(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134657
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】衛生材料用不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/498 20120101AFI20240927BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20240927BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20240927BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
D04H1/498
D04H1/425
D04H1/492
A61F13/511 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044966
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
(72)【発明者】
【氏名】森 章太朗
【テーマコード(参考)】
3B200
4L047
【Fターム(参考)】
3B200BB03
3B200DC02
4L047AA08
4L047AB02
4L047BA04
4L047CA02
4L047CB07
4L047CC03
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】液残り量が少なく、かつ液の拡がりも少ない衛生材料用不織布を得る。
【解決手段】撥水性セルロース系繊維11を構成繊維として第1の目付けでカーディングされた第1のウェブ15と、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維として第2の目付けでカーディングされた第2のウェブ16とを積層する。積層体17における第2のウェブ16側から積層体17に向けて第1の高圧水流18を噴射し、次に第1のウェブ15側から積層体17に向けて第2の高圧水流19を噴射し、さらに第2のウェブ16側から積層体17に向けて、第1の高圧水流18と第2の高圧水流19とのいずれよりも高圧の第3の高圧水流20を噴射して、第1のウェブ15の構成繊維と第2のウェブ16の構成繊維とを互いに三次元的に交絡させるとともに積層体17における第1のウェブ15と第2のウェブ16とを一体化させ、衛生材料用不織布を得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性セルロース系繊維を構成繊維として第1の目付けでカーディングされた第1のウェブと、吸水性セルロース系繊維を構成繊維として第2の目付けでカーディングされた第2のウェブとを積層し、
前記積層された積層体における第2のウェブ側から前記積層体に向けて第1の高圧水流を噴射し、
次に第1のウェブ側から前記積層体に向けて第2の高圧水流を噴射し、
さらに第2のウェブ側から、前記積層体に向けて、第1の高圧水流と第2の高圧水流とのいずれよりも高圧の第3の高圧水流を噴射することで、
第1のウェブの構成繊維と第2のウェブの構成繊維とを互いに三次元的に交絡させて、前記積層体における第1のウェブと第2のウェブとを一体化させることで、
撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする第1の層と吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする第2の層とが積層された衛生材料用不織布を得ることを特徴とする衛生材料用不織布の製造方法。
【請求項2】
撥水性セルロース系繊維として、コットンワックスを残したコットン繊維と、撥水剤を付着させたセルロース系繊維との、少なくともいずれかを用いることを特徴とする請求項1記載の衛生材料用不織布の製造方法。
【請求項3】
第2の高圧水流の圧力を、前記第2の高圧水流を第1のウェブ側から噴射したときにコットンワックスや撥水剤が繊維から離脱しない程度の圧力に設定することを特徴とする請求項2記載の衛生材料用不織布の製造方法。
【請求項4】
撥水性セルロース系繊維として、脱脂コットン繊維と、コットンワックスを必要量以下しか残していないコットン繊維と、撥水剤をまったく付着させていないセルロース系繊維と、撥水剤を必要量以下しか付着させていないセルロース系繊維との、少なくともいずれかの繊維を用い、
不織布の製造工程における任意の段階で前記少なくともいずれかの繊維に撥水剤を付着させることを特徴とする請求項1記載の衛生材料用不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生材料用不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布の用途の一例として、おむつ、生理用ナプキンなどの吸収性の衛生材料のための表面材が挙げられる。このような表面材を含む吸収性物品として、特許文献1には、液透過性のトップシートを備える吸収性物品であって、前記トップシートにおける着用者の肌側に位置する肌側表面層は天然綿繊維からなるコットン層であり、着用者の非肌側に位置する非肌側表面層は合成セルロース繊維を含み、トップシートの肌側表面が撥水処理されている失禁用吸収性物品が記載されている。この失禁用吸収性物品は、肌触りが柔らかく、体液拡散性に優れ、複数回の吸収でも吸収速度が高水準に維持されるという性能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1に記載の吸収性物品とは別の観点から、特に液残り量や液の広がりが少ない衛生材料用不織布を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明の衛生材料用不織布の製造方法は、
撥水性セルロース系繊維を構成繊維として第1の目付けでカーディングされた第1のウェブと、吸水性セルロース系繊維を構成繊維として第2の目付けでカーディングされた第2のウェブとを積層し、
前記積層された積層体における第2のウェブ側から前記積層体に向けて第1の高圧水流を噴射し、
次に第1のウェブ側から前記積層体に向けて第2の高圧水流を噴射し、
さらに第2のウェブ側から、前記積層体に向けて、第1の高圧水流と第2の高圧水流とのいずれよりも高圧の第3の高圧水流を噴射することで、
第1のウェブの構成繊維と第2のウェブの構成繊維とを互いに三次元的に交絡させて、前記積層体における第1のウェブと第2のウェブとを一体化させることで、
撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする第1の層と吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする第2の層とが積層された衛生材料用不織布を得ることを特徴とする。
【0006】
本発明の衛生材料用不織布の製造方法によれば、撥水性セルロース系繊維として、コットンワックスを残したコットン繊維と、撥水剤を付着させたセルロース系繊維との、少なくともいずれかを用いることが好適である。その場合において、本発明によれば、第2の高圧水流の圧力を、前記第2の高圧水流を第1のウェブ側から噴射したときにコットンワックスや撥水剤が繊維から離脱しない程度の圧力に設定することが好適である。
【0007】
本発明の衛生材料用不織布の製造方法によれば、撥水性セルロース系繊維として、脱脂コットン繊維と、コットンワックスを必要量以下しか残していないコットン繊維と、撥水剤をまったく付着させていないセルロース系繊維と、撥水剤を必要量以下しか付着させていないセルロース系繊維との、少なくともいずれかの繊維を用い、不織布の製造工程における任意の段階で前記少なくともいずれかの繊維に撥水剤を付着させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする第1の層と、吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする第2の層とが積層された衛生材料用不織布を良好に製造することができる。このような積層構造の衛生材料用不織布は、使用状態によって、液残り量を少なくすることができるとともに、液の広がりを縮小することができるという特性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の製造方法で得られる衛生材料用不織布の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法で得られる衛生材料用不織布は、
図1に示すように、撥水性セルロース系繊維11を構成繊維とする第1の層12と、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維とする第2の層14とが積層され一体化された構造を有する。詳細な図示は省略するが、第1の層12の撥水性セルロース系繊維11は、その一部分が、第2の層14に入り込んで、第2の層14における吸水性セルロース系繊維13と三次元的に交絡している。同様に第2の層14の吸水セルロース系繊維13は、その一部分が、第1の層12に入り込んで、第1の層12における撥水性セルロース系繊維11と三次元的に交絡している。これにより、第1の層12と第2の層14とが一体化されて、積層構造の衛生材料用不織布を構成している。
【0011】
積層構造の衛生材料用不織布の目付けは、衛生材料用に使う目的から、25~45g/m2程度であることが好適である。そして、撥水性セルロース系繊維11を構成繊維とする第1の層12の目付けは10~25g/m2程度であることが好適であり、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維とする第2の層14の目付けは10~25g/m2程度であることが好適である。
【0012】
撥水性セルロース系繊維11としては、精錬条件を通常条件から変更することで、いわゆる天然油脂・ワックス・綿実油などのコットンワックスを必要量残したコットンや、撥水剤を付与させたセルロース系繊維など、あるいはこれらの繊維を任意に混綿したものを、挙げることができる。セルロース系繊維としては、コットンやレーヨンなどを挙げることができる。ここにいう「精錬」とは、原綿である天然コットン繊維に含まれるコットンワックスを除去する工程を意味する。通常の精錬工程では、コットンワックスを除去して脱脂したコットン繊維(いわゆる脱脂綿や晒し木綿)を得る。これに対し本発明においては、通常の精錬工程での条件よりも緩い条件に変更すること、すなわち、薬剤量を減らしたり、処理時間を短くしたりすることで、コットンワックスを完全に除去するのではなく必要量残すことにより、撥水性を発揮するコットンを得て、このようなコットンワックスを必要量残したコットンを用いる。脱脂綿は、水に浮かべた際に10秒以内に沈降し、吸水性を発揮するが、コットンワックスを必要量残したコットンは、水に浮かべた後、24時間放置しても沈むことなく、浮かんだままの状態を保持する。これは、コットンワックスを残したコットンが、吸水することなく、撥水性を発揮していることを示すものである。
【0013】
撥水性セルロース系繊維11において、撥水性能が所定のレベルまで達していない場合には、衛生材料用不織布の製造工程における任意の段階で、撥水性セルロース系繊維11に追加的に撥水剤を付着させることができる。撥水性能が所定のレベルまで達していない場合とは、撥水性セルロース系繊維11が、脱脂コットン繊維と、コットンワックスを必要量以下しか残していないコットン繊維と、撥水剤をまったく付着させていないセルロース系繊維と、撥水剤を必要量以下しか付着させていないセルロース系繊維との少なくともいずれかである場合を挙げることができる。「少なくともいずれか」というのは、これらの繊維を任意に混綿したものを含む意味である。
【0014】
撥水性セルロース系繊維11に追加的に撥水剤を付着させるための具体的な工程としては、たとえば、不織布製造工程中にキスロールなどの付着ロールを用いて付着させる工程などを挙げることができる。
【0015】
吸収性セルロース系繊維13としては、通常の精錬工程により得られた脱脂コットン繊維、レーヨン、リヨセル、キュプラなど、あるいはこれらの繊維を任意に混綿したものを、挙げることができる。
【0016】
撥水性セルロース系繊維11と吸水性セルロース系繊維13とを用いた衛生材料用不織布の製造方法の一つの実施の形態は、下記のとおりである。
【0017】
まず、撥水性セルロース系繊維11を構成繊維としてカーディング機において所要の目付けでカーディングされた第1のウェブを準備する。また、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維としてカーディング機において所要の目付けでカーディングされた第2のウェブを準備する。そして、このようにして準備された第1のウェブと第2とを積層する。
図2は、撥水性セルロース系繊維11を構成繊維とした第1のウェブ15の上に、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維とした第2のウェブ16が積層された状態を示す。
【0018】
次に第1のウェブ15と第2のウェブ16とが積層された積層体17における、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維とした第2のウェブ16の側から、積層体17に第1の高圧水流18を付与する。高圧水流18の付与のために、公知の水流交絡用ノズルを用いることができる。すると、詳細な図示は省略するが、高圧水流18によって第2のウェブ16の構成繊維である吸水性セルロース系繊維13の一部が、第1のウェブ15に入り込んで、第1のウェブ15の撥水性セルロース系繊維11と三次元的に交絡する。
【0019】
その後、
図3に示すように積層体17の表裏を反転させて、今度は撥水性セルロース系繊維11を構成繊維とした第1のウェブ15の側から、積層体17に第2の高圧水流19を付与する。すると、詳細な図示は省略するが、高圧水流19によって、第1のウェブ15の構成繊維である撥水性セルロース系繊維11の一部が、第2のウェブ16に入り込んで、第2のウェブ16の吸水性セルロース系繊維13と三次元的に交絡する。
【0020】
このとき、高圧水流19として過剰に圧力が高いものを使用すると、原料段階で残したコットンワックスや原料段階で付与した撥水剤が撥水性セルロース系繊維11から離脱してしまう。その結果、得られる不織布において所要の撥水性能を発揮させることができなくなる。このため、高圧水流19は、過剰な高圧とならないように、しかも第1のウェブ15の構成繊維である撥水性セルロース系繊維11の一部が、第2のウェブ16に入り込んで、第2のウェブ16の吸水性セルロース系繊維13と三次元的に交絡できるように、その圧力を適宜に調節することが必要である。
【0021】
さらに、
図4に示すように、積層体17の表裏を再度反転させて、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維とした第2のウェブ16の側から、積層体17に第3の高圧水流20を付与する。このときの高圧水流20の圧力は、最初の高圧水流18の圧力や、2回目の高圧水流19の圧力に比べて、高圧にする。そうすることで、詳細な図示は省略するが、主として第2のウェブ16の構成繊維である吸水性セルロース系繊維13が、かなりの部分において第1のウェブ15に入り込んで、第1のウェブ15の撥水性セルロース系繊維11と確実に三次元的に交絡する。
【0022】
これにより、第1のウェブ15と第2のウェブ16とが一体化されて、
図1に示すような、撥水性セルロース系繊維11を構成繊維とする第1の層12と、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維とする第2の層14とが積層され一体化された構造の衛生材料用不織布が得られる。
【0023】
図1に示される衛生材料用不織布は、衛生材料の表面材として使用される。衛生材料の本体部分は、人体から排出された尿や血液などの液を吸収し保持するものである。このため、
図1に示される衛生材料用不織布に求められる主な性能は、良好な肌触り性はもちろんのこと、それ以外には、ストライクスルー性と、液残り防止性と、液の広がり防止性とである。
【0024】
良好な肌触り性は、
図1に示される衛生材料用不織布が撥水性セルロース系繊維11と吸水性セルロース系繊維13とを構成繊維とすることで達成される。
【0025】
ストライクスルー性とは、表面材が受け止めた液体を本体部分へ迅速に透過させる性能をいう。
【0026】
液残りとは、表面材が受け止めた液体の一部分以上が、表面材を透過せずに表面材の内部に残った状態をいう。液残り防止性とは、液が表面材を透過せずに表面材の内部に残ることを防止する性能をいう。
【0027】
液の広がり防止性とは、表面材の内部に残った液が表面材の面方向に広がることを防止する性能をいう。
【0028】
本発明の製造方法により得られた衛生材料用不織布は、
図1に示すように、撥水性セルロース系繊維11を構成繊維とする第1の層12と、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維とする第2の層14とが積層され一体化された構造を有するため、肌触り性において良好な特性を示すほかに、ストライクスルー性と、液残り防止性と、液の広がり防止性とのいずれにおいても、良好な特性を示す。
【0029】
本発明の製造方法により得られた衛生材料用不織布は、撥水性セルロース系繊維11を構成繊維とする第1の層12を使用者の肌側に配置することができるとともに、吸水性セルロース系繊維13を構成繊維とする第2の層14を使用者の肌側に配置することもできる。いずれを肌側にするかについては、衛生材料の用途などによって決めることができる。いずれの場合も、肌側にコットンなどのセルロース系繊維が配置されるため、上述のように使用者に快適な肌触り性すなわち快適な使用感を与えることができる。
【実施例0030】
製造された不織布の各性能の評価方法は、次のとおりとした。
【0031】
[ストライクスルー性]
不織布の試験標準であるNon Woven Standard Procedures(NWST)の070.3を参考に、Lenzing Instruments社の製造に係るストライクスルー性の測定装置であるListerACを用いて測定した。詳細には、Lenzing Instruments社が指定するろ紙(AHLSTROM Grade:989/100mm×100mm)を3枚重ね、その上に125mm×125mmにカットした試験片を重ね、さらにストライクスループレートを試料片の上に重ねた。そして、ストライクスループレートに5ccの人工尿を入れ、この人口尿が重力の作用によって完全に排出されるまでの時間を、ストライクスルー性の評価項目とした。
【0032】
図5は、ストライクスルー性の概念を図示したものである。
図5から、一定量の試験液21が試験片22を通過しきる時間によってストライクスルー性が評価されることを理解できる。
【0033】
[液残り防止性]
ストライクスルー測定後の試料片の質量を測定し、ストライクスルーを測定する前の試料片の質量との差を、液残り量として求めた。液残り量が少ないほど、液残り防止性が良好であると評価できる。
【0034】
図6は、液残り防止性の概念を図示したものである。
図6から、試験液21のうち、試験片22を通過した通過分21aを除いた残留分21bによって液残り防止性が評価されることを理解できる。
【0035】
[液の広がり防止性]
濾紙(アドバンテック社製、No.2)を2枚重ねて、その上に100mm×100mmにカットした試験片を3枚重ねて置いた。そして、試験片の中心部に試験用の染色液を1cc滴下した。滴下したあと、5分間経過してから、最表面の1枚の試験片を取り除き、2枚目の試験片について、染色液が広がった不織布の縦方向の最大距離、不織布の横方向の最大距離をそれぞれ1mm単位の物差しで測定した。縦方向の最大距離と横方向の最大距離との和を、液の広がりとした。試験片を取り換えて3回の測定を行った。そして3回の測定値から平均値を算出して広がりを求めた。広がりの単位は[mm]とした。広がりが小さいほど、液の広がり防止性が良好であると評価できる。
【0036】
図7は、液の広がり防止性の概念を図示したものである。
図7から、試験片22における試験液21の広がりの様子を理解できる。
【0037】
実施例1
[第1のウェブの準備]
コットンワックスを残した繊維として、丸三産業社製の未脱脂漂白綿(商品名UDX)を、エアレイカード機で開繊および集積して、目付17.5g/m2の、撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする木綿繊維ウェブを得た。
【0038】
[第2のウェブの準備]
吸水性セルロース系繊維として、平均繊維長25mmの晒し木綿(脱脂コットン繊維)を、パラレルカード機で開繊および集積して、目付17.5g/m2の、吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする木綿繊維ウェブを得た。
【0039】
[衛生材料用不織布の製造]
上記のように準備した第1のウェブと第2のウェブとを積層して、積層体を得た。この積層体を、90メッシュの織物製の支持体に載置したうえで、高圧水流噴出装置(孔径0.12mmの噴出孔が孔間隔0.635mmで横一列に配置された装置)に通した。そして、第2のウェブ側から3MPaの噴出圧力で高圧水流処理を施し、次いで4MPaの噴出圧力で高圧水流を施した。
【0040】
続いて、支持体上で積層体の表裏を反転して、第1のウェブ側から3MPaの噴射圧力で高圧水流処理を2回施した。
【0041】
その後、支持体上で積層体の表裏を再度反転して、第2のウェブ側から7MPaの噴射圧力で高圧水流処理を2回施した。これにより、繊維同士が交絡した積層体を得た。
【0042】
得られた積層体を一対のフラットロールにて構成されたマングル装置に通して、余剰水分を除去した。その後、100℃×90秒の条件で乾燥熱処理を施して、積層体に含まれる水分を蒸発させた。以上により、目付35g/m2の、表面材としての衛生材料用不織布を得た。
【0043】
得られた不織布について、吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする第2のウェブ側を衛生材料の使用者の肌側すなわち使用者の人体から排出された尿や血液などの液を受ける側として各性能を評価した結果を表1に示す。また、得られた不織布について、撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする第1のウェブ側を衛生材料の使用者の肌側として各性能を評価した結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
【0046】
実施例2
実施例1と比べて、吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする第2のウェブの目付を25g/m2に変えるとともに、撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする第1のウェブの目付を10g/m2に変えた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、目付35g/m2の、表面材としての衛生材料用不織布を得た。
【0047】
得られた不織布について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0048】
実施例3
実施例1と比べて、吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする第2のウェブの目付を10g/m2に変えるとともに、撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする第1のウェブの目付を25g/m2に変えた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、目付35g/m2の、表面材としての衛生材料用不織布を得た。
【0049】
得られた不織布について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0050】
比較例1
吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする第2のウェブのみで、目付35g/m2の、表面材としての衛生材料用不織布を得た。
【0051】
得られた不織布について、実施例1同様の評価を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0052】
比較例2
撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする第1のウェブのみで、目付35g/m2の、表面材としての衛生材料用不織布を得た。
【0053】
得られた不織布について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1および表2に示す。
【0054】
表1および表2に示すように、実施例1~実施例3の積層構造の不織布は、単一のセルロース系繊維だけで構成された比較例1、比較例2の不織布と同程度のストライクスルー性を発揮することができた。そのうえで、表1に示すように、吸水性セルロース系繊維を構成繊維とする層(第2のウェブ)を、衛生材料の使用者の肌側とした場合には、実施例1~実施例3の積層構造の不織布は、特に、吸水性セルロース系繊維だけを構成繊維とした比較例1の不織布に比べて、液残り防止性を格段に改善することができた。また、表2に示すように、撥水性セルロース系繊維を構成繊維とする層(第1のウェブ)を、衛生材料の使用者の肌側とした場合には、実施例1~実施例3の積層構造の不織布は、特に、吸水性セルロース系繊維だけを構成繊維とした比較例1の不織布に比べて、広がり防止性を格段に改善することができた。
【0055】
このため、実施例1~3の積層構造の不織布によれば、使用状態によって、液残り量を少なくすることができるとともに、液の広がりを縮小することができるという特性を発揮することを確認できた。