(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134709
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両制御方法、及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20240927BHJP
【FI】
B60W30/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045048
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 吉正
(72)【発明者】
【氏名】大河平 隆
(72)【発明者】
【氏名】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正純
(72)【発明者】
【氏名】平井 義人
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BB37
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DC01Z
3D241DC25Z
(57)【要約】
【課題】障害物を回避する性能を向上させることができる車両制御方法、及び車両制御装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る車両制御方法は、車両の周辺を検知する周辺検知ステップと、前記周辺検知ステップで検知された情報に基づいて、状況を判定する状況判定ステップと、前記状況判定ステップの判定結果に基づいて、前記車両の動作を指示する動作指示ステップと、を含み、前記状況判定ステップは、前記車両の前方を走行する先行車両の挙動が回避対象の回避であるか評価し、前記動作指示ステップは、前記状況判定ステップにおいて、前記挙動が前記回避であると推定した時に、前記車両の回避を準備する回避準備動作を指示する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺を検知する周辺検知ステップと
前記周辺検知ステップで検知された情報に基づいて、状況を判定する状況判定ステップと、
前記状況判定ステップの判定結果に基づいて、前記車両の動作を指示する動作指示ステップと、
を含み、
前記状況判定ステップは、前記車両の前方を走行する先行車両の挙動が回避対象の回避であるか評価し、
前記動作指示ステップは、前記状況判定ステップにおいて、前記挙動が前記回避であると推定した時に、前記車両の回避を準備する回避準備動作を指示する、
車両制御方法。
【請求項2】
前記回避準備動作は、前記車両の方向指示器の点灯と、前記車両の加減速と、の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項3】
前記状況判定ステップは、前記先行車両の姿勢、または、前記先行車両の車軸方向の移動速度に基づいて前記回避であると推定し、
前記先行車両のロール角、またはヨー角の変化量が所定の角度閾値を超えたと評価した場合と、
前記先行車両の車軸方向の移動速度が所定の速度閾値を超えたと評価した場合と、
の少なくとも一方に該当する場合に、前記回避であると推定する、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項4】
前記状況判定ステップは、前記車両の進行方向の道路の曲率が所定の曲率閾値を超えると評価した時は、前記回避であると推定しないことを含む、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項5】
前記状況判定ステップは、前記先行車両の挙動が回避対象の回避である確度を示す回避確度を評価し、
前記先行車両の車幅方向の移動の開始時点より前に、前記移動の方向の方向指示器の点灯がある時は、前記移動の開始時点より前に、前記移動の方向の方向指示器の点灯がない時より、前記回避確度を低く評価することと、
前記先行車両の車幅方向の移動速度の微分値、または2回微分値が大きい時は、前記移動速度の微分値、または2回微分値が小さい時よりも、前記回避確度を高く評価することと、
前記先行車両のロール角、またはヨー角の変化量が大きい時は、前記ロール角、またはヨー角の変化量が小さい時よりも、前記回避確度を高く評価することと、
前記先行車両のロール角、またはヨー角が変化した際に、前記先行車両の減速がある時は、減速がない時よりも、前記回避確度を高く評価することと、
のうち、少なくとも一つを含み、
前記回避確度が第1の閾値を超える時に、前記回避であると推定することを含む、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項6】
前記状況判定ステップは、前記回避であると推定した時に、前記車両の周辺の状況に応じて、前記車両の方向指示器を点灯させる方向を示す指示方向を設定し、前記車両の周辺の状況に応じた指示方向の設定は、
前記先行車両の車幅方向の移動方向を指示方向とする、
前記車両が走行車線を走行中なら、追越車線の側を指示方向とする、
前記車両が追越車線を走行中なら、走行車線の側を指示方向とする、
前記車両の隣接車線を走行する近傍車両が、一方の隣接車線にあって、他方の隣接車線に無い場合は、前記近傍車両がある側を指示方向とする、
前記車両の隣接車線を並走する並走車両が、一方の隣接車線にあって、他方の隣接車線に無い場合は、前記並走車両がある側を指示方向とする、
前記車両の側方に、前記並走車両が無い方向を指示方向とする、
の設定規則のうち、少なくとも一つの設定規則に基づいて前記指示方向を設定し、
前記動作指示ステップは、前記指示方向の前記方向指示器を点灯させることを含む、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項7】
前記状況判定ステップは、前記回避であると推定した時に、前記車両の速度制御の方針を示す速度方針を、前記車両の隣接車線を走行する近傍車両の位置に応じて設定し、
前記近傍車両が前記車両と並ぶ並走車両を含む時は、
前記速度方針として加速、または減速のいずれかを選択し、
前記動作指示ステップは、前記速度方針に基づいて加減速を指示することを含む、
請求項1に記載の車両制御方法。
【請求項8】
前記速度方針は、
前記並走車両と前記車両との位置関係、または、
前記並走車両と前記車両との速度差、の少なくとも一方と、
前記車両の速度に応じて選択し、
前記車両の速度が速い時は、前記車両の速度が遅い時よりも、
前記速度方針として減速を選択し易くする、
請求項7に記載の車両制御方法。
【請求項9】
前記状況判定ステップは、
前記指示方向の隣接車線に、前記車両より後方の後方車両と、前記車両より前方の前方車両とがあり、前記前方車両と前記後方車両の間の隙間が、前記車両の車長を基準とする隙間閾値より長い場合は、前記前方車両と前記後方車両との隙間に前記車両が並ぶように加減速させること速度方針とし、
前記隙間が前記車両の車長を基準とする隙間閾値より短い場合は、前記車両の前端が前記前方車両の後端を追尾する様に加減速させることを速度方針とする、
請求項6に記載の車両制御方法。
【請求項10】
状況判定ステップは、
前記指示方向の隣接車線に、前記車両より後方の後方車両と、前記車両より前方の前方車両とがある場合に、
前記前方の近傍車両と前後に重なる場合は減速させること速度方針とし、
前記後方の近傍車両と前後に重なる場合は加速させること速度方針とし、
両方に該当する場合は、減速させる事を速度方針とする、
請求項6に記載の車両制御方法。
【請求項11】
前記状況判定ステップは、前記回避であると推定した時に、前記車両の方向指示器を点灯させる点灯タイミングを、前記速度方針と、前記車両の周辺の状況とに応じて制御し、
前記速度方針が減速であり、かつ、前記方向指示器を点灯させる指示方向の隣接車線に並走車両がある場合は、前記並走車両と前記車両との位置関係に応じて、前記方向指示器の点灯を遅延させる、
請求項7に記載の車両制御方法。
【請求項12】
前記状況判定ステップは、前記車両の進行方向に回避対象を検出した場合、又は、前記回避確度が、前記第1の閾値より大きい第2の閾値を超える場合に、前記回避であると断定することを含み、
前記動作指示ステップは、前記回避であると断定した時に、回避動作を指示することを含む、
請求項5に記載の車両制御方法。
【請求項13】
前記状況判定ステップは、
前記回避であると断定した時に、前記車両の周辺の状況に応じて、前記車両の回避方向を設定し、
前記回避対象が逆走車である場合に、前記逆走車の推定進路と重ならない方向を前記回避方向として設定し、
左右の隣接車線のいずれか一方への進路変更が容易でない場合に、進路変更が容易な方向を前記回避方向として設定し、
左右の隣接車線のいずれも進路変更が容易でない場合に、指示方向を前記回避方向として設定し、
前記動作指示ステップは、前記回避方向に基づいて前記回避動作を指示する、
請求項12に記載の車両制御方法。
【請求項14】
前記状況判定ステップは、
前記回避方向に並走車両が無い場合に、前記回避方向に向けて進路変更することを回避方針として設定し、
前記回避方向に並走車両があり、且つ前記回避対象が逆走車である場合に、前記回避方向に向けて進路変更することを前記回避方針として設定し、
前記回避方向に並走車両があり、且つ前記回避対象が逆走車でない場合に、前記回避方向に向けて、車線境界線を越えない範囲で進路変更することを前記回避方針として設定し、前記動作指示ステップは、前記回避方針に基づいて前記回避動作を指示する、
請求項13に記載の車両制御方法。
【請求項15】
前記状況判定ステップは、前記回避準備動作を開始した後、前記回避であると断定しないまま、所定地点を通過した時、または、所定距離を走行した時、または、所定時間が経過した時に、前記回避準備動作を収束させる収束方針を設定し、
前記動作指示ステップは、前記収束方針に基づいて前記回避準備動作を収束させる収束制御を含む、
請求項1から請求項14の何れか一項に記載の車両制御方法。
【請求項16】
前記収束制御は、前記車両の方向指示器を消灯させる指示を含む、
請求項15に記載の車両制御方法。
【請求項17】
前記収束制御は、
前記車両の方向指示器を点灯させる方向を示す指示方向に近傍車両がない場合に、前記指示方向に前記車両を進路変更させた後に前記方向指示器の消灯を指示し、
前記指示方向に近傍車両がある場合に、直ちに前記方向指示器の消灯を指示することを含む、
請求項16に記載の車両制御方法。
【請求項18】
前記収束制御は、前記車両の方向指示器を消灯させるよう、乗員に報知することを含む、
請求項16に記載の車両制御方法。
【請求項19】
車両の周辺を検知する周辺検知部と
前記周辺検知部が検知した情報に基づいて、状況を判定する状況判定部と、
前記状況判定部の判定結果に基づいて、前記車両の動作を指示する動作指示部と、
を備え、
前記状況判定部は、前記車両の前方を走行する先行車両の挙動が回避対象の回避であるか評価し、
前記動作指示部は、前記状況判定部が、前記挙動が前記回避であると推定した時に、前記車両の回避を準備する回避準備動作を指示する、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御方法、及び車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前方に障害物を検出した時、運転者に報知したり、舵角を自動制御したりする事により、障害物を回避させる車両制御装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、先行車両が障害物を回避した時、自車両は、先行車両の走行経路を自車両の目標経路として走行する技術が開示されている。特許文献1に記載された技術によれば、先行車両は障害物を回避できる様に経路を制御するので、自車両は、先行車両と同じ経路を走行することで衝突を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行車両が回避した側に、自車両と並走する車両がある場合、先行車両と同じ経路を走行することができない。つまり、周辺の車両との位置関係によって、回避が妨げられる事がある。
【0006】
本開示は、障害物を回避する性能を向上させることができる車両制御方法、及び車両制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車両制御方法は、車両の周辺を検知する周辺検知ステップと、前記周辺検知ステップで検知された情報に基づいて、状況を判定する状況判定ステップと、前記状況判定ステップの判定結果に基づいて、前記車両の動作を指示する動作指示ステップと、を含み、前記状況判定ステップは、前記車両の前方を走行する先行車両の挙動が回避対象の回避であるか評価し、前記動作指示ステップは、前記状況判定ステップにおいて、前記挙動が前記回避であると推定した時に、前記車両の回避を準備する回避準備動作を指示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る車両制御方法、及び車両制御装置によれば、障害物を回避する性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る車両に搭載されたシステムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る車両の各装置のネットワーク構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、車両制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、レーダの構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、レーダのスキャン範囲の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、前方カメラの構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、障害物の検知における課題の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、逆走車両の検知における課題の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、先行車両の姿勢による回避動作の推定の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、道路の曲率と回避推定の除外を説明する説明図である。
【
図11】
図11は、先行車両の挙動による回避動作の推定を説明する説明図ある。
【
図12】
図12は、回避推定に基づく制御(回避準備動作)を説明する説明図である。
【
図13】
図13は、並走車両と近傍車両とを説明する説明図である。
【
図14】
図14は、状況に応じた指示方向の選択を説明する説明図である。
【
図15】
図15は、状況に応じた前後方向の移動を説明する説明図である。
【
図16】
図16は、状況に応じたウインカ点灯の指示の遅延を説明する説明図である。
【
図17】
図17は、回避断定と回避動作を説明する説明図である。
【
図18】
図18は、状況に応じた回避方向の決定を説明する説明図である。
【
図19】
図19は、緊急制動による回避と回避タイミングを説明する説明図である。
【
図20】
図20は、回避動作でない場合の収束判定を説明する説明図である。
【
図21】
図21は、車両制御装置が実行する危険回避制御の全体フローの一例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、指示方向決定フローの一例を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、加減速制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、点灯制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図25】
図25は、回避方向決定フローの一例を示すフローチャートである。
【
図26】
図26は、操舵制御フローの一例を示すフローチャートである。
【
図27】
図27は、緊急制動フローの一例を示すフローチャートである。
【
図28】
図28は、収束制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る車両制御方法、及び車両制御装置の実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車両1に搭載されたシステムの一例を示す図である。車両1は、前方カメラ11、右側方カメラ12、左側方カメラ13、前方レーダ21、右側方レーダ22、左側方レーダ23、操舵制御装置31、速度制御装置32、車両制御装置33、ナビゲーション装置34、センサ制御装置35、及び操作装置36を備える。
【0012】
前方カメラ11は、車両1の前方の画像を取得する。前方カメラ11は、複眼カメラであっても良い。前方カメラ11が複眼カメラであれば、センサ制御装置35は、カメラ単体で先行車両2までの距離を特定できる(
図6参照)。右側方カメラ12は、車両1の左側の画像を取得する。左側方カメラ13は、車両1の右側の画像を取得する。前方レーダ21は、車両1の前方の障害物を検知する。右側方レーダ22は、車両1の右側の障害物を検知する。左側方レーダ23、車両1の左側の障害物を検知する。
【0013】
前方カメラ11、右側方カメラ12、左側方カメラ13、前方レーダ21、右側方レーダ22、及び左側方レーダ23は、車両1上の障害物の検知に有利な位置に配置される。前方カメラ11、右側方カメラ12、及び左側方カメラ13を区別しない場合には、カメラ10と呼称する。また、前方レーダ21、右側方レーダ22、及び左側方レーダ23を区別しない場合には、レーダ20と呼称する。
【0014】
センサ制御装置35は、右側方カメラ12と左側方カメラ13との画像から車線区分線を検出し、車両1が走行中の車線、及び車線内の位置を特定する。また、センサ制御装置35は、前方カメラ11の画像から、先行車両2の位置と、先行車両2の姿勢、及び車線内の位置を特定する。センサ制御装置35は、右側方レーダ22及び左側方レーダ23の検知情報から、隣接車線を走行中の車両の位置を特定する。なお、センサ制御装置35は、右側方カメラ12と左側方カメラ13との画像から隣接車線を走行中の車両の位置を特定しても良い。操作装置36は運転手の手足が届く範囲に置かれた、ハンドルやペダル類やスイッチ類を含む。
【0015】
操舵制御装置31は、パワーステアリング装置(不図示)の近くに置かれ、パワーステアリング装置を制御する事により、舵角を制御したり、運転手のハンドル操作による操舵を補助したりする。
【0016】
速度制御装置32は、エンジン、モーター、及びブレーキの制御により、車速を制御したり、運転手のペダル操作による加減速を補助したりする。
【0017】
車両制御装置33は、運転手が操作装置36のスイッチ類で与えた指示に基づいて動作モードを設定し、センサ制御装置35から得た情報に基づいて状況を判定する。動作モードは、例えば自動運転モードと手動運転モードである。車両制御装置33は、状況判定に基づいて、舵角や車速を制御したり、灯火(不図示)を点灯したりする。車両制御装置33は、操舵制御装置31や速度制御装置32の近くに配置される。
【0018】
ナビゲーション装置34は、運転席周辺に配置され、車両制御装置33や運転手に地図情報や位置情報を出力する。ナビゲーション装置34は、HMI(Human Machine Interface)装置38(タッチパネルとスピーカー)を備え、運転手に地図やメッセージを出力したり、運転手の操作を受け付けたりする。タッチパネルは操作装置36に含めても良い。
【0019】
各装置は、LAN(Local Area Network)37を介して有線で接続される。前方カメラ11、右側方カメラ12、左側方カメラ13、前方レーダ21、右側方レーダ22、及び左側方レーダ23は、車両制御装置33と専用の配線で直結されてもよい。
【0020】
図2は、第1の実施形態に係る車両1の各装置のネットワーク構成の一例を示す図である。手動運転モードでは、運転手がハンドルやペダル等の操作装置36を介して、操舵制御装置31や速度制御装置32を操作し、舵角や車速を直接、制御する。自動運転モードでは、車両制御装置33が操舵制御装置31や速度制御装置32を制御し、運転手は、操作をしない。なお、通常の手動運転モードでも、車両制御装置33は、運転手による操作に応じてパワーステアリング装置(不図示)や速度制御装置32を制御する事により、舵角や車速の制御を補助する事がある。なお、操舵制御装置31や速度制御装置32は、運転手による操作の情報(操作情報)と、実際の舵角や車速などの車両情報を、LAN37(車内LAN)に出力する。センサ制御装置35は、LAN37に検知情報を出力する。ナビゲーション装置34は、HMI装置38が受け付けた操作情報や、車両1の現在位置を含む地図情報を、LAN37に出力する。
【0021】
車両制御装置33は、LAN37から操作情報、車両情報、検知情報、地図情報などを取得し、これらの情報に基づいて状況を評価する。そして、車両制御装置33は、評価した状況に応じて運転に介入する事があり、モードによっては自律的に速度や舵角を制御する事がある。
【0022】
センサ制御装置35は、複数のカメラ10と複数のレーダ20を制御し、車両1の周囲の状況をデータ化し、そのデータ(検知情報)をLAN37に出力する。検知情報は、車両が走行する道路や、前方の障害物や、車両周辺の他車両5などの情報を含む。
【0023】
例えば、センサ制御装置35は、カメラ10により取得された画像から検知した情報に基づいて、車両1に対する車線境界線の位置、車線境界線の種別、車線と路側帯の判別、先行車両2の姿勢と車線内の位置、車両1の周辺を走行する他車両5の方位、などの検知情報を得る。また、センサ制御装置35は、レーダ20により検知された情報に基づいて、車両1に対する他車両5の方位と相対速度、などの検知情報を得る。センサ制御装置35は、カメラ10の検知情報とレーダ20の検知情報を組み合わせた検知情報を生成してLAN37に出力しても良い。
【0024】
ナビゲーション装置34は、地図情報と車両1の位置とに基づいて、走行中の道路の車線構成や、進行方向の分岐路の位置や方向の情報をLAN37に出力する。また、ナビゲーション装置34は、HMI装置38(タッチパネル)を有し、乗員は、HMI装置38を介して、車両1(車両制御装置33)に指示を与えることが出来る。HMI装置38のタッチパネルや、HMI装置38が備えるスイッチ類は、操作装置36に含めても良い。また、HMI装置38は、ディスプレイとスピーカーを備え、車両制御装置33の指示に応じて、画像や音声によるメッセージを乗員に出力することがある。例えば、車両制御装置33は、緊急制動や危険回避の為の操舵介入を行う時に、HMI装置38を介して、運転に介入する事を乗員に報知する。
【0025】
図3は、車両制御装置33の機能構成の一例を示す図である。車両制御装置33は、受付部310、状況判定部320、及び動作指示部330を有する。受付部310は、ハンドル、ペダル、ウインカレバー、タッチパネルやスイッチ類などの、操作装置36からの操作情報を受け付ける。また、受付部310は、LAN37から、検知情報、車両情報、地図情報、などを取得する。
【0026】
動作指示部330は、報知制御部331、車速制御部332、舵角制御部333、及び灯火制御部334を備える。
【0027】
状況判定部320は、検知情報、車両情報、地図情報、などに基づいて状況を評価し、状況に応じて運転に介入する。具体的には、状況判定部320は、判定した状況に応じて、報知制御部331に報知指示を出力させ、ナビゲーション装置34が報知指示に応じた画像や音声を生成し、その音声や画像をHMI装置38が出力する。また、状況判定部320は、判定した状況に応じて、車速制御部332に車速指示を出力させ、速度制御装置32は車速指示に応じて不図示のエンジンやブレーキを制御する。また、状況判定部320は、判定した状況に応じて、舵角制御部333に舵角指示を出力させ、操舵制御装置31は舵角指示に応じて不図示のEPS(電動パワーステアリング装置:Electric Power Steering)を制御する。
【0028】
また、状況判定部320は、判定した状況に応じて、灯火制御部334に灯火指示を出力させ、不図示の灯火制御装置は灯火指示に応じて不図示のウインカを点灯させる。ウインカは方向指示器の別名である。ウインカは車両1の右側と左側にあり、両方を同時に点灯すると、非常点滅表示灯を点灯した事になる。ハザードランプは非常点滅表示灯の別名である。灯火指示に応じてウインカを点灯させる場合、片方のウインカを点灯(方向指示器を点灯)しても良いし、両方のウインカを点灯(非常点滅表示灯を点灯)しても良い。以下、記載が煩雑になる事を避けるため、非常点滅表示灯(ハザードランプ)を方向指示器(ウインカ)と区別せず、どちらも方向指示器(ウインカ)と呼ぶ事にする。
【0029】
なお、過程の説明を省略して、状況判定部320は音声や画像を出力させる、とか、状況判定部320は速度を制御する、とか、状況判定部320は舵角を制御する、とか、状況判定部320はウインカを点灯させる、とか表現する事があるが、前述の様な過程がある事を前提とした説明であると理解されたい。また、状況判定部320が運転に介入しない場合、動作指示部330は、報知指示や車速指示や舵角指示や灯火指示を出力せず、速度制御装置32や操舵制御装置31は、運転手の操作のみに従う。
【0030】
ここで、レーダ20について詳細に説明する。
図4は、レーダ20の構成の一例を示す図である。
図4(1)は、レーダ20が有するアンテナの一例を示す図である。
図4(2)は、レーダ20による電波の送信の一例を示す図である。レーダ20は、二次元の格子状配列のアンテナ(アレイアンテナ)を備え、個々のアンテナから、徐々に位相をずらして電波を発信すると、特定の方向以外では電波が相殺されて、指向性がある電波のビームを送信できる。レーダ20は、送信方向θを周期的に振って車両1周辺をスキャンする。電波は、光速で伝搬するので、反射波の受信時の送信方向θが反射波の飛来方向、つまり反射体Cの方向と一致する。
【0031】
レーダ20は、反射波と送信波との時間差から反射体Cまでの距離Lを算出する。すると、送信方向θは送信時刻で特定できるので、レーダ20は、距離Lと方位θで反射体Cの座標を特定できる。反射体Cが車両1に接近しつつある場合、接近速度に比例して反射波の周波数が送信波より少し高くなるドップラーシフトが起きる。この周波数の変化量を検出する事により、レーダ20は、反射体Cの接近速度を特定する。接近速度は、車両1と反射体Cとの速度差で決まるので、センサ制御装置35は、車両1の速度を接近速度から相殺することで、反射体Cの速度を特定する。つまり、レーダ20は、反射体Cの位置と速度とを特定できる。
【0032】
図5は、レーダ20のスキャン範囲の一例を示す図である。前方をスキャンする前方レーダ21は、遠くの車を早く検知するためにスキャン範囲を絞っている。車両制御装置33は、前方をスキャンする前方レーダ21の検知情報を前方衝突防止機能に使用する。例えば、前方に停止車両がある場合、接近速度が車両1の速度と一致する事から、停止した反射体Cがあると判定できる。前方に障害物がある場合、車両制御装置33は、速度制御装置32に減速を指示したり、音声で運転手に警告したりする事により、衝突を回避する事が出来る。
【0033】
また、右側方レーダ22、及び左側方レーダ23は、側方から後方を幅広く検知する。そして、車両制御装置33は、右側方レーダ22、及び左側方レーダ23による検知情報を側方衝突防止機能に使用する。例えば、ウインカを出した側に他車両5の存在を検出した場合に、警告を出したり、操舵を規制したりする事により、衝突を回避出来る。
【0034】
しかし、例えば
図7のように、車両1の前方に先行車両2が有る場合、前方レーダ21の電波が先行車両2で遮蔽されるので、前方レーダ21は、先行車両2の前方を検知することができない。稀に、先行車両2の床下を通過する経路を電波が往復し、2台前の他車両5を検知できる事もあるが、特定の条件に当てはまる時にだけ発生する現象であり、検知できない確率の方が大きい。
【0035】
次に、前方カメラ11について詳細に説明する。
図6は、前方カメラ11の構成の一例を示す図である。前方カメラ11が2眼カメラ(ステレオカメラ)の場合、レンズを結ぶ基線に対する角度差(2眼視差=θ1+θ2)に基づいて、車両制御装置33は、先行車両2までの距離を特定することができる。但し、距離の精度は、基線の長さと距離との比によって決まるので、遠方では距離の精度が下がる。前方カメラ11が単眼カメラである場合は、距離に反比例して像の大きさが小さくなるが、像の大きさは物体の大きさに比例するので、普通、カメラ画像から距離を特定する事は困難である。そのため、車両1は、ステレオカメラを備える場合でも、レーダ20を備えた方が良い。
【0036】
車両制御装置33は、前方カメラ11により検知された先行車両2の像に基づいて、先行車両2の姿勢や、先行車両2の姿勢の変化、車線境界線を基準とする先行車両2の横方向の移動など、先行車両2の挙動に関する情報を取得する。
【0037】
これらの挙動に関する情報はレーダ20では得られないので、車両1は、レーダ20に加えてカメラ10を備えた方が良い。挙動に関する情報は、ステレオカメラでない単眼カメラでも取得可能である。よって、車両1は、ステレオカメラである前方カメラ11とレーダ20とを備えていても良いし、単眼カメラである前方カメラ11とレーダ20とを備えていても良い。
【0038】
ここで、障害物の回避における課題について説明する。
図7は、障害物の回避における課題の一例を示す図である。車両1は、障害物や接近する逆走車などの回避対象3が先行車両2の前方に有る場合、先行車両2の車体によって電波や視界が遮られるため、先行車両2の前方を検知することができない。そのため車両1は、先行車両2が横移動し、車両1が回避対象3を検出した時点で回避を開始しても、進路変更の開始が遅い為に回避が間に合わない事がある。
【0039】
図8は、逆走車両の回避における別の課題を示す図である。
図8に示すように、先行車両2が回避した回避対象3が逆走車であると、接近速度が速い為に、逆走車を直接検知した時に直ちに進路変更しても、回避が間に合わない事がある。また、先行車両2が進路変更した事を検知して、先行車両2と同じ経路を進む回避動作を行おうとしても車両1と並走する他車両5がある場合、車両1は並走する他車両5に妨げられて、先行車両2と同じ経路を進む回避行動が出来ない。
【0040】
そこで、車両制御装置33は、先行車両2の挙動に関する情報を分析して、出来るだけ早い時点で先行車両2の挙動が回避運動である事を推定し、回避運動であると推定した時点で、他車両5との並走状態を解消する動作を開始する事により、回避対象3に衝突したり、他車両5に衝突したりする可能性を低減する。
【0041】
図9は、先行車両2の姿勢による回避動作の推定の一例を示す図である。
図9(1)は、先行車両2が正立している状態を示す図である。
図9(2)は、先行車両2がヨーイングしている状態を示す図である。
図9(3)は、先行車両2がローリングしている状態を示す図である。
図9(4)は、先行車両2がヨーイングし、且つローリングしている状態を示す図である。
【0042】
先行車両2は、落下物や逆走車などの回避対象3を発見した場合、操舵によって回避するため、車体の姿勢に変化が現れる。車両制御装置33は、前方を撮影した画像から先行車両2の輪郭線を抽出し、それが変化した時に回避運動と推定しても良い。
【0043】
例えば、
図9(1)に示すように、先行車両2の像が正立している場合、車両制御装置33は、先行車両2は直進中であり、回避運動をしていない、と推定する。
【0044】
また、直線道路を走行中に、
図9(2)に示すように、先行車両2の車体側面が映り、輪郭線が四角形でなくなった場合、先行車両2はヨーイングしているので、車両制御装置33は、回避運動と推定しても良い。道路がカーブしているために、
図9(2)に示すように、先行車両2の車体側面が映ることもあるので、車両制御装置33は、ナビゲーション装置34から道路の曲率の情報を得て、推定の条件を設定しても良い。
【0045】
図9(3)に示すように、先行車両2の像の傾きを検出し、傾きが閾値を超える場合に、車両制御装置33は、回避運動と推定し、道路の曲率に応じて閾値を設定しても良い。車両制御装置33は、カーブで発生する遠心力は車速に比例するので、曲率と車速とに応じて閾値を設定しても良い。車両制御装置33は、その時々の先行車両2の傾きで判定するのではなく、傾きの変化量で判定すると良い。例えば、
図9(3)に示すように、車両制御装置33は、先行車両2の像が傾いた状態が継続している場合、積み荷の片寄りの影響と考えられるので、回避運動と推定しない様にしても良い。
【0046】
図9(4)に示すように、車両制御装置33は、ローリングとヨーイングが同時に検出される場合、ローリング角とヨーイング角の二つを個々に指標値に置き換え、指標値の合計を閾値と比較しても良いし、指標値の大きい方を閾値と比較しても良い。
【0047】
図10は、道路の曲率と回避推定の除外を説明する説明図である。
図10(1)は、道路がカーブしている場合について説明する説明図である。
図10(2)は、道路が直線の場合について説明する説明図である。例えば、
図10(1)に示すように道路が曲がっていれば、先行車両2は、回避対象3が存在しなくても操舵を行うため、車体が遠心力によりロールする。そのため、車両制御装置33は、カーブでは先行車両2の車体姿勢に変化があっても、回避運動と推定する事が難しい。
【0048】
また、
図10(1)に示すように道路が曲がっていれば、先行車両2の前方の車線のうち、遮蔽されていない範囲が大きいので、車両制御装置33は、先行車両2の前方の落下物や逆走車を、先行車両2の横の空間を通して検知することが可能である。つまり、車両制御装置33は、道路がカーブしている場合、先行車両2の挙動が回避か判断する回避推定が困難であると同時に、先行車両2の前方が検知可能なので、回避推定する必要性が低い。
【0049】
回避推定の必要性が高いのは、
図10(2)に示すように道路が直線状であって、先行車両2の前方の車線の全部、または大部分が先行車両2で遮蔽されて、検知の死角になっている場合である。また、道路が直線状であれば、車両制御装置33は、先行車両2の車体姿勢に変化があった時に回避運動と推定し易い。そこで、例えば、車両制御装置33は、先行車両2の前方の車線の遮蔽率を算出して、遮蔽率が所定の閾値以下の場合には、回避推定に基づく制御(例えば、他車両5との並走状態を解消する動作)をしない様にしても良い。または、車両制御装置33は遮蔽率を計算せず、単に曲率だけで回避推定に基づく制御をしない、と決めても良い。
【0050】
図10(1)に示すように、レーダ20やカメラ10で回避対象3を検出した場合、車両制御装置33は、直ちに回避動作の要否を判断し、要否に応じて回避するので、回避推定に基に基づく制御は必要無い、と判断する。また、車両制御装置33は、車両1の車速(自車速)が低い場合も、回避推定に基に基づく制御はしない。自車速が低ければ、回避対象3の接近速度が低いので、車両1の前方が開けて、回避対象3を検出してから回避運動を開始しても十分に間に合う。よって、車両制御装置33は、自車速が低い場合も、回避推定に基づく制御は必要無い、と判断する。
【0051】
図11は、先行車両2の挙動による回避動作の推定を説明する説明図である。車両制御装置33は、先行車両2の回避動作を、姿勢の変化以外の情報から推定しても良い。前方カメラ11の画像は、先行車両2の像と、車線境界線の像とを含んでいる。よって、車両制御装置33は、先行車両2と、その右側の車線境界線までと、先行車両2と、その左側の車線境界線までの距離とを評価する事により、先行車両2の車線内での位置(横位置)を特定できる。そして、車両制御装置33は、横位置が変わった時、横移動が行われたと判定する。
【0052】
先行車両2の横移動は、それが回避運動である場合と、車線変更等の他の運動である場合があるので、車両制御装置33は、他の条件を加えて回避運動であるか推定しても良い。例えば、車両制御装置33は、先行車両2のウインカの点灯を検知し、横位置が変化する前に、移動した方向のウインカが点灯されていた場合、回避運動であると推定する条件(推定条件)に当たらないと判定しても良い。
【0053】
回避対象3は、通常、予期せず現れるので、発見した運転手は、多くの場合、進路変更の前にウインカを点灯する余裕が無い。仮に、先行車両2が回避対象3を発見し、ウインカ点灯の後に進路変更したと仮定すると、それは、発見した時点で十分な時間的余裕があった場合であり、その場合、先行車両2は、回避対象3よりも十分に手前で横移動して回避するはずである。よって、回避対象3を検知可能になった時点で、車両1から回避対象3までの距離は、十分にある、と予想される。つまり、先行車両2にウインカを出す余裕がある場合、先行車両2による回避対象3の遮蔽が無くなり、レーダ20やカメラ10で回避対象3を検出してから回避運動を開始しても十分に間に合うはずなので、車両制御装置33は、回避推定に基づく制御をする必要が無い。
【0054】
車両制御装置33は、先行車両2の横移動が回避運動であると推定する条件(推定条件)との適合度を数値化したものを、回避確度として評価しても良い。例えば、車両制御装置33は、先行車両2が直進状態から急速な横移動を始めた場合、急ハンドルを切った、と推定できるので、回避確度を高く評価して良い。
【0055】
高速走行中の急ハンドルは危険な行為なので、通常の進路変更では行わない、よって、車両制御装置33は、急ハンドルを検出した時は、回避確度を高く評価しても良いし、先行車両2の回避運動と推定しても良い。具体的には、車両制御装置33は、急ハンドルであるほど横移動の速度の微分値が大きいので、横移動の速度の微分値を回避確度と評価しても良いし、微分値が所定の閾値を超える事を推定条件としても良い。急ハンドルの場合に先行車両2の車体の姿勢が変化するので、車両制御装置33は、先行車両2の車体の姿勢変化を検知して、これを推定条件に加えても良い。例えば、車両制御装置33は、先行車両2の車体の姿勢変化を検出したが、相応の横移動を検出していない場合、先行車両2の車体の姿勢変化は路面の凹凸などで発生したと推定し、回避確度を加算しない様にしても良い。または、車両制御装置33は、単に、横移動の速度の微分値と車体の姿勢変化量の和を回避確度としても良い。
【0056】
急ハンドルの様な高速走行中にはタブーとされる運動を検出した場合、車両制御装置33は、推定条件に当たると判定しても良いし、回避確度を高く評価しても良い。例えば、車両制御装置33は、操舵と同時に急減速している場合も、高速走行中はタブーとされる運動であるので、推定条件に当たると判定しても良いし、回避確度を高くしても良い。具体的には、レーダ20によって先行車両2の減速を接近速度の増加として検知し、同時に、前方カメラ11の画像処理によって横移動や姿勢変化を検出している場合、推定条件に当たると判定しても良いし、回避確度を高く評価しても良い。
【0057】
また、車線が無い側(道路の外)や、隣接車線に並走する他車両5が有る側に先行車両2が横移動した場合、車両制御装置33は、緊急避難的な行動と推定されるので、回避確度を高く評価しても良い。なお、車両制御装置33は、ウインカを点灯せずに横移動する場合や、ウインカの点灯が横移動と同時である場合に、回避確度を加算しても良いが、それだけで推定条件に当たると判定すべきではない。習慣、または癖として、進路変更と同時にウインカを点灯する人や、ウインカを点灯しないで進路変更する人がいるからである。この傾向は地域差があるので、回避確度に反映する係数を、地域に応じて調整しても良い。
【0058】
以上、回避推定に関わる処理について説明してきたが、回避推定に関わる処理を全て車両制御装置33で行う必要は無い。例えば、横移動の速度の微分値と車体の姿勢変化量の和を回避確度として評価する部分は、画像処理に基づく処理であるので、センサ制御装置35で行い、最終的な回避推定は車両制御装置33で行う様にしても良い。装置や機能ブロックの呼び名や、機能の振り分けは実施者の任意である。
【0059】
図12は、回避推定に基づく制御(回避準備動作)を説明する説明図である。推定条件を満たす場合、または、回避確度が所定の閾値(第一閾値)に達する場合、車両制御装置33は、先行車両2の横移動が回避運動であると推定する。これを、回避推定する、と言う。推定条件は、推定を否定する否定条件に当たらない事を含んでも良い。例えば、横移動の3秒前からウインカを点灯していた場合は、否定条件に当たるので回避推定しない。回避推定した場合、車両制御装置33は、回避推定に基づく制御として回避準備動作を行う。回避準備動作は、車両1が回避動作を安全に行える状況を作るための動作であり、車両1の方向指示器の点灯と、車両の加減速と、の少なくとも一方を含む。なお、先述の通り、方向指示器の点灯は、非常点滅表示灯の点灯であってもよい。
【0060】
図12に示すように、車両1が片側二車線の高速道路の追越車線を走行中に、回避推定した場合、走行車線に車線変更して回避対象3を避ける事が出来ればよい。しかしながら、隣接する走行車線を並走する並走車両4と並んだ状態で車線変更を行うと、車両1は、並走車両4に幅寄せを行う事になり、危険である。そこで、車両制御装置33は、回避準備動作として、進路変更を予告するウインカの点灯を行うと共に、並走状態を避ける為の加減速を行う。車両制御装置33は、並走状態を避ける為の加減速として、加速だけを行ってもよいし、減速だけを行ってもよし、加速と減速とを順に行っても良い。また、先述の通り、ウインカの点灯は、ハザードランプの点灯であっても良い。
【0061】
高速走行中の場合、加速によって得られる加速度は、減速による加速度の絶対値よりも小さい。よって、車両制御装置33は、減速した方が、より早く並走車両4と並走しない状況を作れる。但し、車両制御装置33は、一律に減速を選択するのではなく、状況に応じて加速か減速かを選択すると良い。例えば、回避推定した時の車両1の速度が、並走車両4の速度より速く、加速を続ければ並走車両4の前に出られる場合に、車両制御装置33は、加速を選択しても良い。
【0062】
図13は、並走車両4と近傍車両6とを説明する説明図である。
図13(1)は、並走車両4の一例を示す図である。車両制御装置33は、障害物や逆走車などの回避対象3との衝突を回避するため、車両1が車線変更しようとする際に、車線変更を妨げる車両の有無を判断する。車線変更は回避動作の一例である。車線変更を妨げると判断する基準は、物理的条件で設定しても良いし、心理的条件で設定しても良い。
【0063】
例えば、車線変更を妨げると判断する基準を物理的条件で設定する場合は、車両1と前後方向の位置が重なる隣接車線の車両を並走車両4としても良い。一方、車線変更を妨げると判断する基準を心理的条件で設定する場合は、前後方向に重ならなくても、ギリギリの至近距離に割込むと、危険な心理的反応を招く事があるので、車線変更すると車間距離が極めて短くなる隣接車線の車両を並走車両4に含めても良い。この場合、例えば、車両1との前後方向の距離が、前方は1m以内、後方は2m以内である車両も、並走車両4に含めても良い。
【0064】
図13(2)は、近傍車両6の一例を示す図である。車両制御装置33は、近傍を走行する近傍車両6があれば、それに配慮し、出来るだけ近傍車両6に脅威を与えない様に回避準備動作(例えばウインカの点灯)を行う。近傍車両6の範囲は、例えば、車両1との前後方向の距離が、前方は0.5車長(3m)以内、後方は1車長(6m)以内であっても良い。近傍車両6は先述した並走車両4を含み、並走車両4でもある近傍車両6は、近傍車両6と呼ばずに並走車両4と呼ぶ事がある。車線変更があった時に、脅威を感じる範囲は車速によって変わるので、例えば高速走行中は、前方6m、後方12mの範囲まで近傍車両6と判定しても良い。また、車両1との相対速度を考慮して、回避準備中(例えば3秒以内)に前記の範囲にはいると予想される他車両5も近傍車両6に含めても良い。同様に、先述した並走車両4の範囲も、車速や相対速度に応じて設定すると良い。近傍車両6と判定する範囲は、車両制御装置33が状況に応じて回避準備動作を選択するに当たって、配慮する範囲と言い換えても良い。逆を言うと、車両制御装置33が近傍車両6と判定しなかった他車両5は、状況に応じて回避準備動作を選択する際に、状況に含まれない。
【0065】
図14は、状況に応じた指示方向の選択を説明する説明図である。車両制御装置33は、回避推定した時、ウインカを出す方向(指示方向)を先行車両2の移動方向としても良いが、状況に応じて選択しても良い。例えば、
図14(1)に示すように、車両1が走行車線を走行中、先行車両2が路側帯の方向に回避運動と推定される進路変更をした時に、路側帯の幅が狭い場合は、車両制御装置33は、追越車線側を指示方向としても良い。路側帯が狭い場合、障害物を回避できても車両1が側壁等に衝突する恐れがあるし、側壁等に衝突した先行車両2が新たな回避対象になる恐れもある。つまり、先行車両2の移動方向が危険な方向である場合は、車線変更が可能な方向を選択する様にしても良い。
図14(1)に示すように、一方に回避できる可能性が無く、他方に回避できる可能性がある場合、回避できる可能性がある方向を回避方向とすると良い。追越車線側は、回避推定した時点で割込む空間が無くても、近傍車両6がウインカを見て譲ってくれれば割込めるので、回避できる可能性があると判断して良い。
【0066】
また、
図14(2)に示すように、先行車両2が回避運動と推定される進路変更をした時に、路側帯の幅が広い場合、車両制御装置33は、追越車線側にウインカを出すと良い。回避対象が走行車線上にある場合、路側帯の側に回避しても良いが、回避対象が走行車線と路側帯を塞いで停車している場合は、車両制御装置33は、追越車線に車線変更する必要がある。つまり、
図14(2)の時点では、車両制御装置33は、どちらに回避すべきか決定できない。そこで、車両制御装置33は、回避準備動作としては、追越車線への車線変更が可能になる様に、追越車線側にウインカを出す。追越車線側の近傍車両6がウインカを見て減速すれば、追越車線側に安全に回避できる可能性があり、路側帯の側には近傍車両6が無いので、どちらにも回避できる状況になる。そうすれば、車両制御装置33は、回避対象3を検出した時点で、より安全な方向を車線変更の方向として選択することが出来る。回避対象3は、落下物や停車車両である場合が大半だが、稀に逆走車である事があり、逆走車は特に危険である。停車車両は路側帯や走行車線に止まっている事が多いが、逆に、逆走車は追越車線を走ってくる事が多い。よって、車両制御装置33は、回避準備動作としては、どちら側にも車線変更が可能になる様に、車線がある側にウインカを出すと良い。路側帯には並走車両4がおらず、ウインカを出していなくても、安全上は問題無いので、回避準備動作として路側帯の側にウインカを出す必要性は無い。よって、走行車線を走行している時は、近傍車両6の有無に関わらず追越車線側を指示方向にすると良い。また、車両1の隣接車線を走行する近傍車両6が、一方の隣接車線にあって、他方の隣接車線に無い場合は、近傍車両6がある側を指示方向としても良い。これは、回避方向の選択肢を増やす目的で指示方向を選択する、と言い換えても良い。
【0067】
または、指示方向は回避運動の安全性を増す目的で指示方向を選択しても良い。
図14(3)に示すように、車両1の左右に隣接車線がある場合、車両制御装置33は、左右の隣接車線を走る他車両5を検知して、回避を妨げる並走車両4や近傍車両6が、より少ない追越車線側を指示方向としても良い。追越車線側にウインカを出しておけば、後方から接近する他車両(不図示)に対する牽制になるので、安全に車線変更できる可能性が高くなる。また、追越車線側に車線変更する可能性が高いと判断し、車線変更を事前に予告する目的でウインカを出す事も、回避準備動作として合理的である。
【0068】
または、先述の様に、回避方向の選択肢を増やす目的で指示方向を選択しても良い。この場合は、並走車両4や近傍車両6がある(または多い)側を指示方向として選択する事になる。(3)の場合、追越車線側は並走車両4があるが、並走車両4の後方の空間が空いているので、必要があれば右側に回避する事も出来る。そこで、車両制御装置33は、回避準備動作としては、左側にも車線変更が可能になる様に左側にウインカを出す、と言う選択である。または、車両1の隣接車線を並走する並走車両4が、一方の隣接車線にあって、他方の隣接車線に無い場合は、並走車両4がある側を指示方向とする、と言い換えても良い。
【0069】
いずれにせよ、車両1の左右に隣接車線がある場合は、左右の近傍車両との位置関係を評価し、目的に合う方向を指示方向として選択すれば良い。どちらを指示方向に選択しても、ウインカを出した方が、出さない場合よりも、安全に回避できる可能性が高くなる。また、他車両5の状況が、左右の車線で同じ場合、車両制御装置33は、左側を指示方向にすると良い。左側通行していると思い込んだ無自覚な逆走車が、右端車線を走行して来る事例が多いので、左側に回避できる様にした方が、確率的に有利である。
【0070】
図14(4)に示すように、車両1が追越車線にいる場合、車両制御装置33は、走行車線の側を指示方向にする。左の走行車線側には並走車両4と近傍車両6がいるが、右に車線変更できる可能性は無いので一択である。回避推定した時点で走行車線に割込む空間が無くても、ウインカを見て譲ってくれる人もいるため、ウインカを点灯させる事により安全に車線変更できる可能性が生まれる。
【0071】
回避対象3が落下物や停車車両である場合、車両制御装置33は、回避対象3の手前で停止すれば衝突を回避できるので、回避方法は減速や停車であっても良い。しかしながら、回避対象3が逆走車である場合、車両制御装置33は、回避対象3の進路上から移動しないと衝突を回避できない。回避対象3が逆走車であると判った時に車線変更しようとしても、移動先の車線に車両1が割り込む空間が無い事があるので、車両制御装置33は、回避準備動作として事前にウインカで報知しておくことにより、割込ませて貰える可能性を大きくする。つまり、回避対象3が逆走車である場合は、回避対象3の進路を避ける必要があるので、車両1が割り込む空間を作る目的でウインカを出す。先述の様に、回避方向の選択肢を増やす目的で指示方向を選択する場合、次に示す自由度の尺度で指示方向を選択しても良い。
【0072】
例えば、衝突を回避する為の回避動作が行える方向の数や、回避動作が行える可能性を自由度と呼び、ウインカの点灯により自由度が増加する方向を指示方向に選択する様にしても良い。例えば、
図14(1)や(4)の様に、片側に側壁がある場合、側壁の方にウインカを点灯しても自由度は増えないので、車両制御装置33は、側壁と逆の側でウインカを点灯して自由度を増やす事を図る。
図14(2)の場合、路側帯の側には自由度があるので、車両制御装置33は、追越車線側で自由度が増える様にウインカを点灯させる。
図14(3)の場合、追越車線側には自由度があるので、車両制御装置33は、走行車線側で自由度が増える様にウインカを点灯させる。このように、自由度が増えると期待できる側でウインカを点灯すると、そのウインカを見た並走車両4や近傍車両6が車両1を避ける方向に運動し、自由度が増す(つまり、車両1が割り込める空間が増える)事になる。
【0073】
なお、指示方向として左右の一方を選択する事は必須でない。具体的には、指示方向として左右両方を選択して、ウインカを点灯する代わりに、ハザードランプを点灯させても良い。ハザードランプを点灯させる場合は、指示方向を一方に選択する必要が無いので、制御を容易にする目的でハザードランプを点灯しても良い。先述の通り、ハザードランプを点灯した状態は、左右両方のウインカを点灯させた状態と同じである。つまり、左右両方に並走車両がある場合、右側の並走車両からは車両1が右に車線変更して来る様に見え、左側の並走車両からは車両1が左に車線変更して来る様に見えるので、左右の並走車両を車両1から遠ざける効果が得られる。そこで、左右両方に並走車両がある場合は、左右両方を指示方向として、ハザードランプを点灯させても良い。または、ハザードランプを点灯させた場合、指示方向は左右両方である、と言い換えても良い。
【0074】
車両制御装置33は、回避推定した場合、状況に応じた回避準備動作を行う。車両1が並走車両4と並走する並走状態であると、回避動作が妨げられる恐れがあるので、車両制御装置33は、回避準備動作として、並走状態を避けるために、指示方向の車線を走行する並走車両4の位置に応じて加減速を制御する。例えば、
図14(4)に示すように、左側を指示方向とし、近傍車両が車両1と並ぶ並走車両4を含む時は、車両制御装置33は、左側に進路変更する前提で、回避動作が妨げられない位置に移動する為の加減速を行い、左側車線を走行する並走車両4との並走状態を避ける。加減速の選択を速度方針と呼ぶ事にすると、車両制御装置33は、回避であると推定した時に、車両の速度制御の方針を示す速度方針を、車両の隣接車線を走行する近傍車両の位置に応じて設定し、近傍車両が車両と並ぶ並走車両を含む時は、速度方針として加速、または減速のいずれかを選択し、速度方針に基づいて加減速を指示する、と言い換える事が出来る。
【0075】
図15は、状況に応じた前後方向の移動を説明する説明図である。車両制御装置33は、回避推定した場合に、回避準備動作として、車両1を前後方向に移動させる制御を行う。前後方向に移動させる目的は、直ちに回避運動を行える位置に移動する為であり、並走車両4がある時は、車両制御装置33は、並走車両4より前方、または並走車両4より後方に位置する為に、加速、または減速を速度方針として選択する。
【0076】
車両制御装置33は、並走車両4と車両1との位置関係、または、並走車両4と車両1との速度差、の少なくとも一方と、車両1の速度に応じて速度方針を選択し、車両1の速度が速い時は、車両1の速度が遅い時よりも、速度方針として減速を選択し易くすると良い。一般に、高速走行中に車速を変化させる場合、加速するより減速する方が車速を変化させ易く、速度が速いほど加速が難しいからである。例えば、並走車両4と前後方向の位置が一致している並走状態から、加速して1車長分、前方に出るよりも、減速して1車長分、後方に下る方が、車両1は、より早く並走状態を解消できる。そこで、車両制御装置33は、車両1が並走車両4より所定の長さ閾値を越えて前方に出ている場合は加速させ、車両1が並走車両4より前に出ていても長さ閾値以下の場合は減速させても良いし、車両1の速度が大きいほど長さ閾値を大きく設定しても良い。また、車両1の速度が所定の速度閾値以上の時は、並走状態なら一律に減速を選択する様に速度方針の選択条件を設定しても良い。
【0077】
また、車両制御装置33は、並走車両4と車両1との速度差に応じて速度方針を決めても良い。並走車両4と前後方向の位置が一致しているが、車両1が並走車両4を追い越している途中であって、車両1と並走車両4の速度差が大きい場合、車両1は、減速するよりも加速を続けた方が、より早く並走状態を解消できる。または、例えば、車両制御装置33は、加速して1車長分、前方に出るのに要する時間と、減速して1車長分、後方に下るのに要する時間とを、並走車両4と車両1との位置関係と、並走車両4と車両1との速度差と、車両1の速度と、の全てに基づいて算出した上で比較し、並走状態を早く解消できる方を選択しても良い。
【0078】
また、車両制御装置33は、並走車両4が無い時は、加速でも減速でもなく、速度や位置を維持する事を速度方針(維持方針)としても良い。維持方針による速度制御は、そのままの速度を維持する速度維持と、他の車両との相対位置を維持する位置維持を含む。速度方針が維持方針である場合、例えば、前方の近傍車両6と並走状態になる事を避ける為の減速を行ったり、駆動力(加速力)を用いて、減速した後の速度回復(速度維持)を行ったり、後方の近傍車両6と並走状態になる事を避ける為の加速を行ったりするので、維持方針による速度制御は、動作として加速や減速を含むと言える。以下、減速を速度方針とする場合を減速条件、加速を速度方針とする場合を加速条件、速度や位置の維持を速度方針とする場合を維持条件と呼んで、個々に説明を加える。
【0079】
例えば、
図15(1)に示すように、並走車両4を含む車列が指示方向に形成されている場合、加速よりも減速の方が容易なので、車両制御装置33は、車両1を加速して並走車両4の前方の隙間P1に向かわせるのではなく、減速させて後方の隙間P2に並ぶ位置まで後退させる。つまり、
図15(1)の状態では減速条件が成立していて、速度方針として減速が選択される。
図15(1)の状態でも並走車両4があるので、減速条件が成立している。そして、
図15(3)に示す位置まで車両1が移動すると、並走車両が無いので維持条件が成立し、速度方針として維持が選択されて、車両制御装置33は、車両1が隙間P2に並ぶ位置を維持するように加減速を制御する。車両1は、減速して隙間P2に並ぶ位置まで後退してきたので、そのままの速度では後方の近傍車両6と並走する位置まで後退してしまう。そこで、車両1が後方の近傍車両6と並走状態になる事を避けるため、車両制御装置33は、車両1を加速させる事により速度を回復させ、隙間P2に並ぶ位置を維持させる。その後、加速し過ぎて隙間P2の中央より前に出た時には、車両制御装置33は車両1を減速させて、隙間P2の真横の位置まで後退させる。つまり、速度方針が維持(位置維持)である場合、車両制御装置33は、隙間との位置関係に応じて、車両1を加速させたり減速させたりする事により、並走車両が無い状態を維持する。
【0080】
回避推定に基づく回避準備動作の速度制御は、次の様に整理しても良い。例えば、減速条件は、指示方向に車両1と前後に重なる並走車両4がある事とする。車両1が並走車両4と並走していると、直ちに回避運動を行なう事は出来ないので、車両制御装置33は、減速させて、他車両5より後方に車両1を移動させる。維持条件は、指示方向に近傍車両6があるが、車両1と前後に重なる並走車両4ではない事とする。車両制御装置33は、維持条件を外れて近傍車両6と並走状態になると、直ちに回避運動を行う事が出来ない状態になるので、近傍車両6と前後に重なる事を避ける方向に車両1を加減速させる事により、近傍車両6との位置関係を維持させる。この場合分けでは、近傍車両がある場合には、減速条件でなければ維持条件が成立するので、加速条件が成立する場合が無い。しかし、維持条件の場合に車両1が後方の近傍車両に接近し、前後に重なる恐れがある時に加速させる制御を行うならば、加速条件は無くても問題ない。または、車両1の後方に近傍車両があって、前後の距離が閾値以下の場合に加速条件が成立し、近傍車両があって減速条件も加速条件も成立しない場合を維持条件としても良い。
【0081】
例えば、
図15(1)及び(2)の場合、減速条件が成立しているため、車両制御装置33は、車両1を減速させる。
図15(3)の場合、減速条件が不成立であり、維持条件が成立するため、車両制御装置33は、近傍車両6と重ならない位置を保つように速度を制御する。
【0082】
一方、並走車両4や近傍車両6が無く、加速条件、減速条件、維持条件のいずれも成立しない場合、車両制御装置33は、他の条件に応じて速度制御を行ってもよい。例えば、車両1の側方から後方にかけて他車両5が無い場合、並走車両4や近傍車両6との位置関係を条件とする、加速条件、減速条件、維持条件のいずれも不成立のため、車両制御装置33は、車速が最低速度(例えば時速60km)を超えている事を条件として減速しても良い。車両制御装置33が、車両1を予め減速させておけば、落下物や逆走車などの回避対象3があった時も、回避対象3に遭遇するまでの時間が長くなるので、より安全に回避することができる。
【0083】
その際に、回避確度に応じて減速の度合いや、最低速度を変えても良い。例えば、回避確度が、回避推定の閾値より少し高い程度であり、回避推定が誤りである確率が高い場合、車両制御装置33は、減速を緩やかにしたり、減速しない様にしたりする事により、誤推定だった場合の不利益を抑制しても良い。逆に、先行車両が急ハンドルと同時に急減速した場合等、回避確度が高い場合には、速やかに減速した方が安全である。なお、減速させた事により後方の他車両5と接近する結果になった場合は、その時点で維持条件が成立するので、車両制御装置33は、並走状態にならない様に再加速すれば良い。
【0084】
以上、指示方向の近傍車両6の位置に応じて加減速させる制御を説明したが、車両制御装置33は、指示方向の近傍車両6に限定せず、左右の近傍車両6の位置に応じて加減速させても良い。例えば、車両制御装置33は、左右の並走車両4の数が最小になる様に最小になるように加減速させても良い。先述の自由度は、左右の並走車両4の数が最小になる時に最大になる。左右に並走車両4が無ければ、回避対象の位置や進路に応じて最適な方向に回避する事が出来る。
図14(3)の場合、車両1の左右を走行する並走車両4の数は2であるが、車両1を減速して後方に移動すると、並走車両4の数が2→1→0→1と変化するので、車両制御装置33は、速度方針として減速を選択した後、並走車両の数が0になった時点で維持方針に切り替え、並走車両が無い状態を維持すれば良い。
【0085】
また、並走車両4の数を評価して加減速する場合、車両制御装置33は、車両1との前後関係に応じて重み付けを変えて評価し、並走車両4の台数に重みを掛けた値を妨害度と呼んで、妨害度が最小になる様に加減速を制御しても良い。例えば、車両制御装置33は、車両1の真横の並走車両4の妨害度を1,車両1より前方の並走車両4の妨害度を0.7、車両1より後方の並走車両4の妨害度を0.4と評価しても良い。真横の並走車両4の妨害度を高く評価する理由は、前後にずれている場合よりも車線変更を妨げるからである。前方の並走車両4の妨害度を後方よりも高く評価する理由は、後方の並走車両4の場合は、車両1が車線変更する際に減速して避けて貰えると期待できるのに対し、前方の並走車両4の場合は、後方で車両1が車線変更する事に気づかず、避けて貰えない可能性が高いからである。
【0086】
図15において、隙間P1や隙間P2の幅が車両1の車長よりも少し短い場合、車両1は、どの位置でも1台以上の近傍車両6と並走状態になる。高速走行中に車間距離が1車長未満になる事は稀であるが、分離路の渋滞が走行車線まで伸びている場合には、車間距離が1車長未満に詰まる事がある。その様に、1台以上と並走状態になる事が避けられない場合は、
図15(3)の様に、前方の近傍車両6とは重ならず、前方の近傍車両6の後端を車両1の先端が追尾する様に加減速を制御する。例えば、車両の車長を基準とする隙間閾値(例えば1車長)を設けて、指示方向の隣接車線に、車両より後方の後方車両と、車両より前方の前方車両とがあり、前方車両と後方車両の間の隙間が、車両の車長を基準とする隙間閾値より長い場合は、前方車両と後方車両との隙間に車両が並ぶように加減速させること速度方針とし、隙間が隙間閾値より短い場合は、車両の前端が前方車両の後端を追尾する様に加減速させることを速度方針としても良い。
【0087】
または、
図15(3)の状態から前進して前方の近傍車両6と前後に重なる場合は減速させ、
図15(3)の状態から後退して後方の近傍車両6と前後に重なる場合は加速させるが、両方に該当する場合は、減速させる事を優先する様にしても良い。いずれの制御でも、車両1の前端が前方の近傍車両6の後端を追尾する(つまり、前方の近傍車両6と重ならない範囲で後方の近傍車両6との重なりを小さくする)位置を維持できる。すると、例えば、走行車線を走る逆走車が接近して来た場合、車両制御装置33は、直ちに車両1の先端を前方の近傍車両6の後方に突っ込ませる事により、正面衝突を回避する事が出来る。この時、後方の近傍車両6が緊急制動を掛ければ、後方の近傍車両6とも接触せずに済む。この妨害度は先に述べた自由度の逆に当たるので、自由度が最大になる様に加減速を制御する、と言い換えても良い。
【0088】
先行車両2が回避運動と推定される進路変更をした場合、車両制御装置33は、回避準備動作として、灯火制御部334に点灯指示を出力してウインカを点灯させる。車両制御装置33は、車両1が回避運動を行える可能性を増す事を目的にウインカを点灯するが、直ちにウインカを点灯させるよりも、点灯を遅延させた方が良い場合がある。そこで、車両制御装置33は、方向指示器を点灯させる点灯タイミングを、速度方針と、車両1の周辺の状況とに応じて制御し、速度方針が減速であり、かつ、指示方向の隣接車線に並走車両4がある場合は、並走車両4と車両1との位置関係に応じて、ウインカ点灯の指示を遅延させる。
図16は、状況に応じたウインカ点灯の指示の遅延を説明する説明図である。
図16(1)に示すように、車両制御装置33は、指示方向に車両1と前後に重なる並走車両4があり、速度方針が減速であって、かつ車両1が並走車両4より先行する場合に、ウインカを出す指示タイミングを遅延する。このように、ウインカを出す指示タイミングを遅延させる条件を遅延条件と呼称する。例えば、遅延条件は、車両1が並走車両4より先行した位置から減速する事である。すなわち、車両制御装置33は、車両1が並走車両4より先行した位置から減速する場合に、遅延条件が成立すると判定する。
【0089】
図16(1)に示すように、指示方向に車両1と前後に重なる並走車両4があり、並走状態を解消する目的で減速する場合において、車両1が並走車両4より先行した位置でウインカを点灯すると、並走車両4の運転手は、車両1が幅寄せすると思って減速する。すると、車両1は、並走車両4と共に減速することになるため、並走状態の解消が遅れる事になる。そこで、車両制御装置33は、車両1が並走車両4より後方になるまで点灯を遅延させる。なお、
図16(1)の位置関係から車両1を加速させる事により並走状態を解消する場合は、遅延条件が成立しないので、車両制御装置33はウインカの点灯を遅延させない。並走車両4の運転手がウインカの点灯を視認して減速した場合、加速する車両1との並走状態が、より早く解消されるので、点灯の遅延は必要なく、直ちに点灯した方が良い。
【0090】
図16(2)に示すように、車両1より前方に並走車両4がある場合、並走車両4の運転手の視界に車両1が映らないので、遅延条件が成立せず、車両制御装置33は、直ちにウインカを点灯させる。
図16(1)の状態から減速して
図16(2)の状態になる場合、車両1が並走車両4の真横を通り過ぎた時点で遅延条件が成立しなくなるので、その時点でウインカを点灯させれば良い。
【0091】
図16(3)に示すように、車両1の後方であって車両1と並ばない位置に、並走車両4ではない他車両5がある場合、減速を行わないので、遅延条件が成立せず、車両制御装置33は、直ちにウインカを点灯させる。
【0092】
図16(4)に示すように、車両1の前方であって車両1と並ばない位置に、近傍車両6がある場合、又は、他車両5が無い場合、遅延条件が成立せず、車両制御装置33は、直ちにウインカを点灯させる。なお、車両制御装置33は、減速条件や加速条件との関係で遅延条件を設定しても良い。例えば、
図16(1)の位置関係で加速条件が成立し、加速する事により並走状態を解消するなら、遅延条件は成立しない。車両制御装置33は、並走車両4の運転手の視界内に車両1のウインカがあって、ウインカの点灯を見て減速されるのを避ける事が点灯遅延の目的なので、減速条件が成立し、かつ、車両1の先端が並走車両4の運転手の視界内にある事を遅延条件としても良いし、あるいは、減速条件が成立し、かつ、車両1と並走車両4の重なりが車長の半分以上ある事を遅延条件としても良い。
【0093】
回避推定に基づく回避準備動作を行わせた後、車両の進行方向に回避対象を検出した場合、又は、回避確度が、第1の閾値(回避推定の閾値)より大きい第2の閾値(回避断定の閾値)を超える場合に、車両制御装置33は、回避断定を行い、回避断定に基づく回避動作を指示して、車両1に回避運動を行わせる。
図17は、回避断定と回避動作を説明する説明図である。先行車両2の横移動が回避運動であると断定すべき条件(断定条件)を満たす場合、または、回避確度が所定の閾値(第二閾値)に達する場合、車両制御装置33は、先行車両2の横移動が回避運動であると断定する。また、先行車両2の横移動が回避運動であると断定することを、回避断定と呼称する。そして、回避断定した場合、車両制御装置33は、車両1に回避動作を行なわせる。回避動作は、回避対象3を避ける動作である。また、回避動作には、回避対象3だけでなく、並走車両4や近傍車両6との接触を避ける動作も含まれる。
【0094】
例えば、
図17は、片側二車線の高速道路の追越車線を車両1が走行している時に、先行車両2の横移動を検出して回避推定し、回避準備動作としてウインカを点灯すると同時に減速して、並走車両4の後方の隙間に並ぶ位置に移動する途中の場面を表した図である。ここで、先行車両2の前方に回避対象3を検出したので、車両制御装置33は、回避断定する。すなわち、車両制御装置33は、回避対象の検出により断定条件が満たされたと判定する。回避断定すると、車両1は、回避断定に基づく回避動作を行う。例えば、
図17に示すように、車両1の隣接車線に並走車両4が走行している場合は、車両1は、更に減速した上で、舵角を変えて進路変更し、並走車両4と近傍車両6との隙間に退避する。
【0095】
車両制御装置33は、衝突予想時間に応じて、進路変更するタイミングを調整しても良い。例えば、回避対象3が停止車両であって、時間余裕が十分にある場合、車両制御装置33は、ウインカを点灯した時点から3秒経過するまで待って進路変更すれば良い。その間に、並走車両4と近傍車両6の間の隙間に並ぶ位置まで後退した上で進路変更すれば、スムーズに回避できる。回避対象3が逆走車であって、衝突が差し迫っている場合は、車両制御装置33は、直ちに進路変更を開始すると良い。このように衝突が差し迫っている場合は、ウインカを法規通りに進路変更の3秒以上前から点灯していなくても、緊急避難として許容される。回避の際に並走車両4に接近する恐れがあるが、接触しなければ良い。
【0096】
前述の様に、断定条件は、逆走車や停止車両などの回避対象3を検出した場合を含む。しかし、レーダ20では小動物や子供を検知できない事があるので、車両制御装置33は、他の条件で回避断定しても良い。例えば、レーダ20では路面の陥没を検知できない事があるが、前方の先行車両2が迂回している事が明白であれば、車両1は、前方の先行車両2に倣って迂回すべきである。そこで、車両制御装置33は、回避確度が高く、何らかの危険が予想される場合、回避対象3の検出が無くても回避断定して良い。
【0097】
例えば、前方の先行車両2とは別の他車両5も、閾値を超える横移動を行っている場合、車両制御装置33は、先行車両2だけが横移動している場合よりも、回避確度を高く評価しても良い。横移動を検知する対象は、例えば、隣接車線を走行する他車両5でも良いし、先行車両2の更に前方を走行する他車両5でも良い。レーダ20及びセンサ制御装置35は、先行車両2の更に前方を走行する他車両5の動きを検知できる事があるし、前方カメラ11で捉えた先行車両2の像の横に、更に前方の他車両5の像が捉えられる事もある。このように、先行車両2だけでなく、他車両5も回避運動の推定条件に当たる横移動している場合、車両制御装置33は、回避確度を高く評価する。
【0098】
更に、車両制御装置33は、横移動の速度の変化率の変化率が大きい、横移動の前にウインカの点灯がない、横移動と同時に急減速している、等の推定条件に適合する動作を検出した場合、回避確度を加点する。
【0099】
また、車両制御装置33は、車線境界線をまたいで走行する他車両5がある等の回避運動特有の動作を検出した場合は、回避確度を大きく加点しても良い。その結果、回避確度が所定の閾値(第二閾値)に達する場合、車両制御装置33は、先行車両2の横移動が回避運動であると断定しても良い。例えば、先行車両2がウインカを点灯せず、車線境界線をまたいだまま走行している場合、車両制御装置33は、レーダ20等で検知できない回避対象が車線上に有ると推定して、回避運動であると断定しても良い。
【0100】
また、車両制御装置33は、回避対象3の検出の有無に応じて回避動作を変えても良い。例えば、車両制御装置33は、回避対象3を検出していない場合、先ず車両1を減速させても良い。減速すると、車両制御装置33は、回避対象3があった時に衝突するまでの時間が長くなるので、回避できる可能性が高くなる。減速して検知を続けるうちに回避対象3を検出することがあるので、回避対象3を検出した場合は、車両制御装置33は、検出した回避対象3に応じた回避動作を実行すれば良い。回避動作として車線変更を行う場合、車両制御装置33は、予め減速してあると、より安全に車線変更が出来る。但し、車両制御装置33は、過度に減速すると、車線変更に要する時間が長くなるので、速度に下限を設けると良い。
【0101】
図18は、状況に応じた回避方向の決定を説明する説明図である。なお、以下の
図18の説明では、車両1の周辺の近傍車両6を、並走しているか否かで区別せず、まとめて他車両5と呼んでいる。つまり、近傍車両6や並走車両4は、他車両5に含まれる。車両制御装置33は、検出した回避対象3が逆走車であった場合、逆走車の予想進路を避けて回避方向を決定するべきである。
図18(1)に示す状態において、車両1が右側前方の他車両5の後方(追越車線)に回避した場合、車両1は、回避対象3と衝突するか、または回避対象3と衝突した他車両5に追突してしまう可能性が高い。車両制御装置33は、回避対象3が車両1の正面に向かってきている場合、回避対象3の予想進路は追越車線側であると推定しても良い。つまり、逆走車が真正面から接近する場合に、車両制御装置33は、走行車線側を回避方向として回避させると良い。逆走車(回避対象3)は、対面通行と誤解して逆走を自覚せずに走行している場合が多いので、対向車(車両1)と向き合った場合、走行車線と考えている側(実際には追越車線)に車線変更する事が多い。よって、車両制御装置33は、逆走車が真正面から接近する場合、回避対象3は追越車線側に進路をとると予想する。
【0102】
また、車両制御装置33は、先行車両2が進路変更した方向と逆の方向を、逆走車の予想進路と推定しても良い。例えば、
図18(1)に示すように、車両制御装置33は、先行車両2が進路変更した方向と逆の方向を逆走車の進路と推定しても良い。つまり、車両制御装置33は、先行車両2が進路変更した方向を回避方向として選択しても良い。仮に、先行車両2が進路変更した方向と同じ方向に進路変更し、逆走車も同じ方向に進路変更した場合、逆走車は、先行車両2にまず衝突する。車両1は、その後で衝突事故に巻き込まれる恐れがあるが、その形態は追突事故になる可能性が高い。例えば、先行車両2が進路変更した方向と逆の方向に車両1を進路変更させて、車両1が逆走車と正面衝突した場合と比較すると、衝突対象との速度差が小さい分だけ、車両1が受ける衝撃は小さくなると期待できる。
【0103】
車両制御装置33は、回避推定した時点で指示方向のウインカを点灯させる。すると、指示方向の他車両5は、車両1が進路変更を行うことを予想して減速し、車両1が入り込める隙間が形成される可能性がある。しかし、回避断定した時点で、車両制御装置33が、目的とする隙間が必ずしも空いているとは限らない。例えば、
図18(2)に示すように、ウインカを点灯した右側車線に、車両1が割込む隙間が無い事がある。
【0104】
一方の進路変更が容易で、他方の進路変更が容易でない場合に、車両制御装置33は、指示方向に関わらず、進路変更が容易な側を回避方向にしてもよい。進路変更が容易な側とは、車両1が走行可能な側であって、そちらに側に進路変更しても他車両5と接触する恐れが無い側である。進路変更が容易な側は、前述の自由度がある側と言い換えても良い。
【0105】
図18(2)に示すように、車両1の左側の路側帯が広い場合、車両制御装置33は、道路左側を進路変更が容易な側と判定してもよい。また。
図18(3)に示すように、路側帯の幅が狭く、側壁が近い場合、車両制御装置33は、道路左側を進路変更が容易とは判定しない。
【0106】
図18(3)又は(4)に示すように、車両制御装置33は、車両1の左右いずれにも進路変更が容易でない場合、指示方向を回避方向と判定する。
図18(4)の場合、車両1は、右側にウインカを出しているので、右側の方が車両1の進路変更に対応して隙間を開けて貰える可能性があり、隙間が空かない場合も、幅寄せがある事を予想して車両1を避けて貰える可能性が高い。
【0107】
なお、車両制御装置33は、車線がある側を指示方向に選択するので、
図18(3)の場合に、側壁方向を指示方向に選択することは無く、車両1を側壁方向に進路変更させることも無い。
図18(2)の場合も、同じ理由で側壁方向を指示方向に選択しないが、側壁方向に走行可能な路側帯があるので、回避方向として選択している。この場合、進路変更する側にウインカを出していないが、緊急避難として許容されるので問題ない。
【0108】
また、車両制御装置33は、左右いずれにも進路変更が容易である場合、指示方向を回避方向と判定する。指示方向と異なる方向への進路変更は、緊急避難に当たる場合に限り許されるので、そうでない場合、車両1は、指示方向に進路変更すべきである。なお、ハザードランプを点灯している場合は、指示方向は左右両方であるので、回避対象の位置や進路など、他の条件で回避方向を決定すれば良い。法規上、ハザードランプは方向指示器と見做されないので、回避方向のウインカだけを点灯するよう、灯火指示を変更する必要がある。進路変更と同時に方向指示器を点灯しても、法規の要求を満足しないが、出来るだけ法規の要求に近づけた方が、より安全である。
【0109】
図18(3)又は(4)の様に、左右いずれにも進路変更が容易でない場合であって、回避対象3が逆走車ではなく、不動物(落下物や停車車両)であった場合、車両制御装置33は、操舵による回避でなく、緊急制動により危険を回避しても良いし、限定的な操舵と緊急制度の両方により危険を回避しても良い。例えば、車両制御装置33は、自車量を減速すると共に、車線境界線を越えない範囲で進路変更しても良い。いずれにせよ回避対象3を迂回する必要があるので、車両制御装置33は、ウインカを点灯した側に車両1を移動させて、並走車両4に隙間を開けて貰えるようにする。
【0110】
図19は、緊急制動による回避と回避タイミングを説明する説明図である。
図19では、回避対象3は、走行車線上で停止した車両である。車両制御装置33は、検出した回避対象3や、回避断定した時の状況に応じて回避動作を選択しても良い。例えば、
図19に示すように、進路変更を行う事が困難な場合、車両制御装置33は、停止した回避対象3を検出して回避断定した時に、緊急制動で危険を回避させても良いし、進路変更と緊急制動との両方で回避させても良い。
【0111】
車両制御装置33は、検出した回避対象3と衝突する可能性を評価する衝突判定を行い、衝突判定で衝突を予測した時に緊急制動を実行させる。この時、操舵により衝突を回避出来る場合に、車両制御装置33は、操舵による回避を行わせ、緊急制動は実行させない。一方、車両制御装置33は、並走車両4が隣接車線を走行している場合など、車線内でしか横移動できない場合は、操舵では衝突を回避出来ないと判定し、緊急制動を実行させても良い。
【0112】
車両制御装置33は、操舵による回避が困難であり、回避対象3が停止車両の様な固定物であって、緊急制動すれば回避対象3の前で停止できる場合は、先ず、減速させると良い。減速すれば衝突までの時間が増加するので、進路変更を急いで並走車両4と接触する危険を冒したり、方向指示に関する法規に違反したりする必要は無い。緊急制動しても回避対象3の前で停止できない場合も、車両制御装置33は、先ず減速させ、進路変更が可能な状態になるのを待つと良い。例えば、回避断定した時点で、ウインカを点灯してから3秒未満である場合、車両制御装置33は、先ず車両1を減速させて、衝突までの時間を増加させる。そして、ウインカの点灯から3秒以上が経過して、隣接車線が進路変更に適した状況になった時に進路変更させれば良い。また、並走車両4との並走状態が解消できない場合も、車両制御装置33は、操舵を併用する事により衝突を回避させる。例えば、車両制御装置33は、車線境界線を越えない範囲で進路変更して、並走車両4が車両1を避けるよう促し、並走車両4が車両1を避けた時に、並走車両4と接触しない範囲内で更に進路変更させて、回避対象3と接触しない位置まで車両1を車幅方向に移動させる。
【0113】
回避対象3が逆走車の様な接近物である場合、衝突までの時間が少なく、回避対象3の進路から直ちに逃れる必要があるので、車両制御装置33は、並走車両4があっても速やかに進路変更させる。この時、車両制御装置33は、並走車両4と接触しない事よりも、回避対象3との衝突を回避する方を優先して良い。相対速度の違いから、回避対象3と衝突する方が、車両1が受ける衝撃が大きいからである。
【0114】
車両制御装置33は、衝突の可能性が無くなった時に回避動作を終了させる。回避対象3を検出した場合、その時点で車両制御装置33は回避動作を開始し、回避対象3の無い車線に移動した時点、又は、回避対象3の位置を通過した時点、又は、停車した時点で回避動作を終了させる。例えば、回避対象3が逆走車の場合、逆走車とすれ違った時点で車両制御装置33は回避動作を終了させる。回避動作を終了させる場合、車両制御装置33は、例えば、車両1が走行していた車線の中央に、車両1を進路変更させる。
【0115】
車両制御装置33は、回避対象3を検出していないが回避動作を開始した場合、回避対象3の想定位置を通過した時点で回避動作を終了させる。車両制御装置33は、回避動作を開始した理由に応じて回避対象3の想定位置を設定する。例えば、回避対象3の想定位置は、回避推定した時の先行車両2の位置から、進行方向に100m進んだ位置でも良い。例示した100mは、レーダ20の検知可能距離に対応する。すなわち、車両制御装置33は、レーダ20が検知可能な最長の位置を、回避対象3の想定位置としてもよい。
【0116】
例えば、回避推定した時の先行車両2までの車間距離が60mの場合、回避推定した位置から160m進んだ地点で、車両制御装置33は回避対象3の横を通過したと判定する。また、先行車両2が車線区分線をまたぐ位置まで移動した事を理由として回避動作を開始した場合、先行車両2が車線の中央に戻った時点で、先行車両2は回避対象を通り過ぎている、と推定できる。この場合は、先行車両2が車線の中央に戻った地点を車両1が通り過ぎた時点で、回避動作を終了すれば良い。このように、回避対象3を検出していない場合、車両制御装置33は、回避対象3が存在しうる推定範囲を設定し、その推定範囲を車両1が通過した時点で回避動作を終了させる。
【0117】
回避動作を終了する条件に適合しない場合、車両制御装置33は、回避動作を継続させる。例えば、回避対象3の回避の為に車線変更を開始した場合、車線変更が完了するまでが回避動作である。すなわち、車両制御装置33は、車線変更が完了するまで回避動作を継続し、車線変更が完了した場合に回避動作が終了したと判定する。回避対象3が逆走車の場合、回避対象3の進路が変わる事があるので、車両制御装置33は、逆走車とすれ違うまで回避動作を継続させ、逆走車の進路を避ける様に操舵制御を続けると良い。
【0118】
回避動作を終了した時に走行中であってウインカを点灯している場合、車両制御装置33は、ウインカを消灯して走行を継続すれば良い。停車により回避動作を終了した場合、車両制御装置33は、ハザードランプを点灯し、運転手の判断で走行を再開しても良い。例えば、回避動作を終了した時に車線中央からオフセットした位置を走行している場合、車線中央に戻るように進路変更すると良い。その場合、進路変更に先立って、車線中央の側のウインカを点灯させる必要がある。このような通常状態に戻すための動作を、例えば復帰動作と呼んで、復帰動作を回避動作の後で行わせる様にしても良いし、通常状態に戻るまでが回避動作であると定義して、復帰動作を回避動作に含めても構わない。
【0119】
先行車両2の挙動が回避対象の回避であると推定する回避推定を行い、回避推定に基づいて回避準備動作を開始した後、そのまま回避断定に至らない場合がある。その様な場合には、車両制御装置33は、回避準備動作を収束させるための収束判定を行い、収束判定に基づいて回避準備動作を収束させる。
図20は、回避動作でない場合の収束判定を説明する説明図である。例えば、先行車両2の急ハンドルによる横移動を検出し、回避推定して回避準備動作を開始した後、先行車両2がウインカを点灯し、前方の領域R4が検知可能になっても障害物を検出しない場合、車両制御装置33は、回避断定を行わない。また、先行車両2の大きな姿勢変化を検出して回避推定した後も、先行車両2が車線中央を走り続けている場合、車両制御装置33は、回避断定を行わない。このように、車両制御装置33は、回避と推定する理由の積み増しが無い場合や、回避と推定した理由を打ち消すような挙動を検出した時は、回避動作でない(回避推定が誤推定だった)、と判定(収束判定)しても良い。
【0120】
また、車両制御装置33は、時間や距離に基づいて収束判定を行っても良い。例えば、時速60km以上で走行する場合、車間距離は、時速をメートルに置き換えた値(時速60kmなら60m)が良いとされる。時速60kmで走行する場合、回避推定した時に先行車両2が居た位置を車両1が通過するまでに3.6秒を要する。そこで、回避推定してから4秒経過し、回避推定した時に先行車両2が居た位置を通り過ぎているのに回避対象3を検出しない場合、車両制御装置33は、回避動作でない、と判定(収束判定)しても良い。
【0121】
なお、回避推定した事に応じて減速した場合、先行車両2が居た位置に車両1が達するのが遅くなるので、車両制御装置33は、収束判定するまでの時間を割り増し、例えば回避推定から5秒後に収束判定しても良い。または、車両制御装置33は、回避推定した時に先行車両2が居た位置を基準として判定する地点に決め、その地点を通過した時点で収束判定する様にしても良い。車両制御装置33は、回避動作でないと判定した場合、回避準備動作を収束させる収束動作を行う。つまり、車両制御装置33は、回避準備動作を開始した後、回避断定しないまま、所定地点を通過した時、または、所定距離を走行した時、または、所定時間が経過した時に、回避準備動作を収束させる収束方針を設定し、収束方針に応じて収束動作を行ってもよい。
【0122】
例えば、車両制御装置33は、回避準備動作として方向指示器を点灯させている場合、収束動作として方向指示器の消灯を行う。但し、法規上、進路変更の予告を目的とする場合に限り方向指示器の点灯が認められている。つまり、方向指示器を点灯したのに進路変更しなかった場合、法規に適合しない。そこで、車両制御装置33は、方向指示器を点灯させている場合、収束動作として進路変更を行わせる。
【0123】
例えば、
図20(2)のように、方向指示器の点灯に応じて車両1の左側に隙間が作られている場合、車両制御装置33は、収束動作として左に車線変更させても良い。また、指示方向に車線変更させる事が適当でない場合は、車両制御装置33は、車体が車線境界線を越えない範囲で、進路変更させても良い。車線内での横移動も進路変更に含まれるので、車両制御装置33は、車線変更、又は進路変更を終えた時点で方向指示器を消灯すれば、法規に適合する。なお、安全運転義務は、進路変更の意思を指示する義務よりも優先される。したがって、車両制御装置33は、指示した意思通りに進路変更すると、安全運転に反する結果になる場合、指示した意思通りに進路変更しなくても良い。
【0124】
例えば、車両制御装置33は、方向指示器を点灯させてから3秒以上経過しても進入可能にならない場合、進路変更の意思が伝わっておらず、進路変更すると他車両5を驚かせる結果となる可能性が有るため、方向指示器を消灯しても良い。方向指示器を点灯した時点では、必要に応じて進路変更させる方針であったので、進路変更すると不安全になる状況であれば、進路変更を実行しなくても法規違反にはならない。例えば、車両制御装置33は、方向指示器の点灯から4秒経過した時点で収束判定し、方向指示器を点灯した側に車両1が進入可能な隙間が無い場合に、直ちに方向指示器を消灯しても良い。なお、
図20の様に、方向指示器の点灯を見て他車両5が後退し、隙間を開けた場合、後退した他車両5の運転手の心証を害さない様に、車線変更した方がよい。この様な機微は、車両制御装置33では判らないので、車両制御装置33は、車両1の運転手にHMI装置38を介してメッセージを出力し、方向指示器を点灯した方向に進路変更する事が法規上、求められる事を伝える様にしても良い。その様にすれば、車両制御装置33は、進路変更の実施の有無や、実施する時期を運転手に委ねることができる。例えば、運転手は、方向指示器を点灯したまま加速して、先行車両2の前方で車線変更しても良い。方向指示器を点灯してから進路変更するまでの時間は、下限は3秒と規定されているが、上限は具体的な規定が無いので、車線変更が出来る位置まで移動してから車線変更すれば良い。
【0125】
なお、片方のウインカの点灯ではなく、両方のウインカ(つまりハザードランプ)を点灯していた場合は、収束動作として、直ちにハザードランプを消灯させて良い。法規上、非常点滅表示灯(ハザードランプ)は方向指示器(ウインカ)と別物であり、ハザードランプを点灯させた場合は、進路変更の意思表示をした事にならないからである。
【0126】
ここまで、操舵や加減速を車両制御装置33が制御する例を説明してきたが、車両制御装置33は、回避推定した時に運転手に報知して、運転手に回避準備動作を行わせたり、回避断定した時に運転手に報知して、運転手に回避動作を行わせたりしても良い。例えば、車両1が一般道を比較的低い速度で走行している場合、報知を聞いた運転手が操作しても回避が間に合う場合がある。但し、回避対象3が高速道路を逆走する逆走車である場合、時間的余裕が少ないので、運転手は、回避対象3を回避できない可能性がある。
【0127】
例えば、車両1が時速100kmで走行し、逆走車も時速100kmで走行し、車両1の100m先を走行する先行車両2が、更に100m先の逆走車を発見して回避する挙動を行い、車両制御装置33が、先行車両2の挙動に基づいて、直ちに回避推定したと仮定する。この場合、回避推定した時点で、逆走車まで200mの距離にあり、時速200kmの相対速度で接近するため、回避推定してから3.6秒後に衝突する恐れがある。逆走車と先行車両2がすれ違った時点では、逆走車の距離は100mで、衝突まで1.8秒である。
【0128】
運転手の視覚刺激に対する反応時間は、約1秒とされるが、運転手は前方を注視しているため、車両制御装置33は運転手に、音声メッセージで報知する必要がある。この場合、音声メッセージを出力するのに要する出力時間と、運転手がメッセージを認知するのに要する認知時間と、認知してから動作を開始するまで動作時間の分だけ、回避準備動作の開始が遅れる。回避推定してから1.8秒後には逆走車と先行車両2がすれ違い、車両1から逆走車が直接、検知できる様になるので、車両制御装置33は、その時点で回避断定する。つまり、回避推定してから回避準備動作を開始するまでの時間が音声の出力と認知と動作に消費されると、回避準備動作に充てられる時間が短くなる。すると、直ちに車線変更が可能な位置まで車両を移動できない恐れがあるし、ウインカの点灯が遅れるので、回避動作に先立って回避動作を予告する効果(つまり、並走車両や近傍車両を遠ざける効果)が減退する。また、回避断定に基づく回避動作も運転手に行わせると、音声メッセージの出力と認知と動作に伴う時間遅れが発生するので、運転者が認知してから回避動作を開始しても、回避が間に合わない可能性がある。
【0129】
よって、回避推定に応じた回避準備動作と、回避断定に応じた回避動作とは、車両制御装置33が自動実行(直接実行)することが好ましいが、状況や段階に応じて、運転手に報知して実行させる間接実行を組み合わせても良い。例えば、回避が不要だった時に回避準備動作を収束させる収束制御は、緊急性が無いため、報知による間接実行でも良い。または、車両制御装置33は、車速が低い時や、「落下物有り」の道路情報がある時は間接実行を選択し、車速が高い時や、「逆走車有り」の道路情報がある時は直接実行を選択する様にしても良い。なお、車両制御装置33による制御は、早さの点で優れているが、運転手による認知能力は、センサ制御装置35による検知能力や、車両制御装置33による判断力を超える事がある。例えば、逆走車の運転手の姿勢から逆走車の進路を推定するような事はセンサ制御装置35では出来ないし、側壁と接触する恐れがある方向に進路変更して回避するような判断も、車両制御装置33では困難である。
【0130】
そこで、車両制御装置33と、運転手で、回避準備動作や回避動作を分担しても良い。例えば、早さを必要とする回避準備動作は直接実行で行って、左右に回避できる状況を作り、回避断定した時に回避する方向は運転手の判断に任せる様にしても良い。または、回避対象が固定物である場合は、運転手に回避動作を行わせ、回避対象が接近物(逆走車)である場合は、回避動作も直接実行で行う様にしても良い。あるいは、回避対象が逆走車である場合に、減速は直接実行で行うが、操舵は運転手に行わせる様にしても良い。運転手が車両制御装置33の制御と相反する操作を行った場合、運転者優位の原則(オーバーライドルール)により車両は運転者の操作に従うので、車両制御装置33が直接実行していても、運転者の判断で回避する事は可能である。
【0131】
車両制御装置33は、回避準備動作や回避動作を直接実行する場合も、音声メッセージを出力させて運転手に報知すべきである。車両制御装置33は、回避準備動作を実行する場合に、例えば「衝突回避の支援を開始します」の様に簡潔なメッセージを出力させて報知する。また、車両制御装置33は、回避動作を実行する場合に、例えば「衝突を回避します」の様なメッセージにより報知する。また、車両制御装置33は、回避が終わった場合に、例えば「衝突を回避しました。衝突回避の支援を終了します」の様なメッセージにより報知する。
【0132】
また、車両制御装置33は、収束動作を行う場合に、例えば「衝突の危険はありませんでした。左にウインカを出しているので、法規通りに左側に車線変更します」の様なメッセージにより報知する。そして、報知した車線変更が終了した場合に、車両制御装置33は、「衝突回避の支援を終了します」の様なメッセージにより報知する。または、車両制御装置33は、収束判定した場合に、例えば「衝突の危険はありませんでした。左にウインカを出しているので、可能であれば、ウインカの通りに車線変更するか、車線内で左に移動して下さい。左への移動が適当でない場合は、ウインカを取り消しても構いません」の様なメッセージにより報知し、収束動作の実行を運転手の委ねても良い。
【0133】
回避準備動作や回避動作は、乗員の安全を守る事を目的として切迫した状況下で行うので、車両制御装置33が実行する事が好ましい。これに対し、収束動作は、危険が無い状況下で、法規に適合させる目的で行うものであるため、動作完了までの時間に上限が無い。そのため、車両制御装置33は、自装置で実行する必要は無く、周囲の状況応じて判断できる運転手に実行を委ねても良い。
【0134】
次に、
図21から
図28を用いて、危険回避制御のフローを説明する。危険回避制御の各段階の処理は、メインフローから呼び出される形で実行されるので、メインフローがメインルーチン、各段階の処理のフローはサブルーチンに当たると言っても良い。メインフローは、各段階の処理を開始する判断や、実行する順序を定めている。各段階の処理を開始する条件は、各段階の説明の中で示した通りでも良いが、ここでは、車両制御装置33は、下記の基準に基づいて判定する。
【0135】
すなわち、車両制御装置33は、先行車両2の横移動が回避運動である確度が第1閾値を超えた場合に推定条件が成立したと判定する。また、車両制御装置33は、先行車両2の横移動が回避運動である確度が第2閾値を超えた場合に断定条件が成立したと判定する。また、車両制御装置33は、走行中の車線前方に停止物を検出した場合と、走行中の車線、又は一方通行(対面通行でない)の道路の進行方向に接近物(逆走車)を検出した場合との何れが満たされたら、断定条件が成立したと判定し、検知対象を回避対象3に設定する。また、車両制御装置33は、ウインカ点灯後、4秒経過した場合に収束条件が成立したと判定する。また、車両制御装置33は、車両1が停止した場合、又は、車両1が回避対象3のない車線に移動した場合、または回避対象3の位置を通り過ぎた場合に回避終了と判定する。つまり、フローにおける分岐は、以上の基準に基づいて分岐する。
【0136】
第1の実施形態に係る危険回避制御のフローチャートを説明する。
図21は、車両制御装置33が実行する危険回避制御の全体フローの一例を示すフローチャートである。なお、この例では、指示方向として左右いずれかを選択し、左右いずれかのウインカを点灯する(つまりハザードランプは点灯しない)ものとしている。
【0137】
車両制御装置33は、低速時とカーブは自動的な回避を実行しない。そこで先ず、車両制御装置33は、車両1の車速が速度閾値よりも速いか否かを判定する(ステップS001)。車両1の車速が速度閾値よりも遅い場合に(ステップS001;No)、危険回避制御は、ステップS001に戻る。車両1の車速が速度閾値よりも速い場合に(ステップS001;Yes)、車両制御装置33は次に、走行中の道路の曲率が曲率閾値よりも低いか否かを判定し(ステップS002)、曲率が曲率閾値以上である場合(ステップS002;No)もステップS001に戻る。
【0138】
曲率が曲率閾値よりも低い場合に(ステップS002;Yes)、車両制御装置33は、回避対象3を検出したか否かを判定する(ステップS003)。危険回避制御は、回避対象3を検出したら、回避推定前でも回避制御に移行する。すなわち、回避対象3を検出した場合に(ステップS003;Yes)、危険回避制御は、ステップS011(回避動作のフロー)に移行する。つまり、回避対象3を検出したら、回避準備動作なしで回避動作を開始する。
【0139】
回避対象3を検出しない場合に(ステップS003;No)、車両制御装置33は、推定条件が成立したか否かを判定する(ステップS004)。推定条件が成立していない場合に(ステップS004;No)、危険回避制御は、ステップS001に戻る。
【0140】
車両制御装置33は、回避推定の条件が成立した場合(ステップS004;Yes)、指示方向決定フロー(ステップS005)で1回だけ指示方向を決定し、加減速フロー(ステップS006)と点灯フロー(ステップS007)とはループで繰り返し実行する。これは回避準備動作のループである。
【0141】
車両制御装置33は、回避対象3を検出した場合(ステップS008;Yes)、又は断定条件が成立した場合(ステップS009;Yes)に、回避準備動作のループを抜けて回避動作の処理(ステップS011)に移行する。続いて、車両制御装置33は、操舵制御のフロー(ステップS012)と、緊急制動のフロー(ステップS013)とを実行する。車両制御装置33は、回避対象3に対する回避が完了したか否かを判定(ステップS014)し、回避が完了していない場合(ステップS014;No)、危険回避制御は、ステップS012に移行する。回避が完了している場合は(ステップS014;Yes)、危険回避制御は、ステップS001に移行する。つまり、先頭に戻って次の危険に備える。
【0142】
また、危険回避制御は、回避対象3の検出、又は回避断定の何れにも該当しない場合に、収束条件が成立したか否かを判定(ステップS010)し、収束条件が成立しない場合(ステップS010:No)、ステップS006に戻る。収束条件は、ウインカ点灯から4秒経過する事なので、回避対象3の検出、または、回避断定、または、収束条件の正立の、どれも起きない場合は、4秒間を上限として回避準備動作のループを廻る。ウインカ点灯から4秒経過して収束条件が成立(ステップS010:Yes)したら回避準備動作のループを抜けて収束制御のフローを実行する(ステップS015)。そして、危険回避制御は、ステップS001に戻る。
【0143】
図22は、指示方向決定フローの一例を示すフローチャートである。指示方向決定フローは、
図21のステップS005において実行される。指示方向決定フローは、危険回避制御全体のフローの中で、サブルーチンとして、回避推定後に1回だけ実行される。
【0144】
車両制御装置33は、先ず、左右の車線の有無で指示方向を決定する。車両制御装置33は、ウインカを点灯させる事は決まっており、左側に車線が無ければ右側を点灯させる、のように消去法で指示方向を決定する。右側の車線は、例えば対向車線でも良い。右側にも左にも車線が無い場合、すなわち、1車線の道路の場合、車両制御装置33は、左側を指示方向とする。回避対象3が逆走車の場合、逆走車は、向かって右側に沿って走行してくる事が多いからである。
【0145】
以下、各ステップについて説明する、先ず、車両制御装置33は、車両1の左側に車線があるか否かを判定する(ステップS101)。車両1の左側に車線が無い場合(ステップS101;No)、危険回避制御は、ステップS106(指示方向=右)に移行する。
【0146】
車両1の左側に車線が有る場合(ステップS101;Yes)、車両制御装置33は、車両1の右側に車線がある否かを判定する(ステップS102)。車両1の右側に車線が無い場合(ステップS102;No)、危険回避制御は、ステップS107(指示方向=左)に移行する。
【0147】
車両1の右側に車線が有る場合(ステップS102;Yes)、車両制御装置33は、車両制御装置33は、車両1の左側に並走車両4が走行しているか否かを判定する(ステップS103)。
【0148】
先に、左右どちらにも車線変更が出来る様にする事を目的として、車線変更を妨げる並走車両4などがある方向のウインカを点灯させる方法を説明したが、ここでは、車線変更を妨げる並走車両4などが無い方向のウインカを点灯させる様にしている。例えば左側を評価して、左側に並走車両4が走行していない場合に(ステップS103;No)、危険回避制御は、ステップS107(指示方向=左)に移行する。つまり、左側に並走車両4が無ければ左側にウインカを点灯させる。そのようにすると、車線変更を予告する事により、車両1の左側の空間に進入しないよう、他車両を牽制する事が出来る。左側に並走車両4が走行している場合(ステップS103;Yes)、車両制御装置33は、車両1の右側に並走車両4が走行しているか否かを判定する(ステップS104)。
【0149】
右側に並走車両4が走行していない場合に(ステップS104;No)、危険回避制御は、ステップS106(指示方向=右)に移行する。つまり、右側に並走車両4が無ければ右側にウインカを点灯させて、車両1の右側の空間に進入しないよう、他車両5を牽制する。右側にも並走車両4が走行している場合に(ステップS104;Yes)、車両制御装置33は、車両1の右前方から右後方の他車両5の数が、車両1の左前方から左後方の他車両5の数よりも多いか否かを判定する(ステップS105)。
【0150】
つまり、車両制御装置33は、左右に並走車両4がある場合は、その後方の他車両5も含めて状況を評価し、車線変更を妨げる他車両5が少ない方向を指示方向として選択する。例えば、右側の車両数が左側の車両数より多ければ(ステップS105;Yes)、指示方向を左側に決定(ステップS107)し、そうでなければ(ステップS105;No)、車両制御装置33は、指示方向を右側に決定(ステップS106)する。
【0151】
以上により、指示方向を右(ステップS106)か左(ステップS107)に決定し、危険回避制御は、指示方向決定フローを終了して、メインフローに戻る。
【0152】
図23は、加減速制御フローの一例を示すフローチャートである。加減速制御フローは、
図21のステップS006において実行される。加減速制御フローは、危険回避制御全体のフローの中のサブルーチンとして、回避推定に基づく回避準備動作のループ内で、繰り返し実行される。そのため、減速幅が時速20kmよりも高いか否かを判定する(ステップS201)より前に、既に加減速が行われている事がある。減速幅は、回避推定時の車速を基準とした速度差である。回避準備動作における加減速は、前後方向の移動を目的とするので、極端に減速する事は好ましくない。
【0153】
そこで、車両制御装置33は、無制限に減速する訳ではなく、回避推定時の車速を基準とする減速幅が所定の減速幅閾値を超えない範囲で減速させる。周辺の他車両5との速度差が大きくなり過ぎると、相対的な位置関係が急変し、前後方向の移動を制御し難くなる為である。減速幅が所定の減速幅閾値(例えば、時速20km)よりも大きい場合に(ステップS201;Yes)、加速(ステップS206)して速度を回復させる。つまり、車両制御装置33は、加速すれば周辺の他車両5との速度を合わせられる範囲で減速する。その際に、車両制御装置33は、所定の減速幅閾値を、車両1の加速能力に応じて定めても良い。車両1の車速が高いほど、更に加速する事が難しくなるので、車両制御装置33は、車速が高い時の減速幅閾値を、車速が低い時よりも低く設定しても良い。例えば、車両制御装置33は、車速が時速50kmの時は減速幅閾値を時速20kmとし、車速が時速100kmの時は減速幅閾値を時速10kmにしてもよい。
【0154】
減速幅が時速20kmよりも低い場合に(ステップS201;No)、車両制御装置33は、減速条件が成立しているか否かを判定する(ステップS202)。減速条件は、指示方向の真横、乃至前方に並走車両4がある事である。減速条件が成立している場合に(ステップS202;Yes)、危険回避制御は、ステップS205に移行し、車両1を減速させる。つまり、車両制御装置33は、指示方向の真横、乃至前方に並走車両4があれば、並走状態を解消する為に減速させる。
【0155】
減速条件が成立していない場合に(ステップS202;No)、車両制御装置33は、維持条件が成立しているか否かを判定する(ステップS203)。維持条件は、例えば、指示方向に近傍車両6があるが、車両1と前後に重なる並走車両4ではない場合である。並走車両4が無ければ、その位置で車線変更が可能なので、加減速して前後方向に移動する必要は無い。そこで、車両制御装置33は、維持条件が成立している場合に(ステップS203;Yes)、加速も減速もせずに、加減速制御フローを終了する。
【0156】
維持条件が成立していない場合に(ステップS203;No)、車両制御装置33は、加速条件が成立するか否かを判定する(ステップS204)。加速条件は、例えば、指示方向の後方(真横を含まない)に並走車両4がある事である。加速条件が成立する時は、加速する事により並走を解消する。そこで、危険回避制御は、ステップS206に移行し、車両を加速させる。加速条件が成立しない場合に(ステップS204;No)、危険回避制御は、加速も減速もせずに加減速制御フローを終了する。
【0157】
以上により、車両制御装置33は、加減速制御フローを終了する。すなわち、危険回避制御は、メインフローに戻る。
【0158】
図24は、点灯制御フローの一例を示すフローチャートである。点灯制御フローは、
図21のステップS007において実行される。点灯制御フローは、危険回避制御全体のフローの中のサブルーチンとして、回避推定に続く期間に、繰り返し実行される。
【0159】
車両制御装置33は、指示方向に並走車両4があって、減速条件が成立し、かつ、車両1と並走車両4の重なりが車長の半分以上ある場合に、点灯遅延を実行する。車両制御装置33は、この点灯遅延条件が続く間はウインカを点灯せずにメインフローに戻り、点灯遅延条件が成立しなくなった時点でウインカを点灯させる。
【0160】
そこで先ず、車両制御装置33は、減速条件が成立しているか否かを判定する(ステップS301)。減速条件が成立していない場合に(ステップS301;No)、危険回避制御は、ステップS303に移行する。つまり、危険回避制御は、ウインカを点灯してメインフローに戻る。
【0161】
減速条件が成立している場合に(ステップS301;Yes)、車両制御装置33は、遅延条件が成立しているか否かを判定する(ステップS302)。遅延条件が成立していない場合に(ステップS302;No)、危険回避制御は、ステップS303に移行する。つまり、危険回避制御は、ウインカを点灯してメインフローに戻る。
【0162】
遅延条件が成立している場合に(ステップS302;Yes)、危険回避制御は、ウインカを点灯せずにメインフローに戻る。
【0163】
以上により、車両制御装置33は点灯遅延が不要になった時にウインカを点灯し、危険回避制御は、メインフローに戻る。
【0164】
図25は、回避方向決定フローの一例を示すフローチャートである。回避方向設定フローは、
図21において、回避対象3を検出した場合(ステップS003;Yes)、または、回避準備動作のループを廻る間に、回避対象3を検出した場合(ステップS008;Yes)、又は断定条件が成立した場合(ステップS009;Yes)、つまり、回避断定した場合に、回避動作の最初の処理(ステップS011)として実行される。回避方向設定フローは、危険回避制御全体のフローの中で、サブルーチンとして回避断定後に1回だけ実行される。
【0165】
車両制御装置33は、回避対象3が逆走車であるか否かを判定する(ステップS401)。回避対象3が逆走車ではない場合に(ステップS401;No)、危険回避制御は、ステップS403に移行する。なお、危険回避制御は、回避対象3を検出していない場合(ステップS008;No)も、回避対象3が逆走車ではない場合に含め、ステップS403に移行する。
【0166】
回避対象3が逆走車である場合に(ステップS401;Yes)、車両制御装置33は、逆走車である回避対象3の予想進路は右側であるか否かを判定する(ステップS402)。予想進路が右側でない場合に(ステップS402;No)、車両制御装置33は、「回避方向=右」(ステップS405)を選択する。予想進路が右側の場合に(ステップS402;Yes)、車両制御装置33は、「回避方向=左」(ステップS406)を選択する。つまり、回避対象3が逆走車である場合は、逆走車の予想進路と逆の方向に回避させる。
【0167】
回避対象3が逆走車でない場合は(ステップS401;No)、車両制御装置33は、進路変更が容易な方向を回避方向として選択する。先ず、車両制御装置33は、左側への進路変更は容易であるか否かを判定する(ステップS403)。左側への進路変更が容易な場合に(ステップS403;Yes)、「回避方向=左」(ステップS406)を選択する。左側への進路変更が容易ではない場合に(ステップS403;No)、車両制御装置33は、右側への進路変更は容易であるか否かを判定する(ステップS404)。右側への進路変更が容易な場合に(ステップS404;Yes)、車両制御装置33は、「回避方向=右」(ステップS405)を選択する。右側への進路変更も容易ではない場合に(ステップS404;No)、車両制御装置33は、「回避方向=指示方向」(ステップS407)を選択する。つまり、車両制御装置33は、ウインカを点灯した方向を、進路変更が容易な方向と見做して回避方向を選択する。
【0168】
以上により、車両制御装置33は、回避方向決定フローの実行により回避方向を決定し、危険回避制御は、メインフローに戻る。
【0169】
図26は、操舵制御フローの一例を示すフローチャートである。操舵制御フローは、
図21のステップS012において実行される。操舵制御フローは、危険回避制御全体のフローの中で、サブルーチンとして、回避断定後に繰り返し実行される。
【0170】
車両制御装置33は、回避方向に並走車両4が有るか否かを判定する(ステップS501)。回避方向に並走車両4が無い場合に(ステップS501;No)、車両制御装置33は、回避方向に車線変更させて(ステップS503)メインフローに戻る。
【0171】
回避方向に並走車両4が有る場合に(ステップS501;Yes)、車両制御装置33は、回避対象3が逆走車であるか否かを判定する(ステップS502)。回避対象3が逆走車である場合に(ステップS502;Yes)、車両制御装置33は、回避方向に車線変更させて(ステップS503)メインフローに戻る。回避対象が逆走車である場合は時間的猶予が無いので、回避方向に並走車があっても、直ちに車線変更させる。車線変更により並走車と接触する恐れがあるが、逆走車と衝突する方が被害は大きいので、やむを得ない選択である。
【0172】
回避対象3が逆走車でない場合に(ステップS502;No)、車両制御装置33は、回避方向に進路変更させて(ステップS504)メインフローに戻る。車線変更は車線境界を超えない範囲の横移動であっても良いし、並走車と接触しない範囲で車線境界を超えて横移動しても良い。回避方向に並走車がある場合は、減速か加速を同時に行う事により並走状態の解消を図っているので、やがて、並走車両4が無い状態に変わると期待できる。回避対象が逆走車でない場合は、比較的に時間に余裕があるので、並走車と接触しない範囲で横移動し、並走車が無くなった時に車線変更(ステップS503)に切り替えれば良い。
【0173】
以上のように、車両制御装置33は回避の為の操舵制御を実行し、操舵制御フローを終了する。すなわち、危険回避制御は、メインフローに戻る。
【0174】
図27は、緊急制動フローの一例を示すフローチャートである。緊急制動フローは、
図21のステップS013において実行される。緊急制動フローは、危険回避制御全体のフローの中で、サブルーチンとして、回避断定後に繰り返し実行される。
【0175】
車両制御装置33は、操舵制御において回避方向に車線変更するか否かを判定する(ステップS601)。言い換えると、車両制御装置33は、操舵により回避可能であるか否かを判定する。
【0176】
回避方向に車線変更する場合に(ステップS601;Yes)、危険回避制御は、緊急制動をせずに、メインフローに戻る。つまり、操舵により回避可能ならば緊急制動しない。緊急制動しない場合、車両制御装置33が既に行っている加速や減速は、影響を受けず継続される。
【0177】
回避方向に車線変更しない場合に(ステップS601;No)、車両制御装置33は、TTC(Time To Collision:衝突余裕時間)が余裕閾値よりも少ないか否かを判定する(ステップS602)。TTCは、緊急制動しなかった場合に、衝突するまでの時間である。TTCが余裕閾値以上(ステップS602;No)なら、危険回避制御は、緊急制動をせずに、メインフローに戻る。つまり、時間的に余裕があるなら緊急制動しない。
【0178】
TTCが余裕閾値未満(ステップS602;Yes)なら、車両制御装置33は、緊急制動を実行(ステップS603)し、危険回避制御は、メインフローに戻る。つまり、操舵による回避が出来ず、時間的余裕が無い場合は緊急制動により衝突を回避させる。
【0179】
以上のように、車両制御装置33は緊急制動の制御を行い、緊急制動フローを終了する。すなわち、危険回避制御は、メインフローに戻る。
【0180】
図28は、収束制御フローの一例を示すフローチャートである。収束制御フローは、
図21のステップS015において実行される。収束制御フローは、危険回避制御全体のフローの中で、サブルーチンとして、収束判定後に1回だけ実行される。
【0181】
車両制御装置33は、指示方向に近傍車両6が有るか否かを判定する(ステップS701)。
【0182】
指示方向に近傍車両6が無い場合(ステップS701;No)、車両制御装置33は、指示方向に進路変更(ステップS702)を行った後でウインカを消灯(ステップS703)させる。
【0183】
指示方向に近傍車両6が有る場合(ステップS701;Yes)、車両制御装置33は、直ちにウインカを消灯(ステップS703)させる。
【0184】
以上により、危険回避制御は、収束制御フローを終了する。すなわち、危険回避制御は、メインフローに戻る。
【0185】
以上のように、第1の実施形態に係る車両制御装置33の車両制御方法は、車両1の周辺を検知し、検知した情報に基づいて状況を判定し、判定結果に基づいて車両1の動作を指示する。そして、車両制御方法は、検知した情報の判定において、車両1の前方を走行する先行車両2の挙動が回避対象3の回避であるか評価し、先行車両2の挙動が回避であると推定した時に、車両1の回避を準備する回避準備動作を指示する。これらの処理により、車両制御装置33の車両制御方法は、障害物を回避する性能を向上させることができる。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0187】
1 車両
2 先行車両
3 回避対象
4 並走車両
5 他車両
6 近傍車両
10 カメラ
11 前方カメラ
12 右側方カメラ
13 左側方カメラ
20 レーダ
21 前方レーダ
22 右側方レーダ
23 左側方レーダ
31 操舵制御装置
32 速度制御装置
33 車両制御装置
34 ナビゲーション装置
35 センサ制御装置
36 操作装置
38 HMI(Human Machine Interface)装置
37 LAN(Local Area Network)
310 受付部
320 状況判定部
330 動作指示部
331 報知制御部
332 車速制御部
333 舵角制御部
334 灯火制御部