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  • 特開-赤外線センサ及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134696
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】赤外線センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20240927BHJP
   H10N 15/00 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
G01J1/02 C
H10N15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045026
(22)【出願日】2023-03-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】殿内 規之
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 泰蔵
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065BA12
2G065BA14
2G065BA40
2G065BB11
2G065BB24
2G065BB30
(57)【要約】
【課題】
光吸収層の厚膜化により効率的な光熱変換が可能な赤外線センサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
赤外線反射ミラーと、
前記赤外線反射ミラー上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第一の光吸収層と、
前記第一の光吸収層上に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触する光検知部と、
前記光検知部上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第二の光吸収層と、
前記第二の光吸収層上に形成された金属薄膜と、
を備える、赤外線センサ。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線反射ミラーと、
前記赤外線反射ミラー上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第一の光吸収層と、
前記第一の光吸収層上に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触する光検知部と、
前記光検知部上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第二の光吸収層と、
前記第二の光吸収層上に形成された金属薄膜と、
を備える、赤外線センサ。
【請求項2】
前記光吸収ナノ粒子が、酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素である、請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記光吸収ナノ粒子の粒径パラメータπD/λ(D:粒径、λ:検出波長)が、1以下である、請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記高分子樹脂の波長5μm以下の電磁波の吸収率が0.1以下である、請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記高分子樹脂が、ポリスチレンである、請求項4に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
前記光検知部がカーボンナノチューブ、酸化バナジウム及びアモルファスシリコンから選択される1つ以上である、請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項7】
前記第一の光吸収層と第二の光吸収層の厚さの合計が、2.5μm~10μmである、請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項8】
前記赤外線反射ミラーと前記金属薄膜との間の距離が、検出波長の1/4の奇数倍である、請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項9】
前記赤外線反射ミラーの下に、表面が断熱性である基板を備える、請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項10】
赤外線反射ミラーを準備する工程と、
高分子樹脂に光吸収ナノ粒子を分散させ、第一の光吸収層の材料を形成する工程と、
前記赤外線反射ミラー上に、前記第一の光吸収層の材料を適用し、第一の光吸収層を形成する工程と、
前記第一の光吸収層上に2つの電極を形成する工程と、
前記2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触するように、光検知部を形成する工程と、
高分子樹脂に光吸収ナノ粒子を分散させ、第二の光吸収層の材料を形成する工程と、
前記光検知部上に、前記第二の光吸収層の材料を適用し、第二の光吸収層を形成する工程と、
前記第二の光吸収層上に金属薄膜を形成する工程と、
を含む、赤外線センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサは、セキュリティ用の監視カメラだけでなく、人体のサーモグラフィー、車載用カメラ、及び構造物、食品等の検査など非常に広い範囲の応用性があることから、近年、産業応用が活発になっている。特に、IoT(Internet of Thing)との連携による生体情報の取得が可能な、安価で、且つ、高性能な赤外線センサの開発が期待されている。
【0003】
ボロメータ方式の非冷却型赤外線センサは、入射した赤外線を受光部が吸収することにより受光部の温度を変化させ、この受光部に配置した材料の温度変化による抵抗値変化から該赤外線の放射強度を電気信号として検出するものである。現在、ボロメータの素子材料としては、主に酸化バナジウムやアモルファスシリコン等が使用されている(特許文献1)。また、抵抗変化の温度依存性(抵抗温度係数(TCR))の絶対値が高いカーボンナノチューブ(CNT)をボロメータの素子材料に利用することも検討されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-257565号公報
【特許文献2】特開2015-49207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸化バナジウムは、抵抗変化の温度依存性(抵抗温度係数(TCR))が低いことにより、性能が律速されるという課題がある。またアモルファスシリコンは、抵抗値が高く、酸化バナジウムを上回る性能が得られるには至っていない。
【0006】
一方、CNTはTCRが高いものの、CNTだけでは赤外線吸収が十分でないため、進入した赤外線を効率よく吸収し、熱等に変換してボロメータ素子へと伝達する役割を果たす光吸収層を、ボロメータ素子上にさらに設ける必要がある場合がある。そしてSiNやSiO等の無機材料を光吸収層として用いる場合、赤外線吸収量を十分に担保するには、数μm以上の膜厚が必要であるものの、厚膜化すると光吸収層が剥離してしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記した課題を鑑み、光吸収層の厚膜化により効率的な光熱変換が可能な赤外線センサ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、赤外線反射ミラーと、
前記赤外線反射ミラー上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第一の光吸収層と、
前記第一の光吸収層上に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触する光検知部と、
前記光検知部上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第二の光吸収層と、
前記第二の光吸収層上に形成された金属薄膜と、
を備える、赤外線センサである。
【0009】
また本発明は、赤外線反射ミラーを準備する工程と、
高分子樹脂に光吸収ナノ粒子を分散させ、第一の光吸収層の材料を形成する工程と、
前記赤外線反射ミラー上に、前記第一の光吸収層の材料を適用し、第一の光吸収層を形成する工程と、
前記第一の光吸収層上に2つの電極を形成する工程と、
前記2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触するように、光検知部を形成する工程と、
高分子樹脂に光吸収ナノ粒子を分散させ、第二の光吸収層の材料を形成する工程と、
前記光検知部上に、前記第二の光吸収層の材料を適用し、第二の光吸収層を形成する工程と、
前記第二の光吸収層上に金属薄膜を形成する工程と、
を含む、赤外線センサの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光吸収層の厚膜化により効率的な光熱変換が可能な赤外線センサ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る赤外線センサの1つの実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の赤外線センサは、
赤外線反射ミラーと、
前記赤外線反射ミラー上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第一の光吸収層と、
前記第一の光吸収層上に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触する光検知部と、
前記光検知部上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第二の光吸収層と、
前記第二の光吸収層上に形成された金属薄膜と、
を備える、赤外線センサである。
【0013】
金属薄膜に赤外線が入射すると、入射した赤外線の一部は金属薄膜に反射されるが、他の部分は、金属薄膜を通過して光吸収層と光検知部に向かって進行する。そしてこれらを通過した赤外線は、赤外線反射ミラーにより反射されて、光吸収層と光検知部に再び入射する。
【0014】
本発明の赤外線センサは、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂からなる第一の光吸収層と第二の光吸収層を有する。高分子樹脂をバインダーとして用いることで、膜の剥離を発生させずに光吸収層の厚膜化が可能となる。また所望の光吸収特性をもった光吸収ナノ粒子を光吸収材として用いることで効率的な光熱変換が可能となる。本構成により、光を漏れなく熱に変換することが可能となり、感度の向上につながる。
【0015】
また本発明の赤外線センサは、赤外線反射ミラーと金属薄膜を素子の上下に配置することで、干渉効果を利用して光吸収量を増加させることに加え、上部金属薄膜によってデバイス内部への水分の入り込みを抑えることが可能となっている。
【0016】
また本発明の赤外線センサは、赤外線反射ミラーの下に、表面が断熱性である基板を備えることが好ましく、前記基板は、支持基板と熱分離層とが積層された積層基板であることがさらに好ましい。
【0017】
前記検出波長は、760nm~1mmであり、2.5μm~1mmであることが好ましく、5μm~1mmであることがさらに好ましい。
【0018】
本発明に係る赤外線センサの一実施形態の断面図を図1に示す。本実施形態の赤外線センサ10は、支持基板12の表面上に、熱分離層14、赤外線反射ミラー16、第一の光吸収層18、2つの電極20、光検知部22、第二の光吸収層24、及び金属薄膜26をこの順に含む。以下に、本実施形態の赤外線センサの各構成要素について詳述する。
【0019】
(支持基板12)
支持基板12を構成する材料は、無機材料であっても有機材料であってもよく、当技術分野で使用されるものを特に制限なく使用できる。無機材料としては、限定されるものではないが、例えば、ガラス、Si、SiO、SiN等が挙げられる。有機材料としては、限定されるものではないが、例えば、プラスチック、ゴム等、例えば、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、フッ素樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0020】
(熱分離層14)
断熱性が高い(熱伝導率が低い)材料で支持基板表面を覆うことで、光検知部からの熱の放散を抑制できる。熱分離層14を構成する材料の熱伝導率は、一般には0.3W/mK以下であり、好ましくは0.15W/mK以下であり、場合によりより好ましくは0.1W/mK以下である。熱伝導率は低い方が好ましいため、下限は特に限定されないが、例えば、0.02W/mK以上、例えば0.05W/mK以上である。特に、熱分離層の少なくとも垂直方向(積層方向)の熱伝導率が上記範囲であることが好ましい。本明細書において、熱伝導率は、定法(ASTM C177、ASTM E1461等)に従い、25℃で求めた値を採用することができる。
【0021】
熱分離層14を構成する材料としては、これらに限定されないが、パリレンが挙げられる。パリレンはパラキシリレン系ポリマーの総称で、ベンゼン環がCHを介して連結した構造を有する。パリレンの例としては、例えば、下記式で表されるダイマーから形成されるものが挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
上記式中、少なくとも1つのベンゼン環の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲンとしては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が挙げられ、塩素が好ましい。ハロゲンによる置換数は、8以下であり、6以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0024】
パリレンとしては、パリレンN、パリレンC、パリレンD、パリレンHT、ParyFree等が挙げられるが、中でもパリレンC(熱伝導率:0.084(W/mK))が最も熱伝導率が低いため好適である。パリレンは化学的に安定な性質を有し、優れた水分・化学薬品・絶縁バリア特性を備えている。パリレンコーティングは温度安定性、機械的特性、引っ張り強さにも優れている。
【0025】
熱分離層の形成方法は特に限定されず、用いる材料に合わせて適宜選択できる。例えば、パリレンを用いる場合、真空蒸着装置を用いて支持基板上にパリレンコーティングすることによりパリレン膜を形成することができる。具体的には、固体のダイマーを真空下で加熱すると、気化してダイマー気体となる。この気体が熱分解してダイマーが開裂し、モノマー形態になる。室温の蒸着チャンバ内で、このモノマー気体がすべての表面で重合し、薄く透明なポリマーフィルムが形成される。必要により、蒸着プロセスを行う前に、支持基板の前処理、清浄、蒸着すべきでない領域のマスキング等を行ってもよい。
【0026】
断熱性を確保するために、熱分離層の厚さは、20μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、赤外線センサの小型化のためには、1000μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0027】
(赤外線反射ミラー16)
赤外線反射ミラー16は、第一の光吸収層18及び第二の光吸収層24や光検知部22を透過した光を反射させ、光吸収層や光検知部に再吸収させるための層である。したがって、赤外線反射ミラー16は、光吸収層18及び24、並びに光検知部22に対して、光の入射側とは反対側に設けられる。赤外線反射ミラー16としては赤外線センサにおいて光反射層として用いられる材料を制限なく用いることができ、一般には金属、例えば、チタン、金、銀、アルミニウム等が挙げられ、蒸着、スパッタ法、めっき等により形成することができる。
【0028】
赤外線反射ミラーの厚さは、材料によって適宜設定できるが、0.05~1μmが好ましく、0.1~0.2μmがより好ましい。
【0029】
(第一の光吸収層18)
第一の光吸収層は、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である。光吸収ナノ粒子は、通常の混合及び/又はミリング設備を使用して、高分子樹脂中に混合又はミリングすることができる。このように形成された第一の光吸収層の材料を、赤外線反射ミラー上に適用し、例えば、塗布後、乾燥、あるいはアニールすることにより、第一の光吸収層を形成することができる。
【0030】
本発明の光吸収ナノ粒子28は、可視及び近赤外領域に吸収を有さず、特に波長5μm以上に吸収帯をもつ粒子であることが好ましい。光吸収ナノ粒子28は、可視光線及び近赤外線に対して、赤外線を少なくとも約1000倍選択的に吸収することが好ましく、可視光線及び近赤外線に対して、赤外線を少なくとも約10000倍選択的に吸収することが特に好ましい。可視及び近赤外領域に吸収を有さない光吸収ナノ粒子を選択することで、可視及び近赤外での光吸収によるキャリア生成による高分子樹脂の劣化が起きず、デバイス性能の劣化を抑えることが可能となる。
【0031】
なお本明細書において、「可視光線」とは、波長の下限が360~400nm、上限が760~830nmの範囲の電磁波を意味し、「赤外線」とは、可視光線の長波長端(760~830nm)から波長1mmまでの電磁波を意味し、「近赤外光線」とは、赤外線のうち可視光線に近い波長を持つものであり、波長が2.5μm以下の電磁波を意味する。
【0032】
光吸収ナノ粒子28としては、これらに限定されないが、酸化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。光吸収ナノ粒子28は、結晶であっても、アモルファス(非晶質)であってもよいが、結晶であることが好ましい。ミー散乱を防ぐ観点で、粒径パラメータπD/λ(D:平均粒径、λ:検出波長)は、1以下であることが好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。例えば、検出波長が10μmである場合、光吸収ナノ粒子の平均粒径は約3μm以下であることが好ましく、約0.3μm以下であることがさらに好ましい。光吸収ナノ粒子の平均粒径は、例えば、0.05~0.15μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0033】
本発明の高分子樹脂30の波長5μm以下の電磁波の吸収率は、0.1以下であることが好ましく、0.08以下であることがさらに好ましく、0.06以下であることが特に好ましい。また本発明の高分子樹脂30の可視光線及び近赤外光線の透過率は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましい。上記の観点から、高分子樹脂は、ポリスチレン等の炭素と水素のみを基本骨格とする樹脂が好ましい。
【0034】
第一の光吸収層における高分子樹脂と光吸収ナノ粒子との重量比は、80:20~20:80であることが好ましく、60:40~30:70であることがより好ましい。高分子樹脂と光吸収ナノ粒子との重量比が、上記範囲内であると、光吸収性と光吸収ナノ粒子の分散性を両立でき、且つ、第一の光吸収層が剥離しない。光吸収ナノ粒子が少ないと光吸収性が十分でないことがあり、バインダーである高分子樹脂が少ないと第一の光吸収層が剥離してしまうことがある。
【0035】
第一の光吸収層の厚さは、500nm~5μmであることが好ましく、1μm~3μmであることがより好ましい。第一の光吸収層の厚さが上記範囲内であると、十分な光吸収性を得ることができる。
【0036】
(電極20)
電極の材料としては、光検知部との接合性等を考慮して適宜選択すればよく、例えば、チタン、金、白金、アルミニウム、銅、銀、タングステン、コバルト等の単金属又はこれらの少なくとも1種を含む合金を、単体で又は組み合わせて使用することができる。電極の作製方法は特に限定されないが、例えば、蒸着、スパッタ、印刷法で形成することができる。必要により、予め、電極を形成すべきでない領域のマスキングなどを行ってもよい。電極の厚さは、適宜調整できるが、30nm~300nmが好ましく、50nm~200nmがより好ましい。また、2つの電極間距離は、2~100μmが好ましく、赤外線センサの小型化のためには、2~10μmがより好ましい。
できる。
【0037】
(光検知部22)
光検知部の材料としては、カーボンナノチューブ、酸化バナジウム、アモルファスシリコン等が挙げられるがこれらに限定されない。光検知部はカーボンナノチューブであることが好ましい。以下に光検知部22の一例として、カーボンナノチューブ(CNT)膜について詳述する。
【0038】
カーボンナノチューブ膜は、2つの電極20を電気的に接続する導電パスを形成する複数のカーボンナノチューブから構成される薄膜である。カーボンナノチューブは、例えば、平行線状、繊維状、ネットワーク状等の構造を形成し得るが、凝集し難く、均一な導電パスが得られる三次元的ネットワーク状の構造を形成していることが好ましい。
【0039】
カーボンナノチューブは、単層、二層、多層カーボンナノチューブを使用することができるが、半導体型を分離する場合は、単層又は数層(例えば、2層又は3層)のカーボンナノチューブが好ましく、単層カーボンナノチューブがより好ましい。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上(100質量%を含む)含むことがより好ましい。
【0040】
カーボンナノチューブの直径は、バンドギャップを大きくしてTCRを向上する観点で、0.6~1.5nmの間が好ましく、0.6nm~1.2nmがより好ましく、0.7~1.1nmがさらに好ましい。また、一実施形態では、特に1nm以下が好ましい場合もある。0.6nm以上であれば、カーボンナノチューブの製造がより容易である。1.5nm以下であれば、バンドギャップを適切な範囲に維持し易く、高いTCRを得ることができる。
【0041】
本明細書において、カーボンナノチューブの直径は、断熱層上の、又は成膜した薄膜のカーボンナノチューブを原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM))を用いて観察して100箇所程度の直径を計測し、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が0.6~1.5nmの範囲内にあることを意味する。好ましくは、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が0.6~1.2nmの範囲内、さらに好ましくは0.7~1.1nmの範囲内にある。また、一実施形態では、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が0.6~1nmの範囲内にある。
【0042】
また、カーボンナノチューブの長さは、100nm~5μmの間が、分散しやすく、塗布性も優れているためより好ましい。またカーボンナノチューブの導電性の観点でも、長さが100nm以上であることが好ましい。また、5μm以下であれば断熱層上で、且つ/又は成膜時の凝集を抑制し易い。カーボンナノチューブの長さは、より好ましくは500nm~3μm、さらに好ましくは700nm~1.5μmである。
【0043】
本明細書において、カーボンナノチューブの長さは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM))を用いて少なくとも100本を観察し、数え上げることでカーボンナノチューブの長さの分布を測定し、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が100nm~5μmの範囲内にあることを意味する。好ましくは、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が500nm~3μmの範囲内にある。より好ましくは、その60%以上、好ましくは70%以上、場合により好ましくは80%以上、より好ましくは100%が700nm~1.5μmの範囲内にある。
【0044】
カーボンナノチューブの直径及び長さが上記範囲内であると、半導体性の影響が大きくなり、且つ、大きな電流値を得られるため、ボロメータ膜として用いた場合に高いTCR値が得られやすい。
【0045】
光検知部には、大きなバンドギャップとキャリア移動度を持つ半導体型カーボンナノチューブを用いることが好ましい。カーボンナノチューブ中、半導体型カーボンナノチューブ、好ましくは半導体型単層カーボンナノチューブの含有率は、一般に67質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、特に90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上(100質量%を含む)がさらに好ましい。
【0046】
カーボンナノチューブ膜の厚さは特に限定されないが、例えば1nm以上、例えば数nm~100μm、好ましくは2nm~20nmの範囲である。カーボンナノチューブのネットワークパスを担保するには、2nm以上であることが必要である。また、カーボンナノチューブ膜の厚さが100nm以下であると、カーボンナノチューブ膜の製造方法として、印刷技術を公的に適用することができ、製造方法の簡便化の観点で好ましい。カーボンナノチューブ膜の厚さは、カーボンナノチューブ膜の任意の10点で測定した厚さの平均値として求めることができる。
【0047】
また、良好な光吸収率を得るために、カーボンナノチューブ膜の密度は、例えば、0.3g/cm以上であり、好ましくは0.8g/cm以上であり、より好ましくは1.1g/cm以上である。上限は、特に限定されないが、用いたカーボンナノチューブの真密度の上限値(例えば約1.4g/cm)とすることができる。カーボンナノチューブ膜の密度は、カーボンナノチューブ膜の重量、面積、及び上で求めた厚さから算出することができる。
【0048】
カーボンナノチューブ膜中のカーボンナノチューブの含有量は適宜選択できるが、カーボンナノチューブ膜の総質量を基準として60質量%以上が好ましい。
【0049】
以下、カーボンナノチューブ膜の製造方法の一例を詳述する。
【0050】
カーボンナノチューブの分散溶液を得る。カーボンナノチューブは、不活性雰囲気下、真空中において熱処理を行うことで、表面官能基やアモルファスカーボン等の不純物、触媒等を除去したものを用いてもよい。熱処理温度は、適宜選択できるが、800~2000℃が好ましく、800~1200℃がより好ましい。
【0051】
カーボンナノチューブの分散溶液を得る方法は特に制限されず、従来公知の方法を適用できる。例えば、カーボンナノチューブ混合物、分散媒、及び非イオン性界面活性剤を混合してカーボンナノチューブを含む溶液を調製し、この溶液を超音波処理することでカーボンナノチューブを分散させ、カーボンナノチューブ分散液(ミセル分散溶液)を調製する。前記超音波処理に加えて、又は代えて、機械的な剪断力によるカーボンナノチューブ分散手法を用いてもよい。機械的な剪断は気相中で行ってもよい。
【0052】
分散媒としては、分離工程の間、カーボンナノチューブを分散浮遊できる溶媒であれば特に限定されず、例えば水、重水、有機溶媒、イオン液体、又はこれらの混合物等を用いることができるが、水及び重水が好ましい。
【0053】
非イオン性界面活性剤は、適宜選択できるが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系に代表されるポリエチレングリコール構造を有する非イオン性界面活性剤や、アルキルグルコシド系非イオン性界面活性剤など、イオン化しない親水性部位とアルキル鎖など疎水性部位で構成されている非イオン性界面活性剤を1種類若しくは複数組み合わせて用いることが好ましい。このような非イオン性界面活性剤としては、式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好適に用いられる。また、アルキル部が1又は複数の不飽和結合を含んでもよい。
【0054】
2n+1(OCHCHOH (1)
(式中、n=好ましくは12~18、m=10~100、好ましくは20~100である)
【0055】
特に、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテルなどポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル(nが20以上100以下、アルキル鎖長がC12以上C18以下)で規定される非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、N,N-ビス[3-(D-グルコンアミド)プロピル]デオキシコールアミド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、オクチルβ-D-グルコピラノシド、ジギトニンも使用することができる。
【0056】
非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート(分子式:C64H126O26、商品名:Tween 60、シグマアルドリッチ社製等)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート(分子式:C24H44O6、商品名:Tween 85、シグマアルドリッチ社製等)、オクチルフェノールエトキシレート(分子式:C14H22O(C2H4O)n、n=1~10、商品名:Triton X-100、シグマアルドリッチ社製等)、ポリオキシエチレン(40)イソオクチルフェニルエーテル(分子式:C8H17C6H40(CH2CH20)40H、商品名:Triton X-405、シグマアルドリッチ社製等)、ポロキサマー(分子式:C5H10O2、商品名:Pluronic、シグマアルドリッチ社製等)、ポリビニルピロリドン(分子式:(C6H9NO)n、n=5~100、シグマアルドリッチ社製等)等を用いることもできる。
【0057】
分散媒及び非イオン性界面活性剤を含む液体における界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度~10質量%が好ましく、臨界ミセル濃度~3質量%がより好ましい。臨界ミセル濃度以下であると分散できないため好ましくない。また、10質量%以下であれば、分離後、界面活性剤の量を低減しながら十分な密度のカーボンナノチューブを塗布することができる。本明細書において、臨界ミセル濃度(critical micelle concentration(CMC))とは、例えば一定温度下、Wilhelmy式表面張力計等の表面張力計を用い、界面活性剤水溶液の濃度を変えて表面張力を測定し、その変極点となる濃度のことを言う。本明細書において「臨界ミセル濃度」は、大気圧下、25℃での値とする。
【0058】
カーボンナノチューブと非イオン性界面活性剤によるミセル分散水溶液においてカーボンナノチューブは孤立した状態であることが好ましい。そのため、必要に応じて、超遠心分離処理を用いてバンドル、アモルファスカーボン、不純物触媒等の除去を行ってもよい。分散処理の際、カーボンナノチューブを切断することができ、カーボンナノチューブの粉砕条件、超音波出力、超音波処理時間等を変えることで、長さを制御することができる。例えば、未処理のカーボンナノチューブをピンセット、ボールミル等で粉砕し、凝集体サイズを制御できる。これらの処理後、超音波ホモジナイザーにより、出力40~600W、場合により100~550W、20~100KHz、処理時間1~5時間、好ましくは~3時間にすることで、長さを100nm~5μmに制御することできる。1時間より短いと、条件によってはほとんど分散せず、ほとんど元の長さのままである場合がある。また、分散処理時間の短縮及びコスト減の観点では3時間以下が好ましい。本実施形態は、非イオン性界面活性剤を用いたことにより切断の調整が容易であるという利点も有し得る。また、除去が困難なイオン性界面活性剤を含有しないという利点もある。
【0059】
カーボンナノチューブの分散及び切断により、表面官能基がカーボンナノチューブの表面あるいは端に生成される。生成される官能基は、カルボキシル基、カルボニル基、水酸基等が生成される。液相での処理であれば、カルボキシル基、水酸基が生成され、気相であれば、カルボニル基が生成される。
【0060】
上記切断及び分散工程におけるカーボンナノチューブの濃度(カーボンナノチューブの重量/(分散媒と界面活性剤との合計重量)×100)は、特に限定されないが、例えば0.0003~10質量%、好ましくは0.001~3質量%、より好ましくは0.003~0.3質量%とすることができる。
【0061】
上述のカーボンナノチューブの分散・切断工程後、且つ、後述する分離工程前のカーボンナノチューブ分散液のバンドル、アモルファスカーボン、金属不純物等を除去するため遠心分離処理を行ってもよい。遠心加速度は適宜調整できるが、10000×g~500000×gが好ましく、50000×g~300000×gがより好ましく、場合により100000×g~300000×gであってもよい。遠心分離時間は0.5時間~12時間が好ましく、1~3時間がより好ましい。遠心分離温度は、適宜調整できるが、4℃~室温が好ましく、10℃~室温がより好ましい。
【0062】
カーボンナノチューブの分離は、例えば、電界誘起層形成法(ELF法:例えば、K.Ihara et al. J.Phys.Chem.C.2011,115,22827~22832、日本特許第5717233号明細書を参照、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)により行うことができる。ELF法を用いた分離方法の一例を説明する。カーボンナノチューブ、好ましくは単層カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤により分散し、その分散液を縦型の分離装置に入れ、上下に配置された電極に電圧を印加することで、無担体電気泳動により分離する。分離のメカニズムは例えば以下のように推定できる。カーボンナノチューブを非イオン性界面活性剤により分散した場合、半導体型カーボンナノチューブのミセルは負のゼータ電位を有し、一方金属型カーボンナノチューブのミセルは逆符号(正)のゼータ電位(近年では、僅かに負のゼータ電位を有するかほとんど帯電していないとも考えられている)を持つ。そのため、カーボンナノチューブ分散液に電界を印加すると、ゼータ電位の差などにより、導体型カーボンナノチューブミセルは陽極(+)方向へ、金属型カーボンナノチューブミセルは陰極(-)方向へ電気泳動する。最終的には陽極付近に半導体型カーボンナノチューブが濃縮された層が、陰極付近に金属型カーボンナノチューブが濃縮された層が分離槽内に形成される。分離の電圧は、分散媒の組成及びカーボンナノチューブの電荷量等を考慮して適宜設定できるが、1V以上200V以下が好ましく、10V以上200V以下がより好ましい。分離工程の時間短縮の観点では100V以上が好ましい。また、分離中の泡の発生を抑制して分離効率を維持する観点では200V以下が好ましい。分離は、繰り返すことで純度が向上する。分離後の分散液を初期濃度に再設定して同様の分離操作を行ってもよい。それにより、さらに高純度化することができる。
【0063】
上述のカーボンナノチューブの分散・切断工程及び分離工程により、所望の直径・長さを有する半導体型カーボンナノチューブが濃縮された分散液を得ることができる。分離工程により得られる半導体型カーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブの総量中、半導体型カーボンナノチューブを、一般に67質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上(上限は100質量%であってもよい)含む分散液を意味する。金属型及び半導体型のカーボンナノチューブの分離傾向については、顕微Ramanスペクトル分析法と紫外可視近赤外吸光光度分析法により分析することができる。
【0064】
分離後のカーボンナノチューブ分散液の界面活性剤の濃度は適宜制御することができる。カーボンナノチューブ分散液の界面活性剤の濃度は、臨界ミセル濃度~5質量%程度が好ましく、より好ましくは、0.001質量%~3質量%、塗布後の再凝集等を抑えるために、0.01~1質量%が特に好ましい。
【0065】
上述の工程により得られた半導体型カーボンナノチューブ分散液を、第一の光吸収層上の2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触するように塗布して乾燥させ、場合により熱処理を行うことにより、カーボンナノチューブ膜を形成することができる。
【0066】
半導体型カーボンナノチューブ分散液を塗布する方法としては、特に限定されず、滴下法、スピンコート、印刷、インクジェット、スプレー塗布、ディップコート等が挙げられる。製造コストの低減の観点では、印刷法が好ましい。印刷法としては、塗布(ディスペンサー、インクジェット等)、転写(マイクロコンタクトプリント、グラビア印刷等)等が挙げられる。
【0067】
塗布した半導体型カーボンナノチューブ分散液は、熱処理により界面活性剤や溶媒を除去することができる。熱処理の温度は界面活性剤の分解温度以上で適宜設定できるが、150~500℃が好ましく、200~500℃、例えば200~400℃がより好ましい。200℃以上であれば界面活性剤の分解物の残留を抑制し易いためより好ましい。また、500℃以下、例えば400℃以下であれば、カーボンナノチューブの分解やサイズ変化、官能基の離脱等を抑制することができるため好ましい。
【0068】
(第二の光吸収層24)
第二の光吸収層は、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である。第二の光吸収層における光吸収ナノ粒子及び高分子樹脂については、第一の光吸収層における光吸収ナノ粒子及び高分子樹脂と同様である。本発明の第一の光吸収層と第二の光吸収層の構成は、同一であっても異なってもよい。第二の光吸収層の作製方法は、第一の光吸収層の作製方法と同様である。
【0069】
第二の光吸収層の厚さは、500nm~5μmであることが好ましく、1μm~3μmであることがより好ましい。第二の光吸収層の厚さが上記範囲内であると、十分な光吸収性を得ることができる。
【0070】
第一の光吸収層と第二の光吸収層の厚さの合計は、2.5μm~10μmであることが好ましく、2.5μm~3μmであることがより好ましい。また、第一の光吸収層の厚さと第二の光吸収層との厚さとの比は、15:75~50:50であることが好ましく、20:80~30:70であることがより好ましい。上記範囲内であると、赤外線を効率よく吸収して光検知部へと伝達することができる。
【0071】
(金属薄膜26)
金属薄膜26としては、これらに限定されないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の金属等を用いることができる。金属薄膜の厚さは、材料によって適宜設定できるが、5~25nmが好ましい。金属薄膜26は、光吸収層や光検知部に対して、赤外線反射ミラー16と反対側の表面に設けられる。また金属薄膜26は、赤外線反射ミラー16と金属薄膜26との距離dが、検出しようとする赤外線の波長λの1/4の奇数倍となる位置に配置することが好ましい。当該位置関係で赤外線反射ミラーと金属薄膜を形成することにより、赤外線同士を干渉させて、光検知部及び光吸収層へと赤外線を効率よく伝達することができる。
【0072】
本発明の赤外線センサは、簡便な構造を有し、かつ一部、もしくは全印刷プロセスで製造が可能であり、低コスト化が可能となる。なお、本発明の赤外線センサの製造方法は、複数の製造工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の製造工程を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の製造方法を実施するときには、その複数の製造工程の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【0073】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0074】
(付記1)
赤外線反射ミラーと、
前記赤外線反射ミラー上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第一の光吸収層と、
前記第一の光吸収層上に形成された2つの電極と、
前記2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触する光検知部と、
前記光検知部上に形成され、光吸収ナノ粒子が分散した高分子樹脂層である第二の光吸収層と、
前記第二の光吸収層上に形成された金属薄膜と、
を備える、赤外線センサ。
(付記2)
前記光吸収ナノ粒子が、酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素である、付記1に記載の赤外線センサ。
(付記3)
前記光吸収ナノ粒子の粒径パラメータπD/λ(D:粒径、λ:検出波長)が、1以下である、付記1又は2に記載の赤外線センサ。
(付記4)
前記高分子樹脂の波長5μm以下の電磁波の吸収率が0.1以下である、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記5)
前記高分子樹脂の可視光線及び近赤外光線の透過率が50%以上である、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記6)
前記高分子樹脂が、ポリスチレンである、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記7)
前記光検知部がカーボンナノチューブ、酸化バナジウム及びアモルファスシリコンから選択される1つ以上である、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記8)
前記光吸収ナノ粒子の平均粒径が0.05~0.15μmである、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記9)
前記第一の光吸収層と第二の光吸収層の厚さの合計が、2.5μm~10μmである、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記10)
前記第一の光吸収層の厚さが500nm~5μmである、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記11)
前記第二の光吸収層の厚さが500nm~5μmである、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記12)
前記第一の光吸収層の厚さと第二の光吸収層との厚さとの比が、15:75~50:50である、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記13)
前記第一の光吸収層における高分子樹脂と光吸収ナノ粒子との重量比が80:20~20:80である、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記14)
前記第二の光吸収層における高分子樹脂と光吸収ナノ粒子との重量比が80:20~20:80である、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記15)
前記赤外線反射ミラーと前記金属薄膜との間の距離が、検出波長の1/4の奇数倍である、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記16)
前記赤外線反射ミラーの厚さが0.05~1μmである、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記17)
前記赤外線反射ミラーの下に、表面が断熱性である基板を備える、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記18)
前記基板が、支持基板と熱分離層とが積層された積層基板である、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記19)
前記熱分離層がパリレンである、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記20)
前記赤外線センサの検出波長が、760nm~1mmである、先行する付記のいずれかに記載の赤外線センサ。
(付記21)
赤外線反射ミラーを準備する工程と、
高分子樹脂に光吸収ナノ粒子を分散させ、第一の光吸収層の材料を形成する工程と、
前記赤外線反射ミラー上に、前記第一の光吸収層の材料を適用し、第一の光吸収層を形成する工程と、
前記第一の光吸収層上に2つの電極を形成する工程と、
前記2つの電極に少なくとも一部が重なって電気的に接触するように、光検知部を形成する工程と、
高分子樹脂に光吸収ナノ粒子を分散させ、第二の光吸収層の材料を形成する工程と、
前記光検知部上に、前記第二の光吸収層の材料を適用し、第二の光吸収層を形成する工程と、
前記第二の光吸収層上に金属薄膜を形成する工程と、
を含む、赤外線センサの製造方法。
【符号の説明】
【0075】
10 赤外線センサ
12 支持基板
14 熱分離層
16 赤外線反射ミラー
18 第一の光吸収層
20 電極
22 光検知部
24 第二の光吸収層
26 金属薄膜
28 光吸収ナノ粒子
30 高分子樹脂
図1