(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134692
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生体電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/266 20210101AFI20240927BHJP
A61B 5/259 20210101ALI20240927BHJP
A61B 5/293 20210101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B5/266
A61B5/259
A61B5/293
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045021
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】502212844
【氏名又は名称】株式会社ユニークメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】松田 早苗
(72)【発明者】
【氏名】間部 恭平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰汎
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127LL24
4C127LL30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハイドロゲルからなる支持体中に、複数の電極素子及びこれに接続される導線を安定して埋め込むことができる生体電極の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【解決手段】第1の型の側面へ通じる開放端を備えた凹部底面に、複数の電極素子を貼り付けて固定し、配線する工程と、第1の型の凹部にハイドロゲル原料を流し込み、凹部の上面を閉じた型内にてゲル化して、電極素子の片面側にハイドロゲルからなる支持体を備えた生体電極中間体を形成する工程と、生体電極中間体を、第1の型から外し、電極素子を表面側に向けて、第2の型の凹部に設置する工程と、第2の型の凹部に、ハイドロゲル原料を流し込み、凹部の上面を閉じた型内にてゲル化して、残りの支持体を形成する工程と、を有し、一体化した支持体を第2の型から外して、電極素子が支持体中に埋め込まれた生体電極を得る、ことを特徴とする生体電極の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の型の側面へ通じる開放端を備えた凹部底面に、複数の電極素子を貼り付けて固定し、配線し、或いは、配線済みの前記電極素子を固定する工程と、
前記第1の型の凹部にハイドロゲル原料を流し込み、前記凹部の上面を閉じた型内にてゲル化して、前記電極素子の片面側にハイドロゲルからなる支持体を備えた生体電極中間体を形成する工程と、
前記生体電極中間体を、前記第1の型から外し、前記電極素子を表面側に向けて、第2の型の凹部に設置する工程と、
前記第2の型の凹部に、ハイドロゲル原料を流し込み、前記凹部の上面を閉じた型内にてゲル化して、残りの前記支持体を形成する工程と、を有し、
一体化した前記支持体を前記第2の型から外して、前記電極素子が前記支持体中に埋め込まれた生体電極を得る、
ことを特徴とする生体電極の製造方法。
【請求項2】
前記電極素子を、前記ハイドロゲル原料と同じ成分の糊を用いて、前記凹部底面に貼り付けて固定する、ことを特徴とする請求項1に記載の生体電極の製造方法。
【請求項3】
前記生体電極中間体を、前記第1の型から外した後、所定形状にカットし、前記所定形状と略同一の形状を有する前記第2の型の凹部に設置する、ことを特徴とする請求項1に記載の生体電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心電や、筋電、脳波等の生体情報を測定する際に生体電極が使用される。これにより、生体信号を検出し、あるいは、生体に刺激電流を伝搬する。
【0003】
特許文献1には、電極体、電極体の製造方法について開示されている。この特許文献には、電極をゲルで覆った電極体の構造について記載されている。また、特許文献1の
図7には、型を用いた電極体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ハイドロゲルからなる支持体中に、複数の電極素子及びこれに接続される導線(リード線)を安定して埋め込むことができる生体電極の製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の生体電極の製造方法は、第1の型の側面へ通じる開放端を備えた凹部底面に、複数の電極素子を貼り付けて固定し、配線し、或いは、配線済みの前記電極素子を固定する工程と、前記第1の型の凹部にハイドロゲル原料を流し込み、前記凹部の上面を閉じた型内にてゲル化して、前記電極素子の片面側にハイドロゲルからなる支持体を備えた生体電極中間体を形成する工程と、前記生体電極中間体を、前記第1の型から外し、前記電極素子を表面側に向けて、第2の型の凹部に設置する工程と、前記第2の型の凹部に、ハイドロゲル原料を流し込み、前記凹部の上面を閉じた型内にてゲル化して、残りの前記支持体を形成する工程と、を有し、一体化した前記支持体を前記第2の型から外して、前記電極素子が前記支持体中に埋め込まれた生体電極を得る、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様の生体電極の製造方法は、前記電極素子を、前記ハイドロゲル原料と同じ成分の糊を用いて、前記凹部底面に貼り付けて固定する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様の生体電極の製造方法は、前記生体電極中間体を、前記第1の型から外した後、所定形状にカットし、前記所定形状と略同一の形状を有する前記第2の型の凹部に設置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハイドロゲルからなる支持体中に、複数の電極素子及びこれに接続される導線を安定して埋め込むことができ、支持体中における各電極素子の配置のばらつきを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態の生体電極の製造工程を示す斜視図及び断面図である。
【
図2】本実施の形態の生体電極の製造工程を示す斜視図及び断面図である。
【
図3】本実施の形態の生体電極の製造工程を示す斜視図及び断面図である。
【
図4】本実施の形態の生体電極の製造工程を示す斜視図及び断面図である。
【
図5】
図1から
図4の製造工程を経て得られた生体電極中間体を所定形状にカットする製造工程を示す斜視図である。
【
図6】
図5を経て得られた生体電極中間体の斜視図である。
【
図7】本実施の形態の生体電極の製造工程を示す斜視図である。
【
図8】本実施の形態の生体電極の製造工程を示す斜視図及び断面図である。
【
図9】本実施の形態の生体電極の製造工程を示す斜視図及び断面図である。
【
図10】本実施の形態の生体電極の製造工程を経て形成された最終品としての生体電極示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態の生体電極の製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、すべての図面において同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
以下に示す本実施の形態の生体電極は、頭蓋内グリッド電極以外の生体電極にも使用可能であるが、一例として、頭蓋内電極を挙げて、従来の課題等を説明する。
【0012】
[従来における生体電極の課題について]
例えば、脳表脳波を検出するための従来の頭蓋内グリッド電極は、小径の金属板をシリコーンゴムシートで挟んで配列し固定した構成である。そして、シリコーンゴムシートの一方に金属板が露出する穴が空いており、金属板からなる電極素子(コンタクト)が脳表と接する構造となっている。
【0013】
このような構造では、基板となるシリコーンゴムシートを曲げると、穴から金属板の端部がはみ出し易く、脳表を傷つけたり、電極素子が脱落する危険性があった。また、MRI画像診断時に装置から発信される高周波電波により、電極素子に接する脳表が加熱され、損傷を招く危険性があった。
【0014】
[ハイドロゲル生体電極の利点について]
ところで、ハイドロゲル生体電極においては、ハイドロゲルそのものが電解液を含むため、生体と同様な導電性がある。したがって、ハイドロゲルからなる支持体に穴を開けることなく脳波の検出が可能である。また、電極素子は、ハイドロゲルからなる支持体中に埋め込まれており、支持体を曲げても、電極素子がはみ出す可能性は無く、膜の厚さを一定にすることによって一様な脳波検出が可能となる。更に、脳表に直接接触しないため、たとえMRI撮像時の高周波電流で温度が上昇しても、熱が分散されて熱傷のリスクは、低くなる。
【0015】
[ハイドロゲル生体電極の製造方法に関する課題について]
ハイドロゲル生体電極の製造方法では、型から外さずに、複数の電極素子をハイドロゲルからなる支持体中に埋め込む方法が考えられる。例えば、ハイドロゲル原料を型内に半分だけ入れてゲル化し、その上に、複数の電極素子を配置し、さらに、残りのハイドロゲル原料を型内に流し込みゲル化する。このようにすれば、型から外すことなく一度に、ハイドロゲル生体電極を形成できる。
【0016】
しかしながら、このように一つの型を用いて、複数の電極素子をハイドロゲルからなる支持体中に埋め込む方法では、製造工程中における電極素子の固定が難しく、残りのハイドロゲル原料を型内に流し込んだときに、電極素子が浮いたり、変位するなどの問題が生じた。よって、支持体中に埋め込まれた複数の電極素子の配置がずれ、また、支持体の厚み方向にばらついてしまい、歩留まりが低下した。
【0017】
そこで、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、複数の電極素子の片面側に、ハイドロゲルからなる支持体を形成するための型と、最終品の型とを別々にして、製造工程中において各電極素子を安定して固定できるとともに、各電極素子の両面に精度よくハイドロゲルからなる支持体を形成でき、これにより、電極素子の配置のばらつきを小さくでき、所望形状の生体電極を、精度良くかつ容易に製造できる生体電極の製造方法を発明するに至った。
【0018】
[本実施の形態における生体電極の製造方法の具体的説明]
図1は、本実施の形態の生体電極の製造工程を示す斜視図及び断面図である。
図1(a)は、斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)の斜視図を、A-A線に沿って切断し矢印方向から見た部分断面図である。なお、
図2以降にて示される断面図も
図1(a)と同様の位置で切断した断面図である。
【0019】
図1に示すX1-X2方向及びY1-Y2方向は、平面内にて直交する2方向であり、Y1方向を前方方向、Y2方向を後方方向、X1-X2方向を左右方向とする。
【0020】
図1(a)(b)に示すように、第1の型M1の表面には、第1の凹部1が形成されている。第1の凹部1の深さは、ハイドロゲルからなる支持体厚の略半分とされる。
【0021】
図1(a)に示すように、第1の凹部1は、底面1aと、左右方向(X1-X2)の側面及び後方(Y2方向)の側面を囲む側壁面1b、1c、1dとを有して構成される。一方、底面1aの前方(Y1)は、第1の型M1の前方側面1eにまで通じる開放端2となっている。また第1の凹部1の上方は、開口している。
【0022】
図1(a)に示すように、第1の凹部1の後方(Y2)に位置する側壁面1dには、配線4を通すための細溝1gが、第1の型M1の後方側面1hにまで通じるように形成されている。細溝1gの幅寸法(X1-X2方向の長さ)は、側壁面1dの幅寸法よりも狭い。
【0023】
限定されるものではないが、第1の凹部1の左右方向(X1-X2)の幅寸法は、最終品の生体電極20の幅寸法より多少大きい。また、開放端2が形成された第1の凹部1の前後方向(Y1-Y2)の長さ寸法は、最終品の生体電極20の長さ寸法より大きくなっている。このように、第1の凹部1の平面の大きさは、最終品の生体電極20よりも一回り大きい形状となっている。
【0024】
図1(a)(b)に示すように、第1の凹部1の底面1aに、複数の電極素子3を、間隔を空けて配列し、貼り付けて固定する。
図1では、複数の電極素子3を、Y1-Y2方向に間隔を空けて一列に配列し、この列を、X1-X2方向に間隔を空けて複数列、形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、複数の電極素子3を、X1-X2方向に向けて、間隔を空けて配列していてもよいし、複数の電極素子3を、Y1-Y2方向及びX1-X2方向の双方に、間隔を空けて、マトリクス状に配列してもよい。
【0025】
なお、電極素子3は、生体信号を検出し、又は、生体に刺激電流を伝えるための導体を指す。電極素子3の材質を特に限定するものではないが、カーボン系、金属、あるいは、伸縮性導電体等を例示できる。これらの中で、ハイドロゲルの柔軟性を妨げないカーボン系シートを選択することが好ましい。
【0026】
また、電極素子3の形状は、
図1に示す円形状に限定されるものでなく、多角形状や楕円形状等であってもよい。電極素子3の厚みは、数μm~数百μm程度である。
【0027】
図1(a)では、配線4から引き出したリード線5を、各電極素子3に電気的に接続する。
図1(a)に示すように、電極素子3の表面に直接、リード線5を接続することができるが、接続位置を限定するものでなく、例えば、電極素子3にタブを設け、該タブにリード線5を接続する形態とすることもできる。
【0028】
一例として、第1の型M1の凹部底面に、複数の電極素子3を貼り付けて並べた後、リード線5を、配置番号に合わせて、各電極素子3の上に載置し、導電塗料により接着する。そして、その上に電極番号のシールを貼ることができる。このように電極番号を付与することで、後の工程で、生体電極中間体の表裏面の錯誤を抑止できる。
或いは、
図1(a)の工程では、配線済みの複数の電極素子3を第1の型M1の凹部底面に固定してもよい。
【0029】
次に、
図2に示す工程では、ハイドロゲル原料6を、供給ノズル7より、第1の型M1の凹部1に流し込む。ここで、「ハイドロゲル」とは、ポリマーを含む三次元網目構造の中に、水や水系溶媒が包含されている構造体を表す。ハイドロゲルは、水あるいは水系溶媒を主成分として含み、具体的には、使用目的にもよるが、柔軟性の観点から水あるいは水系溶媒の含有量は、ハイドロゲルの全量に対して、85.0質量%程度であることが好ましく、95質量%以上である場合は扱いにくく、ちぎれやすい。70.0質量%以下である場合は硬いゲルとなる。例えば、ポリビニールアルコールハイドロゲルの場合は、PVAの量とゲルの感触の関係を調べたデータから、水あるいは水系溶媒の含有量を求めることができる。
【0030】
ハイドロゲルは、無色透明であるが、顔料などを加えて、不透明や有色で構成してもよい。なお、無色透明であることで、支持体に埋め込まれた電極素子3やリード線5やその先の生体表面を目視できる。これにより、生体電極20を生体組織に設置する時などに、電極素子3の位置を確認でき、またリード線5の接続状態(断線の有無など)を容易に確認できる。
【0031】
図3(a)(b)に示すように、複数の電極素子3の片面側がハイドロゲル原料6で覆われる。
図3(b)で示すように、ハイドロゲル原料6は、第1の型M1の深さよりも多少厚く塗布されて、ハイドロゲル原料6の一部が、第1の型M1の開口上面より盛り上がっていてもよい。
【0032】
図4(a)(b)では、第1の型M1の開口上面を、平面板8で閉じる。平面板8は、少なくとも一方の面が平坦な面で形成され、平坦な面を第1の型M1の開口上面側に押し当てる。これにより、余分なハイドロゲル原料6が、第1の凹部1の開放端2の方向に流れ、或いは開放端2から外部に排除される。そして、ハイドロゲル原料6の厚みは、第1の凹部1の底面1aから平面板8までの間隔に一致する。そして、凍結と解凍を行い、ハイドロゲル原料6をゲル化する。このとき、凍結と解凍を複数回繰り返すことが好ましい。
【0033】
図1から
図4の工程により、複数の電極素子3と、該電極素子3の片面側に形成されたハイドロゲルからなる支持体11と、を有する生体電極中間体10を形成できる(
図5参照)。
【0034】
第1の型M1から生体電極中間体10を取り外し、
図5に示すように、生体電極中間体10を所定形状にカットする。
図5の点線部分に沿ってカットする。本実施の形態の第1の型M1の凹部1には開放端2が設けられており、
図4の工程では、平面板8で凹部上面を閉じた際に、開放端2に向けて、余分なハイドロゲル原料6が押し出されるため、生体電極中間体10の前後方向(Y1-Y2)の長さ寸法は、最終品の生体電極20の長さ寸法よりも大きくなっている。また、幅方向(X1-X2)に関しても最終品の生体電極20の幅寸法より多少大きく形成される。よって、
図5では、最終品である生体電極20の大きさに合わせて、生体電極中間体10の前後方向(Y1-Y2)の長さ寸法及び左右方向(X1-X2)の幅寸法をカットする。なお、第1の型M1により、生体電極中間体10の左右方向(X1-X2)の幅寸法が、最終品の生体電極の幅寸法と一致するように作製された場合は、生体電極中間体10の前後方向(Y1-Y2)の長さ寸法のみ、最終品の生体電極20の長さ寸法と一致するようにカットすることができる。
【0035】
図6は、カット後の生体電極中間体10の斜視図である。なお、限定するものではないが、
図6に示すように、生体電極中間体10の角を切断して面取加工することができる。このように面取加工することで、次工程で使用する第2の凹部2から完成品である生体電極20をスムースに取り外すことができる。
【0036】
図7の工程では、
図6の生体電極中間体10を第2の型M2の第2の凹部12に設置する。このとき、電極素子3の露出表面を上向きにして、第2の凹部12内に設置する。上記したように、
図1の工程で、各電極素子3にリード線5を接続した際に、電極番号を記したシールを貼っておくことで、生体電極中間体10の表裏面を識別でき、
図7の工程において、誤認することなく、各電極素子3の露出表面を上向きに設置できる。
【0037】
図7に示すように、第2の型M2に形成された第2の凹部12は、第1の型M1に形成された第1の凹部1と異なって、底面12aの四方が側壁面12b~12eで囲まれている。ただし、配線4を通すための細溝12gが、後方側壁面12dに開いており、また図示しないが、
図9の工程で、平面板14で凹部上面を閉じた際に、ハイドロゲル原料13にかかる圧力を外部に逃がすための細溝が、側壁面12b、12c、12eの少なくとも一つに1以上、開いている。
【0038】
図8(a)(b)に示す工程では、ハイドロゲル原料13を、供給ノズル7より、第2の型M2の第2の凹部12内に設置された生体電極中間体10の表面に流し込む。ハイドロゲル原料13を、
図2の工程で用いたハイドロゲル原料6と同じ成分とすることが好ましい。
図8に示すように、ハイドロゲル原料13の表面が、第2の凹部12の開口上部の位置に略一致した時点で、ハイドロゲル原料13の流し込みを終了する。ハイドロゲル原料13が、ポリビニールアルコールハイドロゲルであるとき、ポリビニールアルコールハイドロゲルは、70℃以上で溶けるが、
図8の工程で、高温のハイドロゲル原料を流し込んでも、すぐ冷えるために、生体電極中間体10を構成する片面のハイドロゲル支持体の形は維持され、電極素子3は、ハイドロゲル原料13の流し込みの影響を受けない。
【0039】
次の
図9(a)(b)に示す工程では、第2の型M2の凹部上面を、平面板14で閉じ、ハイドロゲル原料13の凍結と解凍を行い、ハイドロゲル原料13をゲル化する。このとき、凍結と解凍を、複数回繰り返すことが好ましい。
【0040】
なお、生体電極中間体10に形成された片面のみのハイドロゲル支持体11と、
図9の工程で作製した残りのハイドロゲル支持体16とは、接合部分がほぼ見分けがつかない程度に一体化している。
【0041】
次に、
図10の工程では、平面板14を第2の型M2から外し、第2の型M2から最終品としての生体電極20を取り出す。そして、生体電極20の周囲のバリなどを除去する。以上により、複数の電極素子3が、ハイドロゲル支持体21(
図9(b)に示すハイドロゲル支持体11、16が一体化したもの)中に埋め込まれた生体電極20を製造することができる。
【0042】
[複数の電極素子の固定方法]
本実施の形態では、第1の型M1の凹部底面に、複数の電極素子3を貼り付けて固定するが、具体的には、ハイドロゲル原料6と同じ成分の糊15(
図1参照)を用いて、各電極素子3を貼り付け固定することが好ましい。
【0043】
よって、ハイドロゲル原料6が、ポリビニールアルコール(PVA)ハイドロゲルであれば、凹部底面の電極配置の位置にハイドロゲルと同じ成分であるPVA糊を垂らして、その上に電極素子3を貼り付けて固定する。PVA糊は、PVAを温水で溶いたものであり、粘着性は弱く、乾くと固化するでんぷん糊に類似する。このとき、水溶性のPVA糊は乾きやすく、すぐ固まるため、PVA糊を仮止め剤として使用してもよい。なお、電極素子3のみならず、リード線5の固定にも適用できる。
【0044】
本実施の形態では、ハイドロゲル原料6とほぼ同じ材料の糊15を用いて、各電極素子3を貼り付け固定することで、その後、ハイドロゲル原料6を流し込んだ時点で同化し、ハイドロゲルからなる片面の支持体11と一体となって容易に、型から剥がすことができる。なお、型の材料を限定するものではないが、ハイドロゲルが剥がれやすい、例えば、PTFEとすることができる。
【0045】
[本実施の形態の生体電極20について]
図1から
図10の各工程を経て形成された生体電極20は、薄いシート状あるいはフィルム状のハイドロゲルからなる支持体21中に、複数の電極素子3が埋め込まれている。各電極素子3は、複数本のリード線5と電気的に接続されており、各リード線5は、まとめて被覆部に固定され、配線4として外部に引き出されている。リード線5及び配線4の一部は、支持体21中に埋め込まれている。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明は、別々の型を用いて、電極素子に対して片方ずつハイドロゲルからなる支持体を形成することで、電極素子の配置ばらつきを小さくでき、心電や、脈波、筋電、脳波等の生体情報を測定する生体電極として好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 :第1の凹部
1a :底面
1b~1d :側壁面
1e :前方側面
1g :細溝
1h :後方側面
2 :開放端
3 :電極素子
4 :配線
5 :リード線
6 :ハイドロゲル原料
7 :供給ノズル
8、14 :平面板
10 :生体電極中間体
11、16、21 :支持体
12 :第2の凹部
12a :底面
12b~12e :側壁面
12g :細溝
13 :ハイドロゲル原料
15 :糊
20 :生体電極
M1 :第1の型
M2 :第2の型