(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013465
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】廃棄物処理システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/00 20220101AFI20240125BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20240125BHJP
B09B 3/65 20220101ALI20240125BHJP
C02F 11/10 20060101ALI20240125BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20240125BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20240125BHJP
B09B 3/60 20220101ALN20240125BHJP
【FI】
B09B3/00 ZAB
B09B3/35
B09B3/65
C02F11/10 Z
C02F3/12 A
C02F11/00 Z
B09B3/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115564
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 淳史
(72)【発明者】
【氏名】塩見 誠
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛佑
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 修一
(72)【発明者】
【氏名】徳倉 勝浩
【テーマコード(参考)】
4D004
4D028
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA04
4D004AA06
4D004AA07
4D004AA12
4D004CA04
4D004CA18
4D004CA19
4D004CA24
4D004CA43
4D004CB43
4D004CB44
4D028AB00
4D028BC01
4D028BE08
4D059AA05
4D059BB03
4D059BK11
4D059CA14
4D059CA28
(57)【要約】
【課題】廃棄物を効率的に集約して処理できる廃棄物処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による廃棄物処理システムは、廃棄物処理施設と;廃棄物処理施設に廃棄物を輸送する廃棄物輸送ラインと;廃棄物輸送ラインに廃棄物を流入させる廃棄物流入ラインと;を備えている。廃棄物輸送ラインには、廃棄物を輸送するための輸送流体が流れている。廃棄物処理施設は、廃棄物と輸送流体との混合物を受け入れて、前記混合物の性状に応じて処理するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処理施設と;
前記廃棄物処理施設に廃棄物を輸送する廃棄物輸送ラインと;
前記廃棄物輸送ラインに廃棄物を流入させる廃棄物流入ラインと;を備え、
前記廃棄物輸送ラインには、廃棄物を輸送するための輸送流体が流れており、
前記廃棄物処理施設は、廃棄物と輸送流体との混合物を受け入れて、前記混合物の性状に応じて処理するように構成されている、廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記輸送流体が下水であり、前記廃棄物処理施設が活性汚泥により下水を処理するように構成されている、請求項1に記載の廃棄物処理システム。
【請求項3】
前記廃棄物処理施設は、廃棄物を含む下水の処理により生じた、大形の固形分、余剰汚泥、および、これらの混合物をガス化するガス化炉を備える、請求項2に記載の廃棄物処理システム。
【請求項4】
前記廃棄物処理システムは、前記廃棄物流入ラインの上流側に、廃棄物を裁断して小片化したり、廃棄物を粉砕して粉化したり、あるいはガスを分解して副生成物の粉末廃棄物を排出する装置を備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の廃棄物処理システム。
【請求項5】
前記ガスを分解して副生成物の粉末廃棄物を排出する装置は、メタンガスを分解して水素ガスと炭素粉末とを生成するメタン分解装置であり、
前記廃棄物流入ラインは、前記メタン分解装置と前記廃棄物輸送ラインとを接続して、前記メタン分解装置により生成した炭素粉末を、廃棄物として前記廃棄物輸送ラインに流入させる、請求項4に記載の廃棄物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭分野や産業分野において発生する各種の廃棄物は、最終的に処理して安定化または再利用する必要がある(例えば、非特許文献1参照)。この場合、当該廃棄物は、通常、輸送車などによるバッチ輸送によって処理場まで搬送されて処理される。そのため、廃棄物の輸送頻度が高く、廃棄物の処理コストが増大するという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】尹 鍾進著、「静脈物流に関する研究の動向と課題」、運輸政策研究、Vol.12 No.3 2009 Autumn
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主たる目的は、廃棄物を効率的に集約して処理できる廃棄物処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態に係る廃棄物処理システムは、廃棄物処理施設と;前記廃棄物処理施設に廃棄物を輸送する廃棄物輸送ラインと;前記廃棄物輸送ラインに廃棄物を流入させる廃棄物流入ラインと;を備えている。上記廃棄物輸送ラインには、廃棄物を輸送するための輸送流体が流れている。上記廃棄物処理施設は、廃棄物と輸送流体との混合物を受け入れて、当該混合物の性状に応じて処理するように構成されている。
[2]上記[1]に記載の廃棄物処理システムにおいて、上記輸送流体が下水であり、上記廃棄物処理施設が活性汚泥により下水を処理するように構成されていてもよい。
[3]上記[2]に記載の廃棄物処理システムにおいて、上記廃棄物処理施設は、ガス化炉を備えていてもよい。ガス化炉は、廃棄物を含む下水の処理により生じた、大形の固形分、余剰汚泥、および、これらの混合物をガス化する。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の廃棄物処理システムは、上記廃棄物流入ラインの上流側に、廃棄物を裁断して小片化したり、廃棄物を粉砕して粉化したり、あるいはガスを分解して副生成物の粉末廃棄物を排出する装置を備えていてもよい。
[5]上記[4]に記載の廃棄物処理システムにおいて、上記ガスを分解して副生成物の粉末廃棄物を排出する装置は、メタンガスを分解して水素ガスと炭素粉末とを生成するメタン分解装置であってもよい。上記廃棄物流入ラインは、メタン分解装置と廃棄物輸送ラインとを接続して、メタン分解装置により生成した炭素粉末を、廃棄物として上記廃棄物輸送ラインに流入させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、廃棄物を効率的に集約して処理できる廃棄物処理システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る廃棄物処理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.廃棄物処理システムの概略
図1は、本発明の1つの実施形態に係る廃棄物処理システムの概略構成図である。
図示例の廃棄物処理システム100は、廃棄物処理施設1と、廃棄物輸送ライン2と、廃棄物流入ライン3と、を備えている。廃棄物輸送ライン2には、廃棄物を輸送するための輸送流体が流れている。廃棄物輸送ライン2は、管路によって、廃棄物処理施設1に廃棄物を輸送可能である。廃棄物流入ライン3は、廃棄物輸送ライン2に廃棄物を流入可能である。廃棄物は、代表的には炭素成分を含む炭素含有廃棄物であり、より具体的には、炭素成分を含む小片状あるいは粉末状の物質である。廃棄物処理施設1は、廃棄物と輸送流体との混合物を受け入れて、当該混合物の性状に応じて処理するように構成されている。廃棄物処理施設1は、廃棄物輸送ライン2から送られてくる廃棄物を集合して処理できる。廃棄物処理施設1は、輸送流体と廃棄物との混合物を一体として処理してもよいし、混合体を複数成分に分離して、それぞれの成分ごとに適切な方法で処理してもよい。複数成分への分離は、例えば、液体の多い成分と固体の多い成分への分離や、気体の多い成分と液体の多い成分への分離が考えられる。
このような構成によれば、色々な場所で発生する廃棄物を効率的に輸送および集約して一括して処理することができる。
【0010】
廃棄物輸送ライン2に流れる輸送流体には、空気や施設の排気などの気体を用いてもよいし、河川水や下水などの液体を用いてもよいし、これらの混合物を用いてもよい。
1つの実施形態において、輸送流体は、下水である。つまり、廃棄物輸送ライン2は、代表的には、下水道であり、廃棄物処理施設1に下水を供給可能である。廃棄物処理施設1は、例えば、活性汚泥により下水を処理するように構成されている。
【0011】
1つの実施形態において、廃棄物処理施設1は、ガス化炉15を備えている。ガス化炉15は、廃棄物を含む下水の処理により生じた、大形の固形分、余剰汚泥、および、これらの混合物をガス化する。ガス化炉15は、例えば、輸送流体中にもともと含まれている炭素成分と廃棄物中に含まれている炭素成分とをガス化する。廃棄物処理施設1は、例えば、廃棄物を含む下水の大形の固形分を沈殿分離した後、上澄みを活性汚泥により処理するように構成されている。さらに、廃棄物処理施設1は、好ましくは、沈殿分離した大形の固形分と、活性汚泥による処理で発生する余剰汚泥とをガス化炉15に投入して合成ガスを生成させ、残渣をチャーとして排出するように構成されている。このような構成によれば、有価物としての合成ガスを得るとともに、残渣を安定化された形態に変換することができる。
【0012】
1つの実施形態において、廃棄物処理システム100は、廃棄物流入ライン3の上流側に廃棄物前処理装置4を備えている。廃棄物前処理装置4は、廃棄物を裁断して小片化したり、廃棄物を粉砕して粉化したり、あるいはガスを分解して副生成物の粉末廃棄物を排出する。1つの実施形態において、廃棄物前処理装置4は、ガスを分解して副生成物の粉末廃棄物を排出する装置である。そのような装置として、代表的には、メタン分解装置が挙げられる。メタン分解装置は、メタンガスを分解して水素ガスと炭素粉末とを生成する。
廃棄物流入ライン3は、廃棄物前処理装置4と廃棄物輸送ライン2とを接続して、廃棄物前処理装置4により排出された小片または粉状の廃棄物(代表的には炭素粉末)を、廃棄物として廃棄物輸送ライン2に流入させる。このような構成によれば、廃棄物前処理装置(代表的にはメタン分解装置)によって排出された小片または粉状の廃棄物(代表的には炭素粉末)を、廃棄物流入ラインおよび廃棄物輸送ラインを介して、廃棄物処理施設に円滑に集約することができる。
【0013】
以下、廃棄物処理システムの構成要素について説明する。
B.廃棄物処理システムの概略の詳細
以下では、輸送流体に下水を用いた場合の廃棄物処理システムについて述べる。
B-1.廃棄物処理施設
下水は、廃棄物輸送ライン2(代表的には下水道)により回収される汚水である。廃棄物は、例えば、水洗式便所からのし尿排水、生活排水、雨水、産業排水、または、それらの組み合わせを含んでいる。
【0014】
廃棄物処理施設1は、輸送流体として下水を使う場合には、代表的には、反応槽11を備えている。反応槽11は、好気性微生物を含む活性汚泥を収容している。反応槽11では、活性汚泥に含まれる好気性微生物が、酸素を消費して下水中の有機物を分解する。好気性微生物は、代表的には従属栄養細菌である。図示例では、廃棄物処理施設1は、酸素供給ライン16と、排気ライン17とを備えている。酸素供給ライン16は、反応槽11に酸素含有ガス(代表的には空気)を供給する。排気ライン17は、反応槽11から、好気性微生物の活動により生じた二酸化炭素含有ガスを排気する。
【0015】
輸送流体として下水を用いる1つの実施形態において、廃棄物処理施設1は、上記した反応槽11およびガス化炉15に加えて、最初沈殿池12と最終沈殿池13とをさらに備えている。最初沈殿池12は、代表的には、廃棄物輸送ライン2からの廃棄物が供給される。最初沈殿池12では、例えば、廃棄物に含まれる比較的大きな懸濁物質および/または炭素成分を重力によって沈殿させる。最初沈殿池12は、上記した活性汚泥を収容していてもよい。本実施形態では、反応槽11は、最初沈殿池12を通過した廃棄物が供給される。最終沈殿池13は、反応槽11において生物学的処理された処理水が供給される。反応槽11から最終沈殿池13に流入した処理水には、活性汚泥が混入する場合がある。最終沈殿池13では、処理水に混入した活性汚泥が重力によって沈降して、処理水から分離される。
【0016】
なお、廃棄物処理施設1は、最初沈殿池12と反応槽11との間、および/または、反応槽11と最終沈殿池13との間に、嫌気性処理槽を備えていてもよい。嫌気性処理槽は、代表的には、嫌気性微生物を含む活性汚泥を収容している。嫌気性処理槽では、嫌気条件下で、嫌気性微生物が汚水に含まれる硝酸態窒素を消費して窒素ガスを排出する。そのため、廃棄物処理システムが嫌気性処理槽を備えると、処理水における硝酸態窒素濃度の低減を図り得る。
【0017】
ガス化炉15は、廃棄物処理施設1の最初沈殿池12で生じた大形の固形分および、反応槽11と最終沈殿池13で生じた余剰汚泥を、代表的には熱化学的な分解処理によりガス化する。ガス化炉15は、大形の固形分および余剰汚泥に含まれる有機成分をガス化して合成ガスを生成し、塊状の残炭(チャー)を排出する。合成ガスは、例えば、合成ガス貯留タンクに貯留される。残炭(チャー)は、例えば、任意の適切な方法により廃棄される。
以上、輸送流体に下水を使用した場合について述べたが、本発明はこの例に限らず、輸送流体の種類に応じて適切な方式を選択することができる。
【0018】
B-2.廃棄物輸送ライン
廃棄物輸送ライン2は、代表的には下水道である。図示例では、廃棄物輸送ライン2は、廃棄物を最初沈殿池12に供給する。
【0019】
B-3.廃棄物流入ラインおよび廃棄物前処理装置
廃棄物流入ライン3は、廃棄物輸送ライン2に流れる輸送流体に廃棄物を供給する。廃棄物処理システム100は、複数の廃棄物流入ライン3を備えていてもよい。廃棄物流入ラインの数は、特に制限されず、例えば1以上10万以下である。
図示例では、廃棄物流入ライン3の廃棄物の供給方向の下流端部は、廃棄物輸送ライン2に接続されている。廃棄物流入ライン3の廃棄物の供給方向の上流端部は、廃棄物前処理装置4に接続されている。なお、炭素処理システムが複数の廃棄物流入ラインを備える場合、すべての廃棄物流入ラインが廃棄物前処理装置に接続されていてもよく、複数の廃棄物流入ラインのうち、一部の廃棄物流入ラインが廃棄物前処理装置に接続され、残りの廃棄物流入ラインが、廃棄物を排出する他の装置に接続されていてもよい。
【0020】
廃棄物前処理装置4は、廃棄物を裁断して小片化したり、廃棄物を粉砕して粉化したり、あるいはガスを分解して副生成物の粉末廃棄物を排出する。前処理が必要とされる廃棄物は、廃棄物輸送ラインにおいて沈降して円滑な輸送を阻害する恐れのあるものである。例えば、食品残渣、衛生用品、おむつなどが挙げられるが、これらに限らず、適切な処理によって廃棄物輸送ラインで輸送できるもの全般を対象とすることができる。一方、使用される装置の具体例としては、シュレッダーやディスポーザーが挙げられるが、これらに限らず、廃棄物の特徴に応じた適切な装置を使用することができる。
また、上記したように、廃棄物前処理装置4は、好ましくは、メタン分解装置である。
メタン分解装置としては、例えば、メタンガスをプラズマ化して分解する装置や、メタンガスに熱を加えて分解する装置や、メタンガスをプラズマに接触させて分解する装置などが挙げられるが、これらに限らず、任意の適切なメタン分解装置を採用し得る。廃棄物処理システム100は、複数の廃棄物前処理装置4として複数のメタン分解装置を備えていてもよい。廃棄物前処理装置4としてのメタン分解装置の数は、特に制限されず、例えば1以上1万以下である。
【0021】
図示例において、廃棄物処理システム100はメタンガス供給ライン6を備えており、廃棄物前処理装置4としてのメタン分解装置には、メタンガス供給ライン6を介して、メタンガス(代表的には天然ガス)が供給される。供給されたメタンガス(代表的には天然ガス)は、廃棄物前処理装置4としてのメタン分解装置において、水素ガスと炭素粉末とに分解される。廃棄物前処理装置4としてのメタン分解装置において生成された水素は、例えば、水素回収ライン5を介して、図示しない水素貯留タンクに回収される。廃棄物前処理装置4としてのメタン分解装置において生成された炭素粉末は、例えば水と一緒に流されて、上記の通り、廃棄物流入ライン3を介して、廃棄物輸送ライン2に供給される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の実施形態による廃棄物処理システムは、生活や各種産業において発生した廃棄物の処理に好適に用いられ得るとともに、メタン分解により副生した炭素粉末の処理にも好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0023】
1 廃棄物処理施設
2 廃棄物輸送ライン
3 廃棄物流入ライン
4 廃棄物前処理装置
15 ガス化炉
100 廃棄物処理システム