(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134630
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】公衆電話機及び不正利用防止方法
(51)【国際特許分類】
H04M 17/00 20240101AFI20240927BHJP
【FI】
H04M17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044917
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】304014143
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】桜井 裕司
(57)【要約】
【課題】公衆電話機を用いたワン切りの不正利用を防止すると共に、非常時の無料通話サービスは支障なく利用することができるようにする。
【解決手段】着信したときに自動応答する自動応答機を設ける。公衆電話機は、自動応答機の電話番号を記憶する記憶部と、通話に対する課金が可能な状態になっているか否かを検出する課金可否検出手段と、この課金可否検出手段で、課金が可能な状態になっていないことを検出した場合に、受け付けた相手先電話番号による発信に先立ち、記憶部に記憶されている前記自動応答機の電話番号により発信する手段とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着信したときに自動応答する自動応答機の電話番号を記憶する記憶部と、
通話に対する課金が可能な状態になっているか否かを検出する課金可否検出手段と、
前記課金可否検出手段で、前記課金が可能な状態になっていないことを検出した場合に、受け付けた相手先電話番号による発信に先立ち、前記記憶部に記憶されている前記自動応答機の電話番号により発信する手段と、
を備えることを特徴とする公衆電話機。
【請求項2】
前記記憶部に記憶されている前記自動応答機の電話番号によりなされた前記発信の後に、交換機からの応答収納信号を検出した場合に、前記受け付けた相手先電話番号による発信をすることなく、強制切断する
ことを特徴とする請求項1に記載の公衆電話機。
【請求項3】
前記記憶部に記憶されている前記自動応答機の電話番号によりなされた前記発信の後に、交換機からの応答収納信号を検出しなかった場合には、前記受け付けた相手先電話番号による発信をする
ことを特徴とする請求項1に記載の公衆電話機。
【請求項4】
前記記憶部に記憶されている前記自動応答機の電話番号による前記発信に際しては、発信音はミューティングする
ことを特徴とする請求項1に記載の公衆電話機。
【請求項5】
前記記憶部に記憶されている前記自動応答機の電話番号によりなされた前記発信の後には、待機を注意喚起する音声メッセージを送出する
ことを特徴とする請求項1に記載の公衆電話機。
【請求項6】
着信したときに自動応答する自動応答機を設け、
公衆電話機が、通話に対する課金が可能な状態になっていない場合には、受け付けた相手先電話番号による発信に先立ち、前記自動応答機の電話番号による発信を行う
ことを特徴とする不正利用防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、公衆電話機で硬貨やカードを入れずに電話を掛け、着信側が応答したら切断するという、いわゆるワン切りと呼ばれる不正利用を防止する方法及びこの方法に用いる公衆電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
公衆電話機を用いて相手方と通話を行う場合は、送受話器を上げてオフフックした後、硬貨を投入する、あるいはカードを挿入し、相手方の電話番号をダイヤルする。すると、相手方電話番号のダイヤル信号が回線へ送出され、相手方の呼出が行われる。ここで相手方が応答すると、公衆電話機は投入された硬貨、あるいはカードから、1課金分毎に通話料金を徴収する。投入硬貨やカードの残金がなくなると、公衆電話機は回線を強制切断して通話を終了させる。
【0003】
このように公衆電話機は、課金を前提に通話することができるものであるが、相手方を呼出中に送受話器の接続コードの一方を接地すると共に、無料番号をダイヤルする操作をすることで無料通話をすることができるようにした不正利用があり、この不正利用を防止するため、特許文献1(特開平11-146097号公報)が提案されている。
【0004】
このような無料通話の不正利用ではないが、公衆電話機で硬貨やカードを入れずに相手方に電話を掛け、相手方が応答したら交換機からの応答収納信号を受信することで強制切断するという機能を利用して、いわゆるワン切りを行うという不正利用がある。無料でワン切りができるため、相手方に対して多数回のワン切りの発信が行われるという、嫌がらせ目的の不正利用がなされていて、問題となっている。
【0005】
この公衆電話機を用いたワン切りのシーケンスについて、
図6を用いて説明する。
【0006】
送受話器が上げられてオフフックされると、公衆電話機は、交換機との間の回線で直流ループを閉成するようにする。次に、公衆電話機は、相手方電話番号のプッシュボタンの押下操作(ダイヤル入力)を受けると、押下操作された番号のダイヤル信号としてPB(プッシュボタン)信号を交換機に送出する。なお、
図6の例では、公衆電話機の利用者は、硬貨やカードを入れずに相手方電話番号の入力操作をしているものとしている。
【0007】
公衆電話機は、相手方電話番号のプッシュボタンの押下操作毎に、その番号のPB信号を交換機に対して送出する。公衆電話機は、この動作を相手方電話番号の最終番号のプッシュボタンの押下操作(最終ダイヤル入力)がなされるまで継続する。
【0008】
交換機は、公衆電話機から相手方電話番号の最終ダイヤル入力に基づく、最終番号のPB信号を受けると、当該相手方電話番号の相手電話機に対して、回線の転局による着信を行うと共に、呼出信号を送出する。相手電話機では呼出信号に対応してリンガ鳴動を行って利用者に着信を報知する。相手電話機の利用者が、リンガ鳴動に応じて送受話器を上げるなどしてオフフックすると、相手電話機と交換機との間の回線で直流ループが閉成される。
【0009】
交換機は、相手電話機と交換機との間の直流ループの閉成を確認すると、公衆電話機に対して応答収納信号を送出する。この応答収納信号は、公衆電話機に対して、相手応答を伝達する応答信号であると共に、課金処理、つまり、投入された硬貨を収納し、あるいはカードから、通話料金を徴収することを指示する課金信号である。
【0010】
公衆電話機では、この交換機からの応答収納信号を受け取ると、硬貨あるいはカードが入れられている場合には課金処理を行うが、硬貨あるいはカードが入れられていない場合には、強制切断動作を行い、閉成していた公衆電話機と交換機との間の回線の直流ループを開放する。そして、交換機は、通話を切断し、切断信号およびビジートーンを送出する。このため、相手電話機では、オフフックして応答したにも関わらず、回線が切断されてしまう、いわゆるワン切りがなされることになる。
【0011】
以上の
図6のシーケンスから明らかなように、従来の公衆電話機では、硬貨やカードが入れられていない状態においても、相手電話機に着信がなされ、相手が応答すると、硬貨やカードが入れられていないので強制切断されることから、いわゆるワン切りを無料で行うことができてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、上述したような特殊な不正操作による無料通話を防止するために特許文献1のような技術はあったが、上述したワン切りを防止するという課題を解決する手段は提供されていない。
【0014】
上述したワン切り対策として、発信側の公衆電話機での処理として、遅くとも相手方電話番号の最終ダイヤル操作がなされる前までに、硬貨やカードが入れられていることを確認し、硬貨やカードが入れられていることを確認ができなかった場合には、強制切断してしまうという方法が考えられる。この方法のシーケンスを
図7に示す。
【0015】
図7においては、相手方電話番号の最初の番号のダイヤル入力までは、
図6のシーケンスの例と全く同様である。この例の公衆電話機においては、
図7のシーケンスに示すように、相手方電話番号の最初の番号のダイヤル入力から、相手方電話番号の最終ダイヤル入力がなされる前までの間において、ダイヤル入力による番号桁数と、硬貨あるいはカードが入れられているか否かの確認処理を行う。
【0016】
そして、公衆電話機は、硬貨あるいはカードが入れられていることの確認がとれなかったら、最終ダイヤル入力を受け付けた時点で、最終電話番号のPB信号は交換機には送出せずに、強制切断を行って、閉成していた公衆電話機と交換機との間の回線の直流ループを開放する。
【0017】
この
図7のシーケンスを行う公衆電話機によれば、硬貨やカードが入れられていない場合には、相手方電話番号への着信がなされないので、上述した無料のワン切りの不正利用を防止することができる。しかし、この
図7のシーケンスを行う公衆電話機では、例えば大地震などの場合に電話会社から提供される非常時の無料通話サービスが受けられなくなるという問題がある。
【0018】
すなわち、例えば大地震など、災害救助法が適用される規模の災害が発生し、かつ広域停電が発生するなど被災者の方々の通話を確保することが必要であると、電話会社が判断した場合には、当該非常時の所定期間、公衆電話機からの通話は無料で行えるようになっている。これは、交換機で、当該非常時の所定期間においては、公衆電話機からの相手方電話番号への発信により相手方が応答した場合には、
図6のシーケンスにおける応答収容信号を公衆電話機に送らないことで、硬貨やカードが入れられていなくても相手方との通話を可能にするものである。
【0019】
ところが、公衆電話機を
図7のシーケンスを行う構成にした場合には、相手方電話番号による発信をすることなく、強制切断されてしまうので、上述した非常時の無料通話サービスが受けられる非常時期間であっても無料通話サービスは利用できなくなってしまうという問題がある。
【0020】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした公衆電話機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
着信したときに自動応答する自動応答機の電話番号を記憶する記憶部と、
通話に対する課金が可能な状態になっているか否かを検出する課金可否検出手段と、
前記課金可否検出手段で、前記課金が可能な状態になっていないことを検出した場合に、受け付けた相手先電話番号による発信に先立ち、前記記憶部に記憶されている前記自動応答機の電話番号により発信する手段と、
を備えることを特徴とする公衆電話機を提供する。
【0022】
上述の構成の請求項1の発明による公衆電話機においては、硬貨やカードによる課金が可能な状態になっていないことを検出した場合に、受け付けた相手先電話番号による発信に先立ち、記憶部に記憶されている自動応答機の電話番号により発信する。
【0023】
この自動応答機の電話番号による発信を受けた交換機は、自動応答機に着信をさせる。すると、自動応答機は自動応答するので、交換機はその自動応答を受けて、公衆電話機に応答収容信号を送出する。公衆電話機は、この応答収容信号を受けて、投入されている硬貨やカードによる課金を実行する。そして、もしも、硬貨やカードが入れられておらず、課金ができないときには、
図6で説明したように強制切断する。したがって、硬貨やカードが入れられておらず、課金ができないときには、受け付けられた相手方電話番号による発信はなされない。これにより、ワン切りを防止することができる。
【0024】
また、災害救助法が適用される規模の災害が発生していて、公衆電話機が、無料で通話サービスが行える非常時期間であった場合には、交換機は、自動応答機からの自動応答に基づく応答収容信号は送らない。よって、公衆電話機は、受け付けた相手方電話番号による発信を、自動応答機への発信の後に行うことで、無料の通話サービスを支障なく提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明による公衆電話機によれば、ワン切りの不正利用を防止することができると共に、災害救助法が適用される規模の災害時等における無料の通話サービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明による公衆電話機の実施形態の構成例を示すブロック図である。
【
図2】この発明による公衆電話機の実施形態の発信時の動作の流れを説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【
図3】この発明による公衆電話機の実施形態の発信時の動作の流れを説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【
図4】この発明による公衆電話機の実施形態を用いてワン切りの不正利用を防止するシーケンス例を示す図である。
【
図5】この発明による公衆電話機の実施形態を用いて非常時の無料通話サービスを受ける場合のシーケンス例を示す図である。
【
図6】従来の公衆電話機を用いてワン切りの不正利用がなされるシーケンス例を示す図である。
【
図7】公衆電話機におけるワン切りの不正利用の防止方法の一例を説明するためのシーケンス例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明による不正利用防止方法及び公衆電話機の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0028】
<この発明による不正利用防止方法の実施形態の概要>
この発明による不正利用防止方法の実施形態においては、予め、着信に対して自動応答する自動応答機を設置すると共に、当該自動応答機に対して特定の電話番号を割り当てておく。この自動応答機に対して割り当てられる電話番号は、この例では、非常時の無料通話サービスが受けられる非常時期間であるかどうかの確認用の電話番号とされる。なお、自動応答機は、着信に対して自動応答する機能を有していれば、送受話の電話機能を有している必要はなく、どのような形態の機器や装置であってもよい。自動応答機に対して割り当てられる電話番号は、加入者電話番号であってもよいし、特に定められた電話番号であってもよい。
【0029】
そして、この発明による不正利用防止方法の実施形態においては、公衆電話機は、オフフックの後、相手方の電話番号の入力を受け付けて、その受け付けた電話番号を一時蓄積しておくダイヤル入力蓄積機能と、相手方の電話番号の入力を受け付けている間に、硬貨やカードが入れられているか否かにより、通話料金の課金が可能な状態になっているかどうかを検出する課金可否検出機能を備えている。そして、この公衆電話機の課金可否検出機能により、硬貨やカードが入れられておらず通話料金の課金が不可の状態になっていることを検出した場合には、公衆電話機は、相手方の電話番号に対してダイヤル発信する前に、自動応答機の電話番号に対してダイヤル発信する。
【0030】
すると、自動応答機は、公衆電話機からの着信に対して自動応答する。交換機は、この自動応答機からの自動応答を受け取ると、非常時の無料通話サービスが受けられる非常時期間であるか否かを判別し、非常時期間でなければ、応答収容信号を公衆電話機に送る。公衆電話機は、この応答収容信号を受信して課金を開始しようとするが、硬貨やカードが入れられておらず、課金が不可の状態になっているので、強制切断を行って回線を開放する。これにより、相手方にはダイヤル発信がなされることはないので、ワン切りを防止することができる。
【0031】
一方、非常時の無料通話サービスが受けられる非常時期間である場合には、交換機は、自動応答機の自動応答に対して、応答収容信号を送出しない。このため、この発明の実施形態の公衆電話機では、課金不可の状態となっていても強制切断せず、受け付けた相手方の電話番号に対してダイヤル発信するようにする。これにより、非常時の無料の通話サービスに対応することができる。
【0032】
<この発明による公衆電話機の実施形態>
図1は、実施形態の公衆電話機1の構成例を示すブロック図である。この実施形態の公衆電話機1は、電話送受信回路11が回線L1,L2に接続されていると共に、この電話送受信回路11に対して送受話器12が接続されている。また、電話送受信回路11は、公衆電話機1の全体の制御を行う、例えばコンピュータで構成される制御回路10に接続されている。
【0033】
そして、制御回路10には、フックスイッチ13と、操作部14と、表示部15と、ダイヤル回路16と、課金処理部17と、自動応答機電話番号記憶部18と、アナウンス音声記憶部19とが接続されている。
【0034】
フックスイッチ13は、送受話器12が上げられたときにオフフックの状態となり、送受話器12が元に戻されるとオンフックの状態に戻る。制御回路10は、このフックスイッチ13の状態を常に監視している。
【0035】
操作部14は、電話番号の入力用の手段として、この例ではプッシュボタン群を備える。制御回路10は、この操作部14のプッシュボタン群の内のいずれのプッシュボタンが押されたかを検出して、電話番号のダイヤル入力を検出する機能を備えている。
【0036】
表示部15は、入力された電話番号の表示やその他の表示を、制御回路10からの表示制御に基づいて行う。
【0037】
ダイヤル回路16は、制御回路10からの制御に基づいて、操作部14を通じて受け付けられた電話番号のPB信号を生成して、回線L1,L2に送出する。
【0038】
課金処理部17は、硬貨やカードの装填を受ける機構部を備えると共に、制御回路10の制御に基づいて、通話料金の課金を実行する。課金処理部17は、この例では、硬貨の投入を受けたことを確認した場合、あるいはカードの挿入を確認した場合に、その旨の通知を制御回路10に伝達する機能を備えている。
【0039】
この実施形態では、制御回路10は、課金処理部17からの硬貨の投入、あるいはカードの挿入の確認通知を監視することで、操作部14を通じた電話番号の全桁の入力を受ける前までに、通話料金の課金が可能な状態になっているかどうかを検出する課金可否検出機能を有する。
【0040】
自動応答機電話番号記憶部18は、上述した自動応答機に割り当てられた電話番号を記憶している。制御回路10は、課金可否検出機能により、通話料金の課金が可能な状態になっていないことを検出した場合には、相手方の電話番号によるダイヤル発信に先立ち、自動応答機電話番号記憶部18に記憶されている自動応答機の電話番号を読み出して、その電話番号によるダイヤル発信を行う。
【0041】
アナウンス音声記憶部19は、制御回路10の課金可否検出機能により、通話料金の課金が可能な状態になっていない場合に、自動応答機へのダイヤル発信が行われることによる遅延時間分の待機を、公衆電話機の使用者に注意喚起するアナウンス音声メッセージを記憶している。制御回路10は、自動応答機へダイヤル発信をしたときには、このアナウンス音声記憶部19から、アナウンス音声メッセージを読み出して、公衆電話機の使用者に聴取させるようにする。このアナウンス音声メッセージは、この例では「非常時期間の確認をしています。少々お待ちください。」などとされて、無料で通話サービスが行える大規模災害時などの非常無料通話の利用者に向けたものとされている。
【0042】
<公衆電話機1における発信時の動作例>
以上のように構成されている実施形態の公衆電話機1における発信時の動作例を、
図2及びその続きである
図3のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の説明において、
図2及び
図3のフローチャートの各ステップの処理は、コンピュータで構成されている制御回路10が、ソフトウェアプログラムにより実行する場合として説明する。
【0043】
制御回路10は、公衆電話機1の送受話器12が上げられてオフフックされたか否か監視する(ステップS101)。このステップS101で、オフフックされたと判別したときには、制御回路10は、回線L1,L2の直流ループを閉成し(ステップS102)、公衆電話機1の使用者による操作部14を通じたダイヤル入力(電話番号入力)を受け付けて、バッファメモリに順次に蓄積して一時記憶しておく(ステップS103)。
【0044】
そして、制御回路10は、最終ダイヤル入力(最後の電話番号の入力)までを一時記憶したか否か判別し(ステップS104)、最終ダイヤル入力までの一時記憶を完了していないと判別したときには、ステップS103に戻り、受け付けたダイヤル入力を、順次に、蓄積して、バッファメモリに一時記憶する。
【0045】
ステップS104で、最終ダイヤル入力までを一時記憶したと判別したときには、制御回路10は、課金処理部17からの通知に基づいて、硬貨やカードが入れられているか否かを判断して、課金が可能な状態になっているか否かを判別する(ステップS105)。
【0046】
ステップS105で、硬貨あるいはカードが入れられていて、課金が可能な状態となっていると判別したときには、制御回路10は、ステップS103でバッファメモリに蓄積されていた相手方電話番号でダイヤル発信を行う(ステップS106)。その後、制御回路10は、相手方電話番号でのダイヤル発信後の通常のルーチンを行って、相手方が応答したら通話路を生成する。
【0047】
ステップS105で、硬貨やカードが入れられておらず、課金が可能な状態となっていないと判別したときには、制御回路10は、自動応答機電話番号記憶部18から自動応答機の電話番号を読み出して、自動ダイヤル発信をする(ステップS107)。このとき、制御回路10は、この自動ダイヤル発信の際におけるダイヤル音(PB音)は、ミューティングして、公衆電話機の使用者には、ダミー発信音は、聴取されないようにする。
【0048】
そして、制御回路10は、自動応答機へのダミー発信による遅延時間分の待機を、公衆電話機の使用者に注意喚起するための音声メッセージを、アナウンス音声記憶部19から読み出し、この例では、送受話器12の受話器を通じて放音する(ステップS108)。
【0049】
次に、制御回路10は、交換機からの信号の受信を待ち(ステップS109)、交換機からの信号の受信を確認したら、ステップS107におけるダミー発信に対するダミー切断を行う(
図3のステップS111)。そして、制御回路10は、交換機からの信号として、応答収納信号を受け取ったか否か判別する(ステップS112)。
【0050】
このステップS112で、交換機から応答収納信号を受け取ったと判別したときには、制御回路10は、強制切断を行い(ステップS113)、直流ループを開放し、送受話器12を通じてビジートーンを送出する。そして、制御回路10は、送受話器12が元に戻されて、オンフックの状態になったか否かを判別し(ステップS116)、オンフックの状態になっていなければ、ステップS115に戻って、ビジートーンの送出を継続し、オンフックの状態になったと判別したときには、ビジートーンを停止して(ステップS117)、この処理ルーチンを終了する。
【0051】
以上のように、ステップS105で硬貨やカードが入れられておらず、課金が不可の状態となっていると判別され、かつ、ステップS112で、交換機から応答収納信号を受け取ったと判別されたときには、蓄積された相手方電話番号へのダイヤル発信は行われずに、強制切断されるので、ワン切りの不正利用を防止することができる。
【0052】
また、無料通話サービスを提供する非常時期間である場合には、交換機からは応答収納信号は送出されない。この場合には、制御回路10は、ステップS112で、応答収納信号は受信されないと判別し、ダミー発信に対して自動応答した自動応答機との間についてダミー切断を行い、交換機との間の回線L1,L2についての直流ループを開放する(ステップS118)。そして、制御回路10は、回線L1,L2における直流ループを閉成し直し(ステップS119)、バッファメモリに蓄積されていた相手方電話番号へのダイヤル発信を行う(ステップS120)。その後、制御回路10は、相手方電話番号でのダイヤル発信後の通常のルーチンを行って、相手方との間に通話路を生成する。
【0053】
以上のように、ステップS105で硬貨やカードが入れられておらず、課金が不可の状態となっていると判別され、かつ、ステップS112で、交換機からの応答収納信号を存在しないと判別された場合(非常時期間である場合)には、蓄積された相手方電話番号へのダイヤル発信が行われて通話路が生成されて、通話が可能となり、無料の通話サービスを受けることができる。
【0054】
<ワン切りを意図した不正利用におけるシーケンス例>
以上説明した公衆電話機1を用いてワン切りを意図した不正使用が防止されるシーケンス例を
図4に示す。
【0055】
この場合、使用者は、送受話器12を上げてオフフックし、硬貨あるいはカードを入れることなく、相手方電話番号の入力を行う。公衆電話機1は、オフフックを検出して、交換機との間の回線で直流ループを閉成する。次に、公衆電話機1は、相手方電話番号のプッシュボタンの押下操作(ダイヤル入力)毎に、押下操作された番号をバッファメモリに蓄積してゆく。公衆電話機1では、このダイヤル入力の蓄積時に並行して、硬貨あるいはカードが入れられたかを検出する。
【0056】
公衆電話機1は、相手方電話番号の最終番号のプッシュボタンの押下操作(最終ダイヤル入力)がなされてその番号が蓄積された時点で、この例の場合には、硬貨あるいはカードが入れられておらず、課金不可の状態であることを検出していることになる。公衆電話機1は、この課金不可であることの検出に基づいて、自動応答機へのダイヤル発信(ダミー発信)を行う。このダミー発信時のダイヤル発信音はミューティングされると共に、この例では、非常時期間であるかどうかの確認のために待機するよう促す音声メッセージをアナウンスする。
【0057】
交換機は、公衆電話機からの自動応答機へのダイヤル発信のPB信号を受けると、自動応答機に対して、回線の転局および呼出信号による着信を行う。自動応答機では着信に対して自動応答するので、その応答が交換機に送出される。
【0058】
交換機は、この自動応答機からの応答を確認すると、非常時期間ではない場合には、公衆電話機1に対して応答収納信号を送出する。
【0059】
公衆電話機1では、この交換機からの応答収納信号を受け取ると、硬貨やカードが入れられていないので、強制切断動作を行い、閉成していた公衆電話機と交換機との間の回線の直流ループを開放する。そして、公衆電話機1はビジートーンを送受話器12の受話器を通じて放音する。
【0060】
したがって、公衆電話機1で受け付けられた相手方電話番号へのダイヤル発信は行われことなく、強制切断されるので、ワン切りを防止することができる。
【0061】
<非常時無料通話時のシーケンス例>
次に、以上説明した公衆電話機1が非常時無料通話のために使用された場合のシーケンス例を
図5に示す。
【0062】
この
図5の例においても、使用者は、送受話器12を上げてオフフックし、硬貨あるいはカードを入れることなく、相手方電話番号の入力を行う。そして、この
図5のシーケンス例においては、公衆電話機1でのオフフック検出から、ダミーのダイヤル発信に対して自動応答機が自動応答してその応答が交換機に送出されるまでのシーケンスは、
図4のシーケンス例と全く同様である。
【0063】
この
図5のシーケンス例においては、交換機は、非常時期間であることを認識しているので、自動応答機からの応答に対しては、応答収納信号を含めないで、公衆電話機1に応答動作を行う。このため、公衆電話機1では、ダミー発信に対して自動応答した自動応答機との間についてダミー切断を行い、交換機との間の回線L1,L2についての直流ループを開放する。続いて回線L1,L2における直流ループを閉成し直し、バッファメモリに蓄積されていた相手方電話番号へのダイヤル発信を行う。
【0064】
以上の
図5のシーケンスの通り、実施形態の公衆電話機によれば、非常時における無料通話サービスを受けることができる。
【0065】
以上のようにして、この発明による不正利用防止方法によれば、交換機には何らの変更を加えることなく、自動応答機を設置すると共に、公衆電話機を、課金をすることが不可の状態であるときには、受け付けた相手方電話番号にダイヤル発信するのに先立ち、その自動応答機に対してダイヤル発信するように構成することにより、ワン切りの不正利用を防止できると共に、非常時の無料通話サービスにも対応することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…公衆電話機、10…制御回路、11…電話送受信回路、12…送受話器、13…フックスイッチ、14…操作部、15…表示部、16…ダイヤル回路、17…課金処理部、18…自動応答機電話番号記憶部、19…アナウンス音声記憶部