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特開2024-134637情報処理装置、脈波算出方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134637
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】情報処理装置、脈波算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044926
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】富澤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】足立 佳久
(72)【発明者】
【氏名】奥村 哲也
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AB06
4C017AC27
4C017BC11
4C017FF15
(57)【要約】
【課題】生体が移動することに起因して脈波信号にノイズが含まれることを抑制できる情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、生体を撮像した動画像を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する関心領域設定部と、前記動画像を構成する第1フレームの画像において、前記第1フレームの画像を含む複数の第2フレームの画像について設定された複数の関心領域の位置における画素の画素値の複数の第1代表値を算出する画素値算出部と、前記複数の第1代表値を合成して前記第1フレームについての第2代表値を算出する画素値合成部と、前記第2代表値の時間変化から脈波信号を算出する脈波算出部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を撮像した動画像を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する関心領域設定部と、
前記動画像を構成する第1フレームの画像において、前記第1フレームの画像を含む複数の第2フレームの画像について設定された複数の関心領域の位置における画素の画素値の複数の第1代表値を算出する画素値算出部と、
前記複数の第1代表値を合成して前記第1フレームについての第2代表値を算出する画素値合成部と、
前記第2代表値の時間変化から脈波信号を算出する脈波算出部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記生体を撮像して前記動画像を取得する撮像部
をさらに備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2代表値は、
前記第1フレームについて前記複数の第2フレームが選択された場合、前記画素値合成部によって算出され、前記第1フレームについて前記複数の第2フレームが選択されない場合、前記第1フレームの画像について設定された関心領域の位置における画素の画素値の代表値である
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数の第2フレームの画像は、所定時間内に撮像された複数の画像を示す
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記複数の第2フレームの画像は、連続して撮像された複数の画像を示す
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記複数の第2フレームの画像は、前記第1フレームの画像と、前記第1フレームよりも前に撮像された少なくとも一のフレームの画像とを示す
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記複数の第2フレームの画像は、前記第1フレームの画像と、前記第1フレームよりも後に撮像された少なくとも一のフレームの画像とを示す
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記画素値合成部は、前記複数の第1代表値それぞれについて重み付けし、重み付けされた複数の第1代表値を合成して前記第2代表値を算出する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第1フレームの画像について設定された第1関心領域と、前記複数の第2フレームのうち第1フレームとは異なるフレームの画像について設定された第2関心領域との間の移動量を算出する移動量算出部
をさらに備え、
前記画素値合成部は、前記複数の第1代表値それぞれについて前記移動量に応じて重み付けする
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記移動量は、前記第1関心領域と前記第2関心領域との間の位置の差、前記第1関心領域と前記第2関心領域との間の面積の差、及び前記第1関心領域と前記第2関心領域との間の回転角度からなる群より選択される少なくともいずれかに基づいて算出される
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記複数の第2フレームの画像は、前記移動量に応じて決定された時間内に撮像された複数の画像を示す
請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項12】
生体を撮像した動画像を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する工程と、
前記動画像を構成する第1フレームの画像において、前記第1フレームの画像を含む複数の第2フレームの画像について設定された複数の関心領域の位置における画素の画素値の複数の第1代表値を算出する工程と、
前記複数の第1代表値を合成して前記第1フレームについての第2代表値を算出する工程と、
前記第2代表値の時間変化から脈波信号を算出する工程と、
を含む脈波算出方法。
【請求項13】
コンピュータに、
生体を撮像した動画像を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する機能と、
前記動画像を構成する第1フレームの画像において、前記第1フレームの画像を含む複数の第2フレームの画像について設定された複数の関心領域の位置における画素の画素値の複数の第1代表値を算出する機能と、
前記複数の第1代表値を合成して前記第1フレームについての第2代表値を算出する機能と、
前記第2代表値の時間変化から脈波信号を算出する機能と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、脈波算出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、人間の顔の映像から脈波を算出する際、映像の各フレームで顔を検出し、脈波精度を低下させるノイズ源を特定し、関心領域と関心領域を分割したサブ領域を設定し、サブ領域ごとに算出した脈波信号をノイズ源の情報を使って重み付けしてノイズ抑制脈波信号を形成する技術を開示する。特許文献1に開示された技術においては、剛体運動又は非剛体運動が発生したと判定した場合、剛体運動又は非剛体運動はノイズ源であると特定し、関心領域の中で動きがあった部分の画素を使用せずに脈波を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2019/203106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術においては、撮像対象である生体が移動して剛体運動又は非剛体運動が発生したと判定した場合、生体が移動していない場合よりも関心領域内で使用される画素数が減少する。脈波を算出するために使用される関心領域内の画素数が減少した場合、S/N比が低下するため、データ全体でのノイズが増加するおそれがある。また、特許文献1に開示された技術では、生体が移動したか否かに応じて関心領域内で画素数が変化するため、算出される脈波信号においてノイズが含まれるおそれがある。そこで、本開示の一態様は、生体が移動することに起因して脈波信号にノイズが含まれることを抑制できる情報処理装置、脈波算出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態に係る情報処理装置は、生体を撮像した動画像を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する関心領域設定部と、前記動画像を構成する第1フレームの画像において、前記第1フレームの画像を含む複数の第2フレームの画像について設定された複数の関心領域の位置における画素の画素値の複数の第1代表値を算出する画素値算出部と、前記複数の第1代表値を合成して前記第1フレームについての第2代表値を算出する画素値合成部と、前記第2代表値の時間変化から脈波信号を算出する脈波算出部と、を備える。
【0006】
本開示の一形態に係る脈波算出方法は、生体を撮像した動画像を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する工程と、前記動画像を構成する第1フレームの画像において、前記第1フレームの画像を含む複数の第2フレームの画像について設定された複数の関心領域の位置における画素の画素値の複数の第1代表値を算出する工程と、前記複数の第1代表値を合成して前記第1フレームについての第2代表値を算出する工程と、前記第2代表値の時間変化から脈波信号を算出する工程と、を含む。
【0007】
本開示の一形態に係るプログラムは、コンピュータに、生体を撮像した動画像を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する機能と、前記動画像を構成する第1フレームの画像において、前記第1フレームの画像を含む複数の第2フレームの画像について設定された複数の関心領域の位置における画素の画素値の複数の第1代表値を算出する機能と、前記複数の第1代表値を合成して前記第1フレームについての第2代表値を算出する機能と、前記第2代表値の時間変化から脈波信号を算出する機能と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】情報処理装置の使用態様の一例を示す図である。
図2】第一実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】第一実施形態に係る情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4A】5つの第2フレームの画像における関心領域のそれぞれの位置の一例を示す図である。
図4B】第1フレームの画像における、図4Aに例示する5つの関心領域それぞれの位置の一例を示す図である。
図5】第2代表値の時間変化を示す時系列信号の一例を示す図である。
図6図5に例示する時系列信号から算出された脈波信号の一例を示す図である。
図7】第二実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8】第二実施形態に係る情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図9図8に続き、第二実施形態に係る情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第一実施形態)
図1図6を参照して、第一実施形態について説明する。なお、図面については、同一又は同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、情報処理装置100の使用態様の一例を示す図である。図1に例示するように、情報処理装置100は、撮像部101を備える。
【0011】
情報処理装置100は、撮像部101によって取得された画像から脈波を示す脈波信号を算出する。例えば、情報処理装置100は、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末、脈波測定専用端末等である。本明細書において、脈波とは、体表の同一の位置に関して、画像に含まれる画素の画素値を示す時系列の信号から算出される、血管の容積の変化を示す時系列の信号である。本明細書において、画素値は、画像に含まれる画素の明るさを示す情報であって、例えば、R(Red)、G(Green)、B(Blue)ごとの画素の画素値または画素の輝度値である。
【0012】
撮像部101は、生体102を撮像して動画像211(図2参照)を取得する。動画像211は、生体102の体表の像を含む。例えば、撮像部101は、CCD(Charged Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサによって構成される。撮像部101は、RGBのフィルタを含むカメラ用のイメージセンサによって構成されてもよい。
【0013】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置100は、撮像部101と、記憶部201と、制御部202とを備える。
【0014】
撮像部101は、生体102を撮像して動画像211を取得する。
【0015】
記憶部201は、各種データ、プログラム等を記録可能な記録媒体であり、例えば、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、半導体メモリ等により構成される。
【0016】
制御部202は、記憶部201に格納されるプログラム及びデータに従って、各種処理を実行する。制御部202は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって実現される。
【0017】
制御部202は、関心領域設定部203と、画素値算出部204と、画素値合成部205と、脈波算出部206とを備える。
【0018】
関心領域設定部203は、動画像211を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する。関心領域は、体表の像に設定される。例えば、体表の像は、顔の像、頬の像、額の像、掌の像、手首の像、足の裏の像等である。そして、関心領域設定部203は、動画像211を構成する各フレームの画像について、関心領域情報212と識別情報213との組を、画素値算出部204へ出力する。関心領域情報212は、動画像211を構成する各フレームの画像について、関心領域を示す座標を示す。識別情報213は、関心領域が設定されたフレームを識別する情報である。
【0019】
画素値算出部204は、動画像211を構成する第1フレームの画像において、第1フレームの画像を含む複数の第2フレームの画像について設定された複数の関心領域の位置における画素の画素値の複数の第1代表値214を算出する。画素値算出部204は、第1フレームについて複数の第2フレームが選択された場合、複数の第1代表値214と複数の識別情報215との組を、画素値合成部205へ出力する。複数の識別情報215は、第1フレームと複数の第2フレームとを識別する情報である。
【0020】
また、第1フレームについて複数の第2フレームが選択されない場合、画素値算出部204は、第1フレームの画像について設定された関心領域の位置における画素の画素値の代表値を、第2代表値216として算出する。そして、第1フレームについて複数の第2フレームが選択されない場合、画素値算出部204は、第2代表値216と識別情報217との組を、脈波算出部206へ出力する。識別情報217は、第1フレームを識別する情報である。
【0021】
画素値合成部205は、複数の第1代表値214を合成して第1フレームについての第2代表値216を算出する。画素値合成部205は、第2代表値216と、識別情報217との組を、脈波算出部206へ出力する。
【0022】
脈波算出部206は、第2代表値216の時間変化から脈波信号を算出する。
【0023】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0024】
ステップS301において撮像部101は、生体102を撮像して動画像211を取得する。撮像部101は、取得された動画像211を構成する各フレームの画像を、関心領域設定部203と画素値算出部204とへ出力する。なお、情報処理装置100は、撮像部101とは異なる装置から、動画像211を取得してもよい。つまり、撮像部101とは異なる装置が生体102を撮像して動画像211を取得してもよい。そして、撮像部101とは異なる装置は、取得した動画像211を情報処理装置100に送信してもよい。
【0025】
ステップS302において関心領域設定部203は、動画像211を構成する各フレームの画像について、関心領域の位置を設定する。そして、関心領域設定部203は、動画像211を構成する各フレームの画像について、関心領域情報212と識別情報213との組を、画素値算出部204へ出力する。例えば、識別情報213は、動画像211を構成する各フレームの通し番号を示す。または、識別情報213は、動画像211を構成する各フレームが取得された時点について、撮像部101が撮像処理を開始してからの経過時間を示してもよい。または、識別情報213は、動画像211を構成する各フレームが取得された時刻を示してもよい。
【0026】
例えば、関心領域設定部203は、動画像211を構成するフレームの画像に顔の像が含まれる場合、目、鼻、口等の特徴点を検出することにより、動画像211を構成するフレームの画像に顔の像が含まれるか否かを判定する。例えば、関心領域設定部203は、頬の像の領域を関心領域として設定するとする。その場合、関心領域設定部203は、動画像211を構成するフレームの画像に頬の像が含まれる場合、検出された頬の像の位置に関心領域を設定する。
【0027】
例えば、関心領域設定部203は、動画像211を構成する各フレームの画像について、頬の像を検出することにより、関心領域の位置を設定する。または、関心領域設定部203は、動画像211を構成する一つのフレームの画像について、関心領域を設定した場合、当該一つのフレーム以降のフレームの画像については、物体追跡技術によって関心領域を追跡して、関心領域の位置を設定してもよい。
【0028】
例えば、関心領域の形状は、直線で囲まれた多角形でもよいし、曲線で囲まれた形状でもよい。または、関心領域の形状は、生体の部位の形状に合わせて決められた形状であってもよい。例えば、関心領域設定部203が関心領域を多角形で設定する場合、関心領域情報212は、関心領域を示す多角形の頂点の座標を示す。また、例えば、関心領域設定部203が関心領域を円で設定する場合、関心領域情報212は、関心領域を示す円の中心の座標と、関心領域を示す半径の長さとを示す。
【0029】
または、関心領域情報212は、動画像211を構成する各フレームの画像について、論理値行列を示されてもよい。関心領域情報212により示される論理値行列は、画像に含まれる各画素が、関心領域に含まれるか否かを示す。つまり、関心領域情報212により示される論理値行列は、動画像を構成するフレームの画像と同じサイズの行列であり、関心領域の位置を示す。
【0030】
ステップS303において画素値算出部204は、動画像211を構成する複数のフレームから時系列順に第1フレームを選択する。
【0031】
ステップS304において画素値算出部204は、動画像211を構成する複数のフレームから、ステップS303で選択された第1フレームを含む複数の第2フレームを選択できるか否かを判定する。ここで、複数の第2フレームは、第1フレームの画像を含み、所定時間内に撮像された複数の画像を示すとする。その場合、画素値算出部204は、第1フレームの画像を含み、且つ所定時間内に撮像された複数のフレームの画像を選択できるか否かを判定する。
【0032】
または、複数の第2フレームの画像は、第1フレームの画像を含み、連続して撮像された複数の画像を、複数の第2フレームの画像を示すとする。その場合、画素値算出部204は、第1フレームの画像を含み、且つ連続して所定時間内に撮像された複数のフレームの画像を選択できるか否かを判定する。
【0033】
また、例えば、複数の第2フレームの画像は、第1フレームの画像と、第1フレームよりも前に撮像された少なくとも一のフレームの画像とを示すとする。そして、第1フレームが、動画像211を構成する複数のフレームの画像のうち、最初に撮像されたフレームの画像を示すとする。その場合、画素値算出部204は、動画像211を構成する複数のフレームから複数の第2フレームを選択できない。
【0034】
また、例えば、複数の第2フレームの画像は、第1フレームの画像と、第1フレームよりも後に撮像された少なくとも一のフレームの画像とを示すとする。そして、第1フレームが、動画像211を構成する複数のフレームの画像のうち、最後に撮像されたフレームの画像を示すとする。その場合、画素値算出部204は、動画像211を構成する複数のフレームから第1フレームを含む複数の第2フレームを選択できない。
【0035】
ステップS304において複数の第2フレームを選択できない場合、ステップS305において画素値算出部204は、第1フレームの画像において、第1フレームの画像で設定された関心領域の位置における画素の画素値の第2代表値216を算出する。例えば、撮像部101が、RGBのフィルタを含むカメラ用のイメージセンサによって構成される場合、ステップS305において画素値算出部204は、第1フレームの画像において、R、G、Bそれぞれの画素について画素値の第2代表値216を算出する。そして、画素値算出部204は、第2代表値216と識別情報217との組を、脈波算出部206へ出力する。識別情報217は、第1フレームを識別する情報である。第2代表値216は、関心領域の各画素の画素値の平均値、中央値、最大値、最小値等である。
【0036】
一方、ステップS304において複数の第2フレームを選択できる場合、ステップS306において画素値算出部204は、第1フレームの画像において、複数の第2フレームの画像で設定された複数の関心領域それぞれの位置における画素の画素値の複数の第1代表値214を算出する。
【0037】
例えば、撮像部101が、RGBのフィルタを含むカメラ用のイメージセンサによって構成される場合、ステップS306において画素値算出部204は、第1フレームの画像において、複数の第2フレームの画像で設定された複数の関心領域それぞれの位置におけるR、G、Bそれぞれの画素について複数の第1代表値214を算出する。例えば、第2フレームのフレーム数が10フレームであるとする。その場合、第1フレームの画像において、第2フレームである10フレームの画像で設定された10個の関心領域が設定される。そして、画素値算出部204は、R、G、Bそれぞれの画素について、設定された10個の関心領域それぞれの位置における画素の画素値から10個の第1代表値214を算出する。そして、画素値算出部204は、複数の第1代表値214と識別情報215との組を、画素値合成部205へ出力する。識別情報215は、第1フレームと複数の第2フレームとを識別する情報である。
【0038】
ステップS307において画素値合成部205は、同一の第1フレームの画像において算出された複数の第1代表値214を合成して、当該第1フレームについての第2代表値216を算出する。ステップS307で算出される第2代表値216は、複数の第1代表値214の平均値、中央値、最大値、最小値等である。
【0039】
例えば、撮像部101が、RGBのフィルタを含むカメラ用のイメージセンサによって構成される場合、ステップS307において画素値合成部205は、第1フレームの画像において、R、G、Bそれぞれの画素について画素値の第2代表値216を算出する。例えば、第2フレームのフレーム数が10フレームである場合、画素値算出部204は、R、G、Bそれぞれの画素について、10個の第1代表値214を算出する。その場合、画素値合成部205は、R、G、Bそれぞれの画素について、算出された10個の第1代表値214を合成して第2代表値216を算出する。または、画素値合成部205は、複数の第1代表値214それぞれについて重み付けし、重み付けされた複数の第1代表値214を合成して第2代表値216を算出してもよい。
【0040】
ステップS308において画素値算出部204は、動画像211を構成する各フレームを第1フレームとして選択したか否かを判定する。ステップS308において動画像211を構成する各フレームが第1フレームとして選択されていない場合、制御部202は、処理をステップS303に戻す。一方、ステップS308において動画像211を構成する各フレームが第1フレームとして選択されている場合、制御部202は、処理をステップS309に移行する。
【0041】
ステップS309において脈波算出部206は、第2代表値216の時間変化から脈波信号を算出する。具体的には、脈波算出部206は、第2代表値216の時間変化から、脈波信号を算出する。例えば、脈波算出部206は、主成分分析、独立成分分析等の多変量解析により第2代表値216の時間変化を示す信号を処理し、処理された結果を脈波信号として算出する。
【0042】
例えば、画素値合成部205が、R、G、Bそれぞれの画素について複数の第1代表値214を合成して、第2代表値216を算出した場合、脈波算出部206は、R、G、Bそれぞれの画素について第2代表値216の時系列信号を算出する。つまり、画素値合成部205が、R、G、Bそれぞれの画素について第2代表値216を算出した場合、脈波算出部206は、第2代表値216の時間変化を示す3つの時系列信号を算出する。そして、脈波算出部206は、算出された3つの時系列信号から脈波信号を算出する。
【0043】
例えば、画素値算出部204が、第1フレームの画像Ftと、第1フレームよりも前に撮像された少なくとも一のフレームの画像とを、複数の第2フレームの画像として選択するとする。その場合、ステップS309において脈波算出部206は、動画像211を構成する複数のフレームの画像のうち、最初に撮像されたフレームの画像については、ステップS304で算出された第2代表値216を使用し、2フレーム目以降のフレームの画像については、ステップS307で算出された第2代表値216を使用する。
【0044】
図4Aは、f-4番目のフレームからf番目のフレームまでの5つの第2フレームの画像における関心領域400~404のそれぞれの位置の一例を示す。図4Bは、f番目のフレームである第1フレームの画像における、図4Aに例示する関心領域400~404それぞれの位置の一例を示す。
【0045】
例えば、f-4番目のフレームの画像で設定された関心領域400が矩形であるとする。そして、関心領域400において、左上の頂点の座標P1が(x1,y1)であり、右下の頂点の座標P2が(x2,y2)であるとする。その場合、画素値算出部204は、f番目のフレームの画像において、左上の頂点の座標P1が(x1,y1)であり、右下の頂点の座標P2が(x2,y2)を有する矩形の関心領域の位置の画素の画素値の第1代表値214を算出する。同様に、f-3番目のフレームからf番目のフレームで設定された関心領域401から関心領域404の位置の画素の画素値の4つの第1代表値214を算出する。そして、画素値合成部205は、関心領域400から関心領域404の位置の画素の画素値の5つの第1代表値214の第2代表値216を算出する。
【0046】
図5は、第2代表値216の時間変化を示す時系列信号501の一例を示す図である。さらに、図5は、比較例として、動画像を構成する各フレームの画像で設定された関心領域の位置における画素の画素値の代表値の時間変化を示す時系列信号502の一例を示す。
【0047】
例えば、生体102がわずかに動いたために、関心領域の位置が、直前のフレームで設定された関心領域の位置から1画素移動したとする。その場合、関心領域の位置が1画素移動することで、関心領域に含まれる画素の画素値の分布が急激に変化し得る。関心領域に含まれる画素の画素値の分布が急激に変化した場合、時系列信号502における期間T503に例示するように、関心領域の位置における画素の画素値の代表値が、急激に変化する。
【0048】
一方、時系列信号501においては、期間T503において、時系列信号502よりも第2代表値216の変化が緩やかである。つまり、情報処理装置100は、画素値の代表値が急激に変化することを抑制できる。
【0049】
図6は、図5に例示する時系列信号501から算出された脈波信号601の一例を示す図である。さらに、図6は、比較例として、図5に例示する時系列信号502から算出された脈波信号602の一例を示す。図6に例示する期間T603は、図5に例示する期間T503と同一の期間である。
【0050】
関心領域の位置における画素の画素値の代表値が急激に変化することは、代表値の時間変化から算出される脈波信号のノイズの原因となるおそれがある。例えば、時系列信号502における期間T503に例示するように関心領域の位置における画素の画素値の代表値が急激に変化した場合、期間T603における脈波信号602は、期間T603における脈波信号601よりも急激な変化を示す。一方、情報処理装置100は、複数の第1代表値214を合成して算出された第2代表値216の時間変化から脈波信号を算出する。これにより、情報処理装置100は、生体102がわずかに移動することに起因する関心領域内の画素の画素値の変動により、算出される脈波信号にノイズが含まれることを抑制できる。
【0051】
(第二実施形態)
図7図9を参照して、第二実施形態について説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。他の実施形態と実質的に共通の機能を有する構成及び処理を共通の符号で参照して説明を省略し、他の実施形態と異なる点を説明する。
【0052】
図7は、本実施形態に係る情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。図7に例示する情報処理装置100と、図2に例示する情報処理装置100との相違点は、図7に例示する情報処理装置100は、移動量算出部701を備える点にある。
【0053】
移動量算出部701は、第1フレームの画像について設定された第1関心領域と、複数の第2フレームのうち第1フレームとは異なるフレームの画像について設定された第2関心領域との間の移動量702を算出する。移動量算出部701は、複数の第2フレームのうち第1フレームとは異なる各フレームについての移動量702と識別情報703との組を、画素値合成部205へ出力する。識別情報703は、移動量702を算出するために使用された第2関心領域が設定されたフレームを識別する情報である。移動量702は、第1関心領域と第2関心領域との間の位置の差、第1関心領域と第2関心領域との間の面積の差、及び第1関心領域と第2関心領域との間の回転角度からなる群より選択される少なくともいずれかに基づいて算出される。
【0054】
本実施形態に係る画素値合成部205は、複数の第1代表値214それぞれについて移動量702に応じて重み付けする。なお、複数の第2フレームの画像は、移動量702に応じて決定された時間内に撮像された複数の画像を示してもよい。
【0055】
図8は、本実施形態に係る情報処理装置100の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS801~ステップS804の処理は、図3に例示するステップS301~ステップS304の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0056】
ステップS804において複数の第2フレームを選択できない場合、制御部202は、処理をステップS805に移行する。ステップS805の処理は、図3に例示するステップS305と同様であるため、詳細な説明は省略する。そして、制御部202は、処理をステップS806に移行する。ステップS806~ステップS807の処理は、図3に例示するステップS308~ステップS309の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。一方、ステップS804において複数の第2フレームを選択できる場合、制御部202は、処理を図9に例示するステップS901に移行する。
【0057】
次に、図9を参照しながら、本実施形態に係る情報処理装置100の動作について引き続き説明する。
【0058】
ステップS901において移動量算出部701は、図8に例示するステップS803で選択された第1フレームの画像について設定された第1関心領域と、図8に例示するステップS804で選択された複数の第2フレームのうち第1フレームとは異なるフレームの画像について設定された第2関心領域との間の移動量702を算出する。つまり、移動量算出部701は、複数の第2フレームのうち第1フレームとは異なる各フレームについて、第1関心領域と第2関心領域との間の移動量702を算出する。そして、移動量算出部701は、複数の第2フレームのうち第1フレームとは異なる各フレームについての移動量702と識別情報703との組を、画素値合成部205へ出力する。識別情報703は、移動量702が算出されたフレームを識別する情報である。
【0059】
移動量702は、第1関心領域と第2関心領域との間の位置の差、第1関心領域と第2関心領域との間の面積の差、及び第1関心領域と第2関心領域との間の回転角度からなる群より選択される少なくともいずれかに基づいて算出される。
【0060】
例えば、第1関心領域と第2関心領域との間の位置の差とは、第1関心領域の中心の座標と、第2関心領域の中心の座標間の距離である。例えば、第1関心領域が多角形である場合、第1関心領域の中心とは、第1関心領域の重心である。同様に、第2関心領域が多角形である場合、第2関心領域の中心とは、第2関心領域の重心である。
【0061】
また、例えば、第1関心領域と第2関心領域との間の面積の差とは、第1関心領域の面積と、第2関心領域の面積との差分値である。または、第1関心領域と第2関心領域との間の面積の差とは、第1関心領域の面積に対する第2関心領域の面積の比率を示してもよい。
【0062】
また、例えば、第1関心領域と第2関心領域との間の回転角度とは、第1関心領域に含まれる画素と、第2関心領域に含まれる画素とにおける対応画素のオプティカルフロー等から算出される回転角度である。なお、移動量算出部701は、第1関心領域と第2関心領域との間の回転角度を算出できればよく、算出方法の詳細は問わない。
【0063】
ステップS902において画素値算出部204は、第1フレームの画像において、複数の第2フレームの画像で設定された複数の関心領域それぞれの位置における画素の画素値の複数の第1代表値214を算出する。ステップS902の処理は、図3に例示するステップS306の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0064】
ステップS903において画素値合成部205は、複数の第1代表値214それぞれについて、移動量702に応じて重み付けする。例えば、第1関心領域が設定された第1フレームの画像が撮像された時点と、第2関心領域が設定されたフレームの画像が撮像された時点間において、生体102が移動したとする。その場合、第1フレームの画像において、第1関心領域の位置と第2関心領域の位置との間の移動量702が相対的に大きいとする。そこで、例えば、画素値合成部205は、移動量702が相対的に大きい第2関心領域の位置ほど、第1代表値214に対して相対的に小さい重み付けをする。
【0065】
ステップS904において画素値合成部205は、ステップS903で重み付けされた複数の第1代表値214を合成して、第2代表値216を算出する。そして、制御部202は、図8に例示するステップS806に移行する。
【0066】
例えば、画素値合成部205は、移動量702が相対的に大きい第2関心領域の位置ほど、第1代表値214に対して相対的に小さい重み付けをするとする。これにより、画素値合成部205は、複数の第2フレームで設定された複数の関心領域の位置のうち、第1関心領域の位置から相対的に離れた位置で算出される第1代表値214を重視せずに、第2代表値216を算出できる。
【0067】
生体102が移動することにより第2フレームで設定される関心領域の位置のばらつきが増加し、脈波信号に含まれるノイズが増加するおそれがある。しかし、本実施形態に係る情報処理装置100は、関心領域の移動量に応じて重みづけされた複数の第1代表値214を合成して、第2代表値216を算出する。そのため、本実施形態に係る情報処理装置100は、第一実施形態に係る情報処理装置100と同様の効果を奏するとともに、生体102が移動することに起因して、脈波信号を算出するために無関係である画素の画素値を利用することを抑制できる。
【0068】
上記実施形態で実行される各処理は、各実施形態で例示した処理態様に限定されない。上述した機能ブロックは、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)、又はCPUを用いたソフトウェアの何れを用いて実現してもよい。上記実施は、複数のコンピュータで実行されてもよい。例えば、情報処理装置100の制御部202の各機能ブロックで実行される処理は、他のコンピュータで一部の処理が実行されてもよいし、複数のコンピュータで全ての処理が分担して実行されてもよい。
【0069】
本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。本開示は、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 情報処理装置、101 撮像部、102 生体、201 記憶部、202 制御部、203 関心領域設定部、204 画素値算出部、205 画素値合成部、206 脈波算出部、211 動画像、212 関心領域情報、213 識別情報、214 第1代表値、215 識別情報、216 第2代表値、217 識別情報、400 関心領域、401 関心領域、402 関心領域、403 関心領域、404 関心領域、501 時系列信号、502 時系列信号、503 期間、601 脈波信号、602 脈波信号、701 移動量算出部、702 移動量、703 識別情報
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9