(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134707
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】端子挿入済みコネクタ、コネクタ付きワイヤハーネス、端子挿入済みコネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240927BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01R13/52 301F
H01R43/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045046
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 輝
(72)【発明者】
【氏名】澤田 由香
(72)【発明者】
【氏名】河中 裕文
(72)【発明者】
【氏名】黒川 大輝
(72)【発明者】
【氏名】外池 翔
【テーマコード(参考)】
5E051
5E087
【Fターム(参考)】
5E051BA04
5E051BA06
5E087EE02
5E087EE11
5E087FF08
5E087FF13
5E087FF23
5E087KK03
5E087LL02
5E087LL03
5E087LL14
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR25
5E087RR47
(57)【要約】
【課題】 メンテナンス性に優れ、高い止水性を確保することが可能な端子挿入済みコネクタ等を提供する。
【解決手段】 端子は、圧着部17において被覆導線11と接続される。得られた端子付き電線1の圧着部17の少なくとも上面側を含む周方向の一部に樹脂19を塗布する。樹脂19の種類としては特に限定されないが、硬化性樹脂に粘着性付与材が添加されているか、又は樹脂19は粘着剤である。樹脂19が硬化する前に、コネクタハウジング25の端子挿入部23に、端子を挿入する。樹脂19が、粘着性付与材が添加された硬化性樹脂である場合には、この後、樹脂19を硬化させる。以上により、圧着部17の少なくとも一部が樹脂19を介して端子挿入部23の内面と密着した端子挿入済みコネクタを得ることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングの端子挿入部に、少なくとも1つ以上の端子が挿入された端子挿入済みコネクタであって、
前記端子は、端子本体と圧着部とを有し、前記端子は、前記圧着部で被覆導線と接続され、
前記圧着部の少なくとも上面を覆うように樹脂で被覆され、
前記樹脂は、硬化性樹脂に粘着性付与材が添加されているか、又は前記樹脂が粘着剤であり、
前記圧着部の少なくとも一部が前記樹脂を介して前記端子挿入部の内面と密着していることを特徴とする端子挿入済みコネクタ。
【請求項2】
前記樹脂の硬化前の粘度が、9Pa・s以上300Pa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の端子挿入済みコネクタ。
【請求項3】
前記樹脂の弾性率が、0.5MPa以上100MPa以下であることを特徴とする請求項1記載の端子挿入済みコネクタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の端子挿入済みコネクタを用いたコネクタ付きワイヤハーネスであって、前記コネクタハウジングは、複数の前記端子挿入部を有し、前記端子挿入部に、前記被覆導線と接続された複数の前記端子が挿入されることを特徴とするコネクタ付きワイヤハーネス。
【請求項5】
端子挿入済みコネクタの製造方法であって、
端子本体と圧着部とを有する端子に対して、前記圧着部で被覆導線を接続する工程と、
前記圧着部の少なくとも上面側に樹脂を塗布する工程と、
前記樹脂が硬化する前に、コネクタハウジングの端子挿入部に、前記端子を挿入する工程と、
を具備し、
前記樹脂は、粘着性付与材が添加された硬化性樹脂、又は粘着剤であることを特徴とする端子挿入済みコネクタの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂が、粘着性付与材が添加された硬化性樹脂であり、前記端子挿入部に前記端子を挿入した後に、前記樹脂を硬化させることを特徴とする請求項5記載の端子挿入済みコネクタの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂の硬化前の粘度が、9Pa・s以上300Pa・s以下であることを特徴とする請求項5記載の端子挿入済みコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両や航空機等の移動体、産業用ロボット、OA機器、家電製品等の電気配線体に用いられる端子付き電線の端子が挿入された端子挿入済みコネクタ、コネクタ付きワイヤハーネス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、OA機器、家電製品等の分野では、電力線や信号線として、電気導電性に優れた銅系材料からなる電線が使用されている。特に、自動車分野においては、車両の高性能化、高機能化が急速に進められており、車載される各種電気機器や制御機器が増加している。したがって、これに伴い、使用される端子付き電線も増加する傾向にある。
【0003】
このような端子付き電線は、コネクタに挿入されて用いられる場合がある。コネクタには、複数の端子挿入部が形成されており、それらの端子挿入部に端子付き電線の端子が挿入されて固定される。このようにすることで、複数の端子付き電線を一度に接続することができる。
【0004】
一方、環境問題が注目される中、自動車の軽量化が要求されている。したがって、ワイヤハーネスの使用量増加に伴う重量増加が問題となる。このため、従来使用されている銅線に代えて、軽量なアルミニウム電線が注目されている。
【0005】
ここで、このような電線同士を接続する際や機器類等の接続部においては、接続用端子が用いられる。しかし、アルミニウム電線を用いた端子付き電線であっても、接続部の信頼性等のため、端子部には、電気特性に優れる銅が使用される場合がある。このような場合には、アルミニウム電線と銅製の端子とが接合されて使用される。
【0006】
しかし、異種金属を接触させると、標準電極電位の違いから、いわゆる電食が発生する恐れがある。特に、アルミニウムと銅との標準電極電位差は大きいため、接触部への水の飛散や結露等の影響により、電気的に卑であるアルミニウム側の腐食が進行する。このため、接続部における電線と端子との接続状態が不安定となり、接触抵抗の増加や線径の減少による電気抵抗の増大、更には断線が生じて電装部品の誤動作、機能停止に至る恐れがある。
【0007】
このため、その対策として特許文献1には、端子接続部の金属の腐食を防ぐために、端子接続部に変成シリコーン樹脂を塗布し、この樹脂を硬化させることによって、端子接続部への電解液の浸入を防ぐ方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、ハウジングの端子収容室内に挿入した電線外周面と端子収容室の内周面の隙間に、シール材である暗部硬化性の紫外線硬化樹脂を注入する方法が提案されている。特許文献2では、端子収容室の電線挿入開口で外部に露出する紫外線硬化樹脂を紫外線で照射するだけで、端子収容室内の紫外線が照射できない部位の紫外線硬化樹脂も硬化して、ハウジングの端子収容室内への浸水を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-25931号公報
【特許文献2】特開2014-207106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、アルミニウム電線を使用した端子付き絶縁電線の防食は、端子接続部のアルミニウム露出部を電解液から守ることが重要であり、特許文献1、2においては、アルミニウム製の電線と銅製の端子との接続部に対する樹脂の被覆に欠陥が生じることは許されない。
【0011】
しかし、特許文献1の場合、アルミニウム露出部に滴下、塗布、押出によって変成シリコーン樹脂を付着する手法をとっているが、変成シリコーン樹脂は樹脂材料の中でも粘度が高い傾向にあり、必要な箇所全てに樹脂を行き渡らせるのは困難である。特に、オープンバレル端子の側面開口部のアルミニウム露出部を被覆することは難しい。
【0012】
また、例えばディスペンサ等で樹脂を塗布する場合には、複雑にノズルを動かし必要な箇所に確実に樹脂を塗布する必要があるが、塗布時間が延びるといった弊害がある。特に、電線経が大きくなるほどこの影響が大きくなる。また、加熱により樹脂の粘度を下げて、所望の箇所へ行き渡らせる手法も提案されているが、設備費が高価になり、硬化方式によっては硬化速度が加速しすぎることで不良や設備に対し悪影響を及ぼす可能性がある。その他、経時硬化する硬化性樹脂の場合は、塗布直後で未硬化状態において剥離しないよう指触乾燥まで物と接触を避ける保管が必要となるなど管理が煩雑になる。
【0013】
また、特許文献2の場合、注入時の空隙を避けるため、低粘度の樹脂を使用する必要があり、高粘度の樹脂および接着剤は使用することができない。また、端子収容室に端子付き絶縁電線を挿入した後にシール材を注入するため、アルミニウム電線の露出部を確実に被覆できているか目視確認を行うことできない。このため、例えば端子収容室の開口部に僅かな隙間が生じた場合や、アルミニウム電線の被覆が不十分な箇所があった場合には腐食は免れない。
【0014】
また、端子収容室にシール材を注入する手法であるため、特許文献1のような塗布方法に比べて時間を要する。また、注入後に硬化工程が必要になるため、製造時間が非常に長くなる。また暗部硬化性の紫外線硬化樹脂は反応速度が速いため、慎重な取り回しが要求され、ハンドリング性が悪い。また長寿命のラジカル種を用いる暗部硬化性の紫外線硬化樹脂の場合は、硬化時間が長くなり生産性が低下する。
【0015】
また、端子収容室にシール材を確実に生き渡らせるために、低粘度の樹脂を用いれば、端子付き電線における軸方向の全周に渡って樹脂が付着することとなるが、端子付き電線がハウジングに強固に固定されることになるため、端子付き絶縁電線をハウジングから抜き取ることができなくなる。そのため、修理や昨今注目されているハードアップデートの観点でメンテナンス性が極めて低くなってしまう。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、メンテナンス性に優れ、高い止水性を確保することが可能な端子挿入済みコネクタ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した目的を達するために第1の発明は、コネクタハウジングの端子挿入部に、少なくとも1つ以上の端子が挿入された端子挿入済みコネクタであって、前記端子は、端子本体と圧着部とを有し、前記端子は、前記圧着部で被覆導線と接続され、前記圧着部の少なくとも上面を覆うように樹脂で被覆され、前記樹脂は、硬化性樹脂に粘着性付与材が添加されているか、又は前記樹脂が粘着剤であり、前記圧着部の少なくとも一部が前記樹脂を介して前記端子挿入部の内面と密着していることを特徴とする端子挿入済みコネクタである。
【0018】
前記樹脂の硬化前の粘度が、9Pa・s以上300Pa・s以下であることが望ましい。
【0019】
前記樹脂の弾性率が、0.5MPa以上100MPa以下であることが望ましい。
【0020】
第1の発明によれば、端子付き電線の端子が挿入されたコネクタハウジングの端子挿入部に対し、少なくとも端子と電線との接続部を覆うように樹脂が充填されているため、樹脂によって端子接続部への水の浸入を抑制することができる。
【0021】
この際、樹脂が硬化性樹脂に粘着性付与材が添加されているか、又は樹脂が粘着剤であるため、完全に端子とコネクタハウジングとが接着せずに、端子をコネクタハウジングから抜くことが可能である。このため、メンテナンス等において端子の差し替え等が可能となる。また、この場合でも、粘着性によって端子とコネクタハウジングとは密着しているため止水性を維持することができる。
【0022】
また、樹脂の硬化前の粘度が9Pa・s以上300Pa・s以下であれば、樹脂が意図せずに流れ落ちることがなく、また、端子圧着部への塗布も容易である。
【0023】
また、樹脂の弾性率が0.5MPa以上100MPa以下であれば、硬化後も多少の柔軟性を有するため、コネクタハウジングから端子を抜く作業が容易となる。
【0024】
第2の発明は、第1の発明にかかる端子挿入済みコネクタを用いたコネクタ付きワイヤハーネスであって、前記コネクタハウジングは、複数の前記端子挿入部を有し、前記端子挿入部に、前記被覆導線と接続された複数の前記端子が挿入されることを特徴とするコネクタ付きワイヤハーネスである。
【0025】
第2の発明によれば、複数の端子付き電線を有し、止水性が高く、メンテナンス性に優れたコネクタ付きワイヤハーネスを得ることができる。
【0026】
第3の発明は、端子挿入済みコネクタの製造方法であって、端子本体と圧着部とを有する端子に対して、前記圧着部で被覆導線を接続する工程と、前記圧着部の少なくとも上面側に樹脂を塗布する工程と、前記樹脂が硬化する前に、コネクタハウジングの端子挿入部に、前記端子を挿入する工程と、を具備し、前記樹脂は、粘着性付与材が添加された硬化性樹脂、又は粘着剤であることを特徴とする端子挿入済みコネクタの製造方法である。
【0027】
前記樹脂が、粘着性付与材が添加された硬化性樹脂であり、前記端子挿入部に前記端子を挿入した後に、前記樹脂を硬化させてもよい。
【0028】
前記樹脂の硬化前の粘度が、9Pa・s以上300Pa・s以下であることが望ましい。
【0029】
第3の発明によれば、ハウジングの端子挿入部に端子を挿入する前に樹脂を塗布するため、樹脂が完全に所望の範囲に塗布されたか否かを容易に把握することができる。また、樹脂が硬化する前にハウジングの端子挿入部に挿入するため、樹脂がハウジングの端子挿入部の内部に押し広げられて、確実に端子とハウジングとを粘着性によって密着させることができる。
【0030】
また、樹脂を硬化させた場合でも、粘着性付与材によって粘着性が残るため、端子の差し替えが可能である。
【0031】
また、樹脂の硬化前の粘度を、9Pa・s以上300Pa・s以下の範囲に調整することで、樹脂を塗布してから硬化するまでの間に、端子挿入部の内部の所望の部位に樹脂を保持することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、メンテナンス性に優れ、高い止水性を確保することが可能な端子挿入済みコネクタ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図3】(a)は、端子付き電線1をコネクタハウジング25に挿入する前の状態を示す断面図、(b)は、端子付き電線1をコネクタハウジング25に挿入した状態を示す断面図。
【
図4】(a)は、端子付き電線1がコネクタハウジング25に挿入された状態を示す断面図、(b)は、端子付き電線1をコネクタハウジング25から抜きとった状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、端子挿入済みコネクタ20(コネクタ付きワイヤハーネス)を示す斜視図である。端子挿入済みコネクタ20は、コネクタハウジング25と端子付き電線1等から構成される。コネクタハウジング25には、複数の端子挿入部23が設けられる。コネクタハウジング25に設けられた端子挿入部23には、端子付き電線1の端子5が挿入される。
【0035】
なお、コネクタハウジング25の形態や、端子挿入部23の個数及び配置は図示した例には限られない。また、複数の端子挿入部23がある場合において、全ての端子挿入部23に端子付き電線1が配置されていなくてもよく、一部に空きがあってもよい。
【0036】
このように、端子挿入済みコネクタ20は、コネクタハウジング25の端子挿入部23に対して、少なくとも1つ以上の端子5が挿入されていればよい。なお、端子挿入済みコネクタ20において、コネクタハウジング25が複数の端子挿入部23を有する場合に、複数の端子挿入部23に、被覆導線11と接続された複数の端子5が挿入され、被覆導線11が束ねられたものをコネクタ付きワイヤハーネスとする。
【0037】
図2は、コネクタハウジング25に挿入される前の端子付き電線1を示す斜視図である。端子付き電線1は、端子5と被覆導線11とが接続されて構成される。
【0038】
被覆導線11は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金製である導線13と、導線13を被覆する被覆部15からなる。すなわち、被覆導線11は、被覆部15と、その先端から露出する導線13とを具備する。導線13は、例えば、複数の素線が撚り合わせられた撚り線である。
【0039】
端子5は、例えばオープンバレル型であり、例えば銅または銅合金製である。端子5には被覆導線11が接続される。端子5は、端子本体3と圧着部17とがトランジション部4を介して連結されて構成される。圧着部17と端子本体3の間に位置するトランジション部4は、上方が開口する。
【0040】
端子本体3は、所定の形状の板状素材を、断面が矩形の筒体に形成したものである。端子本体3は、内部に、板状素材を矩形の筒体内に折り込んで形成される弾性接触片を有する。端子本体3は、前端部から雄型端子などが挿入されて接続される。なお、以下の説明では、端子本体3が、雄型端子等の挿入タブ(図示省略)の挿入を許容する雌型端子である例を示すが、本発明において、この端子本体3の細部の形状は特に限定されない。例えば、雌型の端子本体3に代えて例えば雄型端子の挿入タブを設けてもよい。
【0041】
圧着部17は、被覆導線11と圧着される部位であり、圧着前においては、端子5の長手方向に垂直な断面形状が略U字状のバレル形状を有する。端子5の圧着部17は、被覆導線11の先端側に被覆部15から露出する導線13を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9と、導線圧着部7と被覆圧着部9の間のバレル間部8からなる。すなわち、端子5は、圧着部17において被覆導線11と接続される。
【0042】
被覆導線11の先端は、被覆部15が剥離され、内部の導線13が露出する。前述したように、被覆導線11の被覆部15は、端子5の被覆圧着部9によって圧着され、被覆部15が剥離されて露出する導線13は、導線圧着部7により圧着される。すなわち、導線圧着部7において、導線13と端子5とが電気的に接続される。なお、被覆部15の端面は、被覆圧着部9と導線圧着部7の間のバレル間部8に位置する。
【0043】
導線圧着部7の内面の一部には、幅方向(長手方向に垂直な方向)に、図示を省略したセレーションが設けられる。このようにセレーションを形成することで、導線13を圧着した際に、導線13の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線13との接触面積を増加させることができる。
【0044】
次に、端子挿入済みコネクタ20の製造方法について説明する。前述したように、まず、端子本体3と圧着部17とを有する端子5に対して、圧着部17で被覆導線11を接続する(
図2参照)。次に、得られた端子付き電線1の圧着部17の少なくとも上面側を含む周方向の一部に樹脂を塗布する。例えば、圧着部17の上面と側面の一部に樹脂を塗布する。なお、樹脂の塗布方法は特に限定されない。
【0045】
図3(a)は、コネクタハウジング25へ端子付き電線1を挿入する前の状態の断面図である。樹脂19は、少なくとも導線13が露出する部位(バレル間部8とトランジション部4側を含む、導線13の露出部)の全体を覆うように塗布される。
【0046】
なお、樹脂19の種類としては特に限定されないが、硬化性樹脂に粘着性付与材が添加されているか、又は樹脂19自体が粘着剤である。
【0047】
粘着性付与剤としては、ロジン系、テルペン系、テルペンフェノール系、フェノール系、クロマンインデン系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。石油樹脂には、脂肪族系、脂環族系、水添、スチレン系、アルキルフェノール系のものなどがある。粘着性付与剤としては、これらのうちの1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着性付与剤の含有量は、組成物の粘着性を高くできるなどの観点から、1~30質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは5~30質量%の範囲内、さらに好ましくは10~25質量%の範囲内である。
【0048】
また、常温での樹脂19の硬化前の粘度は、9Pa・s以上300Pa・s以下であることが望ましく、さらに好ましくは20Pa・s以上、100Pa・s以下である。このようにすることで、樹脂19を塗布して、直ちに樹脂19が流出することが無い。
【0049】
また、樹脂19は、ある程度固まる必要があり、室温湿気硬化型または嫌気硬化型であることが好ましい。また、加熱や紫外線照射によって硬化させてもよい。また硬化性樹脂には硬化促進剤を含有していても良い。さらに必要に応じて、物性を損なわない範囲で、硬化剤、硬化触媒、無機充填剤、酸化防止剤、金属不活性化剤(銅害防止剤)、紫外線吸収剤、紫外線隠蔽剤、難燃助剤、加工助剤(滑剤、ワックスなど)、カーボンやその他の着色用顔料、可撓性付与材、耐衝撃性付与材、有機充填材、希釈材(溶媒など)、揺変材、各種カップリング材、消泡材、レベリング材などが混合されていても良い。防食を目的としているため、防錆剤を添加するのが好ましい。
【0050】
次に、樹脂19が硬化する前に、コネクタハウジング25の端子挿入部23に、端子5を挿入する。
図3(b)は、端子付き電線1の端子5がコネクタハウジング25の端子挿入部23に挿入された状態を示す断面図である。この状態においては、樹脂19は流動性を有する。このため、端子5を端子挿入部23へ挿入すると、樹脂19は、端子挿入部23の内面によって端子5側に押し広げられる。
【0051】
樹脂19は、少なくとも圧着部17の上面側に塗布されるが、硬化前の状態で端子5を端子挿入部23に挿入することで、樹脂19が圧着部17の周囲に回り込むようにして広がる。また、樹脂19は、圧着部17に押し付けられるため、樹脂19によって、導線13を確実に被覆することができる。
【0052】
樹脂19が、粘着性付与材が添加された硬化性樹脂である場合には、この後、樹脂19を硬化させる。以上により、圧着部17の少なくとも一部が樹脂19を介して端子挿入部23の内面と密着した、端子挿入済みコネクタ20を製造することができる。なお、樹脂19は、圧着部17の全周にわたって密着することが望ましいが、圧着部17の下面において、樹脂19が回り込んでいない非密着部が形成されてもよい。
【0053】
ここで、硬化後の樹脂19の弾性率は、0.5MPa以上100MPa以下であることが望ましく、さらに好ましくは10MPa以上60MPa以下である。硬化後の樹脂が、多少の柔軟性を有すれば、コネクタハウジング25と端子5との間における力の伝達を抑制することができる。このため、例えば熱膨張係数の差により、温度変化で生じる応力や、コネクタハウジング25から端子5へ伝わる外力(振動)を低減することができる。
【0054】
図4(a)は、得られた端子挿入済みコネクタ20を示す図であり、
図4(b)は、端子付き電線1をコネクタハウジング25から抜き取った状態を示す図である。前述したように、樹脂19は、粘着性を有し、粘着力によって圧着部17と端子挿入部23の内面とが密着する。このため、圧着部17と端子挿入部23は完全に接着されておらず、治具等を用いることで容易に抜き取ることが可能である。このため、端子付き電線のメンテナンスや交換を行うことができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、圧着部17の上面に樹脂19を塗布してから端子5を端子挿入部23に挿入するため、挿入前に樹脂19の塗布状態を確認することができる。このため、樹脂19の塗布が不足しているものを検出することができる。また、未硬化状態の樹脂19が塗布された端子5を端子挿入部23に挿入するため、樹脂19が端子挿入部23の内壁と圧着部17に押し広げられる。このため、高粘度な樹脂19であっても、導線13の露出部に確実に行き渡らせることができ、特別な設備を使用することなく信頼性が向上し、製造時間も短縮される。
【0056】
特に樹脂19が硬化不要の場合、硬化完了を待つ必要が無いため、管理が容易であり、製造時間を短縮することもできる。また、必要な箇所にのみ塗布することができるため、特許文献2で示したような樹脂を充填する方式に比べ、樹脂量の削減効果も期待できる。
【0057】
このように、端子5の導線13の露出部が端子挿入部23の内壁に密着するため止水性が向上し、高い防食性を得ることができる。
【0058】
また、樹脂19の弾性率を所定の範囲とすることで、端子5とコネクタハウジング25との密着強度を維持しつつ、コネクタハウジング25から端子5へ伝達される力を低減することができる。
【0059】
また、樹脂19が粘着性を有するため、コネクタハウジング25に端子5を挿入して硬化させた後であっても、端子付き電線1をコネクタハウジング25から抜き取ることができる。
【0060】
なお、上述した実施形態では、圧着部17がいわゆるオープンバレルタイプの形態であるが、圧着部の形態は特に限定されない。また、端子5と導線13の材質も、上述した例には限られず、他の金属同士の組み合わせであってもよい。
【実施例0061】
(製造方法A)
端子挿入済みコネクタを作製して、各種の評価を行った。製造方法Aでは、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。
【0062】
被覆導線の導線と銅製の端子とを電気的に接続し、圧着部の上面に樹脂を厚み約1000μmになるよう塗布した。なお、塗布する樹脂については後述する。その直後、未硬化状態でコネクタハウジングに挿入し、25℃、相対湿度70%の大気中に120時間放置することで硬化させた。
【0063】
(製造方法B)
一方、製造方法Bでも、同様に、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。
【0064】
一方、製造方法Bでは、被覆導線の導線と銅製の端子とを電気的に接続し、圧着部の上面に樹脂を厚み約1000μmになるよう塗布した後、25℃、相対湿度70%の大気中に120時間放置し硬化した。樹脂が完全に硬化したことを確認後、コネクタハウジングに挿入した。
【0065】
(防食性試験)
防食性試験は次の通り実施した。濃度1%の塩化ナトリウム水溶液中に、電源のグラウンドに接続した面積100cm2の銅電極を、水深65cmに浸漬し、電源のプラスに接続した端子挿入済みコネクタのサンプルを水深60cmに浸漬し、それぞれ対向するように配置した。その後、12Vを6時間印加し静置した。
【0066】
防食性試験後、マイクロスコープを用いて、圧着部の外観を観察した。この際、圧着部の金属部分に欠損が認められないものを○とし、金属部分に欠損が認められたものを×とした。
【0067】
(冷熱サイクル試験)
作成した端子挿入済みコネクタを冷熱サイクル試験機に投入し、125℃で15分間保持し、次いで-40℃で15分間保持した。これを1サイクルとする冷熱サイクルを240サイクル繰り返し、冷熱サイクル試験とした。この冷熱サイクル試験後に、上記「防食性試験」を実施し、防食性試験と同様に外観評価を行った。
【0068】
また、冷熱サイクル試験後に、上記「防食性試験」を実施し、冷熱サイクル試験前と、冷熱サイクル試験及び防食性試験後のサンプルに対し、抵抗測定器を用いて端子挿入済みコネクタの端子側と、端子側とは反対側の電線末端とを電気的に接続し、抵抗を測定した。防食性試験後の抵抗値から冷熱サイクル試験前の抵抗値を差し引いた値を抵抗上昇値とし、抵抗上昇値が1.0Ω以下のものを○とし、抵抗上昇値が1.0Ωを超えるものを×とした。
【0069】
(連続耐熱性試験)
製造した端子挿入済みコネクタを恒温槽に投入し、125℃で120時間放置し、連続耐熱性試験とした。その後、上記「防食性試験」を実施し、防食性試験と同様に外観評価を行った。
【0070】
また、連続耐熱性試験後に、上記「防食性試験」を実施し、連続耐熱性試験前と、連続耐熱性試験及び防食性試験後のサンプルに対し、抵抗測定器を用いて端子挿入済みコネクタの端子側と、端子側とは反対側の電線末端とを電気的に接続し、抵抗を測定した。防食性試験後の抵抗値から連続耐熱性試験前の抵抗値を差し引いた値を抵抗上昇値とし、抵抗上昇値が1.0Ω以下のものを○とし、抵抗上昇値が1.0Ωを超えるものを×とした。
【0071】
(抜き取り試験)
製造した端子挿入済みコネクタから、専用の抜き治具を用いて端子付き電線の向き取りを試みた。抜き取りが可能であったものを○とし、抜き取りが不可能であったものを×とした。
【0072】
(実施例1)
製造方法Aの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、実施例1では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製の「EP001K」(商品名)を硬化性樹脂、ヤスハラケミカル社製の「YSポリスターT80」(商品名)を粘着性付与剤とし、80/20(質量部比)で混合したものを用いた。「EP001K」は2液型であり、エポキシ樹脂と変成シリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)の硬化触媒(有機スズ化合物)とを含む液A(溶媒不含(固形分濃度100質量%))と、変成シリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤(変性ポリアミン)とを含む液B(溶媒不含(固形分濃度100質量%))とで構成されており、液A/液B=100/100(質量部比)として混合したものである。YSポリスターT80はテルペンフェノール樹脂であり100℃に加熱し、液状にしてから混合に用いた。
【0073】
(実施例2)
製造方法Aの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、実施例2では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製「スーパーX No.8008」(商品名)を硬化性樹脂、ヤスハラケミカル社製の「YSポリスターT80」(商品名)を粘着性付与剤とし、80/20(質量部比)で混合したものを用いた。「スーパーX No.8008」は1液型であり、多官能(メタ)アクリレート化合物と、変成シリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)と、変成シリコーン樹脂の硬化触媒(ジブチルスズラウレート)とを含む硬化性樹脂組成物(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。YSポリスターT80はテルペンフェノール樹脂であり100℃に加熱し、液状にしてから混合に用いた。
【0074】
(実施例3)
製造方法Aの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、実施例3では、圧着部に塗布する樹脂として、信越シリコーン社製「KE-3495」(商品名)を硬化性樹脂、ヤスハラケミカル社製の「YSポリスターT80」(商品名)を粘着性付与剤とし、80/20(質量部比)で混合したものを用いた。「KE-3495」はシリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)とシリコーン樹脂の硬化触媒(ジブチルスズラウリレート)とを含む硬化性樹脂組成物(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。YSポリスターT80はテルペンフェノール樹脂であり100℃に加熱し、液状にしてから混合に用いた。
【0075】
(実施例4)
製造方法Aの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、実施例4では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製「UT100B」(商品名)を硬化性樹脂、ヤスハラケミカル社製の「YSポリスターT80」(商品名)を粘着性付与剤とし、80/20(質量部比)で混合したものを用いた。「UT100B」は、多官能イソシアネート化合物と多官能ヒドロキシ化合物とを含む1液型のウレタン系接着剤(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。YSポリスターT80はテルペンフェノール樹脂であり100℃に加熱し、液状にしてから混合に用いた。
【0076】
(比較例1)
製造方法Bの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、比較例1では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製の「EP001K」(商品名)の硬化性樹脂のみを用いた。「EP001K」は2液型であり、エポキシ樹脂と変成シリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)の硬化触媒(有機スズ化合物)とを含む液A(溶媒不含(固形分濃度100質量%))と、変成シリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤(変性ポリアミン)とを含む液B(溶媒不含(固形分濃度100質量%))とで構成されており、液A/液B=100/100(質量部比)として混合したものである。
【0077】
(比較例2)
製造方法Bの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、比較例2では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製「スーパーX No.8008」(商品名)の硬化性樹脂を用いた。「スーパーX No.8008」は1液型であり、多官能(メタ)アクリレート化合物と、変成シリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)と、変成シリコーン樹脂の硬化触媒(ジブチルスズラウレート)とを含む硬化性樹脂組成物(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0078】
(比較例3)
製造方法Bの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、比較例3では、圧着部に塗布する樹脂として、信越シリコーン社製「KE-3495」の硬化性樹脂を用いた。「KE-3495」はシリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)とシリコーン樹脂の硬化触媒(ジブチルスズラウリレート)とを含む硬化性樹脂組成物(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0079】
(比較例4)
製造方法Bの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、比較例4では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製「UT100B」(商品名)の硬化性樹脂を用いた。「UT100B」は、多官能イソシアネート化合物と多官能ヒドロキシ化合物とを含む1液型のウレタン系接着剤(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0080】
(比較例5)
製造方法Aの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、比較例5では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製の「EP001K」(商品名)の硬化性樹脂のみを用いた。「EP001K」は2液型であり、エポキシ樹脂と変成シリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)の硬化触媒(有機スズ化合物)とを含む液A(溶媒不含(固形分濃度100質量%))と、変成シリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤(変性ポリアミン)とを含む液B(溶媒不含(固形分濃度100質量%))とで構成されており、液A/液B=100/100(質量部比)として混合したものである。
【0081】
(比較例6)
製造方法Aの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、比較例6では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製「スーパーX No.8008」(商品名)の硬化性樹脂を用いた。「スーパーX No.8008」は1液型であり、多官能(メタ)アクリレート化合物と、変成シリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)と、変成シリコーン樹脂の硬化触媒(ジブチルスズラウレート)とを含む硬化性樹脂組成物(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0082】
(比較例7)
製造方法Aの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、比較例7では、圧着部に塗布する樹脂として、信越シリコーン社製「KE-3495」の硬化性樹脂を用いた。「KE-3495」はシリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)とシリコーン樹脂の硬化触媒(ジブチルスズラウリレート)とを含む硬化性樹脂組成物(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0083】
(比較例8)
製造方法Aの製法で端子挿入済みコネクタを製造した。また、比較例8では、圧着部に塗布する樹脂として、セメダイン社製「UT100B」(商品名)の硬化性樹脂を用いた。「UT100B」は、多官能イソシアネート化合物と多官能ヒドロキシ化合物とを含む1液型のウレタン系接着剤(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0084】
以上のように、実施例1~4は、樹脂硬化前にコネクタへ挿入する新製法を採用するとともに、樹脂に粘着性付与材が添加されたものである。一方、比較例1~4は、樹脂硬化後にコネクタへ挿入する従来製法を採用するとともに、樹脂に粘着性付与剤が添加されていないものである。また、比較例5~8は、樹脂硬化前にコネクタへ挿入する新製法を採用するが、樹脂に粘着性付与剤が添加されていないものである。結果を表1、表2に示す。
【0085】
【0086】
【0087】
表1、表2に示されるように、実施例1~4は、冷熱サイクル及び連続耐熱性のいずれも、ハウジングの挿入スペースと圧着部が密着しているため、アルミニウム導線の露出部を外部から十分に遮断でき、金属部分の欠損や抵抗値の上昇を効果的に抑えることができた。また、実施例1~4はいずれも抜き取り性が○であった。
【0088】
一方、比較例1~4は、樹脂硬化後に端子をコネクタハウジングに挿入したため、冷熱サイクルに晒されたり、高温に長時間晒されたりすると、金属部分の欠損や抵抗値の上昇が認められた。これは熱による影響で、樹脂の一部に亀裂や剥がれが生じ、圧着部の止水性が低下したことが原因と考えられる。さらに、樹脂が高粘度だったことから、樹脂が行き渡り辛く、圧着部の側面等において、塗膜の欠陥や塗膜が極端に薄くなり絶縁性が低い部位が生じたことも考えられる。
【0089】
また、樹脂硬化前に端子をコネクタハウジングに挿入する新製法を採用した比較例5~8は、冷熱サイクルに晒されたり、高温に長時間晒されたりしても、金属部分の欠損や抵抗値の上昇を効果的に抑えることができた。しかし、圧着部が端子挿入部と接着しているため端子付き電線の抜き取りができなかった。
【0090】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。