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特開2024-134711回転体装置、照明装置およびプロジェクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134711
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】回転体装置、照明装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240927BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240927BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20240927BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20240927BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240927BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240927BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 E
F21V9/40 200
F21V7/00 320
F21S2/00 311
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045054
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 光一
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA02
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA54
2K203GA35
2K203GA39
2K203GA40
2K203HA30
2K203HA93
2K203HB09
2K203HB22
2K203HB28
2K203MA14
2K203MA16
(57)【要約】
【課題】回転体のモーターからの脱落を抑制できる、回転体装置、照明装置およびプロジェクターを提供する。
【解決手段】本発明の回転体装置は、光を拡散する拡散領域を含む第1面を有し、回転軸を中心として回転可能な回転拡散体と、本体部から突出し回転軸を中心として回転する軸部を有し、回転拡散体を回転させるモーターと、軸部および回転拡散体に固定され、回転拡散体を保持する保持部材と、を備え、回転拡散体は、第1面と第1面とは反対側の第2面とを貫通し軸部が挿入された貫通孔を有し、モーターの本体部は、回転拡散体の第2面側に配置され、保持部材は、第1面を保持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を拡散する拡散領域を含む第1面を有し、回転軸を中心として回転可能な回転拡散体と、
本体部から突出し前記回転軸を中心として回転する軸部を有し、前記回転拡散体を回転させるモーターと、
前記軸部および前記回転拡散体に固定され、前記回転拡散体を保持する保持部材と、
を備え、
前記回転拡散体は、前記第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを貫通し前記軸部が挿入された貫通孔を有し、
前記モーターの前記本体部は、前記回転拡散体の前記第2面側に配置され、
前記保持部材は、前記第1面を保持する、
ことを特徴とする回転体装置。
【請求項2】
前記貫通孔の直径は、前記軸部の直径以上であり、前記回転軸に直交する方向に沿う前記保持部材の長さよりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転体装置。
【請求項3】
前記貫通孔の直径は、前記軸部の直径以上であり、前記回転軸に直交する方向に沿う前記本体部の外径よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転体装置。
【請求項4】
前記回転拡散体は単一の部材で構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の回転体装置。
【請求項5】
前記回転拡散体は、前記第1面および前記第2面を含む支持体と、前記支持体の前記第1面のうちの少なくとも前記拡散領域に設けられた拡散部材と、を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の回転体装置。
【請求項6】
前記拡散部材は、第1波長帯を有する第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材である、
ことを特徴とする請求項5に記載の回転体装置。
【請求項7】
光を射出する光源装置と、
前記光源装置からの光が入射する、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の回転体装置と、を備える、
ことを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項7に記載の照明装置と、
前記照明装置から射出された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える、
ことを特徴とするプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体装置、照明装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青色レーザー光の光路上に反射型の回転拡散板を用いたプロジェクター用の照明装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。この照明装置では、拡散面を有する回転体の裏面を接着することでモーターと固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-227862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の照明装置では、モーターと回転体との接着箇所に経時的な劣化等の不具合によって回転体がモーターから脱落し、青レーザー光が装置内で迷光となったり、青色レーザー光が外装筐体の隙間から外部に射出される恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の1つの態様によれば、光を拡散する拡散領域を含む第1面を有し、回転軸を中心として回転可能な回転拡散体と、本体部から突出し前記回転軸を中心として回転する軸部を有し、前記回転拡散体を回転させるモーターと、前記軸部および前記回転拡散体に固定され、前記回転拡散体を保持する保持部材と、を備え、前記回転拡散体は、前記第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを貫通し前記軸部が挿入された貫通孔を有し、前記モーターの前記本体部は、前記回転拡散体の前記第2面側に配置され、前記保持部材は、前記第1面を保持する、回転体装置が提供される。
【0006】
また、本発明の別の態様によれば、光を射出する光源装置と、光源装置からの光が入射する上記態様の回転体装置と、を備える、照明装置が提供される。
【0007】
また、本発明の別の態様によれば、上記態様の照明装置と、前記照明装置から射出された光を変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える、プロジェクターが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のプロジェクターを示す概略構成図である。
図2】照明装置の概略構成を示す図である。
図3】回転拡散装置の要部構成を示す断面図である。
図4A】回転拡散装置の組み立て工程を示す図である。
図4B】回転拡散装置の組み立て工程を示す図である。
図5】第1変形例の回転拡散装置の構成を示す断面図である。
図6】第2変形例の回転蛍光装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態のプロジェクターを示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、スクリーンSCR上に映像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクター1は、照明装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4Rと、光変調装置4Gと、光変調装置4Bと、合成光学系5と、投射光学装置6と、を備える。
【0011】
照明装置2は、色分離光学系3に向けて白色の照明光WLを射出する。照明装置2の構成については、後で詳しく説明する。
【0012】
色分離光学系3は、照明光WLを赤色照明光Rと、緑色照明光Gと、青色照明光Bとに分離する。色分離光学系3は、ダイクロイックミラー7a及びダイクロイックミラー7bと、全反射ミラー8a、全反射ミラー8b及び全反射ミラー8cと、第1のリレーレンズ9a及び第2のリレーレンズ9bとを備えている。以下、赤色、緑色及び青色を総称してRGB各色と呼ぶ場合もある。
【0013】
ダイクロイックミラー7aは、照明装置2からの照明光WLを赤色照明光Rと、その他の光(緑色照明光G及び青色照明光B)とに分離する。ダイクロイックミラー7aは、赤色照明光Rを透過すると共に、その他の光を反射する。ダイクロイックミラー7bは、緑色照明光Gを反射すると共に青色照明光Bを透過させる。
【0014】
全反射ミラー8aは、赤色照明光Rを光変調装置4Rに向けて反射する。全反射ミラー8b及び全反射ミラー8cは、青色照明光Bを光変調装置4Bに導く。緑色照明光Gは、ダイクロイックミラー7bから光変調装置4Gに向けて反射される。
【0015】
第1のリレーレンズ9a及び第2のリレーレンズ9bは、青色照明光Bの光路中におけるダイクロイックミラー7bの後段に配置されている。
【0016】
光変調装置4Rは、赤色照明光Rを画像情報に応じて変調し、赤色の画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色照明光Gを画像情報に応じて変調し、緑色の画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色照明光Bを画像情報に応じて変調し、青色の画像光を形成する。
【0017】
光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられている。また、液晶パネルの入射側及び射出側各々には、偏光板(図示せず。)が配置されている。
【0018】
また、光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bの入射側には、それぞれフィールドレンズ10R,フィールドレンズ10G,フィールドレンズ10Bが配置されている。
【0019】
合成光学系5には、光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bからの各画像光が入射する。合成光学系5は、各画像光を合成し、この合成された画像光を投射光学装置6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられている。
【0020】
投射光学装置6は、投射レンズ群からなり、合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上には、拡大されたカラー映像が表示される。
【0021】
続いて、本発明の一実施形態に係る照明装置2について説明する。図2は照明装置2の概略構成を示す図である。
図2に示すように、照明装置2は、光源装置20と、集光レンズ25と、回転拡散装置(回転体装置)40と、平行化素子26と、インテグレーター光学系50と、を備えている。
【0022】
光源装置20は、赤色用光源部20Rと、緑色用光源部20Gと、青色用光源部20Bと、色合成光学系24と、を含む。
本実施形態において、赤色用光源部20R、色合成光学系24および青色用光源部20Bは、赤色用光源部20Rの光軸ax1上に設けられている。緑色用光源部20G、色合成光学系24および回転拡散装置40は、緑色用光源部20Gの光軸ax2上に設けられている。光軸ax1と光軸ax2とは、互いに直交している。なお、青色用光源部20Bの光軸は赤色用光源部20Rの光軸ax1と一致している。
また、回転拡散装置40、集光レンズ25およびインテグレーター光学系50は、照明装置2の照明光軸AX上に設けられている。照明光軸AXと光軸ax1とは互いに平行である。
【0023】
赤色用光源部20Rは、赤色レーザー光源21Rとコリメーターレンズ22Rとを有する。緑色用光源部20Gは、緑色レーザー光源21Gとコリメーターレンズ22Gとを有する。青色用光源部20Bは、青色レーザー光源21Bとコリメーターレンズ22Bとを有する。本実施形態において、光源装置20は、光を射出する光源として、赤色レーザー光源21R、緑色レーザー光源21Gおよび青色レーザー光源21Bを有している。
【0024】
赤色レーザー光源21Rは、例えば585nm~720nmの波長帯を有する赤色光LRを射出する。コリメーターレンズ22Rは、赤色レーザー光源21Rから射出された赤色光LRを平行光に変換する。
緑色レーザー光源21Gは、例えば495nm~585nmの波長帯を有する緑色光LGを射出する。コリメーターレンズ22Gは、緑色レーザー光源21Gから射出された緑色光LGを平行光に変換する。
青色レーザー光源21Bは、例えば380nm~495nmの波長帯を有する青色光LBを射出する。コリメーターレンズ22Bは、青色レーザー光源21Bから射出された青色光LBを平行光に変換する。
【0025】
なお、図2では、各光源部20R、20G、20Bとして、1個のレーザー光源と1個のコリメーターレンズとを示しているが、レーザー光源およびコリメーターレンズの個数および配置は限定されない。また、各光源部20R、20G、20Bは、レーザー光源およびコリメーターレンズを保持するパッケージ等、他の部材を有していてもよい。
【0026】
色合成光学系24は、クロスダイクロイックプリズムから構成されている。クロスダイクロイックプリズムは、第1ダイクロイックミラー24aと、第2ダイクロイックミラー24bと、を有する。第1ダイクロイックミラー24aおよび第2ダイクロイックミラー24bは、それぞれ光軸ax1及び光軸ax2に対して45°で交差するように配置されている。また、第1ダイクロイックミラー24a及び第2ダイクロイックミラー24bは、互いに45°の角度をなすように交差する。
【0027】
第1ダイクロイックミラー24aは、青色光LBを反射するとともに、緑色光LGおよび赤色光LRを透過させる光学特性を有している。第2ダイクロイックミラー24bは、赤色光LRを反射するとともに、青色光LBおよび緑色光LGを透過させる光学特性を有している。
【0028】
集光レンズ25は、照明光WLを集光させつつ回転拡散装置40に入射させる。回転拡散装置40は、集光レンズ25の射出側に配置される。回転拡散装置40は、照明光WLを拡散させることにより、表示品位を低下させるスペックルの発生を抑制する。
【0029】
本実施形態の回転拡散装置40において、回転拡散体41は、透過型の拡散体ではなく反射型の拡散体であり、照明光WLを拡散させつつ反射する。回転拡散装置40は、集光レンズ25の集光位置あるいは焦点位置の近傍に配置されている。回転拡散装置40は、光軸ax2及び照明光軸AXに対して45°で交差するように配置されている。
【0030】
図3は回転拡散装置40の要部構成を示す断面図である。図3は回転軸Oを含む面に沿う回転拡散装置40の断面図である。
図3に示すように、回転拡散装置40は、回転軸Oを中心として回転可能な回転拡散体41と、モーター42と、保持部材45と、を有する。
【0031】
回転拡散体41は、集光レンズ25により集光されて入射する照明光WLを拡散する拡散領域KAを含む第1面41aと、第1面41aとは反対側の第2面41bと、を有する。回転拡散体41には、第1面41aと第2面41bとを貫通する貫通孔48が形成されている。
【0032】
本実施形態の回転拡散体41は、例えば、アルミニウム等の金属製の円板で構成されている。本実施形態の回転拡散体41は単一の部材で構成されため、回転拡散装置40を構成する部品点数を少なくできる。
【0033】
第1面41aの拡散領域KAには、複数の凹部と複数の凸部からなる凹凸構造47が設けられている。凹凸構造47は例えばランダムに配置された複数の曲面を含む。凹凸構造47は、例えば、エッチング処理やブラスト処理等によって形成される。本実施形態において、第1面41aのうち拡散領域KAを除いた領域は平面で構成されている。つまり、拡散領域KAは第1面41aの一部に形成されている。なお、拡散領域KAは第1面41aの全域に形成されてもよい。
【0034】
モーター42は、本体部420と、本体部420から突出する軸部43と、を有している。本体部420は、回転拡散体41の第2面41b側に配置されている。
軸部43は第1面41aと直交する回転軸Oを中心として回転し、回転拡散体41を回転軸O回りに回転させる。軸部43は、回転拡散体41の貫通孔48に挿入される。
【0035】
保持部材45は、モーター42に対して回転拡散体41を保持する。保持部材45は、例えば、所定の剛性を有する金属板で構成されている。
保持部材45はモーター42の軸部43に固定される。保持部材45と軸部43とは、例えば、モーター42の軸部43の先端の外周面に設けられた雄ねじ部を保持部材45に設けられたねじ穴に螺合させることで、互いが固定される。このため、保持部材45は、モーター42の軸部43と強固に固定される。ここで、例えば、軸部43の雄ねじと保持部材45のねじ穴とが締結される際の回転方向と軸部43の主回転方向とを反対方向に設定すれば、軸部43と保持部材45との固定状態に緩みを生じ難くすることができる。
【0036】
また、保持部材45は、接着剤を介して回転拡散体41の第1面41aに固定される。これにより、保持部材45は、回転拡散体41の第1面41aを保持している。なお、保持部材45と第1面41aとの固定方法は接着に限定されず、ねじ部材で固定してもよい。
【0037】
このような構成に基づいて、本実施形態の回転拡散装置40では、回転拡散体41の第1面41aを保持する保持部材45と、回転拡散体41の第2面41b側に配置されたモーター42の本体部420とが、回転拡散体41に形成された貫通孔48に挿入された軸部43を介して互いに連結されている。
【0038】
ここで、回転拡散装置40の各構成部材の寸法について説明する。図3において、貫通孔48の直径をD1、モーター42の軸部43の直径をD2、回転軸Oに直交する方向である径方向に沿う保持部材45の長さをD3、径方向に沿うモーター42の本体部420の外径をD4とする。
【0039】
貫通孔48の直径D1は軸部43の直径D2以上であり、径方向に沿う保持部材45の長さD3よりも小さくすることが好ましい。つまり、D3>D1≧D2の関係を満たすことが好ましい。
【0040】
また、貫通孔48の直径D1は、軸部43の直径D2以上であり、径方向に沿う本体部420の外径D4よりも小さくすることが好ましい。つまり、D4>D1≧D2の関係を満たすことが好ましい。なお、保持部材45の長さD3と本体部420の外径D4との大小関係は特に限定されない。
具体的に本実施形態の回転拡散装置40では、D3>D4>D1=D2の関係を満たしている。
このため、本実施形態の回転拡散装置40において、モーター42の本体部420は貫通孔48を通り抜けて回転拡散体41の第2面41b側から第1面41aへと移動することはなく、保持部材45は貫通孔48を通り抜けて回転拡散体41の第1面41a側から第2面41bへと移動することはない。
【0041】
このように本実施形態の回転拡散装置40では、軸部43と保持部材45とが強固に固定された状態において、軸部43に挿入された回転拡散体41における回転軸Oに沿う方向の位置が保持部材45とモーター42の本体部420との間に規制されたものとなっている。
【0042】
続いて、本実施形態の回転拡散装置40の組み立て方法について図面を参照しつつ説明する。図4Aおよび図4Bは回転拡散装置40の組み立て工程を示す図である。
まず、図4Aに示すように、モーター42を回転拡散体41の第2面41b側に配置し、モーター42の軸部43を回転拡散体41の貫通孔48に挿入する。本実施形態の場合、軸部43の直径D2と貫通孔48の直径D1とが等しいため、軸部43は貫通孔48に対して嵌合される。具体的にモーター42の軸部43は、先端が第1面41a側から突出するまで貫通孔48に挿入される。
【0043】
続いて、図4Bに示すように、保持部材45を回転拡散体41の第1面41a側に配置し、保持部材45と軸部43とを固定する。本実施形態の場合、モーター42の軸部43の先端の外周面に設けられた雄ねじ部を保持部材45に設けられたねじ穴に螺合させる。
続いて、保持部材45と回転拡散体41の第1面41aとを接着固定する。なお、保持部材45と軸部43とを固定する工程に先立ち、第1面41aにおける保持部材45との接触部分に接着剤を予め塗布しておけば、保持部材45と軸部43との固定と保持部材45と第1面41aとの接着固定とを同時に行うことができ、組み立て工程を簡略化できる。
以上の工程により、本実施形態の回転拡散装置40の組み立てが完了する。
【0044】
図2に戻り、平行化素子26は、コリメーターレンズから構成されている。平行化素子26は、回転拡散装置40から射出された照明光WLの拡散光を平行化し、インテグレーター光学系50に向けて射出する。本実施形態の場合、平行化素子26は、一つの凸レンズから構成されている。なお、平行化素子26は、複数のレンズから構成されていてもよい。
【0045】
インテグレーター光学系50は、マルチレンズアレイ51と、重畳レンズ52と、を有する。インテグレーター光学系50は、平行化素子26から射出された照明光WLの照度分布を光変調装置4R、4G、4Bの各々の画像形成領域において均一化する。
【0046】
本実施形態の場合、マルチレンズアレイ51は、第1マルチレンズ面51aおよび第2マルチレンズ面51bが一体化された両面マルチレンズアレイから構成されている。第1マルチレンズ面51aは、平行化素子26から射出された照明光WLを複数の部分光線束に分割するための複数の第1小レンズ53を含む。複数の第1小レンズ53は、照明光軸AXと直交する面内にマトリクス状に配列されている。
【0047】
第2マルチレンズ面51bは、第1マルチレンズ面51aの各第1小レンズ53に対応する複数の第2小レンズ54を含む。第2マルチレンズ面51bは、後段の重畳レンズ52とともに、第1マルチレンズ面51aの各第1小レンズ53の像を光変調装置4R、光変調装置4Gおよび光変調装置4Bの各々の画像形成領域もしくはその近傍に結像させる。複数の第2小レンズ54は、照明光軸AXに直交する面内にマトリクス状に配列されている。
【0048】
重畳レンズ52は、マルチレンズアレイ51から射出される複数の部分光線束のそれぞれを集光して光変調装置4R、光変調装置4Gおよび光変調装置4Bの各々の画像形成領域もしくはその近傍で互いに重畳させる。
【0049】
以上のように本実施形態の回転拡散装置40は、入射する照明光WLを拡散する拡散領域KAを含む第1面41aを有し、回転軸Oを中心として回転可能な回転拡散体41と、本体部420から突出し回転軸Oを中心として回転する軸部43を有し、回転拡散体41を回転させるモーター42と、軸部43および回転拡散体41に固定され、回転拡散体41を保持する保持部材45と、を備える。回転拡散体41は、第1面41aと第2面41bとを貫通する貫通孔48に、モーター42の軸部43が挿入される。モーター42の本体部420は回転拡散体41の第2面41b側に配置され、保持部材45は第1面41aを保持する。
【0050】
本実施形態の回転拡散装置40によれば、軸部43と保持部材45とが固定された状態において、軸部43に挿入された回転拡散体41における回転軸Oに沿う方向の位置が保持部材45とモーター42の本体部420との間に規制される。
ここで、仮に何らかの理由により保持部材45および回転拡散体41の接着による固定が剥離した場合について考える。
本実施形態の回転拡散装置40によれば、モーター42の軸部43が貫通孔48の深さ方向に相対的に移動する外力が作用したとしても、保持部材45あるいは本体部420が回転拡散体41に接触することで軸部43が貫通孔48から外れることが防止される。
したがって、本実施形態の回転拡散装置40によれば、仮に保持部材45が回転拡散体41から分離したとしても、モーター42の軸部43から回転拡散体41が脱落することを防止できる。
【0051】
本実施形態の照明装置2は、照明光WLを射出する光源装置20と、光源装置20からの照明光WLが入射する回転拡散装置40と、を備える。
【0052】
本実施形態の照明装置2によれば、回転拡散体41の脱落が防止されるため、回転拡散体41が脱落してレーザー光からなる照明光WLが照明装置2の外部に漏れ出すといった不具合の発生を抑制することができる。よって、照明光WLの拡散光を安定して生成できる信頼性に優れた照明装置を提供できる。
【0053】
本実施形態のプロジェクター1は、照明装置2と、照明装置2から射出された光を変調する光変調装置4R,4G,4Bと、光変調装置4R,4G,4Bにより変調された光を投射する投射光学装置6と、を備える。
【0054】
本実施形態のプロジェクター1によれば、表示品質に優れ、高効率のプロジェクターを提供することができる。
【0055】
上記実施形態では、軸部43の直径D2と貫通孔48の直径D1とが等しく、軸部43が貫通孔48に嵌合される場合を例に挙げたが、軸部43の直径D2は貫通孔48の直径D1よりも小さくてもよい(D1>D2)。つまり、D3>D4>D1>D2の関係を満たす場合においても、保持部材45あるいは本体部420が回転拡散体41に接触することで軸部43が貫通孔48から外れることが防止されるので、モーター42の軸部43から回転拡散体41が脱落することを防止することができる。
【0056】
また、上記実施形態の回転拡散装置40において、回転拡散体41は単一の部材で構成されていたが、回転拡散体は複数の部材で構成されてもよい。
【0057】
(第1変形例)
以下、第1変形例として、回転拡散装置の別形態について説明する。本変形例と上記実施形態との違いは回転拡散装置の回転拡散体が複数の部材で構成される点であり、それ以外の構成は共通である。このため、上記実施形態と共通の構成については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0058】
図5は変形例の回転拡散装置の構成を示す断面図である。
図5に示すように、本変形例の回転拡散装置40Aは、回転拡散体41Aと、モーター42と、保持部材45と、を有する。本変形例の回転拡散体41Aは、支持体410と、拡散部材411と、を有する。
支持体410は、拡散部材411が設けられる第1面410aと、第1面410aとは反対の第2面410bと、を有する。支持体410は、例えば、ガラスやプラスチックや金属等の所定の剛性を有する基材で構成される。
拡散部材411は、支持体410の第1面410aのうちの少なくとも拡散領域KAに設けられる。本変形例の場合、拡散部材411は第1面410aの全面に設けられている。つまり、本変形例の場合、拡散部材411は拡散領域KAに位置する部分のみに照明光WLが入射されるようになっている。拡散部材411は、例えばエッチング処理やブラスト処理等によって一方面に凹凸構造を形成したアルミニウム基板で構成されている。
【0059】
回転拡散体41Aには、第1面410aと第2面410bとを貫通する貫通孔480が形成されている。本変形例の場合、貫通孔480は拡散部材411も貫通している。
【0060】
本変形例の回転拡散装置40Aによれば、上記実施形態と同様、モーター42の軸部43から回転拡散体41Aが脱落することを防止できる。
また、本変形例の回転拡散装置40Aでは、回転拡散体41Aが支持体410と拡散部材411とを組み合わせて構成されるため、拡散部材411として支持体410とは異なる材料を用いることができる。このため、拡散部材411として所望の拡散特性を得る部材を採用できるので、回転拡散体41Aの拡散特性を容易に高めることができる。
【0061】
上記実施形態および第1変形例では、回転体装置として入射する光を拡散させる拡散装置を例に挙げたが、本発明の回転体装置は励起光を波長変換して蛍光を生成する回転蛍光装置にも適用可能である。
【0062】
(第2変形例)
以下、第2変形例として、回転拡散装置の別形態について説明する。
本変形例と上記実施形態との違いは回転体装置を回転蛍光装置に適用した点である。なお、上記実施形態と共通の構成については同じ符号を付し、詳細については説明を省略する。
【0063】
図6は変形例の回転蛍光装置の構成を示す断面図である。
図6に示すように、本変形例の回転蛍光装置140は、回転拡散体141と、モーター42と、保持部材45と、を有する。本変形例の回転拡散体141は、支持体145と、波長変換部材142と、反射層143と、を有する。
【0064】
支持体145は、波長変換部材142が設けられる第1面145aと、第1面145aとは反対の第2面145bと、を有する。支持体145は、高い熱伝導率を有する材料である、例えば、金属やセラミックス等の基板により構成される。
波長変換部材142は、励起光Eが入射する上面142aと、上面142aとは反対側の下面142bと、を有する。波長変換部材142は、第1波長帯を有する第1光として青色波長帯の励起光Eを青色波長帯とは異なる第2波長帯を有する蛍光(第2光)Yに変換する波長変換体である。蛍光Yの波長帯は、例えば500~680nmにピーク波長を有する。すなわち、蛍光YLは、緑色光成分および赤色光成分を含む黄色光である。
【0065】
波長変換部材142は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体を含んでいる。賦活剤としてのセリウム(Ce)を含有するYAG:Ceを例に挙げると、波長変換部材142の材料として、Y、Al、CeO等の構成元素を含む原料粉末を混合して固相反応させた材料、共沈法、ゾルゲル法等の湿式法により得られるY-Al-Oアモルファス粒子、噴霧乾燥法、火炎熱分解法、熱プラズマ法等の気相法により得られるYAG粒子等が用いられる。
【0066】
波長変換部材142は支持体145の第1面145a上にリング状に設けられている。
波長変換部材142は蛍光Yを拡散させた状態で上面142aから発光する。つまり、波長変換部材142は光を拡散させる拡散部材である。つまり、支持体145の第1面145aにおいて波長変換部材142が設けられたリング状の領域は光を拡散する拡散領域KA1とみなせる。また、本変形例の支持体145は、光を拡散する拡散領域KA1を含む第1面145aを有しているとみなせる。
【0067】
反射層143は、支持体145と波長変換部材142との間に配置され、波長変換部材142で生成されて支持体145側に向かう蛍光Yを波長変換部材142側に向けて反射する。反射層143は、誘電体多層膜、金属ミラーおよび増反射膜等を含む積層膜で構成される。
【0068】
回転拡散体141の支持体145には、第1面145aと第2面145bとを貫通する貫通孔148が形成され、モーター42の軸部43が貫通孔148に挿入されている。保持部材45は軸部43および支持体145の第1面145aに固定される。
【0069】
本変形例の回転蛍光装置140においても、モーター42の軸部43から回転拡散体141が脱落することを防止できる。
よって、本変形例の回転蛍光装置140を備えた照明装置によれば、波長変換部材142を含む回転拡散体141の脱落を抑制することで、拡散光である蛍光Yを含む照明光を安定して生成することができる。また、この照明装置を用いたプロジェクターによれば、表示品質に優れ、高効率のプロジェクターを提供できる。
【0070】
なお、本変形例の回転蛍光装置140において、反射層143は、支持体145の第1面145aにおいて、波長変換部材142の下面142bに対向する位置のみに設けられていたが、これに限られない。反射層は、回転蛍光装置140の第1面145a全体に亘って設けられていてもよく、支持体自体が反射層の材料により構成されていてもよい。
【0071】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上記実施形態で示した回転体装置、照明装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料、組み立て方法等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態および変形例において、回転体拡散体は拡散光を光入射側に向けて反射する反射型の拡散体を例に挙げたが、拡散光を入射側とは反対に射出する透過型の拡散体にも本発明の回転装置は適用可能である。
【0073】
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
光を拡散する拡散領域を含む第1面を有し、回転軸を中心として回転可能な回転拡散体と、
本体部から突出し前記回転軸を中心として回転する軸部を有し、前記回転拡散体を回転させるモーターと、
前記軸部および前記回転拡散体に固定され、前記回転拡散体を保持する保持部材と、
を備え、
前記回転拡散体は、前記第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを貫通し前記軸部が挿入された貫通孔を有し、
前記モーターの前記本体部は、前記回転拡散体の前記第2面側に配置され、
前記保持部材は、前記第1面を保持する、
ことを特徴とする回転体装置。
【0074】
この構成の回転体装置によれば、モーターの軸部が貫通孔の深さ方向に相対的に移動する外力が作用した場合でも、保持部材あるいは本体部が回転拡散体に接触することで軸部が貫通孔から外れることが抑制される。
したがって、この構成の回転拡散装置によれば、仮に保持部材が回転拡散体から分離したとしても、モーターの軸部から回転拡散体が脱落することを防止できる。
【0075】
(付記2)
前記貫通孔の直径は、前記軸部の直径以上であり、前記回転軸に直交する方向に沿う前記保持部材の長さよりも小さい、
ことを特徴とする付記1に記載の回転体装置。
【0076】
この構成によれば、貫通孔に挿入された軸部に固定された保持部材が貫通孔を通り抜けて回転拡散体の第1面側から第2面に移動することがない。これにより、モーターの軸部から回転拡散体が脱落することを防止できる。
【0077】
(付記3)
前記貫通孔の直径は、前記軸部の直径以上であり、前記回転軸に直交する方向に沿う前記本体部の外径よりも小さい、
ことを特徴とする付記1または付記2に記載の回転体装置。
【0078】
この構成によれば、モーターの本体部が貫通孔を通り抜けて回転拡散体の第2面側から第1面に移動することがない。これにより、モーターの軸部から回転拡散体が脱落することを防止できる。
【0079】
(付記4)
前記回転拡散体は単一の部材で構成されている、
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の回転体装置。
【0080】
この構成によれば、回転体装置の構成部品の数を少なくできる。
【0081】
(付記5)
前記回転拡散体は、前記第1面および前記第2面を含む支持体と、前記支持体の前記第1面のうちの少なくとも前記拡散領域に設けられた拡散部材と、を有する、
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の回転体装置。
【0082】
この構成によれば、拡散部材として支持体とは異なる材料を用いることができる。このため、拡散部材として所望の拡散特性を得る部材を採用できるので、回転拡散体の拡散特性を容易に高めることができる。
【0083】
(付記6)
前記拡散部材は、第1波長帯を有する第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材である、
ことを特徴とする付記5に記載の回転体装置。
【0084】
この構成によれば、波長変換部材を含む回転拡散体におけるモーターの軸部からの脱落が抑制されるため、第1光を波長変換した拡散光からなる第2光を安定して生成することができる。
【0085】
(付記7)
光を射出する光源装置と、
前記光源装置からの光が入射する、付記1から付記6のうちのいずれか一つに記載の回転体装置と、を備える、
ことを特徴とする照明装置。
【0086】
この構成の照明装置によれば、明るい照明光を射出する照明装置を提供することができる。また、波長変換装置から発光される蛍光のエテンデューが小さくなるため、蛍光を含む照明光が後段の光学系に効率良く取り込まれることで光利用効率を高めた照明装置を提供できる。
【0087】
(付記8)
付記7に記載の照明装置と、
前記照明装置から射出された光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える、
ことを特徴とするプロジェクター。
【0088】
この構成のプロジェクターによれば、表示品質に優れ、高効率のプロジェクターを提供できる。
【符号の説明】
【0089】
1…プロジェクター、2…照明装置、4B,4G,4R…光変調装置、6…投射光学装置、20…光源装置、40…回転拡散装置(回転体装置)、41,41A,141…回転拡散体、41a,145a,410a…第1面、41b,145b,410b…第2面、42…モーター、43…軸部、45…保持部材、48,148,480…貫通孔、142…波長変換部材、145,410…支持体、411…拡散部材、420…本体部、D1,D2…直径、D3…長さ、D4…外径、KA,KA1…拡散領域、O…回転軸、Y…蛍光(第2光)。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6