(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134684
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ミストセパレータ
(51)【国際特許分類】
B01D 45/06 20060101AFI20240927BHJP
B04C 5/06 20060101ALI20240927BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20240927BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20240927BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B01D45/06
B04C5/06
B01D45/12
F27D17/00 104G
F23J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045010
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】501120122
【氏名又は名称】スチールプランテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】三井 昌平
【テーマコード(参考)】
3K070
4D031
4D053
4K056
【Fターム(参考)】
3K070DA04
3K070DA37
4D031AB11
4D031AC01
4D031AC06
4D031BA07
4D031EA01
4D053AA01
4D053AB01
4D053BB08
4D053BC03
4D053BD01
4D053CA23
4D053CB04
4D053CB05
4D053CB12
4D053CB13
4D053CC01
4D053DA10
4K056AA01
4K056AA02
4K056AA05
4K056AA06
4K056AA08
4K056AA09
4K056AA11
4K056AA16
4K056AA19
4K056DB05
4K056DB14
(57)【要約】
【課題】全長を長くすることなくミスト回収性能を高めることができるミストセパレータを提供する。
【解決手段】本発明に係るミストセパレータ1は、スクラバーを通過したミストを含む排ガスから前記ミストを回収するためのものであって、
流入する前記排ガスに旋回流を生じさせる旋回羽根を有する旋回流発生部3と、
前記排ガスの軸方向流れ方向における旋回流発生部3の下流側に、旋回流発生部3と同軸に設けられたミスト回収部5とを備え、
ミスト回収部5が、(1)長手方向に延びる胴部スリット15が設けられた内側円筒体12と外側円筒体13とを含む二重構造を有する二重胴部7及び(2)出口管29の開口端部を覆うバッフルコーン31と、前記出口管29及び前記バッフルコーン31の外側を囲う外殻部33とを有するガス流れ反転部9、のうちの少なくともいずれか一方を備えていることを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラバーを通過したミストを含む排ガスから前記ミストを回収するためのミストセパレータであって、
流入する前記排ガスに旋回流を生じさせる旋回羽根を有する旋回流発生部と、
前記排ガスの軸方向流れ方向における前記旋回流発生部の下流側に、前記旋回流発生部と同軸に設けられたミスト回収部とを備え、
前記ミスト回収部が、
(1)内側円筒体と外側円筒体を含む二重構造を有し、前記内側円筒体には長手方向に延びる胴部スリットが設けられている二重胴部と、
(2)前記軸方向流れ方向における上流側に向けて端部が開口する出口管と、前記軸方向流れ方向における上流側に先端を向けて設けられ、前記出口管の少なくとも前記端部を覆うバッフルコーンと、前記出口管及び前記バッフルコーンの外側を囲う外殻部とを有し、前記バッフルコーンと前記外殻部との間を通過した前記排ガスの流れが、前記軸方向流れ方向における前記バッフルコーンの下流側で反転するとともに、前記バッフルコーンと前記出口管との間を通過した前記排ガスの流れが前記バッフルコーンの内側で再度反転し、前記出口管から前記排ガスが排出されるよう構成され、前記ミスト回収部の前記軸方向流れ方向における下流側に設けられたガス流れ反転部と、
の(1)二重胴部及び(2)ガス流れ反転部のうちの少なくともいずれか一方を備えていることを特徴とするミストセパレータ。
【請求項2】
前記ミスト回収部が少なくとも前記二重胴部を備え、
前記胴部スリットの、前記旋回流の回転方向流れ方向における上流側の縁部が、前記回転方向流れ方向における下流側の縁部よりも半径方向外側に位置することを特徴とする請求項1に記載のミストセパレータ。
【請求項3】
前記外側円筒体と前記内側円筒体の間の空間に、前記胴部スリットに沿って設けられたミスト回収管を更に備え、
前記ミスト回収管には、前記胴部スリットに対応する位置に回収管スリットが設けられており、前記内側円筒体の内側空間と前記ミスト回収管の内側空間が前記胴部スリット及び前記回収管スリットを通して連通していることを特徴とする請求項2に記載のミストセパレータ。
【請求項4】
前記ミスト回収管は前記外側円筒体と前記内側円筒体の双方に固定され、前記内側円筒体が前記ミスト回収管を介して前記外側円筒体の内側で支持されていることを特徴とする請求項3に記載のミストセパレータ。
【請求項5】
前記ミスト回収管には、更に連通スリットが設けられており、前記外側円筒体と前記内側円筒体の間の空間と、前記ミスト回収管の内側空間とが前記連通スリットを通して連通していることを特徴とする請求項3又は4に記載のミストセパレータ。
【請求項6】
前記ミスト回収部が少なくとも前記ガス流れ反転部を備え、
前記ガス流れ反転部の前記外殻部が、前記軸方向流れ方向における前記ミスト回収部の上流側の部分よりも大きな直径を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のミストセパレータ。
【請求項7】
前記ミスト回収部が少なくとも前記ガス流れ反転部を備え、
前記ガス流れ反転部の前記外殻部が、前記軸方向流れ方向における前記ミスト回収部の上流側の部分よりも大きな直径を有することを特徴とする請求項5に記載のミストセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラバーを通過したミストを含む排ガスからミストを回収するためのミストセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉や転炉の排ガス処理設備の湿式集塵設備として、湿式ガス洗浄設備(RSW:Ring Slit Washer)とミストセパレータ(MS:Mist Separator)の組み合わせが広く適用されている。
【0003】
湿式ガス洗浄設備は、ダストを多く含む排ガス中にスプレー状に水を散水して水滴中にダス卜を捉えて洗浄する湿式除塵設備であり、湿式ガス洗浄設備の下流に設置するミストセパレータで残存ダストを含む浮遊ミストを回収する。
ミストセパレータの設置形式には、垂直配置の自立型と、傾斜配置にして架溝上に搭載する横置型がある。このうち、自立型のミストセパレータは、例えば特許文献1(特に
図7)に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載のミストセパレータ63では、入口部に旋回流を作るための旋回羽根67が設置されており、旋回羽根67を通過したミスト含有ガスに遠心力を与えてミストセパレータ63の内壁にミストを付着させ、付着したミストが壁面を下部まで伝って下部排水受68に溜まった水封水となり、一定の水位で水封しつつ系外に排出される。
【0005】
除湿されたガスは、ミストセパレータ下部域にある、ミストセパレータ中心と中心軸を同一とした出口ダクトに吸い込まれて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自立型のミストセパレータの場合、ミスト付着面積(円筒胴の内壁面の面積)を確保するために、出口ダクトから入口ダクトまでの胴の長さを長くする必要があり排ガス入口高さが高くなる一方、ミストセパレータの上流に配置する湿式ガス洗浄設備の排ガス出口は比較的低い位置にある。そのため、湿式ガス洗浄設備の排ガス出口とミストセパレータの排ガス入口との間を接続する長いダクトが必要となる。更にミストセパレータの重量が狭い面積に集中し、これに耐えるのに十分な基礎工事も必要になることから、ミストセパレータを横置きにして入口ダクトを最短化する形で架構上に搭載する形にした方が経済的でもあり、設置し易いケースも多い。
【0008】
しかし、横置型の場合でも、設置面積の都合上、ミスト付着面積として必要になる胴長の確保が設置上の制約になる。また、重力の影響で全周一様なミスト流れでなくなることや、付着ミストが再びガス中に滴下したりして自立型に比べてミスト回収性能が低くなってしまう傾向もある。
さらに、横置型に限らず、ミストセパレータ内径に合わせて設置する旋回羽根67の部分の口径は排ガス流量によって適正サイズに設計されるが、想定条件のガス量でなかったり、排ガス流量の変動域が大きくなると旋回流速が安定せずにミスト付着性能を十分に発揮できなくなる。
【0009】
このような理由から、ミストセパレータの全長を長くすることなくミスト回収性能を高めることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明に係るミストセパレータは、スクラバーを通過したミストを含む排ガスから前記ミストを回収するためのものであって、
流入する前記排ガスに旋回流を生じさせる旋回羽根を有する旋回流発生部と、
前記排ガスの軸方向流れ方向における前記旋回流発生部の下流側に、前記旋回流発生部と同軸に設けられたミスト回収部とを備え、
前記ミスト回収部が、
(1)内側円筒体と外側円筒体を含む二重構造を有し、前記内側円筒体には長手方向に延びる胴部スリットが設けられている二重胴部と、
(2)前記軸方向流れ方向における上流側に向けて端部が開口する出口管と、前記軸方向流れ方向における上流側に先端を向けて設けられ、前記出口管の少なくとも前記端部を覆うバッフルコーンと、前記出口管及び前記バッフルコーンの外側を囲う外殻部とを有し、前記バッフルコーンと前記外殻部との間を通過した前記排ガスの流れが、前記軸方向流れ方向における前記バッフルコーンの下流側で反転するとともに、前記バッフルコーンと前記出口管との間を通過した前記排ガスの流れが前記バッフルコーンの内側で再度反転し、前記出口管から前記排ガスが排出されるよう構成され、前記ミスト回収部の前記軸方向流れ方向における下流側に設けられたガス流れ反転部と、
の(1)二重胴部及び(2)ガス流れ反転部のうちの少なくともいずれか一方を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
[2]また、上記[1]に記載のものにおいて、前記ミスト回収部が少なくとも前記二重胴部を備え、
前記胴部スリットの、前記旋回流の回転方向流れ方向における上流側の縁部が、前記回転方向流れ方向における下流側の縁部よりも半径方向外側に位置することを特徴とするものである。
【0012】
[3]また、上記[2]に記載のものにおいて、前記外側円筒体と前記内側円筒体の間の空間に、前記胴部スリットに沿って設けられたミスト回収管を更に備え、
前記ミスト回収管には、前記胴部スリットに対応する位置に回収管スリットが設けられており、前記内側円筒体の内側空間と前記ミスト回収管の内側空間が前記胴部スリット及び前記回収管スリットを通して連通していることを特徴とするものである。
【0013】
[4]また、上記[3]に記載のものにおいて、前記ミスト回収管は前記外側円筒体と前記内側円筒体の双方に固定され、前記内側円筒体が前記ミスト回収管を介して前記外側円筒体の内側で支持されていることを特徴とするものである。
【0014】
[5]また、上記[3]又は[4]に記載のものにおいて、前記ミスト回収管には、更に連通スリットが設けられており、前記外側円筒体と前記内側円筒体の間の空間と、前記ミスト回収管の内側空間とが前記連通スリットを通して連通していることを特徴とするものである。
【0015】
[6]また、上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のものにおいて、前記ミスト回収部が少なくとも前記ガス流れ反転部を備え、
前記ガス流れ反転部の前記外殻部が、前記軸方向流れ方向における前記ミスト回収部の上流側の部分よりも大きな直径を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るミストセパレータは、上記の(1)二重胴部及び(2)ガス流れ反転部のうちの少なくともいずれか一方を備えていることにより、ミストセパレータの全長を長くすることなくミスト回収性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係るミストセパレータの斜視図である。
【
図2】
図1に示したミストセパレータの側面の一部を切断して示して内部構造を説明する説明図である。
【
図3】実施の形態1に係るミストセパレータの側面図である。
【
図4】
図3に示したミストセパレータの縦断面図である。
【
図5】実施の形態1に係るミストセパレータにおける二重胴部の横断面図とその部分拡大図である(その1)。
【
図6】実施の形態1に係るミストセパレータにおけるミスト回収部の断面斜視図である(その2)。
【
図7】実施の形態1に係るミストセパレータにおけるミスト回収管を周方向の異なる方向からみた状態を示す図である。
【
図8】実施の形態2に係るミストセパレータにおける二重胴部の横断面図である。
【
図9】
図8に示した二重胴部の一部を切断して示す斜視図である。
【
図10】
図8に示した二重胴部を構成する仕切り板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態1]
本実施の形態に係るミストセパレータ1は、スクラバーを通過したミストを含む排ガスからミストを回収するためのものであって、
図1~
図4に示すように、流入する排ガスに旋回流を生じさせるよう軸方向に対して斜めに配置された複数の案内板(旋回羽根)を有する旋回流発生部3と、排ガスの軸方向における流れ方向である軸方向流れ方向における旋回流発生部3の下流側に、旋回流発生部3と同軸に設けられたミスト回収部5とを備えている。また、本実施形態では、
図1~
図4から分かる通り、外殻部33の大径部分の下側端部が設置状態で最も低くなるため、下側が排水溜りとなり、この部分に排水口(不図示)を設け、これに水封管(不図示)が接続される。ミストセパレータ内の壁面で回収されたミストは重力の作用により壁面上を流れて排水溜まりに集まり、排水口から水封管を通して排出される。
【0019】
本実施の形態のミスト回収部5は、
図1~
図4に示すように、二重胴部7とガス流れ反転部9の2つから構成されている。もっとも、本発明のミストセパレータ1は、これら両方備えてもよいし、いずれか一方のみを備えていてもよい。
以下、二重胴部7とガス流れ反転部9の詳細を説明する。
【0020】
<二重胴部>
二重胴部7は、内側円筒体12と外側円筒体13を含む二重構造を有し、内側円筒体12には長手方向に延びる胴部スリット15が設けられている。本実施形態においては、内側円筒体12は、ミスト回収管17(後述)によって支持されている6枚の湾曲板11によって構成されている。従って、胴部スリット15は、これら湾曲板11の間の隙間として設けられている。即ち、本発明の内側円筒体は、単一の部材で構成されるものには限られず、外側円筒体の内側に配置されて二重胴部を形成し、排ガスが軸方向流れ方向における下流側の端部まで旋回しながら螺旋状に流れていくことが可能となるように、円筒形又は略円筒形をなす単一又は複数の部材からなる構成要素である。
【0021】
なお、胴部スリット15の両側の縁部のうち、排ガス旋回流の流れ方向の回転方向成分(軸方向流れ方向に垂直な面内の成分)である回転方向流れ方向における上流側の縁部が、本実施形態のように回転方向流れ方向における下流側の縁部よりも半径方向外側に位置するようにするのが好ましい(
図5の拡大図参照)。
上記の構成にすることで、旋回する排ガスが内側円筒体12と外側円筒体13の間の空間に導入されやすくなる。特に、後述のように、内側円筒体12内を流れる排ガスに含まれているミストは、旋回流により生じる遠心力によって内側円筒体12の壁面近くに集約されるため、ミストリッチとなった壁面近くの排ガスが内側円筒体12と外側円筒体13の間の空間に導入されやすくなることで、ミストをより効率的に回収することが可能となる。
【0022】
本実施の形態では、
図5、
図6に示すように、内側円筒体12と外側円筒体13の間の空間に、胴部スリット15に沿ってミスト回収管17を設け、ミスト回収管17には、胴部スリット15に対応する位置に回収管スリット19が設けられており、内側円筒体12の内側空間とミスト回収管17の内側空間が胴部スリット15及び回収管スリット19を通して連通している。
【0023】
また、ミスト回収管17には、回収管スリット19とは別に連通スリット21が設けられており、外側円筒体13と内側円筒体12の間の空間と、ミスト回収管17の内側空間とが連通スリット21を通して連通している(
図5の拡大図参照)。即ち、連通スリット21は、外側円筒体13と内側円筒体12の間の空間のうちミスト回収管17内以外の領域にミスト回収管17内から排ガスを排出する機能を有している。本実施形態では、連通スリット21は、胴部スリット15を通してミスト回収管17に導入された排ガスが、ミスト回収管17の内壁に沿って流れの向きを反転させた後の部分、言い換えると、回転方向流れ方向における上流側の部分に設けられている。連通スリット21がこの部分に設けられていることにより、胴部スリット15を通してミスト回収管17に導入された排ガスがミスト回収管17の内壁により多く接触し、ミスト回収管17の内壁においてもミストの付着回収が効率的に行われることとなる。
図7は、ミスト回収管17を異なる側面から見た状態であり、ミスト回収管17に形成された回収管スリット19、連通スリット21の配置関係を示している。
【0024】
内側円筒体12に胴部スリット15を設けるとともに、ミスト回収管17に回収管スリット19及び連通スリット21を設けることで、排ガスを内側円筒体12の内部空間から内側円筒体12と外側円筒体13の間の空間に導入することができる。これにより、この空間を形成する壁面(本実施形態では、内側円筒体12の外壁、外側円筒体13の内壁、及びミスト回収管17の内壁と外壁)にミストを付着させて回収することができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、ミスト回収管17は外側円筒体13と内側円筒体12の双方に固定され、内側円筒体12がミスト回収管17を介して外側円筒体13の内側で支持されている。
このようにすることで、隣接する湾曲板11の支持を1本のミスト回収管17で兼用でき、内側円筒体12を支持する部材を別途設ける必要がなく、構造がシンプルになる。また、胴部スリット15を途切れ無い連続スリットとすることができ、断続的に設けられたスリットよりも開口長さ(開口面積)を大きくすることができるため、より確実にミスト回収管17内にミストを排出し、より円滑に内側円筒体12と外側円筒体13の間の空間にミストを排出することができる。
もっとも、本発明はミスト回収管17を必須とするものではなく、ミスト回収管17を設けていない態様、例えば後述の実施の形態2の態様も本発明に含まれる。
【0026】
二重胴部7の下端部には、内側円筒体12の内面、内側円筒体12の外面、外側円筒体13の内面に付着したミストが水となって流れてくるものを排ガスに再合流させないように受け止めるミスト回収リング23が設けられている(
図2、
図4参照)。
ミスト回収リング23は、底面25と側壁27を有し、断面がL字型をしており、ミスト回収リング23に衝突した排ガス中の残存ミストを付着回収するとともに、内側円筒体12の内外壁面と、外側円筒体13の内壁面を伝って降下してきた水を受け止める機能を有する。ミスト回収リング23で付着回収されたミストや受け止められた水は、ミスト回収リング23を伝って下側に導かれ、外側円筒体13の下側の内壁面上で排水溜りに向かう水の流れに合流する。底面25は内側円筒体12の内面より若干内側の位置から外側円筒体13の内面より若干内側の位置に亘る幅を有しており、ミスト回収リング23と外側円筒体13の内壁面との間に隙間が残されている。このため、内側円筒体12と外側円筒体13の間の空間からガス流れ反転部9内に直接ガスが流れこむ流路が形成されている。このガス流れを作ることが、内側円筒体12の内部空間から内側円筒体12の胴部スリット15を通して内側円筒体12の外側に排ガス(ミスト)を排出する流れを作ることになる。
【0027】
<ガス流れ反転部>
ガス流れ反転部9は、ミスト回収部5の軸方向流れ方向における下流側に設けられ、軸方向流れ方向における上流側に向けて端部が開口する出口管29と、軸方向流れ方向における上流側に先端を向けて設けられ、出口管29の少なくとも端部を覆うバッフルコーン31と、出口管29及びバッフルコーン31の外側を囲う外殻部33とを有している。バッフルコーン31は、円錐形状部分と、該円錐形状部分の底側から軸方向流れ方向における下流側に延びる円筒形の袖部分を有している。
また、本実施の形態では、バッフルコーン31の内部から出口管29内に至る整流板35が設けられている。整流板35を設けることで、反転した排ガス流を出口管29に確実に排気できると共に、整流板35の表面でミストを捕獲することもできる。
【0028】
ガス流れ反転部9が上記構成を有することにより、バッフルコーン31と外殻部33との間を通過した排ガスの流れが、軸方向流れ方向におけるバッフルコーン31の下流側で反転するとともに、バッフルコーン31と出口管29との間を通過した排ガスの流れがバッフルコーン31の内側で再度反転し、出口管29から排ガスが排出される。
【0029】
なお、ガス流れ反転部9の外殻部33は、軸方向流れ方向におけるミスト回収部5の上流側の部分よりも大きな直径を有することが好ましい。
バッフルコーン31を追加することでガス流路の断面積が減少してガス流速が急激に増加する状態となると、ミストが壁面に付着せずに排ガスに含まれたまま流されてしまうが、外殻部33の径を拡大することで、バッフルコーン31の影響でガス流れ反転部9で排ガスの流速が急激に上がることを防止してミストの付着回収を促すことができるとともに、ミストが付着する壁面の面積を増大させることもできる。
【0030】
<作用>
上記のように構成された本実施の形態に係るミストセパレータ1の作用を説明する。
スクラバーを通過したミストを含む排ガスはミストセパレータ1に導入されると、旋回流発生部3において旋回流となり、二重胴部7の内側円筒体12内に流入する。
内側円筒体12内に流入した排ガスは、内側円筒体12内を旋回しながら下流側に流れていく。このとき、内側円筒体12内を旋回することで排ガス中のミストは遠心力により外周部に集められ、ミストリッチとなった排ガスは、その一部が二重胴部7の胴部スリット15と回収管スリット21を通じて外側円筒体13と内側円筒体12の間の空間に流れ込む形で内側円筒体12内を流れるガス流から分離され、他は内側円筒体12内を下流側に流れる。
【0031】
内側円筒体12内を下流側に流れる排ガスは、内側円筒体12の内面と接触することでミストが回収される。この点は、従来のミストセパレータでの付着回収機能と同様の作用である。
【0032】
また、二重胴部7の胴部スリット15に流入したミストを多く含む排ガスは、回収管スリット19を介してミスト回収管17内に流入し、その一部はミスト回収管17内を下流側に流れ、他は連通スリット21からミスト回収管17の外に流出して外側円筒体13、内側円筒体12及びミスト回収管17で仕切られた空間内を下流側に流れていく。このとき、ミスト回収管17内を流れる排ガスは、ミスト回収管17の内壁と接触してミストが回収され、また外側円筒体13、内側円筒体12及びミスト回収管17で仕切られた空間を流れる排ガスは、外側円筒体13の内面、内側円筒体12の外面及びミスト回収管17の外面に接触してミストが回収される。
【0033】
二重胴部7の壁面で回収されたミストは、液体となって壁面に沿って下流側に流れ、外側円筒体13の内壁を伝って直接、またはミスト回収リング23を経由して排水溜まりに集約される。そして、排水溜まり設けられた排水口から水封管を通じて外部に排出される。
【0034】
二重胴部7を通過した排ガスの一部はミスト回収リング23に衝突し、ここで回収されたミストはミスト回収リング23を伝って流れて排水溜まりに至り、排水溜まり下部の排水口に接続する水封管を通じて外部に排出される。
【0035】
また、二重胴部7を通過した排ガスは、ミスト回収リング23に衝突した排ガスも含めて全てガス流れ反転部9に流入し、バッフルコーン31の表面と外殻部33の間を下流側に流れ、バッフルコーン31の下流側で反転してバッフルコーン31と出口管29との間を通過し、さらにバッフルコーン31の内側で再度反転し、出口管29から排出される。
【0036】
ガス流れ反転部9を通過する過程で、排ガスはバッフルコーン31の外面、外殻部33の内面、出口管29の外面、バッフルコーン31の内面に接触してミストが回収される。回収されたミストは、重力により低いところに流れるので、設置状態で最も低くなる上記の外殻部33の大径部分の下側端部(排水溜まり)に設置された水封管を通じて外部に排出される。
【0037】
次に、二重胴部7及びガス流れ反転部9におけるミスト回収に関する効果をさらに詳細に説明する。
【0038】
<二重胴部の効果>
内側円筒体12内においては、排ガスの大部分が旋回しながら螺旋状に下流側に向けて流れている(以下、「主ガス流」という)。内側円筒体12内を流れる排ガスに含まれているミストは、旋回流により生じる遠心力によって内側円筒体12の壁面近くに集約されるが、内側円筒体12には胴部スリット15が設けられているので、集約されたミストは、胴部スリット15を介してガス流と共に内側円筒体12内から排出される。すなわち、排ガスのうちミストリッチとなった部分を主ガス流から分離することができる。この点、従来のミストセパレータでは、壁面に衝突したミストの一部が再飛散してしまうことがあったが、スリットに入り主ガス流から分離された排ガス中のミストについては、主ガス流内に再飛散する確率は極めて低くなる。
【0039】
また、胴部スリット15と回収管スリット21から内側円筒体12と外側円筒体13との間の狭い空間にミストリッチな排ガスを導入することで、ミストが壁面に接触する機会を増大させることができる。特に、ミスト回収管17を設けていない場合や、ミスト回収管17に連通スリット21が設けられている場合、排ガスが接触する壁面面積が、「内側円筒体内面」+「内側円筒体外面」+「外側円筒体内面」+「ミスト回収管内面」+「ミスト回収管外面」の面積の合計となり、これらのうち内側円筒体内面、内側円筒体外面、及び外側円筒体内面のそれぞれの面積は従来の「円筒体内面」と略同面積なので、従来例に比較すると接触面積(ミストの付着可能面積)が3倍以上となる。
また、ミスト回収管17を設けた場合、狭い空間にミストリッチな排ガスが導入されるため、ミスト回収管17内の内面でもミストの付着回収が効率的に行われる。
【0040】
また、本発明のミストセパレータ1は垂直配置も可能であるが、傾斜配置とした場合には、内側円筒体12の内面でとらえたミストが壁面を斜め周方向に伝って下に流れていくため、その過程で胴部スリット15を通して回収される。このように内側円筒体12の内面に付着して胴部スリット15を通して回収されたミストは主ガス流に再飛散することがなく、確実なミスト回収ができる。
但し、胴部スリット15を段違いスリットとした場合には、開口が上向きのスリットでのみ回収される。
【0041】
<ガス流れ反転部の効果>
ガス流れ反転部9のバッフルコーン31は、出口管29の軸方向流れ方向における上流側の端部を覆っているため、出口管29の当該端部からミストを含む排ガスが直接排出されることを防ぎ、排ガスの流れを壁面に沿った流れに変えることができる。また、ガス流れ反転部9を設けることで、ミストが付着する壁面として、バッフルコーン31の外面、外殻部33の内面、出口管29の外面、バッフルコーン31の内面、出口管29の内面、整流板35の面とがあり、排ガスが接触する壁面の面積(付着表面積)が増大する。さらに、ガス流れを反転させることで、ミストに作用する慣性力により、反転するガス流れの外周側の壁面にミストが付着する機会が増大する。このように、ガス流れ反転部9は、ミストセパレータの軸方向流れ方向における下流側において、ミストの付着回収性能を増強する機能を有している。
【0042】
ミストセパレータのミスト回収性能は、例えば胴長を長くする等で排ガスが接触する面積を増やすことで高めることはできる、しかし、上記のような作用により、本発明のミストセパレータは、同じ胴長を有する従来のミストセパレータと比較して高い性能を有するものであり、全長を長くすることなくミスト回収性能を高めることが可能となる。言い換えると、同等の性能を有するミストセパレータであれば、従来よりも全長を短くして提供することができる。
【0043】
[実施の形態2]
本実施の形態を、
図8乃至
図10に基づいて説明する。
本実施の形態では、二重胴部37の構造を実施の形態1のものと異なる態様にしたものである。本実施の形態の二重胴部37は、ミスト回収管17に代えて胴部スリット15の位置に、軸方向流れ方向における上流側から下流側に向けて延びる内側端面に凹凸が形成された仕切り板39(
図10参照)を、外側円筒体内周面の周方向複数箇所(本実施の形態では6箇所)に設けると共に、仕切り板39によって6枚の湾曲板41を支持し、この湾曲板41によって内側円筒体42を構成したものである。
【0044】
各湾曲板41の回転方向流れ方向における上流側端部は仕切り板39の凹凸における凸部端部に接続され、湾曲板41の回転方向流れ方向の下流側の端部は、
図9に示すように、仕切り板39の凹凸における凹部の底面位置に接続されている。
これによって、仕切り板39と湾曲板41によって胴部スリット43が形成される。
【0045】
上記のように構成された二重胴部37においては、実施の形態1における回収管スリット19及び連通スリット21が形成されたミスト回収管17を設けたのと同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
以上、本発明を実施形態を用いて説明してきたが、本発明はこれらの形態の構成には限られない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定まるものであり、その範囲内において実施の形態及び変形例に示した構成要素の一部の省略や変形、またそれらの改良を施した構成の全てが本発明に含まれる。
【0047】
例えば、上記の実施形態1、2はともに横置型のミストセパレータに本発明を適用したものであるが、本発明は横置型のミストセパレータには限られず、縦置型としてもよい。
【0048】
また、例えば、上記の実施形態では内側円筒体は、ミスト回収管や仕切り板によって支持された6枚の湾曲板によって構成され、胴部スリットは、これら湾曲板の間の隙間として設けられているが、本発明の内側円筒体及び胴部スリットはこの形態には限られない。例えば、内側円筒体を構成する湾曲板の数は3~6枚とすることが構造の簡素化や製造コスト低減等の観点から好ましいが、本発明の内側円筒体を構成する湾曲板の数はこれらの数には限られない。さらに、一体で形成された円筒部材を内側円筒体とし、これに細長い穴をあけることで胴部スリットを設けてもよい。
【0049】
また、例えば、上記の実施形態1は、ミスト回収管17の連通スリット21は、回転方向流れ方向における上流側の部分に設けられている好ましい形態であるが、連通スリット21は回転方向流れ方向における下流側の部分に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ミストセパレータ
3 旋回流発生部
5 ミスト回収部
7,37 二重胴部
9 ガス流れ反転部
11,41 湾曲板
12,42 内側円筒体
13 外側円筒体
15,43 胴部スリット
17 ミスト回収管
19 回収管スリット
21 連通スリット
23 ミスト回収リング
25 底面
27 側壁
29 出口管
31 バッフルコーン
33 外殻部
35 整流板
39 仕切り板