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  • 特開-電子楽器および放音ユニット 図1
  • 特開-電子楽器および放音ユニット 図2
  • 特開-電子楽器および放音ユニット 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134649
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子楽器および放音ユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20240927BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240927BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H04R1/34 310
H04R1/02 102Z
H04R1/00 318Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044948
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】井奥 健太
【テーマコード(参考)】
5D017
5D018
【Fターム(参考)】
5D017AC14
5D017AE27
5D018AF12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ディフューザにより音波の拡散を行い高音域についても水平方向において均一な振幅周波数特性が得られる電子楽器及びその放音ユニットを提供する。
【解決手段】鍵盤電子楽器は、天板301の裏面すなわち-Z側の面にぶら下がるように支持された放音ユニット400を有する。放音ユニット400は、天板に向かって放音するスピーカドライバ410を保持するスピーカドライバ保持部420と、先端部をスピーカドライバ410に対向させてスピーカドライバ保持部420に支持され、スピーカドライバ410から発せられる音波を、天板301の裏面に沿った方向すなわちXY平面内の全方位に拡散させる円錐形状のディフューザ450と、スピーカドライバ保持部420を吊り下げ、天板301の裏面に取り付けられる複数の取付設置部440と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の裏面に支持された放音ユニットを有し、
前記放音ユニットは、
前記天板に向かって放音するスピーカドライバを保持するスピーカドライバ保持部と、
先端部を前記スピーカドライバに対向させて前記スピーカドライバ保持部に支持され、前記スピーカドライバから発せられる音波を前記天板の裏面に沿った方向へ導く先細り形状のディフューザと、
前記スピーカドライバ保持部を吊り下げ、前記天板の裏面に取り付けられる取付設置部と、
を備える電子楽器。
【請求項2】
前記取付設置部の頂上部の高さと、前記ディフューザの基端部の高さが略同じである請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
前記ディフューザは、基端部の断面形状が第1の円である円錐形状を有し、前記スピーカドライバ保持部は、前記第1の円と同心の第2の円を形成する孔に前記スピーカドライバを保持する請求項1に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記スピーカドライバ保持部における前記ディフューザの反対側に設けられたスピーカボックスを有する請求項1に記載の電子楽器。
【請求項5】
スピーカドライバを保持するスピーカドライバ保持部と、
先端部を前記スピーカドライバに対向させて前記スピーカドライバ保持部に支持され、前記スピーカドライバから発せられる音波を前記スピーカドライバの中心軸から離れる方向へ導く先細り形状のディフューザと、
前記スピーカドライバ保持部を吊り下げ、上方の他の部材に取り付けられる取付設置部と、
を備える放音ユニット。
【請求項6】
前記取付設置部の頂上部の高さと、前記ディフューザの基端部の高さが略同じである請求項5に記載の放音ユニット。
【請求項7】
前記ディフューザは、基端部の断面形状が第1の円である円錐形状を有し、前記スピーカドライバ保持部は、前記第1の円と同心の第2の円を形成する孔に前記スピーカドライバを保持する請求項5に記載の放音ユニット。
【請求項8】
前記スピーカドライバ保持部における前記ディフューザの反対側に設けられたスピーカボックスを有する請求項5に記載の放音ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鍵盤電子楽器等の電子楽器およびその放音ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
振動板を振動させるダイナミック型スピーカ等のスピーカは、正面方向の指向性が強い。このため、電子楽器等では、スピーカの正面にディフューザと呼ばれる放音制御装置が配置された放音ユニットが利用される。例えば特許文献1では、先端を振動板に対向させた円錐形状のディフューザを有する放音ユニットが鍵盤電子楽器の鍵盤の左右両側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示された技術では、ディフューザを備えた放音ユニットが鍵盤電子楽器の鍵盤の高さに配置されているため、演奏者の頭の高さでは、水平方向において均一な振幅周波数特性が得られず、演奏者が頭を動かすと音質が変化する問題がある。
【0005】
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、水平方向において均一な振幅周波数特性が得られる電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、天板の裏面に支持された放音ユニットを有し、前記放音ユニットは、前記天板に向かって放音するスピーカドライバを保持するスピーカドライバ保持部と、先端部を前記スピーカドライバに対向させて前記スピーカドライバ保持部に支持され、前記スピーカドライバから発せられる音波を前記天板の裏面に沿った方向へ導く先細り形状のディフューザと、前記スピーカドライバ保持部を吊り下げ、前記天板の裏面に取り付けられる取付設置部と、を備える電子楽器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】この発明の一実施形態である鍵盤電子楽器の構成を示す斜視図である。
図2】同実施形態における放音ユニットの構成を示す斜視図である。
図3図2のIa-Ib線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1はこの発明の一実施形態である鍵盤電子楽器300の構成を示す斜視図である。また、図2は本実施形態における放音ユニット400の構成を示す斜視図である。また、図3図2のIa-Ib線断面図である。以下、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸からなる直交座標系を想定し、本実施形態の構成を説明する。Z軸は、鉛直方向の軸である。放音ユニット400におけるスピーカドライバ410の放音軸はZ軸に平行な軸である。X軸は鍵盤電子楽器300の左右方向の軸である。Y軸は鍵盤電子楽器300の前後方向の軸である。なお、以下では、図1の鍵盤電子楽器300の左側を+X側、右側を-X側、前側の+Y側、後側を-Y側、上側を+Z側、下側を-Z側と呼ぶ場合がある。
【0010】
通常の鍵盤電子楽器と同様、鍵盤電子楽器300の筐体には、XY平面と平行な天板301がある。本実施形態における放音ユニット400は、天板301の裏側の面、すなわち、-Z側の面にぶら下がるように支持されている。この天板301のZ方向における位置は、鍵盤電子楽器300の演奏者の頭部の位置と概ね一致する。
【0011】
放音ユニット400は、XY平面と平行な板状のスピーカドライバ保持部420を有する。このスピーカドライバ保持部420は、+Z側に、すなわち、天板301に向かって放音するスピーカドライバ410を保持する部材である。
【0012】
スピーカドライバ410は、図3に示すように、磁気回路411と、ボイスコイルボビン412と、ダストキャップ413と、コーン414と、エッジ415と、支持部416とを有する。
【0013】
磁気回路411は、XY平面に平行な円形のヨーク411aと、このヨーク411aの中央領域から+Z側に突出した円柱状のポールピース411bと、ヨーク411aの+Z側においてポールピース411bを取り囲む円環状の磁石411cと、磁石411cの+Z側においてポールピース411bを取り囲む円環状のプレート411dとを有する。そして、プレート411dの内側面とポールピース411bの外側面とに挟まれた磁気ギャップGに磁石411cに基づく磁界が発生する。
【0014】
エッジ415は、略円環状の弾性部材である。スピーカドライバ保持部420には、スピーカドライバ410の放音軸上に中心を有する円形の開口421が形成されており、この開口421の内縁にエッジ415の外縁が固定されている。コーン414は、+Z側に大径の開口があり、-Z側に小径の開口があるコーンである。このコーン414の-Z側の小径の開口は、円筒形状のボイスコイルボビン412の外周面に接続されている。このボイスコイルボビン412にはボイスコイル412aが巻回されている。ボイスコイルボビン412は、ボイスコイル412aを磁気ギャップG内に挿入し、コーン414により支持されている。ダストキャップ413は、+Z側に膨らんだドーム状の部材であり、ボイスコイルボビン412を+Z側から覆っている。コーン414の+Z側の大径の開口は、エッジ415の内縁に接続されており、このエッジ415の外縁は、スピーカドライバ保持部420の開口421に接続されている。
【0015】
支持部416は、-Z側に小径の開口があり、+Z側の大径の開口があるコーン形状の部材である。この支持部416の-Z側の小径の開口は、プレート411dに接続され、+Z側の大径の開口は、スピーカドライバ保持部420の円形の開口421を囲む縁部に接続されている。
【0016】
取付設置部440は、四角形状をなすスピーカドライバ保持部420の4隅から+Z側に突出した円柱形状の部材である。この4本の円柱形状の取付設置部440は、+Z側の端面が天板301の裏面に取り付けられ、スピーカドライバ保持部420を吊り下げる。取付設置部440を天板301の裏面に取り付ける手段は接着剤等であってもよく、ボルト等であってもよい。
【0017】
ディフューザ450は、先細り形状の部材であり、先端部451をスピーカドライバ410に対向させてスピーカドライバ保持部420に支持される。具体的には、ディフューザ450は、円錐形状の部材であり、Z軸方向において先端部451の反対側が断面積の広がった円形の基端部452となっている。ディフューザ450の先端部451は、スピーカドライバ410の放音軸(具体的にはスピーカドライバ410のXY平面内の中心を通過するZ軸)上に位置している。ディフューザ450の基端部452は、スピーカドライバ410の放音軸上に中心を有する第1の円をなしている。この基端部452の周囲4カ所は、4本の脚453を介してスピーカドライバ保持部420に接続され、スピーカドライバ保持部420に支持されている。上述したように、スピーカドライバ保持部420は、スピーカドライバ410の放音軸上に中心を有する円形(例えば第2の円とする)の開口421にスピーカドライバ410を保持している。従って、本実施形態において、スピーカドライバ保持部420は、第1の円と同心の第2の円を形成する開口421にスピーカドライバ410を保持している。そして、ディフューザ450は、スピーカドライバ410からZ方向に発せられる音波をXY平面内の全方位に拡散させる。従って、鍵盤電子楽器300の筐体において、天板301の裏側の面すなわち-Z側の面と同じ高さの位置に、演奏者側(+Y側)に開口した水平スリットがあっても良い。
【0018】
スピーカドライバ保持部420において、ディフューザ450の反対側にはスピーカボックス430が取り付けられている。さらに詳述すると、スピーカドライバ保持部420の-Z側の面にはスピーカボックス430の上面部431が取り付けられている。
【0019】
スピーカドライバ保持部420およびスピーカボックス430の上面部431は、+Z側から見た外形が同じ四角形状である。また、スピーカボックス430は、上面部431の4辺の内側に収まる四角形状の開口を+Z側に有する略直方体形状の収容部432を有する。この収容部432の底部の中央には、ポート437が設けられている。また、上面部431には、4隅の4カ所および4辺の中央の4カ所から-Z側に突出した円柱状部433が設けられている。そして、スピーカドライバ保持部420を貫通して8本の円柱状部433内に到る8本のボルト434によりスピーカボックス430がスピーカドライバ保持部420に固定されている。このスピーカドライバ保持部420およびスピーカボックス430により形成される空間内にスピーカドライバ410が収容されている。
【0020】
本実施形態では、取付設置部440の頂上部の高さ(Z軸方向の位置)と、ディフューザ450の基端部452の高さが略同じである。
【0021】
本実施形態によれば、ボイスコイル412aへの通電が行われると、ボイスコイルボビン412およびコーン414がZ軸方向に振動し、+Z方向に音波が放音される。この音波は、天板301の裏面に到達すると、放射状に拡散され、天板301の裏面に沿って伝搬する。このため、主に低中音域では、鍵盤電子楽器300を演奏する演奏者の頭部の高さの水平面内において、均一な振幅周波数特性が得られる。従って、演奏者が頭を動かした場合の音質の変化を回避することができる。また、本実施形態では、+X方向、+Y方向、-X方向および-Y方向を含む360°全方向に放音される。従って、拡がりのある響きを聴者に感じさせることができる。また、本実施形態によれば、ディフューザ450により音波の拡散を行うので、高音域についても、水平面内において均一な振幅周波数特性が得られる。
【0022】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば次の通りである。
【0023】
(1)放音ユニット400の設置個数および設置位置は任意である。天板301の裏面の中央に1個の放音ユニット400を取り付けてもよく、天板301の左右2カ所に2個の放音ユニット400を取り付けてもよい。
【0024】
(2)放音ユニット400は、鍵盤電子楽器300への取付が容易なので、鍵盤電子楽器300と独立に製造販売してもよい。
【符号の説明】
【0025】
300……鍵盤電子楽器、301……天板、400……放音ユニット、410……スピーカドライバ、420……スピーカドライバ保持部、430……スピーカボックス、440……取付設置部、450……ディフューザ、451……先端部、452……基端部、421……開口、453……脚、433……円柱状部、434……ボルト、431……上板部、432……収容部、437……ポート、411……磁気回路、411a……ヨーク、411b……ポールピース、411c……磁石、411d……プレート、G……磁気ギャップ、414……コーン、412……ボイスコイルボビン、412a……ボイスコイル、416……支持部。
図1
図2
図3