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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134639
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】液体タンク
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/00 20060101AFI20240927BHJP
   B65D 90/22 20060101ALI20240927BHJP
   B65D 90/04 20060101ALI20240927BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65D90/00 H
B65D90/22 Z
B65D90/04 B
H05F3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044931
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】596054652
【氏名又は名称】ニッシンコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】川田 敦
(72)【発明者】
【氏名】仲川 宗一
【テーマコード(参考)】
3E170
5G067
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB01
3E170BA10
3E170DA01
3E170GB01
3E170GB04
3E170MA02
3E170VA20
5G067AA32
5G067DA02
(57)【要約】
【課題】適切な静電気対策を施すことによって、樹脂材料による形成を可能にする液体タンクを提供する。
【解決手段】サイフォン管4は、液体タンク本体内に収容されている液体をサイフォン管4内に吸引する吸引部40を備えている。そして、サイフォン管4内に吸引した液体Lは、サイフォン管4の上面4aから排出される。さらに、サイフォン管4の吸引部40には、第1アース線6が設けられている。そしてさらに、サイフォン管4の上面4aと第2給排ホースH2との間には、第2アース線7が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容される液体タンク本体と、
前記液体タンク本体内に設けられると共に、鉛直上下方向に延びて設けられているサイフォン管と、
前記サイフォン管から排出された液体を所定の場所に排液する排液管と、を有し、
前記サイフォン管は、
前記液体タンク本体内に収容されている前記液体を前記サイフォン管内に吸引する吸引部と、
前記サイフォン管内に吸引した液体を前記サイフォン管外に排出する排出部と、を有し、
前記吸引部には、第1アース線が設けられ、
前記排出部と前記排液管との間には、第2アース線が設けられてなる液体タンク。
【請求項2】
前記第1アース線と、前記第2アース線とは連なって設けられてなる請求項1に記載の液体タンク。
【請求項3】
前記吸引部は、先端がベルマウス形状に形成されてなる請求項1又は2に記載の液体タンク。
【請求項4】
フッ素樹脂にてライニングが施されている鉄芯が、前記吸引部の上部側で、且つ、前記サイフォン管の外周面に設けられてなり、
前記吸引部と前記鉄芯とを繋ぐ第3アース線が設けられてなる請求項1又は2に記載の液体タンク。
【請求項5】
液体が収容される液体タンク本体と、
前記液体タンク本体内に設けられると共に、鉛直上下方向に延びて設けられているサイフォン管と、
前記サイフォン管から排出された液体を所定の場所に排液する排液管と、を有し、
前記サイフォン管は、
前記液体タンク本体内に収容されている前記液体を前記サイフォン管内に吸引する吸引部と、
前記サイフォン管内に吸引した液体を前記サイフォン管外に排出する排出部と、を有し、
フッ素樹脂にてライニングが施されている鉄芯が、前記吸引部の上部側で、且つ、前記サイフォン管の外周面に設けられてなり、
前記吸引部と前記鉄芯とを繋ぐアース線が設けられてなる液体タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体高純度薬品等の液体は、生産工場にて液体タンクに充填され、この液体タンクに形成された充填・取出用の口栓部に蓋を取り付けた状態で出荷されている。このような液体タンク内に収容された液体を取り出す手法としては、容器内部に窒素等の気体を導入することにより、その気体圧力により液体を容器外へ送り出すサイフォン管方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-59993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような液体タンクは、金属で形成されていることから、液体タンク内に充填されている液体によって、金属成分が液体に溶出してしまう恐れがあるという問題があった。
【0005】
そこで、さらなる高純度化が求められている半導体製造の分野においては、金属に代え、耐薬品性に優れたフッ素樹脂等の樹脂材料による形成が望まれていた。
【0006】
しかしながら、フッ素樹脂等の樹脂材料は絶縁性材料であるため、帯電性を有することから、絶縁性材料と液体タンク中に収容された液体との間で摩擦が起こる場合、静電気が発生し、液体の引火の問題が生じるという問題があった。そのため、フッ素樹脂等の樹脂材料による形成が非常に困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、適切な静電気対策を施すことによって、樹脂材料による形成を可能にする液体タンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
請求項1の発明によれば、液体(L)が収容される液体タンク本体(2)と、
前記液体タンク本体(2)内に設けられると共に、鉛直上下方向に延びて設けられているサイフォン管(4)と、
前記サイフォン管(4)から排出された液体(L)を所定の場所(例えば、クリーンブースCB)に排液する排液管(第2給排ホースH2)と、を有し、
前記サイフォン管(4)は、
前記液体タンク本体(2)内に収容されている前記液体(L)を前記サイフォン管(4)内に吸引する吸引部(40)と、
前記サイフォン管(4)内に吸引した液体(L)を前記サイフォン管(4)外に排出する排出部(サイフォン管4の上面4a)と、を有し、
前記吸引部(40)には、第1アース線(6)が設けられ、
前記排出部(サイフォン管4の上面4a)と前記排液管(第2給排ホースH2)との間には、第2アース線(7)が設けられてなることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載の液体タンク(1)において、前記第1アース線(6)と、前記第2アース線(7)とは連なって設けられてなることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明によれば、上記請求項1又は2に記載の液体タンク(1)において、前記吸引部(40)は、先端(先端面40b)がベルマウス形状に形成されてなることを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明によれば、上記請求項1又は2に記載の液体タンク(1)において、フッ素樹脂にてライニング(F7)が施されている鉄芯(12)が、前記吸引部(40)の上部側で、且つ、前記サイフォン管(4)の外周面に設けられてなり、
前記吸引部(40)と前記鉄芯(12)とを繋ぐ第3アース線(10)が設けられてなることを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明によれば、液体(L)が収容される液体タンク本体(2)と、
前記液体タンク本体(2)内に設けられると共に、鉛直上下方向に延びて設けられているサイフォン管(4)と、
前記サイフォン管(4)から排出された液体(L)を所定の場所(例えば、クリーンブースCB)に排液する排液管(第2給排ホースH2)と、を有し、
前記サイフォン管(4)は、
前記液体タンク本体(2)内に収容されている前記液体(L)を前記サイフォン管(4)内に吸引する吸引部(40)と、
前記サイフォン管(4)内に吸引した液体(L)を前記サイフォン管(4)外に排出する排出部(サイフォン管4の上面4a)と、を有し、
フッ素樹脂にてライニング(F7)が施されている鉄芯(12)が、前記吸引部(40)の上部側で、且つ、前記サイフォン管(4)の外周面に設けられてなり、
前記吸引部(40)と前記鉄芯(12)とを繋ぐアース線(第3アース線10)が設けられてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
請求項1の発明によれば、吸引部(40)には、第1アース線(6)が設けられ、排出部(サイフォン管4の上面4a)と排液管(第2給排ホースH2)との間には、第2アース線(7)が設けられている。これにより、液体タンク本体(2)内に収容されている液体(L)を吸引したことにより発生する静電気の値を大幅に減少させることができる。また、請求項5の発明によれば、吸引部(40)と鉄芯(12)とを繋ぐアース線(第3アース線(10))が設けられている。これにより、液体タンク本体(2)内に収容されている液体(L)を吸引したことにより発生する静電気の値を大幅に減少させることができる。
【0016】
したがって、請求項1又は5の発明によれば、適切な静電気対策を施すことによって、樹脂材料による形成を可能にすることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、第1アース線(6)と第2アース線(7)の配置が容易となる。
【0018】
請求項3の発明によれば、液体タンク本体(2)内に収容されている液体(L)をサイフォン管(4)内に吸引する際の入口が広くなるため、気液混合した乱流を低減させることができ、これによって、液体(L)の帯電率を降下させることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、吸引部(40)と鉄芯(12)とを繋ぐ第3アース線(10)を設けることにより、吸引部(40)側で液体(L)の帯電率が大幅に上昇したとしても、確実に、吸引部(40)側における液体(L)の帯電率を降下させることができる。これにより、吸引部(40)側にて発生した静電気の値をさらに大幅に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る液体タンクの配置状態を説明する説明図である。
図2】同実施形態に係るサイフォン管を蓋部に設置すると共に、サイフォン管に第2給排ホースを設置する状態を示す縦断面図である。
図3】同実施形態に係るアース線取付板を示し、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
図4】同実施形態に係る吸引部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る液体タンクの一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0022】
<液体タンクの概要の説明>
本実施形態に係る液体タンクは、静電気対策を施すことによって、樹脂材料による形成を可能にするものであって、具体的には、図1に示すように、液体タンク1は、液体タンク本体2と、蓋部3と、サイフォン管4と、で主に構成されている。以下、各構成について詳しく説明することとする。
【0023】
<液体タンク本体の説明>
液体タンク本体2は、SUS304の如きステンレス鋼製等で形成され、図1に示すように、上面2aが開放され、下面2bが閉止されている内部に空洞を有する縦長円筒状に形成されている。そして、図1に示すように、下面2b中央部には、凹部20が一体的に設けられている。また、図1に示すように、上面2aには周方向に円形状のフランジ部21が一体的に突出して設けられている。
【0024】
ところで、このように構成される液体タンク本体2内には、図1に示すように、半導体高純度薬品等の液体Lが充填されて収容される。そして、図1に示す液体タンク本体2の内周壁面は、液体Lと接触することから、凹部20も含め、金属成分が液体Lに溶出しないように、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂にて厚み2~3mm程度のライニングF1が施されている。
【0025】
<蓋部の説明>
蓋部3は、図1に示すように、液体タンク本体2の上面2aを閉止することができるもので、SUS304の如きステンレス鋼製等で形成され、円形状に形成されている。より詳しくは、図2に示すように、蓋部3は、第1蓋部30と、第1蓋部30の上面30aに一体的に設けられている第2蓋部31と、で構成されている。第1蓋部30は、円形状(図2では断面視横長矩形状)に形成されており、第2蓋部31は、第1蓋部30よりも横幅の短い円形状(図2では断面視矩形状)に形成されている。そして、このような第1蓋部30及び第2蓋部31の中央部分には、図2に示すように、上下方向に貫通している貫通孔32が設けられている。
【0026】
かくして、このように構成される蓋部3の第1蓋部30は、図1に示すように、フランジ部21の上面に載置できるようになっており、図1に示すボルトB1にて、フランジ部21と連結固定できるようになっている。これにより、蓋部3にて、液体タンク本体2の上面2aを閉止できるようになっている。
【0027】
一方、図1に示すように、蓋部3の第1蓋部30の左側面30b側には、第1給排ホースH1が接続されている。この第1給排ホースH1は、図1に示すように、半導体の製造設備にあるクリーンブースCB側にある供給バルブV1、又は、排気バルブV2の何れかに接続されるものである。第1給排ホースH1が、供給バルブV1に接続されていた場合、供給バルブV1を介して窒素などの気体が、第1給排ホースH1を通って、液体タンク本体2内に給気されるようになっている。これにより、液体タンク本体2内が加圧されることとなる。また、第1給排ホースH1が、排気バルブV2に接続されていた場合、第1給排ホースH1及び排気バルブV2を介して窒素などの気体が、液体タンク本体2外に排気できるようになっている。なお、液体Lと接触する可能性のある蓋部3の内周壁面、すなわち、図2に示すように、第1蓋部30の内壁面30c及び第2蓋部31の内壁面31aにも、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂にて厚み2~3mm程度のライニングF2が施されている。
【0028】
<サイフォン管の説明>
サイフォン管4は、図1に示すように、液体タンク本体2の上面2aから、液体タンク本体2の凹部20内まで上下方向、即ち、鉛直上下方向に延びて、液体タンク本体2内に配置されている。より詳しく説明すると、図2に示すように、サイフォン管4は、上面4a及び下面4bが開放され、内部に空洞を有する細長円筒状に形成されている。そして、このサイフォン管4は、図2に示すように、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又はPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等の如き熱可塑性フッ素樹脂にて形成されている。なお、サイフォン管4が熱可塑性フッ素樹脂にて形成されているのは、液体Lに接触するためである。
【0029】
一方、図2に示すように、サイフォン管4の下面4bには、吸引部40が取り付け固定されている。この吸引部40は、SUS304の如きステンレス鋼製等で形成され、図4に示すように、基端面40a及び先端面40bが開放され、内部に空洞を有する短い筒状に形成されている。そして、この吸引部40は、図4に示すように、先端面40bがベルマウス形状に加工されている。
【0030】
かくして、このような吸引部40を、図2に示すように、サイフォン管4の下面4bに取り付け固定するにあたっては、サイフォン管4の下面4bを熱加工し、吸引部40をそのサイフォン管4の下面4bに挿入する。そして、図2に示すビスB4にて、吸引部40を、サイフォン管4の下面4bに取り付け固定する。これにより、サイフォン管4の下面4bに、吸引部40を取り付け固定することができる。
【0031】
一方、図2に示すように、サイフォン管4の上面4aには周方向に断面視凸状のフランジ部41が一体的に突出して設けられている。なお、図2に示すように、フランジ部41の下面41aには、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂にて厚み2~3mm程度のライニングF4が施されている。
【0032】
かくして、上記のように構成されるサイフォン管4を、図1に示すように、液体タンク本体2内に配置するにあたっては、図2に示す貫通孔32内に挿入する。そして、サイフォン管4の上面4aに一体的に突出して設けられているフランジ部41を、図2に示す第2蓋部31の上面31bに載置する。この状態で、図2に示すボルトB2にて、フランジ部41と第2蓋部31を連結固定することによって、サイフォン管4を、図1に示すように、液体タンク本体2内に配置することができる。
【0033】
一方、図2に示すように、フランジ部41の上面41bには、パッキン5が一対、載置されるようになっている。そして、図2に示すように、このような一対のパッキン5を挟み込むようにして、第2給排ホースH2の下面H2aの周方向に一体的に突出して設けられている円形状のフランジ部H2bがフランジ部41の上面41bに載置される。この状態で、図2に示すボルトB3にて、フランジ部H2bとフランジ部41を連結固定することによって、図1に示すように、フランジ部H2bとフランジ部41と連結固定できるようになっている。
【0034】
かくして、この状態で、窒素等の気体を、図1に示す第1給排ホースH1から液体タンク本体2内に供給すれば、液体タンク本体2内が加圧され、サイフォンの原理によって、液体タンク本体2内に収容されている液体Lが、図2に示す、サイフォン管4の吸引部40から吸引される。そして、その吸引された液体Lは、サイフォン管4内を通って、図2に示す、上面4aから排出され、さらに、その液体Lは、パッキン5の貫通孔5aを通って、第2給排ホースH2内に流れることとなる。この第2給排ホースH2は、図1に示すように、クリーンブースCB側にある排液バルブV3、又は、給液バルブV4の何れかに接続されるもので、排液バルブV3に接続されていた場合、第2給排ホースH2内に流れた液体Lは、排液バルブV3を介してクリーンブースCB側に排液されることとなる。なお、第2給排ホースH2が給液バルブV4に接続されていた場合、給液バルブV4を介して第2給排ホースH2から、液体Lをサイフォン管4内に供給することができる。これにより、液体タンク本体2内に液体Lを外部(本実施形態においては、クリーンブースCB側)から供給することもできる。なお、液体タンク本体2内に液体Lを供給する際、第1給排ホースH1は、排気バルブV2に接続されており、第1給排ホースH1及び排気バルブV2を介して窒素などの気体が、液体タンク本体2外に排気されることとなる。
【0035】
ところで、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂は、金属成分が液体Lに溶出しないようにすることができるものの、絶縁性材料であるため、帯電性を有している。そのため、上記説明したように液体タンク本体2内の液体Lを外部(本実施形態においては、クリーンブースCB側)に排出すると、熱可塑性フッ素樹脂と液体Lとの間で摩擦が起こり、これによって、静電気が発生し、ライニング面にスパークによるピンホール(孔)が生じる場合や、液体Lが有機溶剤の場合、液体Lの引火の問題が生じることとなる。
【0036】
そこで、本発明者は、次の通り予備試験を行った。すなわち、サイフォン管4内に電圧をかけて、スパーク、又は、外部に放電するか確認を行った。その結果、約24000Vで外部に放電が認められ、最終的に、ライニングにピンホールが発生した(孔が開いた)。かくして、本発明者は、この結果を受けて、サイフォン管4の内側に発生する静電気の電位を約24000V以下に抑えれば、静電気のスパークは防げるとの考えに至った。
【0037】
また、本発明者は、さらに鋭意研究を重ねた結果、液体タンク本体2内に収容されている液体Lを吸引し終わって、液体タンク本体2に給気された気体と入れ替わる際、急激に帯電率が上昇し、静電気の値が大幅に上昇することが分かった。これは、吸引部40にて、液体タンク本体2内に収容されている液体Lを吸引する際、吸引部40の先端面40b(図2参照)と凹部20(図1参照)との間で気液混合した乱流が発生していることが原因と考えられる。
【0038】
そこで、上記の点を踏まえ、本実施形態においては、サイフォン管4の吸引部40側に図2に示す第1アース線6を設け、サイフォン管4の上面4aと第2給排ホースH2との間に第2アース線7を設けるようにしている。この点、以下、詳しく説明することとする。
【0039】
<アース線の説明>
第1アース線6は、図2に示すように、サイフォン管4及び吸引部40の内部を通って、先端面40bから出て、サイフォン管4の外周面側に位置するように配置される。そして、図2に示すように、この第1アース線6の先端部6aには、第1端子8aが取り付け固定されている。
【0040】
かくして、この第1端子8aは、図4に示す吸引部40の基端面40a側右側面に、左右方向に貫通して設けられているビス取付孔40c側に配置され、図2に示すビスB4を用いて、吸引部40に取り付け固定される。これにより、第1アース線6の位置がサイフォン管4の外周面側に固定されることとなる。このようにすれば、液体Lを吸引することによって吸引部40側にて発生した静電気が、第1アース線6によって第1端子8aに流れ、そして、この第1端子8aに流れた静電気は、ビスB4を通って吸引部40に流れることとなる。そのため、吸引部40側における液体Lの帯電率が降下することとなるから、吸引部40側にて発生した静電気の値を大幅に減少させることができる。また、第1アース線6の位置をサイフォン管4の外周面側に固定させておけば、固定部品によって静電気の流れの抵抗を生んでしまう事態を低減させることができる。
【0041】
他方、第1アース線6は、図2に示すように、サイフォン管4の上面4a側まで延びて、第1アース線6の基端部6bが、第2アース線7の先端部7aに連通して設けられる。そして、図2に示すように、この第2アース線7の基端部7bには、第2端子8bが取り付け固定され、この第2端子8bは、アース線取付板9にビスB5を用いて取り付け固定される。この点、より詳しく説明すると、アース線取付板9は、SUS304の如きステンレス鋼製等で形成され、図3(a)に示すように、平面視円形状の本体90と、本体90に一体的に設けられている平面視矩形状の支持部91と、で構成されている。この本体90は、図3(a)に示すように中央部分に円形状の貫通孔90aが、図3(b)に示すように上下方向に貫通して設けられている。そして、この貫通孔90aが形成されている位置に、図3(a)に示すように虫眼鏡状の取付部90bが本体90に一体的に設けられ、この取付部90bは、図3(b)に示すように、図示上方向に折り曲げられて形成されている。なお、この取付部90bには、図3に示すように、円形状の取付孔90b1が貫通して設けられている。
【0042】
一方、図3に示すように、支持部91の基端部91a側には、円形状の貫通孔91bが上下方向に貫通して設けられている。
【0043】
かくして、このように構成されるアース線取付板9の取付孔90b1の位置に第2端子8bが配置され、図2に示すビスB5を用いて、アース線取付板9に取り付け固定される。そして、このアース線取付板9は、図2に示すように、一対のパッキン5の間に挟み込まれ、この状態の一対のパッキン5を挟み込むようにして、第2給排ホースH2の下面H2aの周方向に一体的に突出して設けられている円形状のフランジ部H2bがフランジ部41の上面41bに載置される。この状態で、図2に示すボルトB3にて、フランジ部H2bとフランジ部41を連結固定することによって、図1に示すように、フランジ部H2bとフランジ部41と連結固定できるようになっている。これにより、第2アース線7は、サイフォン管4の上面4aと第2給排ホースH2との間に位置が固定されることとなる。
【0044】
かくして、このようにすれば、サイフォン管4内で発生した静電気が、第2アース線7によって第2端子8bに流れ、そして、この第2端子8bに流れた静電気は、ビスB5を通ってアース線取付板9に流れることとなる。そのため、サイフォン管4内における液体Lの帯電率が降下することとなるから、サイフォン管4内にて発生した静電気の値を大幅に減少させることができる。
【0045】
かくして、上記説明したように、サイフォン管4の吸引部40側に図2に示す第1アース線6を設け、サイフォン管4の上面4aと第2給排ホースH2との間に第2アース線7を設けるようにすれば、サイフォン管4の吸引部40側及びサイフォン管4内に発生する静電気の値を大幅に減少させることができる。そのため、サイフォン管4の内側に発生する静電気を充分に除電することが可能となる。
【0046】
したがって、以上説明した本実施形態によれば、適切な静電気対策を施すことによって、樹脂材料による形成を可能にすることができる。
【0047】
ところで、上記のような静電気対策でも十分であるが、本実施形態においては、さらなる静電気対策を施している。すなわち、吸引部40にて、液体タンク本体2内に収容されている液体Lを吸引する際、特に、吸引部40側で液体Lの帯電率が上昇することが考えられる。そのため、本実施形態においては、第1アース線6に加え、図2に示すように、第3アース線10を設けている。この第3アース線10は、図2に示すように、先端部10aが第3端子8cに取り付け固定され、この第3端子8cは、図2に示すビスB4を用いて、吸引部40に取り付け固定される。そしてさらに、この第3アース線10は、図2に示すように、図示上方向に延びて、基端部10bが、外周面がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂にて厚み2~3mm程度のライニングF6が施された固定部11に取り付け固定されている。
【0048】
ところで、この固定部11は、図2に示すように鉄芯12に取り付け固定されている。この鉄芯12は、SUS304の如きステンレス鋼製等で形成され、図2に示すように、断面視細長矩形状に形成されると共に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の如き熱可塑性フッ素樹脂にて厚み2~3mm程度のライニングF7が施されている。かくして、このような鉄芯12は、図2に示すように、吸引部40よりも上部側に位置し、フランジ部41の下面41aまで延びて、サイフォン管4の外周面に固定配置されている。これにより、第1アース線6によって第1端子8aに流れた静電気は、ビスB4を通って吸引部40に流れる一方で、第3アース線10によって固定部11に流れ、さらに、固定部11に流れた静電気は、鉄芯12を通ってフランジ部41に流れることとなる。
【0049】
かくして、このようにすれば、吸引部40側で液体Lの帯電率が大幅に上昇したとしても、確実に、吸引部40側における液体Lの帯電率を降下させることができるため、吸引部40側にて発生した静電気の値をさらに大幅に減少させることができる。
【0050】
<変形例の説明>
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、液体タンク1の形状は、あくまで一例であり、サイフォンの原理を利用できる方式であれば、どのような形状でも良い。
【0051】
また、本実施形態においては、第1アース線6,第2アース線7,第3アース線10を全て用いる例を示したが、それに限らず、サイフォン管4の内側に発生する静電気の電位を充分に除電することが可能であれば、第1アース線6及び第2アース線7だけでも良く、又、第3アース線10だけで足りるような場合は、第3アース線10だけでも良い。なお、第3アース線10だけの場合は、アース線取付板9は不要である。
【0052】
また、本実施形態においては、吸引部40の先端面40bをベルマウス形状に加工する例を示したが、それに限らず、どのような形状でも良い。しかしながら、ベルマウス形状に加工するのが好ましい。ベルマウス形状にすると、液体タンク本体2内に収容されている液体Lをサイフォン管4内に吸引する際の入口が広いため、気液混合した乱流を低減させることができ、これによって、液体Lの帯電率が降下することができるためである。
【0053】
また、本実施形態においては、サイフォン管4の下面4bに吸引部40を設ける例を示したが、それに限らず、吸引部40を設けられない場合、サイフォン管4の下面4bを伸ばすようにしても良い。この際、吸引部は、サイフォン管4の下面4bとなり、アース線を固定するため、第3アース線10は必須となる。
【0054】
また、本実施形態においては、第1アース線6と第2アース線7を連通させる例を示したが、それに限らず、連通させなくとも良い。しかしながら、連通させた方が好ましい。第1アース線6及び第2アース線7の配置が容易となるためである。
【符号の説明】
【0055】
1 液体タンク
2 液体タンク本体
4 サイフォン管
4a 上面(排出部)
40 吸引部
40b 先端面(先端)
6 第1アース線
7 第2アース線
10 第3アース線(アース線)
12 鉄芯
L 液体
CB クリーンブース(所定の場所)
H2 第2給排ホース(排液管)
F7 ライニング
図1
図2
図3
図4