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特開2024-134620積層体の製造方法並びに、片面および両面フレキシブル金属張積層板の製造方法
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  • 特開-積層体の製造方法並びに、片面および両面フレキシブル金属張積層板の製造方法 図1
  • 特開-積層体の製造方法並びに、片面および両面フレキシブル金属張積層板の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134620
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】積層体の製造方法並びに、片面および両面フレキシブル金属張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240927BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240927BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240927BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240927BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B7/12
B32B37/14 A
C09J7/35
C09J201/00
H05K1/03 670
H05K3/46 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044898
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】佃屋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】下大迫 寛司
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
5E316
【Fターム(参考)】
4F100AB33
4F100AB33E
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AK49E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00D
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ67
4F100EJ86
4F100GB43
4F100JJ03
4F100JK15
4F100JK17
4F100JK17E
4F100JL11
4F100JL11D
4J004AB03
4J004CA06
4J004CE01
4J004EA05
4J004FA08
4J040JA09
4J040JB01
4J040MB03
4J040NA19
5E316AA12
5E316AA15
5E316BB02
5E316CC10
5E316DD12
5E316EE08
5E316EE18
5E316HH11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一般的に入手可能な接着シートを複数枚積層させた、絶縁層の厚みが厚い積層体の製造方法、及び、その積層体を用いた片面、又は、両面フレキシブル金属張積層板の製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有する接着シートを、少なくとも2枚以上貼り合せ、その貼り合わせた後の厚みが51μm以上であり、貼り合わせる際に接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする積層体の製造方法及び、その積層体を用いた片面、又は、両面フレキシブル金属張積層板の製造方法により、上記課題を解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有する接着シートを、少なくとも2枚以上貼り合せ、その貼り合わせた後の厚みが51μm以上であり、
貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記表面処理剤が3官能のアルコキシル基、又は、2官能のアルコキシル基を有するシランカップリング剤を特徴とする、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
金属箔/2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体の順に重ねて、又は、金属箔/2枚以上の接着シートの順に重ねて貼り合わせる片面フレキシブル金属張積層板の製造方法であって、
前記接着シートが少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有し、
接着シートを貼り合わせ後の厚みが、51μm以上であり、
貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする片面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【請求項4】
前記表面処理剤が3官能のアルコキシル基、又は、2官能のアルコキシル基を有するシランカップリング剤を特徴とする、請求項3に記載の片面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【請求項5】
金属箔/2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体/金属箔の順に重ねて、又は、金属箔/2枚以上の接着シート/金属箔の順に重ねて貼り合わせる両面フレキシブル金属張積層板の製造方法であって、
前記接着シートが少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有し、
接着シートを貼り合わせ後の厚みが、51μm以上であり、
貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする両面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【請求項6】
前記表面処理剤が3官能のアルコキシル基、又は、2官能のアルコキシル基を有するシランカップリング剤を特徴とする、請求項5に記載の両面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の両面フレキシブル金属張積層板を用い、マイクロストリップライン構造を有するように形成し、重ね合わせた2枚以上の接着層の総厚みが、75~200μmであることを特徴とするマイクロストリップライン構造を有する両面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
積層体の製造方法並びに、片面および両面フレキシブル金属張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、高機能化、小型化が急速に進んでおり、これに伴って電子機器に用いられる電子部品に対しても小型化、薄型化の要請が高まっている。更に、コストダウン化も進み、FPCを構成する材料は要求に応じて多様化してきている。一方、多用な機能を確保する為、膜厚が厚いFPCが要求される技術分野も顕在化しつつある。
【0003】
従来、電子電気機器用印刷回路基板として好適な金属張積層板としては、ポリイミドフィルムの表裏両面に金属箔を積層した構造である、両面フレキシブル金属張積層板が知られている。このような構造を有する両面フレキシブル金属張積層板の製造方法として、高温において、一対の金属ロール間に保護フィルムを介した状態でポリイミドフィルムと金属箔とを熱圧着(以下、熱ラミネートともいう)が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、前記の如く用いられるポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層をコア層(耐熱性フィルム)として、そのコア層の表裏両面に熱可塑性ポリイミド層を配した構造を有する接着シートであることが多い。
【0005】
しかしながら、例えば、前記の接着シートは一般的に50μm以下であることが多く、絶縁層の厚みが厚い金属張積層板を製造する場合においては、複数枚接着シートを重ね合わせて多層構造とする必要がある。
【0006】
このような厚物両面フレキシブル金属張積層板を熱圧着等の方法により製造する場合、薄物両面フレキシブル金属張積層板とは異なり、複数枚の接着シートを積層する必要があり、例えば片面フレキシブル金属張積層板を貼り合わせる技術が紹介されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-129918号公報
【特許文献2】特開2014-195947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2においては、ポリイミドを含む絶縁層厚みが50μm以下のものが開示されているのみである。さらに接着シートの形成方法が、ポリイミド前駆体溶液を金属箔に塗工(キャストともいう)する方式を採用している為、塗工装置(キャスト装置)を持たない金属張積層板の製造メーカーでは実施できないという課題があった。さらに、塗工方法であるために、50μm以上という厚い絶縁層の製造は困難である。
【0009】
また、一般的に入手可能な接着シートを複数枚用いて金属張積層板を製造すると、接着シート同士の密着力が確保されず、品質上の課題も存在する。
【0010】
本発明は、上述課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、一般的に入手可能な
接着シートを複数枚積層させ、絶縁層の厚みが厚い積層体の製造方法、及び、その積層体を用いた片面、又は、両面フレキシブル金属張積層板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の方法により目的の絶縁層の厚みが厚い積層体、及び、その積層体を用いた片面、又は、両面フレキシブル金属張積層板が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
1).少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有する接着シートを、少なくとも2枚以上貼り合せ、その貼り合わせた後の厚みが51μm以上であり、
貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする積層体の製造方法。
【0013】
2).前記表面処理剤が3官能のアルコキシル基、又は、2官能のアルコキシル基を有するシランカップリング剤を特徴とする、1)に記載の積層体の製造方法。
【0014】
3).金属箔/2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体の順に重ねて、又は、金属箔/2枚以上の接着シートの順に重ねて貼り合わせる片面フレキシブル金属張積層板の製造方法であって、
前記接着シートが少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有し、
接着シートを貼り合わせ後の厚みが、51μm以上であり、
貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする片面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【0015】
4).前記表面処理剤が3官能のアルコキシル基、又は、2官能のアルコキシル基を有するシランカップリング剤を特徴とする、3)に記載の片面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【0016】
5).金属箔/2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体/金属箔の順に重ねて、又は、金属箔/2枚以上の接着シート/金属箔の順に重ねて貼り合わせる両面フレキシブル金属張積層板の製造方法であって、
前記接着シートが少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有し、
接着シートを貼り合わせ後の厚みが、51μm以上であり、
貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする両面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【0017】
6).前記表面処理剤が3官能のアルコキシル基、又は、2官能のアルコキシル基を有するシランカップリング剤を特徴とする、5)に記載の両面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【0018】
7).5)または6)に記載の両面フレキシブル金属張積層板を用い、マイクロストリップライン構造を有するように形成し、重ね合わせた2枚以上の接着層の総厚みが、75~200μmであることを特徴とするマイクロストリップライン構造を有する両面フレキシブル金属張積層板の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、一般的に入手可能な耐熱性を有する接着シートの片面、又は、両面にあらかじめ表面処理剤を塗布、乾燥することで、化学結合による密着力を向上させることができ、接着シートを少なくとも2枚以上貼り合せることにより、絶縁層の厚みが厚い積層体の製造方法、及び、その積層体を用いた片面、又は、両面フレキシブル金属張積層板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】マイクロストリップライン構造を有する両面フレキシブル金属張積層板の断面の模式図である。
図2】ストリップライン構造を有する多層フレキシブル金属張積層板の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できる。
【0022】
なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0023】
本発明の積層体の製造方法は、少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有する接着シートを、少なくとも2枚以上貼り合せ、その貼り合わせた後の厚みが51μm以上であり、 貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする。
【0024】
<耐熱性フィルム(A)>
本発明において「耐熱性」とは、熱ラミネート時の加熱温度での使用に耐え得ることを意味する。従って、耐熱性フィルム(A)としては、上記性質を満たすフィルムであれば特に制限はなく、例えば、ポリイミドフィルムやポリエチレンナフタレートなどの公知の各種フィルムを用いることができる。中でも、耐熱性のみならず電気特性等の物性にも優れている点から、耐熱性ポリイミドフィルムであることが好ましい。
【0025】
前記「耐熱性ポリイミドフィルム」は、非熱可塑性ポリイミドを90重量%以上含有して形成されていればよく、非熱可塑性ポリイミドの分子構造、厚みは特に限定されない。耐熱性ポリイミドフィルムの形成に用いられる非熱可塑性ポリイミドは、一般にポリアミド酸(ポリアミック酸ともいう)を前駆体として用いて製造されるものである。ここで、非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドをいう。本発明では、フィルムの状態で金属製の固定枠に固定して加熱温度380℃で1分間加熱した際に、フィルム形状(平坦な膜形状)を保持しているポリイミド、若しくは実質的にガラス転移温度を有しないポリイミドをいう。なお、ガラス転移温度は動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。また、「実質的にガラス転移温度を有しない」とは、ガラス転移状態になる前に熱分解が開始するものをいう。
【0026】
一般にポリイミドフィルムは、ポリアミド酸を前駆体として用いて製造されうる。ポリアミド酸の製造方法としては公知のあらゆる方法を用いることができ、通常、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを、実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、制御された温度条件下で、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造されうる。これらのポリアミド酸溶液は通常5~35重量%、好ましくは10~30重量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に好適な分子量と溶液粘度を得ることができる。
【0027】
重合方法としてはあらゆる公知の方法およびそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ポリアミド酸の重合における重合方法の特徴はそのモノマーの添加順序にあり、このモノマー添加順序を制御することにより得られるポリイミドの諸物性を制御することができる。従い、本発明においてポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの添加方法を用いても良い。
【0028】
代表的な重合方法として次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解及び/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
などのような方法である。これら方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
【0029】
本発明において、上記のいかなる重合方法を用いて得られたポリアミド酸を用いても良く、重合方法は特に限定されるのもではない。
【0030】
上記芳香族ジアミンとしては、これに限定されるものではないが、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス{4-(3-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン(m-フェニレンジアミン)、4、4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3、3’-ジアミノジフェニルスルフォン、9、9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4、4’-(1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン))ビスアニリン、4、4’-(1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン))ビスアニリン、4、4’-ジアミノベンズアニリド等、またはこれらの2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
【0031】
また、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、これに限定されるものではないが、例えば、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,4’-オキシフタル酸二無水物、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p-フェニレンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等、またはこれらの2種類以上の組み合わせを挙げることができる。
【0032】
なお、上記芳香族ジアミンと上記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、実質的に等モル量となるように反応させればよく、添加の順序、モノマーの組み合わせおよび組成は特に限定されるものではない。
【0033】
ポリアミド酸を製造するための重合用溶媒として用いられる有機溶媒は、芳香族ジアミン、芳香族テトラカルボン酸二無水物、および得られるポリアミド酸を溶解するものであれば、特に限定されるものではない。上記重合用溶媒として、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒が好ましく、これらを用いれば、得られるポリアミド酸の有機溶媒溶液(ポリアミド酸溶液)をそのまま用いて樹脂溶液を調製することができる。
【0034】
ポリアミド酸を製造するための反応温度は、-10℃~50℃であることが好ましい。かかる温度範囲内に制御されることにより、良好な反応速度で反応が進み、生産性に優れるため好ましい。また、反応時間も特に限定されるものではないが、通常数分~数時間である。
【0035】
本発明において硬化剤とは、脱水剤および触媒の少なくとも一方を含む趣旨である。ここで脱水剤とは、ポリアミド酸を脱水閉環作用により脱水できれば特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’-ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物等を挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を適宜組み合わせて用いても良い。これらの中でも、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物を特に好適に用いることができる。
【0036】
触媒は、ポリアミド酸に対する上記脱水剤の脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミン等を挙げることができる。
【0037】
摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的で、耐熱性フィルム(A)にはフィラーを添加することもできる。フィラーとしてはいかなるものを用いても良いが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0038】
<熱可塑性樹脂層(B)>
本発明において、熱可塑性樹脂層(B)としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂等が例示されるが、耐熱性の点から、特に熱可塑性ポリイミド樹脂が好ましく用いられうる。前記熱可塑性ポリイミド樹脂は、金属箔との有意な接着力や好適な線膨張係数など、所望の特性が発現されれば、当該層に含まれる熱可塑性ポリイミド樹脂の含有量、分子構造、厚みは特に限定されるものではない。しかしながら、有意な接着力や好適な線膨張係数などの所望の特性の発現のためには、実質的には熱可塑性ポリイミド樹脂を熱可塑性樹脂層(B)中に50重量%以上含有することが好ましい。更に、耐熱性フィルムを介して対向する熱可塑性樹脂層(B)に含まれる熱可塑性ポリイミド樹脂は、接着シート全体での線膨張係数のバランスや、製造工程を簡略化する等の観点から、同種であることが好ましい。
【0039】
熱可塑性樹脂層(B)に含有される熱可塑性ポリイミド樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等を好適に用いることができる。
【0040】
熱可塑性樹脂層(B)に含有される熱可塑性ポリイミドは、その前駆体であるポリアミド酸からの転化反応により得ることができる。当該ポリアミド酸の製造方法としては、前記耐熱性フィルム(A)に用いられうる非熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体と同様、公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0041】
金属箔(D)との有意な接着力を発現し、かつ得られる両面フレキシブル金属張積層板(G)の耐熱性を損なわないという点から考えると、本発明に用いる熱可塑性ポリイミド樹脂は、150℃~300℃の範囲にガラス転移温度(Tg)を有していることが好ましい。なお、Tgは動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。
【0042】
本発明に用いられうる熱可塑性ポリイミドの前駆体のポリアミド酸についても、特に限定されるわけではなく、公知のあらゆるポリアミド酸を用いることができる。ポリアミド酸溶液の製造に関しても、前記で例示した原料および前記製造条件等を適宜選択して同様に用いることができる。
【0043】
熱可塑性ポリイミドは、使用する芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香族ジアミン等の原料を種々組み合わせることにより、諸特性を調節することができるが、一般に剛直構造の芳香族ジアミンの使用比率が大きくなるとガラス転移温度が高くなったり、加熱時の貯蔵弾性率が大きくなり、接着性・加工性が低くなる場合がある。例えば、前記剛直構造の芳香族ジアミンの使用比率は、芳香族ジアミン全量に対して、好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下、特に好ましくは20mol%以下である。
【0044】
好ましい熱可塑性ポリイミド樹脂の具体例としては、前述の耐熱性ポリイミドフィルムに使用されうる芳香族ジアミンや芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用できる。より好ましくは、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等の酸二無水物とアミノフェノキシ基を有する芳香族ジアミンを重合反応せしめたものなどが挙げられる。
【0045】
さらに、本発明に係る接着シートのすべり性を制御する目的で、必要に応じて無機あるいは有機物のフィラー、さらにはその他樹脂を添加しても良い。
【0046】
<接着シート(C)>
本発明における接着シート(C)は、耐熱性フィルム(A)の少なくとも片面に熱可塑
性樹脂層(B)を有する構成であれば、特に制限ない。
【0047】
本発明における接着シート(C)の耐熱性フィルム(A)および熱可塑性樹脂層(B)の各層の厚み構成については、用途に応じた総厚みになるように適宜調整すればよい。例えば、接着シート(C)の状態で反りが生じないように、各層の線膨張係数を考慮しながら、各熱可塑性樹脂層(B)の厚みバランスを調整するのが好ましい。耐熱性フィルム(A)を介して対向する熱可塑性樹脂層(B)の線膨張係数の差が小さい場合は、厚みバランスを取るのが容易となる。また、接着シート(C)の総厚みは、好ましくは5μm~50μm、より好ましくは25μm~50μmである。この範囲内であれば、FPCの基材として好適に使用することができる。
【0048】
本発明における接着シート(C)としては、株式会社カネカ製ピクシオ(登録商標)を使用することも可能である。
【0049】
<接着シート(C)の製造方法>
本発明にかかる接着シート(C)の製造方法については特に限定されるものではないが、三層構造の接着シート(C)の場合、コア層となる耐熱性フィルム(A)に熱可塑性樹脂層(B)を片面毎に、もしくは両面同時に形成する方法、熱可塑性樹脂層(B)をシート状に成形し、これを上記コア層となる耐熱性フィルム(A)の表面に貼り合わせる方法等が挙げられる。あるいは、コア層となる耐熱性フィルム(A)と熱可塑性樹脂層(B)を共押出しして、実質的に一工程で積層体を製膜する接着シート(C)を作製する方法(共押出製膜方法ともいう)であってもよい。
【0050】
また、例えば、熱可塑性樹脂層(B)に熱可塑性ポリイミド樹脂を用いる場合には、熱可塑性ポリイミド樹脂またはこれを含む樹脂組成物を有機溶媒に溶解または分散して得られる樹脂溶液を耐熱性フィルム(A)の表面に塗布してもよいが、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を調製して、これを耐熱性フィルムの表面に塗布し、次いでイミド化してもよい。このときのポリアミド酸の合成やポリアミド酸のイミド化の条件等については特に限定されるものではないが、従来公知の原料や条件等を用いることができる。ポリアミド酸を焼成する際、過剰に過熱するとタック性を低くできるが、吸湿率の増加やフィルムの劣化といった問題が生じる場合がある。また、前記ポリアミド酸溶液には、用途に応じて、例えば、カップリング剤などを含んでいてもよい。
【0051】
<接着シート2枚以上貼り合せた積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法は、少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有する接着シートを、少なくとも2枚以上貼り合せ、その貼り合わせた後の厚みが51μm以上であり、貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする。
【0052】
本件発明は、接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とするが、その表面処理について説明する。表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行う方法としては、カップリング剤を直接もしくは溶剤などで希釈して、支持体および/またはポリイミドフィルムに塗布乾燥し熱処理する方法、カップリング剤そのものもしくは溶剤などで希釈した溶液中に支持体および/またはポリイミドフィルムを浸漬した後に乾燥し熱処理する方法、ポリイ
ミドフィルム作製時に添加し、ポリイミドフィルム作製と同時にカップリング剤処理する方法等を採用することができる。
【0053】
カップリング剤を希釈する溶剤は、水、アルコール、等の均一な溶液にできる溶剤であれば何でもよく、特にアルコール溶剤の中でも、メタノール、エタノール、2-プロパノールなど、シランカップリング剤を扱う時にハンドリングしやすい溶剤が好ましい。シランカップリング剤の希釈液の濃度は、塗布して乾燥する工程のハンドリングがしやすければ限定されるものではないが、0.01~30重量%がよく、貼り合わせたフィルム間の密着力を上げることも考えると、1~10重量%がより好ましい。
【0054】
カップリング剤もしくはその希釈液の塗布方法としては、従来公知の塗布方法を採用すればよい。また例えば、インクジェットによりカップリング剤もしくはその希釈液を全面印刷する方法、その他の既存の印刷手法を利用する方法を採用してもよい。カップリング剤の塗布量(付着量または含有量)は、形成されるカップリング処理層の膜厚は、適宜設定すればよい。熱処理の際の条件は、50~250℃が好ましく、より好ましくは75~165℃、さらに好ましくは95~155℃程度の温度で、好ましくは30秒以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは5分以上、加熱すればよい。加熱温度が高すぎると、カップリング剤の分解ないし不活性化が生じる場合があり、低すぎると定着が不十分となる。また加熱時間が長すぎても同様の問題が生じる場合があり、加熱時間の上限は好ましくは5時間、さらに好ましくは2時間程度である。なお、カップリング剤処理を行う際には、処理中のpHが性能に大きく影響する事が知られているので、適宜pHを調整することが望ましい。
【0055】
本発明におけるシランカップリング剤の処理方法としては、シランカップリング剤の溶液をポリイミドフィルムに塗布乾燥し熱処理する方法、シランカップリング剤の溶液中にポリイミドフィ
ルムを浸漬した後に乾燥し熱処理する方法、ポリイミドフィルム作成時に添加し、フィルム作成と同時にカップリング剤処理する方法を例示出来る。
【0056】
(カップリング剤処理)
本発明においてカップリング剤とは、支持体とポリイミドフィルムとの間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を意味し、一般的にはシラン系カップリング剤、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等として知られている化合物を含む。
【0057】
本発明におけるシランカップリング剤は、特に限定されるものではないが、アミノ基或はエポキシ基を持ったものが、好ましい。特に接着性の点で、3官能のアルコキシル基、又は、2官能のアルコキシル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0058】
シランカップリング剤の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3―トリエトキシシリルーN-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(3- トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0059】
このうち好ましいものとしては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3―トリエトキシシリルーN-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。 プロセスで耐熱性を要求する場合、Siとアミノ基などの間を芳香族でつないだものが望ましい。
【0060】
更に、好ましいのは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシランであり、3-アミノプロピルジエトキシメチルシランが、特に好ましい。
【0061】
<積層体(接着シートの積層体)>
本発明の積層体の製造方法は、少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有する接着シートを、少なくとも2枚以上貼り合せ、その貼り合わせた後の厚みが51μm以上であり、貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする。
【0062】
例えば、厚み25μmの前記接着シート2枚の夫々に、シランカップリング剤を塗布、乾燥した後、塗布した面同士を合わせ、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力0.8トン、ライン速度1m/minでラミネートすることで貼り合わせることができ、積層体の厚みは、25μm×2枚=50μmになる。
同様に、厚み25μmの前記接着シートを3枚使用することで、積層体の厚みは、25μm×3枚=75μmになる。この際、貼り合わせる面の少なくとも片面に、好ましくは更に密着強度を向上させるために貼り合わせる面夫々にシランカップリング剤を塗布、乾燥した後に、塗布した面同士を合わせる。例えば、ラミネート条件は、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力0.8トン、ライン速度1m/minでラミネートすることができる。
【0063】
同様に、厚み50μm×4枚=200μm、厚み25μm+厚み50μm=75μmなど、自由に接着シートの厚みを組み合わせることができ、夫々を貼り合わせることで、分厚い積層体を造ることができる。接着シートの厚みは、12.5μm、18μm、25μm、50μmなどラインナップされており、自由に選択して、貼り合わせることができ、これに限定するものではない。また貼り合わせたもの同士を更に貼り合わせることもできる。例えば、貼り合わせた厚み50μmと貼り合わせた厚み50μmを、夫々シランカップリング剤を塗布、乾燥して、更に貼り合わせることで、100μmにすることもできる。温度と圧力をかけることで貼り合わせるので、貼り合わせる方法は、ラミネート以外のプレスなどにより貼り合わせることもできる。これに限定するものではない。尚、接着シートがラミネートやプレス装置の加熱部分と密着しないように、後述する保護フィルム(F)を使用することができる。
【0064】
<金属箔(D)>
本発明において、金属箔(D)としては特に限定されるものではないが、電子機器・電気機器用途に本発明の片面フレキシブル金属張積層板(E)および/または両面フレキシブル金属張積層板(G)を用いる場合には、例えば、銅または銅合金、ステンレス鋼またはその合金、ニッケルまたはニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる箔を挙げることができる。一般的なフレキシブル積層板では、圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防錆層や耐熱層あるいは接着層が塗布されていてもよい。また、上記金属箔の厚みについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて、十分な機能が発揮できる厚みであればよい。金属箔(D)の厚みは、例えば、3μm~30μmが好ましく、より好ましくは5μm~20μmである。金属箔(D)の表面粗度(Ra)は0.01μm~1μmであることが好ましい。金属箔(D)の表面粗度(Ra)がこの範囲外の場合は熱可塑性樹脂層(B)との接着性が劣る場合などがある。
【0065】
<保護フィルム(F)>
上記熱圧着を実施する手段の具体的な構成は特に限定されるものではないが、得られる片面フレキシブル金属張積層板(E)および/または両面フレキシブル金属張積層板(G)の外観を良好なものとするために、金属箔(D)を積層する側は、熱可塑性樹脂層(B)を介して金属箔(D)を積層し、さらに金属箔(D)に接して保護フィルム(F)を積層する。具体的には、加圧面(例えば、金属ロール)と接着シート(C)および金属箔(D)との間に保護フィルム(F)を積層する。
【0066】
保護フィルム(F)としては、熱圧着工程の加熱温度に耐えうるものであれば特に限定されず、非熱可塑性ポリイミドフィルム等の耐熱性プラスチック、銅箔、アルミニウム箔、SUS箔等の金属箔等を好適に用いることができる。中でも、耐熱性、リサイクル性等のバランスが優れる点から、非熱可塑性ポリイミドフィルムがより好ましく用いられる。
【0067】
非熱可塑性ポリイミドフィルムとしては各種公知のフィルムを使用することができるが、例えば、株式会社カネカ製アピカル(登録商標)、宇部興産株式会社製ユーピレックス(登録商標)、東レ・デュポン株式会社製カプトン(登録商標)、等が例示される。
【0068】
<片面フレキシブル金属張積層板(E)の製造方法>
本発明の片面フレキシブル金属張積層板の製造方法は、金属箔/2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体の順に重ねて、又は、金属箔/2枚以上の接着シートの順に重ねて貼り合わせる片面フレキシブル金属張積層板の製造方法であって、前記接着シートが少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有し、接着シートを貼り合わせ後の厚みが、51μm以上であり、貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする。
【0069】
片面フレキシブル金属張積層板(E)は、最終的には、金属箔/2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体となるが、金属箔と2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体を貼り合わせてもいいし、金属箔と2枚以上の接着シートを貼り合せもよい。
【0070】
金属箔と2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体を貼り合わせる場合は、前述の接着シート2枚以上貼り合せた積層体と銅箔を貼り合わせればよい。
【0071】
また、金属箔と2枚以上の接着シートを貼り合せる場合は、前述の少なくとも片面に表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っている接着シートを用い、金属箔/2枚以上の接着シートの順に重ねて貼り合わせる。この際、接着シートを貼り合わせ後の厚みが、51μm以上となるようにし、接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理されている面が来るようにして貼り合わせる。接着シートの両面に表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理されている方が、接着シート間の密着性が向上する傾向にあり好ましい。
【0072】
積層する(貼り合わせる)方法としては各種公知の方法を適用可能であるが、熱圧着により貼り合わせて得る熱圧着方法が片面フレキシブル金属張積層板(E)のシワ等の発生を抑制できる点から好ましい。接着シート(C)と金属箔(D)の貼り合わせ方法としては、例えば、単板プレスによるバッチ処理による熱圧着方法、熱ロールラミネート装置(熱ラミネート装置ともいう)或いはダブルベルトプレス(DBP)装置による連続処理による熱圧着方法などが挙げられるが、生産性、維持費も含めた設備コストの点から、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を使用した熱圧着方法が好ましい。ここでいう「一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置」とは、材料を加熱加圧するための金属ロールを有している装置であればよく、その具体的な装置構成は特に限定されるものではない。
【0073】
<両面フレキシブル金属張積層板(G)の製造方法1>
本発明の両面フレキシブル金属張積層板の製造方法は、金属箔/2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体/金属箔の順に重ねて、又は、金属箔/2枚以上の接着シート/金属箔の順に重ねて貼り合わせる両面フレキシブル金属張積層板の製造方法であって、
前記接着シートが少なくともポリイミドフィルムを含む耐熱性フィルムと、当該耐熱性フィルムの両面のそれぞれに積層された熱可塑性樹脂層を有する三層構造を有し、
接着シートを貼り合わせ後の厚みが、51μm以上であり、
貼り合わせる際に接着シートと接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っていることを特徴とする。
【0074】
両面フレキシブル金属張積層板(G)は、最終的には、金属箔/2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体/金属箔となるが、前述の2枚の金属箔で2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体を挟んで貼り合わせてもいいし、2枚の金属箔で2枚以上の接着シートをはさんで貼り合せもよい。
【0075】
2枚の金属箔で2枚以上の接着シートを貼り合わせた厚み51μm以上の積層体を挟んで貼り合わせる場合は、前述の接着シート2枚以上貼り合せた積層体と銅箔を貼り合わせればよい。
【0076】
また、2枚の金属箔で2枚以上の接着シートをはさんで貼り合せる場合は、前述の少なくとも片面に表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理を行っている接着シートを用い、金属箔/2枚以上の接着シート/金属箔の順に重ねて貼り合わせる。この際、接着シートを貼り合わせ後の厚みが、51μm以上となるようにし、接着シートを貼り合わせる面の少なくとも片面に、表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理されている面が来るようにして貼り合わせる。接着シートの両面に表面処理剤を塗布、乾燥して表面処理されている方が、接着シート間の密着性が向上する傾向にあり好ましい。
【0077】
積層する方法としては各種公知の方法を適用可能であるが、熱圧着により貼り合わせて得る熱圧着方法が両面フレキシブル金属張積層板(G)の外観不良等の発生を抑制できる点から好ましい。貼り合わせ方法としては、例えば、単板プレスによるバッチ処理による熱圧着方法、熱ロールラミネート装置(熱ラミネート装置ともいう)或いはダブルベルトプレス(DBP)装置による連続処理による熱圧着方法などが挙げられる。生産性、維持費も含めた設備コストの点から、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を使用した熱圧着方法が好ましい。ここでいう「一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置」とは、材料を加熱加圧するための金属ロールを有している装置であればよく、その具体的な装置構成は特に限定されるものではない。
【0078】
この熱圧着方法においては、金属箔(D)は片面フレキシブル金属張積層板(E)製造時及び両面フレキシブル金属張積層板(G)製造時の2回高熱処理する場合、金属箔(D)が熱焼け及び熱変形により外観不良を起こしやすい問題がある。熱変形を改善するためには、前記熱圧着方法において、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置による熱圧着方法を使用し、金属箔(D)及び片面フレキシブル金属張積層板(E)の張力を制御すると良い。具体的には、熱圧着前の張力を高く設定することが好ましく、片面フレキシブル金属張積層板(E)の繰出し張力を40kgf/270mm以上とするのが好ましい。また、熱焼けを改善するためには、熱ロールラミネート時に保護フィルムを使用することが好ましい。
【0079】
上記熱圧着手段における被積層材料の加熱方式は特に限定されるものではなく、例えば、熱循環方式、熱風加熱方式、誘導加熱方式等、所定の温度で加熱し得る従来公知の方式を採用した加熱手段を用いることができる。同様に、上記熱圧着手段における被積層材料の加圧方式も特に限定されるものではなく、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等、所定の圧力を加えることができる従来公知の方式を採用した加圧手段を用いることができる。
【0080】
上記熱圧着工程における加熱温度は、すなわち圧着温度(ラミネート温度)は、片面フレキシブル金属張積層板の製造時には、金属箔(D)と密着する側の接着シート(C)は密着できる最低限の温度であれば良く、金属箔(D)と密着しない側の接着シート(C)は他材料や工程に貼り付かない温度とするため、片面フレキシブル金属張積層板の製造時のラミネート温度は用いる接着シート(C)のガラス転移温度(Tg)+20℃~(Tg)+60℃とすることがよい。一方、両面フレキシブル金属張積層板の製造時においては、各層全てが密着力高い状況が望まれる為、片面フレキシブル金属張積層板よりも高い温度でラミネートすることがよく、両面フレキシブル金属張積層板の製造時のラミネート温度は用いる接着シート(C)のガラス転移温度(Tg)+20℃~(Tg)+90℃の温度であることが好ましく、接着シート(C)のTg+50℃~(Tg)+80℃がより好ましい。
【0081】
上記銅箔との密着性の観点以外に、シランカップリング剤を塗布、乾燥した後の貼り合わせした面の密着性を上げるためには、ラミネート温度を340~380℃で実施することが好ましく、最も360~380℃で実施するのが好ましい。保護フィルムの厚みは、50~125μmで実施することが好ましく。保護フィルムが薄い場合は、ラミネート温度が伝播しやすいため、ラミネート温度を低めにすることもできるし、また、分厚い保護フィルムを使用する場合は、ラミネート温度を高くすることもできる。このラミネート温度に限定されない。プレスも同様に、プレス温度は限定されない。
【0082】
上記熱圧着工程におけるラミネート速度は、0.5m/分以上であることが好ましく、1.0m/分以上であることがより好ましい。0.5m/分以上であれば十分な熱圧着が可能になり、1.0m/分以上であれば生産性をより一層向上することができる。
【0083】
上記熱圧着工程における圧力、すなわちラミネート圧力は、高ければ高いほどラミネート温度を低く、かつラミネート速度を速くすることができる利点があるが、一般にラミネート圧力が高すぎると得られる金属張積層板の寸法変化が悪化する傾向がある。また、逆にラミネート圧力が低すぎると得られる金属張積層板の金属箔の接着強度が低くなる傾向がある。そのためラミネート圧力は、49N/cm~490N/cm(5kgf/cm~50kgf/cm)の範囲内であることが好ましく、98N/cm~294N/cm(10kgf/cm~30kgf/cm)の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、ラミネート温度、ラミネート速度およびラミネート圧力の三条件を良好なものにすることができ、生産性をより一層向上することができる。
【0084】
本発明にかかる積層体、片面、両面フレキシブル金属張積層板(G)を得るためには、連続的に被積層材料を加熱しながら圧着する熱ロールラミネート装置を用いることが好ましいが、この熱ロールラミネート装置では、熱ラミネート手段の前段に、被積層材料を繰り出す被積層材料繰出手段を設けてもよいし、熱ラミネート手段の後段に、被積層材料を巻き取る被積層材料巻取手段を設けてもよい。これらの手段を設けることで、上記熱ロールラミネート装置の生産性をより一層向上させることができる。上記被積層材料繰出手段および被積層材料巻取手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、積層体、接着シートや金属箔、あるいは得られる金属張積層板を巻き取ることのできる公知のロール状巻取機等を挙げることができる。
【0085】
さらに、保護フィルム(F)を巻き取ったり繰り出したりする巻取手段や繰出手段を設けると、より好ましい。これら巻取手段・繰出手段を備えていれば、熱圧着工程で、一度使用された保護フィルム(F)を巻き取って繰り出し側に再度設置することで、保護フィルム(F)を再使用することができる。また、保護フィルム(F)を巻き取る際に、これらの両端部を揃えるために、端部位置検出手段および巻取位置修正手段を設けてもよい。これによって、精度よくこれらの端部を揃えて巻き取ることができるので、再使用の効率を高めることができる。なお、これら巻取手段、繰出手段、端部位置検出手段および巻取位置修正手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の各種装置を用いることができる。
【0086】
<マイクロストリップライン構造を有する両面フレキシブル金属張積層板の製造方法>
マイクロストリップライン構造を有する両面フレキシブル金属張積層板の製造方法は、前記両面フレキシブル金属張積層板を用い、マイクロストリップライン構造を有するように形成し、重ね合わせた2枚以上の接着層の総厚みが、75~200μmであることを特徴とする。
【0087】
図1で示したように、両面フレキシブル金属張積層板の片面の金属箔をエッチングし信号線3を形成し、もう一方の面の金属箔をグランド層1とすることで、マイクロストリップライン構造を形成することができる。図1では、信号線を1本の例を記載したが、信号線は複数有してもよい。
【0088】
重ね合わせた2枚以上の接着層の総厚みが、75μm以上とすることで、マイクロストリップライン構造を有する両面フレキシブル金属張積層板の伝送損失が小さくなる傾向にあるため好ましく、200μm以下とすることで、折り曲げが容易にでき、電子機器に実装しやすくなるため好ましい。
【0089】
<ストリップライン構造を有する多層フレキシブル金属張積層板の製造方法>
図1で示したマイクロストリップライン構造を有する両面フレキシブル金属張積層板にグランド層1/第2ポリイミド層4の構成を有する片面金属張積層板と接着層を介して貼り合わせることにより、グランド層1/第2ポリイミド層4/接着剤層5/信号線3/接着シートを2枚以上貼り合せた積層体(第1ポリイミド層2)/グランド層1という構成により、図2で示す様にストリップライン構造を有する多層フレキシブル金属張積層板を得ることができる。この構成にすることにより、マイクロストリップライン構造の場合よりもさらに、伝送損失が小さくなる傾向にあるため好ましい。
【実施例0090】
以下、本発明の製造方法を実施例により詳しく説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例におけるフィルムの厚み、誘電率、誘電正接、積層体フィルム間密着力、FCCLフィルム間密着力、銅箔ピール強度、吸湿半田耐熱、FPCの伝送特性の測定(マイクロストリップラインおよびストリップラインの伝送特性の測定)、銅箔の表面粗さの評価方法は次の通りである。
【0091】
(フィルムの厚み)
接触式厚み計Mitsutoyo社製LASER HOLOGAGEを使用してフィルムの厚みを測定した。
【0092】
(誘電率、誘電正接の測定)
測定装置として、空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置((株)関東電子応用開発製)を用い、多層ポリイミドフィルムの誘電率および誘電正接を下記周波数で測定した。
【0093】
測定周波数:10GHz
測定条件:温度22℃~24℃、湿度45%~55%
測定試料:前記測定条件下で、24時間放置した試料を使用した。
【0094】
(積層体フィルム間密着力、FCCLフィルム間密着力の測定方法)
積層体、又は、FCCLフィルム間密着力をJIS K 6854-3の「T型はくり試験」に従って解析した。具体的には、10mm幅の積層体を、貼り合わせたフィルムとフィルムの中心になる部分を頭出しして、100mm/分の条件で剥離し、その荷重を測定した。フィルム間密着力は、5N/cm以上の場合を「○」(良好)、5N/cm未満を「×」(不良)と評価した。
【0095】
(金属張積層板の銅箔ピール強度の測定方法)
FCCLをJIS C6471の「6.5 引きはがし強さ」に従って解析した。具体的には、1mm幅の金属箔部分を、90度の剥離角度、100mm/分の条件で剥離し、その荷重を測定した。ピール強度は、12N/cm以上の場合を「○」(良好)、12N/cm未満を「×」(不良)と評価した。
【0096】
(吸湿半田耐熱試験)
熱ラミ機で作製した銅張板から所定のパターンサンプルを形成し、85±5℃・85±5%RHに保った環境試験機に24±0.25時間放置後取出して、300±5℃に調整されたはんだ槽に10±2秒浸漬する。引き上げ後、外観を目視で調べる。膨れが発生している場合は×、膨れが発生していない場合は○として評価した。
【0097】
(FCCLの製造、マイクロストリップラインおよびストリップラインの伝送特性の測定)
以下の条件で、ポリイミドフィルムと銅箔とを積層し、両面FCCLを得た。
用いる銅箔:厚さ12μm、ポリイミドフィルムと接着する面の粗さが0.45μm以下
ポリイミドと銅箔との積層条件:ラミネート温度360℃、ラミネート圧力0.8トン、ラミネート速度1m/min
マイクロストリップライン回路の作製は、両面FCCLの片面をエッチングし、線路長10cmのマイクロストリップラインを作製し、回路部及び端子部に銅メッキを施した。回路幅は、特性インピーダンスが50Ωになるよう、構成材料の厚み、誘電率、誘電正接から算出した。
【0098】
その後、上記マイクロストリップライン回路を、片面FCCLと接着層(ボンディングシート)を介し、160℃で30分間、減圧加熱して貼り合わせ、ストリップライン構造を有するFPCテストピースを作製した。回路幅は、特性インピーダンスが50Ωになるよう、構成材料の厚み、誘電率、誘電正接から算出した。
【0099】
得られたマイクロストリップライン回路を有するフレキシブル金属張積層板およびストリップライン回路を有するフレキシブル金属張積層板のそれぞれに対して、以下の処理を行った。すなわち、150℃、30分間乾燥後、23℃、55%RHに調整された試験室内で24時間以上調湿した。その後、ネットワークアナライザE5071C(Keysight Technologies)とGSG250プローブを用いて挿入損失S21パラメータの測定を行い、測定周波数10GHzでの伝送損失(dB/100mm)を得た。
【0100】
(銅箔の表面粗さRa)
光波干渉式表面粗さ計(ZYGO社製NewView5030システム)を用いて下記の条件での算術平均粗さを測定した。
【0101】
(測定条件)
対物レンズ:50倍ミラウイメージズーム:2
FDA Res:Normal
解析条件:
Remove:Cylinder
Filter:High Pass
Filter Low Waven:0.002mm
【0102】
(実施例1)
厚み50μmの耐熱性両面接着シート(株式会社カネカ製ピクシオ(登録商標)IB
、ガラス転移温度=210℃)に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTSと略することがある)を2-プロパノールで10重量%に希釈した溶液を調製し、バーコーターを使用して、IBフィルムの片面に塗布した後、130℃30分乾燥した。その後、塗布・乾燥した2枚のIBの塗布面同士を合わせて、保護フィルム(株式会社カネカ製アピカル(登録商標)125AH)を2枚配し、熱ロールラミネート装置の一対の金属ロール間を通すことにより、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力290N/cm、ラミネート速度1m/minの条件で熱ラミネートを行った。その後、上記保護フィルムの順に分離することにより、積層体(接着シートの積層体)を製造した。得られた接着シートの積層体について、厚み測定、誘電率、誘電正接測定、積層体フィルム間密着力測定を実施した。
【0103】
積層体に対して、金属箔である厚み12μmの電解銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製 CF-T49A-HD2)を積層させ、更にこの金属箔を接着シートと挟むようにして保護フィルム(株式会社カネカ製アピカル(登録商標)125NPI)を配し、熱ロールラミネート装置の一対の金属ロール間を通すことにより、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力290N/cm、ラミネート速度1m/minの条件で熱ラミネートを行った。その後、上記保護フィルムの順に分離することにより、両面フレキシブル金属張積層板(G)を製造した。得られた両面フレキシブル金属張積層板(G)について、FCCLフィルム間密着力、金属張積層板の銅箔ピール強度、吸湿半田耐熱の評価を実施した。
【0104】
積層体に対して、金属箔である厚み12μmの電解銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製 CF-T49A-HD2)を1枚積層させ、更にこの金属箔を接着シートと挟むようにして保護フィルム(株式会社カネカ製アピカル(登録商標)125NPI)を配し、もう片方の保護フィルムは125AHを使用して、熱ロールラミネート装置の一対の金属ロール間を通すことにより、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力290N/cm、ラミネート速度1m/minの条件で熱ラミネートを行った。その後、上記保護フィルムの順に分離することにより、片面金属張積層板(E)を製造した。
【0105】
(マイクロストリップライン)
上述のポリイミド層を含む両面フレキシブル金属積層板(G)の片面をエッチングし、線路長10cmのマイクロストリップラインを作製し、回路部及び端子部に銅メッキを施し、マイクロストリップ線路のフレキシブル金属張積層板のテストピースを作製した(図1)。回路幅は、特性インピーダンスが50Ωになるよう、構成材料の厚み、誘電率、誘電正接から算出した。
【0106】
(ストリップライン)
上述の第1ポリイミド層を含む両面フレキシブル金属積層板(G)の片面をエッチングし、線路長10cmのマイクロストリップラインを作製し、回路部及び端子部に銅メッキを施した。このマイクロストリップライン回路を、第2ポリイミド積層体を含む片面金属張積層板(E)と、ニッカン工業社製ボンディングシートSAFYを介して、150℃で30分間、1~2MPaの条件で、減圧加熱して貼り合わせた。これにより、ストリップライン構造を有するフレキシブル金属張積層板のテストピースを作製した。回路幅は、特性インピーダンスが50Ωになるよう、構成材料の厚み、誘電率、誘電正接から算出し、ノイズ軽減のため、上部と下部のグランドはビアで導通させる構造とした(図2)。
【0107】
得られたマイクロストリップライン回路を有するフレキシブル金属張積層板およびストリップライン回路を有するフレキシブル金属張積層板のそれぞれに対して、以下の処理を行った。すなわち、150℃、30分間乾燥後、23℃、55%RHに調整された試験室内で24時間以上調湿した。その後、ネットワークアナライザE5071C(Keysight Technologies)とGSG250プローブを用いて挿入損失S21パラメータの測定を行い、測定周波数10GHzでの伝送損失(dB/100mm)を得た。
【0108】
(実施例2)
実施例1において、シランカップリング剤を3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン(APDEと略することがある)を使用したことを除き、他は実施例1と同様に実施した。
【0109】
(参考例1)
実施例2において、接着シートを25μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオSR)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0110】
(実施例3)
実施例2において、接着シートを50μm、25μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオSR)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0111】
(実施例4)
実施例2において、接着シートを2枚の50μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオSR)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0112】
(参考例2)
実施例2において、接着シートを25μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオFRS)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0113】
(実施例5)
実施例2において、接着シートを50μm、25μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオFRS)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0114】
(実施例6)
実施例2において、接着シートを2枚の50μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオFRS)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0115】
(参考例3)
実施例2において、接着シートを2枚の12.5μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオIB)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0116】
(参考例4)
実施例2において、接着シートを2枚の25μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオIB)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0117】
(実施例7)
実施例2において、接着シートを50μm、25μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオIB)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0118】
(実施例8)
実施例2において、接着シートを3枚の25μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオIB)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0119】
(実施例9)
実施例2において、接着シートを3枚の50μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオIB)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0120】
(実施例10)
実施例2において、接着シートを4枚の50μmのポリイミドフィルム(ともに株式会社カネカ製ピクシオIB)を組み合わせて使用したことを除き、他は実施例2と同様に実施した。
【0121】
(実施例11)
実施例2において、貼り合わせた積層体を得て、金属箔とラミネートする段階的なプロセスを実施することを除き、シランカップリング剤を塗布・乾燥した接着シートを2枚重ね、金属箔と一括でラミネートすることで、片面金属積層板(E)、両面金属積層板(G)を作成すること以外、他は実施例2と同様に実施した。
【0122】
(実施例12)
実施例2において、2-プロパノールで希釈した溶液の濃度が、5重量%に調整したものを使用した以外は、他は実施例2と同様にして実施した。
【0123】
(実施例13)
実施例2において、2-プロパノールで希釈した溶液の濃度が、1重量%に調整したものを使用した以外は、他は実施例2と同様にして実施した。
【0124】
(実施例14)
実施例2において、接着シートの表面にシランカップリング剤を塗布、乾燥したものと何も表面処理していないものを貼り合わせる以外は、他は実施例2と同様に実施した。
【0125】
(比較例1)
実施例1において、接着シートの表面処理を実施しなかったことを除き、他は実施例1
と同様にして実施した。
【0126】
その結果、接着シート同士の密着力が弱く、得られた片面金属張積層板(E)、両面金属張積層板(G)は容易に接着シート同士が剥離してしまった。
【0127】
(比較例2)
実施例1において、接着シートの表面処理を大気圧プラズマ処理をしたことを除き、他は実施例1
と同様にして両面金属張積層板(G)を製造した。
【0128】
その結果、接着シート同士の密着力が弱く、得られた片面金属張積層板(E)、両面金属張積層板(G)は容易に接着シート同士が剥離してしまった。
【0129】
(比較例3)
実施例1において、接着シートの表面処理をエンボス加工をしたことを除き、他は実施例1と同様にして両面金属張積層板(G)を製造した。その結果、接着シート同士の密着力が弱く、得られた片面金属張積層板(E)、両面金属張積層板(G)は容易に接着シート同士が剥離してしまった。
(比較例4)
実施例1において、接着シートの表面処理をヘアライン加工をしたことを除き、他は実施例1と同様にして両面金属張積層板(G)を製造した。その結果、接着シート同士の密着力が弱く、得られた両面金属張積層板(G)は容易に接着シート同士が剥離してしまった。
【0130】
【表1】
【符号の説明】
【0131】
1.グランド層
2.接着シートを2枚以上貼り合せた積層体(第1ポリイミド層)
3.信号線
4.接着シートを2枚以上貼り合せた積層体(第2ポリイミド層)
5.接着剤層
図1
図2