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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013471
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】触媒担体および触媒体
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/78 20060101AFI20240125BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20240125BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240125BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20240125BHJP
   B01J 35/50 20240101ALI20240125BHJP
   C04B 35/28 20060101ALI20240125BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B01J23/78 M
B01J32/00
B01J35/10
B01J35/10 301Z
B01J23/80 M
B01J35/02 Z
C04B35/28
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115584
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100167232
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 みな
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 和浩
【テーマコード(参考)】
4G019
4G169
【Fターム(参考)】
4G019FA15
4G169AA01
4G169AA03
4G169BA06A
4G169BB04A
4G169BB06B
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC31A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169DA05
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EB04
4G169EB14X
4G169EB14Y
4G169EC24
(57)【要約】
【課題】より容易に、過剰な温度上昇や局所的な温度上昇を抑えて加熱温度を適切化する。
【解決手段】マイクロ波照射により発熱する触媒担体は、強磁性体である鉄含有酸化物を用いて粉粒体として形成されており、前記粉粒体を構成する担体粒子の円形度が、0.65以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波照射により発熱する触媒担体であって、
強磁性体である鉄含有酸化物を用いて粉粒体として形成されており、
前記粉粒体を構成する担体粒子の円形度が、0.65以上であることを特徴とする
触媒担体。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒担体であって、
前記担体粒子は、自身の表面に、筋状の溝である筋部が複数形成されていることを特徴とする
触媒担体。
【請求項3】
請求項2に記載の触媒担体であって、
複数の前記筋部は、各々の前記筋部の長さが100μm以上であり、かつ、隣り合う前記筋部間の距離である溝ピッチが100μm以下であることを特徴とする
触媒担体。
【請求項4】
請求項2または3に記載の触媒担体であって、
前記担体粒子は、自身の表面に、10本以上の前記筋部を含む500μm四方の領域を備えることを特徴とする
触媒担体。
【請求項5】
請求項2または3に記載の触媒担体であって、
複数の前記筋部は、径の異なる同心円状に配置された複数の溝と、並んで配置された線分状の複数の溝と、を含むことを特徴とする
触媒担体。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、銅(Cu)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする
触媒担体。
【請求項7】
請求項6に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物は、亜鉛(Zn)を含むことを特徴とする
触媒担体。
【請求項8】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物は、ナトリウム(Na)を含むことを特徴とする
触媒担体。
【請求項9】
請求項8に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物におけるナトリウムの含有量が、酸化物換算で0.1wt%~1.0wt%であることを特徴とする
触媒担体。
【請求項10】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記担体粒子の絶対最大長の平均が、0.5mm~2.5mmであることを特徴とする
触媒担体。
【請求項11】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記担体粒子の気孔率が、20%~60%であることを特徴とする
触媒担体。
【請求項12】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物は、スピネルフェライトであることを特徴とする
触媒担体。
【請求項13】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の触媒担体と、
前記触媒担体を構成する前記担体粒子上に担持された触媒と、
を備えることを特徴とする触媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触媒担体および触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、触媒を用いた反応を行う際に所望の温度に昇温させる技術として、マイクロ波などの電磁波の照射を伴う種々の技術が提案されている。例えば、触媒を活性温度に昇温させるために、金属酸化物等に電磁波を照射して加熱する構成が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。具体的には、特許文献1には、有機化合物を改質処理するための反応層の少なくとも一部を金属酸化物等で形成して、マイクロ波の照射により、反応層を誘電加熱する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-84389号公報
【特許文献2】特開平7-49024号公報
【特許文献3】特開平8-82254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにマイクロ波等の照射により加熱する際には、発熱温度の制御は、照射時の電力制御により行う必要があるため、より容易に、過剰な温度上昇や局所的な温度上昇を抑えて加熱温度を適切化できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、マイクロ波照射により発熱する触媒担体が提供される。この触媒担体は、強磁性体である鉄含有酸化物を用いて粉粒体として形成されており、前記粉粒体を構成する担体粒子の円形度が、0.65以上である。
この形態の触媒担体によれば、マイクロ波照射時に、触媒担体が鉄含有酸化物のキュリー温度を超えて昇温することを抑制することができるため、マイクロ波を用いた触媒担体の加熱に係る構成を複雑化することなく、触媒担体の過剰な温度上昇を抑えることができる。さらに、担体粒子の円形度が、0.65以上であるため、マイクロ波照射時に、電荷移動が局所的に集まることを抑制して、触媒担体における局所的な温度上昇を抑えることができる。
(2)上記形態の触媒担体において、前記担体粒子は、自身の表面に、筋状の溝である筋部が複数形成されていることとしてもよい。このような構成とすれば、担体粒子の比表面積が増大し、担体粒子上に触媒を担持する際に、触媒担持量を、より多くすることができる。
(3)上記形態の触媒担体において、複数の前記筋部は、各々の前記筋部の長さが100μm以上であり、かつ、隣り合う前記筋部間の距離である溝ピッチが100μm以下であることとしてもよい。このような構成とすれば、このような構成とすれば、担体粒子の比表面積が増大し、担体粒子上に触媒を担持する際に、触媒担持量を、より多くすることができる。
(4)上記形態の触媒担体において、前記担体粒子は、自身の表面に、10本以上の前記筋部を含む500μm四方の領域を備えることとしてもよい。このような構成とすれば、担体粒子の比表面積の確保が容易となり、担体粒子上に触媒を担持する際に、触媒担持量を、より多くすることができる。
(5)上記形態の触媒担体において、複数の前記筋部は、径の異なる同心円状に配置された複数の溝と、並んで配置された線分状の複数の溝と、を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、担体粒子の比表面積が増大し、担体粒子上に触媒を担持する際に、触媒担持量を、より多くすることができる。
(6)上記形態の触媒担体において、前記強磁性体である鉄含有酸化物は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、銅(Cu)のうちの少なくとも1種を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、触媒担体の透磁率が向上し、触媒担体にマイクロ波を照射したときに急速加熱が可能になる。
(7)上記形態の触媒担体において、前記強磁性体である鉄含有酸化物は、亜鉛(Zn)を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、亜鉛の含有量によって鉄含有酸化物のキュリー温度を制御することが可能になり、触媒担体にマイクロ波を照射して発熱させたときの最高温度を制御することができる。
(8)上記形態の触媒担体において、前記強磁性体である鉄含有酸化物は、ナトリウム(Na)を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、触媒担体の焼結性が向上し、触媒担体の製造時に、より低い温度で触媒担体を焼成することが可能になる。
(9)上記形態の触媒担体において、前記強磁性体である鉄含有酸化物におけるナトリウムの含有量が、酸化物換算で0.1wt%~1.0wt%であることとしてもよい。このような構成とすれば、触媒担体の焼結性を向上させると共に、ナトリウムの添加に起因する透磁率の低下を抑えることができる。
(10)上記形態の触媒担体において、前記担体粒子の絶対最大長の平均が、0.5mm~2.5mmであることとしてもよい。このような構成とすれば、触媒担体にマイクロ波を照射して触媒担体を発熱させたときの昇温速度を、より速くすることができる。
(11)上記形態の触媒担体において、前記担体粒子の気孔率が、20%~60%であることとしてもよい。このような構成とすれば、触媒担体にマイクロ波を照射したときに、触媒担体がキュリー温度を超えて発熱することを抑えると共に、触媒担体の昇温速度を確保することができる。
(12)上記形態の触媒担体において、前記強磁性体である鉄含有酸化物は、スピネルフェライトであることとしてもよい。このような構成とすれば、マイクロ波照射による触媒担体の加熱を容易に行うことができる。
(13)本開示の他の一形態によれば、触媒体が提供される。この触媒体は、(1)から(3)までのいずれか一項に記載の触媒担体と、前記触媒担体を構成する前記担体粒子上に担持された触媒と、を備える。
この形態の触媒体によれば、マイクロ波照射時に、触媒担体が鉄含有酸化物のキュリー温度を超えて昇温することを抑制することができるため、マイクロ波を用いた触媒体の加熱に係る構成を複雑化することなく、触媒体の過剰な温度上昇を抑えることができる。さらに、担体粒子の円形度が、0.65以上であるため、マイクロ波照射時に、電荷移動が局所的に集まることを抑制して、触媒体における局所的な温度上昇を抑えることができる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、触媒担体の製造方法、触媒体の製造方法、触媒体の温度制御方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の触媒担体の一例を示す説明図。
図2】担体粒子の一例を示す説明図。
図3】触媒担体の製造方法を模式的に示す説明図。
図4】実際に触媒担体を製造する様子を示す説明図。
図5】サンプルS1およびS2についての測定値をまとめて示す説明図。
図6】亜鉛含有量の異なる鉄含有酸化物の温度変化を示す説明図。
図7】絶対最大長が異なるサンプルの温度変化を示す説明図。
図8】気孔率が異なるサンプルの温度変化を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.触媒担体の構成:
図1は、本開示の実施形態としての触媒担体10の一例を示す説明図である。図1は、触媒担体10の外観を示すSEM(走査電子顕微鏡)像である。本実施形態の触媒担体10は、強磁性体である鉄含有酸化物を用いて粉粒体として形成されており、マイクロ波照射により発熱する。図1に示すように、粉粒体である触媒担体10は、複数の担体粒子12の集合体として構成されている。
【0008】
触媒担体10を構成する強磁性体である鉄含有酸化物は、マイクロ波の照射時に磁気損失により発熱する材料であれば特に制限はない。例えば、スピネルフェライト、ガーネットフェライト、六方晶フェライトとすることができる。スピネルフェライトは、MeFeの組成式で表される。上記組成式において、Meは、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)等の遷移金属あり、さらに他の元素を含んでいてもよい。ガーネットフェライトは、RFe12の組成式で表される。上記組成式において、Rは、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)等の希土類元素であり、さらに他の元素を含んでいてもよい。六方晶フェライトとしては、MeFe1219の組成式で表されるM型フェライトを挙げることができる。上記組成式において、Meは、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等とすることができ、さらに他の元素を含んでいてもよい。
【0009】
触媒担体10を構成する強磁性体である鉄含有酸化物は、透磁率が大きい軟磁性材料であることが望ましく、また、磁気損失が大きいほど、マイクロ波照射時の発熱効率が高まるため望ましい。このような観点から、触媒担体10を構成する強磁性体である鉄含有酸化物は、例えば、スピネルフェライトとすることが望ましい。組成式MeFeにおけるMeとして、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、銅(Cu)のうちの少なくとも1種を含むスピネルフェライトを用いると、触媒担体10の透磁率が向上し、触媒担体10にマイクロ波を照射したときの昇温速度がより速くなり、急速加熱が可能となるためより望ましい。このような鉄含有酸化物は、さらに、亜鉛(Zn)を含むこととしてもよい。上記鉄含有酸化物が亜鉛(Zn)を含有する場合には、亜鉛の添加量を調節することにより、上記鉄含有酸化物のキュリー温度を制御することができる。鉄含有酸化物のキュリー温度を制御することで、後述するように、マイクロ波を照射して触媒担体10を発熱させたときの最高温度を制御することができる。
【0010】
また、触媒担体10を構成する強磁性体である鉄含有酸化物は、さらに、ナトリウム(Na)を含むこととしてもよい。これにより、触媒担体10における焼結性が向上し、触媒担体10の製造時に、より低い温度で焼成することが可能になる。例えば、W. Dai, S. Seetharaman, and L. I. Staffansson, Metall. Trans. B, 15B [2] 319-327(1984)に記載されているように、鉄とナトリウムの酸化物の相図において、ナトリウム量が増えるほど液相になる温度が低くなることが知られている。焼成は、セラミックスや金属などの原料粉末を融点よりも低い温度で焼き固める技術であるため、ナトリウムの添加によって液相になる温度が低くなることにより、焼結性を高めることができる。触媒担体10における焼結性を向上させるためには、上記鉄含有酸化物におけるナトリウムの含有量は、酸化物換算で0.1wt%以上とすることが望ましい。また、触媒担体10におけるナトリウムの添加量を増加させると、触媒担体10の透磁率が低下する傾向がある。例えば、T. Karasawa, Journal of IEE Japan, Vol83, No899, 1261-1270(1963)には、鉄含有酸化物にナトリウム等のアルカリ金属を添加したときには、添加した金属酸化物のイオン半径が大きくなるほど、結晶格子の受ける内部応力が大きくなり、透磁率が減少することが示されている。そのため、酸化物のイオン半径が比較的大きなナトリウムを添加することにより、触媒担体10を構成する鉄含有酸化物の透磁率が低下するといえる。上記のように鉄含有酸化物にナトリウムを添加して焼結性を向上させる場合には、ナトリウムの含有量を、酸化物換算で1.0wt%以下とすることで、触媒担体10の透磁率が低下し過ぎることを防ぐことができる。上記したナトリウム含有量は、誘導結合プラズマ質量分析法 (Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP-MS)により組成分析することで求めることができる。
【0011】
本実施形態の触媒担体10において、粉粒体である触媒担体10を構成する担体粒子12の円形度は、例えば、0.65以上とすればよく、0.68以上とすることがより望ましく、0.70以上とすることがさらに望ましい。円形度は、以下の(1)式により求められる。(1)式において、Sは粒子の投影面積を表し、Lは粒子の投影像の周囲長を表す。投影された粒子の外周は、円弧状の曲線部を備えており、投影された粒子の外周全体が、曲線部により構成されることが望ましい。投影された粒子の外周に直線部が含まれる場合であっても、当該直線部の長さが、粒子の投影像の周囲長全体に占める割合は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
【0012】
円形度=4πS/L … (1)
【0013】
粒子が真球(粒子の投影像が真円)の場合に、円形度は最大値の1となり、円形度が小さいほど、粒子形状が複雑であることを示す。担体粒子12の形状がより複雑で、例えばエッジなどが形成されている場合には、触媒担体10にマイクロ波を照射したときに、担体粒子12において、エッジなどの形状が比較的複雑な箇所で電荷移動の局所的な集中が起こり、この局所的な箇所で温度上昇が偏って生じる可能性がある。担体粒子12の円形度を0.65以上とすることで、触媒担体10にマイクロ波を照射したときにおける上記のような電荷移動の局所的な集中を抑え、触媒担体10の加熱状態を均一化することが可能になる。ここで、粉粒体である触媒担体10を構成する担体粒子12の円形度は、触媒担体10のSEM像を撮像し、得られた画像に対して画像解析ソフトウェア WinRoof(三谷商事株式会社製)を用いて求めることができる。具体的には、触媒担体10を撮像した30倍のSEM像(視野範囲3mm×3mm)に1個の担体粒子全体が入るようにSEMで10点測定を行い、それぞれの撮影した画像に対して画像解析ソフトウェア WinRoof(三谷商事株式会社製)を用いて上記(1)式に示した円形度を求め、その平均値として担体粒子12の円形度を求めることができる。
【0014】
担体粒子12の絶対最大長の平均は、0.1mm以上とすることが望ましく、0.5mm以上とすることが好ましく、0.8mm以上とすることがさらに望ましい。また、担体粒子12の絶対最大長の平均は、2.8mm以下とすることが望ましく、2.5mm以下とすることがより望ましく、2.2mm以下とすることがさらに望ましい。ここで、「担体粒子12の絶対最大長」とは、担体粒子12の投影像の外周線上の任意の2点間の距離の最大値をいう。担体粒子12の絶対最大長の平均は、触媒担体10のSEM像を撮像し、得られた画像に対して画像解析ソフトウェア WinRoof(三谷商事株式会社製)を用いて求めることができる。具体的には、触媒担体10を撮像した30倍のSEM像(視野範囲3mm×3mm)に1個の担体粒子全体が入るようにSEMで10点測定を行い、それぞれの撮影した画像に対して画像解析ソフトウェア WinRoof(三谷商事株式会社製)を用いて、担体粒子12の絶対最大長を求め、その平均値を算出すればよい。担体粒子12の絶対最大長の平均を上記範囲とすることにより、触媒担体10にマイクロ波を照射して触媒担体10を発熱させたときの昇温速度を、より速くすることができる。
【0015】
本実施形態の担体粒子12の気孔率は、20%以上、60%以下であることが望ましい。担体粒子12の気孔率を20%以上とすることで、触媒担体10にマイクロ波を照射したときに、触媒担体10がキュリー温度を超えて発熱することを抑え、その結果、触媒担体10が所望の温度範囲を超えて昇温することを抑えることができる。また、担体粒子12の気孔率を60%以下とすることで、触媒担体10にマイクロ波を照射したときに、触媒担体10の昇温速度を、より速くすることができる。担体粒子12の気孔率は、触媒担体10を樹脂埋めし、担体粒子12の断面について、100μm×100μmの視野のSEM像を撮像し、得られた画像に対して画像解析ソフトウェア WinRoof(三谷商事株式会社製)を用いて2値化を行い、気孔部分を分離して、算出することができる。具体的には、1サンプル当たり5視野で上記のようにして気孔率を算出し、その平均値として触媒担体10の気孔率を求めることができる。
【0016】
図2は、本実施形態の担体粒子12の一例を示す説明図である。図2は、担体粒子12の外観を示すSEM像である。図2に示すように、担体粒子12は、自身の表面に、筋状の溝である筋部が複数形成されていることとしてもよい。図2では、複数の筋部の形状の一例として、複数の筋部が、径の異なる同心円状に配置された複数の溝である筋部14aと、並んで配置された線分状の複数の溝である筋部14bと、を含む様子を示している。以下の説明では、筋部14aおよび筋部14bのように形状を区別することなく、担体粒子12の表面に形成された筋部を総称するときには、「筋部14」と呼ぶ。このように、表面に複数の筋部14を形成することにより、担体粒子12の比表面積が増大し、担体粒子12上に触媒を担持する際に、触媒担持量を、より多くすることができる。
【0017】
担体粒子12の表面に形成される複数の筋部14は、各々の筋部14の長さを50μm以上とすることができ、100μm以上とすることが望ましく、200μm以上とすることがより望ましい。さらに、隣り合う筋部14間の距離である溝ピッチは、150μm以下とすることができ、100μm以下であることが望ましく、50μm以下であることがより望ましい。ここで、溝ピッチとは、各筋部14の形状を、幅方向の中心(最も深い箇所)により把握したときの、隣り合う筋部14間の距離をいう。担体粒子12表面に、上記のような複数の筋部14を形成することで、担体粒子12の比表面積を増大させて、担体粒子12上に触媒を担持する際に、触媒担持量を、より多くすることができる。
【0018】
担体粒子12は、自身の表面に、10本以上の筋部14を含む500μm四方の領域を備えることが望ましい。また、担体粒子12の表面に形成する複数の筋部14は、径の異なる同心円状に配置された複数の溝と、並んで配置された線分状の複数の溝と、を含む構成も望ましい。このようにすることで、担体粒子12の比表面積の確保が容易となり、担体粒子12上に触媒を担持する際に、触媒担持量を、より多くすることができる。
【0019】
B.製造方法:
図3は、本実施形態の触媒担体10の製造方法を模式的に示す説明図であり、図4は、実際に触媒担体10を製造する様子を示す説明図である。本実施形態の触媒担体10は、例えば、アルギン酸塩の水溶液が多価カチオンと反応してゲル化する性質を利用して製造することができる。アルギン酸塩としては、例えば、アルギン酸ナトリウムやアルギン酸アンモニウムを用いることができ、アルギン酸ナトリウムを好適に用いることができる。多価カチオンとしては、例えば、カルシウムイオンを用いることができ、このような多価カチオンの塩化物や硫酸塩や乳酸塩等の水溶液を用いることができる。
【0020】
具体的な例として、アルギン酸塩としてアルギン酸ナトリウムを用い、多価カチオン源として塩化カルシウムを用いる場合について説明する。本実施形態の触媒担体10を製造するには、まず、アルギン酸ナトリウムと、既述した鉄含有酸化物と、水とを含むスラリ20を作製する。このとき、スラリ20中の固形分濃度は、例えば、10~50wt%とすればよい。また、スラリ20中のアルギン酸ナトリウムの濃度は、例えば、1.0~2.5%とすればよい。そして、作製したスラリ20を、図3に示すように、塩化カルシウム水溶液22中に滴下する。このとき、塩化カルシウム水溶液22の濃度は、例えば、0.5~30%とすればよい。その結果、イオン架橋によるゲル化が進行し、滴下した液滴の表面がゲル化して、図4に示すように、鉄含有酸化物を含む粒状物18が得られる。上記のようにスラリ20を塩化カルシウム水溶液22中に滴下した後、数分から数時間程度、粒状物18を塩化カルシウム水溶液22中に浸漬すればよい。その後、得られた粒状物18を液中から回収して洗浄した後に乾燥させ、焼成することで、触媒担体10が完成する。乾燥は、粒状物18中の水分が十分に除去される条件であればよく、例えば、60℃~100℃で5時間以上とすることができる。焼成の条件は、十分な焼結性が得られて、適切な気孔率となるように、鉄含有酸化物の組成等に応じて適宜設定すればよく、例えば、1000℃~1300℃程度で2時間以上とすることができる。
【0021】
上記した製造方法により触媒担体10を製造する場合には、塩化カルシウム水溶液22中にスラリ20を滴下することで、表面張力によりスラリ20が球状になるため、担体粒子12において既述した円形度を容易に実現することが可能になる。また、既述したように、鉄含有酸化物がナトリウムを含むことにより触媒担体10の焼結性が向上するが、上記のようにアルギン酸ナトリウムを含むスラリ20を用いて触媒担体10を製造することにより、ナトリウムを含む触媒担体10を容易に作製可能となる。具体的には、例えば、鉄含有酸化物におけるナトリウムの含有量を、酸化物換算で、0.1~1.0wt%とすることが容易になる。鉄含有酸化物におけるナトリウムの含有量は、スラリ20中のアルギン酸ナトリウム濃度により調節することができる。
【0022】
また、上記した製造方法により触媒担体10を製造する際には、触媒担体10を構成する担体粒子12の大きさは、塩化カルシウム水溶液22中に滴下するスラリ20の液滴の大きさにより調節することができる。液滴の大きさは、スラリ20の滴下に用いる滴下用器具24の種類により、また、滴下用器具24の開口の大きさにより、調節することができる。また、製造される担体粒子12の円形度は、滴下するスラリ20におけるアルギン酸ナトリウムの濃度によって調節することができる。また、担体粒子12の気孔率は、粒状物18を焼成する際の焼成温度によって調節することができる。焼成温度を高く設定するほど、気孔率を低くすることができる。
【0023】
さらに、上記した製造方法により触媒担体10を製造する場合には、担体粒子12の表面に筋部14を形成することが容易になる。上記した製造方法により触媒担体10を製造する場合には、特に、図2に示すように、径の異なる同心円状に配置された複数の溝である筋部14aと、筋部14aを囲むように並んで配置された線分状の複数の溝である筋部14bと、を含む複数の筋部14を形成することが容易になる。上記した製造方法により触媒担体10を製造する場合には、担体粒子12の表面に形成する筋部14の状態(筋部14の長さ、溝ピッチ、本数、筋部14の形状を含む)は、例えば、スラリ20や塩化カルシウム水溶液22の濃度、塩化カルシウム水溶液22にスラリ20を滴下する際の高さ、あるいは、粒状物18の乾燥条件等により変更することができる。
【0024】
上記のようにして製造した触媒担体10上に触媒を担持させることにより、所望の反応を促進するために用いる触媒体を得ることができる。触媒担体10上に担持させる触媒は、触媒により促進すべき反応に応じて適宜選択すればよく、例えば、金属触媒や酸化物触媒等を用いることができる。金属触媒や酸化物触媒の担持方法に特に制限はなく、周知の方法を用いることができる。例えば、金属触媒を担持する場合には、触媒として用いる金属の化合物溶液を触媒担体10に含浸させて乾燥させる含浸法等の方法を用いることができる。
【0025】
以上のように構成された本実施形態の触媒担体10によれば、強磁性体である鉄含有酸化物を用いて形成されているため、マイクロ波照射により発熱させる際に、鉄含有酸化物のキュリー温度を超えて触媒担体10が昇温することを抑えることができる。すなわち、マイクロ波照射時の触媒担体10の発熱最高温度を、鉄含有酸化物のキュリー温度に応じた温度とすることができるため、特別な温度制御を行うことなく、触媒担体10が望ましくない程度の高温になることを抑え、触媒担体10の温度制御を容易化することができる。このとき、触媒担体10を構成する担体粒子12の円形度が、0.65以上であるため、マイクロ波照射による電荷移動が局所的に集まることを抑え、触媒担体10の局所的な温度上昇を抑えて、触媒担体10全体を均一に加熱することが可能になる。なお、上記したように、触媒担体10の発熱最高温度は、用いる鉄含有酸化物のキュリー温度によって定まるため、触媒担体10を構成する鉄含有酸化物は、触媒担体10に担持させる触媒の耐熱温度や、触媒が促進する反応に適した反応温度等に応じて、適宜選択すればよい。
【0026】
C.他の実施形態:
上記した実施形態では、アルギン酸塩の水溶液が多価カチオンと反応してゲル化する性質を利用して触媒担体10を製造する方法を説明したが、異なる方法により触媒担体10を製造してもよい。例えば、強磁性体である鉄含有酸化物によって構成される原料粉末を、プレス成形することにより、触媒担体10を製造してもよい。プレス成形に用いる金型の形状により、所望の円形度を有する担体粒子12を作製することができる。また、プレス成形に用いる金型の表面に、筋部14の応じた凹凸形状を設けることにより、所望の形状の筋部14が形成された担体粒子12を作製することができる。プレス成形により触媒担体10を製造する場合には、担体粒子12の円形度や筋部14の形状等を、より精度良く調節することができる。
【実施例0027】
<サンプルの作製>
強磁性体である鉄含有酸化物として、スピネル型結晶構造を有するNiFeを用い、図3および図4を用いて説明したように、アルギン酸塩とカルシウムイオンとが反応してゲル化する性質を利用して触媒担体を作製した。具体的には、NiFeの濃度が25wt%、アルギン酸ナトリウム濃度が1.5%のスラリを作製し、濃度5%の塩化カルシウム水溶液中に滴下した。このとき、滴下用器具の開口の大きさにより、液滴の大きさを調節した。滴下により生成された粒状物を塩化カルシウム水溶液中に数時間浸漬した後、粒状物を回収して、水で洗浄後、60℃で5時間以上乾燥させた。その後、1000℃~1300℃の範囲で設定した焼成温度にて粒状物を焼成し、担体粒子の集合体としての触媒担体であるサンプルS1およびサンプルS2を得た。
【0028】
<円形度の測定>
各サンプルについて、30倍のSEM像(視野範囲3mm×3mm)に1個の担体粒子全体が入るようにSEMで10点測定を行い、それぞれの撮影した画像に対して画像解析ソフトウェア WinRoof(三谷商事株式会社製)を用いて円形度を求め、その平均値を各サンプルの「円形度」とした。
【0029】
<絶対最大長の測定>
各サンプルについて、30倍のSEM像(視野範囲3mm×3mm)に1個の担体粒子全体が入るようにSEMで10点測定を行い、それぞれの撮影した画像に対して画像解析ソフトウェア WinRoof(三谷商事株式会社製)を用いて担体粒子の絶対最大長を求め、その平均値を算出した。
【0030】
<Na含有量>
各サンプルにおける酸化物換算したナトリウム含有量は、各サンプルを作製するために用いたスラリ中のアルギン酸ナトリウムの濃度から算出した。
【0031】
<気孔率>
各サンプルを樹脂埋めし、担体粒子の断面について、100×100μmの視野のSEM像を撮像し、得られた画像に対して画像解析ソフトウェア WinRoof(三谷商事株式会社製)を用いて2値化を行い、気孔部分を分離して、気孔率を算出した。具体的には、1サンプル当たり5視野で上記のようにして気孔率を算出し、その平均値として気孔率を求めた。
【0032】
図5は、サンプルS1およびS2についての上記した測定値をまとめて示す説明図である。また、既述した図1は、サンプルS1の触媒担体のSEM像を示し、既述した図2は、サンプルS2を構成する担体粒子のSEM像を示す。このように、円形度が0.65以上であり、表面に複数の筋部が形成され、ナトリウムの含有量が、酸化物換算で0.1wt%~1.0wt%であり、担体粒子の絶対最大長の平均が0.5mm~2.5mmであり、担体粒子の気孔率が、20%~60%である触媒担体が得られることが確認された。
【0033】
<亜鉛(Zn)の影響の検討>
触媒担体を構成する鉄含有酸化物が亜鉛を含むことの影響を調べるために、亜鉛の含有量の異なるスピネルフェライトを用いて、マイクロ波照射時の昇温状態を調べた。ここでは、亜鉛を含有しないNiFeと、亜鉛を含有する(Ni0.75Zn0.25)Feおよび(Ni0.5Zn0.5)Feと、の各々の粉末を用いて、同じ重さの粉末に対して2.45GHz、1000Wの条件でマイクロ波照射を行い、放射温度計にて経時的な温度変化を測定した。
【0034】
図6は、上記した亜鉛含有量の異なる鉄含有酸化物にマイクロ波照射したときの温度変化を示す説明図である。図6に示すように、鉄含有酸化物に亜鉛を添加することで、マイクロ波照射時の発熱により到達する最高温度を低下させることができた。この結果は、鉄含有酸化物が亜鉛を含むことで、鉄含有酸化物のキュリー温度が低下したためと考えられる。また、図6に示すように、(Ni0.75Zn0.25)Feと(Ni0.5Zn0.5)Feとでは、(Ni0.5Zn0.5)Feの方が、マイクロ波照射時の発熱により到達する最高温度が低くなった。この結果は、鉄含有酸化物が含む亜鉛の量によって、鉄含有酸化物のキュリー温度が変更されたためと考えられる。したがって、触媒担体を構成する鉄含有酸化物の亜鉛含有量によって、鉄含有酸化物のキュリー温度を制御して、マイクロ波照射時の発熱により触媒担体が到達する最高温度を制御することができると考えられる。
【0035】
<絶対最大長の影響の検討>
鉄含有酸化物としてNiFeを用い、上記したサンプルS1およびS2と同様にして触媒担体を作製した。ここでは、アルギン酸ナトリウムとNiFeとを含むスラリを塩化カルシウム水溶液中に滴下する際の液滴の大きさを変更することにより、絶対最大長の平均が2.4mmである触媒担体と、絶対最大長の平均が1.4mmである触媒担体とを作製した。
【0036】
図7は、上記した2種の触媒担体と、触媒担体の作製に用いたスラリの原料であるNiFe粉末(図7では「粉末」として示している)との各々に、マイクロ波照射したときの温度変化を示す説明図である。2.45GHz、500Wの条件で、同じ重さの各サンプルにマイクロ波照射を行い、放射温度計にて経時的な温度変化を測定した。図7に示すように、担体粒子の絶対最大長を、粒径が数μm程度の粉末よりも大きく確保することで、マイクロ波照射開始直後の温度上昇の傾きが大きくなり、昇温速度が速くなることが確認された。担体粒子の絶対最大長の平均が2.4mmのサンプルよりも、1.4mmのサンプルの方が、マイクロ波照射開始直後の温度上昇の傾きが大きいことから、触媒担体の急速加熱のためには、担体粒子の絶対最大長の平均は、例えば2.5mm以下とすることが望ましいと考えられる。
【0037】
<気孔率の影響の検討>
鉄含有酸化物としてNiFeを用い、上記したサンプルS1およびS2と同様にして触媒担体を作製した。ここでは、アルギン酸ナトリウムとNiFeとを含むスラリを塩化カルシウム水溶液中に滴下して得た粒状物を焼成する温度を1300℃と1400℃に設定して、2種類の触媒担体を作製した。なお、これら2種類の触媒担体の絶対最大長の平均は、いずれも2.4mmとした。
【0038】
図8は、上記した2種の触媒担体と、触媒担体の作製に用いたスラリの原料であるNiFe粉末(図7では「粉末」として示している)との各々に、マイクロ波照射したときの温度変化を示す説明図である。2.45GHz、500Wの条件で、同じ重さの各サンプルにマイクロ波照射を行い、放射温度計にて経時的な温度変化を測定した。焼結温度が高い方が、焼結性が高まり、得られる焼結体の気孔率が低下するため、図8において、焼成温度が1400℃のサンプルの方が、1300℃のサンプルよりも気孔率が低い。焼成温度が1400℃のサンプルの気孔率は15%であり、焼成温度が1300℃のサンプルの気孔率は40%であった。スラリの原料であるNiFe粉末は、粒径が数μm程度であり、上記した触媒担体を構成する担体粒子の粒径に比べて極めて小さい粒径となっている。そのため、粉末のサンプルにおける気孔率は、粉末のサンプル全体に対する、粉末を構成する粉末粒子間の空隙の割合を表す。粉末のサンプルにおける気孔率は60%を超えており、粉末のサンプルは、最も気孔率が高い例として用いている。
【0039】
図8に示すように、マイクロ波照射開始直後の温度上昇の傾きは、粉末のサンプルが最も小さいため、気孔率が高すぎると、触媒担体の急速加熱が困難になることが理解される。また、焼成温度が1400℃と高く緻密な(気孔率が低い)サンプルは、他のサンプルとは異なり、特定の最高温度に到達して温度が安定することなく、マイクロ波照射に伴って温度がさらに急上昇した。これは、上記のように気孔率が低いサンプルでは、磁気損失が温度上昇の律速ではなく、ジュール損失あるいは誘電損失が律速となり、これらの損失により、キュリー温度を超えて発熱するためと考えられる。
【0040】
本開示は、上述の実施形態等に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0041】
本開示は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
マイクロ波照射により発熱する触媒担体であって、
強磁性体である鉄含有酸化物を用いて粉粒体として形成されており、
前記粉粒体を構成する担体粒子の円形度が、0.65以上であることを特徴とする
触媒担体。
[適用例2]
適用例1に記載の触媒担体であって、
前記担体粒子は、自身の表面に、筋状の溝である筋部が複数形成されていることを特徴とする
触媒担体。
[適用例3]
適用例2に記載の触媒担体であって、
複数の前記筋部は、各々の前記筋部の長さが100μm以上であり、かつ、隣り合う前記筋部間の距離である溝ピッチが100μm以下であることを特徴とする
触媒担体。
[適用例4]
適用例2または3に記載の触媒担体であって、
前記担体粒子は、自身の表面に、10本以上の前記筋部を含む500μm四方の領域を備えることを特徴とする
触媒担体。
[適用例5]
適用例2から4までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
複数の前記筋部は、径の異なる同心円状に配置された複数の溝と、並んで配置された線分状の複数の溝と、を含むことを特徴とする
触媒担体。
[適用例6]
適用例1から5までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、銅(Cu)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする
触媒担体。
[適用例7]
適用例1から6までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物は、亜鉛(Zn)を含むことを特徴とする
触媒担体。
[適用例8]
適用例1から7までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物は、ナトリウム(Na)を含むことを特徴とする
触媒担体。
[適用例9]
適用例8に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物におけるナトリウムの含有量が、酸化物換算で0.1wt%~1.0wt%であることを特徴とする
触媒担体。
[適用例10]
適用例1から9までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記担体粒子の絶対最大長の平均が、0.5mm~2.5mmであることを特徴とする
触媒担体。
[適用例11]
適用例1から10までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記担体粒子の気孔率が、20%~60%であることを特徴とする
触媒担体。
[適用例12]
適用例1から11までのいずれか一項に記載の触媒担体であって、
前記強磁性体である鉄含有酸化物は、スピネルフェライトであることを特徴とする
触媒担体。
[適用例13]
適用例1から12までのいずれか一項に記載の触媒担体と、
前記触媒担体を構成する前記担体粒子上に担持された触媒と、
を備えることを特徴とする触媒体。
【符号の説明】
【0042】
10…触媒担体
12…担体粒子
14,14a,14b…筋部
18…粒状物
20…スラリ
22…塩化カルシウム水溶液
24…滴下用器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8