(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134698
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20240927BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240927BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
F02M21/02 L
F02M21/02 M
F02M21/02 301A
F02M21/02 X
F02D19/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045028
(22)【出願日】2023-03-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】金子 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康二
(72)【発明者】
【氏名】宇野 忍
【テーマコード(参考)】
3E172
3G092
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA03
3E172EB02
3E172EB03
3E172EB08
3E172EB18
3E172EB19
3E172EB20
3E172GA17
3E172GA26
3E172HA02
3E172HA08
3E172JA08
3G092AB08
(57)【要約】
【課題】ボイルオフガスの大気への排出を抑制する。
【解決手段】車両に搭載された貯蔵システムSは、液化天然ガスを貯蔵する第1容器1と、第1容器1内の液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる第1管路41に設けられ、ボイルオフガスを圧縮するコンプレッサ3と、第1管路41においてコンプレッサ3の下流に設けられ、圧縮されたボイルオフガスを貯蔵する第2容器2と、第2容器2とエンジンの吸気管51とを接続する第2管路42及び第2容器2とエンジンの気筒に燃料を噴射する噴射部52とを接続する第3管路の少なくともいずれかに設けられた制御弁を制御して、第2容器2に貯蔵されたボイルオフガスの圧力が閾値未満の場合にボイルオフガスを吸気管51に供給し、圧力が閾値以上の場合にボイルオフガスを噴射部52に供給する供給部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された貯蔵システムであって、
液化天然ガスを貯蔵する第1容器と、
前記第1容器内の前記液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる第1管路に設けられ、前記ボイルオフガスを圧縮するコンプレッサと、
前記第1管路において前記コンプレッサの下流に設けられ、圧縮された前記ボイルオフガスを貯蔵する第2容器と、
前記第2容器とエンジンの吸気管とを接続する第2管路及び前記第2容器と前記エンジンの気筒に燃料を噴射する噴射部とを接続する第3管路の少なくともいずれかに設けられた制御弁を制御して、前記第2容器に貯蔵された前記ボイルオフガスの圧力が閾値未満の場合に前記ボイルオフガスを前記吸気管に供給し、前記圧力が前記閾値以上の場合に前記ボイルオフガスを前記噴射部に供給する供給部と、
を有する貯蔵システム。
【請求項2】
前記第2管路に設けられた第1弁と、
前記第3管路に設けられた第2弁と、
を有し、
前記供給部は、前記圧力が前記閾値未満の場合に、前記第1弁を開き、かつ前記第2弁を閉じて、前記第2容器の前記ボイルオフガスを前記吸気管に供給する、
請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項3】
前記第2管路に設けられた第1弁と、
前記第3管路に設けられた第2弁と、
を有し、
前記供給部は、前記圧力が前記閾値以上の場合に、前記第1弁を閉じ、かつ前記第2弁を開いて、前記第2容器の前記ボイルオフガスを前記噴射部に供給する、
請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項4】
前記供給部は、前記車両が停止中に前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が第1所定値以上になった場合に前記コンプレッサを動作させて前記第2容器に圧縮した前記ボイルオフガスを供給する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項5】
前記供給部は、前記コンプレッサを動作させた後、前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が前記第1所定値よりも低い第2所定値未満になった場合、前記コンプレッサを停止させる、
請求項4に記載の貯蔵システム。
【請求項6】
前記第1容器と前記コンプレッサとの間の前記第1管路に設けられ、前記第1容器から前記コンプレッサを動作に向かう前記ボイルオフガスを通過させ、前記コンプレッサから前記第1容器に向かう前記ボイルオフガスを遮断する逆止弁を有する、
請求項1又は2に記載の貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスを貯蔵する貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスを燃焼して走行する車両が知られている。特許文献1には、液化天然ガスを貯蔵する容器を備えた車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器内の液化天然ガスが大気の熱等により蒸発してボイルオフガス(Boil Off Gas)が発生する。従来の技術では、ボイルオフガスが発生して容器の内圧が高くなると、ボイルオフガスを大気中に排出していた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ボイルオフガスの大気への排出を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、車両に搭載された貯蔵システムであって、液化天然ガスを貯蔵する第1容器と、前記第1容器内の前記液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる第1管路に設けられ、前記ボイルオフガスを圧縮するコンプレッサと、前記第1管路において前記コンプレッサの下流に設けられ、圧縮された前記ボイルオフガスを貯蔵する第2容器と、前記第2容器とエンジンの吸気管とを接続する第2管路及び前記第2容器と前記エンジンの気筒に燃料を噴射する噴射部とを接続する第3管路の少なくともいずれかに設けられた制御弁を制御して、前記第2容器に貯蔵された前記ボイルオフガスの圧力が閾値未満の場合に前記ボイルオフガスを前記吸気管に供給し、前記圧力が前記閾値以上の場合に前記ボイルオフガスを前記噴射部に供給する供給部と、を有する貯蔵システムを提供する。
【0007】
前記第2管路に設けられた第1弁と、前記第3管路に設けられた第2弁と、を有し、前記供給部は、前記圧力が前記閾値未満の場合に、前記第1弁を開き、かつ前記第2弁を閉じて、前記第2容器の前記ボイルオフガスを前記吸気管に供給してもよい。
【0008】
前記第2管路に設けられた第1弁と、前記第3管路に設けられた第2弁と、を有し、前記供給部は、前記圧力が前記閾値以上の場合に、前記第1弁を閉じ、かつ前記第2弁を開いて、前記第2容器の前記ボイルオフガスを前記噴射部に供給してもよい。
【0009】
前記供給部は、前記車両が停止中に前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が第1所定値以上になった場合に前記コンプレッサを動作させて前記第2容器に圧縮した前記ボイルオフガスを供給してもよい。
【0010】
前記供給部は、前記コンプレッサを動作させた後、前記第1容器内の前記ボイルオフガスの圧力が前記第1所定値よりも低い第2所定値未満になった場合、前記コンプレッサを停止させてもよい。
【0011】
前記第1容器と前記コンプレッサとの間の前記第1管路に設けられ、前記第1容器から前記コンプレッサを動作に向かう前記ボイルオフガスを通過させ、前記コンプレッサから前記第1容器に向かう前記ボイルオフガスを遮断する逆止弁を有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボイルオフガスの大気への排出を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】貯蔵システムの構成を説明するための図である。
【
図2】供給制御装置の構成を説明するための図である。
【
図3】車両が停止中の圧力の時間変化を説明するための図である。
【
図4】ボイルオフガスを貯蔵する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[貯蔵システムSの構成]
図1は、貯蔵システムSの構成を説明するための図である。貯蔵システムSは、車両に搭載されている。貯蔵システムSは、車両のエンジンの燃料である天然ガスを貯蔵するためのシステムである。貯蔵システムSは、第1容器1、第2容器2、コンプレッサ3、第1管路41、第2管路42、第3管路43、第4管路44、第5管路45、エンジンの吸気管51、エンジンの噴射部52、第1弁71、第2弁72、第3弁73、レギュレータ74、安全弁75、逆止弁76、充填口81、熱交換器82、ベントスタック83及び供給制御装置9を含む。
図2は、供給制御装置9の構成を説明するための図である。以下、
図1及び
図2を用いて、貯蔵システムSの構成を説明する。
【0015】
第1容器1は、天然ガスを液化した液化天然ガス(LNG)を貯蔵する。液化天然ガスは、天然ガスが液体状態を維持可能な温度(例えば天然ガスが液化するマイナス162度以下)で第1容器1に貯蔵されている。第1容器1は、例えば円筒形状であるが、これに限らない。第1容器1の内側には断熱材が設けられている。第1容器1の容量は、例えば300リットルであるが、これに限定するものではない。第1容器1には、液化天然ガスを第1容器1に充填するための充填口81が接続されている。
【0016】
第1容器1と車両のエンジンの噴射部52とは、第4管路44で接続されている。第1容器1と噴射部52の間には、液化天然ガスを気化させる熱交換器82が設けられている。熱交換器82には、エンジンの冷却材が循環する配管が設けられている。熱交換器82は、エンジンの冷却水の熱を利用して液化天然ガスを気化させる。熱交換器82と噴射部52の間には、熱交換器82を通過した天然ガスの圧力を噴射部52で噴射できる圧力に調整するレギュレータ74が設けられている。噴射できる圧力は、例えば5気圧である。第3弁73は、レギュレータ74と噴射部52の間に設けられて、第4管路44を流れて噴射部52に向かう天然ガスを通過させるか、遮断させるか否かを切り替える制御弁である。
【0017】
ところで、第1容器の内側には断熱材が設けられているが、断熱材があっても第1容器内には大気の熱が流入してしまう。第1容器1内に大気の熱が流入すると液化天然ガスの温度が上昇することにより液化天然ガスが気化して、メタンを主成分とするボイルオフガスが発生する。ボイルオフガスが発生すると第1容器1の内圧は上昇する。第1容器1の内圧が上昇して第1容器1が耐えられる圧力を超えるまえに、ボイルオフガスを第1容器1から排出して第1容器1の内圧を下げる必要がある。
【0018】
第1容器1には、ボイルオフガスを大気に排出するための第5管路45、安全弁75及びベントスタック83が接続されている。安全弁75は、第1容器1の圧力が閾値以上になった場合に自動的に開弁してボイルオフガスを排出させ、第1容器1の圧力が降下して閾値未満になった場合に自動的に閉弁する。安全弁75から排出されたボイルオフガスは、ベントスタック83から大気へ排出される。
【0019】
しかしながら、ボイルオフガスの主成分であるメタンは、温室効果が高く、可燃性があるため、大気へ排出するのは望ましくない。そこで、実施の形態に係る貯蔵システムSは、第1容器1で発生したボイルオフガスをコンプレッサ3で圧縮して第2容器2に貯蔵して、大気への排出を抑制している。
【0020】
コンプレッサ3は、第1容器1内の液化天然ガスが気化したボイルオフガスが流れる第1管路41に設けられている。第1管路41は、第5管路45から分岐して第1容器1とコンプレッサ3を接続する。なお、第1管路41は、第5管路45から分岐せずに第1容器1とコンプレッサ3を直接接続していてもよい。コンプレッサ3は、ボイルオフガスを圧縮して第2容器2に供給する。コンプレッサ3は、ボイルオフガスを20MPa(メガパスカル)まで圧縮することができる。なお、コンプレッサ3は、20MPa以上に圧縮してもよく、20MPa未満であってもよい。コンプレッサ3は、例えば遠心圧縮機であるが、これに限定するものではない。
【0021】
第1容器1とコンプレッサ3の間の第1管路41には、逆止弁76が設けられている。逆止弁76は、第1容器1からコンプレッサ3に向かうボイルオフガスを通過させ、コンプレッサ3から第1容器1に向かうボイルオフガスを遮断する。逆止弁76は、例えばディスク式逆止弁であるが、これに限らず、ポペット式逆止弁、スイング式逆止弁、又は他の方式の逆止弁であってもよい。
【0022】
第1管路41においてコンプレッサ3の下流には、第2容器2が設けられている。第2容器2は、圧縮されたボイルオフガスを貯蔵する耐圧容器である。例えば、第2容器2の両端は半球形状であり、第2容器2の両端を除く部分は円筒形状であるが、これに限定するものではない。第2容器2の容量は、例えば50リットルである。
【0023】
第2容器2とエンジンの吸気管51は、第2管路42で接続されている。第2管路42には、第1弁71が設けられている。第1弁71は、第2容器2から吸気管51に向かう天然ガスを通過させるか、遮断させるか否かを切り替える制御弁である。
【0024】
第2容器2とエンジンの気筒に燃料を噴射する噴射部52とは、第3管路43で接続されている。第3管路43は、第2管路42から分岐して、熱交換器82とレギュレータ74の間で第4管路44に合流する。第3管路43には、第2弁72が設けられている。第2弁72は、第2容器2から第4管路44に向かう天然ガスを通過させるか、遮断させるか否かを切り替える制御弁である。
【0025】
供給制御装置9は、第1弁71、第2弁72及び第3弁73の開閉と、コンプレッサ3の動作とを制御する。供給制御装置9は、記憶部91及び制御部92を有する。記憶部91は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部91は、制御部92が実行するプログラムを記憶する。
【0026】
制御部92は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部92は、記憶部91に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部921及び供給部922としての機能を実現する。
【0027】
取得部921は、第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力を取得する。例えば、取得部921は、第1容器1内に設けられた圧力センサから第1圧力を取得する。また、第1容器1内のボイルオフガスの圧力と第5管路45を流れるボイルオフガスの圧力は略一致しているので、取得部921は、第5管路45に設けられた圧力センサから第5管路45を流れるボイルオフガスの圧力を第1圧力として取得してもよい。
【0028】
取得部921は、第2容器2内のボイルオフガスの第2圧力を取得する。例えば、取得部921は、第2容器2内に設けられた圧力センサから第2圧力を取得する。また、第2容器2内のボイルオフガスの圧力と第2管路42を流れるボイルオフガスの圧力は略一致しているので、取得部921は、第2管路42に設けられた圧力センサからボイルオフガスの第2圧力を取得してもよい。
【0029】
供給部922は、第1弁71及び第2弁72の少なくともいずれかを制御して、吸気管51又は噴射部52に第2容器2内に貯蔵されたボイルオフガスを供給する。供給部922は、第2圧力が閾値以上か否かに応じて吸気管51又は噴射部52にボイルオフガスを供給する。閾値は、噴射部52に供給可能な圧力であるか否かを判定するための値であり、具体的には、5気圧である。
【0030】
供給部922は、第2圧力が閾値以上の場合に、第2容器2に貯蔵されたボイルオフガスを噴射部52に供給する。具体的には、供給部922は、第2圧力が閾値以上の場合に、第1弁71を閉じ、かつ第2弁72を開いて、第2容器2のボイルオフガスを噴射部52に供給する。より具体的には、供給部922は、第1弁を閉じ、かつ第2弁72及び第3弁73を開いて、第2容器2に貯蔵されたボイルオフガスを噴射部52に供給する。これにより、供給部922は、ボイルオフガスを大気へ排出することなく、エンジンの気筒で燃焼させられる。
【0031】
供給部922は、取得された第2圧力が閾値未満の場合にボイルオフガスを吸気管51に供給する。供給部922は、第2圧力が閾値未満の場合に、第1弁71を開き、かつ第2弁72を閉じて、第2容器2のボイルオフガスを吸気管51に供給する。このとき、第2容器2及び第2管路42内のボイルオフガスは、吸気管51及びエンジンの気筒が負圧になる際に吸引される。供給部922は、第2圧力が0になるまで第1弁71を開き続けて第2容器2を空にする。第2容器2が空になればボイルオフガスを再び貯蔵できるので、供給部922は、ボイルオフガスの大気への排出を抑制できる。
【0032】
ところで、第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力は、エンジンが停止していて液化天然ガスが消費されない場合に上昇する。そこで、供給部922は、車両が停止中に第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力が第1所定値以上になった場合にコンプレッサ3を動作させて第2容器2に圧縮したボイルオフガスを供給する。供給部922は、コンプレッサ3を動作させた後、第1圧力が所定値未満になったらコンプレッサ3を停止させる。具体的には、供給部922は、第1圧力が第1所定値よりも低い第2所定値未満になった場合、コンプレッサ3を停止させて第2容器2へのボイルオフガスの供給を停止する。
【0033】
図3は、車両が停止中の圧力の時間変化を説明するための図である。
図3の横軸は時刻を示し、縦軸は圧力を示す。車両のエンジンは、時刻T0で停止した。エンジンの停止後、第1容器1内の液化天然ガスが気化してボイルオフガスが発生する。そして、第1容器1内のボイルオフガスの第1圧力P1は、時間が経過するほど高くなり、時刻T1で第1所定値K1以上になった。
【0034】
供給部922は、第1圧力P1が第1所定値K1以上になった時刻T1でコンプレッサ3を動作させて圧縮されたボイルオフガスの第2容器2への供給を開始する。ボイルオフガスが供給されると第2容器2内のボイルオフガスの第2圧力P2は高くなる。一方、第1圧力P1は、第1容器1内のボイルオフガスが減少するため低くなる。
【0035】
第1圧力P1は、時刻T2で第1所定値K1よりも低い第2所定値K2以下になった。供給部922は、第1圧力P1が第2所定値K2以下になった時刻T2でコンプレッサ3の動作を停止させる。第2圧力P2は、コンプレッサ3が停止するとボイルオフガスが供給されなくなるので変化しなくなり、一定の値で推移する。一方、第1圧力P1は、ボイルオフガスが発生するため、再び高くなる。
【0036】
供給部922は、第1圧力P1が再び第1所定値K1以上になった場合(時刻T3)にコンプレッサ3を動作させ、第2所定値K2以下になった場合(時刻T4)にコンプレッサ3を停止させる。供給部922は、車両が停止している間、上記の処理を繰り返す。このように、供給部922は、第1容器1内で発生したボイルオフガスを第2容器2に貯蔵するのでボイルオフガスの大気への排出を抑制できる。
【0037】
なお、供給部922は、第2圧力P2が第2容器2の圧力許容値以下である間、コンプレッサ3を動作させて第2容器2にボイルオフガスを供給し、第2圧力P2が第2容器2の圧力許容値よりも大きい場合、第1圧力P1が第1所定値K1以上であってもコンプレッサ3を動作させない。これにより、供給部922は、第2容器2の許容量を超えたボイルオフガスを第2容器2に供給してしまうことを抑制できる。第2圧力P2が第2容器2の圧力許容値よりも大きい場合に第1圧力P1が第1所定値K1以上になったら、第1容器1内のボイルオフガスは、第2容器2に貯蔵されずにベントスタック83から大気へ排出される。
【0038】
[供給制御装置9が実行するボイルオフガスを供給する処理]
図4は、ボイルオフガスを供給する処理の一例を示すフローチャートである。ボイルオフガスを供給する処理は、貯蔵システムSが搭載された車両のエンジンが動作している間、繰り返し実行される。
【0039】
取得部921は、第2圧力P2を取得する(ステップS1)。例えば、取得部921は、第2容器2内に設けられた圧力センサから第2圧力を取得する。供給部922は、第2圧力P2が閾値未満か否かを判定する(ステップS2)。
【0040】
供給部922は、第2圧力P2が閾値未満である場合(ステップS2でYes)、ボイルオフガスを吸気管51に供給する(ステップS3)。具体例には、供給部922は、第1弁71を開き、かつ第2弁72を閉じて、ボイルオフガスを吸気管51に供給する。
【0041】
供給部922は、第2圧力P2が閾値以上である場合(ステップS2でNo)、ボイルオフガスを噴射部52に供給する(ステップS4)。具体的には、供給部922は、第1弁71を閉じ、かつ第2弁72を開いて、ボイルオフガスを噴射部52に供給する。より具体的には、供給部922は、第1弁71を閉じ、かつ第2弁72及び第3弁73を開いて、ボイルオフガスを噴射部52に供給する。
【0042】
(変形例1)
上記の実施の形態では、第1弁71及び第2弁72を有していたが、これに限らず、第1弁71及び第2弁72に替えて三方弁を有していてもよい。三方弁は、管路との接続口が三方向にある弁であり、一の管路を二つの管路に分岐する。また、三方弁は、二つの管路のいずれかにボイルオフガスを通過させるか、一の管路から二つの管路に向かうボイルオフガスを遮断するかを切り替えられる。供給部922は、三方弁を制御して、第2容器2のボイルオフガスを吸気管51に供給するか、噴射部52に供給するか、第2容器2から吸気管51及び噴射部52に向かうボイルオフガスを遮断するかを切り替える。
【0043】
(変形例2)
貯蔵システムSは、圧縮天然ガスを貯蔵する第3容器を含んでもよい。供給部922は、車両が始動してからエンジンの冷却水の温度が液化天然ガスを気化させられる温度になるまでの間、第3容器の圧縮天然ガスを噴射部52に供給する。
【0044】
[貯蔵システムSの効果]
貯蔵システムSは、第1容器に貯蔵された液化天然ガスが気化したボイルオフガスを圧縮して第2容器2に貯蔵する。貯蔵システムSは、第2容器2内のボイルオフガスの第2圧力P2が例えば噴射部52に供給可能な閾値以上である場合にボイルオフガスを噴射部52に供給する。
【0045】
貯蔵システムSは、第2圧力が閾値未満である場合にボイルオフガスを吸気管51に供給する。このとき、第2容器2及び第2配管内のボイルオフガスは、エンジンの気筒及び吸気管51が負圧になる際に吸引される。そのため、第2容器2内のボイルオフガスの圧力が低くても、第2容器2内に残留するボイルオフガスが第2容器2から排出される。そして、貯蔵システムSは、第2容器2が空になるまで第2容器2のボイルオフガスを吸気管51に供給し続けることで、第2容器2に再度ボイルオフガスを貯蔵させられる。このように、本願発明に係る貯蔵システムSは、ボイルオフガスを一時的に貯蔵してエンジンで消費することにより、ボイルオフガスの大気への排出を低減できる。
【0046】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0047】
S 貯蔵システム
1 第1容器
2 第2容器
3 コンプレッサ
41 第1管路
42 第2管路
43 第3管路
44 第4管路
45 第5管路
51 吸気管
52 噴射部
71 第1弁
72 第2弁
73 第3弁
74 レギュレータ
75 安全弁
76 逆止弁
81 充填口
82 熱交換器
83 ベントスタック
9 供給制御装置
91 記憶部
92 制御部
921 取得部
922 供給部