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特開2024-134654光学的反射構造体、エンコーダおよび光学的反射構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134654
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光学的反射構造体、エンコーダおよび光学的反射構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01D5/347 110C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044956
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】相田 鎮範
(72)【発明者】
【氏名】宇都 正博
(72)【発明者】
【氏名】大阿久 正美
(72)【発明者】
【氏名】今野 嵩久
(72)【発明者】
【氏名】須笠 幹重
(72)【発明者】
【氏名】杉山 輝尚
(72)【発明者】
【氏名】永田 薫
(72)【発明者】
【氏名】吉川 一真
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103CA03
2F103EA05
2F103EA21
(57)【要約】
【課題】光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化を抑制できる光学的反射構造体を提供する。
【解決手段】スケール10は、第1方向L1に間隔をあけて周期的に設けられた反射面11と、隣り合う反射面11の間に開口41を有し、開口41に向けて第1方向L1の幅が狭まる凹部40と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に間隔をあけて周期的に設けられた反射面と、
隣り合う前記反射面の間に開口を有し、前記開口に向けて前記所定方向の幅が狭まる凹部と、
を備える光学的反射構造体。
【請求項2】
前記凹部の内面は、曲面である、
請求項1に記載の光学的反射構造体。
【請求項3】
前記凹部の内面には、凹凸が形成されている、
請求項1に記載の光学的反射構造体。
【請求項4】
所定方向に間隔をあけて周期的に設けられた反射面、および隣り合う前記反射面の間に開口を有し前記開口に向けて前記所定方向の幅が狭まる凹部を有するエンコーダスケールと、
前記エンコーダスケールに光を照射する発光部と、
前記エンコーダスケールで反射した光を検出する受光部と、
を備えるエンコーダ。
【請求項5】
基板に異方性ドライエッチングを施し、前記基板の主面に開口を有する凹部を所定方向に間隔をあけて周期的に形成する工程と、
前記基板に等方性エッチングを施して、前記凹部を前記開口に向けて前記所定方向の幅が狭まるとともに内面が湾曲するように加工する工程と、
を備える光学的反射構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的反射構造体、エンコーダおよび光学的反射構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機器の直線変位または回転角を検出する光学式エンコーダの一種として、反射型光学式エンコーダがある。反射型光学式エンコーダは、相対変位不能に設けられた発光部および光検出部と、発光部および光検出部に対して移動する光学パターンを有するスケールと、を備える。反射型光学式エンコーダは、発光部からスケールに光を照射し、スケールで反射した光を光検出部において検出する。光学パターンの変位に応じてスケールで反射した光が変調するので、反射型光学式エンコーダは光検出部において検出した光の変調に基づいてスケールの変位を検出できる。
【0003】
例えばスケールの光学パターンは、基材上に周期的に形成された凹凸によって構成される(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、板状の基材と、基材の一方の面に設けられ、第1領域と第2領域とが交互に並んでいる光学パターンと、を備えたスケールであって、第2領域が第1領域に対して窪んでおり、第1領域および第2領域で反射した光の方向を互いに異ならせ、第1領域で反射した光のみを選択的に受光部で受光させるスケールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6958237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスケールのように凹凸により光学パターンを形成した構成では、スケールに対する光の入射角度の変化により凸部の側面で反射して受光部に届く光の量が変化するなどして、デューティ比も変化するという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化を抑制できる光学的反射構造体、エンコーダ、および光学的反射構造体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る光学的反射構造体は、所定方向に間隔をあけて周期的に設けられた反射面と、隣り合う前記反射面の間に開口を有し、前記開口に向けて前記所定方向の幅が狭まる凹部と、を備える。
【0008】
第1の態様によれば、凹部の側面が凹部の開口から反射面の裏側に回り込むように延びるので、反射面の法線方向に対して傾斜した角度で凹部に入射した光が凹部の側面に直接当たりにくくなる。これにより、光学的反射構造体に対する光の入射角度が変化しても、一対の反射面の間に入射した光が凹部の側面で反射して、本来反射面で反射した光が届く所定の位置に意図せず届く光の量が変化することを抑制できる。したがって、光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化を抑制できる光学的反射構造体を提供できる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る光学的反射構造体は、上記第1の態様に係る光学的反射構造体において、前記凹部の内面は、曲面であってもよい。
【0010】
第2の態様によれば、凹部に入射した光を閉じ込めやすい。また、凹部に入射した光の一部を発光部側に再帰反射させることも可能となる。これにより、一対の反射面の間に入射した光が、凹部の開口を通じて上記の所定の位置に向けて出射されることを抑制できる。したがって、光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化をより確実に抑制できる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る光学的反射構造体は、上記第1の態様または第2の態様に係る光学的反射構造体において、前記凹部の内面には、凹凸が形成されていてもよい。
【0012】
第3の態様によれば、凹部に入射した光を凹凸により拡散反射させることができる。これにより、凹部に入射した光を閉じ込めやすい。また、一対の反射面の間に入射した光が凹部の開口を通じて出射される場合でも、一方向に集光されるように出射されにくくなる。このため、凹部への光の入射角度に応じて、凹部の開口から出射された光が上記の所定の位置に強く入射する場合と弱く入射する場合とが生じることを抑制できる。したがって、光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化をより確実に抑制できる。
【0013】
本発明の第4の態様に係るエンコーダは、所定方向に間隔をあけて周期的に設けられた反射面、および隣り合う前記反射面の間に開口を有し前記開口に向けて前記所定方向の幅が狭まる凹部を有するエンコーダスケールと、前記エンコーダスケールに光を照射する発光部と、前記エンコーダスケールで反射した光を検出する受光部と、を備える。
【0014】
第4の態様によれば、凹部の側面が凹部の開口から反射面の裏側に回り込むように延びるので、反射面の法線方向に対して傾斜した角度で凹部に入射した光が凹部の側面に直接当たりにくくなる。これにより、エンコーダスケールに対する発光部から照射された光の入射角度が変化しても、一対の反射面の間に入射した光が凹部の側面で反射して、受光部に意図せず届く光の量が変化することを抑制できる。したがって、エンコーダスケール、発光部および受光部が所望の相対位置からずれて光の入射角度が変化した場合でも、デューティ比の変化を抑制できる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る光学的反射構造体の製造方法は、基板に異方性ドライエッチングを施し、前記基板の主面に開口を有する凹部を所定方向に間隔をあけて周期的に形成する工程と、前記基板に等方性エッチングを施して、前記凹部を前記開口に向けて前記所定方向の幅が狭まるとともに内面が湾曲するように加工する工程と、を備える。
【0016】
第5の態様によれば、異方性ドライエッチングによって基板の厚さ方向にエッチングされた凹部が、等方性エッチングによって略均等に広がるように拡大する。これにより、凹部に丸みを持たせ、かつ凹部をその開口に向けて所定方向の幅を狭めるように形成することができる。したがって、光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化が抑制された光学的反射構造体を製造できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化を抑制できる光学的反射構造体、エンコーダ、および光学的反射構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態のエンコーダの構成を示す図である。
図2】第1実施形態のスケールを示す平面図である。
図3】第1実施形態のスケールの断面を示す斜視図である。
図4】第1実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図5】第1実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図6】第1実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図7】第1実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図8】第2実施形態のスケールの断面を示す斜視図である。
図9】第2実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図10】第2実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図11】第2実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図12】第3実施形態のスケールの断面を示す斜視図である。
図13】第3実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図14】第3実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図15】第3実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
図16】第4実施形態のスケールを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0020】
図1は、実施形態のエンコーダの構成を示す図である。
図1に示すように、実施形態のエンコーダ1は、反射型光学式エンコーダである。エンコーダ1は、スケール10(エンコーダスケール、光学的反射構造体)と、スケール10と向かい合うように配置された光学センサ20と、を備える。
【0021】
スケール10は、光学センサ20側を向く主面10a上に周期的に形成された反射面11を有する。全ての反射面11は、共通する仮想平面上に形成されている。光学センサ20は、発光部21および受光部22を備える。発光部21および受光部22は、互いに同一平面上に形成されている。発光部21は、スケール10に光を照射する。受光部22は、スケール10で反射した光を検出する。受光部22は、発光部21から出射されてスケール10の反射面11において正反射した光を受光する位置に配置されている。
【0022】
[第1実施形態]
スケール10の平面構造について説明する。
図2は、第1実施形態のスケールを示す平面図である。
図2に示すように、第1方向L1および第2方向L2を以下のように定義する。第1方向L1および第2方向L2は、互いに直交し、かつそれぞれスケール10の主面10aの法線方向に直交する。スケール10には、反射面11が第1方向L1に周期的に配置されている。隣り合う反射面11同士の間には、非反射部12が形成されている。すなわち、スケール10は、直線方向(第1方向L1)に交互に設けられた反射面11および非反射部12を有するリニアスケールである。本実施形態では、非反射部12は、発光部21から照射された光を、1回の反射で隣接する反射面11と同一方向に反射しない部分で定義される。
【0023】
反射面11は、一定の幅で第2方向L2に延びている。例えば、反射面11の第1方向L1の幅は、隣り合う一対の反射面11の間隔と等しい。なお、スケール10の主面10aのうち反射面11および非反射部12が配列された領域の周囲の箇所は、反射面11と連続している。ただし本実施形態においては、スケール10の主面10aのうち非反射部12と交互に配列された部分のみを反射面11と称する。
【0024】
スケール10の部材構成について説明する。
図3は、第1実施形態のスケールの断面を示す斜視図である。
図3に示すように、スケール10は、基板30と、基板30上に配置された反射膜31と、を備える。基板30は、例えば単結晶シリコン基板である。反射膜31は、基板30の一方の主面上に設けられている。反射膜31は、上記の反射面11を形成している。
【0025】
スケール10の断面形状について説明する。
スケール10は、第1方向L1に等間隔に設けられた複数の柱部35を有する。各柱部35は、スケール10の厚み方向の一方に突出し、第2方向L2に延びている。複数の柱部35は、互いに同一形状に形成されている。柱部35のうち少なくとも根元部分は、基板30により形成されている。柱部35の先端面は、反射膜31により形成された反射面11である。
【0026】
スケール10は、隣り合う一対の柱部35の間に凹部40を有する。凹部40は、隣り合う反射面11の間に開口41を有する。凹部40は、反射膜31および基板30に形成されている。凹部40は、第2方向L2に延びる溝状である。凹部40の開口41は、反射膜31に形成されている。凹部40は、第2方向L2に直交する断面形状が第2方向L2のいずれの位置でも同じとなるように、第2方向L2に略一定の形状で延びている。以下、特に記載のない限り、凹部40の形状については第2方向L2に直交する断面形状を説明する。また、反射膜31が凹部40の深さに比して十分に薄いので、凹部40の断面形状について反射膜31の厚みを無視して説明する。
【0027】
凹部40は、スケール10の厚さ方向における所定の位置から開口41に向けて、第1方向L1の幅が漸次狭まるように形成されている。本実施形態において、上記所定の位置は、凹部40の底部43よりも開口41寄りである。これにより、凹部40は、上記所定の位置から凹部40の底部43に向けても、第1方向L1の幅が漸次狭まるように形成されている。
【0028】
凹部40の底面および一対の側面は、互いに連続している。これにより、凹部40の内面40aは、第1方向L1の両側および凹部40の底部43側に窪む単一の凹曲面に形成されている。凹部40の内面40aは、開口41側の端縁を起点に、底部43側に向かうに従い第1方向L1に対する接線の傾斜角度が大きくなるように形成されている。凹部40の内面40aの接線は、開口41側の端縁において第1方向L1に対して90°未満の角度で傾斜している。
【0029】
凹部40は、上記の非反射部12を形成している。非反射部12は、凹部40の内部での1回以上の反射、および反射時の減衰により、凹部40の開口41から出射されて受光部22に届く光の量を、非反射部12に隣接する反射面11で反射されて受光部22に届く光の量よりも少なくする。凹部40の内面40aは、開口41から入射した光を再帰反射させてもよい。
【0030】
本実施形態のスケール10の製造方法について、図4から図7に基づいて説明する。
図4から図7は、第1実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
本実施形態のスケール10の製造方法は、マスク形成工程と、異方性エッチング工程と、等方性エッチング工程と、マスク除去工程と、を備える。
【0031】
図4に示すように、マスク形成工程では、スケール10の母材50の主面上にマスク51を形成する。母材50は、反射膜31が成膜された基板30である。例えば、マスク51は、パターニングされたフォトレジストである。マスク51は、反射膜31のパターニング形状に一致し、凹部40の開口41に対応するマスク開口52を有する。つまり、マスク開口52は、第1方向L1に間隔をあけて周期的に形成される。
【0032】
続いて、異方性エッチング工程を行う。図5に示すように、異方性エッチング工程では、マスク51を介してスケール10の母材50に異方性ドライエッチングを施す。異方性ドライエッチングにより、母材50の主面に開口する初期凹部53が、第1方向L1に間隔をあけて周期的に形成される。例えば、異方性エッチング工程では、ボッシュプロセスを適用することができる。初期凹部53は、異方性ドライエッチングによって逆テーパ形状に形成される。すなわち、初期凹部53は、その底部から開口に向けて、第1方向L1の幅が漸次狭まるように形成されている。なお、初期凹部53の逆テーパ形状は、ボッシュプロセスによって側壁に形成される段差状のスキャロップを均した場合の形状である。
【0033】
続いて、等方性エッチング工程を行う。図6に示すように、等方性エッチング工程では、マスク51を介してスケール10の母材50に等方性エッチングを施す。初期凹部53は、等方性エッチングにより、その開口に向けて第1方向L1の幅が漸次狭まる形状を維持しつつ、内面が湾曲するように加工される。これにより、凹部40が形成される。例えば、等方性エッチング工程では、反応性イオンエッチングを適用することができる。
【0034】
続いて、マスク除去工程を行う。図7に示すように、マスク除去工程では、母材50からマスク51を除去する。これにより、反射膜31が露出して、上記のスケール10が形成される。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態のスケール10は、第1方向L1に間隔をあけて周期的に設けられた反射面11と、隣り合う反射面11の間に開口41を有し、開口41に向けて第1方向L1の幅が狭まる凹部40と、を備える。この構成によれば、凹部40の側面が凹部40の開口41から反射面11の裏側に回り込むように延びるので、反射面11の法線方向に対して傾斜した角度で凹部40に入射した光が凹部40の側面に直接当たりにくくなる。これにより、スケール10に対する光の入射角度が変化しても、一対の反射面11の間に入射した光が凹部40の側面で反射して、本来反射面11で反射した光が届く受光部22に意図せず届く光の量が変化することを抑制できる。したがって、スケール10、発光部21および受光部22が所望の相対位置からずれて光の入射角度が変化した場合でも、デューティ比の変化を抑制できるスケール10を提供できる。
【0036】
また、凹部40の内面は曲面である。この構成によれば、凹部40に入射した光を閉じ込めやすい。また、凹部40に入射した光の一部を発光部21側に再帰反射させることも可能となる。これにより、一対の反射面11の間に入射した光が、凹部40の開口41を通じて受光部22に向けて出射されることを抑制できる。したがって、光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化をより確実に抑制できる。
【0037】
本実施形態のスケール10の製造方法は、基板30に異方性ドライエッチングを施し、基板30の主面に開口を有する初期凹部53を第1方向L1に間隔をあけて周期的に形成する異方性エッチング工程と、基板30に等方性エッチングを施して、初期凹部53を開口に向けて第1方向L1の幅が狭まるとともに内面が湾曲するように加工する等方性エッチング工程と、を備える。この製造方法によれば、異方性ドライエッチングによって基板30の厚さ方向にエッチングされた初期凹部53が、等方性エッチングによって略均等に広がるように拡大する。これにより、初期凹部53に丸みを持たせ、かつ初期凹部53をその開口に向けて所定方向の幅を狭めるように形成することができる。したがって、上記の作用効果を奏するスケール10を製造できる。
【0038】
なお第1実施形態では、異方性エッチング工程において初期凹部53が逆テーパ形状に形成されているが、この構成に限定されない。例えば異方性エッチング工程において初期凹部が順テーパ形状に形成されてもよい。いずれにしても、等方性エッチング工程により初期凹部がその開口に向けて第1方向L1の幅が漸次狭まるように加工されればよい。
【0039】
第1実施形態では、マスク除去工程を等方性エッチング工程の後に行っているが、これに限定されない。マスク除去工程を異方性エッチング工程と等方性エッチング工程との間に行い、反射膜31をマスクにして等方性エッチングを行ってもよい。この場合、母材50のうち基板30のみを選択的にエッチングできるエッチャントを適用することが望ましい。
【0040】
[第2実施形態]
次に、図8から図11を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、凹部40の内面40aが滑らかに形成されている。これに対して第2実施形態では、凹部40の内面40aに凹凸が形成されている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0041】
図8は、第2実施形態のスケールの断面を示す斜視図である。
図8に示すように、スケール10Aの凹部40の内面40aには、凹部40の底部43に複数の突部45が設けられていることで、凹凸が形成されている。突部45は、凹部40の底面から凹部40の開口41側に突出している。突部45は、凹部40の開口41側に先細るように形成されている。突部45は、第2方向L2に均等に配列されている。なお突部45は、第1方向L1に複数設けられていてもよいし、第1方向L1に1つだけ設けられていてもよい。突部45の高さは、凹部40の深さよりも低い。
【0042】
本実施形態のスケール10Aの製造方法について、図9から図11に基づいて説明する。
図9から図11は、第2実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
本実施形態のスケール10Aの製造方法は、第1実施形態の異方性エッチング工程と等方性エッチング工程との間に、サブマスク形成工程を備える。
【0043】
サブマスク形成工程は、異方性エッチング工程に続いて行われる。図9に示すように、サブマスク形成工程では、初期凹部53の底面上に、複数の島状のサブマスク55を形成する。例えば、サブマスク55は、パターニングされたフォトレジストである。サブマスク55は、突部45に対応し、第2方向L2に均等に配列されている。
【0044】
続いて、等方性エッチング工程を行う。図10に示すように、等方性エッチング工程では、マスク51およびサブマスク55を介してスケール10Aの母材50に等方性エッチングを施す。等方性エッチングにより初期凹部53が丸みを持ち、凹部40が形成される。さらに、等方性エッチングによりサブマスク55の下方にも基板30のエッチングが進行するため、サブマスク55の下方に突部45が形成される。
【0045】
続いて、マスク除去工程を行う。図11に示すように、マスク除去工程では、母材50からマスク51およびサブマスク55を除去する。これにより、反射膜31が露出するとともに、突部45が露出し、上記のスケール10Aが形成される。
【0046】
本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、凹部40の内面40aに凹凸が形成されている。この構成によれば、凹部40に入射した光を凹凸により拡散反射させることができる。これにより、凹部40に入射した光を閉じ込めやすい。また、一対の反射面11の間に入射した光が凹部40の開口41を通じて出射される場合でも、一方向に集光されるように出射されにくくなる。このため、凹部40への光の入射角度に応じて、凹部40の開口41から出射された光が受光部22に強く入射する場合と弱く入射する場合とが生じることを抑制できる。したがって、光の入射角度が変化した場合のデューティ比の変化をより確実に抑制できる。
【0047】
なお、第2実施形態では、サブマスク55を異方性エッチング工程の後に形成しているが、サブマスクを異方性エッチング工程の前に形成してもよい。例えば、マスク形成工程でサブマスクをマスク51と同時に形成してもよい。この場合、異方性エッチング工程で初期凹部53内に初期凹部53の開口まで延びる突出部を形成し、等方性エッチング工程で突出部をエッチングして高さを低くする。これにより、第2実施形態と同様に突部45を形成できる。
【0048】
[第3実施形態]
次に、図12から図15を参照して、第3実施形態について説明する。第1実施形態では、スケール10の柱部35の根元部分が基板30により形成されている。これに対して第3実施形態は、スケール110の柱部135の全体が金属により形成されている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0049】
スケール110の部材構成について説明する。
図12は、第3実施形態のスケールの断面を示す斜視図である。
図12に示すように、スケール110は、基板130と、基板130上に配置されたメッキ膜132と、を備える。基板130は、導電性を有する材料により形成されている。基板130は、例えば単結晶シリコン基板である。メッキ膜132は、基板130の一方の主面130a上に設けられている。メッキ膜132は、反射面11を形成している。
【0050】
スケール110の断面形状について説明する。
スケール110は、第1方向L1に等間隔に設けられた複数の柱部135を有する。各柱部135は、スケール110の厚み方向の一方に突出し、第2方向L2に延びている。複数の柱部135は、互いに同一形状に形成されている。柱部135の全体は、メッキ膜132により形成されている。柱部135の先端面は、反射面11である。
【0051】
スケール110は、隣り合う一対の柱部135の間に凹部140を有する。凹部140は、隣り合う反射面11の間に開口141を有する。凹部140は、メッキ膜132を貫通しているとともに、基板130の主面130aによって底部143側から画成されている。凹部140は、第2方向L2に延びる溝状である。凹部140は、第2方向L2に直交する断面形状が第2方向L2のいずれの位置でも同じとなるように、第2方向L2に略一定の形状で延びている。以下、特に記載のない限り、凹部140の形状については第2方向L2に直交する断面形状を説明する。
【0052】
凹部140は、スケール110の厚さ方向における最も深い位置(底部143の位置)から開口141に向けて、第1方向L1の幅が漸次狭まるように形成されている。これにより、凹部140は、逆テーパ状に形成されている。凹部140の底面140aは、基板130の主面130aであり、第1方向L1に延びる平坦面である。凹部140の一対の側面140bは、メッキ膜132により形成されている。凹部140の側面140bは、平坦面である。ただし、凹部140の側面140bは、開口141から底部143側に向かうに従い第1方向L1に対する接線の傾斜角度が大きくなるように湾曲していてもよい。凹部140は、上記の非反射部12を形成している。
【0053】
本実施形態のスケール110の製造方法について、図13から図15に基づいて説明する。
図13から図15は、第3実施形態のスケールの製造方法を示す断面図である。
本実施形態のスケール110の製造方法は、型形成工程と、メッキ工程と、型除去工程と、を備える。
【0054】
図13に示すように、型形成工程では、基板130の主面130a上に型57を形成する。例えば、型57は、パターニングされたフォトレジストである。型57は、第1方向L1に等間隔で設けられた複数の壁58を有する。各壁58は、第2方向L2に延びている。各壁58は、凹部140に対応する。各壁58は、基板130の厚み方向に沿って基板130から離れるに従い第1方向L1の幅が漸次小さくなるように、テーパ状に形成されている。すなわち、各壁58の第1方向L1の一対の側面は、基板130の厚み方向に沿って基板130から離れるに従い互いに近づいている。
【0055】
続いて、メッキ工程を行う。図14に示すように、メッキ工程では、基板130の主面130a上にメッキ膜132を成膜する。これにより、基板30の主面130aのうち型57から露出した部分がメッキ膜132により被覆されるとともに、隣り合う一対の壁58の間でメッキ膜132が成長する。その結果、メッキ膜132は、一対の壁58の間を埋め、上記の柱部135となる。
【0056】
続いて、型除去工程を行う。図15に示すように、型除去工程では、基板130から型57を除去する。これにより、型57で埋まっていた一対の柱部135の間の空間が凹部140となる。以上により、上記のスケール110が形成される。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態のスケール110は、第1方向L1に間隔をあけて周期的に設けられた反射面11と、隣り合う反射面11の間に開口141を有し、開口141に向けて第1方向L1の幅が狭まる凹部140と、を備える。この構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0058】
なお、第3実施形態では、基板130が導電性を有する材料により形成されている。しかし、基板は、その主面上にメッキ膜を設けることができればよく、例えば絶縁基板上に導電膜を設けたものであってもよい。
【0059】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、スケール10が直線方向に交互に設けられた反射面11および非反射部12を有するリニアスケールである。しかしながら本発明の適用範囲はリニアスケールに限定されず、例えば図14に示すように、反射面11および非反射部12が主面210a上に周方向に交互に設けられたロータリースケール210に本発明を適用してもよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態および各変形例を適宜組み合わせてもよい。例えば、第3実施形態に第1実施形態を組み合わせて、メッキ膜132により形成された凹部の内面を凹曲面に形成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…エンコーダ 10,10A,110…スケール(光学的反射構造体、エンコーダスケール) 11…反射面 21…発光部 22…受光部 30,130…基板 40,140…凹部 40a…内面 41,141…開口 53…初期凹部(凹部) 210…ロータリースケール(光学的反射構造体、エンコーダスケール)
図1
図2
図3
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図16