(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134611
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電力変換システム、電力変換装置、および電力変換システムの動作方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240927BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240927BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J7/35 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044884
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】品田 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AE09
5G066HA11
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA02
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】複数の電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保できる電力変換システム、および電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換システムは、各々が系統連系し、自立出力機能を持つ第1電力変換装置および第2電力変換装置を含む電力変換システムであって、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置とは、前記第1電力変換装置の自立出力端子を介して互いに接続されており、系統停電時でありかつ前記第1電力変換装置または前記第2電力変換装置の少なくとも一方が運転状態にあるときに、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置の間に形成される中性線を1箇所において接地する接地部を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が系統連系し、自立出力機能を持つ第1電力変換装置および第2電力変換装置を含む電力変換システムであって、
前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置とは、前記第1電力変換装置の自立出力端子を介して互いに接続されており、
系統停電時でありかつ前記第1電力変換装置または前記第2電力変換装置の少なくとも一方が運転状態にあるときに、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置に共通に形成される中性線を1箇所において接地する接地部を含む、電力変換システム。
【請求項2】
前記第2電力変換装置は、前記第1電力変換装置の自立出力端子に接続される補助入力端子を持ち、
前記接地部は、
前記第1電力変換装置内の、中性点と接地電位との間に設けられ、系統連系時にはオフし、系統停電時にはオンを維持する第1スイッチ部と、
前記第2電力変換装置の前記補助入力端子間の電圧を測定する電圧測定部と、
前記第2電力変換装置の前記補助入力端子と前記第2電力変換装置の自立出力端子との間に設けられる第2スイッチ部とを含む、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記第2スイッチ部は、
系統連系時にはオフし、
系統停電時でありかつ前記第2電力変換装置が停止状態にあるときはオフし、
系統停電時でありかつ前記第2電力変換装置が運転状態にあり、かつ前記電圧測定部による測定結果の絶対値がしきい値以下であるときには、前記補助入力端子の一つと前記第2電力変換装置の前記自立出力端子の一つとを接続して他は切断し、
系統停電時でありかつ前記第2電力変換装置が運転状態にあり、かつ前記電圧測定部による測定結果の絶対値がしきい値より大きいときにはオンとなる、請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記第2電力変換装置は、中性点を接地するスイッチを持たず、
前記接地部は、
前記第1電力変換装置に前記第2電力変換装置が接続されているときに第1の値を、それ以外のときに第2の値を、それぞれとる接続有無情報を記憶する記憶部と、
前記第1電力変換装置に設けられ、前記第1電力変換装置内の中性点と接地電位との間に設けられた第1スイッチ部とを含み、前記第1スイッチ部は、
前記接続有無情報が前記第1の値であれば、系統停電時には前記第1電力変換装置の運転中か否かにかかわらずオンとなり、系統連系時にはオフとなり、
前記接続有無情報が前記第2の値であれば、系統停電時でありかつ前記第1電力変換装置の運転中にオンとなり、
系統連系時または前記第1電力変換装置の停止中にはオフとなる、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項5】
さらに、使用者の操作に従って、前記記憶部に前記接続有無情報を記憶させるための設定装置を含む、請求項4に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記第2電力変換装置は、中性点を接地するスイッチを持たず、
前記接地部は、
前記第2電力変換装置の補助入力端子に流れる電流を測定する電流測定部と、
前記第1電力変換装置において、前記第1電力変換装置内の中性点と接地電位との間に設けられた第1スイッチ部とを含み、前記第1スイッチ部は、
前記電流測定部が測定した電流の絶対値がしきい値より大きいときには、系統停電時にはオンとなり、それ以外のときにはオフとなり、
前記電流測定部が測定した電流の絶対値がしきい値以下であるときには、系統停電時でありかつ前記第1電力変換装置が運転状態にあるときにオンとなり、それ以外のときにはオフとなる、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置の各々は、いずれも自己の中性点と接地電位との間に設けられたスイッチと、自己がプライマリかセカンダリかを示すプライマリ/セカンダリ情報を記憶するプライマリ/セカンダリ情報記憶部とを持ち、
前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置のうち、前記プライマリ/セカンダリ情報記憶部に記憶された情報がプライマリを示す値であるプライマリ電力変換装置は、
系統連系時には、前記スイッチをオフに維持し、
系統停電時において、
前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置の双方が停止状態のときには前記スイッチをオフに維持し、
前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置の少なくとも一方が運転状態のときには前記スイッチをオンに維持し、
前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置のうち、前記プライマリ/セカンダリ情報部に記憶された情報がセカンダリを示す値であるセカンダリ電力変換装置は、
系統連系時には、前記スイッチをオフに維持し、
系統停電時において、
前記セカンダリ電力変換装置が停止状態のときには前記スイッチをオフに維持し、
前記セカンダリ電力変換装置が運転状態のときには前記スイッチをオンに維持する、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置の各々は、使用者の指示に従って、前記プライマリ/セカンダリ情報記憶部に前記プライマリ/セカンダリ情報を設定するための設定部を含む、請求項7に記載の電力変換システム。
【請求項9】
系統連系し、自立出力機能を持つ電力変換装置であって、
前記電力変換装置は、他の電力変換装置からの電力供給を受けるための補助入力端子を持ち、
前記電力変換装置の前記補助入力端子間の電圧を測定する電圧測定部と、
前記電力変換装置の前記補助入力端子と前記第2電力変換装置の自立出力端子との間に設けられる第1スイッチ部とを含み、前記第1スイッチ部は、
系統連系時にはオフし、
系統停電時でありかつ前記電力変換装置が停止状態にあるときはオフし、
系統停電時でありかつ前記電力変換装置が運転状態にあり、かつ前記電圧測定部による測定結果の絶対値がしきい値以下であるときには、前記補助入力端子の一つと前記電力変換装置の前記自立出力端子の一つとを接続して他は切断し、
系統停電時でありかつ前記電力変換装置が運転状態にあり、かつ前記電圧測定部による測定結果の絶対値がしきい値より大きいときにはオンとなる、電力変換装置。
【請求項10】
系統連系し、自立出力機能を持つ電力変換装置であって、前記自立出力機能のための自立出力端子を持ち、
前記自立出力端子に他の電力変換装置が接続されているときに第1の値を、それ以外のときに第2の値を、それぞれとる接続有無情報を記憶する記憶部と、
前記電力変換装置内の中性点と接地電位との間に設けられた第1スイッチ部とを含み、前記第1スイッチ部は、
前記接続有無情報が前記第1の値であれば、系統停電時にはオンとなり、系統連系時にはオフとなり、
前記接続有無情報が前記第2の値であれば、系統停電時でありかつ前記電力変換装置の運転中にオンとなり、系統連系時または前記電力変換装置の停止中にはオフとなる、電力変換装置。
【請求項11】
系統連系し、自立出力機能を持つ電力変換装置であって、前記自立出力機能のための自立出力端子を持ち、
前記自立出力端子から他の装置に供給される電流を測定する電流測定部と、
前記電力変換装置内の中性点と接地電位との間に設けられた第1スイッチ部とを含み、前記第1スイッチ部は、
前記電流測定部が測定した電流の絶対値がしきい値より大きいときには、系統停電時にはオンとなり、それ以外のときにはオフとなり、
前記電流測定部が測定した電流の絶対値がしきい値以下であるときには、系統停電時でありかつ前記電力変換装置が運転状態にあるときにオンとなり、それ以外のときにはオフとなる、電力変換装置。
【請求項12】
系統連系し、自立出力機能を持つ電力変換装置であって、前記自立出力機能のための自立出力端子を持ち、前記自立出力端子は、前記電力変換装置と同様の他の電力変換装置の自立出力端子と接続され、
前記電力変換装置の中性点と接地電位との間に設けられたスイッチと、
前記電力変換装置がプライマリかセカンダリセカンダリかを示すプライマリ/セカンダリセカンダリ情報を記憶するプライマリ/セカンダリ情報記憶部とを含み、
前記プライマリ/セカンダリ情報記憶部に記憶された情報がプライマリを示す値であるときには、
系統連系時には、前記スイッチをオフに維持し、
系統停電時において、
前記電力変換装置と前記他の電力変換装置の双方が停止状態のときには前記スイッチをオフに維持し、
前記電力変換装置と前記他の電力変換装置の少なくとも一方が運転状態のときには前記スイッチをオンに維持し、
前記プライマリ/セカンダリ情報部に記憶された情報がセカンダリを示す値であるときには、
系統連系時には、前記スイッチをオフに維持し、
系統停電時において、
前記電力変換装置が停止状態のときには前記スイッチをオフに維持し、
前記電力変換装置が運転状態のときには前記スイッチをオンに維持する、
電力変換装置。
【請求項13】
各々が系統連系し、自立出力機能を持つ第1電力変換装置および第2電力変換装置を含む電力変換システムの動作方法であって、
前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置とを、前記第1電力変換装置の自立出力端子を介して互いに接続するステップと、
系統停電時でかつ前記第1電力変換装置または前記第2電力変換装置の少なくとも一方が運転状態にあるときに、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置に共通に形成される中性線を1箇所において接地するステップとを含む、電力変換システムの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、電力変換システム、電力変換装置、および電力変換システムの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置として、蓄電池および太陽光発電装置と、系統との間に接続され、系統連系するものが知られている。そうした電力変換装置は、系統連系中には系統または太陽光発電装置からの電力を蓄電池に充電する。系統停電中には、電力変換装置は、系統との接続を切断し、太陽光発電装置からの電力または蓄電池からの電力を自立出力から出力する。
【0003】
こうした電力変換装置を他の電力変換装置、例えば蓄電池専用の変換器と並列に接続することが考えられる。そうした装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている技術は、太陽光発電装置と系統とに接続された電力変換装置の自立出力に、蓄電池専用の電力変換器の補助入力を接続したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術により、例えば夜間に停電が発生し、蓄電池から負荷に電力を供給したために蓄電池の充電残量が0%になった場合でも、太陽光発電装置が発電すればその電力を用いて蓄電池に充電できる。
【0006】
しかし、特許文献1に開示された技術においては、太陽光発電装置からの電力を電力変換装置が蓄電池専用の電力変換装置および負荷に供給する自立運転時に、接地をどのようにするかが考慮されていない。自立運転時の接地については法令により規定されており、2つの電力変換装置を並列して動作させて自立運転を行うときにも接地を確保する必要がある。
【0007】
この開示は、複数の電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保できる電力変換システム、電力変換装置、および電力変換システムの動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この開示の第1の局面に係る電力変換システムは、各々が系統連系し、自立出力機能を持つ第1電力変換装置および第2電力変換装置を含む電力変換システムであって、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置とは、前記第1電力変換装置の自立出力端子を介して互いに接続されており、系統停電時でありかつ前記第1電力変換装置または前記第2電力変換装置の少なくとも一方が運転状態にあるときに、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置の間に共通に形成される中性線を1箇所において接地する接地部を含む。
【0009】
この発明は、このような特徴的な処理部を備える電力変換装置として実現できるだけでなく、係る特徴的な処理をステップとする電力変換方法として実現したり、係るステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したりできる。また電力変換装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現したり、電力変換装置を含む電力変換システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のようにこの開示によると、複数の電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保できる電力変換システム、電力変換装置、および電力変換システムの動作方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、この開示の第1実施形態において使用される全負荷対応型蓄電装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、この開示の第1実施形態において使用される蓄電池専用変換装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す全負荷対応型蓄電装置と
図2に示す蓄電池専用変換装置とを組み合わせた構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す構成において生ずる問題を説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す全負荷型蓄電装置と
図2に示す蓄電池専用変換装置とを組み合わせた構成の他の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す全負荷型蓄電装置と
図2に示す蓄電池専用変換装置とを組み合わせた、この開示の第1実施形態に係る電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す電力変換システムの全負荷対応型蓄電装置を単独により用いるときの全負荷対応型蓄電装置の各リレーの動作を示す図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す電力変換システムの蓄電池専用変換装置を単独により用いるときの蓄電池専用変換装置の各リレーの動作を示す図である。
【
図9】
図9は、
図6に示す電力変換システムを全体として機能させる時の各リレーの動作を示す図である。
【
図10】
図10は、この開示の第2実施形態に係る電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、
図10に示す制御部が実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、この開示の第3実施形態に係る電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、この開示の第4実施形態に係る電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、この開示の第5実施形態に係る電力変換システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
以下の説明および図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)この開示の第1の局面に係る電力変換システムは、各々が系統連系し、自立出力機能を持つ第1電力変換装置および第2電力変換装置を含む電力変換システムであって、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置とは、前記第1電力変換装置の自立出力端子を介して互いに接続されており、系統停電時でありかつ前記第1電力変換装置または前記第2電力変換装置の少なくとも一方が運転状態にあるときに、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置に共通に形成される中性線を1箇所において接地する接地部を含む。第1電力変換装置と第2電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0014】
(2)上記(1)において、前記第2電力変換装置は、前記自立出力端子に接続される補助入力端子を持ち、前記接地部は、前記第1電力変換装置内の、中性点と接地電位との間に設けられ、系統連系時にはオフし、系統停電時にはオンを維持する第1スイッチ部と、前記第2電力変換装置の前記補助入力端子間の電圧を測定する電圧測定部と、前記第2電力変換装置の前記補助入力端子と前記第2電力変換装置の自立出力端子との間に設けられる第2スイッチ部とを含んでもよい。この構成により、第1電力変換装置と第2電力変換装置とが接地を別々に行える。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0015】
(3)上記(2)において、前記第2スイッチ部は、系統連系時にはオフし、系統停電時でありかつ前記第2電力変換装置が停止状態にあるときはオフし、系統停電時でありかつ前記第2電力変換装置が運転状態にあり、かつ前記電圧測定部による測定結果の絶対値がしきい値以下であるときには、前記補助入力端子の一つと前記第2電力変換装置の前記自立出力端子の一つとを接続して他は切断し、系統停電時でありかつ前記第2電力変換装置が運転状態にあり、かつ前記電圧測定部による測定結果の絶対値がしきい値より大きいときにはオンとなる。こうした構成により、第1電力変換装置と第2電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0016】
(4)上記(1)において、前記第2電力変換装置は、中性点を接地するスイッチを持たず、前記接地部は、前記第1電力変換装置に前記第2電力変換装置が接続されているときに第1の値を、それ以外のときに第2の値を、それぞれとる接続有無情報を記憶する記憶部と、前記第1電力変換装置に設けられ、前記第1電力変換装置内の中性点と接地電位との間に設けられた第1スイッチ部とを含んでもよく、前記第1スイッチ部は、前記接続有無情報が前記第1の値であれば、系統停電時には前記第1電力変換装置の運転中か否かにかかわらずオンとなり系統連系時にはオフとなり、前記接続有無情報が前記第2の値であれば、系統停電時でありかつ前記第1電力変換装置の運転中にオンとなり系統連系時または前記第1電力変換装置の停止中にはオフとなる。この構成により、第1電力変換装置と第2電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0017】
(5)上記(4)において、電力変換システムは、さらに、使用者の操作に従って、前記記憶部に前記接続有無情報を記憶させるための設定装置を含んでもよい。この構成により、簡単な操作により第1電力変換装置と第2電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがないようにスイッチを制御できる。したがって、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0018】
(6)上記(1)において、前記第2電力変換装置は、中性点を接地するスイッチを持たず、前記接地部は、前記第2電力変換装置の補助入力端子に流れる電流を測定する電流測定部と、前記第1電力変換装置において、前記第1電力変換装置内の中性点と接地電位との間に設けられた第1スイッチ部とを含んでもよく、前記第1スイッチ部は、前記電流測定部が測定した電流の絶対値がしきい値より大きいときには、系統停電時にはオンとなり、それ以外のときにはオフとなり、前記電流測定部が測定した電流値の絶対値がしきい値以下であるときには、系統停電時でありかつ前記第1電力変換装置が運転状態にあるときにオンとなり、それ以外のときにはオフとなる。こうした構成により、第2電力変換装置が運転中であれば第1電力変換装置では接地が行われず、第2電力変換装置が停止中であれば第1電力変換装置において接地が行われる。したがって、第1電力変換装置と第2電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0019】
(7)上記(1)において、前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置の各々は、いずれも自己の中性点と接地電位との間に設けられたスイッチと、自己がプライマリかセカンダリかを示すプライマリ/セカンダリ情報を記憶するプライマリ/セカンダリ情報記憶部とを持ち、前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置のうち、前記プライマリ/セカンダリ情報記憶部に記憶された情報がプライマリを示す値であるプライマリ電力変換装置は、系統連系時には、前記スイッチをオフに維持し、系統停電時において、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置の双方が停止状態のときには前記スイッチをオフに維持し、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置の少なくとも一方が運転状態のときには前記スイッチをオンに維持し、前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置のうち、前記プライマリ/セカンダリ情報部に記憶された情報がセカンダリを示す値であるセカンダリ電力変換装置は、系統連系時には、前記スイッチをオフに維持し、系統停電時において、前記セカンダリ電力変換装置が停止状態のときには前記スイッチをオフに維持し、前記セカンダリ電力変換装置が運転状態のときには前記スイッチをオンに維持してもよい。こうした構成により、セカンダリが運転中であればプライマリでは接地が行われず、セカンダリが停止中であればプライマリにおいて接地が行われる。したがって、セカンダリとプライマリに共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0020】
(8)上記(7)において、前記第1電力変換装置および前記第2電力変換装置の各々は、使用者の指示に従って、前記プライマリ/セカンダリ情報記憶部に前記プライマリ/セカンダリ情報を設定するための設定部を含んでもよい。こうした構成により、セカンダリとプライマリとを簡単に設定し、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地を確保するようにでき、安定した電力変換が行える。
【0021】
(9)この開示の第2の局面に係る電力変換装置は、系統連系し、自立出力機能を持つ電力変換装置であって、前記電力変換装置は、他の電力変換装置からの電力供給を受けるための補助入力端子を持ち、前記電力変換装置の前記補助入力端子間の電圧を測定する電圧測定部と、前記電力変換装置の前記補助入力端子と前記第2電力変換装置の自立出力端子との間に設けられる第1スイッチ部とを含み、前記第1スイッチ部は、系統連系時にはオフし、系統停電時でありかつ前記電力変換装置が停止状態にあるときはオフし、系統停電時でありかつ前記電力変換装置が運転状態にあり、かつ前記電圧測定部による測定結果の絶対値がしきい値以下であるときには、前記補助入力端子の一つと前記電力変換装置の前記自立出力端子の一つとを接続して他は切断し、系統停電時でありかつ前記電力変換装置が運転状態にあり、かつ前記電圧測定部による測定結果の絶対値がしきい値より大きいときにはオンとなる。この構成により、第1電力変換装置と第2電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0022】
(10)この開示の第3の局面に係る電力変換装置は、系統連系し、自立出力機能を持つ電力変換装置であって、前記自立出力機能のための自立出力端子を持ち、前記自立出力端子に他の電力変換装置が接続されているときに第1の値を、それ以外のときに第2の値を、それぞれとる接続有無情報を記憶する記憶部と、前記電力変換装置内の中性点と接地電位との間に設けられた第1スイッチ部とを含み、前記第1スイッチ部は、前記接続有無情報が前記第1の値であれば、系統停電時にはオンとなり、系統連系時にはオフとなり、前記接続有無情報が前記第2の値であれば、系統停電時でありかつ前記電力変換装置の運転中にオンとなり、系統連系時または前記電力変換装置の停止中にはオフとなる。この構成の結果、第1電力変換装置は、第2電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがないようにできる。したがって、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがなく、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0023】
(11)この開示の第4の局面に係る電力変換装置は、系統連系し、自立出力機能を持つ電力変換装置であって、前記自立出力機能のための自立出力端子を持ち、前記自立出力端子から他の装置に供給される電流を測定する電流測定部と、前記電力変換装置内の中性点と接地電位との間に設けられた第1スイッチ部とを含み、前記第1スイッチ部は、前記電流測定部が測定した電流の絶対値がしきい値より大きいときには、系統停電時にはオンとなり、それ以外のときにはオフとなり、前記電流測定部が測定したしきい値以下であるときには、系統停電時でありかつ前記電力変換装置が運転状態にあるときにオンとなり、それ以外のときにはオフとなる。こうした構成により、この電力変換装置と他の電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、他の電力変換装置と並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0024】
(12)この開示の第5の局面に係る電力変換装置は、系統連系し、自立出力機能を持つ電力変換装置であって、前記自立出力機能のための自立出力端子を持ち、前記自立出力端子は、前記電力変換装置と同様の他の電力変換装置の自立出力端子と接続され、前記電力変換装置の中性点と接地電位との間に設けられたスイッチと、前記電力変換装置がプライマリかセカンダリかを示すプライマリ/セカンダリ情報を記憶するプライマリ/セカンダリ情報記憶部とを含み、前記プライマリ/セカンダリ情報記憶部に記憶された情報がプライマリを示す値であるときには、系統連系時には、前記スイッチをオフに維持し、系統停電時において、前記電力変換装置と前記他の電力変換装置の双方が停止状態のときには前記スイッチをオフに維持し、前記電力変換装置と前記他の電力変換装置の少なくとも一方が運転状態のときには前記スイッチをオンに維持し、前記プライマリ/セカンダリ情報部に記憶された情報がセカンダリを示す値であるときには、系統連系時には、前記スイッチをオフに維持し、系統停電時において、前記電力変換装置が停止状態のときには前記スイッチをオフに維持し、前記電力変換装置が運転状態のときには前記スイッチをオンに維持してもよい。こうした構成により、電力変換装置がプライマリであるときには、セカンダリが運転中であれば接地を行わず、セカンダリが停止中であれば接地を行う。したがって、セカンダリとプライマリに共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、他の電力変換装置と並列してこの電力変換装置を動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0025】
(13)この開示の第6の局面に係る電力変換システムの動作方法は、各々が系統連系し、自立出力機能を持つ第1電力変換装置および第2電力変換装置を含む電力変換システムの動作方法であって、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置とを、前記第1電力変換装置の自立出力端子を介して互いに接続するステップと、系統停電時でかつ前記第1電力変換装置または前記第2電力変換装置の少なくとも一方が運転状態にあるときに、前記第1電力変換装置と前記第2電力変換装置に共通に形成される中性線を1箇所において接地するステップとを含む。第1電力変換装置と第2電力変換装置に共通に形成される中性線において2箇所以上において接地されることがなく、途中の経路において行きと帰りの電流に相違が生じることがない。そのため、誤って漏電が発生したと判定されることがない。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保でき、安定した電力変換が行える。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電力変換システム、および電力変換装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0027】
1.第1実施形態
図1に、この実施形態において使用する全負荷対応型蓄電装置の単独形態である全負荷対応型蓄電装置60を使用した電力変換システム50の構成を示す。
図1を参照して、電力変換システム50は、系統68に接続される。この電力変換システム50は、蓄電池62、太陽光発電装置64および太陽光発電装置66に接続された全負荷対応型蓄電装置60と、全負荷対応型蓄電装置60に接続された一般負荷分電盤70とを含む。
【0028】
全負荷対応型蓄電装置60は、それぞれ蓄電池62、太陽光発電装置64および太陽光発電装置66に一端が接続されたDC(Direct Current)/DC変換器90、DC/DC変換器92およびDC/DC変換器94と、DC/DC変換器90、DC/DC変換器92およびDC/DC変換器94の他端に接続された一端を持つDC/AC(Alternating Current)変換器96とを含む。
【0029】
全負荷対応型蓄電装置60はさらに、系統68と接続される系統入力端子と自立出力端子とを持つ。全負荷対応型蓄電装置60は、系統入力端子とDC/AC変換器96の他の一端との間の単相3線の配線内に、直列に接続されたリレーRY1およびリレーRY2と、リレーRY2とDC/AC変換器96との間の中性線と接地電位との間に設けられたリレーRY3とを持つ。全負荷対応型蓄電装置60内の単相3線の配線は、リレーRY2とリレーRY1との間において分岐し自立出力端子に接続されている。全負荷対応型蓄電装置60の内部の配線のうち、系統入力端子および自立出力端子の近傍には、これら端子間の電圧を測定する電圧センサと、これら端子から全負荷対応型蓄電装置60に入力/出力される電流の大きさを測定するための電流センサとを含むセンサ部98およびセンサ部100がそれぞれ設けられている。なお、系統68と全負荷対応型蓄電装置60との間の単相3線の配線の中性線は、接地78を介して接地電位に接続されている。
【0030】
全負荷対応型蓄電装置60はさらに、センサ部98およびセンサ部100からの出力、およびDC/DC変換器90、DC/DC変換器92、DC/DC変換器94およびDC/AC変換器96の各部に設けられた電圧センサおよび電流センサからの出力に基づいて、DC/DC変換器90、DC/DC変換器92、DC/DC変換器94およびDC/AC変換器96の各部を制御するための制御部102を含む。制御部102はさらに、センサ部98およびセンサ部100からの出力に基づいて、リレーRY1、リレーRY2およびリレーRY3のオンおよびオフを制御する。
図1においては、図を分かりやすくするために、制御部102と全負荷対応型蓄電装置60内の各部とを結ぶ配線は図示していない。これは他の図においても同様である。
【0031】
一般負荷分電盤70は、全負荷対応型蓄電装置60の自立出力端子に接続された漏電遮断器120と、漏電遮断器120の他方に接続され、それぞれ家庭内負荷72、家庭内負荷74および家庭内負荷76に電力を供給する配線に設けられたブレーカ122、ブレーカ124、およびブレーカ126とを含む。
【0032】
制御部102は、系統68から電力の供給がされているときには、リレーRY1、リレーRY2およびリレーRY3をオフする。制御部102は、系統68が停電しているときにはリレーRY2およびリレーRY3をオンする。この結果、蓄電池62、太陽光発電装置64または太陽光発電装置66からの電力が自立出力を介して一般負荷分電盤70に与えられる。リレーRY3がオンしており、全負荷対応型蓄電装置60の自立出力の中性線が接地されている。そのため、全負荷対応型蓄電装置60の出力の電圧が系統68により供給される電力の電圧と同様に、安定したものに保持される。
【0033】
図2は、この実施形態において使用される蓄電池専用変換装置の単独形態である蓄電池専用変換装置160を含む電力変換システム150の構成を示すブロック図である。
図2を参照して、この電力変換システム150は、蓄電池162と、蓄電池162に接続された蓄電池専用変換装置160とを含む。蓄電池専用変換装置160は、系統入力端子、補助入力端子および自立出力端子を持つ。蓄電池専用変換装置160は、系統入力端子を介して系統68に接続される。蓄電池専用変換装置160は補助入力端子を介して太陽光PCS(Power Conditioning System)などの自立出力に接続される。蓄電池専用変換装置160の自立出力は100Vである。そのため、蓄電池専用変換装置160の自立出力端子には、100V負荷専用の特定負荷分電盤164が接続される。蓄電池専用変換装置160の、系統68との接続端子部分にはセンサ部194が、補助入力端子部分にはセンサ部196が、自立出力部分にはセンサ部198が、それぞれ設けられる。これらからの出力は制御部200に与えられる。
【0034】
特定負荷分電盤164は、蓄電池専用変換装置160の自立出力に一端が接続された漏電遮断器220と、漏電遮断器220の他端に設けられたブレーカ222およびブレーカ224とを含む。特定負荷分電盤164が蓄電池専用変換装置160から受けた電力は、漏電遮断器220、およびブレーカ222またはブレーカ224を介して家庭内負荷166および家庭内負荷168に供給される。
【0035】
系統68と蓄電池専用変換装置160の系統入力端子との接続配線のうち、中性線は接地172により接地電位と接続されている。一方、この例に示す蓄電池専用変換装置160は、内部に
図1に示すリレーRY3のような、自立運転時の際の接地のためのリレーを持たない。そのために、蓄電池専用変換装置160の自立運転時に蓄電池専用変換装置160の中性点を接地電位に維持するための接地170が蓄電池専用変換装置160と特定負荷分電盤164との間に設けられる。接地170も規格上において必要とされており、蓄電池専用変換装置160の設置時に設けることが要求されている。
【0036】
図1に示す全負荷対応型蓄電装置60と
図2に示す蓄電池専用変換装置160とを単純に組み合わせた電力変換システム250を
図3に示す。
図3に示す電力変換システム250においては、蓄電池専用変換装置160と全負荷対応型蓄電装置60とが、ともに系統68に接続されている、また、全負荷対応型蓄電装置60の自立入力が、一般負荷分電盤70のブレーカ122を介して蓄電池専用変換装置160の補助入力に接続されている。
【0037】
しかしこの
図3に示す電力変換システム250においては、問題となる点がある。例えば、系統68の停電時に、全負荷対応型蓄電装置60および蓄電池専用変換装置160がともに運転している場合を想定する。その場合には、全負荷対応型蓄電装置60のリレーRY1、および蓄電池専用変換装置160のリレーRY4はいずれもオフしている。全負荷対応型蓄電装置60のリレーRY2およびリレーRY3はともにオンとなる。蓄電池専用変換装置160のリレーRY5およびリレーRY6もオンとなる。すなわち、全負荷対応型蓄電装置60の自立出力と蓄電池専用変換装置160の補助入力および自立出力が互いに接続される。すると、この電流の経路は、リレーRY3と接地170との2箇所において接地されることになる。その結果、以下のような不具合が生じる可能性がある。
【0038】
図4を参照して、全負荷対応型蓄電装置60のリレーRY3および蓄電池専用変換装置160から特定負荷分電盤164への経路の接地170という2箇所の接地が存在するため、
図4において、この電流の経路は、矢印により示すようになる。たとえば全負荷対応型蓄電装置60のDC/AC変換器96からの出力を始点と考えると、電流は全負荷対応型蓄電装置60の自立出力、一般負荷分電盤70のブレーカ122、蓄電池専用変換装置160の補助入力、リレーRY5、リレーRY6、蓄電池専用変換装置160の自立出力を経て、接地170の位置に進む。この位置において、電流は、点線の矢印により示すように、接地170を経て大地に進む電流と、特定負荷分電盤164を経て蓄電池専用変換装置160の自立出力に戻る電流とに分岐する。接地170を経て大地に進む電流は、全負荷対応型蓄電装置60のリレーRY3を経てDC/AC変換器96に戻る。一方、特定負荷分電盤164から蓄電池専用変換装置160の自立出力に戻る電流は、最初の経路逆にたどり、リレーRY6、リレーRY5、蓄電池専用変換装置160の補助入力、およびブレーカ122を経て漏電遮断器120を過ぎ、全負荷対応型蓄電装置60に戻って、リレーRY3から電流に合流してDC/AC変換器96に戻る。
【0039】
このような電流の流れにより、一般負荷分電盤70の漏電遮断器120において、行きの電流と戻る電流との大きさが異なることになる。したがって漏電遮断器120は電流の経路において漏電が生じたと判断し、電流を遮断する。その結果、一般負荷分電盤70に接続されている家庭内負荷74および家庭内負荷76、ならびに特定負荷分電盤164に接続されている家庭内負荷166および家庭内負荷168に電流が供給されなくなってしまう。
【0040】
こうした問題を解決するために、一箇所において接地することが考えられる。
図5にそうした例を示す。
図5に示す電力変換システム300は、
図4に示す接地170を取り除いた点において
図4に示す電力変換システム250と異なる。
【0041】
電力変換システム300においては、系統68が停電し、全負荷対応型蓄電装置60と蓄電池専用変換装置160とが運転状態であっても、全負荷対応型蓄電装置60の自立出力と蓄電池専用変換装置160の補助入力、さらに蓄電池専用変換装置160の自立出力からなる経路には、接地はリレーRY3しかない。したがって
図4に示す電力変換システム250のような問題は生じない。
【0042】
しかし、電力変換システム300においては、仮に全負荷対応型蓄電装置60のリレーRY3がオフとなった場合に、蓄電池専用変換装置160の補助入力と自立出力が接地電位から浮いた状態になる可能性がある。
【0043】
以下に説明するこの開示の第1実施形態は、こうした問題を解決するためのものである。
【0044】
図6に、この開示の第1実施形態に係る電力変換システム350のブロック図を示す。
図6に示す電力変換システム350は、
図5に示す全負荷対応型蓄電装置60に代えて、全負荷対応型蓄電装置60と一部を除きほぼ同じ構成の全負荷対応型蓄電装置360を含む点と、
図5に示す蓄電池専用変換装置160に代えて、蓄電池専用変換装置160と一部を除きほぼ同じ構成の蓄電池専用変換装置362を含む点とである。
【0045】
全負荷対応型蓄電装置360は、
図5に示す制御部102に代えて、全負荷対応型蓄電装置360が系統68に接続されているときにはオフし、系統68の停電時でありかつ全負荷対応型蓄電装置60の運転時にオンとなり、さらに系統68の停電時でありかつ全負荷対応型蓄電装置60の停止時にもオン状態を維持するように、リレーRY3およびリレーRY2を制御する機能を持つ制御部380を含む点である。それ以外の点において、全負荷対応型蓄電装置360は
図5に示す全負荷対応型蓄電装置60と同じである。なお、このような機能を持つリレーRY3およびリレーRY2ならびに上記したようにこれらリレーを制御する制御部102とがこの実施形態の接地部に相当する。
【0046】
蓄電池専用変換装置160は、
図5に示す蓄電池専用変換装置160と異なり、
図5に示す制御部200に代えて、DC/AC変換器192と補助入力端子を接続する2つのリレーRY5AおよびリレーRY5Bを独立に制御可能な制御部382を含む。それ以外の点において蓄電池専用変換装置362は、
図5に示す蓄電池専用変換装置160と同じである。
【0047】
これら全負荷対応型蓄電装置360および蓄電池専用変換装置362は、いずれも単独でも動作する。全負荷対応型蓄電装置360を単独で使用する場合の、リレーRY1、リレーRY2およびリレーRY3のオンおよびオフの制御を
図7にテーブル形式により示す。
【0048】
図7を参照して、全負荷対応型蓄電装置360を単独で使用する場合、制御部380はリレーRY1、リレーRY2およびリレーRY3を以下のように制御する。なお、
図7の表を含め、以下の表の全てにおいて、最上部には見出しが示されている。行番号は最初の見出しを除く部分の番号をいう。
【0049】
(1)系統あり、停止状態(
図7の第1行目)
系統68からの電力供給があり、全負荷対応型蓄電装置360が停止状態の場合(
図7の第2行目)、リレーRY1はオン、リレーRY2およびリレーRY3はいずれもオフとされる。
【0050】
(2)系統あり、運転状態(
図7の第2行目)
系統68からの電力供給があり、全負荷対応型蓄電装置360が運転状態の場合(
図7の第3行目)、リレーRY1およびリレーRY2はいずれもオンとなるが、リレーRY3はオフにされる。系統68からの配線の中性線が接地78により接地電位に接続されていること、およびDC/AC変換器96の出力の中性線が系統68からの配線の中性線に接続されていることによる。
【0051】
(3)系統停電、停止状態/運転状態(
図7の第3行得および第4行目)
系統68が停電しており、全負荷対応型蓄電装置360が停止状態の場合(
図7の第3行目)も運転状態の場合(
図7の第4行目)、リレーRY1はオフし、リレーRY2およびリレーRY3はオンする。この結果、系統68が停電しているときには、全負荷対応型蓄電装置360の自立出力は接地されていることになる。
【0052】
一方、蓄電池専用変換装置362を単独で使用する場合、蓄電池専用変換装置160と同様、蓄電池専用変換装置362の中性点を接地電位に維持するために、
図2に示す接地170と同様の接地が蓄電池専用変換装置362と特定負荷分電盤164との間に設けられる。リレーRY4、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6は、
図8を参照して、以下のように制御される。なお、蓄電池専用変換装置362は系統68に接続されて完全に単独で動作する場合もあるが、系統68に加え、補助入力を介して太陽光発電装置からの電力を受ける場合もある。
【0053】
(1)系統あり、停止状態(
図8の第1行目)
系統68から電力供給があり、蓄電池専用変換装置362が停止状態の場合、リレーRY4、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6はいずれもオフとされる。
【0054】
(2)系統あり、運転状態(
図8の第2行目)
この場合、リレーRY4はオンとされ、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6はいずれもオフとされる。この結果、DC/AC変換器192およびDC/DC変換器190を介して蓄電池162が系統68からの電力により充電される。
【0055】
(3)系統停電、停止状態(
図8の第3行目)
この場合、リレーRY4、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6はいずれもオフとされる。
【0056】
(4)系統停電、運転状態、補助入力端子に電圧あり(
図8の第4行目)
この場合、リレーRY4はオフとされるが、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6は全てオンとされる。補助入力端子に電圧があるということは、例えば太陽光発電装置が補助入力端子に接続されているということである。
【0057】
(5)系統停電、運転状態、補助入力端子に電圧なし(
図8の第5行目)
この場合、リレーRY4ならびにリレーRY5AおよびリレーRY5Bはオフとされ、リレーRY6はオンとされる。
【0058】
図9に、
図6に示すように全負荷対応型蓄電装置360と蓄電池専用変換装置362とを組み合わせた電力変換システム350における、リレーRY1、リレーRY2、リレーRY3、リレーRY4、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6の制御を示す。
【0059】
(1)系統あり、両方停止状態(
図9の第1行目)
この場合、リレーRY1がオンとされ、他の各リレーはいずれもオフされる。
【0060】
(2)系統あり、全負荷対応型蓄電装置360のみ運転状態(
図9の第2行目)
この場合、リレーRY1およびリレーRY2はオン、リレーRY3、リレーRY4、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6はオフとされる。
図7の第2行目と
図8の第1行目を組み合わせたものと同じである。
【0061】
(3)系統あり、蓄電池専用変換装置362のみ運転状態(
図9の第3行目)
リレーRY4のみがオンされ、リレーRY1、リレーRY2、リレーRY3、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6はオフとなる。
図7の第1行目と
図8の第2行目とを組み合わせたものと同じである。
【0062】
(4)系統あり、両方運転状態(
図9の第4行目)
リレーRY1、リレーRY2、およびリレーRY4がオン、リレーRY3、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6はオフとされる。
図7の第2行目と
図8の第2行目とを組み合わせたものと同じである。
【0063】
(5)系統停電、両方停止状態(
図9の第5行目)
リレーRY1、リレーRY2、リレーRY3、リレーRY4、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6は全てオフとされる。
【0064】
(6)系統停電、全負荷対応型蓄電装置360のみ運転状態(
図9の第6行目)
リレーRY2およびリレーRY3はオンとされ、リレーRY1リレーRY4、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6はオフとされる。
図7の第4行目と
図8の第3行目とを組み合わせたものと同じである。
【0065】
(7)系統停電、蓄電池専用変換装置362のみ運転状態(
図9の第7行目)
リレーRY2、リレーRY3、リレーRY5AおよびリレーRY6はオンとされ、リレーRY1、リレーRY4およびリレーRY5Bはオフとされる。
図7の第3行目と
図8の第5行目を組み合わせたものと同じである。
【0066】
(8)系統停電、全負荷対応型蓄電装置360および蓄電池専用変換装置362の双方が運転状態(
図9の第8行目)
リレーRY1およびリレーRY4はオフされ、リレーRY2、リレーRY3、リレーRY5A、リレーRY5BおよびリレーRY6はオンされる。
図7の第4行目および
図8の第4行目を組み合わせたものと同じである。
【0067】
この実施形態によれば、
図6に示した組み合わせにおいて、停電時にも、全負荷対応型蓄電装置360または蓄電池専用変換装置362のいずれか少なくとも一方が運転状態である限り、全負荷対応型蓄電装置360のリレーRY3のオン状態が維持される。蓄電池専用変換装置362が運転状態であれば蓄電池専用変換装置362のリレーRY5Aのオン状態も維持される。したがって、蓄電池専用変換装置362の自立出力および補助入力もリレーRY3により接地される。すなわち、全負荷対応型蓄電装置360および蓄電池専用変換装置362に共通に形成される中性線が1箇所において接地される。その結果、蓄電池専用変換装置362の自立出力および補助入力が接地電位から浮いた状態となることが防止できる。また2箇所の接地がないため、ブレーカによる遮断が発生するおそれもないという効果がある。系統停電時でありかつ全負荷対応型蓄電装置360の運転停止時にもリレーRY2およびリレーRY3のオンが維持されている。そのため、蓄電池専用変換装置362の停止時にもリレーRY5Aをオンに維持することにより蓄電池専用変換装置362の補助入力および自立出力の配線もリレーRY5A、リレーRY2およびリレーRY3を介して接地され、接地電位から浮いた状態となることを防止できる。
【0068】
この実施形態においては、リレーRY2、リレーRY3、これらを制御する制御部380、リレーRY5A、制御部382が接地部に相当する。
【0069】
2.第2実施形態
上記第1実施形態において、リレーRY3は、系統停電のときであってかつ全負荷対応型蓄電装置360の停止時には、蓄電池専用変換装置362の状態にかかわらずオフを維持するようにしている。しかし、リレーRY3のオンを維持すべきか否かを蓄電池専用変換装置362の状態に基づいて定めるようにしてもよい。この第2実施形態はそのような実施形態である。
【0070】
図10に、この第2実施形態に係る電力変換システム450の構成を示す。
図10を参照して、電力変換システム450は、
図6に示す全負荷対応型蓄電装置360および蓄電池専用変換装置362に代えて、全負荷対応型蓄電装置460および
図2に示す蓄電池専用変換装置160を含み、さらに蓄電池専用変換装置362の補助入力の配線の一方の電流値を計測して電流値を示す信号を全負荷対応型蓄電装置460に入力する電流センサ462を含む。
【0071】
全負荷対応型蓄電装置460はほぼ全負荷対応型蓄電装置360と同じ構成だが、全負荷対応型蓄電装置360の制御部380に代えて、系統68の停電時でありかつ全負荷対応型蓄電装置460の停止時に、蓄電池専用変換装置362の出力する電流値を示す信号の絶対値がしきい値より大きな電流値を示すことに応答して、全負荷対応型蓄電装置460のリレーRY2およびリレーRY3のオンを維持するようにこれらを制御する制御部480を含む。この実施形態においては、リレーRY2およびリレーRY3、ならびにこれらを制御する制御部480が接地部に相当する。この場合のしきい値は、蓄電池専用変換装置362の通常の出力電流の値よりも小さな値であって、0に近い値に選ばれる。この結果、電流値を示す信号の絶対値がしきい値より大きな電流値を示す、とは、蓄電池専用変換装置362が運転中であることを意味する。逆に、電流値を示す信号の絶対値がしきい値以下である電流値を示す、とは、蓄電池専用変換装置362が停止状態にあることを意味する。しきい値を0としてもよい。ただし、ノイズを考えると、しきい値を、0より大きく、蓄電池用変換装置362が運転中か否かを明確に区別できるような値とすることが望ましい。以下の説明における「しきい値」はいずれも上記と同様の意味で使用される。
【0072】
図11に、系統68の停電時でありかつ全負荷対応型蓄電装置460が停止状態にあるときに、制御部480がリレーRY2およびリレーRY3を制御するために実行するプログラムの制御構造を示す。
【0073】
図11を参照して、このプログラムは、系統68の停電時に起動され、全負荷対応型蓄電装置460が運転中か否かに従って制御の流れを分岐させるステップ500と、ステップ500における判定が否定的なときに、電流センサ462により蓄電池専用変換装置160の補助入力に検出される電流の絶対値がしきい値より大きいか否かに従って制御の流れを分岐させるステップ502とを含む。このプログラムはさらに、ステップ500における判定が肯定的なとき、およびステップ500における判定が否定的でありかつステップ502における判定が否定的なとき(すなわち蓄電池専用変換装置160の補助入力に検出される電流の絶対値がしきい値以下のとき)に、リレーRY2およびリレーRY3をオンさせてこのプログラムの実行を終了するステップ504と、ステップ502における判定が肯定的なときに、リレーRY2およびリレーRY3をオフさせてこのプログラムの実行を終了するステップ506とを含む。このプログラムは、所定時間ごとに実行される。
【0074】
全負荷対応型蓄電装置460の停止時に電流センサ462の出力の絶対値がしきい値より大きいということは、蓄電池専用変換装置160が運転中であることを示す。したがって、この場合、制御部480はリレーRY2およびリレーRY3のオン状態を維持する。
【0075】
このように全負荷対応型蓄電装置460の制御部480がリレーRY2およびリレーRY3を制御することにより、系統68の停電時であってかつ全負荷対応型蓄電装置460が動作を停止しているときであっても、蓄電池専用変換装置160が動作しているときには、蓄電池専用変換装置160の補助入力および自立出力が全負荷対応型蓄電装置460のリレーRY2およびリレーRY3を介して接地される。すなわち、全負荷対応型蓄電装置460および蓄電池専用変換装置160に共通に形成される中性線が1箇所において接地される。その結果、蓄電池専用変換装置160において補助入力および自立出力に関する配線が接地電位から浮いてしまうという問題は生じない。
【0076】
3.第3実施形態
上記第1実施形態および第2実施形態においては、蓄電池専用変換装置160および蓄電池専用変換装置362のように、接地のためのスイッチを含まないものが使用されている。しかしこの開示はそのような実施形態に限定されない。この第3実施形態のように、蓄電池専用変換装置として内部に接地のためのスイッチを含むものを使用することもできる。以下に説明する第3実施形態に係る電力変換システム550はそうしたシステムである。
【0077】
図14を参照して、この第3実施形態に係る電力変換システム550は、いずれも系統68に接続される全負荷対応型蓄電装置560および蓄電池専用変換装置562と、全負荷対応型蓄電装置560の自立出力に接続された一般負荷分電盤70と、蓄電池専用変換装置562の自立出力に接続された特定負荷分電盤164とを含む。全負荷対応型蓄電装置560および蓄電池専用変換装置562はいずれも接地のためのスイッチ(リレー)を持つ。
【0078】
全負荷対応型蓄電装置560は、
図6に示す全負荷対応型蓄電装置360において、外部装置(例えば全負荷対応型蓄電装置560のリモートコントローラ)と通信可能な通信部584と、通信部584によるリモートコントローラとの通信により外部から入力される情報を記憶するための記憶部582とをさらに含む点において全負荷対応型蓄電装置360と異なる。記憶部582が記憶する情報は、電力変換システム550において、接地のためのスイッチを制御する際の主導権を、全負荷対応型蓄電装置560と蓄電池専用変換装置562のいずれが持つかを表す情報である。この実施形態においては、スイッチ制御の主導権を持つ装置をプライマリと呼び、そうでない装置をセカンダリと呼ぶ。プライマリおよびセカンダリは、リモートコントローラなどにより外部から設定可能とする。このために記憶部582が記憶する情報をプライマリ情報と呼ぶ。
【0079】
全負荷対応型蓄電装置560はさらに、
図6に示す制御部380に代えて、記憶部582に記憶されたプライマリ情報に従って、系統68の停電時に、全負荷対応型蓄電装置560および蓄電池専用変換装置562の運転状態に基づいて、全負荷対応型蓄電装置560の接地のためのスイッチである、リレーRY3およびリレーRY2のオンオフを制御する機能を持つ制御部580を含む。
【0080】
蓄電池専用変換装置562は、
図6に示す蓄電池専用変換装置362と似た構成を持つ。ただし蓄電池専用変換装置562は、自立出力の一方配線を接地電位に接続するためのリレーRY7を内部に持つ。蓄電池専用変換装置562はさらに、全負荷対応型蓄電装置560と同様に外部のリモートコントローラと通信するための通信部604と、通信部604による通信により外部から受け取った指令に従ったプライマリ情報を記憶するための記憶部602とを含む。蓄電池専用変換装置562はさらに、
図6に示す制御部382に代えて、記憶部602に記憶されたプライマリ情報に従って、系統68の停電時に、全負荷対応型蓄電装置360と蓄電池専用変換装置362の運転状態に基づいて、リレーRY7のオンオフを制御する機能を持つ制御部600を持つ。
【0081】
全負荷対応型蓄電装置560と蓄電池専用変換装置562とのいずれをプライマリとし、いずれをセカンダリとするかは、予め使用者が決定し、全負荷対応型蓄電装置560および蓄電池専用変換装置562にそれぞれ適切なプライマリ情報を設定するものとする。
【0082】
この実施形態においては、系統68の停電時、全負荷対応型蓄電装置560と蓄電池専用変換装置562の双方が運転状態にあるときには、プライマリ側の接地用スイッチをオンとし、セカンダリ側の接地用スイッチをオフとする。いずれか一方のみが運転中であるときには、運転中の装置の接地用スイッチをオンとし、停止中の装置の接地用スイッチをオフとする。
【0083】
図13に、
図12に示す電力変換システム550において、全負荷対応型蓄電装置560をプライマリとしたときの、リレーRY1、リレーRY2、リレーRY3、リレーRY4、リレーRY5、リレーRY6およびリレーRY7のオンとオフとを、系統68の状態と全負荷対応型蓄電装置560および蓄電池専用変換装置562の運転状態とにより分類した表を示す。これらリレーのうち、全負荷対応型蓄電装置560における接地のためのスイッチはリレーRY3(およびリレーRY2)である。蓄電池専用変換装置562における接地のためのスイッチはリレーRY7である。
【0084】
図13を参照して、系統68からの電力供給があるときの各リレーの動きについては実施形態1および実施形態2の場合と同様である。系統68が停電しているとき、全負荷対応型蓄電装置560または蓄電池専用変換装置562のいずれかのみが運転状態であるときには、
図13の第6行および第7行により示すように、運転状態である装置の接地用スイッチをオンとし、停止状態である装置の接地用スイッチをオフとする。両方が運転状態であるときには、
図13の第8行に示すように、プライマリ側の装置(この例においては全負荷対応型蓄電装置560)の接地用スイッチ(リレーRY3およびリレーRY2)をオンとし、セカンダリ(蓄電池専用変換装置562)側の接地用スイッチ(リレーRY7)をオフとする。蓄電池専用変換装置562をプライマリとする場合にはこの逆となるように制御部580および制御部600をプログラムすればよい。
【0085】
この実施形態においては、リレーRY2およびリレーRY3、これらを制御する制御部580、リレーRY7およびリレーRY7を制御する制御部600が接地部に相当する。
【0086】
以上のようにこの実施形態によれば、系統68の停電時において、全負荷対応型蓄電装置560と蓄電池専用変換装置562との運転状態において、全負荷対応型蓄電装置560と蓄電池専用変換装置562のいずれか一方の接地用スイッチをオンとし、他方の接地用スイッチをオフにすることができる。すなわち、全負荷対応型蓄電装置560および蓄電池専用変換装置562に共通に形成される中性線が1箇所において接地される。その結果、蓄電池専用変換装置562の補助入力および自立出力が接地電位から浮いてしまうことが防止できる。
【0087】
4.第4実施形態
上記第1実施形態から第3実施形態においては、組み合わされる装置が互いに異なっている。しかしこの開示はそのような実施形態に限定されず、接地のためのスイッチを持つ同じ装置を組み合わせて電力変換システムを構築することもできる。この電力変換システムは、第3実施形態と同様、プライマリとセカンダリとを決めることにより、系統68の停電時において、少なくとも一方が動作しているときには、常に一方の接地のためのスイッチがオンとなり、他方のスイッチがオフとなるようにこれらスイッチを制御することにより実現できる。
【0088】
図14に、この第4実施形態に係る電力変換システム650の構成を示す。
図14を参照して、電力変換システム650は、いずれも系統68に接続された、互いに同じ構成の全負荷対応型蓄電装置660および全負荷対応型蓄電装置662と、全負荷対応型蓄電装置660の自立出力および全負荷対応型蓄電装置662の自立出力に共通に接続された一般負荷分電盤70とを含む。
【0089】
全負荷対応型蓄電装置660は、
図1に示す全負荷対応型蓄電装置60と同様に、蓄電池62、太陽光発電装置64および太陽光発電装置66に接続され、DC/DC変換器90、DC/DC変換器92、およびDC/DC変換器94と、DC/AC変換器96と、リレーRY1と、リレーRY2と、リレーRY3と、センサ部98およびセンサ部100とを含む。
【0090】
全負荷対応型蓄電装置660はさらに、外部装置(例えば全負荷対応型蓄電装置660のリモートコントローラ)と通信するための通信部684と、通信部684を介して使用者により入力されたプライマリ情報を記憶するための記憶部682と、記憶部682に記憶されたプライマリ情報と、センサ部98およびセンサ部100から与えられるセンサ情報とに基づいて、リレーRY3の制御を行うための制御部680とを含む。
【0091】
全負荷対応型蓄電装置662も全負荷対応型蓄電装置660と全く同じ構成を持つ。より具体的には、全負荷対応型蓄電装置662は、蓄電池664、太陽光発電装置666、および太陽光発電装置668にそれぞれ接続されたDC/DC変換器700、DC/DC変換器702、およびDC/DC変換器704とDC/DC変換器700、DC/DC変換器702およびDC/DC変換器704に一端が接続されたDC/AC変換器706とを含む。全負荷対応型蓄電装置662はさらに、全負荷対応型蓄電装置660のセンサ部98およびセンサ部100に対応するセンサ部708およびセンサ部710と、それぞれリレーRY1、リレーRY2およびリレーRY3に対応するリレーRY4、リレーRY5およびリレーRY6とを含む。全負荷対応型蓄電装置662はさらに、全負荷対応型蓄電装置660の通信部684、記憶部682および制御部680に対応する通信部724、記憶部722、および制御部720を含む。
【0092】
全負荷対応型蓄電装置660がプライマリである場合の、全負荷対応型蓄電装置660のリレーRY1、リレーRY2、およびリレーRY3、ならびに全負荷対応型蓄電装置662のリレーRY4、リレーRY5、およびリレーRY6のオン/オフの制御を
図15に表敬式により示す。
図15を参照して、系統68からの電力供給があるときの各リレーの制御は、第3実施形態までと同様である。また系統68が停電しているときには、プライマリである全負荷対応型蓄電装置660のリレーRY2およびリレーRY3がオン状態に維持される。それに対してセカンダリである全負荷対応型蓄電装置662のリレーRY6は常にオフに維持される。同様に、系統68の停電時は、セカンダリである全負荷対応型蓄電装置662のリレーRY5は、全負荷対応型蓄電装置662のみが運転状態であるときにオンとなり、他はオフにされる。
【0093】
この結果、系統68の停電時には、全負荷対応型蓄電装置660のリレーRY3が接地のためのスイッチとして機能する。リレーRY6がオンとなることはない。すなわち、全負荷対応型蓄電装置660および全負荷対応型蓄電装置662に共通に形成される中性線が1箇所において接地される。したがって、全負荷対応型蓄電装置660および全負荷対応型蓄電装置662の自立出力が接地電位から浮いてしまうおそれが小さくなるという効果がある。
【0094】
プライマリとセカンダリを入れ替えた場合には、
図15のリレーRY2およびリレーRY3と、リレーRY5およびリレーRY6とを入れ替えればよい。
【0095】
この実施形態においては、リレーRY2およびリレーRY3、これらを制御する制御部680、ならびにリレーRY5およびリレーRY6、これらを制御する制御部720が接地部に相当する。
【0096】
5.第5実施形態
図16に、この開示の第5実施形態に係る電力変換システム750のブロック図を示す。
図16を参照して、電力変換システム750は、全負荷対応型蓄電装置760と、
図6に示す全負荷対応型蓄電装置360とを含む。これらはいずれも系統68に接続されている。電力変換システム750はさらに、全負荷対応型蓄電装置760の自立出力に接続された一般負荷分電盤70と、蓄電池専用変換装置362の自立出力に接続された特定負荷分電盤164とを含む。
【0097】
全負荷対応型蓄電装置760は、
図3に示す全負荷対応型蓄電装置60とほぼ同じ構成を持つが、全負荷対応型蓄電装置760に蓄電池専用変換装置362が接続されているか否かを示す接続有無情報を記憶するための記憶部782と、接続有無情報を外部装置(例えばリモートコントローラ)との通信により記憶部782に記憶させるための通信部784と、全負荷対応型蓄電装置760に蓄電池専用変換装置362が接続されているという情報が記憶部782に記憶されているときには、全負荷対応型蓄電装置760の停止時にもリレーRY3およびリレーRY2の接続を維持するようにリレーRY3およびリレーRY2を制御する制御部780を含む。
【0098】
この構成により、制御部780は、蓄電池専用変換装置362が接続されているときには、全負荷対応型蓄電装置760が停止しているときにもリレーRY3およびリレーRY2をオンさせておき、そうでないときには全負荷対応型蓄電装置760の停止時にはリレーRY3およびリレーRY2をオフさせる制御を行う。
【0099】
この結果、系統68が停電しているとき、蓄電池専用変換装置362が動作していないときにも蓄電池専用変換装置362のリレーRY5Aをオンさせておくことにより、蓄電池専用変換装置362は、リレーRY5A、全負荷対応型蓄電装置760のリレーRY3、およびリレーRY2により接地が確保できる。すなわち、全負荷対応型蓄電装置760および蓄電池専用変換装置362に共通に形成される中性線が1箇所において接地される。2箇所以上において接地が生じることもない。したがって、電力変換システム750を安定して動作させることができる。
【0100】
以上のようにこの開示によれば、2種類の蓄電システムを連携して動作させるときに、漏電遮断器により自立出力が遮断されてしまう可能性が小さくできる。その結果、2つの電力変換装置を並列して動作させるときにも接地が確保できる電力変換システム、および電力変換装置が提供できる。
【0101】
上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路などにより構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)など、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。例えば物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどのネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置などから上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされてもよいし、CD-ROM(Read-Only Memory)(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read-Only Memory)、半導体メモリなどの記録媒体に格納された状態において流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされてもよい。
【0102】
今回開示された実施の形態は全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、開示の詳細な説明の記載により示されるわけではなく、特許請求の範囲の各請求項によって示され、特許請求の範囲の文言と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
50、150、250、300、350、450、550、650、750 電力変換システム
68 系統
60、360、460、560、660、662、760 全負荷対応型蓄電装置
62、162、664 蓄電池
64、66、666、668 太陽光発電装置
70 一般負荷分電盤
72、74、76、166、168 家庭内負荷
78、170、172 接地
90、92、94、190、700、702、704 DC/DC変換器
96、192、706 DC/AC変換器
98、100、194、196、198、708、710 センサ部
102、200、380、382、480、580、600、680、720、780 制御部
120、220 漏電遮断器
122、124、126、222、224 ブレーカ
160、362、562 蓄電池専用変換装置
164 特定負荷分電盤
462 電流センサ
500、502、504、506 ステップ
582、602、682、722、782 記憶部
584、604、684、724、784 通信部