(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013462
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】エキシマランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 65/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H01J65/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115559
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】藤森 昭芳
(72)【発明者】
【氏名】本多 友彦
(57)【要約】
【課題】始動補助用の放電空間の形成の有無に関係なく、ランプの点灯始動性を向上させる。
【解決手段】エキシマランプ10は、内側電極30を覆う誘電体50と、放電容器20の外側に配置される外側電極40とを備え、誘電体50は、放電容器20のランプ軸方向に沿って同軸配置され、放電容器20の封止部21と溶着している。内側電極30の封止部反対側の端部には、誘電体50に覆われず、放電容器20内に露出する露出部35が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスが封入された放電容器と、
前記放電容器の内側にランプ軸方向に沿って配設された内側電極と、
前記放電容器と封止部で溶着し、前記内側電極を覆う誘電体と、
前記放電容器の外側に配設される外側電極とを備え、
前記内側電極の前記封止部とは反対側の端部に、前記誘電体に覆われず、前記放電容器内に露出する露出部が設けられていることを特徴とするエキシマランプ。
【請求項2】
前記内側電極が、箔状部分と、前記箔状部分と電気的に接続された棒状部分とを有し、
前記棒状部分の一部が、前記露出部として前記誘電体に覆われず、前記放電容器内に露出していることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項3】
前記内側電極の棒状部分の露出部が、前記外側電極と前記内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外で、前記放電容器内に露出していることを特徴とする請求項2に記載のエキシマランプ。
【請求項4】
前記内側電極の箔状部分の露出部側端部が、前記外側電極と前記内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外に位置することを特徴とする請求項3に記載のエキシマランプ。
【請求項5】
前記外側電極の露出部側端部が、前記外側電極と前記内側電極の箔状部分とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外に位置することを特徴とする請求項3に記載のエキシマランプ。
【請求項6】
前記露出部が、前記外側電極と前記内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外で、前記放電容器内に露出していることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【請求項7】
前記内側電極が箔状部分を有し、
前記誘電体のランプ軸方向に沿った一部を前記箔状部分と封着することで補助放電空間が形成され、
前記補助放電空間が、前記外側電極と前記内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のエキシマランプ。
【請求項8】
前記放電容器の前記外側電極と前記内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間よりも露出部側に、前記放電容器の前記外側電極と前記内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間の内径よりも小さい内径の小径部が設けられ、
前記露出部の少なくとも一部が、前記小径部内に位置することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のエキシマランプ。
【請求項9】
前記誘電体の露出部側端部が、前記小径部内に位置することを特徴とする請求項8に記載のエキシマランプ。
【請求項10】
前記誘電体の露出部側端部が、前記外側電極と前記内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設外に位置することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のエキシマランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプに関し、特に、放電の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、二重管構造のエキシマランプでは、箔状の内側電極を被覆する誘電体を放電管内に配置し、放電管の外表面に設けられた外側電極と内側電極との間に電圧を印加する(特許文献1参照)。これによって、誘電体と放電管との間に形成された放電空間から紫外線などのエキシマ光が放射される。
【0003】
また、高出力のエキシマランプを確実に点灯するため、放電開始電圧よりも低い電圧で放電する始動補助機能を備えたエキシマランプが知られている(特許文献2参照)。そこでは、二重管構造ランプの内側管内に、始動電圧の低いガスを封入した始動補助用の放電空間が、ランプ軸方向に沿って形成されている。始動補助用の放電空間から放射された紫外光が主放電空間のガスに照射することによって、主放電空間で放電が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-38658号公報
【特許文献2】特開2017-4702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
始動補助用の放電空間の形成の有無に関係なく、ランプの点灯始動性を向上させる放電特性を備えたエキシマランプを提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエキシマランプは、放電ガスが封入された放電容器と、放電容器の内側にランプ軸方向に沿って配設された内側電極と、放電容器と封止部で溶着し、内側電極を覆う誘電体と、放電容器の外側に配設される外側電極とを備える。
【0007】
放電容器、内側電極、誘電体、外側電極の形状、配置などの構成は様々である。例えば、放電容器は筒状容器として構成可能である。内側電極の形状は、両端の間に渡って同一形状、あるいは、異なる形状で繋がるように構成することも可能である。誘電体は、放電空間の領域等に応じてその延在する長さを定めればよい。外側電極は、放電容器外表面上に設置することが可能であり、あるいは外表面から所定間隔空けて設置することも可能である。
【0008】
本発明では、内側電極の封止部とは反対側の端部に、誘電体に覆われず、放電容器内に露出する部分(ここでは、露出部という)が設けられている。例えば、内側電極において、電源部と接続する給電線と接続する端部とは反対側の端部に、露出部を設けることが可能である。露出部を設けることによって、放電容器内において、点灯始動時における電界集中(電界強度分布)および放電集中が生じる空間領域と、定格点灯時における電界集中および放電集中が生じる空間領域を形成することが可能である。
【0009】
例えば、誘電体によって覆われる内側電極の形状などを適宜構成することにより、露出部に相当する空間領域(ここでは、露出領域という)と、定格点灯時において放電が支配的になる空間領域(ここでは、放電領域あるいは主放電領域という)との間に、電界集中が生じにくく、電界強度が抑えられる空間領域(ここでは、離隔領域という)を形成することも可能である。なお、露出領域、放電領域、離隔領域は、放電状態に関する特性や機能性などに関して規定される領域であって、上述した本発明の構成によって必然的にそのような領域が定まるものでもなく、権利範囲を限定する意図はない。
【0010】
内側電極の構成は様々であり、全体的に同一形状の電極構造であってもよく、異なる電極形状部分をもつように構成してもよい。いずれの形態においても、露出部が、外側電極と内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向に沿った区間(以下、ランプ軸方向配設区間という)外で、放電容器内に露出するように構成することが可能である。ここで、「ランプ軸方向配設区間」は、放電容器の筒状部(径一定部分)の少なくとも一部に定められる区間として定義される。例えば、筒状部全体の区間として構成することも可能である。
【0011】
また、誘電体の露出部側端部は、外側電極と内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設外に位置するように構成することが可能である。
【0012】
例えば、内側電極は、箔状部分と、箔状部分と電気的に接続された棒状部分とを設ける構成にすることが可能である。棒状部分の一部が、露出部として誘電体に覆われず、放電容器内に露出するように構成することができる。
【0013】
内側電極の棒状部分の露出部が、外側電極と内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外で、放電容器内に露出している。
【0014】
内側電極の箔状部分の露出部側端部は、外側電極と内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外に位置するように構成することが可能である。また、外側電極の露出部側端部は、外側電極と内側電極の箔状部分とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外に位置するように構成することが可能である。
【0015】
内側電極に箔状部分を設ける場合、誘電体のランプ軸方向に沿った一部を箔状部分と封着することで補助放電空間を形成することが可能である。補助放電空間は、外側電極と内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間外に形成することができる。
【0016】
放電容器の構成としては、放電容器の外側電極と内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間よりも露出部側に、放電容器の外側電極と内側電極とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間の内径よりも小さい内径の小径部を設けることができる。この場合、露出部の少なくとも一部が、小径部内に位置するように構成することができる。例えば、誘電体の露出部側端部が、小径部内に位置するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、始動補助用の放電空間の形成の有無に関係なく、ランプの点灯始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態であるエキシマランプの側面側から見た概略的断面図である。
【
図2】第1の実施形態であるエキシマランプの変形例を示した概略的断面図である。
【
図3】第2の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
【
図4】第2の実施形態であるエキシマランプの変形例を示した図である。
【
図5】第3の実施形態であるエキシマランプを示した概略的断面図である。
【
図6】第3の実施形態であるエキシマランプの変形例を示した概略的断面図である。
【
図7】第4の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、第1の実施形態であるエキシマランプの側面側から見た概略的断面図である。
【0021】
エキシマランプ10は、石英ガラスなどの誘電材料から成る断面略円筒状の放電容器20を備える。放電容器20内には、ランプ軸(管軸)C方向に沿って延びる電極(以下、内側電極という)30が設けられ、放電容器20の外表面20Sには、内側電極30とランプ径方向に沿って対向する電極(以下、外側電極という)40が配設されている。
【0022】
内側電極30は、ランプ軸Cに沿って延びる柱状の誘電体50に被覆されている。誘電体50は、放電容器20に対して同軸的に配置されている。また、内側電極30は、その幅方向と厚さ方向の中心位置をランプ軸Cに合わせるように、放電容器20に対して同軸的に配置されている。なお、内側電極30を誘電体50に埋設するように構成してもよい。
【0023】
放電容器20の一方の端部20T1には、誘電体50が放電容器20と一体的に加熱溶着した封止部21が形成されている。そして、放電容器20内部には、誘電体50との放電容器20の内周面との間に空間S1が形成されている(以下では、放電状態にならない空間部分を含め、便宜上、放電空間あるいは主放電空間という)。放電空間S1には、キセノンガスなどの希ガス、または希ガスとハロゲンガスとの混合ガスが、放電ガスとして封入されている。放電ガスの封入圧(常温)は、例えば5kPa~150kPaに定められている。
【0024】
外側電極40は、ここでは、導電性の金属からなる線状の電極部を放電容器20の外表面20Sに沿って巻き付けて配設した構成であり、ランプ軸Cに沿って所定間隔で離間するように螺旋状に巻かれている。なお、線状以外の電極形状にすることも可能である。あるいは、放電容器20の外表面20Sに配置せず、ランプ径方向に沿って外表面20Sから離間させた位置に配置させてもよい。
【0025】
放電容器20の他方の端部20T2には、放電空間S1を囲む内径一定部分(以下、筒状部という)20T0からランプ軸Cに沿って突出する突起状部分(以下、小径部という)22が設けられている。小径部22の径(内径)Dは、ランプ製造の過程で形成され、放電容器の筒状部20T0の径(内径)D0よりも小さい。ここでは、放電容器20の外側管の先端側を加熱変形して縮径し、放電容器20よりも小径のチップ管を溶着させることで、小径部22を一体的に成形している。
【0026】
放電容器の筒状部20T0の少なくとも一部であって、外側電極40がランプ軸方向に沿って配設される区間(以下、ランプ軸方向配設区間という)Lは、ここでは筒状部20T0のランプ軸方向に沿った範囲内、すなわち、放電容器20の外径が先細くなる両端部20T1、20T2の間のランプ軸方向範囲に定められている。内側電極30の封止部側端部30T1と接続される給電線70は、外部に設置された電源部(図示せず)と接続し、電力が給電線70を介してエキシマランプ10に供給される。
【0027】
高周波(例えば、数kHz~数十MHzの範囲)および高電圧(例えば、数kV~十数kVp-p(peak to peak)の範囲)が内側電極30、外側電極40に対して印加されることにより、エキシマ光が放電空間S1から放射される。ここでは、エキシマランプ10からオゾンを生成可能な波長の紫外線(例えば、波長172nm)が放電容器20外へ放射されるように、放電ガスが放電容器20内に封入されている。したがって、エキシマランプ10は、オゾン発生による除菌、消臭などを行うオゾン発生装置として適用することが可能であり、また、除菌、消臭などを目的として、対象物に対して紫外線を直接照射する紫外線照射装置に適用することができる。
【0028】
図1に示すように、内側電極30は、管径方向(以下、ランプ径方向ともいう)に沿った幅を有する箔状の電極部分(以下、箔状部分という)32と、ランプ軸Cに沿って延びる棒状の電極部分(以下、棒状部分という)34から構成されている。ここでは、金属の箔状部分32と棒状部分34とが直接接続しているが、導電性部材を間に介在させてもよい。上述したランプ軸方向配設区間Lは、棒状部分34を含めて内側電極30と外側電極40とがランプ径方向に沿って対向する区間を表す。
【0029】
箔状部分32は、ランプ軸Cに沿ってその全体が誘電体50に被覆されている。棒状部分34は、一方の端部が箔状部分32の端部32Tと接続し、他方の端部がランプ軸Cに沿って小径部22側へ延びている。誘電体50は、その端部50Tがランプ軸方向配設区間Lの位置に合わせた軸方向長さを有し、棒状部分34の小径部22側の一部は、誘電体50に覆われておらず、放電容器20内で露出している(以下、棒状部分34の露出している部分を露出部35とする)。
【0030】
このような内側電極30と誘電体50の構成により、放電容器20に対して3つの空間領域を規定することができる。まず、内側電極30と外側電極40とがランプ径方向に沿って対向して配置されるランプ軸方向配設区間Lにおいて、内側電極30の箔状部分32と外側電極40とがランプ径方向に沿って対向する空間領域M1を、ここでは“放電領域”(以下、主放電領域ともいう)と定める。
【0031】
一方、棒状部分34の露出部35が露出している空間領域M2を、ここでは“露出領域”と定める。露出領域M2では、外側電極40と露出部35とが対向する位置関係になっておらず、露出部35の一部は、小径部22の空間領域22Wに収まる。そして、放電領域M1と露出領域M2の間に介在する空間領域M3を、ここでは“離隔領域”と定める。
【0032】
誘電体50に覆われていない露出部35は、内側電極30の一部として構成され、電界集中が生じ、電界強度が高い領域として露出領域M2を形成している。そのため、点灯開始電圧を低下させる機能を有し、点灯性(始動性)が向上する。一方で、露出部35は誘電体50に覆われていないことから、ランプ点灯中、タングステンなど内側電極30の電極材料がスパッタリング(溶融、蒸発)されやすい。しかし、棒状部分34の露出部35は円柱形状であるため、箔状部分32のナイフエッジ状部分と比べて電界集中が抑えられ、スパッタリングを抑えることができる。箔状部分32の幅方向長さと比べて径の小さい円柱形状であるため、箔状部分32を露出させた場合と比べて電界集中が生じにくい。
【0033】
しかしながら、露出領域M2は、放電領域M1から離れた空間領域として定められ、また、離隔領域M3がその間に介在している。放電領域M1は、内側電極30の箔状部分32と外側電極40とがランプ径方向に沿って対向して配置される軸方向配設区間Lに応じた空間領域であり、箔状部分32のランプ軸に沿った両縁は縁に行くほど薄くなるナイフエッジ状に形成され、その幅方向長さは、円柱形状である棒状部分34の径と比べて大きい。そのため、ナイフエッジ状部分において電界集中が生じ、電界強度が高い領域が放電領域M1に形成され、ランプの点灯始動後の安定(定格)点灯の放電空間S1では、露出領域M2での放電集中は抑制され、放電領域M1における放電が支配的となる。
【0034】
離隔領域M3は、外側電極40と棒状部分34とがランプ径方向に沿って対向する空間領域であるが、棒状部分34は、箔状部分32のようにナイフエッジ状部分が形成されず、箔状部分32の幅方向長さと比べて径の小さい円柱形状になっている。そのため、放電領域M1と比べて電界集中が生じにくい。また、露出領域M2の露出部35と同じ円柱形状であるが、離隔領域M3では、誘電体で覆われているため、露出領域M2と比べて電界集中が生じにくい。そのため、電界強度が高い領域が形成されず、離隔領域M3での放電集中は抑制される。
【0035】
このような電界強度の高い領域がそれぞれ形成される放電領域M1と露出領域M2との間に、電界強度が低い領域が形成される離隔領域M3を介在させることにより、ランプの点灯始動後の安定(定格)点灯中、露出領域M2において放電が支配的となる放電集中が発生すことを確実に抑えることができる。その結果、安定点灯中、棒状部分34の溶融、蒸発が抑制され、黒化成分が付着し、遮光膜が放電容器20内面に形成されることで照度低下が生じるのを抑えることができる。
【0036】
さらに、誘電体50は、その端部50Tが外側電極40の端部40T、すなわちランプ軸方向配設区間Lに合わせた位置になるように、ランプ軸C方向に沿って延びている。露出部35は、ランプ軸方向配設区間Lから外れた露出領域M2に配置され、外側電極40とランプ径方向に沿って対向しない。このような誘電体50の配置によって、露出領域M2での電界集中が抑えられ、スパッタリングを抑えることができる。
【0037】
エキシマランプ10を長時間点灯させた場合、内側電極30の電極素材の特性などによって、ある程度のスパッタリングは避けられない場合もある。しかしながら、上述したように、小径部22が放電容器20の端部20T2側に設けられ、露出部35の一部が小径部22の形成する空間領域22Wに収まっている。空間領域22Wは放電領域M1よりも低温となるため、仮に黒化成分が露出部35から蒸発しても、その多くは小径部22の内面に付着することになる。そのため、放電容器20において安定した放電が生じる放電領域M1に対し、遮光膜が放電容器20内面に形成されるのを防ぐことができる。
【0038】
なお、放電領域M1、露出領域M2、離隔領域M3は、厳密にその境界ラインを定めるものではなく、境界ライン付近において空間領域特性、機能性が混在する状態もあり得る。
【0039】
図2は、第1の実施形態の変形例であるエキシマランプを示した概略的断面図である。ここでは、誘電体50の端部50Tが、ランプ軸方向配設区間Lよりも封止部21側に位置する。露出部35の一部は、外側電極40とランプ径方向に沿って向かい合うので、露出領域M2には、電界強度が
図1に示したエキシマランプ10と比べて高い領域が形成される。しかしながら、放電領域M1と露出領域M2との間に離隔領域M3を設けているため、露出部35におけるスパッタリングによる黒化成分が放電領域M1を囲む放電容器20の内面に付着するのを抑制することができる。
【0040】
図3は、第2の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。第2の実施形態のエキシマランプ200では、誘電体50の端部50Tが、ランプ軸方向配設区間Lよりも小径部22側に位置し、外側電極40は、内側電極30の箔状部分32との間でランプ径方向に沿って対向している。離隔領域M3における内側電極30の棒状部分34は、外側電極40とランプ径方向に沿って対向していないので、露出領域M2には、電界強度が
図1に示したエキシマランプ10と比べて低い領域が形成される。そのため、離隔領域M3を放電領域M1と露出領域M2との間に介在させる構成がより効果的となって、露出部35におけるスパッタリングによる黒化成分が放電領域M1を囲む放電容器20の内面に付着するのを確実に抑えることができる。
【0041】
図4は、第2の実施形態であるエキシマランプの変形例を示した図である。
図4に示すエキシマランプ300では、外側電極40の長さ、すなわちランプ軸方向配設区間Lが、放電容器20のランプ軸方向長さの半分ほどであり、放電容器20の中央部から小径部22付近に渡って離隔領域M3が定められる。
図3に示したエキシマランプ200と比べて放電領域M1と露出領域M2との間隔が大きく確保されるため、スパッタリングによる黒化成分が放電領域M1を囲む放電容器20の内面に付着するのをより効果的に抑えることができる。
【0042】
図5は、第3の実施形態であるエキシマランプを示した概略的断面図である。第3の実施形態であるエキシマランプ400では、内側電極30の箔状部分32の端部32Tと誘電体50の端部50Tとがランプ軸に沿って略同じ位置に配置され、棒状部分34全体は、略露出部35に相当する。ランプ軸方向配設区間Lも、内側電極30の箔状部分32の端部32T近くまでカバーし、放電領域M1と露出領域M2との間に介在する離隔領域M3は、第1、第2の実施形態と比べて小さい。
【0043】
しかしながら、誘電体50の端部50Tが小径部22と接近し、露出部35の大部分は、小径部22の形成する空間領域22Wに入り込んでいる。したがって、ランプ点灯始動後、露出部35から溶融、蒸発する電極材料は、小径部22の内面に付着し、放電領域M1を囲む放電容器20の内面に付着するのを防ぐことができる。
【0044】
図6は、第3の実施形態であるエキシマランプの変形例を示した概略的断面図である。
図6では、誘電体50の端部50Tは、ランプ軸方向配設区間Lよりも小径部22側に位置し、離隔領域M3に位置する箔状部分32と棒状部分34の一部は、誘電体50によって覆われている。そして、棒状部分34の露出部35は、小径部22の形成する空間領域22Wに収まる。
【0045】
このように、離隔領域M3の一部が、小径部22の形成する空間領域22Wに存在するため、露出部35から溶融、蒸発する電極材料を、より確実に小径部22の内面に付着させることができる。
【0046】
図7は、第4の実施形態であるエキシマランプの概略的断面図である。
図7では、内側電極30と誘電体50との間の一部に、点灯始動補助用の放電空間(以下、補助放電空間という)S2が形成されている。
【0047】
図4に示したエキシマランプ300と同様、ランプ軸方向配設区間Lは、放電容器20の中央部から左側に定められている。一方、放電容器20の中央部から小径部22側には、誘電体50と内側電極30とが部分的に封着していない。これによって、補助放電空間S2が形成される。
【0048】
このような補助放電空間S2を形成することにより、主放電空間S1の放電領域M1と露出領域M2との間の離隔領域M3が広くても、点灯始動性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 エキシマランプ
20 放電容器
30 内側電極
32 箔状部分
34 棒状部分
35 露出部
40 外側電極
50 誘電体