(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134618
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/24 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044895
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】辻本 将輝
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 英也
(57)【要約】
【課題】コンタクトのばね特性を維持しながら、小型化したコンタクトを備えた電気コネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、ベローズ形のコンタクト1とハウジング3を備える。コンタクト1は、箱部11、接点ばね片111、及び固定部12を有する。箱部11は、天板部11t、略平行に蛇行する一対の側部11a・11a、及び、一対の底板部11b・11bで四角枠状に構成している。接点ばね片111は、相手側端子と接触できる接点11sを形成している。固定部12は、ハウジング3に固定される。底板部11bは、側部11aの先端部側から天板部11tの基端部に向かって高さ方向に蛇行している。ハウジングは、箱部11を収容する収容室3rと、接点ばね片111を外部に突出できる窓3wを有する。コンタクト1を立体的に折り曲げて形成することで小型化できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属板を折り曲げ成形した一つ以上のベローズ形のコンタクトと、
前記コンタクトを内部に実装した直方体状のハウジングと、を備え、
前記コンタクトは、
帯状に延び、長さ方向に荷重を加えると座屈する天板部、この天板部の基端部の両側から幅方向に屈曲し、前記天板部の先端部側に向かって略平行に蛇行する一対の側部、及び、前記天板部と対向した状態でこれらの側部から幅方向に屈曲すると共に、前記側部の先端部側から前記天板部の基端部に向かって高さ方向に蛇行する一対の帯状の底板部で構成した四角枠状の箱部と、
前記天板部の先端部から突出し、一対の前記底板部に向かって下り傾斜した後に反転した湾曲面に、相手側端子と接触できる接点を形成した接点ばね片と、
前記接点ばね片が突出した方向と反対側に配置され、前記ハウジングに固定される固定部と、を有し、
前記ハウジングは、
少なくとも前記箱部を収容する収容室と、
前記収容室に連通し、前記接点ばね片を外部に突出できる窓と、を有している、電気コネクタ。
【請求項2】
前記固定部は、
前記ハウジングに圧入可能な一対の圧入片と、
前記圧入片から連続し、プリント基板の一方の面にハンダ接合されるリード片と、を有している、請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記一対の底板部は、所定の間隔を設けて板厚面を対向配置している、請求項1又は2記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関する。特に、携帯用電話機などの携帯用電子機器に内蔵されるバッテリー(充電池)と電気接続する電気コネクタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー用の電気コネクタは、バッテリーを電源として作動する携帯用電話機などの電子機器とバッテリーとを電気接続している。一般に、バッテリー用の電気コネクタは、電子機器に内蔵したプリント基板に実装可能な小型の電気コネクタ(プリント基板用コネクタ)となっている。
【0003】
このようなバッテリー用の電気コネクタ(以下、コネクタと略称する)は、絶縁性のハウジングと、このハウジングに収容される複数のコンタクトとで構成している。このコンタクトは、導電性を有する帯状の金属板を蛇行曲線状に打ち抜き加工した、いわゆる、スネークスプリングが使用されている。
【0004】
スネークスプリングの先端部をハウジングに開口した窓から突出させ、バッテリーに形成した電源端子とスネークスプリングの先端部を接触させることで、バッテリーとプリント基板を電気的に接続できる。しかし、これまでのスネークスプリング型のコンタクトは、スネークスプリングのばね長を大きくすると、バッテリーとの接触圧力が不足するという不具合があった。
【0005】
上述した不具合に対して、相手側端子との接触圧力が十分に得られるスネークスプリング型のコンタクトが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12は、従来技術によるスネークスプリング型のコンタクトの構成を示す斜視図である。なお、本願の
図12は、特許文献1の
図1に相当している。
図12を参照して、従来技術によるコンタクト9は、導電性を有する帯状の金属板を打ち抜き加工及び折り曲げ加工することで形成されている。
【0008】
図12を参照すると、コンタクト9は、平面が対向する一対の支持基板部93a・93b、一対の支持基板部93a・93bから蛇行した状態で平行に延びる一対のはね部91a・91b、及び、一方のはね部91a・91bの先端部からU字状に反転して他方のはね部91bの先端部に至る接触部92を備えている。
【0009】
図12を参照すると、一対の支持基板部93a・93bは、図示しないハウジングの内壁に支持されている。一対の支持基板部93a・93bには、ハウジングに圧入するための一対の突起95・95を幅方向に突出している。又、各支持基板部93a・93bは、接触部92と反対側に突設した一組のリード部94a・94bを有している。一組のリード部94a・94bは、ハウジングを搭載したプリント基板にハンダ接合できる。
【0010】
従来技術によるコンタクト9は、接触部92をハウジングに開口した窓から突出させ、相手側端子が接触部92と接触することで、同じばね長でありながら高い接触圧入を得ることができる、としている。
【0011】
しかしながら、従来技術によるコンタクト9は、相手側端子が接触する方向(長手方向)とこの方向と直交する幅方向が大きいという問題がある。バッテリーなどの相手側端子と接続可能なコンタクトを小型化できれば、このコンタクトを備えた電気コネクタも小型化できる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、携帯用電子機器などに内蔵されるバッテリーと電気接続する電気コネクタであって、相手側端子と接続するコンタクトのばね特性を維持しながら、小型化したコンタクトを備えた電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、帯状に延び、長さ方向に荷重を加えると座屈する天板部、この天板部の基端部の両側から幅方向に屈曲し、前記天板部の先端部側に向かって略平行に蛇行する一対の側部、及び、これらの側部から幅方向に屈曲すると共に、側部の先端部側から天板部の基端部に向かって高さ方向に蛇行する一対の帯状の底板部でコンタクトを箱状に構成することで、電気コネクタを小型できると考え、これにより、以下のような新たな電気コネクタを発明するに至った。
【0014】
(1)帯状の金属板を折り曲げ成形した一つ以上のベローズ形のコンタクトと、前記コンタクトを内部に実装した直方体状のハウジングと、を備え、前記コンタクトは、帯状に延び、長さ方向に荷重を加えると座屈する天板部、この天板部の基端部の両側から幅方向に屈曲し、前記天板部の先端部側に向かって略平行に蛇行する一対の側部、及び、前記天板部と対向した状態でこれらの側部から幅方向に屈曲すると共に、前記側部の先端部側から前記天板部の基端部に向かって高さ方向に蛇行する一対の帯状の底板部で構成した四角枠状の箱部と、前記天板部の先端部から突出し、一対の前記底板部に向かって下り傾斜した後に反転した湾曲面に、相手側端子と接触できる接点を形成した接点ばね片と、前記接点ばね片が突出した方向と反対側に配置され、前記ハウジングに固定される固定部と、を有し、前記ハウジングは、少なくとも前記箱部を収容する収容室と、前記収容室に連通し、前記接点ばね片を外部に突出できる窓と、を有している、電気コネクタ。
【0015】
(2)前記固定部は、前記ハウジングに圧入可能な一対の圧入片と、前記圧入片から連続し、プリント基板の一方の面にハンダ接合されるリード片と、を有している、(1)記載の電気コネクタ。
【0016】
(3)前記一対の底板部は、所定の間隔を設けて板厚面を対向配置している、(1)又は(2)記載の電気コネクタ。
【発明の効果】
【0017】
本発明による電気コネクタは、相手側端子と接触できるコンタクトを箱状に形成し、それぞれの面にばね特性を備えることで、相手側端子と接続するコンタクトのばね特性を維持しながら、小型化したコンタクトを備えた電気コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による電気コネクタの構成を示す斜視図であり、電気コネクタをプリント基板に実装した状態図である。
【
図2】前記実施形態による電気コネクタの構成を示す斜視分解組立図である。
【
図3】前記実施形態による電気コネクタの構成を示す平面図である。
【
図4】前記実施形態による電気コネクタの構成を示す正面図である。
【
図5】前記実施形態による電気コネクタの構成を示す背面図である。
【
図6】前記実施形態による電気コネクタの構成を示す図であり、
図6(A)は、電気コネクタの部分構成を示す正面図、
図6(B)は、
図6(A)のX-X矢視図である。
【
図7】前記実施形態による電気コネクタに備わるハウジングの構成を示す図であり、
図7(A)は、ハウジングの正面図、
図7(B)は、ハウジングの背面図、
図7(C)は、ハウジングの下面図である。
【
図8】前記実施形態による電気コネクタに備わるコンタクトの構成を示す斜視図であり、
図8(A)は、コンタクトを正面から観た状態図、
図8(B)は、コンタクトを背面から観た状態図である。
【
図9】前記実施形態による電気コネクタに備わるコンタクトの構成を示す右側面図であり、
図9(A)は、コンタクトが弾性変形する前の状態図、
図9(B)は、コンタクトが弾性変形した状態図である。
【
図10】前記実施形態による電気コネクタに備わるコンタクトの構成を示す下面図である。
【
図11】前記実施形態による電気コネクタに備わるコンタクトの構成を示す展開である。
【
図12】従来技術によるスネークスプリング型のコンタクトの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
[電気コネクタの構成)]
最初に、本発明の一実施形態による電気コネクタの構成を説明する。
図1から
図6を参照すると、本発明の一実施形態による電気コネクタ(以下、コネクタと略称する)10は、携帯用電話機などに内蔵したバッテリー(図示せず)と電気的に接続できる。コネクタ10は、一対のベローズ形のコンタクト1・1と直方体状のハウジング3を備えている。
【0021】
図2又は
図6(B)及び
図8を参照すると、コンタクト1は、帯状の金属板を折り曲げ成形している。ハウジング3は、コンタクト1を内部に実装している(
図6(B)参照)。ハウジング3は、コンタクト1を収容する収容室3rに有している(
図6(B)参照)。又、ハウジング3は、収容室3rに連通し、接点ばね片111を外部に突出できる窓3wを有している(
図7(A)又は
図7(B)参照)。
【0022】
図1又は
図2を参照すると、コンタクト1は、相手側端子の電源端子に接続する電源コンタクトであり、ハウジング3の両端部に配置されている。一対のコンタクト1・1の間には、相手側端子の信号端子に接続する複数の信号コンタクト1sを並列配置している。
図2を参照すると、信号コンタクト1sは、ベローズ形のヘッダを有するスネークスプリングで構成している。
【0023】
図1又は
図2を参照すると、コネクタ10は、プリント基板1pに実装されている。
図2を参照すると、プリント基板1pは、矩形のスロットStを端部に切り欠いている。
図6(B)を参照すると、コネクタ10は、底部側からスロットStに導入されている。
図2を参照して、コンタクト1に設けたリード片12rをプリント基板1pに設けたパッドにハンダ接合すること、及び、信号コンタクト1sに設けたリード片をパッドにハンダ接合することで、コネクタ10をプリント基板1pに低背に実装できる。
【0024】
図1から
図5を参照すると、コネクタ10は、一組の放熱端子5a・5bを更に備えている。これらの放熱端子5a・5bは、矩形の放熱板51と補強タブ5tを有している(
図2参照)。
図2又は
図6(B)を参照すると、放熱板51は、その中央部がコンタクト1の天板部11tに接触できる。そして、放熱板51は、コンタクト1を熱伝導できる。又、補強タブ5tは、それらの末端部がプリント基板1pに設けたスルーホールにハンダ接合されることで、プリント基板1pに対するコネクタ10の接合強度を補強できる。
【0025】
(コンタクトの構成)
次に、コンタクト1の構成を説明する。コンタクト1は、導電性を有する金属板からなり、打ち抜き加工した展開板(
図11参照)を折り曲げ成形することで、所望の形状のコンタクト1を得ることできる。コンタクト1は、銅合金などの導電性を有する金属板が好ましいが、銅合金に限定されない。
【0026】
図6(B)又は
図8及び
図9を参照すると、コンタクト1は、四角枠状の箱部11、接点ばね片111、及び、固定部12を有している。箱部11は、帯状に延びる天板部11t、一対の側部11a・11a、及び、一対の帯状の底板部11b・11bを有している。
【0027】
図8又は
図9を参照すると、天板部11tは、長さ方向に荷重を加えると上向きに座屈する(
図9(B参照)。一対の側部11a・11aは、天板部11tの基端部の両側から幅方向に略直角に屈曲している。そして、一対の側部11a・11aは、天板部11tの先端部側に向かって略平行に蛇行している。
【0028】
図8又は
図9を参照すると、一対の底板部11b・11bは、天板部11tと対向した状態でこれらの側部11a・11aから略直角に幅方向に屈曲している。又、一対の底板部11b・11bは、一対の側部11a・11aの先端部側から天板部11tの基端部に向かって高さ方向に蛇行している。
【0029】
又、
図10を参照すると、一対の底板部11b・11bは、所定の間隙を設けて板厚面を対向配置している。
【0030】
図6(B)又は
図8及び
図9を参照すると、接点ばね片111は、天板部11tの先端部から一方の方向に突出している。接点ばね片111は、一対の底板部11b・11bに向かって下り傾斜した後に反転した湾曲面に、電極端子(相手側端子)と接触できる接点11sを形成している。
【0031】
図8又は
図9を参照すると、固定部12は、接点ばね片111が突出した方向と反対側の他方の方向に配置されている。そして、固定部12は、ハウジング3の上面からハウジング3に固定される(
図2参照)。
【0032】
図8又は
図9を参照すると、固定部12は、一対の圧入片12p・12pと一対のリード片12r・12rを有している。リード片12rは、圧入片12pから連続している。一対の圧入片12p・12pは、ハウジング3の収容室3rの内壁に圧入できる。一対のリード片12r・12rは、プリント基板1pの一方の面にハンダ接合できる。
【0033】
コンタクト1は、
図11で示したような展開板を折り曲げ加工して得ることができる。折り曲げ加工後のコンタクト1は、帯状のコンタクトキャリアCcと連結している。コンタクトキャリアCcが延びる方向にコンタクト1を連設でき、ノッチ1nを切断することで、バラ状のコンタクト1を得ることができる(
図2参照)。
【0034】
(ハウジングの構成)
図2又は
図6(B)及び
図7を参照すると、ハウジング3は、直方体状に形成している。ハウジング3は、一対の収容室3r・3rと窓3w・3wを有している。収容室3rには、少なくともコンタクト1の箱部11を収容できる(
図6(B)参照)。窓3wは、収容室3rと連通している。窓3wは、接点ばね片111を外部に突出できる。信号コンタクト1sは、ハウジング3の下部からハウジング3に実装できる。
【0035】
[電気コネクタの作用]
次に、コンタクト1の動作を説明しながら、コネクタ10の作用及び効果を説明する。
図6(B)を参照して、電極端子を先頭にしてバッテリーを接点11sに向かって移動すると(矢印Fの方向)、コンタクト1は、
図9(A)に示した状態から
図9(B)に示した状態に弾性変形する。接点11sは、一対の圧入片12p・12pに向かって後退する。
【0036】
図9(A)に示した状態から
図9(B)に示した状態に弾性変形する過程では、箱部11は、弾性変形することが容易でなく、
図9(B)に示すように、接点ばね片111、一対の側部11a・11a、及び一対の底板部11b・11bが弾性変形する。
【0037】
図9を参照すると、実施形態によるコンタクト1は、奥行方向にD1からD2に変位するが、奥行方向の変位に比べて、高さ方向にH1からH2に変位する高さ方向の変位量が少ない。一方、接点ばね片111は、高さ方向には撓み易く、接点11sが電極端子と摺動するワイピング効果を十分に得ることができる。実施形態によるコンタクト1は、小型のコンタクトでありながら、十分なワイピング量を確保できる。
【0038】
実施形態によるコネクタ10は、コンタクト1を立体的に折り曲げて形成し、それぞれの面にばね部を構成し、ばね性能を確保した上、コネクタ10の幅方向及び奥行き方向を小さくできる。つまり、コネクタ10を小型化できる。
図8を参照して、天板部11tは、第1のばね部を構成している。側部11aは、第2のばね部を構成している。底板部11bは、第3のばね部を構成している。
【0039】
図8又は
図9を参照して、コンタクト1における第1から第3のばね部のバランスを調整すれば、適切な接触圧力を確保でき、コンタクト1の高さD1を低くでき(
図8(B)参照)、コネクタ10の低背化も可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 コンタクト
3 ハウジング
3r 収容室
3w 窓
10 コネクタ(電気コネクタ)
11 箱部
11t 天板部
11s 接点
11a・11a 一対の側部
11b・11b 一対の底板部
12 固定部
111 接点ばね片