(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013464
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20240125BHJP
【FI】
C02F3/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115563
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 淳史
(72)【発明者】
【氏名】塩見 誠
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛佑
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 修一
(72)【発明者】
【氏名】徳倉 勝浩
【テーマコード(参考)】
4D028
【Fターム(参考)】
4D028AA08
4D028AB00
4D028BB07
4D028BC18
4D028BC24
4D028BD07
4D028BD16
4D028CA09
4D028CB03
4D028CC00
(57)【要約】
【課題】汚水を効率的に処理でき、省エネルギー化を図ることができる水処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による水処理システムは、好気性微生物を含む活性汚泥を収容する反応槽であって汚水が供給される反応槽と;該反応槽に大気中の酸素濃度より酸素濃度が高い酸素含有ガスを供給する酸素供給ラインと;該反応槽から二酸化炭素含有ガスを排気する排気ラインと;を備えている。該水処理システムは、酸素含有ガスの酸素濃度に応じて、反応槽に対する酸素含有ガスの供給量を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性微生物を含む活性汚泥を収容し、汚水が供給される反応槽と;
前記反応槽に、大気中よりも酸素濃度が高い酸素含有ガスを供給する酸素供給ラインと;
前記反応槽から二酸化炭素含有ガスを排気する排気ラインと;を備え、
前記酸素含有ガスの酸素濃度に応じて、前記反応槽に対する前記酸素含有ガスの供給量を制御する、水処理システム。
【請求項2】
前記排気ラインに設けられ、二酸化炭素濃度または酸素濃度を測定可能な計測器をさらに備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記酸素供給ラインは、液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスを前記反応槽に供給する、請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスの圧力が、前記反応槽底部の水圧よりも高い、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
液化酸素と水処理システムにおいて処理された処理水との間で熱交換させて、液化酸素を気化させる第1熱交換器をさらに備える、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項6】
復水器を含む発電装置と;
水処理システムにおいて処理された処理水を前記復水器の冷却水として、前記復水器に供給する冷却水供給ラインと;をさらに備える、請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記発電装置の燃料としてアンモニアを使用する、請求項6に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記アンモニアとして液化アンモニアを使用し、
前記液化アンモニアと水処理システムで処理された処理水との間で熱交換させてアンモニアを気化させる第2熱交換器をさらに備える、請求項7に記載の水処理システム。
【請求項9】
燃焼器を含む発電装置をさらに備え、
前記排気ラインは、前記二酸化炭素含有ガスを燃焼空気と合流させて前記燃焼器に供給し、
前記二酸化炭素含有ガスは、前記反応槽において好気性微生物に消費されずに残存した残存酸素、前記反応槽において副生成した亜酸化窒素、前記反応槽において副生成したメタン、または、それらの組み合わせを含む、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項10】
前記二酸化炭素含有ガスから温室効果ガスを回収する温室効果ガス回収装置をさらに備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項11】
前記温室効果ガス回収装置を通過した回収処理ガスを、前記反応槽に返送する返送ラインをさらに備える、請求項10に記載の水処理システム。
【請求項12】
燃焼器を含む発電装置と;
前記温室効果ガス回収装置を通過した回収処理ガスを燃焼空気と合流させて前記燃焼器に供給する回収処理ガス供給ラインと;をさらに備え、
前記回収処理ガスは、前記反応槽において好気性微生物に消費されずに残存した残存酸素、前記反応槽において生成した二酸化炭素、前記反応槽において副生成した亜酸化窒素、前記反応槽において副生成したメタン、または、それらの組み合わせを含む、請求項10に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水などの汚水(廃水)を生物学的処理により浄化することが知られている。例えば、処理槽に流入した汚水中に空気を供給して曝気させる汚水処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。汚水処理装置では、処理槽内の活性汚泥が、好気性条件下で汚水中の有機物を分解して汚水を浄化する。このような水処理分野において、近年の世界的な環境意識の高まりに伴って、省エネルギー化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主たる目的は、汚水を効率的に処理でき、省エネルギー化を図ることができる水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態に係る水処理システムは、反応槽と、酸素供給ラインと、排気ラインと、を備えている。該反応槽は、好気性微生物を含む活性汚泥を収容し、汚水が供給される。該酸素供給ラインは、該反応槽に大気中よりも酸素濃度が高い酸素含有ガスを供給する。該排気ラインは、該反応槽から二酸化炭素含有ガスを排気する。該水処理システムは、該酸素含有ガスの酸素濃度に応じて、該反応槽に対する前記酸素含有ガスの供給量を制御する。
[2]上記[1]に記載の水処理システムは、計測器をさらに備えていてもよい。該計測器は、上記排気ラインに設けられ、二酸化炭素濃度または酸素濃度を測定可能である。
[3]上記[1]または[2]に記載の水処理システムにおいて、上記酸素供給ラインは、液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスを上記反応槽に供給してもよい。
[4]上記[3]に記載の水処理システムにおいて、上記液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスの圧力が、上記反応槽底部の水圧よりも高くてもよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載の水処理システムは、第1熱交換器をさらに備えていてもよい。該第1熱交換器は、液化酸素と水処理システムにおいて処理された処理水との間で熱交換させて、液化酸素を気化させる。
[6]上記[1]から[5]のいずれかに記載の水処理システムは、復水器を含む発電装置と、冷却水供給ラインと、をさらに備えてもよい。該冷却水供給ラインは、上記水処理システムにおいて処理された処理水を上記復水器の冷却水として、上記復水器に供給する。
[7]上記[6]に記載の水処理システムにおいて、上記発電装置の燃料としてアンモニアを使用してもよい。
[8]上記[7]に記載の水処理システムにおいて、上記アンモニアとして液化アンモニアを使用してもよい。水処理システムは、第2熱交換器をさらに備えていてもよい。第2熱交換器は、液化アンモニアと水処理システムで処理された処理水との間で熱交換させてアンモニアを気化させる。
[9]上記[1]から[8]のいずれかに記載の水処理システムは、燃焼器を含む発電装置をさらに備えていてもよい。上記排気ラインは、上記二酸化炭素含有ガスを燃焼空気と合流させて該燃焼器に供給する。上記二酸化炭素含有ガスは、前記反応槽において好気性微生物に消費されずに残存した残存酸素、前記反応槽において副生成した亜酸化窒素、前記反応槽において副生成したメタン、または、それらの組み合わせを含む。
[10]上記[1]から[9]のいずれかに記載の水処理システムは、上記二酸化炭素含有ガスから温室効果ガスを回収する温室効果ガス回収装置をさらに備えていてもよい。温室効果ガスとしては、代表的には二酸化炭素が考えられるが、これに限らず、亜酸化窒素やメタンであってもよい。
[11]上記[10]に記載の水処理システムは、返送ラインをさらに備えていてもよい。該返送ラインは、上記温室効果ガス回収装置を通過した回収処理ガスを、上記反応槽に返送する。
[12]上記[10]に記載の水処理システムは、燃焼器を含む発電装置と、回収処理ガス供給ラインと、をさらに備えていてもよい。該回収処理ガス供給ラインは、上記温室効果ガス回収装置を通過した回収処理ガスを燃焼空気と合流させて上記燃焼器に供給する。該回収処理ガスは、前記反応槽において好気性微生物に消費されずに残存した残存酸素、前記反応槽において生成した二酸化炭素、前記反応槽において副生成した亜酸化窒素、前記反応槽において副生成したメタン、または、それらの組み合わせを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、汚水を効率的に処理でき、省エネルギー化を図ることができる水処理システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の別の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明のさらに別の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【
図4】
図4は、本発明のさらに別の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.水処理システムの概略
図1は本発明の1つの実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
本発明の1つの実施形態に係る水処理システムは、汚水を生物学的に処理するシステムである。
図1に示すように、水処理システム1は、反応槽2と、酸素供給ライン3と、排気ライン4と、を備えている。反応槽2は、好気性微生物を含む活性汚泥を収容する。好気性微生物は、代表的には従属栄養細菌である。反応槽2には汚水が供給される。酸素供給ライン3は、反応槽2に大気中よりも酸素濃度が高い酸素含有ガスを供給する。排気ライン4は、反応槽2から二酸化炭素含有ガスを排気する。水処理システム1は、酸素含有ガスの酸素濃度に応じて、反応槽2に対する酸素含有ガスの供給量を制御するように構成されている。
このような構成によれば、酸素供給ラインが、大気中よりも酸素濃度が高い酸素含有ガスを、その酸素濃度に応じた供給量で反応槽に供給する。これによって、活性汚泥に含まれる好気性微生物が、供給された酸素を消費して汚水中の有機物を分解する。そのため、酸素供給ラインが空気を供給する場合と比較して少ないガス供給量(すなわち曝気量)で、汚水を効率的に処理できる。その結果、省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
1つの実施形態において、水処理システム1は、計測器20をさらに備えていている。計測器20は、排気ライン4に設けられている。計測器20は、二酸化炭素濃度または酸素濃度を測定可能である。より詳しくは、計測器20は、排気ライン4を通過する二酸化炭素含有ガスにおける二酸化炭素濃度または酸素濃度を測定可能である。二酸化炭素含有ガスは、代表的には、好気性微生物が有機物の分解に伴って排出した二酸化炭素を含む。二酸化炭素含有ガスは、反応槽において好気性微生物に消費されずに残存した残存酸素を含んでいてもよい。
このような構成によれば、計測器が二酸化炭素含有ガスにおける二酸化炭素濃度または酸素濃度を測定可能であるので、反応槽における汚水処理の状態をモニタリングでき、反応槽に対する酸素含有ガスの供給量を適切に調整できる。例えば、二酸化炭素含有ガスにおける二酸化炭素濃度が所定の閾値未満である場合、好気性微生物による有機物の分解が十分に進行していないと予測される。この場合、反応槽に対する酸素含有ガスの供給量を増加させることで、好気性微生物による有機物の分解を促進できる。また、二酸化炭素含有ガスにおける酸素濃度が所定の閾値を超過する場合、反応槽に対する酸素含有ガスの供給量が過剰であることが予測される。この場合、酸素含有ガスの供給量を適切な範囲に低減することで、汚水をより効率的に処理でき、さらなる省エネルギー化を図ることができる。なお、二酸化炭素濃度および酸素濃度のそれぞれの閾値は、例えば、反応槽に供給される汚水における有機物濃度(代表的には、生物化学的酸素要求量;BOD)に基づいて、予め設定される。
【0011】
1つの実施形態において、酸素供給ライン3は、液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスを反応槽2に供給する。この場合、酸素含有ガスにおける酸素濃度は、代表的には25体積%以上100体積%以下である。そのため、酸素供給ラインが空気を供給する場合と比較して、酸素含有ガスの供給量(曝気量)を約4/5~約1/5まで低減できる。
【0012】
1つの実施形態において、液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスの圧力は、反応槽2の底部の水圧よりも高い。そのため、酸素供給ラインにブロワーなどの機械構成を別途設けることなく、反応槽に対して酸素含有ガスを円滑に供給(吹き込み)できる。
更に、液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスの圧力は反応槽に酸素含有ガスを吹き込む際に通常使用するブロワーの吐出圧より高くなるため、反応槽に酸素を吹き込む際に使用する散気板などの気泡微細化部材を、より微細な気泡を発生できるものに変更することができる。これにより溶存酸素濃度が上がるため、吹き込みに必要な酸素量を低減することができる。
【0013】
1つの実施形態において、水処理システム1は、第1熱交換器5をさらに備えている。第1熱交換器5は、液化酸素と熱媒体としての水との間で熱交換させて、液化酸素を気化させる。
第1熱交換器の熱媒体としての水は、液化酸素を気化できれば、特に制限されない。熱媒体として、例えば、水処理システムにおいて処理された処理水;河川または海などの水源から採水された水が挙げられ、好ましくは水処理システムにおいて処理された処理水が挙げられる。1つの実施形態において、水処理システム1は、熱媒体供給ライン6をさらに備えている。熱媒体供給ライン6は、水処理システム1において処理された処理水を、熱媒体として第1熱交換器5に供給する。そのため、第1熱交換器に熱媒体を供給するための動力を、通常は処理された処理水よりも低い位置にある水源(例えば、河川、海)から供給する場合と比較して低減できる。第1熱交換器の熱媒体の温度は、第1熱交換器に対する流入時において、例えば、環境水と同等の温度であり、第1熱交換器からの流出時において、例えば、環境水に対して1℃から10℃低くなる。
【0014】
1つの実施形態において、水処理システム1は、発電装置7をさらに備えている。発電装置7は、好ましくは復水器71を含んでいる。復水器71には冷却水が供給される。復水器の冷却水は、復水器に流入する蒸気を冷却できれば、特に制限されない。復水器の冷却水として、例えば、水処理システムにおいて処理された処理水;河川または海などの水源から採水された水が挙げられ、好ましくは水処理システムにおいて処理された処理水が挙げられる。処理水として、とりわけ好ましくは、第1熱交換器を通過した処理水が挙げられる。1つの実施形態において、水処理システム1は、冷却水供給ライン8をさらに備えている。冷却水供給ライン8は、水処理システムにおいて処理された処理水(好ましくは第1熱交換器5を通過した処理水)を復水器71の冷却水として、復水器71に供給する。そのため、復水器に冷却水を供給するための動力を、他の水源(例えば、河川、海)から供給する場合と比較して低減できる。更に、冷却水の水源として河川水を使用する場合は、河川の流量に大きな影響が無いように取水量が制約され、また、冷却水の水源として海水を使用する場合は、取水経路における繁殖した海生物の除去に労力がかかる問題があるのに対し、冷却水の水源として水処理システムにおいて処理された処理水を使用する場合には、こうした問題を回避することができるのである。また、第1熱交換器において冷却された処理水が復水器の冷却水に利用されると、復水器に流入する蒸気と冷却水との温度差を安定して確保することができる。その結果、発電装置の発電容量の向上を図ることができる。また、第1熱交換器において冷却された処理水が復水器において暖められるので、復水器を通過した処理水の温度を、河川水などの環境水の温度に近づけることができる。そのため、復水器を通過した処理水を河川などに放流しても環境への影響を低減できる。復水器の冷却水の温度は、流入側において、例えば、環境水に対して1℃から10℃低い状態であり、流出側において、例えば、環境水と同等となる。
【0015】
1つの実施形態において、排気ライン4は、二酸化炭素含有ガスを燃焼空気と合流させて、発電装置7が備える燃焼器に供給する。発電装置7は、代表的には、ガスタービン発電機7aであって、圧縮機と燃焼器とタービンとを備えている。
反応槽2に収容される活性汚泥は、好気性微生物に加えて、アンモニア性窒素を酸化する硝化細菌、および/または、二酸化炭素などの炭素源をメタンに変換するメタン生成菌を含む場合がある。そのため、反応槽から排気される二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素に加えて、上記した残存酸素、反応槽において副生成した亜酸化窒素、反応槽において副生成したメタン、または、それらの組み合わせを含み得る。排気ラインが二酸化炭素含有ガスを燃焼空気と合流させて燃焼器に供給すると、二酸化炭素含有ガスに含まれる温室効果ガス成分(例えば、亜酸化窒素および/またはメタン)を燃料とともに燃焼もしくは熱分解させて除去できる。そのため、発電装置からの排気ガスを大気に放出しても、環境への影響を低減できる。
【0016】
このような水処理システム1において処理される汚水として、例えば、下水、し尿系汚水が挙げられる。下水は、下水道により回収される汚水である。下水は、例えば、水洗式便所からのし尿排水、生活排水、雨水、産業排水、または、それらの組み合わせを含んでいる。し尿系汚水は、下水とは別途回収される汚水である。し尿系汚水は、例えば、汲み取り式便所の便壺に貯留されるし尿、浄化槽において生じる浄化槽汚泥、または、それらの組み合わせを含んでいる。
以下では、水処理システムの一実施形態として、下水を生物学的に処理する下水処理システム1aについて詳述する。
【0017】
B.水処理システム(下水処理システム)の詳細
B-1.沈砂池、最初沈殿池、反応槽および最終沈殿池
下水処理システム1aは、沈砂池11と、最初沈殿池12と、上記した反応槽2と、最終沈殿池13とを備えている。沈砂池11は、代表的には、下水道からの下水が供給される。沈砂池11では、例えば、下水に含まれる比較的大きな固体および/または砂が下水から取り除かれる。最初沈殿池12は、沈砂池11を通過した下水が供給される。最初沈殿池12では、例えば、下水に含まれる比較的小さな固体が重力によって沈降する。
【0018】
本実施形態では、反応槽2は、最初沈殿池12を通過した下水が供給される。反応槽に供給される下水の生物学的酸素要求量(BOD)は、例えば100mg/L以上300mg/L以下である。なお、BODは、例えば、JIS K0102に規定される方法により測定できる。反応槽に供給される下水のアンモニア性窒素濃度は、例えば5mg/L以上100mg/L以下である。反応槽に対する下水の供給量は、例えば1万m3/日以上200万m3/日以下である。
反応槽2は、上記のように活性汚泥を収容しており、最初沈殿池12からの下水に加えて、酸素供給ライン3から酸素含有ガスが供給される。そのため、活性汚泥に含まれる好気性微生物は、供給された酸素を消費して下水中の有機物を分解除去する。これによって、下水を生物学的処理した処理水が得られる。
【0019】
最終沈殿池13は、反応槽2において生物学的処理された処理水が供給される。反応槽2から最終沈殿池13に流入した処理水には、活性汚泥が混入する場合がある。最終沈殿池13では、処理水に混入した活性汚泥が重力によって沈降して、処理水から分離される。
最終沈殿池を通過した処理水のBODは、例えば10mg/L以下である。最終沈殿池を通過した処理水のアンモニア性窒素濃度は、例えば20mg/L以下である。
【0020】
なお、下水処理システム1aは、最初沈殿池12と反応槽2との間、および/または、反応槽2と最終沈殿池13との間に、嫌気性処理槽を備えていてもよい。嫌気性処理槽は、代表的には、嫌気性微生物を含む活性汚泥を収容している。嫌気性処理槽では、嫌気条件下で、嫌気性微生物が汚水に含まれる硝酸態窒素を消費して窒素ガスを排出する。そのため、下水処理システムが嫌気性処理槽を備えると、処理水における硝酸態窒素濃度の低減を図り得る。
【0021】
B-2.酸素供給ユニット
1つの実施形態において、下水処理システム1aは、液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスを、その酸素濃度に応じた供給量で反応槽2に供給するための酸素供給ユニットU1を備えている。酸素供給ユニットU1は、例えば、液化酸素供給ライン14と、上記した第1熱交換器5と、上記した酸素供給ライン3と、上記した排気ライン4と、ポンプ19と、上記した計測器20と、制御部18とを備えている。
【0022】
液化酸素供給ライン14は、第1熱交換器5に液化酸素を供給可能な配管である。液化酸素供給ライン14における液化酸素の供給方向の下流端部は、第1熱交換器5が備える第1流路の流入口に接続されている。液化酸素供給ライン14における液化酸素の供給方向の上流端部は、図示しないが、液化酸素を貯留する液化酸素タンクに接続されている。液化酸素は、例えば、深冷却分離法によって空気から調製される。
【0023】
第1熱交換器5としては、任意の適切な液-液型熱交換器を採用し得る。第1熱交換器5は、代表的には、液化酸素が通過する第1流路と、熱媒体としての水が通過する第2流路と、を備えている。液化酸素が第1流路を通過し、かつ、熱媒体が第2流路を通過するときに、熱媒体と液化酸素との間で熱エネルギーが交換され、液化酸素が加熱されて気化する。
【0024】
酸素供給ライン3は、液化酸素を気化して得られた酸素含有ガスを反応槽2に供給可能な配管である。酸素供給ライン3における酸素含有ガスの供給方向の上流端部は、第1熱交換器5が備える第1流路の流出口に接続されている。図示例では、酸素供給ライン3における酸素含有ガスの供給方向の下流端部は、反応槽2の内部空間における底部に位置しており、微細気泡を生成する散気板に接続されて反応槽2の内部空間と通じる構成とされている。これによって、酸素供給ライン3を通過した酸素含有ガスは、反応槽2に収容される活性汚泥および/または下水中に吹き込まれる。
【0025】
排気ライン4は、反応槽2から、上記した二酸化炭素含有ガスを排気可能な配管である。図示例では、排気ライン4における二酸化炭素含有ガスの排気方向の上流端部は、反応槽2の内部空間と通じるように、反応槽2の上壁に接続されている。本実施形態において、排気ライン4における二酸化炭素含有ガスの排気方向の下流端部は、後述する燃焼空気供給ライン15に接続されている。
【0026】
ポンプ19は、液化酸素供給ライン14を通る液化酸素の流量を調整できる。図示例において、ポンプ19は、液化酸素供給ライン14において、液化酸素タンクと第1熱交換器5との間に設けられている。ポンプ19として、任意の適切な送液ポンプを採用し得る。
【0027】
図示例において、計測器20は、排気ライン4において、反応槽2と燃焼空気供給ライン15との間に設けられている。計測器20として、任意の適切な二酸化炭素濃度計、または、酸素濃度計を採用し得る。
【0028】
制御部18は、反応槽に対する酸素含有ガスの供給量を制御可能である。制御部18は、例えば、中央処理装置(CPU)、ROMおよびRAMなどを備えている。図示例において、制御部18は、ポンプ19と、計測器20とに電気的に接続されている。制御部18は、計測器20から測定結果(二酸化炭素含有ガスにおける二酸化炭素濃度または酸素濃度)を受信すると、当該測定結果と酸素含有ガスにおける酸素濃度とに基づいて、第1熱交換器5に対する液化酸素の適切な供給量を算出する。次いで、制御部18は、第1熱交換器5に対する液化酸素の供給量が算出値となるように、ポンプ19の出力を調整する。具体的には、第1熱交換器5に対する液化酸素の供給量は1ton/日以上300ton/日以下の範囲で適宜調整される。これによって、反応槽2に対する酸素含有ガスの供給量が調整される。すなわち、制御部18は、予め記憶した酸素含有ガスの酸素濃度と、排気ライン4を通る二酸化炭素含有ガスの二酸化炭素濃度または酸素濃度とに応じて、反応槽2に対する酸素含有ガスの供給量を調整可能である。
なお、図示例の下水処理システム1aは、液化酸素供給ライン14と、第1熱交換器5と、酸素供給ライン3と、ポンプ19とをそれぞれ1つずつ備えているが、下水処理システムの構成はこれに限定されない。例えば、下水処理システムは、液化酸素の総供給量が上記の範囲となるように、液化酸素供給ライン、熱交換器、酸素供給ラインおよびポンプをそれぞれ複数備えていてもよい。
【0029】
B-3.発電ユニット
1つの実施形態において、下水処理システム1aは、ガスタービン発電機7aを備える発電ユニットU2であって、処理水を第1熱交換器5および復水器71に順に通過させる発電ユニットU2を備えている。発電ユニットU2は、上記した熱媒体供給ライン6と、上記した冷却水供給ライン8と、上記したガスタービン発電機7aと、放流ライン17と、燃料供給ライン22と、焼空気供給ライン15と、大気放出ライン16と、を備えている。
【0030】
図示例では、熱媒体供給ライン6は、最終沈殿池13を通過した処理水を熱媒体として第1熱交換器5に供給可能な配管である。熱媒体供給ライン6における熱媒体の供給方向の上流端部は、最終沈殿池13に接続されている。熱媒体供給ライン6における熱媒体の供給方向の下流端部は、第1熱交換器5が備える第2流路の流入口に接続されている。なお、熱媒体供給ラインには、必要に応じて、ポンプおよび/またはバルブが設けられる。
【0031】
図示例では、冷却水供給ライン8は、第1熱交換器5を通過した処理水を冷却水として復水器71に供給可能な配管である。冷却水供給ライン8における冷却水の供給方向の上流端部は、第1熱交換器5が備える第2流路の流出口に接続されている。冷却水供給ライン8における冷却水の供給方向の下流端部は、復水器71の流入側に接続されている。
【0032】
放流ライン17は、復水器71を通過した処理水を放流するための配管である。図示例では、放流ライン17における処理水の通過方向の上流端部は、復水器71の流出側に接続されている。放流ライン17における処理水の通過方向の下流端部は、必要に応じて消毒施設に接続される。これによって、最終沈殿池13を通過した処理水は、第1熱交換器5および復水器71を順に通過した後、必要に応じて消毒施設で消毒され、河川などに放流される。
【0033】
ガスタービン発電機7aは、上記のように、圧縮機と燃焼器とタービンとを備えており、タービンの回転によって発電可能である。図示しないが、ガスタービン発電機7aは、蓄電施設と電気的に接続されていてもよい。この場合、蓄電施設は、ガスタービン発電機7aで発電した電力を蓄電可能である。
【0034】
燃料供給ライン22は、ガスタービン発電機7aの燃焼器に燃料を供給可能な配管である。燃料供給ライン22における燃料の供給方向の下流端部は、代表的には、燃焼器に接続されている。図示しないが、燃料供給ライン22における燃料の供給方向の上流端部は、燃料を貯留する燃料タンクに接続されている。
燃料として、例えばアンモニアが挙げられ、好ましくは液体アンモニアが挙げられ、より好ましくは液体状態のグリーンアンモニア(二酸化炭素を排出しない方法で生成された原料を用い、二酸化炭素を排出しない方法で製造されたアンモニア)が挙げられる。
【0035】
燃焼空気供給ライン15は、ガスタービン発電機7aの圧縮機に燃焼空気を供給可能な配管である。燃焼空気供給ライン15における燃焼空気の供給方向の下流端部は、代表的には、圧縮機の吸気口に接続されている。
【0036】
本実施形態では、圧縮機に接続するまでの燃焼空気供給ライン15の部分に、排気ライン4の下流端部が接続されている。そのため、排気ライン4は、反応槽2からの二酸化炭素含有ガスを、燃焼空気供給ライン15を通過する燃焼空気に合流させることができる。ガスタービン発電機7aの圧縮機は、二酸化炭素含有ガスと燃焼空気との混合ガスを吸気した後(吸気工程)、混合ガスを圧縮する(圧縮工程)。燃焼器は、圧縮機によって圧縮された混合ガスに、燃料供給ライン22から供給された燃料を吹き込んで燃焼させる(燃焼工程)。燃料が液体アンモニアである場合、当該アンモニアを一旦気化させるか、水素と窒素とに分解した後に燃焼させてもよい。ガスタービン発電機7aは、燃料の燃焼により生じた燃焼ガスを排気する(排気工程)。ガスタービン発電機7aは、タービンを連続的に回転させて発電する。
【0037】
大気放出ライン16は、ガスタービン発電機7aから排気される燃焼ガスを大気に放出するための配管である。図示例では、大気放出ライン16における燃焼ガスの通過方向の上流端部は、ガスタービン発電機7aに接続されている。大気放出ライン16における燃焼ガスの通過方向の下流端部は、大気に開放されている。大気放出ライン16を通過する燃焼ガスは、実質的に温室効果ガス成分(具体的には亜酸化窒素および/またはメタン)を含有していない。大気に放出される燃焼ガスにおける温室効果ガス成分の含有割合は、グリーンアンモニアを燃料として使う場合には、例えば、1体積%以下であり、好ましくは0体積%である。そのため、ガスタービン発電機7aから燃焼ガスを大気に放出しても、環境への影響を低減できる。
【0038】
C.水処理システム(下水処理システム)の変形例
図1に示す下水処理システム1aでは、排気ライン4の下流端部が燃焼空気供給ライン15に接続されるが、下水処理システム1aの構成はこれに限定されない。
【0039】
図2に示すように、下水処理システム1aは、二酸化炭素含有ガスから温室効果ガスの一例としての二酸化炭素を回収する温室効果ガス回収装置9をさらに備えていてもよい。これによって、温室効果ガスを円滑に回収できる。本実施形態では、排気ライン4の下流端部が、温室効果ガス回収装置9に接続される。また、計測器20は、排気ライン4において、反応槽2と二酸化炭素を回収する温室効果ガス回収装置9との間に設けられる。1つの実施形態において、下水処理システム1aは、回収処理ガス供給ライン21をさらに備えている。回収処理ガス供給ライン21は、二酸化炭素を回収する温室効果ガス回収装置9を通過した回収処理ガスを燃焼空気と合流させて燃焼器に供給する。図示例では、回収処理ガス供給ライン21における回収処理ガスの供給方向の上流端部は、二酸化炭素を回収する温室効果ガス回収装置9に接続されている。回収処理ガス供給ライン21における回収処理ガスの供給方向の下流端部は、圧縮機に接続するまでの燃焼空気供給ライン15の部分に接続されている。これによって、回収処理ガスを燃焼空気に合流させることができ、回収処理ガスと燃焼空気との混合ガスを、圧縮機を介して燃焼器に供給できる。なお、回収処理ガスは、残存酸素、二酸化炭素、亜酸化窒素、メタン、または、それらの組み合わせを含む。回収処理ガスにおける二酸化炭素の含有割合は、代表的には、5体積%以下である。
【0040】
図3に示すように、二酸化炭素を回収する温室効果ガス回収装置9を通過した回収処理ガスは、反応槽2に返送してもよい。1つの実施形態において、下水処理システム1aは、回収処理ガスを反応槽2に返送する返送ライン10を備えている。返送ライン10における回収処理ガスの返送方向の上流端部は、二酸化炭素を回収する温室効果ガス回収装置9に接続されている。返送ライン10における回収処理ガスの返送方向の下流端部は、酸素供給ライン3における第1熱交換器5と反応槽2との間の部分に接続されている。これによって、回収処理ガスを酸素含有ガスに合流させることができ、回収処理ガスと酸素含有ガスとの混合ガスを、反応槽2に供給できる。
【0041】
また、
図4に示すように、発電装置7(ガスタービン発電機7a)の燃料として液化アンモニウムを使用する水処理システム1(下水処理システム1a)は、第2熱交換器23をさらに備えていてもよい。第2熱交換器23は、液化アンモニアと水処理システムで処理された処理水との間で熱交換させてアンモニアを気化させる。このような水処理システム1では、第2熱交換器23において気化されたアンモニアが、発電装置7の燃焼器に供給される。
【0042】
第2熱交換器23は、代表的には、燃料供給ライン22における発電装置7までの部分に設けられている。第2熱交換器23としては、任意の適切な液-液型熱交換器を採用し得る。第2熱交換器23は、代表的には、燃料供給ライン22に接続されて液化アンモニアが通過する第1流路と、熱媒体としての処理水が通過する第2流路と、を備えている。液化アンモニアが第1流路を通過し、かつ、熱媒体が第2流路を通過するときに、熱媒体と液化アンモニアとの間で熱エネルギーが交換され、液化アンモニアが加熱されて気化する。
【0043】
1つの実施形態では、熱媒体供給ライン6は、第1熱媒体供給ライン61と第2熱媒体供給ライン62とに分岐している。第1熱媒体供給ライン61における熱媒体の供給方向の下流端部は、第1熱交換器5が備える第2流路の流入口に接続されている。第2熱媒体供給ライン62における熱媒体の供給方向の下流端部は、第2熱交換器23が備える第2流路の流入口に接続されている。これによって、処理水が、第1熱交換器5および第2熱交換器23のそれぞれに供給可能である。
【0044】
1つの実施形態において、第2熱交換器23を通過した処理水は、第1熱交換器5を通過した処理水と合流して、発電装置7の復水器71に冷却水として供給される。これによって、復水器に流入する蒸気と冷却水との温度差を広げることができる。図示例では、水処理システム1は、接続ライン24をさらに備えている。接続ライン24は、第2熱交換器23を通過した処理水を冷却水供給ライン8に供給する配管である。接続ライン24における冷却水の供給方向の上流端部は、第2熱交換器23が備える第2流路の流出口に接続されている。接続ライン24における冷却水の供給方向の下流端部は、冷却水供給ライン8における復水器71と第1熱交換器5との間の部分に接続されている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の実施形態による水処理システムは、汚水を生物学的処理する水処理施設に用いられ、特に、下水を生物学的処理する下水処理施設に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0046】
1 水処理システム
2 反応槽
3 酸素供給ライン
4 排気ライン
5 第1熱交換器
6 熱媒体供給ライン
7 発電装置
71 復水器
8 冷却水供給ライン
9 温室効果ガス回収装置
10 返送ライン
21 回収処理ガス供給ライン
23 第2熱交換器