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特開2024-134652車両制御装置および車両管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134652
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両制御装置および車両管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 50/53 20190101AFI20240927BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240927BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60L50/53
H02J7/00 P
H02J7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044953
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 政樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 朋之
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB02
5G503CA08
5G503FA06
5H125AA12
5H125AC02
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC21
5H125CA04
5H125CA18
5H125CC01
5H125DD02
5H125EE21
5H125EE52
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】本開示は、作業車両が走行する予定経路の全体で作業車両の電欠状態を防止するとともに、作業効率の低下を抑制可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置110は、区間情報取得部111と、走行制御部112と、を備える。区間情報取得部111は、作業車両の予定経路の全体で給電装置40が設置されている一つ以上の充電区間の情報と給電装置40が設置されていない一つ以上の非充電区間の情報を含む区間情報を取得する。走行制御部112は、各々の充電区間の終点における蓄電装置17の充電電力量が当該終点を始点とする非充電区間における走行装置18の消費電力量よりも多くなるように走行装置18を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の給電装置から電力の供給を受ける受電装置と、該受電装置から供給される電力により充電される蓄電装置と、該蓄電装置または前記受電装置から供給される電力により駆動力を発生させる走行装置と、を備えた作業車両に搭載される車両制御装置であって、
前記作業車両の予定経路内で前記給電装置が設置されている一つ以上の充電区間の情報と前記給電装置が設置されていない一つ以上の非充電区間の情報を含む区間情報を取得する区間情報取得部と、
前記充電区間の終点における前記蓄電装置の充電電力量が当該終点を始点とする前記非充電区間で消費する前記走行装置の消費電力量よりも多くなるように前記走行装置を制御する走行制御部と、を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記区間情報取得部から取得する前記区間情報に基づいて前記充電電力量が前記消費電力量よりも多くなるように前記充電区間と前記非充電区間における前記作業車両の目標速度を算出する目標速度演算部と、
前記作業車両に搭載された位置センサから入力される前記作業車両の位置情報と、前記区間情報取得部から入力される前記区間情報とに基づいて、前記作業車両が走行中の区間が一つ以上の前記充電区間と一つ以上の前記非充電区間のうちのいずれであるかを判定する区間判定部と、をさらに備え、
前記走行制御部は、前記作業車両に搭載された速度センサから前記作業車両の速度を取得し、前記目標速度演算部によって算出された前記目標速度のうち前記区間判定部によって判定された前記充電区間または前記非充電区間に応じた前記目標速度で前記作業車両を走行させるように前記走行装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記目標速度演算部は、前記予定経路を走行する前記作業車両の走行時間が最短になる前記目標速度を算出することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記目標速度演算部は、前記充電区間における前記給電装置から前記蓄電装置への充電速度に基づいて前記充電区間における前記目標速度を算出することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記走行制御部は、前記充電区間における前記作業車両の速度の上限を前記充電区間における前記目標速度に制限することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項6】
複数の前記作業車両の各々に搭載された請求項1に記載の車両制御装置と、複数の前記作業車両の外部に設置されて複数の前記車両制御装置と通信可能に構成された車両管理装置と、を備えた車両管理システムであって、
前記車両管理装置は、前記車両制御装置へ前記区間情報を送信する区間情報送信部と、前記区間情報に基づいて前記充電電力量が前記消費電力量よりも多くなるように前記充電区間と前記非充電区間における前記作業車両の目標速度を算出して前記車両制御装置へ送信する目標速度演算部と、を備え、
前記車両制御装置は、前記作業車両に搭載された位置センサから入力される前記作業車両の位置情報と、前記区間情報取得部によって取得される前記区間情報とに基づいて、前記作業車両が走行中の区間が一つ以上の前記充電区間と一つ以上の前記非充電区間のうちのいずれであるかを判定する区間判定部をさらに備え、
前記車両制御装置の前記走行制御部は、前記作業車両に搭載された速度センサから前記作業車両の速度を取得し、前記車両管理装置から受信した前記目標速度のうち前記区間判定部によって判定された前記充電区間または前記非充電区間に応じた前記目標速度で前記作業車両を走行させるように前記走行装置を制御することを特徴とする車両管理システム。
【請求項7】
前記車両制御装置は、前記蓄電装置の前記充電電力量を前記車両管理装置へ送信する蓄電制御部をさらに備え、
前記車両管理装置は、前記作業車両が前記非充電区間の始点と終点を通過したときに前記車両制御装置から受信した前記充電電力量に基づいて前記非充電区間における前記作業車両の前記消費電力量を算出する消費電力算出部をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の車両管理システム。
【請求項8】
前記予定経路を走行する複数の前記作業車両の平均速度よりも各々の前記作業車両の速度が低くなる低速区間、または、前記予定経路を走行する複数の前記作業車両の平均消費電力量よりも各々の前記作業車両の消費電力量が小さくなる低消費電力区間に設置された前記給電装置をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の車両管理システム。
【請求項9】
前記予定経路は、前記作業車両が停車して作業を行う作業地点を含み、
前記車両制御装置は、前記蓄電装置の前記充電電力量を前記車両管理装置へ送信する蓄電制御部をさらに備え、
前記車両管理装置の前記目標速度演算部は、前後を走行する2台の前記作業車両のうち先行する前記作業車両が前記作業地点に到達してから後続の前記作業車両が前記作業地点に到達するまでの時間間隔を予測し、該時間間隔と前記後続の前記作業車両の前記車両制御装置から受信した前記充電電力量とに基づいて前記後続の前記作業車両の前記目標速度を修正することを特徴とする請求項6に記載の車両管理システム。
【請求項10】
前記予定経路は、前記作業車両が停車して作業を行う作業地点を含み、
前記車両管理装置の前記目標速度演算部は、前後を走行する2台の前記作業車両のうち先行する前記作業車両が前記作業地点での作業を終えてから後続の前記作業車両が前記作業地点に到達するまでの遅延時間の発生が予測された場合に、前記遅延時間を減少させるように先行する前記作業車両または後続の前記作業車両の前記目標速度を修正することを特徴とする請求項6に記載の車両管理システム。
【請求項11】
前記予定経路は、前記作業車両が停車して作業を行う作業地点を含み、
前記車両管理装置の前記目標速度演算部は、前後を走行する2台の前記作業車両のうち先行する前記作業車両が前記作業地点に停車して後続の前記作業車両が前記作業地点の手前で待機する待機時間の発生が予測された場合に、前記待機時間を減少させるように先行する前記作業車両または後続の前記作業車両の前記目標速度を修正することを特徴とする請求項6に記載の車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置および車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電動車両の制御装置に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。この従来の電動車両の制御装置において、電動車両は、非接触給電が可能な走路である給電レーンを走行しながら、供給された電力を蓄電池に蓄えるように構成されている。この従来の電動車両の制御装置は、電動車両が給電レーンの出口に到達した時点における、蓄電池の蓄電量についての目標値である出口目標蓄電量を予め設定する目標設定部と、電動車両の車速を制御する車速制御部と、を備える。この車速制御部は、電動車両が給電レーンの出口に到達した時点における蓄電量が出口目標蓄電量となるように車速を制御する(特許文献1、第0008段落、請求項1、要約、図4)。
【0003】
このような制御装置では、電動車両が給電レーンの出口に到達した時点における蓄電量、すなわち非接触給電が完了した時点における蓄電量が、目標設定部によって予め設定された出口目標蓄電量に一致するように、給電レーンを走行する電動車両の車速を車速部が制御する。出口目標蓄電量としては、たとえば次の充電可能場所(給電レーンや充電スタンド等)まで走行可能となるような蓄電量や、蓄電装置が満充電となるような蓄電量が設定される。上記のような制御により、電動車両への充電を適切に行うことが可能となる(特許文献1、第0009段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-068500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の電動車両の制御装置は、電動車両を次の充電可能場所まで走行させることは可能である。しかしながら、このような電動車両の制御装置を、たとえば、鉱山や建設現場などの作業現場において積み込み、運搬、および荷降ろしなどの一連の作業を繰り返し行う作業車両に適用した場合には、条件によって作業車両が電欠状態に陥り、作業現場全体の作業効率が低下するおそれがある。
【0006】
本開示は、作業車両が走行する予定経路の全体で作業車両の電欠状態を防止するとともに、作業効率の低下を抑制可能な車両制御装置および車両管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、外部の給電装置から電力の供給を受ける受電装置と、該受電装置から供給される電力により充電される蓄電装置と、該蓄電装置または前記受電装置から供給される電力により駆動力を発生させる走行装置と、を備えた作業車両に搭載される車両制御装置であって、前記作業車両の予定経路の全体で前記給電装置が設置されている一つ以上の充電区間の情報と前記給電装置が設置されていない一つ以上の非充電区間の情報を含む区間情報を取得する区間情報取得部と、各々の前記充電区間の終点における前記蓄電装置の充電電力量が当該終点を始点とする前記非充電区間における前記走行装置の消費電力量よりも多くなるように前記走行装置を制御する走行制御部と、を備えることを特徴とする車両制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の上記一態様によれば、作業車両が走行する予定経路の全体で作業車両の電欠状態を防止するとともに、作業効率の低下を抑制可能な車両制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る車両管理システムの実施形態1を示す作業現場の概略図。
図2】本開示に係る車両管理システムの実施形態1を示すブロック図。
図3】本開示に係る車両制御装置の実施形態1を示す機能ブロック図。
図4図3に示す車両制御装置の動作を説明するフロー図。
図5図4に示す走行装置を制御する処理の詳細を説明するフロー図。
図6図5に示す目標速度を算出する処理の詳細を示すフロー図。
図7】本開示に係る車両制御システムの実施形態2の車両管理装置のブロック図。
図8】実施形態2の車両管理システムの給電装置を設置する場所の例を示す模式図。
図9】本開示に係る車両制御システムの実施形態3の動作を説明するフロー図。
図10】作業車両の予定経路における速度調整区間の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示に係る車両制御装置および車両管理システムを説明する。
【0011】
[実施形態1]
図1および図2は、それぞれ、本開示に係る車両管理システムの実施形態1を示す作業現場WSの概略図および車両管理システム100のブロック図である。図3は、本開示に係る車両制御装置の実施形態である図2の車両制御装置110の機能ブロック図である。
【0012】
本実施形態の車両管理システム100は、たとえば、鉱山などの作業現場WSにおいて運用され、ダンプトラックなどの複数の作業車両10の運行を管理するシステムである。車両管理システム100は、たとえば、複数の作業車両10の各々に搭載された車両制御装置110と、作業車両10の外部に設置されて複数の車両制御装置110と通信可能に構成された車両管理装置120とを備えている。
【0013】
なお、図2では、図示の都合上、一台の作業車両10と、その作業車両10に搭載された一つの車両制御装置110のみを示しているが、実際には、車両管理装置120は、複数の作業車両10に搭載された複数の車両制御装置110と通信可能に構成されている。車両管理装置120は、たとえば、作業車両10の作業現場WS、または、作業車両10の作業現場WSから離れた車両管理センター20に設置されたサーバ21によって構成される。
【0014】
各々の作業車両10に搭載された複数の車両制御装置110と、作業車両10の外部に設置された車両管理装置120とは、たとえば、無線通信回線を介して情報通信可能に接続される。より具体的には、作業車両10は、無線通信機である通信装置11を備え、車両管理センター20には、無線通信機または有線通信機である通信装置22が設置されている。また、作業車両10の作業現場WSには、たとえば、複数の無線基地局1が設置されている。
【0015】
車両制御装置110は、たとえば、作業車両10の通信装置11、作業現場の無線基地局1、および車両管理センター20の通信装置22を介して、車両管理装置120へ情報を送信する。また、車両管理装置120は、車両管理センター20の通信装置22、作業現場の無線基地局1、および作業車両10の通信装置11を介して、車両制御装置110へ情報を送信する。なお、車両制御装置110と車両管理装置120のとの間の通信回線は、有線通信回線または衛星通信回線を含んでもよい。
【0016】
作業現場WSは、複数の作業車両10が走行する予定経路PRを含む。各々の作業車両10は、たとえば、予定経路PRを周回する。予定経路PRは、たとえば、作業車両10が積荷を搬送する搬送路であり、上り勾配AS、下り勾配DS、平坦路FR、および作業地点OSを含む。図1に示す例において、上り勾配ASの対向車線は下り勾配DSであり、下り勾配DSの対向車線は上り勾配ASである。また、作業地点OSは、たとえば、積込場OS1,OS3と、集積場OS2,OS4と、を含む。
【0017】
作業車両10は、作業地点OSである積込場OS1,OS3において、たとえば、油圧ショベルなどの作業機械30と協働して積込作業を行う。積込作業において、作業車両10は、積込場OS1,OS3の所定の位置に停車し、作業機械30は、たとえば、鉱石、砕石、または土砂などの積荷を作業車両10のボディに積み込む。また、作業車両10は、作業地点OSである集積場OS2,OS4において、たとえば、積荷を積載したボディの前端を上昇させ、ボディから積荷を落下させる荷降ろし作業を行う。
【0018】
また、作業現場WSの予定経路PRは、給電装置40が設置されている一つ以上の充電区間CSと、給電装置40が設置されていない一つ以上の非充電区間NCSとを含む。給電装置40は、たとえば、変電所に接続されて発電プラントから送電可能なトロリー架線を含む。作業車両10は、予定経路PRの充電区間CSを走行しているときに給電装置40から電力が供給される。
【0019】
図2に示すように、作業車両10は、たとえば、通信装置11と、位置センサ12と、速度センサ13と、操作装置14と、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)15とを備えている。また、作業車両10は、たとえば、受電装置16と、蓄電装置17と、走行装置18とを備えている。さらに、作業車両10には、たとえば、車両制御装置110と記憶装置130が搭載されている。
【0020】
通信装置11は、たとえば、作業車両10に搭載された無線通信装置であり、車両制御装置110に接続され、無線通信回線を介して車両管理センター20の通信装置22と通信を行う。位置センサ12は、たとえば、全球測位衛星システム(GNSS)の受信機と慣性計測装置(IMU)を含み、複数の測位衛星PSからの電波を受信して作業車両10の位置を検出して車両制御装置110へ出力する。なお、位置センサ12は地上局からの電波を用いて測位を行ってもよい。
【0021】
速度センサ13は、作業車両10の速度を検出して車両制御装置110へ出力する。速度センサ13は、たとえば、作業車両10の車輪の回転速度を検出する車輪速センサ、GNSSの受信機、IMU、またはこれらの組合せを含む。操作装置14は、たとえば、ステアリングホイール、操作レバー、操作ボタン、アクセルペダル、ブレーキペダルなどを含み、作業車両10のオペレータの操作に応じた信号を車両制御装置110へ出力する。
【0022】
HMI15は、たとえば、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーボードなどを含む。HMI15は、たとえば、車両制御装置110から入力される信号に基づいて作業車両10のオペレータに情報を通知し、作業車両10のオペレータからの情報の入力を受け付けて車両制御装置110へ入力する。
【0023】
受電装置16は、たとえば、伸縮可能なパンタグラフを含む。受電装置16は、たとえば、作業車両10のオペレータによる操作装置14の手動操作により伸長し、または、車両制御装置110から入力される制御信号により自動的に伸長することで、給電装置40に接続されて給電装置40から電力の供給を受ける。受電装置16は、車両制御装置110から入力される制御信号に基づいて、給電装置40から供給された電力を蓄電装置17と走行装置18の少なくとも一方へ供給する。
【0024】
蓄電装置17は、たとえば、充電区間CSにおいて給電装置40から受電装置16を介して供給される電力によって充電され、非充電区間NCSにおいて走行装置18へ電力を供給する。また、蓄電装置17は、たとえば、作業車両10の制動時に走行装置18の走行用モータから供給される回生電力によって充電される。蓄電装置17は、たとえば、複数のリチウムイオン二次電池と、バッテリマネジメントシステム(BMS)を含み、充電状態を含む各種の情報を車両制御装置110へ出力する。
【0025】
走行装置18は、たとえば、作業車両10の走行用のモータ、作業車両10の操舵用のモータ、トランスミッション、および制動装置を含む。走行装置18は、たとえば、充電区間CSにおいて、給電装置40から受電装置16を介して供給される電力によって走行用のモータを駆動させて作業車両10を走行させる。また、走行装置18は、たとえば、非充電区間NCSにおいて、蓄電装置17から供給される電力によって走行用のモータを駆動させて作業車両10を走行させる。
【0026】
作業車両10の手動運転時において、走行装置18は、オペレータによる操作装置14の操作に応じて車両制御装置110から入力される制御信号に基づいて、走行用のモータ、操舵用のモータ、トランスミッション、およびブレーキを動作させ、作業車両10を走行させる。また、作業車両10の自動運転時において、走行装置18は、車両制御装置110から入力される制御信号に基づいて、走行用のモータ、操舵用のモータ、トランスミッション、およびブレーキを動作させて作業車両10を走行させる。
【0027】
車両制御装置110は、たとえば、中央処理装置(CPU)、RAMやROMなどのメモリ、タイマ、および入出力部を含む一つ以上のマイクロコントローラによって構成されている。車両制御装置110は、前述のように、本実施形態の車両管理システム100の一部を構成している。記憶装置130は、たとえば、車両制御装置110に接続され、情報の記録および読み取りが可能な不揮発性の記憶媒体である。
【0028】
記憶装置130には、たとえば、オペレーティングシステム(OS)、各種の制御プログラム、アプリケーションプログラム、データベースなどが格納されている。また、記憶装置130には、たとえば、作業現場WSの予定経路PRの地図情報と、一つ以上の充電区間CSの情報および一つ以上の非充電区間NCSの情報を含む区間情報と、が格納されている。車両管理システム100は、たとえば、記憶装置130を含んでもよい。
【0029】
車両管理センター20は、前述のように、作業車両10の作業現場WS、または、作業現場WSから離れた場所に設置される。車両管理センター20は、たとえば、サーバ21と、通信装置22と、HMI23とを備えている。サーバ21は、たとえば、車両管理装置120と記憶装置140とを含む。車両管理装置120は、たとえば、車両制御装置110と同様に、一つ以上のマイクロコントローラによって構成されている。
【0030】
記憶装置140は、車両管理装置120に接続され、情報の記録および読み取りが可能な不揮発性の記憶媒体である。記憶装置140は、記憶装置130と同様に、OS、制御プログラム、アプリケーションプログラム、データベースなどが格納されている。記憶装置140には、たとえば、記憶装置130と同様に、作業現場WSの予定経路PRの地図情報と、一つ以上の充電区間CSの情報および一つ以上の非充電区間NCSの情報を含む区間情報と、が格納されている。また、記憶装置140には、たとえば、各々の作業車両10の経路情報が格納されている。車両管理システム100は、たとえば、記憶装置140を含んでもよい。
【0031】
以下の表1に、車両管理センター20の記憶装置140に格納される各々の作業車両10の経路情報RIの一例を示す。経路情報RIは、たとえば、表1に示すような表形式であり各々の作業車両10の車両識別情報と予定経路PRを含む。予定経路PRは、たとえば、一つの作業地点OSから他の作業地点OSまでの走行経路である。より具体的には、予定経路PRは、たとえば、積込場OS1,OS3から集積場OS2,OS4または集積場OS2,OS4から積込場OS1,OS3までの経路である。
【0032】
【表1】
【0033】
また、以下の表2に、作業車両10の記憶装置130および車両管理センター20の記憶装置140に格納される区間情報SIの一例を示す。区間情報SIは、たとえば、表2に示すような表形式であり、区間ID、距離、標準速度、標準消費電力量、給電装置40の有無、座標点列などの情報を含む。区間IDは、予定経路PRを分割した各々の区間に付与されている。すなわち、区間情報SIは、給電装置40が設置されている一つ以上の充電区間CSの情報と、給電装置40が設置されていない一つ以上の非充電区間NCSの情報を含む。
【0034】
【表2】
【0035】
通信装置22は、たとえば、有線通信回線を介して無線基地局1に接続されている。また、通信装置22は、車両管理センター20に設置され、無線通信回線を介して無線基地局1に接続される無線通信装置であってもよい。通信装置22は、有線通信回線および/または無線通信回線を介して作業車両10の通信装置11と情報通信可能に接続される。HMI23は、たとえば、表示装置、タッチパネル、キーボード、マウス、スピーカを含む。HMI23は、車両管理装置120から入力された情報をユーザに通知するとともに、ユーザによる情報の入力を受け付けて、入力された情報を車両管理装置120へ出力する。
【0036】
図3は、図2に示す作業車両10に搭載された車両制御装置110の機能ブロック図である。車両制御装置110は、たとえば、区間情報取得部111と、走行制御部112とを備えている。また、車両制御装置110は、たとえば、目標速度演算部113と、区間判定部114と、をさらに備えている。また、車両制御装置110は、たとえば、受電制御部115と、蓄電制御部116と、情報更新部117とを備えていてもよい。これら車両制御装置110の各部は、たとえば、CPUによってメモリや記憶装置130に記憶されたプログラムを実行することによって実現される車両制御装置110の各機能を表している。
【0037】
以下、図4から図6までを参照して、各々の作業車両10に搭載された車両制御装置110の動作を説明する。図4は、本実施形態の車両制御装置110の動作を説明するフロー図である。各々の作業車両10に搭載された車両制御装置110は、まず、区間情報SIを取得する処理P1を実施する。この処理P1において、車両制御装置110の区間情報取得部111は、車両管理センター20の車両管理装置120から通信装置22を介して送信された区間情報SIを、作業車両10の通信装置11を介して取得する。
【0038】
ここで車両制御装置110の区間情報取得部111が取得する区間情報SIは、たとえば、前述の表2に示すように、その車両制御装置110が搭載された作業車両10の予定経路PRを分割した各々の区間の区間ID、距離、目標速度、消費電力量、給電装置の有無の情報を含む。また、情報更新部117は、たとえば、通信装置11を介して取得した区間情報SIが、記憶装置130に格納されていない場合には、取得した区間情報SIを新たに記憶装置130に格納する。
【0039】
また、情報更新部117は、記憶装置130に格納された区間情報SIと、新たに取得した区間情報SIとが異なる場合には、記憶装置130に格納された過去の区間情報SIを、新たに取得した最新の区間情報SIに更新する。また、情報更新部117は、たとえば、通信装置11を介して、表1に示すような制御対象の作業車両10の経路情報RIを取得して、記憶装置130に格納し、または、記憶装置130に格納された経路情報RIを更新する。なお、情報更新部117は、たとえば、作業車両10のオペレータがHMI15を介して入力した区間情報SIおよび経路情報RIを取得して記憶装置130に格納してもよい。
【0040】
次に、車両制御装置110は、走行装置18を制御する処理P2を実行する。この処理P2において、走行制御部112は、作業車両10の予定経路PRにおいて、各々の充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量が、その充電区間CSの終点を始点とする非充電区間NCSにおける走行装置18の消費電力量よりも多くなるように、走行装置18を制御する。
【0041】
ここで、各々の充電区間CSにおいて蓄電装置17に充電される電力量E[kWh]は、たとえば、蓄電装置17への充電速度をcr[kWh/s]、各々の充電区間CSの距離をL[m]、各々の充電区間CSを走行する作業車両10の速度をV[m/s]として、以下の式(1)により算出することができる。
【0042】
E=cr×L/V ・・・(1)
【0043】
したがって、非充電区間NCSにおける消費電力量をEd[kWh]とすると、E>Edを満たせば、その非充電区間NCSの直前の充電区間CSにおける蓄電装置17の充電電力量Eが、その非充電区間NCSにおける消費電力量Edよりも多くなる。その結果、非充電区間NCSにおいて作業車両10が電欠状態になることを防止できる。
【0044】
非充電区間NCSにおいて作業車両10が電欠状態になると、作業車両10が自走できなくなり、他の作業車両10による牽引や移動式の充電装置による充電が必要になるなど、作業現場WSの生産性が低下する。上記の充電電力量E>消費電力量Edを満たし、作業車両10の電欠状態を防止するためには、充電区間CSにおける充電速度crを考慮して、充電区間CSにおける充電時間Tc=L/Vを確保する必要がある。
【0045】
充電時間Tcは、充電区間CSの距離Lが長いほど、また充電区間CSを走行する作業車両10の速度Vが低いほど、長くすることができる。つまり、充電区間CSに滞在する時間を長くするには、充電区間CSの距離Lを長くするか、充電区間CSを走行する作業車両10の速度Vを低くする必要がある。しかしながら、充電区間CSの距離Lを長くするには、給電装置40の敷設距離を長くする必要があり、コストが増大する要因となる。また、作業車両10の速度Vを必要以上に低下させると、作業現場WSの生産性が低下する。
【0046】
図5は、図4に示す走行装置18を制御する処理P2の詳細を説明するフロー図である。車両制御装置110は、図5に示す処理P2を開始すると、まず、目標速度を算出する処理P21を実行する。この処理P21において、目標速度演算部113は、たとえば、区間情報取得部111から取得する区間情報SIに基づいて、充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量が、その充電区間CSの終点を始点とする非充電区間NCSを走行する際に消費する走行装置18の消費電力量よりも多くなるように、各々の充電区間CSと各々の非充電区間NCSにおける作業車両10の目標速度を算出する。
【0047】
たとえば、充電区間CSと非充電区間NCSの目標速度をそれぞれの区間の制限速度とした場合に、充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量がその充電区間CSの終点を始点とする非充電区間NCSを走行する際に消費する走行装置18の消費電力量よりも少ないとする。この場合、その充電区間CSまたは非充電区間NCSの少なくとも一方において、作業車両10の目標速度を制限速度よりも低下させる。これにより、充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量が、その充電区間CSの終点を始点とする非充電区間NCSを走行する際に消費する走行装置18の消費電力量よりも多くなるようにして、作業車両10の電欠を防止する。
【0048】
図6は、図5に示す目標速度を算出する処理P21の詳細を示すフロー図である。目標速度演算部113は、図6に示す処理P21を開始すると、まず、各々の充電区間CSおよび各々の非充電区間NCSを走行する際に消費する走行装置18の消費電力量を算出する処理P211を実行する。この処理P211において、目標速度演算部113は、たとえば、各々の区間の座標点列、標準速度、および積荷を含む作業車両10の重量等に基づいて、各々の区間における走行装置18の消費電力量を算出する。
【0049】
より詳細には、走行装置18の消費電力量は、作業車両10の位置エネルギーの変化と、作業車両10の運動エネルギーの変化と、その他の消費電力との和として算出することができる。ここで、作業車両10の位置エネルギーの変化は、積荷を含む作業車両10の重量、作業車両10の走行距離、および作業車両10の走行経路の勾配に依存し、運動エネルギーの変化は、積荷を含む作業車両10の重量および作業車両10の速度に依存する。また、その他の消費電力は、ラジエータなどの補機の消費電力と時間との積によって求められる。
【0050】
次に、目標速度演算部113は、たとえば、各々の充電区間CSにおける必要充電時間を算出する処理P212を実行する。より詳細には、目標速度演算部113は、たとえば、以下の式(2)により、各々の充電区間CSにおいて必要な充電時間Tcを算出する。なお、以下の式(2)において、Edは、各々の非充電区間NCSにおける走行装置18の消費電力量であり、crは、各々の充電区間CSの充電速度である。
【0051】
Tc=Ed/cr ・・・(2)
【0052】
各々の充電区間CSにおける給電装置40から蓄電装置17への充電速度cr、すなわち単位時間当たりの充電量は、給電装置40の供給電力および蓄電装置17の充放電性能によって変動する。具体的には、給電装置40は、発電プラントから送電された電力を、受電装置16を介して蓄電装置17へ供給する。そのため、たとえば、発電プラントが太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用して発電する場合、天候や時間帯によって発電量が制限される。このような場合、充電速度crは、給電装置40による電力供給量の予測値に基づいて推定することができる。
【0053】
上記式(2)を満たすことで、各々の非充電区間NCSにおける走行装置18の消費電力量を、その非充電区間NCSの直前の充電区間CSにおける充電電力量で賄うことが可能になる。次に、目標速度演算部113は、たとえば、各々の充電区間CSの目標速度を算出する処理P213を実行する。この処理P213において、目標速度演算部113は、たとえば、以下の式(3)により、各々の充電区間CSにおける作業車両10の目標速度Vcを算出する。なお、以下の式(3)において、Lは、各々の充電区間CSの距離であり、Tcは、上記式(2)で算出した充電時間である。
【0054】
Vc=L/Tc ・・・(3)
【0055】
ここで、目標速度演算部113は、たとえば、予定経路PRを走行する作業車両10の走行時間が最短になる目標速度を算出するようにしてもよい。具体的には、目標速度演算部113は、充電時間Tcを確保可能な最大の速度を、充電区間CSの目標速度Vcとすることができる。また、目標速度演算部113は、たとえば、各々の非充電区間NCSの直前の充電区間CSの充電電力量を超えない範囲で、各々の非充電区間NCSにおける作業車両10の目標速度を増加させてもよい。これにより、作業車両10の運搬作業の生産性を向上させることができる。
【0056】
また、目標速度演算部113は、たとえば、蓄電装置17の充電電力量すなわち充電状態が所定値以下にならない範囲で作業車両10の目標速度を増加させ、予定経路PRを走行する作業車両10の走行時間が最短になるようにしてもよい。たとえば、ある非充電区間NCSにおける消費電力量がその直前の充電区間CSにおける充電電力量を超えたとしても、そこで不足する電力量をこれらの区間の前後の充電区間CSで蓄電装置17に充電し、予定経路PRの全体で作業車両10の電欠状態を回避してもよい。
【0057】
以上により、図5および図6に示す目標速度を算出する処理P21が終了する。この処理P21の終了後、車両制御装置110は、たとえば、図5に示すように、作業車両10が走行中の区間を判定する処理P22を実行する。この処理P22において、区間判定部114は、作業車両10に搭載された位置センサ12から入力される作業車両10の位置情報と、区間情報取得部111から入力される区間情報SIを取得する。また、区間判定部114は、作業車両10の位置情報と区間情報SIとに基づいて、作業車両10が走行中の区間が一つ以上の充電区間CSと一つ以上の非充電区間NCSのうちのいずれであるかを判定する。
【0058】
次に、車両制御装置110は、目標速度を決定する処理P23を実行する。この処理P23において、走行制御部112は、作業車両10に搭載された速度センサ13から作業車両10の速度を取得する。また、走行制御部112は、目標速度演算部113によって算出された目標速度の中から、区間判定部114によって判定された充電区間CSまたは非充電区間NCSに応じた目標速度を、作業車両10の目標速度として決定する。
【0059】
次に、車両制御装置110は、走行装置18を制御する処理P24を実行する。この処理P24において、走行制御部112は、前の処理P23で決定した目標速度で作業車両10を走行させるように、走行装置18を制御する。たとえば、車両制御装置110によって作業車両10の自動運転を行う場合には、走行制御部112は、速度センサ13によって取得した作業車両10の速度と目標速度の偏差を0に近づけるように、走行装置18を制御する。
【0060】
また、オペレータが作業車両10の手動運転を行う場合には、走行制御部112は、たとえば、走行制御部112を制御して、各々の充電区間CSにおける作業車両10の速度の上限を各々の充電区間CSにおける目標速度Vcに制限する。また、走行制御部112は、たとえば、HMI15を構成する表示装置に目標速度を表示したり、HMI15を構成するスピーカから音声を出力したりして、オペレータが作業車両10を目標速度で走行させるように促す。
【0061】
受電制御部115は、たとえば、区間判定部114によって作業車両10が充電区間CSを走行していることが判定された場合に、受電装置16を伸長させて給電装置40に接触させる。また、受電制御部115は、たとえば、区間判定部114によって作業車両10が非充電区間NCSを走行していることが判定された場合に、受電装置16を収縮させる。なお、受電制御部115は、作業車両10のオペレータの操作に基づいて受電装置16を伸縮させてもよい。
【0062】
蓄電制御部116は、たとえば、区間判定部114によって作業車両10が充電区間CSを走行していることが判定された場合に、蓄電装置17を制御して、給電装置40から供給される電力によって蓄電装置17の二次電池を充電する。また、蓄電制御部116は、たとえば、区間判定部114によって作業車両10が非充電区間NCSを走行していることが判定された場合に、蓄電装置17を制御して、蓄電装置17の二次電池に充電された電力を走行装置18へ供給する。
【0063】
なお、蓄電制御部116は、たとえば、受電装置16の動作に基づいて、蓄電装置17の二次電池の充放電を切り替えてもよい。以上により、図4および図5に示す処理P2が終了し、図4に示す車両制御装置110の動作が終了する。
【0064】
以下、本実施形態の車両制御装置110の作用を説明する。
【0065】
たとえば、露天掘りの鉱山などの作業現場において稼働する超大型ダンプトラックは、車体に搭載したディーゼルエンジンで発電し、モータを駆動させて走行する方式が普及している。しかし、鉱石などの搬送作業に必要なエネルギーは非常に大きいため、このような方式では地球温暖化ガスの排出量が多くなるという課題がある。そのため、ディーゼルエンジンによる発電ではなく、車体に搭載した蓄電装置によってモータを駆動するダンプトラックの開発が進められている。
【0066】
しかしながら、搬送作業に必要なエネルギー量に対し、たとえば、リチウムイオン二次電池などの二次電池を用いた蓄電装置の容量が不十分であるため、作業車両に対する頻繁な充電が必要になる。そのため、たとえば、駐機場に設置した充電ステーションで充電を行う場合には、頻繁に搬送作業を中断することになる。一方、鉱山などの作業現場において高い生産性を実現するためには、作業車両に対する作業機械の積込作業を連続して行う必要がある。作業車両が充電のために作業を中断することを考慮すると、作業機械の積込作業が中断されないようにするためには、1台の作業機械に対して従来よりも多くの作業車両を配備する必要があり、コストを増加させる要因となる。
【0067】
前述の特許文献1に記載された電動車両は、非接触給電が可能な走路である給電レーンを走行しながら、供給された電力を蓄電池に蓄えるように構成されている。しかしながら、給電レーンの仕様によっては、蓄電池への充電速度が不十分で蓄電池への充電を十分に行うことができず、搬送作業などの作業中に電動車両が電欠状態になるおそれがある。また、電動車両への電欠状態を回避するために、給電レーンを走行する電動車両の速度を低下させると、作業現場全体の作業効率が低下するおそれがある。
【0068】
これに対し、本実施形態の車両制御装置110は、作業車両10に搭載される車載制御装置である。作業車両10は、外部の給電装置40から電力の供給を受ける受電装置16と、その受電装置16から供給される電力により充電される蓄電装置17と、その蓄電装置17または受電装置16から供給される電力により駆動力を発生させる走行装置18と、を備えている。車両制御装置110は、区間情報取得部111と、走行制御部112とを備えている。区間情報取得部111は、作業車両10の予定経路PRの全体で給電装置40が設置されている一つ以上の充電区間CSの情報と給電装置40が設置されていない一つ以上の非充電区間NCSの情報を含む区間情報SIを取得する。走行制御部112は、各々の充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量が、その充電区間CSの終点を始点とする非充電区間NCSにおける走行装置18の消費電力量よりも多くなるように、走行装置18を制御する。
【0069】
このような構成により、本実施形態の車両制御装置110によれば、各々の充電区間CSにおいて、その充電区間CSの次の非充電区間NCSで走行装置18によって消費される電力量よりも多い電力量を蓄電装置17に蓄えることができる。これにより、作業車両10が走行する予定経路PRの全体で作業車両10の電欠状態を防止することができる。また、作業車両10の電欠状態を防止することで、作業現場WSにおける作業効率の低下を抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態の車両制御装置110は、前述のように、目標速度演算部113と、区間判定部114とをさらに備えている。目標速度演算部113は、区間情報取得部111から取得する区間情報SIに基づいて蓄電装置17の充電電力量が走行装置18の消費電力量よりも多くなるように各々の充電区間CSと各々の非充電区間NCSにおける作業車両10の目標速度を算出する。区間情報取得部111は、作業車両10に搭載された位置センサ12から入力される作業車両10の位置情報と、区間情報取得部111から入力される区間情報SIとに基づいて、作業車両10が走行中の区間が一つ以上の充電区間CSと一つ以上の非充電区間NCSのうちのいずれであるかを判定する。走行制御部112は、作業車両10に搭載された速度センサ13から作業車両10の速度を取得する。また、走行制御部112は、目標速度演算部113によって算出された目標速度のうち区間判定部114によって判定された充電区間CSまたは非充電区間NCSに応じた目標速度で作業車両10を走行させるように走行制御部112を制御する。
【0071】
このような構成により、本実施形態の車両制御装置110によれば、走行制御部112によって走行装置18を制御して、各々の充電区間CSおよび非充電区間NCSに応じた目標速度で作業車両10を走行させることができる。その結果、各々の充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量が、その充電区間CSの終点を始点とする非充電区間NCSにおける走行装置18の消費電力量よりも多くなる。したがって、作業車両10が走行する予定経路PRの全体で作業車両10の電欠状態を防止することができ、作業現場WSにおける作業効率の低下を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態の車両制御装置110において、目標速度演算部113は、予定経路PRを走行する作業車両10の走行時間が最短になる目標速度を算出する。このような構成により、本実施形態の車両制御装置110によれば、作業車両10による搬送作業の生産性が向上し、作業現場WSにおける作業効率を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態の車両制御装置110において、目標速度演算部113は、各々の充電区間CSにおける給電装置40から蓄電装置17への充電速度crに基づいて各々の充電区間CSにおける目標速度を算出する。このような構成により、本実施形態の車両制御装置110によれば、作業車両10の速度を必要以上に低下させることなく、蓄電装置17に十分な電力量を充電することが可能になる。また、給電装置40の供給可能な電力量が変動した場合でも、作業車両10の電欠状態を防止することができる。
【0074】
また、本実施形態の車両制御装置110において、走行制御部112は、各々の充電区間CSにおける作業車両10の速度の上限を各々の充電区間CSにおける目標速度に制限する。このような構成により、本実施形態の車両制御装置110によれば、たとえば、作業車両10の手動運転時に充電区間CSにおいて作業車両10が目標速度を超過して蓄電装置17の充電電力量が不足することを防止できる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、作業車両10が走行する予定経路PRの全体で作業車両10の電欠状態を防止するとともに、作業効率の低下を抑制可能な車両制御装置110を提供することができる。
【0076】
[実施形態2]
以下、図1から図3図7および図8を参照して、本開示に係る車両管理システムの実施形態を説明する。図7は、本実施形態の車両管理システム100を構成する車両管理装置120の機能ブロック図である。本実施形態の車両管理システム100は、前述の実施形態1と同様に、複数の作業車両10の各々に搭載された車両制御装置110と、複数の作業車両10の外部に設置されて複数の車両制御装置110と通信可能に構成された車両管理装置120と、を備えている。
【0077】
本実施形態の車両管理システム100を構成する車両制御装置110は、図3に示す目標速度演算部113を有しない以外は、前述の実施形態1の車両制御装置110と同様の構成を有している。また、本実施形態の車両管理システム100を構成する車両管理装置120は、図7に示すように、区間情報送信部121と、目標速度演算部122を備えている。
【0078】
また、車両管理装置120は、たとえば、地図情報更新部123と、消費電力算出部124とを備えている。これら車両管理装置120の各部は、たとえば、車両管理装置120を構成するCPUによってメモリまたは記憶装置140に記憶されたプログラムを実行することで実現される車両管理装置120の各機能を表している。
【0079】
区間情報送信部121は、たとえば、通信装置22を介して、前述の実施形態1の表2に示すような区間情報SIを、各々の作業車両10の車両制御装置110へ送信する。目標速度演算部122は、たとえば、前述の実施形態1における車両制御装置110の目標速度演算部113と同様の機能を有している。すなわち、目標速度演算部122は、各々の作業車両10の目標速度を算出して各々の作業車両10の車両制御装置110へ送信する。
【0080】
ここで、目標速度演算部122は、たとえば、区間情報送信部121から区間情報SIを取得する。そして、目標速度演算部122は、取得した区間情報SIに基づいて各々の充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量がその充電区間CSの終点を始点とする非充電区間NCSにおける走行装置18の消費電力量よりも多くなるように、各々の充電区間CSと各々の非充電区間NCSにおける作業車両10の目標速度を算出する。
【0081】
地図情報更新部123は、たとえば、HMI23を介して入力された情報、または、通信装置22を介して作業車両10から受信した情報に基づいて、記憶装置140に格納された地図情報を更新する。より詳細には、たとえば、作業機械30の採掘作業および作業車両10の搬送作業によって、予定経路PR、積込場OS1、または集積場OS2の形状が変化した場合に、地図情報更新部123は、オペレータが実際の形状を反映するようにHMI23を介して入力した情報に基づいて、記憶装置140に格納された地図データを更新する。また、地図情報更新部123は、たとえば、通信装置22を介して作業車両10から受信した蓄電装置17の充電電力量の変化に基づいて、地図データにおける各区間の消費電力量の情報を更新する。
【0082】
消費電力算出部124は、たとえば、予定経路PRの勾配、積荷を含む作業車両10の重量および速度などを用い、位置エネルギーおよび運動エネルギーの変化などに基づいて、充電区間CSおよび非充電区間NCSを含む予定経路PRの各区間における作業車両10の消費電力量を算出する。また、消費電力算出部124は、たとえば、積荷を含む作業車両10の重量、作業車両10の位置および速度、作業車両10の蓄電装置17の充電電力量の履歴などの情報に基づいて、作業車両10の消費電力を推定してもよい。
【0083】
各々の作業車両10に搭載された車両制御装置110は、実施形態1と同様に区間判定部114を備えている。区間判定部114は、作業車両10に搭載された位置センサ12から入力される作業車両10の位置情報と、区間情報取得部111によって取得される区間情報SIとに基づいて、作業車両10が走行中の区間が一つ以上の充電区間CSと一つ以上の非充電区間NCSのうちのいずれであるかを判定する。
【0084】
また、車両制御装置110の走行制御部112は、作業車両10に搭載された速度センサ12から作業車両10の速度を取得する。さらに、走行制御部112は、車両管理装置120から受信した作業車両10の目標速度のうち区間判定部114によって判定された充電区間CSまたは非充電区間NCSに応じた目標速度で作業車両10を走行させるように走行装置18を制御する。
【0085】
また、各々の作業車両10に搭載された車両制御装置110は、実施形態1と同様に蓄電制御部116を備えている。蓄電制御部116は、たとえば、蓄電装置17の充電電力量を、通信装置11を介して車両管理センター20の車両管理装置120へ送信する。そして、車両管理装置120の消費電力算出部124は、作業車両10が非充電区間NCSの始点と終点を通過したときに車両制御装置110から受信した充電電力量に基づいて、非充電区間NCSにおける作業車両10の消費電力量を算出する。
【0086】
図8は、本実施形態の車両管理システム100において給電装置40を設置する場所の例を示す模式図である。本実施形態の車両管理システム100は、たとえば、一つ以上の給電装置40をさらに備えてもよい。この場合、給電装置40は、たとえば、作業車両10の予定経路PRの低速区間LSSまたは低消費電力区間LESに設置される。
【0087】
低速区間LSSは、たとえば、図8に示すように、予定経路PRのうち、作業車両10が低速で走行する必要がある所定の曲率半径以下のカーブまたは湾曲部、および、作業車両10の速度が他の部分よりも低下する上り勾配ASとその直後の部分を含む。また、低消費電力区間LESは、たとえば、図8に示すように、作業車両10の走行装置18が回生ブレーキによって発電する下り勾配DSとその前後の部分を含む。
【0088】
以下、本実施形態の車両管理システム100の作用を説明する。
【0089】
前述のように、本実施形態の車両管理システム100は、複数の作業車両10の各々に搭載された車両制御装置110と、複数の作業車両10の外部に設置されて複数の車両制御装置110と通信可能に構成された車両管理装置120と、を備えている。車両管理装置120は、車両制御装置110へ区間情報SIを送信する区間情報送信部121と、区間情報SIに基づいて充電電力量が消費電力量よりも多くなるように各々の充電区間CSと各々の非充電区間NCSにおける作業車両10の目標速度を算出して車両制御装置110へ送信する目標速度演算部122と、を備えている。車両制御装置110は、作業車両10に搭載された位置センサ12から入力される作業車両10の位置情報と、区間情報取得部111によって取得される区間情報SIとに基づいて、車両制御装置110が走行中の区間が一つ以上の充電区間CSと一つ以上の非充電区間NCSのうちのいずれであるかを判定する区間判定部114を備えている。車両制御装置110の走行制御部112は、作業車両10に搭載された速度センサ13から作業車両10の速度を取得し、車両管理装置120から受信した目標速度のうち区間判定部114によって判定された充電区間CSまたは非充電区間NCSに応じた目標速度で作業車両10を走行させるように走行装置18を制御する。
【0090】
このような構成により、本実施形態の車両管理システム100によれば、前述の実施形態1の車両制御装置110と同様の効果を奏することができる。すなわち、本実施形態の車両管理システム100によれば、各々の充電区間CSにおいて、その充電区間CSの次の非充電区間NCSで走行装置18によって消費される電力量よりも多い電力量を作業車両10の蓄電装置17に蓄えることができる。これにより、作業車両10が走行する予定経路PRの全体で作業車両10の電欠状態を防止することができる。また、作業車両10の電欠状態を防止することで、作業現場WSにおける作業効率の低下を抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態の車両管理システム100において、車両制御装置110は、蓄電装置17の充電電力量を車両管理装置120へ送信する蓄電制御部116を備えている。車両管理装置120は、作業車両10が非充電区間NCSの始点と終点を通過したときに車両制御装置110から受信した充電電力量に基づいて非充電区間NCSにおける作業車両10の消費電力量を算出する消費電力算出部124を備えている。このような構成により、本実施形態の車両管理システム100によれば、非充電区間NCSにおける各々の作業車両10の走行装置18の消費電力量を容易かつ正確に求めることができる。
【0092】
また、本実施形態の車両管理システム100は、給電装置40をさらに備えている。給電装置40は、予定経路PRを走行する複数の作業車両10の平均速度よりも各々の作業車両10の速度が低くなる低速区間LSSに設置される。または、給電装置40は、予定経路PRを走行する複数の作業車両10の平均消費電力量よりも各々の作業車両10の消費電力量が小さくなる低消費電力区間LESに設置される。
【0093】
このような構成により、本実施形態の車両管理システム100によれば、作業車両10が低速で走行する低速区間LSSに給電装置40を設置することで、作業現場WSの生産性の低下を抑制しつつ、充電区間CSにおける蓄電装置17の充電時間を長くすることができる。また、低速区間LSSに給電装置40を設置することで、充電区間CSの距離を削減して、コストを低減することができる。また、作業車両10消費電力量が小さい低消費電力区間LESに給電装置40を設置することで、給電装置40から蓄電装置17へより多くの電力を供給して充電速度crを上昇させることができる。
【0094】
なお、下り勾配DSおよびその直前またはカーブでは、たとえば、回生ブレーキによる作業車両10の制動を行うために、勾配や曲率半径に応じた制限速度が設定される。したがって、下り勾配DSは、低消費電力区間LESであるだけでなく、低速区間LSSでもあり、カーブは、低速区間LSSであるだけでなく、低消費電力区間LESでもある。なお、低速区間LSSは、図8に示す例の他、予定経路PRにおいて、作業車両10の交通量、建物や設備からの距離、路面の状態などの理由によって、他の部分よりも低い制限速度が設定されている区間であってもよい。
【0095】
[実施形態3]
以下、図1から図3図7図9および図10を参照して、本開示に係る車両管理システムの実施形態3を説明する。図9は、本実施形態の車両管理システム100の動作を説明するフロー図である。図10は、作業車両10の予定経路PRにおける速度調整区間VASの一例を示す概略図である。
【0096】
本実施形態の車両管理システム100は、図7に示す車両管理装置120の目標速度演算部122の動作が、前述の実施形態2の車両管理システム100と異なっている。本実施形態の車両管理システム100のその他の構成は、前述の実施形態2の車両管理システム100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0097】
前述のように、作業現場WSにおける作業車両10の予定経路PRは、たとえば、積込場OS1や集積場OS2など、作業車両10が停車して積荷の積込みや荷降ろしなどの作業を行う作業地点OSを含んでいる。車両管理システム100は、図9に示す処理フローを開始すると、速度調整の対象となる作業車両10が速度調整区間VASの始点に到達したか否かを判定する処理P1を実行する。
【0098】
この処理P1において速度調整の対象となる作業車両10は、たとえば、図10に示すように、作業地点OSへ向けて先行して走行する作業車両10の後方を、同一の作業地点OSへ向けて走行する後続の作業車両10である。速度調整区間VASは、たとえば、充電区間CSの手前の非充電区間NCSにおいて充電区間CSに隣接して設定され、速度調整区間VASの終点が充電区間CSの始点と一致している。なお、充電区間CSと速度調整区間VASとは、離れていてもよい。
【0099】
この処理P1において、車両管理センター20に設置された車両管理装置120の目標速度演算部122は、たとえば、通信装置22を介して各々の作業車両10から位置情報を受信し、対象となる後続の作業車両10が速度調整区間VASの始点に到達したか否かを判定する。目標速度演算部122が、対象となる作業車両10が速度調整区間VASに到達していないこと(NO)を判定すると、車両管理システム100は、図9に示す処理フローを終了させる。その後、車両管理システム100は、図9に示す処理フローを所定の周期で繰り返し実行する。
【0100】
一方、処理P1において、目標速度演算部122が、対象となる作業車両10が速度調整区間VASに到達したこと(YES)を判定すると、車両管理システム100は、次の処理P2を実行する。この処理P2において、目標速度演算部122は、たとえば、各々の作業車両10の速度と作業地点OSまでの距離に基づいて、先行する作業車両10が作業地点OSに到達してから、後続の作業車両10が作業地点OSに到達するまでの時間間隔を予測する。
【0101】
次に、車両管理システム100は、後続の作業車両10が作業地点OSに到着するまでに、作業機械30に待機時間が発生するか否かを判定する処理P3を実行する。作業地点OSが積込場OS1である場合、先行する作業車両10が作業地点OSに到着すると、作業機械30は、作業車両10に積荷を積み込む。この作業機械30による積込作業は、一定の時間を要するが、後続の作業車両10の作業地点OSへの到着が遅れると、作業機械30が後続の作業車両10の到着を待つ待機時間が発生する。
【0102】
より詳細には、作業機械30に待機時間が発生するか否かは、たとえば、以下の式(4)に基づいて判定することができる。なお、以下の式(4)において、TIは、先行する作業車両10が作業地点OSに到着してから後続の作業車両10が到着するまでの時間間隔である。WTsは、後続の作業車両10の標準待機時間である。LTは、作業機械30が作業車両10へ積荷を積み込む積込作業に要する積込時間である。
【0103】
TI>LT+WTs ・・・(4)
【0104】
なお、後続の作業車両10の標準待機時間WTsは、作業機械30に待機時間が発生して作業現場WSの生産性が低下するのを防止するために設定される。先行する作業車両10と後続の作業車両10との時間間隔TIは、たとえば、作業車両10が手動運転である場合のオペレータの運転による速度の変化、交差点での待機時間、他の作業車両10との衝突回避などによって変動する。そのため、積込時間LTと標準待機時間WTsを一定値とすると、時間間隔TIが上記式(4)を満たす場合に、作業機械30に待機時間が発生する。
【0105】
また、作業機械30の待機時間WTmは、たとえば、以下の式(5)によって算出することができる。ただし、以下の式(5)において、作業機械30の待機時間WTmは、ゼロ以上の値とし、待機時間WTmが負の値になる場合は、待機時間WTm=0とする。
【0106】
WTm=TI-LT+WTs ・・・(5)
【0107】
図9に示す処理P3において、車両管理装置120の目標速度演算部122は、たとえば、上記式(4)を満たす場合、または、上記式(5)に基づく作業機械30の待機時間WTmがゼロよりも大である場合に、作業機械30に待機時間WTmが発生すること(YES)を判定する。
【0108】
この場合、車両管理システム100は、次の処理P4を実行する。この処理P4において、車両管理装置120の目標速度演算部122は、図10に示すように、後続の作業車両10の充電区間CSの始点における蓄電装置17の充電電力量を予測する。より詳細には、目標速度演算部122は、たとえば、通信装置22を介して、対象となる後続の作業車両10から蓄電装置17の現在の充電電力量と位置情報を取得する。
【0109】
また、目標速度演算部122は、たとえば、対象の作業車両10の位置情報と、充電区間CSの位置情報とに基づいて、作業車両10が現在の位置から充電区間CSの始点まで走行したときの消費電力量を消費電力算出部124から取得する。さらに、目標速度演算部122は、対象の作業車両10の蓄電装置17の現在の充電電力量と、充電区間CSまでの消費電力量とに基づいて、その作業車両10が充電区間CSの始点に到達したときの蓄電装置17の充電電力量Eを予測する。
【0110】
次に、車両管理システム100は、対象となる後続の作業車両10の目標速度を増加させる処理P5を実行する。この処理P5において、車両管理装置120の目標速度演算部122は、速度調整区間VASにおける対象の作業車両10の目標速度を増加させる。ここで、目標速度演算部122は、たとえば、速度調整区間VASにおける作業車両10の消費電力の増加量ΔEが、前の処理P4で予測した充電区間CSの始点における蓄電装置17の充電電力量E以下となる範囲で、作業車両10の目標速度を増加させる。
【0111】
なお、速度調整区間VASにおける作業車両10の消費電力の増加量ΔEは、たとえば、作業車両10の速度、積荷を含む重量、速度調整区間VASの勾配などに基づいて算出することができる。その後、車両管理システム100は、車両管理装置120から対象の作業車両10へ、前の処理P5で増加させた目標速度を送信する処理P6を実行する。これにより、速度調整区間VASにおいて対象の作業車両10に電欠状態を生じさせることなく速度を増加させ、作業地点OSにおける作業機械30の待機時間WTmを減少させ、またはゼロにすることができる。その後、車両管理システム100は、図9に示す処理フローを終了させ、所定の周期で繰り返し実行する。
【0112】
また、前述の処理P3において、車両管理装置120の目標速度演算部122によって作業機械30の待機時間WTmが発生しないこと(NO)が判定されると、車両管理システム100は、後続の作業車両10の待機時間WTvを予測する処理P7を実行する。すなわち、上記の式(4)を満たさず、作業機械30の待機時間WTmがゼロになる場合、先行の作業車両10に対する積荷の積み込みが終了するまで、後続の作業車両10に待機時間WTvが発生する。目標速度演算部122は、たとえば、以下の式(6)を用い、前述の積込時間LT、標準待機時間WTs、および時間間隔TIに基づいて、後続の作業車両10の待機時間WTvを算出する。
【0113】
WTv=LT+WTs-TI ・・・(6)
【0114】
ただし、待機時間WTvはゼロ以上の値とし、待機時間WTvが負の値になる場合は、待機時間WTv=0とする。また、作業車両10の待機時間WTvと作業車両10の待機時間WTmは同時に正の値にはならない。すなわち、作業機械30のみに待機時間WTmが発生するか、または、作業車両10のみに待機時間WTvが発生するかのいずれかであり、作業機械30の待機時間WTmと作業車両10の待機時間WTvが同時に発生することはない。
【0115】
次に、車両管理システム100は、速度調整区間VASに到達した後続の作業車両10の充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量を予測する処理P8を実行する。この処理P8において、車両管理装置120の目標速度演算部122は、たとえば、通信装置22を介して対象の作業車両10から現在の速度と蓄電装置17の現在の充電電力量を取得する。また、目標速度演算部122は、たとえば、作業車両10の目標速度と給電装置40の充電速度crに基づいて、充電区間CSにおいて充電される蓄電装置17の充電電力量を算出する。
【0116】
また、目標速度演算部122は、たとえば、消費電力算出部124から、作業車両10の現在の作業車両10の速度に応じた速度調整区間VASにおける消費電力量と、充電区間CSにおける消費電力量を取得する。そして、目標速度演算部122は、蓄電装置17の現在の充電電力量と、充電区間CSにおいて蓄電装置17に充電される充電電力量と、速度調整区間VASおよび充電区間CSにおける消費電力量に基づいて、充電区間CSの終点における蓄電装置17の充電電力量を予測する。
【0117】
次に、車両管理システム100は、たとえば、目標速度演算部122により、対象の作業車両10の蓄電装置17の満充電量に対する、前の処理P8で予測した充電電力量の不足量Esを予測する。蓄電装置17の満充電量は、二次電池の劣化などによって変化する場合があるが、作業車両10から蓄電装置17の充電電力量の履歴を取得することで、蓄電装置17の直近の満充電量を推定することができる。
【0118】
次に、車両管理システム100は、対象となる後続の作業車両10の待機時間WTvが発生し、かつ、充電区間CSの終点における対象の作業車両10の蓄電装置17の満充電量に対する不足量Esが正であるか否かを判定する処理P10を実行する。この処理P10において、目標速度演算部122は、たとえば、作業車両10の待機時間WTvが発生し、かつ、充電区間CSの終点における蓄電装置17の満充電量に対する不足量Esが正であること(YES)を判定すると、作業車両10の目標速度を低減する処理P11を実行する。
【0119】
この処理P11において、目標速度演算部122は、たとえば、充電区間CSにおける作業車両10の走行時間の増加量ΔTが、前述の処理P7で予測した作業車両10の待機時間WTvを超えないように、充電区間CSにおける作業車両10の目標速度を低減させる。その後、目標速度演算部122は、低減させた目標速度を対象となる後続の作業車両10へ通信装置22を介して送信する処理P6を実行する。その結果、作業地点OSにおいて作業機械30に待機時間WTmを発生させることなく、対象の作業車両10の待機時間WTvを減少させて蓄電装置17の充電電力量を増加させることができる。
【0120】
その後、車両管理システム100は、図9に示す処理フローを終了させ、所定の周期で繰り返し実行する。一方、前述の処理P10において、目標速度演算部122により、作業車両10の待機時間WTvが発生しないこと、または、蓄電装置17の満充電量に対する不足量Esがゼロであること(NO)が判定されると、車両管理システム100は、図9に示す処理フローを終了させ、所定の周期で繰り返し実行する。
【0121】
なお、図9に示す処理フローでは、先行する作業車両10と後続の作業車両10のうち、後続の作業車両10の目標速度を修正することで、作業機械30の待機時間WTmおよび後続の作業車両10の待機時間WTvの発生を抑制する例を説明した。しかし、車両管理システム100において、先行する作業車両10の目標速度を修正することで、作業機械30の待機時間WTmおよび後続の作業車両10の待機時間WTvの発生を抑制することも可能である。
【0122】
以下、本実施形態の車両管理システム100の作用を説明する。
【0123】
本実施形態の車両管理システム100において、作業車両10の予定経路PRは、作業車両10が停車して作業を行う作業地点OSを含む。また、車両制御装置110は、蓄電装置17の充電電力量を車両管理装置120へ送信する蓄電制御部116をさらに備えている。また、車両管理装置120の目標速度演算部122は、前後を走行する2台の作業車両10のうち、先行する作業車両10が作業地点OSに到達してから後続の作業車両10が作業地点OSに到達するまでの時間間隔TIを予測する。さらに、目標速度演算部122は、その時間間隔TIと後続の作業車両10の車両制御装置110から受信した充電電力量とに基づいて、後続の作業車両10の目標速度を修正する。
【0124】
このような構成により、本実施形態の車両管理システム100によれば、目標速度演算部122は、上記時間間隔TIに基づいて、先行する作業車両10が作業地点OSを出発してから後続の作業車両10が到着するまでの時間である遅延時間の発生を予測することができる。また、目標速度演算部122は、上記時間間隔TIに基づいて、先行する作業車両10が作業地点OSを出発する前に後続の作業車両10が作業地点OSに到着することに起因する、後続の作業車両10の待機時間WTvの発生を予測することができる。また、目標速度演算部122は、上記遅延時間の発生が予測される場合に、作業車両10が電欠状態にならない範囲で、後続の作業車両10の速度を増加させることができる。これにより、作業機械30の遅延時間の発生を抑制して、作業現場WSの生産性を向上させることができる。また、目標速度演算部122は、上記待機時間WTvの発生が予測される場合に、作業地点OSの手前の充電区間CSにおける後続の作業車両10の目標速度を低減して、蓄電装置17の充電電力量を増加させることができる。
【0125】
また、本実施形態の車両管理システム100において、作業車両10の予定経路PRは、作業車両10が停車して作業を行う作業地点OSを含む。そして、車両管理装置120の目標速度演算部122は、たとえば、作業地点OSにおいて作業機械30の待機時間WTmが発生するなど、後続の作業車両10に遅延時間の発生が予測された場合に、その作業車両10の目標速度を修正する。すなわち、目標速度演算部122は、前後を走行する2台の作業車両10のうち、先行する作業車両10が作業地点OSでの作業を終えてから、後続の作業車両10が作業地点OSに到達するまでの遅延時間の発生が予測された場合に、その遅延時間を減少させるように先行する作業車両10または後続の作業車両10の目標速度を修正する。
【0126】
このような構成により、本実施形態の車両管理システム100によれば、作業車両10が走行する予定経路PRの全体で作業車両10の電欠状態を防止するとともに、作業車両10の待機時間WTvおよび遅延時間の発生を抑制して、作業効率の低下を抑制することができる。なお、作業地点OSにおける作業車両10の待機時間WTvは、積込場OS1だけでなく、作業車両10が一台ずつ荷降ろしをする集積場OS2においても発生し得る。同様に、作業地点OSにおける作業車両10の遅延時間も、積込場OS1だけでなく、作業車両10が破砕機に荷降ろしする集積場OS2において、破砕機の待機時間として発生し得る。
【0127】
また、本実施形態の車両管理システム100において、作業車両10の予定経路PRは、作業車両10が停車して作業を行う作業地点OSを含む。そして、車両管理装置120の目標速度演算部122は、前後を走行する2台の作業車両10のうち、先行する作業車両10が作業地点OSに停車して後続の作業車両10が作業地点OSの手前で待機する待機時間WTvの発生が予測された場合に、その待機時間WTvを減少させるように、先行する作業車両10または後続の作業車両10の目標速度を修正する。
【0128】
このような構成により、本実施形態の車両管理システム100によれば、作業車両10が電欠状態にならない範囲で、先行する作業車両10の速度を作業地点OSの手前で増加させることができる。これにより、後続の作業車両10の待機時間WTvの発生を抑制して、作業現場WSの生産性を向上させることができる。また、作業地点OSの手前の充電区間CSにおける後続の作業車両10の目標速度を低減して、その作業車両10の待機時間WTvの発生を抑制するとともに、その作業車両10の蓄電装置17の充電電力量を増加させることができる。
【0129】
以上説明したように、本実施形態によれば、作業車両10が走行する予定経路PRの全体で作業車両10の電欠状態を防止するとともに、作業効率の低下を抑制可能な車両管理システム100を提供することができる。
【0130】
以上、図面を用いて本開示に係る車両制御装置および車両管理システムの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0131】
10 作業車両
12 位置センサ
13 速度センサ
16 受電装置
17 蓄電装置
18 走行装置
40 給電装置
100 車両管理システム
110 車両制御装置
111 区間情報取得部
112 走行制御部
113 目標速度演算部
114 区間判定部
116 蓄電制御部
120 車両管理装置
121 区間情報送信部
122 目標速度演算部
124 消費電力算出部
cr 充電速度
CS 充電区間
LES 低消費電力区間
LSS 低速区間
NCS 非充電区間
OS 作業地点
PR 予定経路
SI 区間情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10