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特開2024-134636ドライバー、電気光学装置及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134636
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ドライバー、電気光学装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20240927BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240927BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611A
G09G3/20 611G
G09G3/20 621F
G09G3/20 621H
G09G3/20 623C
G09G3/20 623E
G09G3/20 623R
G09G3/20 623Y
G09G3/20 641P
G09G3/20 642P
G02F1/133 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044925
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】森田 晶
(72)【発明者】
【氏名】番匠 遼太
【テーマコード(参考)】
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZC23
2H193ZF05
2H193ZF06
2H193ZF35
2H193ZF36
5C006AA01
5C006AA16
5C006AC21
5C006AF43
5C006AF46
5C006AF51
5C006AF52
5C006AF53
5C006AF54
5C006AF64
5C006AF67
5C006AF83
5C006BB11
5C006BC12
5C006BC16
5C006BC23
5C006BF01
5C006BF14
5C006BF15
5C006BF24
5C006BF25
5C006BF27
5C006BF31
5C006BF33
5C006BF37
5C006BF38
5C006BF42
5C006BF43
5C006BF46
5C006BF49
5C006BF50
5C006EB05
5C006EC09
5C006EC11
5C006FA14
5C006FA18
5C006FA26
5C006FA41
5C006FA47
5C006FA51
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD08
5C080DD22
5C080DD25
5C080DD26
5C080DD27
5C080EE29
5C080GG12
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080KK02
5C080KK07
5C080KK20
5C080KK23
5C080KK43
5C080KK50
(57)【要約】
【課題】電気光学パネルの信号供給線を駆動する演算増幅器の増幅率と周波数応答特性を両立できるドライバー等を提供すること。
【解決手段】ドライバー100は、階調データに対応する第1~第nキャパシター駆動電圧を出力するキャパシター駆動回路20と、第1~第nキャパシターC1~Cnを有するキャパシター回路10と、駆動回路70とを含む。駆動回路70は、キャパシター駆動回路20を構成するトランジスターの耐圧より低い耐圧のトランジスターにより構成される演算増幅器71と、演算増幅器71の出力ノードNAMQと信号供給線との間に配置される出力キャパシターCQと、演算増幅器71の反転入力ノードNANと信号供給線との間に直列接続される第1フィードバックキャパシターCfa及び抵抗回路90と、一端が演算増幅器71の反転入力ノードNANに電気的に接続される第2フィードバックキャパシターCfbと、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階調データに対応する第1~第nキャパシター駆動電圧(nは2以上の整数)を第1~第nキャパシター駆動用ノードに出力するキャパシター駆動回路と、
電気光学パネルの信号供給線と前記第1~第nキャパシター駆動用ノードとの間に配置される第1~第nキャパシターを有するキャパシター回路と、
前記キャパシター駆動回路を構成するトランジスターの耐圧より低い耐圧のトランジスターにより構成される演算増幅器と、前記演算増幅器の出力ノードと前記信号供給線との間に配置される出力キャパシターと、前記演算増幅器の反転入力ノードと前記信号供給線との間に直列接続される第1フィードバックキャパシター及び抵抗回路と、一端が前記演算増幅器の前記反転入力ノードに電気的に接続される第2フィードバックキャパシターと、を含み、前記信号供給線に電気的に接続された駆動回路と、
を含むことを特徴とするドライバー。
【請求項2】
請求項1に記載されたドライバーにおいて、
前記抵抗回路は、
一端が前記演算増幅器の前記反転入力ノードに電気的に接続され、
前記第1フィードバックキャパシターは、
一端が前記抵抗回路の他端に接続され、他端が前記信号供給線に電気的に接続されることを特徴とするドライバー。
【請求項3】
請求項1に記載されたドライバーにおいて、
前記第1フィードバックキャパシターは、
一端が前記演算増幅器の前記反転入力ノードに電気的に接続され、
前記抵抗回路は、
一端が前記第1フィードバックキャパシターの他端に接続され、他端が前記信号供給線に電気的に接続されることを特徴とするドライバー。
【請求項4】
請求項1に記載されたドライバーにおいて、
前記抵抗回路は、
可変抵抗回路であることを特徴とするドライバー。
【請求項5】
請求項4に記載されたドライバーにおいて、
前記抵抗回路は、
前記第1フィードバックキャパシターと、前記演算増幅器の前記反転入力ノード又は前記信号供給線との間に並列接続される複数のトランジスターを含み、
前記抵抗回路の抵抗値は、前記複数のトランジスターのうちオンであるトランジスターのオン抵抗により設定されることを特徴とするドライバー。
【請求項6】
請求項4に記載されたドライバーにおいて、
前記抵抗回路は、
前記キャパシター駆動回路の駆動開始タイミングから第1期間の間、第1抵抗値に設定され、
前記第1期間の後の第2期間の間、前記第1抵抗値より低い第2抵抗値に設定されることを特徴とするドライバー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載されたドライバーと、
前記電気光学パネルと、
を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
請求項2又は3に記載されたドライバーと、
第1画素と、前記第1画素に電気的に接続される第1データ線と、前記第1データ線と前記信号供給線との間に配置される第1スイッチと、を含む前記電気光学パネルと、
を含み、
前記信号供給線の容量、前記第1データ線の容量、及び前記第1スイッチのオン抵抗による時定数をτaとし、前記抵抗回路の抵抗値、前記第1フィードバックキャパシターの容量値、及び前記第2フィードバックキャパシターの容量値による時定数をτbとしたとき、
τb≧τaであることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載されたドライバーを含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバー、電気光学装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、容量駆動回路とアンプ回路とを含み、電気光学パネルを駆動するドライバーが開示されている。アンプ回路は、容量駆動回路により電気光学パネルを駆動する容量駆動が開始された後に、階調データに対応するデータ電圧をデータ電圧出力端子に出力する電圧駆動を行う。これにより、電気光学パネルのソース線スイッチがオフからオンになった後のデータ線の電圧低下が、アンプ回路により補われるので、容量駆動におけるデータ電圧の精度低下が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-80807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶パネルの形式によっては、その駆動に高い電圧が必要であることから、そのような液晶パネルを駆動する駆動回路には、高耐圧のトランジスターで構成された演算増幅器が用いられている。しかしながら、高耐圧のトランジスターは移動度が低いため、演算増幅器の増幅率と周波数応答特性の両立が難しいという課題がある。例えば、高解像化等に伴って駆動速度を速くするためには演算増幅器の周波数応答特性を高くする必要があるが、演算増幅器の増幅率を保ったまま周波数応答特性を高くすると演算増幅器の消費電力が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、階調データに対応する第1~第nキャパシター駆動電圧(nは2以上の整数)を第1~第nキャパシター駆動用ノードに出力するキャパシター駆動回路と、電気光学パネルの信号供給線と前記第1~第nキャパシター駆動用ノードとの間に配置される第1~第nキャパシターを有するキャパシター回路と、前記キャパシター駆動回路を構成するトランジスターの耐圧より低い耐圧のトランジスターにより構成される演算増幅器と、前記演算増幅器の出力ノードと前記信号供給線との間に配置される出力キャパシターと、前記演算増幅器の反転入力ノードと前記信号供給線との間に直列接続される第1フィードバックキャパシター及び抵抗回路と、一端が前記演算増幅器の前記反転入力ノードに電気的に接続される第2フィードバックキャパシターと、を含み、前記信号供給線に電気的に接続された駆動回路と、を含むドライバーに関係する。
【0006】
また、本開示の他の態様は、上記のドライバーと、前記電気光学パネルと、を含む電気光学装置に関係する。
【0007】
また、本開示の更に他の態様は、上記のドライバーを含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電気光学装置の構成例。
図2】ドライバーの詳細構成例。
図3】階調データとデータ電圧の関係を説明する図。
図4】電荷再分配回路の詳細構成例。
図5】階調データと、低耐圧の駆動回路における電圧との関係を説明する図。
図6】駆動回路の第1詳細構成例。
図7】駆動回路の第2詳細構成例。
図8】電荷再分配回路と駆動回路の動作を説明する波形例。
図9】電気光学パネルの寄生抵抗及び寄生容量を模式的に示す図。
図10】抵抗回路を設けない場合における、ドライバーの出力電圧、及び電気光学パネルにおけるデータ線の電圧の過渡的な変化を示す図。
図11】本実施形態の抵抗回路を設けた場合における、ドライバーの出力電圧、及び電気光学パネルにおけるデータ線の電圧の過渡的な変化を示す図。
図12】画素の駆動期間において抵抗回路の抵抗値を変化させるときの波形例。
図13】抵抗回路の詳細構成例。
図14】電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.電気光学装置
図1に、電気光学装置の構成例を示す。電気光学装置400は、ドライバー100と電気光学パネル200とを含む。以下では、相展開駆動方式の電気光学装置400を例に説明するが、これに限定されず、例えば電気光学装置400はデマルチプレクス駆動方式であってもよい。
【0011】
ドライバー100は、電気光学パネル200の信号供給線にデータ信号を出力することで電気光学パネル200を駆動する。ドライバー100は、制御回路40と、第1~第kデータ線駆動回路DD1~DDkとを含む。以下ではk=8の場合を例に説明するが、kは2以上の整数であればよい。ドライバー100は、例えば、複数の回路素子が半導体基板に集積された集積回路装置である。図1において、電気光学パネル200の走査線を駆動する走査線駆動回路の図示を省略している。走査線駆動回路はドライバー100に含まれてもよいし、ドライバー100の外部に設けられてもよい。
【0012】
なお、1つの画素に1回に書き込まれる電圧をデータ電圧と呼ぶこととする。そして、複数の画素が時系列的に駆動されるときに、その各画素に対するデータ電圧が時系列的な信号として信号供給線に出力されるが、この信号供給線への信号をデータ信号と呼ぶこととする。
【0013】
制御回路40は、データ線駆動回路DD1~DD8の各データ線駆動回路に対して、対応する階調データを出力する。また制御回路40は、データ線スイッチを制御する制御信号ENBXを、電気光学パネル200に出力する。
【0014】
データ線駆動回路DD1~DD8は、階調データをデータ電圧に変換し、そのデータ電圧を出力電圧VQ1~VQ8として電気光学パネル200の信号供給線SPL1~SPL8へ出力する。時系列の階調データに応じて出力電圧VQ1~VQ8が変化していくが、その変化する出力電圧VQ1~VQ8による信号が、上述したデータ信号に相当する。
【0015】
電気光学パネル200は、信号供給線SPL1~SPL8と、データ線スイッチSWEP1~SWEP1280と、データ線DL1~DL1280と、を含む。データ線はk×t本であってよい。tは2以上の整数である。ここではWXGAを例にとり、t=160としている。
【0016】
データ線スイッチSWEP1~SWEP1280のうちデータ線スイッチSWEP((j-1)×k+1)~SWEP(j×k)の一端は、信号供給線SPL1~SPL8に接続される。jは160以下の整数である。例えばj=1の場合にはデータ線スイッチSWEP1~SWEP8の一端が信号供給線SPL1~SPL8に接続される。
【0017】
データ線スイッチSWEP1~SWEP1280の各々は、例えばTFT等で構成され、制御信号ENBXに基づいて制御される。TFTはThin Film Transistorの略である。例えば、電気光学パネル200は不図示のスイッチ制御回路を含み、そのスイッチ制御回路が制御信号ENBXに基づいてデータ線スイッチSWEP1~SWEP1280をオン又はオフに制御する。
【0018】
データ線駆動回路DD1~DD8が水平走査期間において160回の駆動を行い、そのj番目の駆動においてデータ線スイッチSWEP((j-1)×k+1)~SWEP(j×k)がオンであり、それ以外のデータ線スイッチがオフである。これにより、j番目の駆動においてデータ線DL((j-1)×k+1)~DL(j×k)が駆動される。データ線駆動回路DD1に着目すると、水平走査期間においてデータ線スイッチSWEP1、SWEP2、・・・、SWEP1273が順次にオンになり、データ線駆動回路DD1がデータ線DL1、DL2、・・・、DL1273を順次に駆動する。
【0019】
図2は、ドライバーの詳細構成例である。ドライバー100は、データ線駆動回路110と、制御回路40とを含む。データ線駆動回路110は、図1のデータ線駆動回路DD1~DD8のうち任意の1つに対応する。
【0020】
データ線駆動回路110は、電荷再分配回路60と、駆動回路70と、可変容量回路30と、検出回路50とを含む。制御回路40は、処理回路42と、インターフェース回路44と、レジスター回路48とを含む。
【0021】
インターフェース回路44は、ドライバー100を制御する表示コントローラー300とドライバー100との間のインターフェース処理を行う。インターフェース回路44は、表示コントローラー300から受信した階調データGD[9:0]を処理回路42に出力する。なお、受信される階調データのビット数は任意であってよい。インターフェース回路44は、例えば、LVDS方式、パラレルRGB方式又はディスプレイポート方式等の画像インターフェース回路である。LVDSは、Low Voltage Differential Signalingの略である。
【0022】
処理回路42は、ドライバー100に電源が投入されたときの初期化処理等において、可変容量回路30の容量値の設定データCSW[4:0]を決定し、その設定データCSW[4:0]をレジスター回路48に記憶させる。処理回路42は、電気光学パネル200を駆動する通常動作時において、レジスター回路48から読み出した設定データCSW[4:0]により可変容量回路30の容量値を設定する。また処理回路42は、階調データGD[9:0]に基づいて、階調データDTH[10:0]を電荷再分配回路60に出力すると共に、階調データDTL[10:0]を駆動回路70に出力する。
【0023】
出力ノードNVQはデータ電圧出力端子TVQに接続されるノードであり、この出力ノードNVQの電圧を出力電圧VQとする。データ電圧出力端子TVQの負荷容量を電気光学パネル側容量CPとする。なお、本実施形態における「接続」は電気的な接続である。電気的な接続とは、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は能動素子等を介した接続であってもよい。
【0024】
電荷再分配回路60は、キャパシターを用いた電荷再分配により、階調データDTH[10:0]に対応する電荷を出力ノードNVQに供給する。その電荷が可変容量回路30と電気光学パネル側容量CPに分配されることで、出力電圧VQが、階調データDTH[10:0]に対応したデータ電圧となる。電荷再分配回路60は、電気光学パネル200を駆動できる高耐圧プロセスの回路素子で構成されている。一例として、電気光学パネル200が高温ポリシリコン型の液晶パネルである場合、電荷再分配回路60の電源電圧は15V~20V程度であり、電荷再分配回路60は、その電源電圧より高い耐圧の回路素子で構成される。
【0025】
電荷再分配回路60が出力した電荷に誤差がある、或いは出力ノードNVQの電荷保存がわずかに成り立たない場合、電荷再分配回路60が出力した電荷による出力電圧VQと、階調データDTH[10:0]に対応した目標電圧との間に誤差が生じる。駆動回路70は、演算増幅器を用いたフィードバック制御により出力電圧VQを目標電圧に補正する。このとき、出力電圧VQと目標電圧の誤差が小さいため、駆動回路70が出力する電荷が少なくて済む。これを利用して、演算増幅器と出力ノードNVQとの間をキャパシターでDCカットしつつ、演算増幅器を低耐圧プロセスの回路素子で構成する。一例として、低耐圧プロセスの耐圧は、高耐圧プロセスの耐圧の1/3~1/10程度である。駆動回路70は、低耐圧プロセスの耐圧より低い電源電圧で動作する。
【0026】
可変容量回路30の容量値決定手法と、可変容量回路30及び検出回路50の構成例について説明する。
【0027】
検出回路50は、所与の検出電圧と出力電圧VQとを比較し、その結果を検出信号DETとして出力する。検出回路50は、例えばコンパレーターである。
【0028】
処理回路42は、所与のデータ電圧に対応した階調データDTH[10:0]をキャパシター駆動回路20に出力する。このとき、上記所与の検出電圧は、出力電圧VQの期待値である所与のデータ電圧と同じ電圧に設定される。処理回路42は、設定データCSW[4:0]の値を順次に変化させることで、可変容量回路30の容量値を順次に変化させる。処理回路42は、各容量値における検出信号DETに基づいて可変容量回路30の容量値を決定する。即ち、処理回路42は、出力電圧VQが所与の検出電圧となる容量値を、検出信号DETに基づいて判断し、その容量値の設定データCSW[4:0]をレジスター回路48に記憶させる。
【0029】
可変容量回路30は、第1~第5調整用キャパシターと第1~第5調整用スイッチとを含む。第1調整用スイッチの一端は出力ノードNVQに接続され、他端は第1調整用キャパシターの一端に接続される。第1調整用キャパシターの他端はグランドノードに接続される。第2~第5調整用キャパシターと第2~第5調整用スイッチについても同様である。第1~第5調整用キャパシターの容量値はバイナリに重み付けされている。第1調整用スイッチはCSW[0]によりオン又はオフに制御される。同様に、第2~第5調整用スイッチはCSW[1]~CSW[4]によりオン又はオフに制御される。
【0030】
以下、電荷再分配回路60、駆動回路70、可変容量回路30及び検出回路50の詳細を説明する。図3は、階調データとデータ電圧の関係を説明する図である。
【0031】
処理回路42は、入力された階調データGD[9:0]を階調データDTH[10:0]に変換する。具体的には、処理回路42は、負極性駆動のとき、階調値0~1023のGD[9:0]を階調値1023~0のDTH[10:0]に変換し、正極性駆動のとき、階調値0~1023のGD[9:0]を階調値1024~2047のDTH[10:0]に変換する。なお図中のXGD[9:0]は、GD[9:0]の各ビットを論理反転したデータである。
【0032】
VSH=0Vは、電荷再分配回路60の低電位側電源電圧である。VDH=15Vは、電荷再分配回路60の高電位側電源電圧である。電気光学パネル200の対向電極に供給されるコモン電圧はVC=7.5Vである。画素に供給されるデータ電圧は、負極性駆動において7.5V~2.5Vであり、正極性駆動において7.5V~12.5Vである。
【0033】
図4は、電荷再分配回路の詳細構成例を示す。なお、以下では、キャパシターの容量値を表す符号として、そのキャパシターの符号と同じ符号を用いる。例えばキャパシターC1の容量値をC1と記載する。
【0034】
キャパシター回路10は、第1~第nキャパシターC1~Cnを含む。キャパシター駆動回路20は、第1~第n駆動回路DR1~DRnを含む。以下ではn=11の例を説明するが、nは2以上の整数であればよい。nは、階調データDTH[10:0]のビット数と同数に設定されればよい。
【0035】
キャパシターCiの一端は、出力ノードNVQに接続され、他端は、キャパシター駆動ノードNDRiに接続される。iは1以上でn=11以下の整数である。キャパシターC1~C10は、バイナリに重み付けされた容量値を有している。具体的にはキャパシターCiの容量値は2(i-1)×C1である。
【0036】
処理回路42は、階調データDTH[10:0]の第iビットDTH[i-1]を駆動回路DRiの入力ノードに出力する。駆動回路DRiは、ビットDTH[i-1]が第1論理レベルのとき第1電圧レベルのキャパシター駆動電圧をキャパシター駆動ノードNDRiに出力し、ビットDTH[i-1]が第2論理レベルのとき第2電圧レベルのキャパシター駆動電圧をキャパシター駆動ノードNDRiに出力する。例えば、第1論理レベルは“0”であり、第2論理レベルは“1”であり、第1電圧レベルは低電位側電源電圧VSHであり、第2電圧レベルは高電位側電源電圧VDHである。駆動回路DRiは、高耐圧プロセスのトランジスターで構成され、電源電圧VDHとVSHで動作する。駆動回路DRiは、例えば、入力された論理レベルを駆動回路DRiの出力電圧レベルにレベルシフトするレベルシフターと、そのレベルシフターの出力をバッファリングするバッファー回路と、で構成される。
【0037】
駆動回路DR1~DR11がキャパシターC1~C11を駆動することで、キャパシターC1~C11と可変容量回路30と電気光学パネル側容量CPとの間で電荷再分配が生じる。そして、その結果として出力ノードNVQにデータ電圧が出力される。
【0038】
電気光学パネル側容量CPは、データ電圧出力端子TVQから見える容量の合計である。例えば、電気光学パネル側容量CPは、プリント基板の寄生容量である基板容量CP1と、電気光学パネル200内の寄生容量であるパネル容量CP2と、を加算したものである。プリント基板は、ドライバー100が実装されると共に電気光学パネル200に接続される基板である。
【0039】
キャパシターC1~C11の容量値の合計がCtot=C1+C2+・・・+C11であり、可変容量回路30の容量値がCFであるとする。一例としては、Ctot/(CF+CP)=2となるようにCFが設定される。このとき、DTH[10:0]の最大階調値2047において、VQ=15V×{Ctot/(Ctot+CF+CP)}+2.5V=10V+2.5V=12.5Vとなる。DTH[10:0]の最小階調値0において、VQ=0V×{Ctot/(Ctot+CF+CP)}+2.5V=0V+2.5V=2.5Vとなる。これにより、図3の例と同じデータ電圧が実現されている。
【0040】
図5は、階調データと、低耐圧の駆動回路における電圧との関係を説明する図である。
【0041】
処理回路42は、入力された階調データGD[9:0]を階調データDTL[10:0]に変換する。DTL[10:0]=DTH[10:0]である。即ち、処理回路42は、負極性駆動のとき、階調値0~1023のGD[9:0]を階調値1023~0のDTL[10:0]に変換し、正極性駆動のとき、階調値0~1023のGD[9:0]を階調値1024~2047のDTL[10:0]に変換する。
【0042】
VSL=0Vは、駆動回路70の低電位側電源電圧である。VDL=1.8Vは、駆動回路70の高電位側電源電圧である。図3のコモン電圧VC=7.5Vに対応する電圧は、VCL=0.9Vである。負極性駆動において画素に供給されるデータ電圧7.5V~2.5Vに対応する電圧は、0.9V~0.4Vであり、正極性駆動において画素に供給されるデータ電圧7.5V~12.5Vに対応する電圧は、0.9V~1.4Vである。
【0043】
2.駆動回路の詳細構成例
図6は、駆動回路の第1詳細構成例である。駆動回路70は、演算増幅器71とD/A変換回路72と出力キャパシターCQと第1フィードバックキャパシターCfaと第2フィードバックキャパシターCfbと抵抗回路90と初期化スイッチSWRとを含む。
【0044】
D/A変換回路72は、階調データDTL[10:0]をD/A変換電圧DAQにD/A変換し、そのD/A変換電圧DAQを演算増幅器71の非反転入力ノードNAPに出力する。階調データDTL[10:0]とD/A変換電圧DAQの対応は図5で説明した通りである。D/A変換回路72は、例えば、電源電圧VDLとVSLの間を複数の電圧に分圧するラダー抵抗と、その複数の電圧から階調データDTL[10:0]に対応した電圧を選択するスイッチ回路と、を含む。
【0045】
演算増幅器71は、低耐圧プロセスのトランジスターで構成されており、電源電圧VDLとVSLで動作する。具体的には、電荷再分配回路60を構成するトランジスターのソースードレイン間距離の長さは、演算増幅器71を含む駆動回路70を構成するトランジスターのソースードレイン間距離の長さよりも長い。または、電荷再分配回路60を構成するトランジスターのゲート絶縁膜の膜厚は、演算増幅器71を含む駆動回路70を構成するトランジスターのゲート絶縁膜の膜厚よりも厚い。但し、上記はトランジスターの耐圧を異ならせる構成の一例であって、駆動回路70を構成するトランジスターの耐圧が、電荷再分配回路60を構成するトランジスターの耐圧よりも低くなるように、各駆動回路のトランジスターが構成されていればよい。
【0046】
出力キャパシターCQの一端は演算増幅器71の出力ノードNAMQに接続され、他端はデータ線駆動回路110の出力ノードNVQに接続される。第1フィードバックキャパシターCfa及び抵抗回路90は、データ線駆動回路110の出力ノードNVQと演算増幅器71の反転入力ノードNANとの間に、直列接続される。抵抗回路90の一端は演算増幅器71の反転入力ノードNANに接続され、他端はノードN1に接続される。第1フィードバックキャパシターCfaの一端はノードN1に接続され、他端はデータ線駆動回路110の出力ノードNVQに接続される。第2フィードバックキャパシターCfbの一端は演算増幅器71の反転入力ノードNANに接続され、他端は低電位側電源電圧VSLのノードに接続される。第2フィードバックキャパシターCfbの容量は、第1フィードバックキャパシターCfaの容量より大きい。なお、第2フィードバックキャパシターCfbの他端は、一定電位が供給される所定電位ノードに接続されていればよい。
【0047】
初期化スイッチSWRの一端は演算増幅器71の反転入力ノードNANに接続され、他端は、基準電圧VREFが供給されるノードNVREFに接続される。基準電圧VREFは、VSLより高くVDLより低い電圧である。ここではVREF=VCL=0.9Vとする。基準電圧VREFは、例えば、ドライバー100に含まれる不図示の電圧生成回路からノードNVREFに供給される。初期化スイッチSWRは、例えば、N型トランジスター、P型トランジスター又はそれらを組み合わせたトランスファーゲートである。
【0048】
図3図5の例において、出力電圧VQの範囲は10Vであり、D/A変換電圧DAQの電圧範囲は1Vである。このとき、第1フィードバックキャパシターCfa及び第2フィードバックキャパシターCfbにより電圧範囲が1/10に分圧されればよいので、Cfb/Cfa=9である。なお、CfbとCfaの比は9に限定されず、電圧範囲の比に応じて適宜に設定されればよい。
【0049】
抵抗回路90は、その抵抗値が可変な可変抵抗回路である。抵抗回路90の抵抗値は、図11で後述するフィードバックループの電圧振動が生じないように、設定されればよい。その抵抗値は、例えば、電気光学パネル200の機種等に応じて可変に設定される。例えば、表示コントローラー300等が、抵抗回路90の抵抗値を示す制御データを、図2のインターフェース回路44を介してレジスター回路48に書き込む。制御回路40は、レジスター回路48に保持される制御データに基づいて抵抗回路90の抵抗値を制御する。或いは、ドライバー100は不図示の不揮発性メモリーを含み、電気光学装置400等の製造時において予め制御データが不揮発性メモリーに書き込まれる。制御回路40は、初期化等において不揮発性メモリーからレジスター回路48に制御データをロードし、制御回路40は、レジスター回路48に保持される制御データに基づいて抵抗回路90の抵抗値を制御する。抵抗回路90は、演算増幅器71を含むフィードバックループの過渡応答において、高周波に対する応答性を下げる役割をもつ。この点の詳細は後述する。なお、上記では抵抗回路90の抵抗値が可変であるとしたが、それに限定されず、固定であってもよい。
【0050】
出力キャパシターCQの容量値は、演算増幅器71の出力電圧AMQがVSL~VDLの範囲内となるように設定されていれば、任意であってよい。例えば、出力キャパシターCQの容量値は、キャパシター回路10と可変容量回路30と電気光学パネル側容量CPの合計の1~10倍程度に設定される。一例として、出力キャパシターCQの容量値が上記合計の4倍である場合に、出力電圧VQの誤差0.1Vを補償するためには、演算増幅器71の出力電圧AMQは0.1V×(5/4)=0.125Vだけ変化すればよい。
【0051】
図7は、駆動回路の第2詳細構成例である。本構成例では、第1詳細構成例に対して抵抗回路90と第1フィードバックキャパシターCfaの接続順が逆になっている。即ち、第1フィードバックキャパシターCfaの一端は演算増幅器71の反転入力ノードNANに接続され、他端はノードN1に接続される。抵抗回路90の一端はノードN1に接続され、他端はデータ線駆動回路110の出力ノードNVQに接続される。抵抗回路90の役割は図6と同様である。
【0052】
図8は、電荷再分配回路と駆動回路の動作を説明する波形例である。本波形例は、抵抗回路90の有無に関わらない基本的な動作を示すものである。図8の例では、階調データDTH[10:0]、DTL[10:0]の階調値が1024、1535、1024と変化したとする。階調値1535に対応する目標電圧は10.0Vである。
【0053】
仮に駆動回路70が無く電荷再分配回路60のみで駆動した場合において、階調値が1024から1535になったとき、出力電圧VQが7.5Vから9.9Vになるとする。目標電圧10.0Vとの差は0.1Vである。以下、この場合における駆動回路70の動作を説明する。
【0054】
D/A変換回路72は、階調値が1024から1535になったとき、D/A変換電圧DAQを0.9Vから1.15Vにする。出力電圧VQは、電荷再分配回路60により7.5Vから9.9Vになるため、演算増幅器71の反転入力ノードNANの電圧VFBは、0.9Vから0.9V+(9.9V-7.5V)/10=1.14Vとなる。演算増幅器71は、VFB=DAQ=1.15Vにするために出力電圧AMQを0.9Vから0.9V+(10.0V-9.9V)×(5/4)=1.025Vにする。これにより、出力電圧VQが目標電圧の10.0Vになり、電圧VFBが1.15Vになる。
【0055】
以下、抵抗回路90の役割について説明する。
【0056】
図9は、電気光学パネルの寄生抵抗及び寄生容量を模式的に示す図である。CVLは信号供給線の寄生容量であり、RSWはデータ線スイッチのオン抵抗である。PXは画素を示し、RGはゲートスイッチのオン抵抗であり、CLCは液晶セルの寄生容量である。CDLはデータ線の寄生容量である。CLCのカップリング先はコモン電圧VCのノードである。CVL及びCDLのカップリング先は、周囲に配置される要素に応じて様々であってよい。データ線の電圧をDVLとする。
【0057】
図10は、抵抗回路を設けない場合における、ドライバーの出力電圧、及び電気光学パネルにおけるデータ線の電圧の過渡的な変化を示す図である。時間t0において電荷再分配回路60が駆動を開始し、時間t2において駆動期間が終了する。時間t0から時間t1までの期間において、出力電圧VQが前回の電圧から今回の目標電圧VTGまで変動した後、時間t1から時間t2までの期間において、出力電圧VQが目標電圧VTGに安定していく。
【0058】
図6で説明したように、演算増幅器71は、高耐圧トランジスターに比べて高い移動度をもつ低耐圧トランジスターで構成されている。これにより、演算増幅器71の増幅率と周波数応答特性が両立されている。しかしながら、演算増幅器71は、その高速な応答特性によって、反転入力ノードNANにフィードバックされた高周波成分を出力側に伝達する。この特性によって、以下に説明するようなフィードバックループにおける電圧振動が生じる。
【0059】
まず駆動開始時には、電荷再分配回路60はキャパシターを用いた電荷再分配によって出力ノードNVQに急速に電荷を供給することで、出力電圧VQを急速に立ち上げ可能である。一方、出力ノードNVQからデータ線への電荷移動は、上述した寄生抵抗及び寄生容量による時定数の影響を受けるので、電荷再分配回路60から出力ノードNVQへの電荷供給に比べると緩やかである。このため、データ線の電圧DVLは、ドライバー100の出力電圧VQに比べると緩やかに上昇する。この電荷移動の差によって、出力電圧VQは一時的に目標電圧VTGをオーバーシュートし、その後に目標電圧VTGに収束していく。
【0060】
抵抗回路90が設けられない場合には、演算増幅器71の反転入力ノードNANが第1フィードバックキャパシターCfaを介して出力ノードNAMQにカップリングされる。出力電圧VQの変動はカップリングにより反転入力ノードNANに伝達されるので、出力電圧VQが目標電圧VTGをオーバーシュートしたとき、フィードバック電圧VFBがD/A変換電圧DAQをオーバーシュートする。そうすると、演算増幅器71が出力ノードNAMQから電荷を排出して出力電圧VQを下げるので、カップリングによりフィードバック電圧VFBが下がり、演算増幅器71が出力ノードNAMQへ電荷を注入して出力電圧VQを上げる。これが繰り返されることで、A1及びA2に示すように、変動期間から安定期間への移行時においてフィードバック電圧VFB及び出力電圧VQが振動する。
【0061】
このようなフィードバックループの電圧振動によって、出力ノードNAMQからデータ線への電荷移動が妨げられるため、データ線の電圧DVLの上昇が妨げられる。具体的には、フィードバック電圧VFBが振動によりD/A変換電圧DAQより高くなると、演算増幅器71が出力ノードNAMQから電荷を排出するので、出力ノードNAMQからデータ線へ移動する電荷量が低下する。これにより、データ線の電圧DVLが目標電圧VTGに達する時間が長くなり、例えば画素への書き込み電圧に誤差が生じる要因となる。
【0062】
図11は、本実施形態の抵抗回路を設けた場合における、ドライバーの出力電圧、及び電気光学パネルにおけるデータ線の電圧の過渡的な変化を示す図である。
【0063】
本実施形態では、出力ノードNAMQから演算増幅器71の反転入力ノードNANへのフィードバック経路において、第1フィードバックキャパシターCfa、抵抗回路90及び第2フィードバックキャパシターCfbがローパスフィルターとして機能する。このため、変動期間から安定期間への移行時において、出力電圧VQがオーバーシュートしても、その高周波成分が演算増幅器71の反転入力ノードNANにフィードバックされにくくなる。これにより、B1に示すように、変動期間から安定期間への移行時において、フィードバック電圧VFBがD/A変換電圧DAQをオーバーシュートせずにD/A変換電圧DAQに漸近していき、フィードバック電圧VFBの振動が抑制される。このため、B2に示すように、出力電圧VQが振動しなくなるので、出力ノードNAMQからデータ線への電荷移動が妨げられなくなる。出力ノードNAMQからデータ線へ移動する電荷量が低下しないので、データ線の電圧DVLが目標電圧VTGに達する時間が図10に比べて短くなる。
【0064】
以上では、抵抗回路90の抵抗値は電気光学パネルの機種等に応じて可変に設定可能であるが、画素の駆動期間においては一定である例を説明した。図12は、画素の駆動期間において抵抗回路の抵抗値を変化させるときの波形例である。時間t0から時間t2までを画素の駆動期間とし、時間t0から時間taまでを第1期間、時間taから時間t2までを第2期間とする。t1<ta<t2である。第1期間の長さは、例えば、データ線の電圧DVLが概ね目標電圧VTGまで上昇するために必要な長さに、設定されている。
【0065】
制御回路40は、抵抗回路90の抵抗値を、第1期間において第1抵抗値RVaに設定し、第2期間において第2抵抗値RVbに設定する。第1抵抗値RVaは第2抵抗値RVbより高い。第1期間において抵抗回路90が高抵抗に設定されることで、フィードバック経路において高周波成分をカットする効果が高くなる。これにより、フィードバックループの電圧振動を効果的に低減できる。一方、高周波がフィードバックされなくなることで、データ線の電圧DVLの上昇スピードが、抵抗回路90の抵抗値を一定にした場合のデータ線の電圧DVL’の上昇スピードに比べて、低下する。第2期間において抵抗回路90の抵抗値が低抵抗に設定されることで、フィードバックループの周波数帯域が高周波側に拡がるため、データ線の電圧DVLが目標電圧VTGに収束しやすくなる。これにより、抵抗回路90の抵抗値が駆動期間において一定である場合に比べて、フィードバックループの電圧振動をより低減しつつ、駆動期間内においてデータ線の電圧DVLを目標電圧VTGに収束できる。
【0066】
図13は、抵抗回路の詳細構成例である。抵抗回路90は、トランスファーゲートTFG1~TFGmを含む。sが1以上m以下の整数であるとする。
【0067】
トランスファーゲートTFGsの一端はノードNAに接続され、他端はノードNBに接続される。図6の例においては、ノードNAが演算増幅器71の反転入力ノードNANであり、ノードNBがノードN1である。図6の例においては、ノードNAがノードN1であり、ノードNBが演算増幅器71の反転入力ノードNANである。トランスファーゲートTFGsは、P型トランジスターとN型トランジスターが並列に接続されたスイッチである。制御回路40は、トランスファーゲートTFGsのN型トランジスターのゲートに制御信号CTGsを出力し、P型トランジスターのゲートに制御信号CTGsの反転信号XCTGsを出力する。
【0068】
トランスファーゲートTFGsのオン抵抗をRONsとすると、RONs=2(s-1)×RON1である。例えば、トランスファーゲートTFG1~TFGmのP型トランジスターのチャネル長は、互いに同じである。トランスファーゲートTFGsのP型トランジスターのチャネル幅をWPsとすると、WPs=(1/2(s-1))×WP1である。トランスファーゲートTFG1~TFGmのN型トランジスターのチャネル長は、互いに同じである。トランスファーゲートTFGsのN型トランジスターのチャネル幅をWNsとすると、WNs=(1/2(s-1))×WN1である。制御回路40は、設定された抵抗値に基づいて各トランスファーゲートをオン又はオフにすることで、抵抗回路90の抵抗値が設定される。
【0069】
なお、上記では抵抗回路90が複数のトランスファーゲートで構成される例を示したが、抵抗回路90の構成は、これに限定されない。例えば、抵抗回路90は、ノードNAとノードNBの間に並列接続された複数のトランジスターで構成されてもよい。各トランジスターはP型トランジスター又はN型トランジスターである。或いは、抵抗回路90はスイッチと抵抗で構成されてもよい。ノードNAとノードNBの間にスイッチ及び抵抗が直列に接続され、それを1セットとしたとき、複数セットがノードNAとノードNBの間に並列に接続される。各セットの抵抗値は、バイナリに重み付けされる。
【0070】
以上に説明した本実施形態において、ドライバー100は、キャパシター駆動回路20とキャパシター回路10と駆動回路70とを含む。キャパシター駆動回路20は、階調データDTH[10:0]に対応する第1~第nキャパシター駆動電圧を第1~第nキャパシター駆動用ノードNDR1~NDRnに出力する。nは2以上の整数である。キャパシター回路10は、電気光学パネル200の信号供給線と、第1~第nキャパシター駆動用ノードNDR1~NDRnとの間に配置される第1~第nキャパシターC1~Cnを有する。駆動回路70は、演算増幅器71と出力キャパシターCQと第1フィードバックキャパシターCfaと第2フィードバックキャパシターCfbとを含み、信号供給線に電気的に接続される。演算増幅器71は、キャパシター駆動回路20を構成するトランジスターの耐圧より低い耐圧のトランジスターにより構成される。出力キャパシターCQは、演算増幅器71の出力ノードNAMQと信号供給線との間に配置される。第1フィードバックキャパシターCfaは、演算増幅器71の反転入力ノードNANと信号供給線との間に配置される。第2フィードバックキャパシターCfbの一端は、演算増幅器71の反転入力ノードNANに電気的に接続される。
【0071】
本実施形態によれば、演算増幅器71の出力ノードNAMQと信号供給線が出力キャパシターCQによりカップリングされ、演算増幅器71の反転入力ノードNANと信号供給線が第1フィードバックキャパシターCfaによりカップリングされる。これにより、演算増幅器71と信号供給線がDC的に非接続になるので、演算増幅器71を、キャパシター駆動回路20を構成するトランジスターの耐圧より低い耐圧のトランジスターにより構成できる。
【0072】
また、第1フィードバックキャパシターCfaと第2フィードバックキャパシターCfbにより信号供給線の電圧が分圧されて演算増幅器71の反転入力ノードNANにフィードバックされる。これにより、信号供給線の電圧よりも低い電圧が演算増幅器71の反転入力ノードNANに印加されるので、演算増幅器71を、キャパシター駆動回路20を構成するトランジスターの耐圧より低い耐圧のトランジスターにより構成できる。
【0073】
また、演算増幅器71を、キャパシター駆動回路20を構成するトランジスターの耐圧より低い耐圧のトランジスターにより構成することで、演算増幅器71を高い移動度のトランジスターで構成できる。これにより、演算増幅器の増幅率と周波数応答特性を両立できる。例えば、高解像化等に伴って駆動速度を速くするためには演算増幅器の周波数応答特性を高くする必要があるが、演算増幅器の増幅率を保ったまま周波数応答特性を高くでき、演算増幅器の消費電力を抑えることが可能になる。
【0074】
また本実施形態では、駆動回路70は抵抗回路90を含む。第1フィードバックキャパシターCfa及び抵抗回路90は、演算増幅器71の反転入力ノードNANと信号供給線との間に直列接続される。
【0075】
上記のように、演算増幅器71が低耐圧トランジスターで構成されることで、高速な応答特性を獲得している。図10で説明したように、演算増幅器71の高速な応答特性によって、演算増幅器71を含むフィードバックループの電圧振動が生じ、画素の書き込み時間が長くなるおそれがある。本実施形態によれば、信号供給線から演算増幅器71の反転入力ノードNANへのフィードバック経路において、第1フィードバックキャパシターCfa、抵抗回路90及び第2フィードバックキャパシターCfbがローパスフィルターとして機能する。これにより、演算増幅器71を含むフィードバックループの電圧振動が抑制されるので、抵抗回路90を設けない場合に比べて画素の書き込み時間を短縮できる。
【0076】
また本実施形態では、図6で説明したように、抵抗回路90の一端が演算増幅器71の反転入力ノードNANに電気的に接続される。第1フィードバックキャパシターCfaの一端が抵抗回路90の他端に接続され、他端が信号供給線に電気的に接続される。
【0077】
また本実施形態では、図7で説明したように、第1フィードバックキャパシターCfaの一端が演算増幅器71の反転入力ノードNANに電気的に接続されてもよい。抵抗回路90の一端が第1フィードバックキャパシターCfaの他端に接続され、他端が信号供給線に電気的に接続されてもよい。
【0078】
これらの実施形態によれば、第1フィードバックキャパシターCfa及び抵抗回路90を、演算増幅器71の反転入力ノードNANと信号供給線との間に直列接続できる。
【0079】
また本実施形態では、抵抗回路90は、可変抵抗回路である。
【0080】
抵抗回路90の抵抗値が高いと、演算増幅器71を含むフィードバックループの電圧振動が効果的に抑制される。一方、電荷再分配回路60による駆動の電荷誤差を演算増幅器71が補償するが、抵抗回路90の抵抗値が高いと、電荷補償の速度が低下する。画素に対して高速に且つ精度良くデータ電圧を書き込むには、演算増幅器71を含むフィードバックループの電圧振動を抑えることと、電荷補償の速度とが両立される抵抗回路90の抵抗値となっていることが、望ましい。適切な抵抗回路90の抵抗値は、例えば電気光学パネル200の機種等によって変化する可能性がある。抵抗回路90の抵抗値が可変であることで、電気光学パネル200の機種等に応じた適切な抵抗回路90の抵抗値が設定可能になる。
【0081】
また本実施形態では、抵抗回路90は複数のトランジスターを含む。複数のトランジスターは、第1フィードバックキャパシターCfaと、演算増幅器71の反転入力ノードNAN又は信号供給線との間に並列接続される。抵抗回路90の抵抗値は、複数のトランジスターのうちオンであるトランジスターのオン抵抗により設定される。
【0082】
図13の例では、トランスファーゲートTFG1~TFGmに含まれるトランジスターが、複数のトランジスターに該当する。或いは、第1フィードバックキャパシターCfaと、演算増幅器71の反転入力ノードNAN又は信号供給線との間に、複数のP型トランジスター、又は複数のN型トランジスターが並列接続されてもよい。
【0083】
また本実施形態では、図12で説明したように、抵抗回路90は、キャパシター駆動回路20の駆動開始タイミングから第1期間の間、第1抵抗値RVaに設定されてもよい。抵抗回路90は、第1期間の後の第2期間の間、第1抵抗値RVaより低い第2抵抗値RVbに設定されてもよい。
【0084】
本実施形態によれば、第1期間において抵抗回路90が高抵抗に設定されることで、フィードバック経路において高周波成分をカットする効果が高くなる。これにより、フィードバックループの電圧振動を効果的に低減できる。第2期間において抵抗回路90の抵抗値が低抵抗に設定されることで、フィードバックループの周波数帯域が高周波側に拡がるため、データ線の電圧DVLが目標電圧VTGに収束しやすくなる。これにより、フィードバックループの電圧振動を効果的に低減しつつ、駆動期間内において、より正確な画素へのデータ電圧書き込みが可能になる。
【0085】
また本実施形態において、電気光学装置400は、ドライバー100と電気光学パネル200とを含む。電気光学パネル200は、第1画素と、第1画素に電気的に接続される第1データ線と、第1データ線と信号供給線との間に配置される第1スイッチと、を含む。信号供給線の容量、第1データ線の容量、及び第1スイッチのオン抵抗による時定数をτaとする。抵抗回路90の抵抗値、第1フィードバックキャパシターCfaの容量値、及び第2フィードバックキャパシターCfbの容量値による時定数をτbとする。このとき、τb≧τaである。
【0086】
図1の例において、第1データ線は、データ線DL1~DL1280のうち任意のデータ線であってよい。例えば第1データ線がデータ線DL1であるとき、第1画素は、第1データ線に接続される画素であり、第1スイッチはデータ線スイッチSWEP1である。図9で説明したように、信号供給線からデータ線への電荷移動の時定数τaは、信号供給線の容量CVL、第1データ線の容量CLC、CDL、及び第1スイッチのオン抵抗RSWによって決まる。また図6又は図7の構成例において、信号供給線から演算増幅器71の反転入力ノードNANへのフィードバックの時定数τbは、抵抗回路90の抵抗値、第1フィードバックキャパシターCfaの容量値、及び第2フィードバックキャパシターCfbの容量値によって決まる。
【0087】
図10等で説明したように、ドライバー100が信号供給線に出力する電圧VQの変化は、データ線の電圧変化より急峻である。本実施形態によれば、τb≧τaとしたことで、データ線の電圧変化よりも、フィードバック電圧VFBの電圧変化が緩やかになる。これにより、電圧VQの高周波成分が演算増幅器71の反転入力ノードNANにフィードバックされにくくなるので、フィードバックループにおける電圧振動が抑制される。
【0088】
3.電子機器
図14は、本実施形態のドライバーを含む電子機器の構成例である。本実施形態の電子機器として、表示装置を搭載する種々の電子機器を想定できる。例えば、電子器機は、プロジェクター、テレビション装置、情報処理装置、携帯型情報端末、カーナビゲーションシステム、又は携帯型ゲーム端末等である。
【0089】
電子機器500は、電気光学装置400、表示コントローラー300と、処理装置310と、記憶部320と、ユーザーインターフェース部330と、データインターフェース部340とを含む。電気光学装置400は、ドライバー100と電気光学パネル200とを含む。
【0090】
電気光学パネル200は例えばマトリックス型の液晶表示パネルである。或は、電気光学パネル200は自発光素子を用いたEL表示パネルであってもよい。ELはElectro-Luminescenceの略である。ユーザーインターフェース部330は、ユーザーからの種々の操作を受け付けるインターフェース部である。ユーザーインターフェース部330は、例えば、ボタン、マウス、キーボード、又は電気光学パネル200に装着されたタッチパネル等で構成される。データインターフェース部340は、画像データ又は制御データの入出力を行うインターフェース部である。データインターフェース部340は、例えば、USB等の有線通信インターフェース、或いは、無線LAN等の無線通信インターフェースである。記憶部320は、データインターフェース部340から入力された画像データを記憶する。或は、記憶部320は、処理装置310又は表示コントローラー300のワーキングメモリーとして機能する。処理装置310は、電子機器の各部の制御処理や種々のデータ処理を行う。処理装置310は、例えば、CPU又はマイクロコンピューター等のプロセッサーである。表示コントローラー300はドライバー100の制御処理を行う。例えば、表示コントローラー300は、データインターフェース部340又は記憶部320から転送された画像データを、ドライバー100が受け付け可能な形式に変換し、その変換された画像データをドライバー100へ出力する。ドライバー100は、表示コントローラー300から転送された画像データに基づいて電気光学パネル200を駆動する。
【0091】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また、データ線駆動回路、制御回路、ドライバー、電気光学パネル、電気光学装置及び電子機器等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0092】
10…キャパシター回路、20…キャパシター駆動回路、30…可変容量回路、40…制御回路、42…処理回路、44…インターフェース回路、48…レジスター回路、50…検出回路、60…電荷再分配回路、70…駆動回路、71…演算増幅器、72…D/A変換回路、90…抵抗回路、100…ドライバー、110…データ線駆動回路、200…電気光学パネル、300…表示コントローラー、310…処理装置、320…記憶部、330…ユーザーインターフェース部、340…データインターフェース部、400…電気光学装置、500…電子機器、C1~C11…キャパシター、CQ…出力キャパシター、Cfa…第1フィードバックキャパシター、Cfb…第2フィードバックキャパシター、DL1~DL1280…データ線、DTH[10:0],DTL[10:0]…階調データ、DVL…データ線の電圧、NDR1~NDR11…キャパシター駆動用ノード、RVa…第1抵抗値、RVb…第2抵抗値、SPL1~SPL8…信号供給線、VFB…フィードバック電圧、VTG…目標電圧、VQ…出力電圧
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