第一零相電流に基づいて、高圧電路における高圧漏洩電流のデータを取得することができる。また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、取得した高圧漏洩電流のデータと、取得した高圧漏洩電流のデータに異常があった場合に発報する高圧漏洩電流警報信号を遠隔監視センターで遠隔監視することができる。
【0014】
また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、前記複数のセンサが、前記高圧電路に設置された変流器の二次側に取り付けられた受電電流計測用電流センサを更に含み、前記計測モジュールは、前記受電電流計測用電流センサにより検出された受電電流の波形を受電電流波形として取得する受電電流波形取得部と、前記受電電流波形のゼロクロスポイントを検出する受電電流ゼロクロス検出部と、前記受電電流ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される周期ごとに、前記受電電流波形の実効値を算出する受電電流実効値演算部と、前記受電電流実効値演算部により算出された前記受電電流波形の実効値を複数周期にわたって平均した平均値を算出する受電電流平均値算出部と、前記受電電流平均値算出部により算出された平均値があらかじめ定められた受電電流閾値を超えたか否かを判断し、前記受電電流平均値算出部により算出された平均値が前記受電電流閾値を超えた場合に受電電流警報信号を発報する受電電流警報要否判断部と、を更に含み、前記通信モジュールは、前記受電電流警報信号と、前記受電電流実効値演算部により算出された前記受電電流波形の実効値と、前記受電電流平均値算出部により算出された平均値と、を前記遠隔監視センターに送信する構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、電流センサにより検出された受電電流に基づいて、高圧電路における受電電流のデータを取得することができる。また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、取得した受電電流のデータと、取得した受電電流のデータに異常があった場合に発報する受電電流警報信号を遠隔監視センターで遠隔監視することができる。
【0016】
また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、前記計測モジュールが、前記受電電流ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される1周期分の前記受電電流波形を抽出する波形抽出部と、前記波形抽出部により抽出された1周期分の前記受電電流波形をフーリエ変換して、前記受電電流波形の基本波成分と複数の高調波成分を算出するフーリエ変換演算部と、前記複数の高調波成分の合計と前記基本波成分との比である合計歪率を算出する合計歪率算出部と、前記合計歪率算出部により算出された合計歪率があらかじめ定められた合計歪率閾値を超えたか否かを判断し、前記合計歪率算出部により算出された合計歪率が前記合計歪率閾値を超えた場合に合計歪率警報信号を発報する合計歪率警報要否判断部と、を更に含み、前記通信モジュールは、前記合計歪率警報信号と、前記合計歪率算出部により算出された合計歪率と、を前記遠隔監視センターに送信する構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、電流センサにより検出された受電電流の合計歪率のデータを取得することができる。また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、取得した合計歪率のデータと、取得した合計歪率のデータに異常があった場合に発報する合計歪率警報信号を遠隔監視センターで遠隔監視することができる。
【0018】
また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、前記遠隔監視センターが、前記通信モジュールから前記遠隔監視センターに送信された情報のうちの少なくとも一部を表示する表示装置を有する構成であってもよい。
【0019】
この構成により、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、高圧電路における各種計測データや警報信号を、遠隔監視センターで監視員が表示装置を介して把握することを可能にする。これにより、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、事故調査と原因究明を早急に実施する体制を整えることを容易にするため、電気保安品質の向上が望める。
【0020】
また、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、前記遠隔監視センターとインターネットを介して接続された閲覧用端末と、を更に備え、前記遠隔監視センターは、前記通信モジュールから前記遠隔監視センターに送信された情報のうちの少なくとも一部を前記閲覧用端末に表示させる構成であってもよい。
【0021】
この構成により、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、高圧電路における各種計測データを、受変電設備の需要家が閲覧用端末を介して把握することを可能にする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、高圧電路においては微地絡が発生した絶縁劣化した箇所が負荷側にあるのか電源側にあるのかを判別することと、変圧器二次側の低圧電路においてはB種接地線に流れる漏洩電流を監視することができる、受変電設備自動遠隔監視システムを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システムが備える各種センサの設置例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システムが備える計測モジュールの構成を示すブロック図である。
図4】(a)は計測モジュールにおける高圧漏洩電流算出部の機能ブロック図であり、(b)は計測モジュールにおける受電電流算出部の機能ブロック図である。
図5】高圧漏洩電流算出部による高圧漏洩電流の算出方法と、受電電流算出部による受電電流の算出方法を説明するための図である。
図6】高圧漏洩電流算出部による位相差の算出方法を説明するための図である。
図7】受電電流算出部による合計歪率の算出方法を説明するための図である。
図8】高圧電路に設置された変圧器の二次側の低圧電路における漏洩電流を説明するための図である。
図9】(a)及び(b)は本発明の実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システムが備える遠隔監視センターの表示装置における表示例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システムが備える遠隔監視センターの表示装置における表示例を示す図である。
図11】(a)~(c)は本発明の実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システムが備える閲覧用端末における表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
まず、本発明の実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システムの構成について説明する。図1に示すように、本実施形態の受変電設備自動遠隔監視システム1は、高圧電路10(図2参照)又は低圧電路50(図8参照)に設置された複数のセンサ3が接続された少なくとも1つの計測監視装置4#1などの計測監視装置4と、計測監視装置4による計測データを遠隔監視する遠隔監視センター5と、遠隔監視センター5とインターネット6を介して接続された閲覧用端末7と、を備える。
【0026】
計測監視装置4は、RS-485通信により通信I/F40を介してデイジーチェーン接続可能に構成されている。図1は、一例として、計測監視装置4#1~4#15の15台がデイジーチェーン接続された構成を示している。なお、計測監視装置4#15の通信I/F40が計測監視装置4#1の通信I/F40に接続されたリング型の接続となっていてもよい。リング型の接続とすることで、計測監視装置4#1~4#15のいずれか1つの装置が故障したり、RS-485の接続ケーブルに断線が生じたりした場合であっても、通信遮断を防ぐことができるようになる。
【0027】
計測監視装置4は、各種のオプションモジュールを内部に着脱可能に実装することにより、機能を拡張することができるようになっている。さらに、計測監視装置4は、各種の機能モジュール45が通信I/F46を介して接続されることにより、機能を拡張することが可能になっていてもよい。機能モジュール45は、RS-485通信によりデイジーチェーン接続可能に構成されており、例えば最大15台までデイジーチェーン接続できるようになっている。
【0028】
機能モジュール45が有する各種の機能には、例えば、後述する計測モジュール41の機能、後述するパルス入力モジュール42の機能、電流を計測する機能、温度センサを内蔵して温度を計測する機能、使用電力削減量を計測する機能、使用電力を計測する機能などが含まれる。計測監視装置4は、これらの機能モジュール45を計測監視装置4に適宜接続することで、受変電設備の環境に合わせて機能を拡張することができる。
【0029】
図1は、計測監視装置4#1に、計測モジュール41、パルス入力モジュール42、及び通信モジュール43が着脱可能に実装され、計測監視装置4#2に、計測モジュール41と2つのパルス入力モジュール42が着脱可能に実装された例を示している。このように、少なくとも2つの計測監視装置4が計測モジュール41をそれぞれ着脱可能に実装する場合には、例えば、複数のセンサ3を2つ以上の計測モジュール41に振り分けて接続することができる。
【0030】
計測モジュール41は、高圧電路10の受電電流、合計歪率、高圧漏洩電流などの監視を行うためのモジュールである。パルス入力モジュール42は、高圧電路10に設置された複数のセンサ3のうち、パルス信号を出力するセンサの計測値を監視するためのモジュールである。
【0031】
通信モジュール43は、アナログ回線又はLTE(Long Term Evolution)網を利用して、遠隔監視センター5と計測データ及び各種警報信号の送受信を行うためのモジュールである。また、通信モジュール43は、アナログ回線又はLTE網を利用して、各種オプションモジュール又は各種の機能モジュール45から警報信号が発報された際に、遠隔監視センター5に警報信号を送信するようになっている。
【0032】
計測監視装置4#2のように通信モジュール43が実装されていない計測監視装置は、他の計測監視装置に実装された通信モジュール43を介して、遠隔監視センター5と計測データ及び各種警報信号の送受信を行うことができるようになっている。
【0033】
図2に示すように、電源11側から負荷12側に電気を供給する高圧電路10の責任分界点に設けられた高圧気中開閉器(Pole Air Switch:PAS)13と、需要家の設備である受変電設備14との間には、引込ケーブル15が配線されている。高圧電路10は、引込ケーブル15の受変電設備14側の端部から引き出された三相一括のシールド線16によって接地されている。
【0034】
高圧電路10には、例えば、第一零相変流器としてのZCTセンサ31、第二零相変流器としてのZIVセンサ32、V0センサ33、CTセンサ34、温度センサ35a,35b,35c、超音波センサ36、雷センサ37、瞬低センサ38、電力量センサ39a,39b,39cなどの複数のセンサ3が設置されている。これらのセンサは、計測モジュール41、パルス入力モジュール42、又は機能モジュール45に接続されることにより、高圧電路10の絶縁状態や受変電設備14の状態を計測及び監視するためのものである。また、複数のセンサ3は、後述する低圧電路50に設置されるCT51を含む。
【0035】
図3に示すように、ZCTセンサ31及びZIVセンサ32における記号K及びLは零相変流器の極性を示している。各センサにおいて、極性Kから極性L方向に零相電流が流れる場合は、正の電流が検出され、極性Lから極性K方向に零相電流が流れる場合は、負の電流が検出される。ここで、ZCTセンサ31は、電源11側を極性Kとして引込ケーブル15に取付けられ、ZIVセンサ32は接地点25側を極性Kとしてシールド線16に取付けられる。
【0036】
ZCTセンサ31は、高圧電路10における高圧漏洩電流の計測及び監視をするためのセンサであり、極性K側の端部が計測モジュール41の端子ZA-Kに接続され、極性L側の端部が計測モジュール41の端子ZA-Lに接続された状態で使用される。また、ZCTセンサ31の極性K側の配線と極性L側の配線の間には、電流を電圧に変換するための例えば100Ωの負荷抵抗31aが接続される。
【0037】
ZCTセンサ31は、例えば、クランプ式零相変流器などの貫通形零相変流器であり、引込ケーブル15に取り付けられる。ZCTセンサ31は、クランプ式零相変流器である場合には、開環可能である環状の検出部を備えており、開環した検出部に引込ケーブル15を通した後に検出部を閉環することで、検出部に引込ケーブル15を挿通させた状態で使用される。例えば、ZCTセンサ31の電流値の測定範囲は50mA~1250mAであり、貫通孔のサイズは80×74mmである。
【0038】
ZIVセンサ32は、高圧電路10における高圧漏洩電流の方向判別を行うための基準波形を検出する電流センサであり、極性K側の端部が計測モジュール41の端子ZB-Kに接続され、極性L側の端部が計測モジュール41の端子ZB-Lに接続された状態で使用される。
【0039】
ZIVセンサ32は、例えば、貫通形零相変流器であり、シールド線16に取り付けられる。ZIVセンサ32は、環状の検出部を備えており、検出部に引込ケーブル15を挿通させた状態で使用される。例えば、ZIVセンサ32の電流値の測定範囲は10mA以上であり、貫通孔の直径は24mmである。
【0040】
図2に示すように、V0センサ33は、高圧電路10にEVT(Earthed Voltage Transformer)が設置されている場合に、EVTの三次電圧、すなわち、地絡電圧の計測及び監視をするための電圧センサであり、計測モジュール41に接続された状態で使用される。V0センサ33は、検出した地絡電圧が設定値を超過した場合に警報信号を発報するようになっている。計測モジュール41は、V0センサ33により検出された地絡電圧と、V0センサ33により地絡電圧が設定値を超えた場合に発報される警報信号とを、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0041】
図3に示すように、CTセンサ34は、高圧電路10に設置された変流器(Current Transformer:CT)17の二次側に取り付けられて、高圧電路10における受電電流と合計歪率の計測及び監視をするための受電電流計測用電流センサを構成する。CTセンサ34は、極性K側の端部が計測モジュール41の端子ZC-Kに接続され、極性L側の端部が計測モジュール41の端子ZC-Lに接続された状態で使用される。例えば、CTセンサ34の電流値の測定範囲は1A~30Aであり、貫通孔の直径は24mmである。
【0042】
図2に示すように、温度センサ35a~35cは、高圧電路10に設置された進相コンデンサ(Static Capacitor:SC)18や変圧器(Transformer:Tr)19a,19bなどの機器の外壁温度監視をするためのセンサであり、計測モジュール41又はパルス入力モジュール42に接続された状態で使用される。温度センサ35a~35cは、検出した温度が設定値を超過した場合に警報信号を発報するようになっている。計測モジュール41又はパルス入力モジュール42は、温度センサ35a~35cにより検出された温度の計測データと、温度センサ35a~35cにより検出温度が設定値を超えた場合に発報される警報信号とを、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0043】
超音波センサ36は、引込ケーブル15や真空遮断器(Vacuum Circuit Breaker:VCB)20等の高圧電気機器の絶縁不良により発生する部分放電を検出するためのセンサであり、計測モジュール41又はパルス入力モジュール42に接続された状態で使用される。超音波センサ36は、部分放電を検出した場合に、部分放電が発生した旨の警報信号を発報するようになっている。計測モジュール41又はパルス入力モジュール42は、超音波センサ36により検出された部分放電の回数の計測データと、超音波センサ36により部分放電が検出された際に発報される警報信号とを、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0044】
雷センサ37は、アレスタ(Lightning Arrester:LA)21の接地線に流れる電流を監視し、雷サージ浸入(衝撃放電電流)を検出するためのセンサであり、計測モジュール41又はパルス入力モジュール42に接続された状態で使用される。計測モジュール41又はパルス入力モジュール42は、雷センサ37により検出された電流が設定値を超えた場合に発報される警報信号を、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0045】
瞬低センサ38は、高圧電路10の瞬低監視を行うためのセンサであり、計測モジュール41又はパルス入力モジュール42に接続された状態で使用される。計測モジュール41又はパルス入力モジュール42は、瞬低センサ38により検出された電圧が設定値を下回った場合に発報される警報信号を、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0046】
電力量センサ39a~39cは、高圧電路10に設置された計器用変圧器(Voltage Transformer:VT)22、CT17、Tr19a,19bなどの機器の電力量を監視するためのセンサであり、計測モジュール41又はパルス入力モジュール42に接続された状態で使用される。計測モジュール41又はパルス入力モジュール42は、電力量センサ39a~39cにより検出された電力量の計測データを、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0047】
以下、計測モジュール41の構成と動作について説明する。
【0048】
図3に示すように、計測モジュール41は、ZCTセンサ31が接続される端子ZA-K,ZA-Lと、増幅回路410aと、増幅回路410aの出力から高調波ノイズを除去するためのフィルタ回路411aと、フィルタ回路411aの出力を所定のサンプリング周期でアナログ/デジタル変換するADC412aと、を有する。ここで、ZCTセンサ31から出力された第一零相電流は、負荷抵抗31aにより第一零相電圧に変換されて、端子ZA-K,ZA-Lに入力される。
【0049】
増幅回路410aは、端子ZA-K,ZA-Lからアイソレーショントランス413を介して入力された第一零相電圧を増幅するようになっている。アイソレーショントランス413のインピーダンスは、例えば10kΩである。ADC412aのサンプリング数は、1/50[Hz]又は1/60[Hz]を1サイクルとするとき、例えば128である。
【0050】
負荷抵抗31a、アイソレーショントランス413、増幅回路410a、フィルタ回路411a、及びADC412aは、ZCTセンサ31により検出された第一零相電流の波形を比較波形のデータとして取得する比較波形取得部を構成する。
【0051】
また、計測モジュール41は、ZIVセンサ32が接続される端子ZB-K,ZB-Lと、増幅回路410bと、増幅回路410bの出力から高調波ノイズを除去するためのフィルタ回路411bと、フィルタ回路411bの出力を所定のサンプリング周期でアナログ/デジタル変換するADC412bと、を有する。ここで、端子ZB-K,ZB-L間には、電流を電圧に変換するための例えば2.2kΩの負荷抵抗414が接続されており、ZIVセンサ32から出力された第二零相電流は、端子ZB-K,ZB-Lに入力された後に、負荷抵抗414により第二零相電圧に変換される。
【0052】
増幅回路410bは、端子ZB-K,ZB-Lから負荷抵抗414を介して入力された第二零相電圧を増幅するようになっている。ADC412bのサンプリング数は、1/50[Hz]又は1/60[Hz]を1サイクルとするとき、例えば128である。
【0053】
負荷抵抗414、増幅回路410b、フィルタ回路411b、及びADC412bは、ZIVセンサ32により検出された第二零相電流の波形を基準波形のデータとして取得する基準波形取得部を構成する。
【0054】
また、計測モジュール41は、CTセンサ34が接続される端子ZC-K,ZC-Lと、増幅回路410cと、増幅回路410cの出力から高調波ノイズを除去するためのフィルタ回路411cと、フィルタ回路411cの出力を所定のサンプリング周期でアナログ/デジタル変換するADC412cと、を有する。ここで、端子ZC-K,ZC-L間には、電流を電圧に変換するための例えば5.1Ωの負荷抵抗415が接続されており、CTセンサ34から出力された受電電流は、端子ZC-K,ZC-Lに入力された後に、負荷抵抗415により受電電圧に変換される。
【0055】
増幅回路410cは、端子ZC-K,ZC-Lから負荷抵抗415を介して入力された受電電圧を増幅するようになっている。ADC412cのサンプリング数は、1/50[Hz]又は1/60[Hz]を1サイクルとするとき、例えば128である。
【0056】
負荷抵抗415、増幅回路410c、フィルタ回路411c、及びADC412cは、CTセンサ34により検出された受電電流の波形を受電電流波形のデータとして取得する受電電流波形取得部を構成する。
【0057】
さらに、計測モジュール41は、所定のプログラムを実行することにより、高圧漏洩電流算出部420、受電電流算出部430をソフトウェア的に構成するCPU450と、計測データ保存部460と、を有する。
【0058】
図4(a)に示すように、高圧漏洩電流算出部420は、比較波形ゼロクロス検出部421と、高圧漏洩電流実効値演算部422と、高圧漏洩電流平均値算出部423と、高圧漏洩電流警報要否判断部424と、基準波形ゼロクロス検出部425と、時間差算出部426と、位相差算出部427と、地絡方向判定部428と、を含む。
【0059】
比較波形ゼロクロス検出部421は、ADC412aから出力された比較波形がゼロレベルとなるゼロクロスポイント、すなわち、第一零相電流がゼロとなるタイミングを検出するようになっている。例えば、比較波形ゼロクロス検出部421は、ADC412aから出力された比較波形に必要に応じてデータ補間を実施した上で、ゼロクロスポイントの時刻を検出する。
【0060】
高圧漏洩電流実効値演算部422は、図5に示すように、比較波形ゼロクロス検出部421により検出されたゼロクロスポイント(図中の黒丸)の間隔で規定されるサイクル(周期)ごとに、比較波形の実効値、すなわち、高圧漏洩電流波形の実効値を算出するようになっている。ただし、高圧漏洩電流実効値演算部422は、算出された高圧漏洩電流波形の実効値が30mA以下であった場合には、その実効値をゼロに置きかえるようになっている。ここで、ゼロクロスポイントの間隔で規定されるサイクルとは、隣り合うゼロクロスポイント間の時間間隔の2倍の時間である。例えば、電源11の周波数が50Hzの場合は、1サイクルの時間は20msとなり、電源11の周波数が60Hzの場合は、1サイクルの時間は16.67msとなる。
【0061】
高圧漏洩電流平均値算出部423は、高圧漏洩電流実効値演算部422により算出された高圧漏洩電流波形の実効値を複数周期にわたって平均した平均値を算出するようになっている。例えば、高圧漏洩電流平均値算出部423は、図5に示すような4サイクル分の高圧漏洩電流波形の実効値の平均値を算出し、この平均値を最小単位時間当たりの高圧漏洩電流の平均電流値とする。このようにして、高圧漏洩電流平均値算出部423は、4サイクルごとに高圧漏洩電流の平均電流値を出力する。以降では、この4サイクルを「1コマ」とも呼ぶ。
【0062】
また、高圧漏洩電流算出部420は、高圧漏洩電流実効値演算部422により1コマの期間に得られた高圧漏洩電流波形の実効値の中から最小値及び最大値を選択して、平常時の高圧漏洩電流波形の計測データとしてあらかじめ定められた指定時間ごとに計測データ保存部460に保存するようになっている。さらに、高圧漏洩電流算出部420は、高圧漏洩電流平均値算出部423により1コマの期間に得られた平均電流値を、平常時の高圧漏洩電流波形の計測データとしてあらかじめ定められた指定時間ごとに計測データ保存部460に保存するようになっている。上記の指定時間は、例えば、5分、10分、30分の中から設定可能である。計測データ保存部460に保存された平常時の高圧漏洩電流波形の計測データは、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信される。
【0063】
高圧漏洩電流警報要否判断部424は、高圧漏洩電流平均値算出部423により算出された高圧漏洩電流の平均電流値があらかじめ定められた高圧漏洩電流閾値を超えたか否かを判断するようになっている。高圧漏洩電流平均値算出部423により算出された高圧漏洩電流の平均電流値が高圧漏洩電流閾値を超えた場合には、高圧漏洩電流警報要否判断部424は、過大な高圧漏洩電流が発生した旨の高圧漏洩電流警報信号を発報するようになっている。
【0064】
また、高圧漏洩電流算出部420は、高圧漏洩電流警報要否判断部424により高圧漏洩電流の平均電流値が高圧漏洩電流閾値を超えたことが検知されてから10コマ分の高圧漏洩電流波形の実効値の中から最大の実効値を選択して、異常時の高圧漏洩電流波形の計測データとして計測データ保存部460に保存するようになっている。計測データ保存部460に保存された異常時の高圧漏洩電流波形の計測データは、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信される。
【0065】
すなわち、通信モジュール43は、高圧漏洩電流警報要否判断部424により発報された高圧漏洩電流警報信号と、高圧漏洩電流実効値演算部422及び高圧漏洩電流平均値算出部423により算出された高圧漏洩電流波形の計測データと、を遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0066】
基準波形ゼロクロス検出部425は、ADC412bから出力された基準波形がゼロレベルとなるゼロクロスポイント、すなわち、第二零相電流がゼロとなるタイミングを検出するようになっている。例えば、基準波形ゼロクロス検出部425は、ADC412bから出力された基準波形に必要に応じてデータ補間を実施した上で、ゼロクロスポイントの時刻を検出する。
【0067】
時間差算出部426は、図6に示すように、基準波形ゼロクロス検出部425により検出された基準波形のゼロクロスポイントの時刻を基準とする、比較波形ゼロクロス検出部421により検出された高圧漏洩電流波形のゼロクロスポイントの時間差を算出するようになっている。時間差算出部426は、基準波形のゼロクロスポイントと高圧漏洩電流波形のゼロクロスポイントの時間差の算出を、例えば1サイクルごとに行う。
【0068】
位相差算出部427は、電源11の周波数(50Hz又は60Hz)に応じて、時間差算出部426により算出された時間差を、基準波形の位相を基準とする高圧漏洩電流波形の位相差に変換するようになっている。位相差算出部427は、高圧漏洩電流波形の位相差の算出を、例えば1サイクルごとに行う。
【0069】
地絡方向判定部428は、位相差算出部427により算出された位相差が、第一零相電流と第二零相電流の極性が同じとなる位相差範囲内にあるときに、責任分界点よりも負荷12側で微地絡が発生したと判定するようになっている。第一零相電流と第二零相電流の極性が同じといえる位相差範囲は、ZCTセンサ31及びZIVセンサ32からそれぞれ計測モジュール41まで引き回されるケーブルの長さの違いや、計測モジュール41を構成する増幅回路やフィルタ回路などの周波数特性の影響により、例えば、+150°から-35°の範囲の広がりを持っている。この場合、地絡方向判定部428は、位相差算出部427により算出された位相差が+150°から-35°の範囲内の値であるときに、責任分界点よりも負荷12側、すなわち構内で微地絡が発生したと判定する。一方、地絡方向判定部428は、位相差算出部427により算出された位相差が+150°から-35°の範囲外の値であるときに、責任分界点よりも電源11側、すなわち構外で微地絡が発生したと判定する。地絡方向判定部428は、構内と構外のいずれで微地絡が発生したかの判定を、例えば1サイクルごとに行う。
【0070】
なお、比較波形ゼロクロス検出部421又は基準波形ゼロクロス検出部425がゼロクロスポイントを検出できなかったなどの何らかの理由により、位相差算出部427が正常に位相差を算出できなかった場合には、地絡方向判定部428は、ZCTセンサ31で不要な電磁誘導や静電誘導(以下、単に「誘導」ともいう)が発生し、正常な第一零相電流が出力されなかったと判定する。
【0071】
また、高圧漏洩電流算出部420は、高圧漏洩電流警報要否判断部424により高圧漏洩電流の平均電流値が高圧漏洩電流閾値を超えたことが検知されてから10コマ分の判定結果(構外、構内、又は誘導)の計測データを計測データ保存部460に保存するようになっている。通信モジュール43は、計測データ保存部460に保存された地絡方向判定部428による判定結果の計測データを遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0072】
図4(b)に示すように、受電電流算出部430は、受電電流ゼロクロス検出部431と、受電電流実効値演算部432と、受電電流平均値算出部433と、受電電流警報要否判断部434と、波形抽出部435と、フーリエ変換演算部436と、合計歪率算出部437と、合計歪率警報要否判断部438と、を含む。
【0073】
受電電流ゼロクロス検出部431は、ADC412cから出力された受電電流波形がゼロレベルとなるゼロクロスポイント、すなわち、受電電流がゼロとなるタイミングを検出するようになっている。例えば、受電電流ゼロクロス検出部431は、ADC412cから出力された受電電流波形に必要に応じてデータ補間を実施した上で、ゼロクロスポイントの時刻を検出する。
【0074】
受電電流実効値演算部432は、図5に示すように、受電電流ゼロクロス検出部431により検出されたゼロクロスポイント(図中の黒丸)の間隔で規定されるサイクルごとに、受電電流波形の実効値を算出するようになっている。ここで、ゼロクロスポイントの間隔で規定されるサイクルとは、隣り合うゼロクロスポイント間の時間間隔の2倍の時間である。
【0075】
受電電流平均値算出部433は、受電電流実効値演算部432により算出された受電電流波形の実効値を複数周期にわたって平均した平均値を算出するようになっている。例えば、受電電流平均値算出部433は、図5に示すような4サイクル分の受電電流波形の実効値の平均値を算出し、この平均値を最小単位時間当たりの受電電流の平均電流値とする。このようにして、受電電流平均値算出部433は、1コマごとに受電電流の平均電流値を出力する。
【0076】
また、受電電流算出部430は、受電電流実効値演算部432により1コマの期間に得られた受電電流波形の実効値の中から最小値及び最大値を選択して、平常時の受電電流波形の計測データとしてあらかじめ定められた指定時間ごとに計測データ保存部460に保存するようになっている。さらに、受電電流算出部430は、受電電流平均値算出部433により1コマの期間に得られた平均値を、平常時の受電電流波形の計測データとしてあらかじめ定められた指定時間ごとに計測データ保存部460に保存するようになっている。上記の指定時間は、例えば、5分、10分、30分の中から設定可能である。計測データ保存部460に保存された平常時の受電電流波形の計測データは、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信される。
【0077】
受電電流警報要否判断部434は、受電電流平均値算出部433により算出された受電電流の平均電流値があらかじめ定められた受電電流閾値を超えたか否かを判断するようになっている。受電電流平均値算出部433により算出された受電電流の平均電流値が受電電流閾値を超えた場合には、受電電流警報要否判断部434は、過大な受電電流が発生した旨の受電電流警報信号を発報するようになっている。
【0078】
また、受電電流算出部430は、受電電流警報要否判断部434により受電電流の平均電流値が受電電流閾値を超えたことが検知された1コマ分の受電電流の平均電流値を異常時の受電電流波形の計測データとして計測データ保存部460に保存するようになっている。計測データ保存部460に保存された異常時の受電電流波形の計測データは、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信される。
【0079】
すなわち、通信モジュール43は、受電電流警報要否判断部434により発報された受電電流警報信号と、受電電流実効値演算部432及び受電電流平均値算出部433により算出された受電電流波形の計測データと、を遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0080】
波形抽出部435は、受電電流ゼロクロス検出部431により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される1サイクル分の受電電流波形を抽出するようになっている。
【0081】
フーリエ変換演算部436は、波形抽出部435により抽出された1サイクル分の受電電流波形を離散フーリエ変換又は高速フーリエ変換して、受電電流波形の基本波成分と複数の高調波成分を算出するようになっている。例えば、フーリエ変換演算部436は、受電電流波形の基本波成分と、第5高調波成分と、第7高調波成分と、を算出する。
【0082】
図7は、波形抽出部435とフーリエ変換演算部436の処理のタイミングを説明するための図である。まず、波形抽出部435は、1サイクル分の受電電流波形を抽出する。次に、フーリエ変換演算部436は、波形抽出部435により抽出された1サイクル分の受電電流波形の基本波成分と高調波成分を算出する。フーリエ変換演算部436による1サイクル分の受電電流波形に対する演算が終了すると、波形抽出部435は、次のゼロクロスポイントを開始位置として、再び1サイクル分の受電電流波形を抽出する。このようにして、波形抽出部435とフーリエ変換演算部436による処理が繰り返される。
【0083】
合計歪率算出部437は、フーリエ変換演算部436により算出された複数の高調波成分の合計と基本波成分との比である合計歪率を算出するようになっている。例えば、合計歪率算出部437は、フーリエ変換演算部436により算出された受電電流波形の基本波成分と、第5高調波成分と、第7高調波成分について、それぞれ例えば4回分の平均を取る。ここで、基本波の周波数は、電源11の周波数である50Hz又は60Hzであり、第5高調波成分の周波数は250Hz又は300Hzであり、第7高調波成分の周波数は350Hz又は420Hzである。
【0084】
そして、合計歪率算出部437は、下記の式(1)に示すように、得られた受電電流波形の基本波成分の平均値Eと、第5高調波成分の平均値Eと、第7高調波成分の平均値Eと、を用いて合計歪率を算出する。例えば、合計歪率算出部437による1回分の基本波成分及び高調波成分の取得に約5秒かかるとすると、合計歪率算出部437は約20秒ごとに合計歪率を出力することになる。
【0085】
【数1】
【0086】
また、受電電流算出部430は、合計歪率算出部437により算出された合計歪率を、平常時の合計歪率の計測データとしてあらかじめ定められた指定時間ごとに計測データ保存部460に保存するようになっている。上記の指定時間は、例えば、5分、10分、30分の中から設定可能である。計測データ保存部460に保存された平常時の合計歪率の計測データは、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信される。
【0087】
合計歪率警報要否判断部438は、合計歪率算出部437により算出された合計歪率があらかじめ定められた合計歪率閾値を超えたか否かを判断するようになっている。合計歪率算出部437により算出された合計歪率が合計歪率閾値を超えた場合には、合計歪率警報要否判断部438は、過大な高調波歪が発生した旨の合計歪率警報信号を発報するようになっている。
【0088】
また、受電電流算出部430は、合計歪率警報要否判断部438により合計歪率が高圧漏洩電流閾値を超えたことが検知された合計歪率を異常時の合計歪率の計測データとして計測データ保存部460に保存するようになっている。計測データ保存部460に保存された異常時の合計歪率の計測データは、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信される。
【0089】
すなわち、通信モジュール43は、合計歪率警報要否判断部438により発報された合計歪率警報信号と、合計歪率算出部437により算出された合計歪率の計測データと、を遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0090】
遠隔監視センター5は、通信モジュール43から遠隔監視センター5に送信された情報のうちの少なくとも一部を表示する表示装置30を有する。遠隔監視センター5においては、監視員が表示装置30を介して、高圧電路10の絶縁状態や、受変電設備14の状態を常時監視しており、高圧電路10に設置された各種センサから警報信号が発報された場合に、監視員が遠隔監視センター5から当該事業所に連絡するとともに、専門技術者を当該事業所に派遣するようになっている。
【0091】
図8は、図2に示した受変電設備自動遠隔監視システム1において、高圧電路10に設置されたTr19a(又は19b)の二次側の低圧電路50における漏洩電流を説明するための図である。
【0092】
Tr19aは、例えば、一次電圧が6600Vで二次電圧が210-105Vの単相三線式の単相変圧器であり、6600Vの高圧電路10と負荷12の間に設置されている。
【0093】
負荷12において絶縁劣化が発生すると、絶縁抵抗に起因する漏洩電流Iorが発生する。また、低圧電路50においては、対地静電容量に起因する漏洩電流Iocが常に発生している。これらの漏洩電流を検出するための低圧漏洩計測用電流センサとしてのCTセンサ51は、Tr19aの二次側のB種接地線に取り付けられている。
【0094】
機能モジュール45としての低圧漏洩電流監視モジュール52は、CTセンサ51により検出された漏洩電流を監視する機能を有している。例えば、低圧漏洩電流監視モジュール52は、漏洩電流Iorと漏洩電流Iocのベクトル和である漏洩電流Ioを検出するIo方式、漏洩電流Iorを検出するIor方式、又は、低圧電路50に低周波信号を重畳して漏洩電流Iorを検出するIgr方式を実行して、低圧電路50における漏洩電流を監視することができる。
【0095】
低圧漏洩電流監視モジュール52は、低圧漏洩電流監視モジュール52により監視された漏洩電流の監視結果、すなわち、漏洩電流Io及び漏洩電流Iorの値の少なくとも一方を、通信モジュール43を介して遠隔監視センター5に送信するようになっている。
【0096】
以下、図9(a)及び(b)並びに図10に表示装置30における表示例を示す。
【0097】
図9(a)は、高圧漏洩電流平均値算出部423により算出された高圧漏洩電流の平均電流値が高圧漏洩電流閾値を超えた日時、変電所(S/S)の識別番号、計測データ保存部460に保存された高圧漏洩電流波形の実効値の最大値、地絡方向判定部428による判定結果の表示装置30における表示例である。
【0098】
図9(b)は、計測データ保存部460に30分ごとに保存された、高圧漏洩電流波形の1コマの期間の平均電流値の表示装置30における表示例である。
【0099】
図10は、計測データ保存部460に30分ごとに保存された合計歪率の表示装置30における表示例である。
【0100】
また、遠隔監視センター5は、通信モジュール43から遠隔監視センター5に送信された情報のうちの少なくとも一部を閲覧用端末7に表示させるようになっている。以下、図11(a)~(c)に閲覧用端末7における表示例を示す。
【0101】
図11(a)は、閲覧用端末7におけるユーザインタフェースの一例を示している。閲覧用端末7の表示画面の左側には、各種グラフの表示期間を設定するための表示期間設定領域70が表示される。ユーザは、表示期間設定領域70において、表示年月日、当該表示年月日における表示単位などを任意に設定することが可能である。また、閲覧用端末7の表示画面の右側には、表示期間設定領域70において設定された表示期間で表示させる各種グラフを選択するためのグラフ選択領域71が表示される。
【0102】
図11(b)は、表示年月日を2021年5月2日、表示単位を1時間、表示するグラフを高圧漏洩電流とする設定が表示期間設定領域70とグラフ選択領域71において行われた場合の、グラフの表示例を示している。図11(b)のグラフは、計測データ保存部460に保存された1時間ごとの高圧漏洩電流波形の実効値の最大値の閲覧用端末7における表示例である。
【0103】
図11(c)は、表示年月を2021年5月、表示単位を1日、表示するグラフを高圧漏洩電流とする設定が表示期間設定領域70とグラフ選択領域71において行われた場合の、グラフの表示例を示している。図11(c)のグラフは、計測データ保存部460に保存された1日ごとの高圧漏洩電流波形の実効値の最大値の閲覧用端末7における表示例である。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、ZCTセンサ31により検出された第一零相電流のゼロクロスポイントと、ZIVセンサ32により検出された第二零相電流のゼロクロスポイントとに基づいて、第一零相電流と第二零相電流の位相差を算出することにより、微地絡が発生した絶縁劣化した箇所が負荷側にあるのか電源側にあるのかを判別することができる。また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、Tr19a(又は19b)の二次側の低圧電路50においてはB種接地線に流れる漏洩電流を監視することができる。また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、取得した地絡方向の判定結果と、B種接地線に流れる漏洩電流の監視結果を遠隔監視センター5で遠隔監視することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、少なくとも2つの計測監視装置4が計測モジュール41をそれぞれ着脱可能に実装する場合には、例えば、複数のセンサ3を2つ以上の計測モジュール41に振り分けて接続することができる。これにより、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、いずれかの計測監視装置4の計測モジュール41が故障したとしても、他の計測監視装置4の計測モジュール41からの計測データや警報信号を遠隔監視センター5に送信することができ、データ損失の被害を最小限にとどめることができる。
【0106】
また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、ZCTセンサ31により検出された第一零相電流に基づいて、高圧電路10における高圧漏洩電流のデータを取得することができる。また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、取得した高圧漏洩電流のデータと、取得した高圧漏洩電流のデータに異常があった場合に発報する高圧漏洩電流警報信号を遠隔監視センター5で遠隔監視することができる。
【0107】
また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、CTセンサ34により検出された受電電流に基づいて、高圧電路10における受電電流のデータを取得することができる。また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、取得した受電電流のデータと、取得した受電電流のデータに異常があった場合に発報する受電電流警報信号を遠隔監視センター5で遠隔監視することができる。
【0108】
また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、CTセンサ34により検出された受電電流の合計歪率のデータを取得することができる。また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、取得した合計歪率のデータと、取得した合計歪率のデータに異常があった場合に発報する合計歪率警報信号を遠隔監視センター5で遠隔監視することができる。
【0109】
また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、高圧電路10における各種計測データや警報信号を、遠隔監視センター5で監視員が表示装置30を介して把握することを可能にする。これにより、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、事故調査と原因究明を早急に実施する体制が整えることを容易にするため、電気保安品質の向上が望める。
【0110】
また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、高圧電路10における各種計測データを、受変電設備14の需要家が閲覧用端末7を介して把握することを可能にする。
【0111】
また、本実施形態に係る受変電設備自動遠隔監視システム1は、計測監視装置4が各種のオプションモジュールを内部に着脱可能に実装することができるように構成されているとともに、複数の計測監視装置4がデイジーチェーン接続可能に構成されている。さらに、計測監視装置4には、オプションモジュールとは別に、各種の機能モジュール45がデイジーチェーン接続可能なように構成されている。これにより、受変電設備14の環境に合わせて多種多様な機能を実装させることが可能になるとともに、受変電設備14の環境変化に応じた機能の削除および追加を行うことが可能になり、拡張性及び汎用性に優れた受変電設備自動遠隔監視システム1を実現することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 受変電設備自動遠隔監視システム
4 計測監視装置
5 遠隔監視センター
6 インターネット
7 閲覧用端末
10 高圧電路
11 電源
12 負荷
14 受変電設備
15 引込ケーブル
16 シールド線
19a,19b Tr
25 接地点
30 表示装置
31 ZCTセンサ
32 ZIVセンサ
34,51 CTセンサ
41 計測モジュール
42 パルス入力モジュール
43 通信モジュール
50 低圧電路
52 低圧漏洩電流監視モジュール
420 高圧漏洩電流算出部
421 比較波形ゼロクロス検出部
422 高圧漏洩電流実効値演算部
423 高圧漏洩電流平均値算出部
424 高圧漏洩電流警報要否判断部
425 基準波形ゼロクロス検出部
426 時間差算出部
427 位相差算出部
428 地絡方向判定部
430 受電電流算出部
431 受電電流ゼロクロス検出部
432 受電電流実効値演算部
433 受電電流平均値算出部
434 受電電流警報要否判断部
435 波形抽出部
436 フーリエ変換演算部
437 合計歪率算出部
438 合計歪率警報要否判断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷に電気を供給する三相交流電路である高圧電路の責任分界点に設けられた高圧気中開閉器に、前記高圧電路の一部を構成する引込ケーブルを介して接続される受変電設備の状態を計測する複数のセンサと、
前記複数のセンサが接続された少なくとも1つの計測監視装置と、
少なくとも1つの前記計測監視装置による計測データを遠隔監視する遠隔監視センターと、を備える受変電設備自動遠隔監視システムであって、
少なくとも1つの前記計測監視装置は、計測モジュールと、通信モジュールと、を着脱可能に実装し、
各前記計測監視装置は、機能モジュールと通信I/Fを介して接続可能であり、
前記複数のセンサは、
前記引込ケーブルに取付けられて、前記引込ケーブルに流れる第一零相電流を検出する第一零相変流器と、
前記引込ケーブルの前記受変電設備側の端部から引き出されて接地されたシールド線に、接地点側の極性を前記第一零相変流器の前記電源側の極性と同一にして取付けられた第二零相変流器と、
前記高圧電路に設置された変圧器の二次側のB種接地線に取り付けられた低圧漏洩計測用電流センサと、を含み、
前記計測モジュールは、
前記第一零相変流器により検出された前記第一零相電流の波形を比較波形として取得する比較波形取得部と、
前記比較波形のゼロクロスポイントを検出する比較波形ゼロクロス検出部と、
前記第二零相変流器により検出された第二零相電流の波形を基準波形として取得する基準波形取得部と、
前記基準波形のゼロクロスポイントを検出する基準波形ゼロクロス検出部と、
前記基準波形のゼロクロスポイントの時刻を基準とする前記比較波形のゼロクロスポイントの時間差を算出する時間差算出部と、
前記時間差算出部により算出された時間差を、前記基準波形の位相を基準とする前記比較波形の位相差に変換する位相差算出部と、
前記位相差算出部により算出された位相差が、前記第一零相電流と前記第二零相電流の極性が同じとなる位相差範囲内にあるときに、前記引込ケーブルの前記受変電設備側の端部よりも前記負荷側で微地絡が発生したと判定する地絡方向判定部と、を備え、
前記機能モジュールは、前記低圧漏洩計測用電流センサにより検出された漏洩電流を監視する機能を有し、
前記通信モジュールは、前記地絡方向判定部による判定結果と、前記機能モジュールによる監視結果を前記遠隔監視センターに送信することを特徴とする受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項2】
少なくとも2つの前記計測監視装置が、前記計測モジュールを着脱可能に実装していることを特徴とする請求項1に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項3】
前記計測モジュールは、
前記比較波形ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される周期ごとに、前記比較波形の実効値を算出する高圧漏洩電流実効値演算部と、
前記高圧漏洩電流実効値演算部により算出された前記比較波形の実効値を複数周期にわたって平均した平均値を算出する高圧漏洩電流平均値算出部と、
前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値があらかじめ定められた高圧漏洩電流閾値を超えたか否かを判断し、前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値が前記高圧漏洩電流閾値を超えた場合に高圧漏洩電流警報信号を発報する高圧漏洩電流警報要否判断部と、を更に含み、
前記通信モジュールは、前記高圧漏洩電流警報信号と、前記高圧漏洩電流実効値演算部により算出された前記比較波形の実効値と、前記高圧漏洩電流平均値算出部により算出された平均値と、を前記遠隔監視センターに送信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項4】
前記複数のセンサは、前記高圧電路に設置された変流器の二次側に取り付けられた受電電流計測用電流センサを更に含み、
前記計測モジュールは、
前記受電電流計測用電流センサにより検出された受電電流の波形を受電電流波形として取得する受電電流波形取得部と、
前記受電電流波形のゼロクロスポイントを検出する受電電流ゼロクロス検出部と、
前記受電電流ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される周期ごとに、前記受電電流波形の実効値を算出する受電電流実効値演算部と、
前記受電電流実効値演算部により算出された前記受電電流波形の実効値を複数周期にわたって平均した平均値を算出する受電電流平均値算出部と、
前記受電電流平均値算出部により算出された平均値があらかじめ定められた受電電流閾値を超えたか否かを判断し、前記受電電流平均値算出部により算出された平均値が前記受電電流閾値を超えた場合に受電電流警報信号を発報する受電電流警報要否判断部と、を更に含み、
前記通信モジュールは、前記受電電流警報信号と、前記受電電流実効値演算部により算出された前記受電電流波形の実効値と、前記受電電流平均値算出部により算出された平均値と、を前記遠隔監視センターに送信することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項5】
前記計測モジュールは、
前記受電電流ゼロクロス検出部により検出されたゼロクロスポイントの間隔で規定される1周期分の前記受電電流波形を抽出する波形抽出部と、
前記波形抽出部により抽出された1周期分の前記受電電流波形をフーリエ変換して、前記受電電流波形の基本波成分と複数の高調波成分を算出するフーリエ変換演算部と、
前記複数の高調波成分の合計と前記基本波成分との比である合計歪率を算出する合計歪率算出部と、
前記合計歪率算出部により算出された合計歪率があらかじめ定められた合計歪率閾値を超えたか否かを判断し、前記合計歪率算出部により算出された合計歪率が前記合計歪率閾値を超えた場合に合計歪率警報信号を発報する合計歪率警報要否判断部と、を更に含み、
前記通信モジュールは、前記合計歪率警報信号と、前記合計歪率算出部により算出された合計歪率と、を前記遠隔監視センターに送信することを特徴とする請求項4に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項6】
前記遠隔監視センターは、前記通信モジュールから前記遠隔監視センターに送信された情報のうちの少なくとも一部を表示する表示装置を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【請求項7】
前記遠隔監視センターとインターネットを介して接続された閲覧用端末と、を更に備え、
前記遠隔監視センターは、前記通信モジュールから前記遠隔監視センターに送信された情報のうちの少なくとも一部を前記閲覧用端末に表示させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の受変電設備自動遠隔監視システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
この絶縁劣化状態の監視では、高圧電路との接続点である責任分界点から引き込まれる引込ケーブルの負荷側の端部(以下、「方向判別点」とも呼ぶ)より負荷側を構内と称し、方向判別点より電源側を構外と称している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る受変電設備自動遠隔監視システムは、電源から負荷に電気を供給する三相交流電路である高圧電路の責任分界点に設けられた高圧気中開閉器に、前記高圧電路の一部を構成する引込ケーブルを介して接続される受変電設備の状態を計測する複数のセンサと、前記複数のセンサが接続された少なくとも1つの計測監視装置と、少なくとも1つの前記計測監視装置による計測データを遠隔監視する遠隔監視センターと、を備える受変電設備自動遠隔監視システムであって、少なくとも1つの前記計測監視装置は、計測モジュールと、通信モジュールと、を着脱可能に実装し、各前記計測監視装置は、機能モジュールと通信I/Fを介して接続可能であり、前記複数のセンサは、前記引込ケーブルに取付けられて、前記引込ケーブルに流れる第一零相電流を検出する第一零相変流器と、前記引込ケーブルの前記受変電設備側の端部から引き出されて接地されたシールド線に、接地点側の極性を前記第一零相変流器の前記電源側の極性と同一にして取付けられた第二零相変流器と、前記高圧電路に設置された変圧器の二次側のB種接地線に取り付けられた低圧漏洩計測用電流センサと、を含み、前記計測モジュールは、前記第一零相変流器により検出された前記第一零相電流の波形を比較波形として取得する比較波形取得部と、前記比較波形のゼロクロスポイントを検出する比較波形ゼロクロス検出部と、前記第二零相変流器により検出された第二零相電流の波形を基準波形として取得する基準波形取得部と、前記基準波形のゼロクロスポイントを検出する基準波形ゼロクロス検出部と、前記基準波形のゼロクロスポイントの時刻を基準とする前記比較波形のゼロクロスポイントの時間差を算出する時間差算出部と、前記時間差算出部により算出された時間差を、前記基準波形の位相を基準とする前記比較波形の位相差に変換する位相差算出部と、前記位相差算出部により算出された位相差が、前記第一零相電流と前記第二零相電流の極性が同じとなる位相差範囲内にあるときに、前記前記引込ケーブルの前記受変電設備側の端部よりも前記負荷側で微地絡が発生したと判定する地絡方向判定部と、を備え、前記機能モジュールは、前記低圧漏洩計測用電流センサにより検出された漏洩電流を監視する機能を有し、前記通信モジュールは、前記地絡方向判定部による判定結果と、前記機能モジュールによる監視結果を前記遠隔監視センターに送信する構成である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
図2に示すように、電源11側から負荷12側に電気を供給する高圧電路10の責任分界点に設けられた高圧気中開閉器(Pole Air Switch:PAS)13と、需要家の設備である受変電設備14との間には、引込ケーブル15が配線されている。引込ケーブル15は、受変電設備14側の端部から引き出された三相一括のシールド線16によって接地されている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
ZIVセンサ32は、例えば、貫通形零相変流器であり、シールド線16に取り付けられる。ZIVセンサ32は、環状の検出部を備えており、検出部にシールド線16を挿通させた状態で使用される。例えば、ZIVセンサ32の電流値の測定範囲は10mA以上であり、貫通孔の直径は24mmである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
地絡方向判定部428は、位相差算出部427により算出された位相差が、第一零相電流と第二零相電流の極性が同じとなる位相差範囲内にあるときに、方向判別点よりも負荷12側で微地絡が発生したと判定するようになっている。第一零相電流と第二零相電流の極性が同じといえる位相差範囲は、ZCTセンサ31及びZIVセンサ32からそれぞれ計測モジュール41まで引き回されるケーブルの長さの違いや、計測モジュール41を構成する増幅回路やフィルタ回路などの周波数特性の影響により、例えば、+150°から-35°の範囲の広がりを持っている。この場合、地絡方向判定部428は、位相差算出部427により算出された位相差が+150°から-35°の範囲内の値であるときに、方向判別点よりも負荷12側、すなわち構内で微地絡が発生したと判定する。一方、地絡方向判定部428は、位相差算出部427により算出された位相差が+150°から-35°の範囲外の値であるときに、方向判別点よりも電源11側、すなわち構外で微地絡が発生したと判定する。地絡方向判定部428は、構内と構外のいずれで微地絡が発生したかの判定を、例えば1サイクルごとに行う。