(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134671
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】止水部付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/32 20060101AFI20240927BHJP
H01B 7/282 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
H01B13/32
H01B7/282
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044986
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂彦
【テーマコード(参考)】
5G313
【Fターム(参考)】
5G313EA09
5G313EB03
5G313FA03
5G313FB01
5G313FC05
5G313FD02
(57)【要約】
【課題】ホットメルト付きの熱収縮チューブなどを使用した防水処理と絶縁処理とを簡素化することが可能な止水部付電線を提供する。
【解決手段】止水部付電線の製造方法は、複数の素線15を含む導体10と、導体10の周囲を被覆する絶縁被覆20とを備える電線1の絶縁被覆20に切り目21を入れる工程と、切り目21から導体10を絶縁被覆20の外側へ露出させ、外側へ露出した導体10の素線15間に液状の止水材30を含浸させる工程と、止水材30が含浸した導体10を絶縁被覆20の内側に戻す工程と、導体10に含浸した止水材30を硬化する工程とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線を含む導体と、前記導体の周囲を被覆する絶縁被覆とを備える電線の前記絶縁被覆に切り目を入れる工程と、
前記切り目から前記導体を前記絶縁被覆の外側へ露出させ、外側へ露出した導体の素線間に液状の止水材を含浸させる工程と、
前記止水材が含浸した導体を前記絶縁被覆の内側に戻す工程と、
前記導体に含浸した止水材を硬化する工程と、
を含む、止水部付電線の製造方法。
【請求項2】
前記止水材を含浸させる工程では、前記電線を湾曲させることにより、前記切り目から前記導体を前記絶縁被覆の外側へ露出させる、請求項1に記載の止水部付電線の製造方法。
【請求項3】
前記止水材を含浸させる工程では、前記切り目から前記絶縁被覆の外側に露出した導体を前記液状の止水材に浸漬する、請求項1又は2に記載の止水部付電線の製造方法。
【請求項4】
前記止水材を硬化させた後に、前記絶縁被覆の切り目を被覆材で被覆する工程を含む、請求項1又は2に記載の止水部付電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水部付電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のワイヤーハーネス等に用いられる電線は、導体と導体を被覆する絶縁被覆を備えている。このような電線では電線の端部から、導体の素線間の隙間及び導体と絶縁被覆との間の隙間を通じて水が浸入するおそれがある。電線内に浸入した水は、導体の腐食の原因となるおそれがある。そこで、電線内に水が浸入しないように、電線内の隙間を止水用樹脂で埋め、止水部を形成する方法が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の止水部付電線の製造方法では、電線の絶縁被覆を切断すると共に切断面間に間隔を空け、導体が露出したところに液状の止水用樹脂を供給し、液状の止水用樹脂で導体の外周面を覆う。その後、絶縁被覆の切断面の間隔を狭めることにより導体の外周面に付着していた止水用樹脂を絶縁被覆の切断面ではさみつけ、その状態で止水用樹脂を固化させると共に絶縁被覆の切断面に接着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の止水部付き電線の製造方法において、導体の素線間に止水用樹脂を十分に浸透させるためには、素線間の間隔が大きくなるように素線間を広げる必要がある。このためには、止水用樹脂を供給する部分の絶縁被覆を大きく剥がさなければならない。絶縁被覆を大きく剥ぐことによって大きく露呈した導体は、防水処理と絶縁処理とが必要になる。このような処理には、通常、ホットメルト付きの熱収縮チューブなどが使用される。しかしながら、大きく露呈した導体を熱収縮チューブで覆う場合、多量のホットメルトが設けられた広い面積の熱収縮チューブが必要になる。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、ホットメルト付きの熱収縮チューブなどを使用した防水処理と絶縁処理とを簡素化することが可能な止水部付電線の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る止水部付電線の製造方法は、複数の素線を含む導体と、導体の周囲を被覆する絶縁被覆とを備える電線の絶縁被覆に切り目を入れる工程と、切り目から導体を絶縁被覆の外側へ露出させ、外側へ露出した導体の素線間に液状の止水材を含浸させる工程と、止水材が含浸した導体を絶縁被覆の内側に戻す工程と、導体に含浸した止水材を硬化する工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ホットメルト付きの熱収縮チューブなどを使用した防水処理と絶縁処理とを簡素化することが可能な止水部付電線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る電線を径方向に切断した断面図である。
【
図2】電線の絶縁被覆に切り目を入れる例を示す底面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿って切断した断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿って切断した断面図である。
【
図5】導体を止水材に浸漬させる例を示す正面図である。
【
図6】絶縁被覆内に導体を戻した後の様子を示す底面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿って切断した断面図である。
【
図8】絶縁被覆の切り目をチューブで覆う例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係る止水部付電線の製造方法について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
本実施形態に係る止水部付電線の製造方法は、電線準備工程S1と、絶縁被覆カット工程S2と、止水材含浸工程S3と、導体を戻す工程S4と、止水材硬化工程S5、防水絶縁処理工程S6とを含んでいる。
【0012】
電線準備工程S1では、例えば
図1に示すような電線1を準備する。電線1は、導体10と、導体10の周囲を被覆する絶縁被覆20とを備えている。電線1は、絶縁被覆20を被覆するシールド層と、当該シールド層をさらに被覆するシース層とをさらに備えていてもよい。
【0013】
導体10は、複数の素線15を含んでいる。導体10は、複数本の素線15を束ねて構成された集合撚り線であってもよい。また、導体10は、1本の集合撚り線のみで構成されていてもよく、複数本の集合撚り線を束ねて構成された複合撚り線であってもよい。導体10の材料としては、導電性が高い金属を使用することができる。導体10の材料は、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金等であってもよい。
【0014】
絶縁被覆20の材料としては、電気絶縁性を確保できる熱可塑性樹脂を使用することができる。絶縁被覆20の材料は、例えば、オレフィン系樹脂及びポリ塩化ビニルの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。オレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン共重合体及びプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも一種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0015】
絶縁被覆カット工程S2では、
図2~
図4に示すように、電線1の絶縁被覆20に切り目21を入れる。切り目21は、電線1の長さ方向における端部よりも内側に、絶縁被覆20が貫通するように設けられている。絶縁被覆20において切り目21を入れる位置は特に限定されず、電線1の止水したい部分に切り目21を入れればよい。
【0016】
本実施形態では、電線1の長さ方向に沿って第1の切り目22を入れるとともに、第1の切り目22の長さ方向両端において電線1の径方向に沿って第2の切り目23が入れられている。第2の切り目23により、導体10を絶縁被覆20の外側に押し出しやすくなるが、絶縁被覆20の柔軟性が高いなどのように特に問題にならない場合には、第2の切り目23が絶縁被覆20に設けられなくてもよい。また、第1の切り目22が第2の切り目23よりも長い方が、導体10を絶縁被覆20の外側に押し出しやすくなるが、第2の切り目23が第1の切り目22よりも長くてもよい。ただし、切り目21の大きさ及び範囲なども特に限定されず、切り目21から絶縁被覆20の外側へ導体10を露出することができる状態であればよい。
【0017】
止水材含浸工程S3は、
図5に示すように、切り目21から導体10を絶縁被覆20の外側へ露出させ、外側へ露出させた導体10の素線15間に液状の止水材30を含浸させてもよい。本実施形態では、絶縁被覆20に切り目21が入れられている。そのため、絶縁被覆20の内側に配置されている導体10の一部を、切り目21を介して絶縁被覆20の外側に露出させることができる。そして、露出した導体10に止水材30を含浸させるため、導体10の素線15間に液状の止水材30を容易に含浸させることができる。また、素線15間に止水材30を含浸させることにより、導体10の全周囲を液状の止水材30で覆うことができる。
【0018】
止水材30を含浸させる工程では、
図5に示すように、電線1を湾曲させることにより、切り目21から導体10を絶縁被覆20の外側へ露出させてもよい。電線1を湾曲させることにより、導体10の素線15間が開くことから、導体10の素線15間に存在する空隙に液状の止水材30をさらに容易に含浸させやすくなる。
【0019】
止水材30を含浸させる工程では、
図5に示すように、切り目21から絶縁被覆20の外側に露出した導体10を液状の止水材30に浸漬してもよい。これにより、導体10に止水材30を簡易に含浸させることができる。また、導体10を液状の止水材30に浸漬することにより、導体10の素線15間に存在する空隙に液状の止水材30を容易に充填しやすくなる。導体10を絶縁被覆20の外側に露出させる場合、導体10は、止水材30に浸漬する前に絶縁被覆20の外側に露出させてもよく、止水材30に浸漬しながら絶縁被覆20の外側に露出させてもよい。
【0020】
導体10を液状の止水材30に浸漬する場合、導体10のみを液状の止水材30に浸漬してもよく、導体10と絶縁被覆20とを液状の止水材30に浸漬してもよい。導体10と絶縁被覆20とを液状の止水材30に浸漬する場合、絶縁被覆20の外表面にも止水材30が付着するため、絶縁効果及び防水効果を高くすることができる。
【0021】
なお、露出した導体10を液状の止水材30に浸漬する形態について説明したが、導体10に止水材30を含浸させる方法は特に限定されない。例えば、絶縁被覆20の外側に露出した導体10に液状の止水材30を滴下又は噴霧することにより、導体10に止水材30を含浸させてもよい。
【0022】
導体を戻す工程S4では、
図4に示すように、止水材30が含浸した導体10を絶縁被覆20の内側に戻す。これにより、液状の止水材30が、導体10の素線15間に含浸した状態で絶縁被覆20の内側に収容される。また、導体10の径方向において全周囲を覆う止水材30が、絶縁被覆20の内表面と接触し、導体10と絶縁被覆20との間が止水材30で満たされる。
【0023】
導体10を絶縁被覆20の内側に戻す方法は特に限定されず、例えば、導体10の素線15間に止水材30に含浸させた後、電線1の両末端を引っ張って導体10を絶縁被覆20の内側に戻してもよい。電線1の両末端を引っ張ることにより、曲げた導体10が直線状になる。そのため、導体10が絶縁被覆20の内側に戻り、切り目21の切断面が対向することにより、導体10の露出部分が少なくなる。
【0024】
止水材硬化工程S5では、導体10に含浸した止水材30を硬化する。止水材30を硬化することにより、導体10の素線15間に含浸した止水材30が、素線15間を結合する。また、導体10の全周囲を覆う止水材30と絶縁被覆20とが接触した状態で止水材30が硬化することにより、導体10と絶縁被覆20とが結合する。そのため、止水材30の防水効果を発揮することができる。
【0025】
液状の止水材30は、硬化性を有する液状の組成物であればよい。例えば、液状の止水材30は、ホットメルト接着剤、又は、硬化性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。このような液状の止水材30を硬化させることにより、樹脂製の止水材30を形成することができる。
【0026】
硬化した止水材30は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、又はアクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、又は、シリコーン樹脂などのような樹脂であってもよい。
【0027】
ホットメルト接着剤は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、又はアクリル樹脂などのような熱可塑性樹脂であってもよい。これらのような樹脂は、高温にすることで液状の止水材30となり、冷却することで止水材30を硬化することができる。
【0028】
液状の止水材30は、例えば、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルオリゴマーの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。これらのモノマー及びオリゴマーを重合反応させることにより、(メタ)アクリル樹脂を生成することができる。(メタ)アクリルモノマーは、例えば、シアノアクリレートを含んでいてもよい。
【0029】
液状の止水材30は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを含んでいてもよい。これらの反応させることにより、ポリウレタンを生成することができる。
【0030】
液状の止水材30は、エポキシドを含んでいてもよい。また、硬化性モノマーは、エポキシドに加え、アミンのような酸無水物を含んでいてもよい。さらに、硬化性モノマーは、酸無水物及びチオールの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。これらの化合物が反応することにより、エポキシ樹脂を生成することができる。
【0031】
液状の止水材30は、ジメチルシロキサンのようなオルガノシロキサンを含んでいてもよい。オルガノシロキサンを重合させることにより、主鎖がシロキサン結合で構成されたシリコーンを生成することができる。
【0032】
止水材30は、硬化前には液状であり、硬化によって固体となって止水効果を発揮するものであれば特に限定されない。液状の止水材30は、熱硬化性材料、湿気硬化性材料、二液反応硬化性材料、又は、光硬化性材料であってもよい。
【0033】
液状の止水材30の硬化条件は特に限定されず、材料に適した条件で硬化すればよい。止水材30の硬化反応及び硬化時間などは、用いる材料及び硬化タイプなどによって異なる。例えば、湿気硬化タイプの止水材30を用いた場合には、空気中の水分に触れることにより硬化反応が開始するため、導体10の素線15間に液状の止水材30を含浸させる工程において、硬化し始めていてもよい。
【0034】
防水絶縁処理工程S6は、止水材30を硬化させた後に、絶縁被覆20の切り目21を被覆材40で被覆する。本実施形態に係る止水部付電線の製造方法では、防水絶縁処理工程S6がなくてもよいが、防水性及び絶縁性の要求スペックに応じて切り目21を被覆材40で被覆してもよい。被覆材40が切り目21を被覆することにより、切り目21から水が浸入するのをさらに抑制したり、絶縁性を高くしたりすることができる。
【0035】
被覆材40は、例えば、チューブ、テープ又はシートなどであってもよい。被覆材40は、例えば、基材と、基材の表面に設けられた接着剤とを含んでいてもよい。
【0036】
基材は、電気絶縁性が高く、扱いが容易であるため、樹脂を含んでいてもよい。樹脂は、熱によって容易に成形可能であることから、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリ塩化ビニリデン、及びポリフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0037】
接着剤の種類は特に限定されず、例えばホットメルトなどのような接着剤であってもよい。この接着剤が、切り目21を覆うことにより、絶縁被覆20の内側に液体が浸入することをさらに抑制することができる。ホットメルト接着剤は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、又はアクリル樹脂などのような熱可塑性樹脂であってもよい。
【0038】
このように、本実施形態に係る止水部付電線の製造方法は、複数の素線15を含む導体10と、導体10の周囲を被覆する絶縁被覆20とを備える電線1の絶縁被覆20に切り目21を入れる工程を含んでいる。本方法は、切り目21から導体10を絶縁被覆20の外側へ露出させ、外側へ露出した導体10の素線15間に液状の止水材30を含浸させる工程を含んでいる。本方法は、止水材30が含浸した導体10を絶縁被覆20の内側に戻す工程を含んでいる。本方法は、導体10に含浸した止水材30を硬化する工程を含んでいる。
【0039】
従来の止水部付き電線の製造方法において、導体の素線間に止水用樹脂を十分に浸透させるためには、素線間の間隔が大きくなるように素線間を広げる必要がある。このためには、止水用樹脂を供給する部分の絶縁被覆を大きく剥がさなければならない。絶縁被覆を大きく剥ぐことによって大きく露呈した導体は、防水処理と絶縁処理とが必要になる。このような処理には、ホットメルト付きの熱収縮チューブなどが使用される。しかしながら、大きく露呈した導体を熱収縮チューブで覆う場合、多量のホットメルトが設けられた広い面積の熱収縮チューブが必要になる。
【0040】
しかしながら、本実施形態に係る止水部付電線の製造方法によれば、切り目21から導体10を絶縁被覆20の外側へ露出させ、外側へ露出した導体10の素線15間に液状の止水材30を含浸させる。そのため、止水材30が含浸した導体10を絶縁被覆20の内側に戻して止水材30を硬化させるだけで止水部付電線を製造することができる。本方法では、絶縁被覆20を除去せずに再利用しており、絶縁被覆20の内側と外側とを繋ぐ流路も切り目21だけであるため、従来の方法と比較し、防水処理及び絶縁処理を簡素化することができる。
【0041】
そのため、本実施形態に係る止水部付電線の製造方法によれば、ホットメルト付きの熱収縮チューブなどを使用した防水処理と絶縁処理とを簡素化することができる。
【0042】
止水部付電線の製造方法において、止水材30を含浸させる工程では、電線1を湾曲させることにより、切り目21から導体10を絶縁被覆20の外側へ露出させてもよい。電線1を湾曲させることにより、導体10の素線15間が開くことから、導体10の素線15間に存在する空隙に液状の止水材30をさらに容易に含浸させやすくなる。
【0043】
止水部付電線の製造方法において、止水材30を含浸させる工程では、切り目21から絶縁被覆20の外側に露出した導体10を液状の止水材30に浸漬してもよい。これにより、導体10に止水材30を簡易に含浸させることができる。また、導体10を液状の止水材30に浸漬することにより、導体10の素線15間に存在する空隙に液状の止水材30を容易に充填しやすくなる。
【0044】
止水部付電線の製造方法は、止水材30を硬化させた後に、絶縁被覆20の切り目21を被覆材40で被覆する工程を含んでいてもよい。被覆材40が切り目21を被覆することにより、切り目21から水が浸入するのをさらに抑制したり、絶縁性を高くしたりすることができる。
【0045】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 電線
10 導体
20 絶縁被覆
21 切り目
30 止水材
40 被覆材