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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134632
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】インナーチューブテント
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/20 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
E04H15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044920
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】関口 佳子
(72)【発明者】
【氏名】畠井 秀
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141BB02
2E141CC03
2E141DD03
2E141EE03
2E141EE04
2E141EE05
2E141GG01
2E141GG08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】交差領域を有する気柱を備え、交差領域を構成する第一のインナーチューブ(第一チューブ)と第二のインナーチューブ(第二チューブ)との接合部における気体漏れの発生が抑制されたインナーチューブテントを提供する。
【解決手段】気密性を有する中空管状のインナーチューブ10およびインナーチューブ10を覆うカバー材を有する気柱と気柱に沿って設けられる天幕とを有し、インナーチューブ10は、第一チューブ11と交差する方向に伸長する第二チューブ12とを備え、第一チューブ11の外周面に対し、第二チューブ12の端部外縁部が接合されてなり、脱気観察状態のインナーチューブ10において、第一チューブ11の幅方向における幅寸法d2に対し、幅方向における接合部40の長さ寸法d1が100%未満であり、かつ、第一チューブ11の幅方向の一方側の外縁14から他方側の外縁15までの間に接合部40が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性を有する中空管状のインナーチューブおよび前記インナーチューブを覆うカバー材を有する気柱と、
前記気柱に沿って設けられる天幕と、を有し、
前記インナーチューブは、一方方向に伸長する第一チューブと、前記第一チューブの伸長方向に交差する方向に伸長する第二チューブとを備え、
前記第一チューブと前記第二チューブとは、前記第一チューブの外周面に対し、前記第二チューブの端部外縁部が接合されてなる接合部により接合されており、
脱気観察状態の前記インナーチューブにおいて、
前記第一チューブの幅方向における幅寸法に対し、当該幅方向における前記接合部の長さ寸法が100%未満であり、かつ、前記第一チューブの幅方向の一方側の外縁から他方側の外縁までの間に前記接合部が設けられていることを特徴とするインナーチューブテント。
【請求項2】
脱気観察状態の前記インナーチューブにおいて、
前記接合部の周方向の全長さが、前記第二チューブの垂直断面の周方向の全長さと等しい請求項1に記載のインナーチューブテント。
【請求項3】
前記接合部の内側に、前記第一チューブの外周面の一部が開口してなる通気孔が設けられており、
前記通気孔の外縁から接合部までの距離が均等である請求項1または2に記載のインナーチューブテント。
【請求項4】
脱気観察状態の前記インナーチューブにおいて、
前記通気孔および前記接合部が同心円である請求項3に記載のインナーチューブテント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密性を有する中空のインナーチューブと、当該インナーチューブを覆うカバー材とを有する気柱から構成される骨組みを備えるテントに関する。
【背景技術】
【0002】
災害時の避難場所や緊急施設等として気柱を骨組みとするエアーテントが用いられている。従来のエアーテントは、ゴム製のシート、またはゴム層を生地に積層させた所謂ゴム引布を用いて作成されたチューブ(以下、ゴムチューブという)を気柱とする骨組みと、天幕とから構成されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ゴム等でできたチューブ(ゴムチューブ)を用いたドーム型の骨組みに対し、骨組みの内側からテント本体の生地(天幕)を沿わせるとともに、当該天幕の所定位置に予め設けられた複数の穴にチューブを貫通させることで構成されたエアーテントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実昭63-179370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴムチューブは、繰り返し給排気を行っても弾性が維持されやすく望ましいという長所を有する一方、給気量が過剰になると破裂し、あるいは溶着部分の一部が裂けて気体漏れが発生する場合があるため、給気時に注意を払わなければならず、高い圧力をかけ難かった。しかしながら破裂等の発生を回避するために給気量を抑制した場合、気柱として適切な剛性を、ゴムチューブにおいて発揮させ難いという問題があった。
【0006】
そこで本発明者らは、気密性を有する中空管状のインナーチューブおよび当該インナーチューブを覆うカバー材を有する気柱を備えるエアーテント(インナーチューブテント)の提供に取り組んだ。インナーチューブテントであれば、インナーチューブに対し充分に給気を行い高い圧力をかけた場合においても当該インナーチューブがカバー材で覆われていることから破裂し難く気密性を良好に保持可能である。
【0007】
ただし、気柱が交差領域を有する場合、当該交差領域を構成する第一のインナーチューブと第二のインナーチューブとの接合部における空気漏れの発生の可能性が危惧された。
【0008】
かかる問題に点について図6を用いて説明する。図6Aは従来の長尺のチューブ(第一チューブ201、第二チューブ202)の交差領域270を示す部分説明図であり、図6B図6Aに示す交差領域270の脱気観察状体における上面図であり、第二チューブ202の図示を省略している。尚、ここでいう脱気観察状態とは、第一チューブ201および第二チューブ202を脱気し、これらの接合部240が上面側にくるよう第一チューブ201を床面に配置した状態をさす。
【0009】
一般的には、中空管状の可撓性のチューブを接合させる場合、図6Aに示すように交差領域270において、一方のチューブである第一チューブ201の外周面に対し、他方のチューブである第二チューブ202の端部外縁部を、第一チューブ201の周方向2分の1以上を被覆可能な形状に切り欠いて、当該端部外縁部を第一チューブ201の外周面に接合させて接合部240を構成することが常套である。かかる態様では、脱気観察状態である図6Bに示すとおり、上面視において接合部240がたとえばレモン型(ひし形)などの形状となる。接合部240の内側には、第一チューブ201の周面の一部を開口させてなる通気孔213が設けられており、第一チューブ201と第二チューブ202とにおいて気体が流通可能に連通されている。
【0010】
ここで接合部240は、第一チューブ201の外周面に対し、第二チューブ202のレモン型などの形状の端部外縁部を深く食い込ませて、しっかりとチューブ同士を接合させるため、一般的には第一チューブ201の幅方向の寸法(幅寸法d5)と、当該幅方向における接合部240の長さ寸法d4とが、幅寸法d5≦長さ寸法d4となるよう設計される。そのため、図6Bに示すとおり脱気観察状態において、第一チューブ201の幅方向における、第二チューブ202の両方の先端220が、それぞれ第一チューブ201の幅方向外縁まで到達し、図6Aに示すとおり膨張状態において、両方の先端220が第一チューブ201の周方向2分の1以上に位置することになる。
【0011】
上述する従来のチューブの接合の態様を、エアーテント用のインナーチューブに適用し、当該インナーチューブをカバー材で被覆して気柱を構成した場合、ちょうど第二チューブ202の両方の先端220およびその近傍がカバー材の裏面と擦れやすくなり、その結果、接合部240の接合状態が不良となって空気漏れが発生する恐れがあった。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、交差領域を有する気柱を備え、当該交差領域を構成する第一のインナーチューブ(第一チューブ)と第二のインナーチューブ(第二チューブ)との接合部における気体漏れの発生が抑制されたインナーチューブテントの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のインナーチューブテントは、気密性を有する中空管状のインナーチューブおよび上記インナーチューブを覆うカバー材を有する気柱と、上記気柱に沿って設けられる天幕と、を有し、上記インナーチューブは、一方方向に伸長する第一チューブと、上記第一チューブの伸長方向に交差する方向に伸長する第二チューブとを備え、上記第一チューブと上記第二チューブとは、上記第一チューブの外周面に対し、上記第二チューブの端部外縁部が接合されてなる接合部により接合されており、脱気観察状態の上記インナーチューブにおいて、上記第一チューブの幅方向における幅寸法に対し、当該幅方向における上記接合部の長さ寸法が100%未満であり、かつ、上記第一チューブの幅方向の一方側の外縁から他方側の外縁までの間に上記接合部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を備える本発明によれば、脱気観察状態において第一チューブの幅方向における接合部の長さが短いため、膨張させたインナーチューブをカバー材で被覆した際、接合部とカバー材との擦れが抑制され、当該接合部における気体漏れの発生が抑制されたインナーチューブテントの提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態であるインナーチューブテントの斜視図である。
図2図1に示すインナーチューブテントの天幕を図示省略した斜視図である。
図3】本発明の一実施形態であるインナーチューブテントの交差領域を示す部分説明図である。
図4】(4A)は本発明の一実施形態におけるインナーチューブの交差領域を示す部分説明図であり、(4B)は(4A)に示す交差領域の脱気観察状体における上面図である。
図5】(5A)は梯子状体のインナーチューブの上面図であり、(5B)は半梯子状体であるインナーチューブの上面図である。
図6】(6A)は検討用のインナーチューブの交差領域を示す部分説明図であり、(6B)は(6A)に示す交差領域の脱気状体における上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図1図5を用いて本発明を説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
図1は、本発明の一実施形態であるインナーチューブテント100の斜視図である。図2は、図1に示すインナーチューブテント100の天幕120を図示省略した斜視図である。図3は、インナーチューブテント100の交差領域70を示す部分説明図であり、膨張状態のインナーチューブ10を覆うカバー材20の一部をめくり、内部のインナーチューブ10を露出させた状態を示している。図4Aはインナーチューブ10の交差領域70を示す部分説明図であり、図4B図4Aに示す交差領域70の脱気観察状体における上面図であり、第二チューブ12の図示を省略している。図5Aは梯子状体のインナーチューブ10の上面図であり、図5Bは半梯子状体であるインナーチューブ10の上面図である。
【0017】
尚、本発明または本発明の説明に関し用いるいくつかの用語について以下の通り定義する。脱気観察状態とは、インナーチューブを脱気し、接合部が上面側にくるよう第一チューブを床面に配置した状態をさす。交差領域とは、気柱または当該気柱を構成するインナーチューブにおいて、十字に交差する領域またはT字に交差する領域をさす。ただし上記交差領域における交差角度は90度であってもよいし90度以外であってもよい。チューブの端部外縁部とは、チューブの端部における切り口およびその近傍をさす。
【0018】
図1に示すとおり、インナーチューブテント100は、気柱30と、気柱30に沿って設置された天幕120とを備える。気柱30は、テントの骨組みをなす。天幕120は、気柱30に沿って設けられている。本実施形態では、気柱30の外側を覆って天幕120が設けられている。図示省略するが、天幕120の一部または全部が、気柱30の内側に沿って設けられ、インナーチューブテント100の外観において気柱30の一部または全部が露出される態様であってもよい。
本実施形態では天幕120の任意の箇所において下端から上方に向かうスリットが設けられており、これによって出入口42が構成されている。またインナーチューブテント100の内部床面には床シート110が設置されている。
【0019】
天幕120は、気柱30によって支持され固定されている。かかる固定の手段は特に限定されないが、たとえば、天幕120と気柱30とを所定の位置において面ファスナーなどで接合させ、あるいは、天幕120に設けた紐などの取付手段で、気柱30に取り付けることができる。取付手段については図示省略する。
【0020】
天幕120は、一般的なテントに用いられる天幕と同様の部材から構成される。たとえば、天幕120を構成する部材の例としてはポリエステル等の編物、織物、不織布等の繊維基材の両面又は片面をポリ塩化ビニルやゴム等の層を積層したゴム引布、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、ナイロン等の各種の材料などが挙げられる。
【0021】
床シート110は、少なくとも天幕120で覆われた接地面に敷かれるとよい。床シート110を構成する部材は、インナーチューブテント100の用途に応じて変更することがきるが、たとえば非透水性のシートや断熱シートなどが例示される。床シート110は適宜省略することができる。
【0022】
気柱30は、インナーチューブテント100の骨組みである。インナーチューブテント100は、骨組みが気柱30から構成されることによって、金属製等の硬質の骨組みを使用する従来のテントに比べ、総重量が軽く、また収容時の収容容積も小さくすることができる。気柱30の形状は特に限定されず、テント内の空間が保持されテントとして使用可能な形状であればよいが、後述するとおり気柱30は交差領域70を有する。
本実施形態における気柱30は、図2に示すとおり対向する少なくとも2つのアーチ部36と、一のアーチ部36とこれに対向する他のアーチ部36とを亘る一または複数の梁(天井梁32、横梁34)とを有するよう構成される。アーチ部36の下端(接地端)は、床シート110の四隅に設けられた気柱設置部112に挿入されている。ただし、本発明における気柱はかかる構成に限定されず、たとえば図示省略する2以上のアーチ部が頂点で交差するドーム型の骨組みを構成することもできる。
【0023】
ここでアーチ部36とは、両端が接地面に接するとともに中間部が上方に凸状の構成を広く含む。図2に示す本実施形態におけるアーチ部36は、接地面から垂直上方に伸長する柱部54と、上部に接地面と平行である水平部56aとを有し、柱部54と水平部56aとは直線状の傾斜部56bにより連繋されている。ただし本発明におけるアーチ部は図2の態様に限定されず、たとえば図示省略する全体が上方に凸の湾曲形状であってもよい。
【0024】
また本実施形態では、2つのアーチ部36を亘る梁として、上記水平部56aに設けられた天井梁32と、上記柱部54に設けられた二本の横梁34を有するが、梁の配置位置や配置数は、これに限定されない。
【0025】
気柱30は、図3に示すように、気密性を有する中空管状のインナーチューブ10と、インナーチューブ10を覆うカバー材20とを備える。インナーチューブ10に対し充分に給気を行い高い内圧をかけた場合でも、インナーチューブ10はカバー材20で覆われていることから破裂し難く気密性を良好に保持可能である。
インナーチューブテント100の使用状態において、インナーチューブ10は、内部に気体が給気されて膨張しており、これを覆うカバー材20の内周面と、インナーチューブ10の外周面とが密着する。これによって、インナーチューブ10の膨張がカバー材20の内周面によって規制され、給気時にインナーチューブ10が破裂し、あるいは気体漏れが生じることが防止される。また例えば可撓性の部材からなるインナーチューブ10が繰り返しの給気によって伸びてしまうことが防止される。
【0026】
インナーチューブ10は、気密性を有する中空管状のチューブから構成されており、気体供給口26を通じて内部に空気などの気体が供給されることで膨張し、また気体供給孔26を通じて内部の空気を外部に排出させることで脱気状態となる。またインナーチューブ10は、内部に給気された気体を保持できる部材から構成される。加工性が良好であって、軽量であり適度な可撓性を有するという観点から、上記部材として樹脂部材を選択することが好ましい。上記樹脂部材としては、たとえば、溶断、溶接が可能な樹脂製シートや樹脂製チューブ状部材が好ましく用いられる。容易に中空管状の可撓性のチューブを成形可能であるという観点から、上記樹脂部材は、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂が含まれることが好ましい。
インナーチューブ10を構成する部材の厚みは特に限定されないが、インナーチューブ10が樹脂部材から構成される場合には、概ね100μm以上500μm以下であることが好ましく、かかる厚みを後述する好ましい外径の寸法から差し引いた値がインナーチューブ10の好ましい内径である。
【0027】
インナーチューブ10の外径は特に限定されないが、インナーチューブテント100のテント内の空間容積を大きく確保するか、あるいは小型テントとして設計する場合等には、20cm以下であることが好ましく、18cm以下であることがより好ましく、15cm以下であることがさらに好ましい。一方、インナーチューブテント100の強度を十分に確保するという観点からは、上記インナーチューブ10の外径は、5cm以上であることが好ましく、10cm以上であることがより好ましい。また、インナーチューブテント100を中型または大型のテントとして設計することもでき、この場合には、適宜、インナーチューブ10の外径を20cm超にすることが好ましく、30cm以上にすることがより好ましい。
【0028】
第一チューブ11および第二チューブ12の外径は、同じであってもよいし異なっていてもよい。たとえばアーチ部36と複数の梁(天井梁32、横梁34)を備える本実施形態の気柱30において、アーチ部36を構成する第一チューブ11の外径D1と、梁を構成する第二チューブ12の外径D2の比D1:D2は、D1:D2=100:75~100:100であることが好ましい。
【0029】
カバー材20は、インナーチューブ10を覆い、インナーチューブ10が過度に膨張し過ぎることを防止可能な程度の強度を有する部材から構成される。図3に示すとおり、給気によりインナーチューブ10を充分に膨張させた場合、カバー材20の内周面とインナーチューブ10の外周面とは密接する。
たとえば、カバー材20を構成する部材としては、織物、編み物、不織布などの裁断、縫製等が容易な部材から選択されるとよい。たとえばポリエステル繊維から構成される生地などが好ましく、特に伸縮性の低い織物は形状保持の点から好適である。
【0030】
カバー材20の内径は、十分に給気され膨張しインナーチューブ10の外径に対し、略同一に設計されているとよい。これにより、使用時においてインナーチューブ10はカバー材20の内周面によって膨張が規制され、過度な膨張が防止され破裂等が抑制される。またこれにより、インナーチューブテント100を繰りかえし使用した場合であっても、インナーチューブ10が伸びきってしまうことが良好に防止され、気柱の弾性が維持されるとともに高い気密性を保持可能である。
【0031】
カバー材20は、独立の複数のパーツから構成されていてもよく、あるいは一連の一つのカバー材として構成されてもよい。
【0032】
カバー材20によりインナーチューブ10を被覆する態様は特に限定されない。本実施形態では、カバー材20はインナーチューブ10に対し繰り返し取り外し可能に構成されている。具体的には、図3に示すとおり、インナーチューブ10の周方向に対し巻き付けられたカバー材20は、カバー材20の端部に設けられた緊締手段により巻き付けた状態が固定される。
緊締手段は、インナーチューブ10の膨張を規制可能な程度にカバー材20の一端部と他端部とを固定させることができる手段であればよい。たとえば図3に示すように、カバー材20の端部に、面ファスナー、線ファスナー、点ファスナーなどの繰り返し着脱可能な固定手段を設けることができる。固定手段は一種であってもよいし、組み合わせて使用してもよい。本実施形態では具体的には図3に示すように、カバー材の一方の端部に面ファスナー(雄)82が設けられ、他方の端部に面ファスナー(雌)84が設けられており、これらを所定幅で重なり合わせることで、インナーチューブ10に対しカバー材20を緊締している。
ただし、本発明は、上述する緊締手段を設けず、予め筒状のカバー材20の内部にインナーチューブ10を内挿するなどして、常に両者を一体として取り扱ってもよい。
【0033】
図4Aに示すとおり、インナーチューブ10は、一方方向に伸長する第一チューブ11と、第一チューブ11の伸長方向に交差する方向に伸長する第二チューブ12とを有している。第一チューブ11と第二チューブ12とは、第一チューブ11の外周面に対し、第二チューブ12の端部外縁部が接合されてなる接合部40により接合されている。
このように接合部40を有するインナーチューブ10が用いられることにより、インナーチューブテント100における気柱30は、図2に示すとおり交差領域70が設けられている。そのためインナーチューブテント100は、複雑な構造の骨組みを可能としている。本実施形態では図2に示すとおり、具体的には、対向する2つのアーチ部36と、これらを亘る複数の梁(天井梁32、横梁34、34)との接合部40が交差領域70となっている。
尚、本発明に関しチューブが一方方向に伸長するとは、直進方向に伸長する態様だけでなく湾曲方向などの非直進方向に伸長する態様を包含する。
【0034】
図4Bに脱気観察状態のインナーチューブを示す。本発明は、脱気観察状態のインナーチューブ10において、第一チューブ11の幅方向における幅寸法d2に対し、当該幅方向における接合部40の長さ寸法d1が100%未満であり、かつ、第一チューブ11の幅方向の一方側の外縁14から他方側の外縁15までの間に接合部40が設けられるよう構成される。換言すると図示するとおり接合部40が円形状である本実施形態では、接合部40を示す円の直径が、第一チューブ11の外周の2分の1未満となるよう構成されている。
【0035】
かかる構成を備えるインナーチューブテント100は、図6に示す従来の一般的な中空管状の可撓性チューブの接合部とは異なり、接合部40の端縁44、45が、第一チューブ11の周方向2分の1の位置に到達しない。そのため、膨張したインナーチューブ10をカバー材20が被覆した状態において、第二チューブ12の端部44、45がカバー材の裏面と擦れにくく、従来と比べ接合部40における気体漏れの問題が抑制される。
また、インナーチューブテント100は、カバー材20でインナーチューブ10を被覆するため、接合部40において、第一チューブ11の外周面に対し第二チューブ20の端部外縁部を、第一チューブ11の外周2分の1以上にまで深く食い込ませなくても、接合部40の接合状態を良好に維持することができる。
【0036】
尚、ここで第一チューブ11の幅方向とは、脱気観察状態において管状の第一チューブ11を平坦に潰した状態における短尺方向をさす。また接合部40の端部44、45とは、脱気観察状態において、接合部40の、第一チューブ11の外縁14、15それぞれに最も近い部分を指している。また接合部40の長さ寸法d1とは、脱気観察状態において、端部44を通過し第一チューブ11の外縁14に平行な直線と、端部45を通過し第一チューブ11の外縁15に平行な直線と、の距離をさす。
【0037】
カバー材20と接合部10の外縁14、15とが擦れることをより充分に回避するという観点から、第一チューブ11の幅方向における幅寸法d2に対し、当該幅方向における接合部40の長さ寸法d1は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、65%以下であることがさらに好ましい。
また第一チューブ11に対し、第二チューブ12をより良好に接合させるという観点から、第一チューブ11の幅方向における幅寸法d2に対し、当該幅方向における接合部40の長さ寸法d1は、40%以上であることが好ましく、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
本実施形態では、図4に示すとおり、脱気観察状態のインナーチューブ10において、接合部40の周方向の全長さが、第二チューブ12の垂直断面の周方向の全長さと等しくなるよう構成されている。より具体的には、本実施形態では接合部40は円形であり、当該円形は、第二チューブ12の垂直断面における円形と同一である。かかる構成によれば、脱気された平坦な状態の第一チューブ11に対し、寄りやシワなどを発生させずに第二チューブの端部外縁部をしっかりと接合させることができる。これにより、空気漏れなどがより発生し難い接合部40が形成される。
またかかる態様によれば、図6に示すような従来の接合態様とは異なり、第二チューブ12の端部外縁部を所定形状に切り欠くなどの工程が不要になり、製造工程上においても有利である。
【0039】
図4に示す円径の接合部40の形成方法は特に限定されないが、たとえば以下のように形成することができる。まず筒状の加熱用治具に第二チューブ12を挿通させるとともに第二チューブ12の端部外縁部を当該加熱用治具の先端において外方向に巻き付けて張り出し部を確保する。そして加熱用治具の先端を高周波や超音波等によって加熱して上記張り出し部を第一チューブ11の所定の位置に熱溶着させることで接合部40を形成することができる。
【0040】
本実施形態では、接合部40の内側に図4A図4Bに示すとおり、第一チューブ11の外周面の一部が開口してなる通気孔13が設けられている。これによって、第一チューブ11と第二チューブ12とは互いに通気可能である。このように、交差領域70において、第一チューブ11と第二チューブ12とが通気可能であることによって、たとえばインナーチューブ10の任意の位置に設けられた1か所の気体供給孔26(図2参照)においてインナーチューブ10全体に対し気体を給排気することができる。そのため、インナーチューブテント100の設置作業が容易となり、また給気した際にインナーチューブ10の内部圧力を常に均等にすることができる。
【0041】
接合部40の内側に通気孔13が設けられた本実施形態において、通気孔13の外縁から接合部40までの距離d3(図4B参照)はいずれの箇所においても均等となるよう構成されている。ここでいう均等とは任意の位置で測定した距離d3が、完全に同一の場合だけでなく、1~3mm程度相違する場合を許容する。このように距離d3を均等とするためには、たとえば第一チューブ11上において通気孔13の位置を基準として上述する第二チューブ12が挿通された加熱用治具を押し合てる位置を調整するとよい。
測定する箇所によって距離d3に有意な差異がある場合、接合部40近傍において第一チューブ11が攣れてしまい、接合部40の接合が弱い箇所が発生し気体漏れを誘因する可能性がある。したがって気体漏れの発生をより確実に防止するという観点からは、上述するとおり、任意の箇所において測定される上記距離d3が均等となるよう構成されることが好ましい。
【0042】
特に、通気孔13および接合部40がいずれも円形であって、かつこれらが脱気観察状態のインナーチューブ10において、同心円である態様によれば、接合部40近傍における第一チューブ11および第二チューブ12の攣れの発生を良好に抑制可能である。これによってインナーチューブ10を膨張させた際に、接合部40において局部的に大きな応力がかかることを回避することが可能である。したがって、接合部40からの気体漏れを充分に防止することができる。
【0043】
接合部40と通気孔13とが同心円である態様では、給排気時に通気孔13を気体が流れやすいという観点から、接合部40の直径X1に対する通気孔13の直径X2の比率((直径X2/直径X1)×100)は、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましい。
また上記態様において、接合部40の近傍において第一チューブ11に不自然な歪みが生じることを回避し、これによって接合部40に局所的な応力がかかり気体漏れが発生することを充分に回避するという観点からは、上記比率は、60%以下であることが好ましく55%以下であることがより好ましい。
【0044】
本実施形態では、インナーチューブ10は可撓性のチューブから構成されている。そのため、インナーチューブ10の形状が最終的なテントの骨組みの形状とは異なる形状であった場合であっても、カバー材20によりインナーチューブ10の形状を矯正し、所望の骨組みを構成することが可能である。
【0045】
本実施形態のインナーチューブテント100は、図2に示すように、気柱30が対向する二本のアーチ部36と、二本のアーチ部36を亘る複数の梁部(天井梁32、横梁34)とを有し、インナーチューブ10は、アーチ部36に相当する二本の第一チューブ11と、梁部に相当する複数本の第二チューブ12とを有する。ここで、カバー材20に被覆される前のインナーチューブ10は、気柱30の形状に沿った立体的な形状(第一の態様)であってもよいし、気柱30の形状とは異なる立体的な形状(第二の態様)であってもよいし、平面的な形状(第三の態様)であってもよい。上記第二の態様または第三の態様であっても、気柱30の形状に合わせて形成されたカバー材20でインナーチューブ10を被覆することによってインナーチューブ10の形状を矯正し、最終的に所望の形状の気柱30を形成することができる。ここで平面的な形状(第三の態様)のインナーチューブ10の例としては、図5Aに示す梯子状体および図5Bに示す半梯子状体が挙げられる。
【0046】
上記梯子状体とは、図5Aに示すとおり、直進方向に伸長する少なくとも2本の平行な長尺部材(第一チューブ11)を有し、上記2本の長尺部材を亘り互いに平行な複数の短尺部材(第二チューブ12)を有する構造をさす。
上記梯子状体インナーチューブ10を備えるインナーチューブテント100において、長尺部材(第一チューブ11)はアーチ部36を構成し、短尺部材(第二チューブ12)は天井梁32および横梁34を構成する。
【0047】
上記半梯子状体とは、図5Bに示すとおり、インナーチューブ10が、第一構造体17と第二構造体18とから構成される。第一構造体17および第二構造体18は、上述する梯子状体であるインナーチューブ10を、梁部の中間部で切断してなる形状である。
より具体的には、第一構造体17および第二構造体18は、それぞれ、直進方向に伸長する少なくとも1本の長尺部材(第一チューブ11)と、上記長尺部材に対し、直交する方向に接合され互いに平行かつ同方向に伸長する複数の短尺部材(プレ第二チューブ12')とを有する。第一構造体17におけるプレ第二チューブ12'および第二構造体18におけるプレ第二チューブ12'それぞれの端面には、互いを接合させるための接合手段19が設けられている。接合手段19により端面同士を接合させることによって梯子状体をなす。接合手段19は、第一構造体17および第二構造体18を繰り返し接合および離間させることが可能な手段であればよくたとえば面ファスナーなどが挙げられる。
また変形例として、インナーチューブ10の製造において第一構造体17および第二構造体18を製造し、第一構造体17におけるプレ第二チューブ12'および第二構造体18におけるプレ第二チューブ12'それぞれの端面を接着剤などで完全に接着し、梯子状体のインナーチューブ10としてもよい。
上記半梯子状体インナーチューブ10を備えるインナーチューブテント100において、長尺部材(第一チューブ11)はアーチ部36を構成し、短尺部材(プレ第二チューブ12')はプレ天井梁32'およびプレ横梁34'を構成し、2つのプレ天井梁32'により天井梁32が構成され、また2つのプレ横梁34'により横梁34が構成される。
【0048】
上述するとおり梯子状体または半梯子状体のインナーチューブ10は、アーチ部36をなす第一チューブ11を立体的に形成する必要がないため、製造容易であり好ましい。
【0049】
また、一般的には、図6Aに示すように直線状の第一チューブ201に対し直線状の第二チューブ202の端部を接合させて接合部240を形成した場合、第一チューブ201が、紙面における両端矢印方向に緩やかに反ってしまう傾向にあった。これは接合部40に第一チューブ11が引っ張られることによって生じるものと推察された。
しかしながら、上述する梯子状体または半梯子状体で形成されたインナーチューブ10では、第一チューブ11の反りが軽減されうるため、設計どおりの骨組みが得られやすく好ましい。反りが軽減される理由は明らかでないが、本発明は、第一チューブ11の幅方向における幅寸法d2に対し、当該幅方向における接合部40の長さ寸法d1が100%未満と従来よりも接合部40が小さく設計されているため、接合部40にインナーチューブ10が引っ張られ難くなっている上、梯子状体または半梯子状体とすることによって、第一チューブ11の反りが緩やかに矯正されているものと推測される。
【0050】
以上に本発明の態様について説明したが、本発明は、上述の説明に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜の態様を含み、また一部を変更することができる。
たとえば、接合部40において接合された第一チューブ11と第二チューブ12とは、互いに独立し、両者間を気体が通気できないよう構成されていてもよい。かかる態様では、インナーチューブ10の気体を給排気するための孔をチューブごとに設けるとよい。
また、筒状の加熱用治具を用いて接合部40を形成する際、当該筒状の加熱用治具を第二チューブ12の内部に挿通させ、第二チューブ12の端部外縁部を当該加熱用治具の先端において内方向に巻き付けて張り出し部を確保し熱溶着してもよい。
また、筒状の加熱用治具の先端は、楕円形や三角形など円形以外の形状の開口であってもよく、この場合には、当該開口の形状に応じた接合部40が形成される。
【0051】
上述する本発明は、下記の技術的思想を包含する。
(1)気密性を有する中空管状のインナーチューブおよび前記インナーチューブを覆うカバー材を有する気柱と、
前記気柱に沿って設けられる天幕と、を有し、
前記インナーチューブは、一方方向に伸長する第一チューブと、前記第一チューブの伸長方向に交差する方向に伸長する第二チューブとを備え、
前記第一チューブと前記第二チューブとは、前記第一チューブの外周面に対し、前記第二チューブの端部外縁部が接合されてなる接合部により接合されており、
脱気観察状態の前記インナーチューブにおいて、
前記第一チューブの幅方向における幅寸法に対し、当該幅方向における前記接合部の長さ寸法が100%未満であり、かつ、前記第一チューブの幅方向の一方側の外縁から他方側の外縁までの間に前記接合部が設けられていることを特徴とするインナーチューブテント。
(2)脱気観察状態の前記インナーチューブにおいて、
前記接合部の周方向の全長さが、前記第二チューブの垂直断面の周方向の全長さと等しい上記(1)に記載のインナーチューブテント。
(3)前記接合部の内側に、前記第一チューブの外周面の一部が開口してなる通気孔が設けられており、
前記通気孔の外縁から接合部までの距離が均等である上記(1)または(2)に記載のインナーチューブテント。
(4)脱気観察状態の前記インナーチューブにおいて、
前記通気孔および前記接合部が同心円である上記(3)に記載のインナーチューブテント。
【符号の説明】
【0052】
10・・・インナーチューブ
11・・・第一チューブ
12・・・第二チューブ
12'・・・プレ第二チューブ
13・・・通気孔
14、15・・・外縁
17・・・第一構造体
18・・・第二構造体
19・・・接合手段
20・・・カバー材
26・・・気体供給孔
30・・・気柱
32・・・天井梁
32'・・・プレ天井梁
34・・・横梁
34'・・・プレ横梁
36・・・アーチ部
40・・・接合部
42・・・出入口
44、45・・・端部
54・・・柱部
56a・・・水平部
56b・・・傾斜部
70・・・交差領域
82・・・面ファスナー(雄)
84・・・面ファスナー(雌)
100・・・インナーチューブテント
110・・・床シート
112・・・気柱設置部
120・・・天幕
201・・・第一チューブ
202・・・第二チューブ
213・・・空気孔
220・・・先端
240・・・接合部
270・・・交差領域
d1、d4・・・長さ寸法
d2、d5・・・幅寸法
d3・・・距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6