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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134714
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】センサーモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/10 20060101AFI20240927BHJP
   G01L 1/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01P15/10
G01L1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045057
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】轟原 正義
(57)【要約】
【課題】2つの物理量センサーを用いて同相ノイズを低減させるとともに測定感度を向上させ、かつ、同相でないノイズも低減させることが可能なセンサーモジュールを提供すること。
【解決手段】基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、第1物理量センサーが出力する第1被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントの第1カウント値を生成する第1カウント部と、第2物理量センサーが出力する第2被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントの第2カウント値を生成する第2カウント部と、前記第1カウント値が入力され、第3カウント値を出力する第1フィルターと、前記第2カウント値が入力され、第4カウント値を出力する第2フィルターと、前記第3カウント値と前記第4カウント値との差分に基づく測定値を出力するフィルター部と、を備える、センサーモジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸を検出軸として物理量を検出し、当該物理量の大きさに応じて周波数が変化する第1被測定信号を出力する第1物理量センサーと、
前記第1軸と逆方向の第2軸を検出軸として物理量を検出し、当該物理量の大きさに応じて周波数が変化する第2被測定信号を出力する第2物理量センサーと、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
前記第1被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1カウント値を生成する第1カウント部と、
前記第2被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第2カウント値を生成する第2カウント部と、
前記第1カウント値が入力され、第3カウント値を出力する第1フィルターと、
前記第2カウント値が入力され、第4カウント値を出力する第2フィルターと、
前記第3カウント値と前記第4カウント値との差分に基づく測定値を出力するフィルター部と、を備える、センサーモジュール。
【請求項2】
請求項1において、
前記フィルター部は、
前記第3カウント値と前記第4カウント値との差分値を出力する減算器と、
前記差分値が入力され、前記測定値を出力する第3フィルターと、を含む、センサーモジュール。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1フィルターは、前記第1被測定信号に同期して動作し
前記第2フィルターは、前記第2被測定信号に同期して動作し、
前記第3フィルターは、前記基準周期信号に同期して動作する、センサーモジュール。
【請求項4】
請求項1において、
前記フィルター部は、
前記第3カウント値が入力され、第5カウント値を出力する第3フィルターと、
前記第4カウント値が入力され、第6カウント値を出力する第4フィルターと、
前記第5カウント値と前記第6カウント値との差分値を前記測定値として出力する減算器と、を含む、センサーモジュール。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1フィルターは、前記第1被測定信号に同期して動作し
前記第2フィルターは、前記第2被測定信号に同期して動作し、
前記第3フィルター及び前記第4フィルターは、前記基準周期信号に同期して動作する、センサーモジュール。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記第1カウント部は、
前記第1被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1時間デジタル値を生成する第1時間デジタル値生成部と、
前記第1時間デジタル値と前記第1カウント値とに基づいて第1合成出力値を生成する第1合成出力値生成部と、を含み、
前記第1合成出力値の量子化誤差が次の前記第1合成出力値の生成にフィードバックされ、
前記第2カウント部は、
前記第2被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第2時間デジタル値を生成する第2時間デジタル値生成部と、
前記第2時間デジタル値と前記第2カウント値とに基づいて第2合成出力値を生成する第2合成出力値生成部と、を含み、
前記第2合成出力値の量子化誤差が次の前記第2合成出力値の生成にフィードバックされる、センサーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の加速度センサーと、第1の加速度センサーと検出軸方向が対向するように配置された第2の加速度センサーと、第1の加速度センサーからの検出値と第2の加速度センサーからの検出値との差動値を求める差動値検出部と、を備えた加速度センサーが記載されている。特許文献1に記載の技術によれば、同相である電気的ノイズを取り除きつつ、検出する加速度を大きくできるので、精度の高い加速度センサーを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/145489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の加速度センサーでは、同相ノイズを取り除くことはできるものの、第1の加速度センサーや第2の加速度センサーに固有なノイズ等の同相でないノイズを低減させることは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るセンサーモジュールの一態様は、
第1軸を検出軸として物理量を検出し、当該物理量の大きさに応じて周波数が変化する第1被測定信号を出力する第1物理量センサーと、
前記第1軸と逆方向の第2軸を検出軸として物理量を検出し、当該物理量の大きさに応じて周波数が変化する第2被測定信号を出力する第2物理量センサーと、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
前記第1被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1カウント値を生成する第1カウント部と、
前記第2被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第2カウント値を生成する第2カウント部と、
前記第1カウント値が入力され、第3カウント値を出力する第1フィルターと、
前記第2カウント値が入力され、第4カウント値を出力する第2フィルターと、
前記第3カウント値と前記第4カウント値との差分に基づく測定値を出力するフィルター部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態のセンサーモジュールの構成を示すブロック図。
図2】センサーモジュールの動作の一例を示すタイミングチャート図。
図3】第1カウント部又は第2カウント部の構成例を示す図。
図4】時間デジタル値生成部の構成例を示す図。
図5】合成出力値生成部の構成例を示す図。
図6】発振部の構成例を示す図。
図7】第1実施形態における時間デジタル値生成部及び合成出力値生成部の動作の一例を示すタイミングチャート図。
図8】第1実施形態における時間デジタル値生成部及び合成出力値生成部の動作の一例を示すタイミングチャート図。
図9】第2実施形態のセンサーモジュールの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0008】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態のセンサーモジュールの構成を示すブロック図である。また、図2は、第1実施形態のセンサーモジュールの動作の一例を示すタイミングチャート図である。第1実施形態のセンサーモジュール1は、不図示の被測定物に取り付けられ、検出した物理量に応じた測定値DOを出力する。図1に示すように、センサーモジュール1は、第1物理量センサー11、第2物理量センサー12、第1カウント部21、第2カウント部22、第1フィルター31、第2フィルター32、基準周期信号生成部40及びフィルター部50を備える。
【0009】
第1物理量センサー11は、第1軸を検出軸として物理量を検出し、検出した物理量の大きさに応じて周波数が変化する第1被測定信号TRG1を出力する。具体的には、第1物理量センサー11は、第1軸を検出軸として物理量を検出する不図示の第1物理量検出素子と、第1物理量検出素子を発振させる不図示の第1発振回路とを有し、第1発振回路が第1被測定信号TRG1を出力する。
【0010】
第2物理量センサー12は、第2軸を検出軸として物理量を検出し、検出した物理量の大きさに応じて周波数が変化する第2被測定信号TRG2を出力する。具体的には、第2物理量センサー12は、第2軸を検出軸として物理量を検出する不図示の第2物理量検出素子と、第2物理量検出素子を発振させる不図示の第2発振回路とを有し、第2発振回路が第1被測定信号TRG1を出力する。
【0011】
第1物理量センサー11が検出する物理量と第2物理量センサー12が検出する物理量とは同じである。例えば、物理量は、加速度、角速度、角加速度、圧力等であってもよい。
【0012】
本実施形態では、第1物理量センサー11及び第2物理量センサー12は、センサーモジュール1の内部に互いに近い位置に、検出軸が互いに逆方向となるように取り付けられている。したがって、第2軸は、第1軸と逆方向である。ここで、第2軸が第1軸と逆方向であるとは、第1軸と第2軸とのなす角が正確に180°である場合のみならず、第1物理量センサー11及び第2物理量センサー12の製造誤差や取り付け誤差等に起因して、第1軸と第2軸とのなす角が180°に対して誤差を有する場合も含まれる。また、第2軸が、第1軸成分の物理量に対して第1軸と異なる符号の感度を持つ検出軸であれば効果が得られることから、「第2軸が第1軸と逆方向」とは、第1軸と第2軸とのなす角が正確に180°である場合のみならず、第2軸の方向成分に第1軸の逆方向成分を含む場合も含まれる。
【0013】
第1物理量センサー11及び第2物理量センサー12は、検出軸が互いに逆方向であるので、第1被測定信号TRG1の周波数f1が高くなる方向に変化するときは、第2被測定信号TRG2の周波数f2は低くなる方向に変化する。また、第1被測定信号TRG1の周波数f1が低くなる方向に変化するときは、第2被測定信号TRG2の周波数f2は高くなる方向に変化する。以降の説明では、物理量がゼロのとき周波数f1及び周波数f2はともに基準周波数f0であり、第1軸の方向の物理量が発生したときは周波数f1が基準周波数f0よりもΔfだけ高くなるとともに周波数f2が基準周波数f0よりもΔfだけ低くなり、第2軸の方向の物理量が発生したときは周波数f1が基準周波数f0よりもΔfだけ低くなるとともに周波数f2が基準周波数f0よりもΔfだけ高くなるものとする。
【0014】
基準周期信号生成部40は、基準周期信号CLKを出力する。例えば、基準周期信号生成部40は、水晶振動子やシリコンMEMS振動子を発振させて基準周期信号CLKを出力する発振回路であってもよいし、SAW共振子を使用した発振回路であってもよい。SAWは、Surface Acoustic Waveの略である。あるいは、基準周期信号生成部40は、基準周期信号CLKを出力するRC発振回路やLC発振回路であってもよい。
【0015】
第1カウント部21は、第1被測定信号TRG1及び基準周期信号CLKの一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1カウント値CNT1を生成する。
【0016】
第2カウント部22は、第2被測定信号TRG2及び基準周期信号CLKの一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第2カウント値CNT2を生成する。
【0017】
第1被測定信号TRG1の時間イベントとは、第1被測定信号TRG1が変化するタイミングであり、例えば、第1被測定信号TRG1の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジであってもよいし、第1被測定信号TRG1の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジであってもよい。同様に、第2被測定信号TRG2の時間イベントとは、第2被測定信号TRG2が変化するタイミングであり、例えば、第2被測定信号TRG2の立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジであってもよいし、第2被測定信号TRG2の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジであってもよい。同様に、基準周期信号CLKの時間イベントとは、基準周期信号CLKが変化するタイミングであり、例えば、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジであってもよいし、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジであってもよい。図2の例では、第1カウント部21は、第1被測定信号TRG1の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期して、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジをカウントして第1カウント値CNT1を生成している。同様に、第2カウント部22は、第2被測定信号TRG2の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期して、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジをカウントして第2カウント値CNT2を生成している。
【0018】
第1フィルター31は、第1カウント値CNT1が入力され、第1カウント値CNT1に含まれるノイズ成分を低減させるためのフィルター処理を行って第3カウント値CNT3を出力する。第2フィルター32は、第2カウント値CNT2が入力され、第2カウント値CNT2に含まれるノイズ成分を低減させるためのフィルター処理を行って第4カウント値CNT4を出力する。第1フィルター31は、第1被測定信号TRG1に同期して動作し、第2フィルター32は、第2被測定信号TRG2に同期して動作する。第1フィルター31が行うフィルター処理及び第2フィルター32が行うフィルター処理は、例えば、ローパスフィルター処理であってもよいし、バンドパスフィルター処理であってもよい。
【0019】
フィルター部50は、第1フィルター31から出力される第3カウント値CNT3と第2フィルター32から出力される第4カウント値CNT4との差分に基づく測定値DOを出力する。
【0020】
本実施形態では、フィルター部50は、減算器51と第3フィルター52とを含む。減算器51は、第1フィルター31から出力される第3カウント値CNT3と第2フィルター32から出力される第4カウント値CNT4との差分値を出力する。第3フィルター52は、減算器51から出力される差分値が入力され、当該差分値に対してフィルター処理を行って測定値DOを出力する。第3フィルター52は、基準周期信号CLKに同期して動作する。第3フィルター52が行うフィルター処理は、例えば、移動平均処理であってもよいし、デシメーション処理であってもよいし、移動平均処理及びデシメーション処理であってもよい。第3フィルター52から出力される測定値DOは、センサーモジュール1から不図示の外部装置に出力される。
【0021】
このように構成されているセンサーモジュール1では、第1カウント値CNT1は、第1被測定信号TRG1と基準周期信号CLKとの周波数比を示し、第2カウント値CNT2は第2被測定信号TRG2と基準周期信号CLKとの周波数比を示す。前述の通り、第1軸の方向の物理量が発生したときは第1被測定信号TRG1の周波数f1が基準周波数f0よりもΔfだけ高くなるとともに、第2被測定信号TRG2の周波数f2が基準周波数f0よりもΔfだけ低くなる。したがって、第1カウント値CNT1と第2カウント値CNT2との差分に基づく測定値DOは、2Δfに対応する値となる。また、第2軸の方向の物理量が発生したときは第1被測定信号TRG1の周波数f1が基準周波数f0よりもΔfだけ低くなるとともに、第2被測定信号TRG2の周波数f2が基準周波数f0よりもΔfだけ高くなる。したがって、第1カウント値CNT1と第2カウント値CNT2との差分に基づく測定値DOは、-2Δfに対応する値となる。このように、センサーモジュール1は、2倍の感度で第1被測定信号TRG1の周波数変化量Δfを2倍の感度で測定する周波数カウンターとして機能する。また、第1カウント値CNT1と第2カウント値CNT2との差分により、第1カウント値CNT1及び第2カウント値CNT2に含まれる同相ノイズが低減された測定値DOが得られる。外部装置は、測定値DOに基づいて、第1物理量センサー11が検出した物理量の大きさを判断し、必要な演算や制御を行うことができる。
【0022】
周知の通り、周波数カウンターのカウント方式には、直接カウント方式とレシプロカルカウント方式とがある。直接カウント方式では、基準周期信号CLKと第1被測定信号TRG1又は第2被測定信号TRG2のうち、基準周期信号CLKを動作クロックとして用いる。レシプロカルカウント方式では、直接カウント方式とは逆に、第1被測定信号TRG1又は第2被測定信号TRG2を動作クロックとして用いる。
【0023】
直接カウント方式とレシプロカルカウント方式のいずれを用いてもよいが、以下では、レシプロカルカウント方式を用いたセンサーモジュール1を例に挙げ、第1カウント部21及び第2カウント部22の具体的な構成例について説明する。
【0024】
第1カウント部21と第2カウント部22とは、入力される第1被測定信号TRG1と第2被測定信号TRG2とが異なり、出力される第1カウント値CNT1及び第2カウント値CNT2とが異なるが、内部の構成は同じである。そのため、第1被測定信号TRG1又は第2被測定信号TRG2を被測定信号TRGとし、第1カウント値CNT1又は第2カウント値CNT2をカウント値CNTとして、第1カウント部21及び第2カウント部22の構成について説明する。
【0025】
図3は、第1カウント部21又は第2カウント部22の構成例を示す図である。図3に示すように、第1カウント部21又は第2カウント部22は、カウンター61、時間デジタル値生成部62、合成出力値生成部63、Dフリップフロップ64及び減算器65を含む。なお、図3では図示の簡略化のため、Dフリップフロップ64は1つのみ図示されているが、実際には、Dフリップフロップ64はN個存在する。
【0026】
カウンター61は、基準周期信号CLKのエッジの数をカウントする。本実施形態では、カウンター61は、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジの数をカウントし、Mビットのカウント値CDを出力する。
【0027】
時間デジタル値生成部62は、被測定信号TRGと基準周期信号CLKとの位相差に基づくNビットの時間デジタル値TDを生成する。
【0028】
合成出力値生成部63は、時間デジタル値TDとカウント値CDとに基づいてNビットの合成出力値DTSを生成する。合成出力値生成部63は、被測定信号TRGに同期して合成出力値DTSを生成してもよい。例えば、合成出力値生成部63は、被測定信号TRGの立ち上がり及び立ち下がりのいずれか一方のタイミングで合成出力値DTSを生成してもよい。あるいは、合成出力値生成部63は、被測定信号TRGの立ち上がり及び立ち下がりの両方のタイミングで合成出力値DTSを生成してもよい。合成出力値DTSは、被測定信号TRGと基準周期信号CLKとの周波数比を示す信号である。
【0029】
N個のDフリップフロップ64は、基準周期信号CLKに同期してNビットの合成出力値DTSを取り込んで保持する。本実施形態では、N個のDフリップフロップ64は、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来すると、Nビットの合成出力値DTSを取り込んで保持する。
【0030】
減算器65は、合成出力値生成部63から出力されるNビットの合成出力値DTSから、N個のDフリップフロップ64が保持するNビットの合成出力値DTSを減算し、Nビットのカウント値CNTを出力する。
【0031】
第1カウント部21が有する合成出力値生成部63と第2カウント部22が有する合成出力値生成部63とは、入力される第1被測定信号TRG1と第2被測定信号TRG2とが異なるが、内部の構成は同じである。そのため、第1被測定信号TRG1又は第2被測定信号TRG2を被測定信号TRGとして、合成出力値生成部63の構成について説明する。
【0032】
図4は、合成出力値生成部63の構成例を示す図である。図4に示すように、合成出力値生成部63は、Dフリップフロップ71、乗算器72、減算器73及びDフリップフロップ74を含む。なお、図4では図示の簡略化のため、Dフリップフロップ71及びDフリップフロップ74はそれぞれ1つのみ図示されているが、実際には、Dフリップフロップ71はM個存在し、Dフリップフロップ74はN個存在する。
【0033】
M個のDフリップフロップ71は、被測定信号TRGに同期してMビットのカウント値CDを取り込んで保持する。本実施形態では、M個のDフリップフロップ71は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジに同期して、Mビットのカウント値CDを取り込んでMビットのカウント値DCDとして保持する。具体的には、M個のDフリップフロップ71は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジが到来したときのカウント値CDを取り込み、被測定信号TRGの立ち下がりエッジが到来するまでカウント値DCDとして保持する。また、M個のDフリップフロップ71は、被測定信号TRGの立ち下がりエッジが到来したときのカウント値CDを取り込み、被測定信号TRGの立ち上がりエッジが到来するまでカウント値DCDとして保持する。
【0034】
乗算器72は、Mビットのカウント値DCDと整数Nとの乗算を行う。すなわち、乗算器72は、カウント値DCDのN倍であるNビットの値を出力する。なお、整数Nが2のn乗であれば、乗算器72は、カウント値DCDをnビットシフトする簡易な回路として実現することができる。
【0035】
減算器73は、乗算器72から出力されるNビットの値から、時間デジタル値生成部62から出力されるNビットの時間デジタル値TDを減算し、Nビットのタイムスタンプ値TSを出力する。
【0036】
N個のDフリップフロップ74は、被測定信号TRGに同期してNビットのタイムスタンプ値TSを取り込んで保持する。本実施形態では、N個のDフリップフロップ74は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ又は立ち下がりエッジが到来すると、Nビットのタイムスタンプ値TSを取り込んでNビットの合成出力値DTSとして保持する。
【0037】
第1カウント部21が有する時間デジタル値生成部62と第2カウント部22が有する時間デジタル値生成部62とは、入力される第1被測定信号TRG1と第2被測定信号TRG2とが異なるが、内部の構成は同じである。そのため、第1被測定信号TRG1又は第2被測定信号TRG2を被測定信号TRGとして、時間デジタル値生成部62の構成について説明する。
【0038】
図5は、時間デジタル値生成部62の構成例を示す図である。図5に示すように、時間デジタル値生成部62は、制御部81、発振部82、カウンター83、Dフリップフロップ84、加算器85及びDフリップフロップ86を含む。なお、図5では図示の簡略化のため、Dフリップフロップ84及びDフリップフロップ86はそれぞれ1つのみ図示されているが、実際には、Dフリップフロップ84はK個存在し、Dフリップフロップ86はN個存在する。
【0039】
制御部81は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出してイネーブル信号ENをアクティブにして出力する。本実施形態では、イネーブル信号ENはハイレベルがアクティブであるものとする。制御部81は、イネーブル信号ENをハイレベルにした後に、カウンター83から出力されるカウント値CTに基づいて、発振部82から出力されるクロック信号CKの立ち上がりエッジの数が所定数まで達した場合にイネーブル信号ENをハイレベルからローレベルに切り替える。また、制御部81は、イネーブル信号ENをハイレベルからローレベルに切り替えた後、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが所定回到来するとリセット信号RST1をアクティブにして出力する。本実施形態では、リセット信号RST1はハイレベルがアクティブであるものとする。制御部81は、リセット信号RST1をハイレベルにした後に所定時間が経過した時点で、リセット信号RST1をハイレベルからローレベルに切り替える。また、制御部81は、イネーブル信号ENをハイレベルにした後、基準周期信号CLKの最初の立ち上がりエッジが到来するとリセット信号RST2をアクティブにして出力する。本実施形態では、リセット信号RST2はハイレベルがアクティブであるものとする。制御部81は、リセット信号RST2をハイレベルにした後に所定時間が経過した時点で、リセット信号RST2をハイレベルからローレベルに切り替える。イネーブル信号ENは発振部82に供給され、リセット信号RST1はカウンター83及びK個のDフリップフロップ84に供給され、リセット信号RST2はN個のDフリップフロップ86に供給される。
【0040】
発振部82は、イネーブル信号ENがハイレベルのときに発振し、イネーブル信号ENがローレベルのときに発振を停止する。例えば、図6に示すように、発振部82は、2入力の論理積回路91及び論理反転回路92を含む。論理積回路91は、イネーブル信号ENと論理反転回路92の出力信号とが入力され、イネーブル信号ENと論理反転回路92の出力信号の論理積信号を出力する。論理反転回路92は、論理積回路91の出力信号が入力され、論理積回路91の出力信号の論理反転信号を出力する。
【0041】
カウンター83は、クロック信号CKのエッジの数をカウントする。本実施形態では、カウンター83は、リセット信号RST1がローレベルのとき、クロック信号CKの立ち上がりエッジの数をカウントし、Kビットのカウント値CTを出力する。また、カウンター83は、リセット信号RST1がハイレベルのとき、カウント値CTをゼロに初期化する。
【0042】
K個のDフリップフロップ84は、基準周期信号CLKに同期してKビットのカウント値CTを取り込んで保持する。本実施形態では、K個のDフリップフロップ84は、リセット信号RST1がローレベルのとき、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来すると、Kビットのカウント値CTを取り込んでKビットのカウント値DCTとして保持する。また、K個のDフリップフロップ84は、リセット信号RST1がハイレベルのとき、カウント値DCTをゼロに初期化する。
【0043】
加算器85は、N個のDフリップフロップ86が保持して出力するNビットの値とK個のDフリップフロップ84が保持するKビットのカウント値DCTとを加算してNビットの加算値を出力する。
【0044】
N個のDフリップフロップ86は、基準周期信号CLKに同期して加算器85から出力される加算値を取り込んで保持する。本実施形態では、N個のDフリップフロップ86は、リセット信号RST2がローレベルのとき、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来すると、加算器85から出力されるNビットの加算値を取り込んでNビットの時間デジタル値TDとして保持する。また、N個のDフリップフロップ86は、リセット信号RST2がハイレベルのとき、時間デジタル値TDをゼロに初期化する。
【0045】
このように構成されている時間デジタル値生成部62は、基準周期信号CLKに同期して値が増加するカウント値DCTを積算するΣATDC方式により、時間デジタル値TDを生成する。ATDCは、Accumulated Time to Digital Convertの略である。
【0046】
図3図6で示したように構成されている第1カウント部21では、第1カウント値CNT1は、レシプロカルカウント値であり、第1被測定信号TRG1の立ち上がりエッジから次の立ち下がりエッジまでの時間、あるいは、第1被測定信号TRG1の立ち下がりエッジから次の立ち上がりエッジまでの時間に対応した値である。すなわち、第1カウント値CNT1は、第1被測定信号TRG1の連続する2つのエッジの間の時間が長いほど大きな値となり、第1被測定信号TRG1の連続する2つのエッジの間の時間が短いほど小さな値となる。すなわち、第1カウント値CNT1は、第1被測定信号TRG1の周期に応じた値となる。
【0047】
同様に、図3図6で示したように構成されている第2カウント部22では、第2カウント値CNT2は、レシプロカルカウント値であり、第2被測定信号TRG2の立ち上がりエッジから次の立ち下がりエッジまでの時間、あるいは、第2被測定信号TRG2の立ち下がりエッジから次の立ち上がりエッジまでの時間に対応した値である。すなわち、第2カウント値CNT2は、第2被測定信号TRG2の連続する2つのエッジの間の時間が長いほど大きな値となり、第2被測定信号TRG2の連続する2つのエッジの間の時間が短いほど小さな値となる。すなわち、第2カウント値CNT2は、第2被測定信号TRG2の周期に応じた値となる。
【0048】
なお、第1カウント部21が有する時間デジタル値生成部62は「第1時間デジタル値生成部」の一例であり、当該時間デジタル値生成部62が生成する時間デジタル値TDは「第1時間デジタル値」の一例である。また、第1カウント部21が有する合成出力値生成部63は「第1合成出力値生成部」の一例であり、当該合成出力値生成部63が生成する合成出力値DTSは「第1合成出力値」の一例である。また、第2カウント部22が有する時間デジタル値生成部62は「第2時間デジタル値生成部」の一例であり、当該時間デジタル値生成部62が生成する時間デジタル値TDは「第2時間デジタル値」の一例である。また、第2カウント部22が有する合成出力値生成部63は「第2合成出力値生成部」の一例であり、当該合成出力値生成部63が生成する合成出力値DTSは「第2合成出力値」の一例である。
【0049】
次に、図7及び図8を用いて、時間デジタル値生成部62及び合成出力値生成部63の詳細な動作を説明する。図7及び図8は、時間デジタル値生成部62及び合成出力値生成部63の動作の一例を示すタイミングチャート図である。なお、図7及び図8の例では、合成出力値生成部63において乗算器72に入力される整数Nは32である。
【0050】
図7に示すように、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウント値CDが1ずつ増えていく。そして、時刻t0において、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、この時のカウント値CDが10であるので、カウント値DCDが0から10に変わり、タイムスタンプ値TSが0から320に変わる。また、被測定信号TRGがローレベルからハイレベルに遷移すると、発振部82の発振が開始し、クロック信号CKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウント値CTが1ずつ増えていく。
【0051】
時刻t0から時間P1が経過した時刻t1において、被測定信号TRGがハイレベルに遷移した後の基準周期信号CLKの最初の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期してカウント値DCTが0から4に変わる。また、当該エッジに同期してリセット信号RST2がローレベルからハイレベルに遷移し、時間デジタル値TDが0に初期化される。その後、リセット信号RST2がハイレベルからローレベルに遷移し、時間デジタル値TDの初期化動作が解除される。
【0052】
時刻t2において、基準周期信号CLKの2番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期してカウント値DCTが4から12に変わり、時間デジタル値TDが0から4に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプ値TSが320から316に変わる。
【0053】
時刻t3において、基準周期信号CLKの3番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウント値DCTが12から20に変わり、時間デジタル値TDが4から16に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプ値TSが316から304に変わる。
【0054】
時刻t4において、基準周期信号CLKの4番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウント値DCTが20から29に変わり、時間デジタル値TDが16から36に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプ値TSが304から284に変わる。その後、カウント値CTが32に達すると発振部82の発振が停止し、カウント値CTは32に保持される。
【0055】
時刻t5において、基準周期信号CLKの5番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウント値DCTが29から32に変わり、時間デジタル値TDが36から65に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプ値TSが284から255に変わる。
【0056】
時刻t6において、基準周期信号CLKの6番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、時間デジタル値TDが65から97に変わり、タイムスタンプ値TSが255から223に変わる。なお、カウント値DCTは32のまま変わらない。
【0057】
時刻t7において、基準周期信号CLKの7番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、時間デジタル値TDが97から129に変わり、タイムスタンプ値TSが223から191に変わる。なお、カウント値DCTは32のまま変わらない。
【0058】
時刻t8において、基準周期信号CLKの8番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、リセット信号RST1がローレベルからハイレベルに遷移し、カウント値CT及びカウント値DCTが0に初期化される。カウント値CTが32から0に変わったため、時間デジタル値TDは129のまま変わらず、タイムスタンプ値TSも191のまま変わらない。その後、リセット信号RST1がハイレベルからローレベルに遷移し、カウント値CT及びカウント値DCTの初期化が解除される。
【0059】
その後、時間が経過し、図8に示すように、時刻t9において、基準周期信号CLKの11番目の立ち上がりエッジが到来し、カウント値CDが20から21に変わる。そして、時刻t10において、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移すると、この時のタイムスタンプ値TSが191であるので、合成出力値DTSが0から191に変わる。また、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移した時のカウント値CDが21であるので、カウント値DCDが10から21に変わり、タイムスタンプ値TSが191から543に変わる。また、被測定信号TRGがハイレベルからローレベルに遷移すると、発振部82の発振が開始し、クロック信号CKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウント値CTが1ずつ増えていく。
【0060】
時刻t10から時間P2が経過した時刻t11において、基準周期信号CLKの12番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期してカウント値DCTが0から6に変わる。また、当該エッジに同期してリセット信号RST2がローレベルからハイレベルに遷移し、時間デジタル値TDが0に初期化され、タイムスタンプ値TSが543から672に変わる。その後、リセット信号RST2がハイレベルからローレベルに遷移し、時間デジタル値TDの初期化動作が解除される。
【0061】
時刻t12において、基準周期信号CLKの13番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウント値DCTが6から14に変わり、時間デジタル値TDが0から6に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプ値TSが672から666に変わる。
【0062】
時刻t13において、基準周期信号CLKの14番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウント値DCTが14から22に変わり、時間デジタル値TDが6から20に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプ値TSが666から652に変わる。
【0063】
時刻t14において、基準周期信号CLKの15番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウント値DCTが22から31に変わり、時間デジタル値TDが20から42に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプ値TSが652から630に変わる。その後、カウント値CTが32に達すると発振部82の発振が停止し、カウント値CTは32に保持される。
【0064】
時刻t15において、基準周期信号CLKの16番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、カウント値DCTが31から32に変わり、時間デジタル値TDが42から73に変わる。また、当該エッジに同期してタイムスタンプ値TSが630から599に変わる。
【0065】
時刻t16において、基準周期信号CLKの17番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、時間デジタル値TDが73から105に変わり、タイムスタンプ値TSが599から567に変わる。なお、カウント値DCTは32のまま変わらない。
【0066】
時刻t17において、基準周期信号CLKの18番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、時間デジタル値TDが105から137に変わり、タイムスタンプ値TSが567から535に変わる。なお、カウント値DCTは32のまま変わらない。
【0067】
時刻t18において、基準周期信号CLKの19番目の立ち上がりエッジが到来し、当該エッジに同期して、リセット信号RST1がローレベルからハイレベルに遷移し、カウント値CT及びカウント値DCTが0に初期化される。カウント値CTが32から0に変わったため、時間デジタル値TDは137のまま変わらず、タイムスタンプ値TSも535のまま変わらない。その後、リセット信号RST1がハイレベルからローレベルに遷移し、カウント値CT及びカウント値DCTの初期化が解除される。
【0068】
ここで、図8に示す時刻t10から時刻t11までの時間P2は、図7に示す時刻t0から時刻t1までの時間P1よりも長い。また、時刻t12から時刻t18までの各時刻における時間デジタル値TDは、時刻t2から時刻t8までの各時刻における時間デジタル値TDよりも大きい値となるように遷移している。したがって、被測定信号TRGのエッジと基準周期信号CLKの立ち上がりエッジとの時間間隔が長いほど、時間デジタル値TDが大きな値となる。そして、時刻t7において変化した後の時間デジタル値TDである129は時間P1に対応し、時刻t17において変化した後の時間デジタル値TDである137は時間P2に対応している。
【0069】
図7及び図8の例では、基準周期信号CLKの1周期の時間をTとすると、被測定信号TRGがハイレベルの時間はT×(21-10)+P1-P2=(T×21-P2)-(T×10-P1)である。ここで、時刻t7において変化した後のタイムスタンプ値TS、すなわち191(=32×10-129)は(T×10-P1)に対応する。また、時刻t17において変化した後のタイムスタンプ値TS、すなわち535(=32×21-137)は(T×21-P2)に対応する。したがって、この2つのタイムスタンプ値TSが被測定信号TRGのエッジで保持された2つの合成出力値DTSの差分値、すなわち344(=535-191)は被測定信号TRGがハイレベルの時間、すなわち被測定信号TRGの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとの時間間隔に対応する。
【0070】
一般化すると、i番目の合成出力値DTSとi+1番目の合成出力値DTSとの差分値であるカウント値CNTは、被測定信号TRGのi番目のエッジとi+1番目のエッジとの時間間隔、すなわち被測定信号TRGの半周期の時間に対応する。詳細には、第1カウント値CNT1は第1被測定信号TRG1の半周期の時間に対応し、第2カウント値CNT2は第2被測定信号TRG2の半周期の時間に対応する。したがって、測定値DOは、第1被測定信号TRG1の半周期の時間と第2被測定信号TRG2の半周期の時間との差に相当し、前述の通り、基準周波数f0からの第1被測定信号TRG1の周波数f1の変化量に対応する。したがって、外部装置は、測定値DOに基づいて第1被測定信号TRG1の周波数を算出し、第1物理量センサー11が検出した物理量を測定することができる。
【0071】
ここで、図7及び図8に示したように、複数の合成出力値DTSが順に生成される期間において、基準周期信号CLKが停止することなく、基準周期信号CLKの立ち上がりエッジが到来する毎にカウント値CDが1ずつ増えていく。これにより、合成出力値DTSの量子化誤差が次の合成出力値DTSの生成にフィードバックされることになる。すなわち、生成される複数の合成出力値DTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たすので、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、外部装置は、測定値DOに基づいて、物理量を高精度に測定することができる。
【0072】
以上に説明したように、第1実施形態のセンサーモジュール1では、第1物理量センサー11から出力される第1被測定信号TRG1に基づく第3カウント値CNT3と、第2物理量センサー12から出力される第2被測定信号TRG2に基づく第4カウント値CNT4との差分により、第3カウント値CNT3及び第4カウント値CNT4に含まれる同相ノイズが低減された測定値DOが得られる。また、第1物理量センサー11の検出軸と第2物理量センサー12の検出軸とが逆方向であるので、第1被測定信号TRG1に基づく第3カウント値CNT3と第2被測定信号TRG2に基づく第4カウント値CNT4との差分により、感度の大きい測定値DOが得られる。したがって、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、同相ノイズを低減させるとともに測定感度を向上させることができる。
【0073】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1では、第1物理量センサー11から出力される第1被測定信号TRG1に基づく第1カウント値CNT1に含まれるノイズが第1フィルター31によって低減され、第2物理量センサー12から出力される第2被測定信号TRG2に基づく第2カウント値CNT2に含まれるノイズが第2フィルター32によって低減される。すなわち、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1カウント値CNT1及び第2カウント値CNT2に含まれる同相でないノイズを、第1フィルター31及び第2フィルター32によって個別に低減させることができる。
【0074】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1は、第1物理量センサー11から出力される第1被測定信号TRG1に対して、アナログ信号処理をすることなくデジタル値である第1カウント値CNT1を生成し、第2物理量センサー12から出力される第2被測定信号TRG2に対して、アナログ信号処理をすることなくデジタル値である第2カウント値CNT2を生成する。したがって、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1被測定信号TRG1及び第2被測定信号TRG2に、被測定物に生じる高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分が含まれていたとしても、高周波ノイズの影響を受けやすいアナログ回路が不要であるので、高周波電磁振動ノイズの影響を受けにくい。また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1被測定信号TRG1及び第2被測定信号TRG2から、高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分を除去する必要がないので、回路規模が低減される。
【0075】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、フィルター部50において、第1被測定信号TRG1に基づく第3カウント値CNT3及び第2被測定信号TRG2に基づく第4カウント値CNT4に対して各種の信号処理を行うことができる。
【0076】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1では、第1カウント部21において、合成出力値DTSの量子化誤差が次の合成出力値DTSの生成にフィードバックされるので、合成出力値DTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たし、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。同様に、第2カウント部22において、合成出力値DTSの量子化誤差が次の合成出力値DTSの生成にフィードバックされるので、合成出力値DTSはデルタシグマ変調信号の性質を満たし、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1カウント部21において合成出力値DTSに基いて生成される時間デジタル値TD及び第2カウント部22において合成出力値DTSに基いて生成される時間デジタル値TDのS/N比が向上する。
【0077】
また、一般に直接カウント方式とレシプロカルカウント方式とでは計測精度に差があるため被測定信号TRGの周波数帯域と基準周期信号CLKの周波数との関係に応じて最適なカウント方式を選択する必要があるが、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1カウント部21及び第2カウント部22において、合成出力値DTSがデルタシグマ変調信号の性質を満たすことで、いずれの方式でも同等の測定精度を得ることができるので、計測精度の制約を考慮せずにカウント方式を選択することができる。例えば、第1カウント部21において、第1被測定信号TRG1及び基準周期信号CLKのうち、周期が長い方の信号に同期して周期が短い方の信号の時間イベントをカウントする構成とし、第2カウント部22において、第2被測定信号TRG2及び基準周期信号CLKのうち、周期が長い方の信号に同期して周期が短い方の信号の時間イベントをカウントする構成とすることができる。これにより、第1被測定信号TRG1及び基準周期信号CLKのうち、周期が短い方の信号に同期して周期が長い方の信号の時間イベントをカウントし、第2被測定信号TRG2及び基準周期信号CLKのうち、周期が短い方の信号に同期して周期が長い方の信号の時間イベントをカウントする構成よりも、動作周波数を下げることができるため、測定精度を保ったまま低消費電力化が可能となる。
【0078】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、フィルター部50において、第3カウント値CNT3と第4カウント値CNT4に対するフィルターを共通化することができるので、必要な回路リソースの増加を抑制することができる。
【0079】
また、第1実施形態のセンサーモジュール1では、第1フィルター31が第1被測定信号TRG1に同期して動作し、第1フィルター31の後段に設けられた第3フィルター52が第1被測定信号TRG1とは異なる基準周期信号CLKに同期して動作することにより、第1フィルター31に入力される第1カウント値CNT1と第3フィルター52から出力される測定値DOとの関係に非線形性が生じる。同様に、第2フィルター32が第2被測定信号TRG2に同期して動作し、第2フィルター32の後段に設けられた第3フィルター52が第2被測定信号TRG2とは異なる基準周期信号CLKに同期して動作することにより、第2フィルター32に入力される第2カウント値CNT2と第3フィルター52から出力される測定値DOとの関係に非線形性が生じる。そして、これらの非線形性によって生じる振動整流誤差は、第1フィルター31、第2フィルター32及び第3フィルター52のそれぞれの群遅延量に応じて変化する。したがって、第1実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1フィルター31、第2フィルター32及び第3フィルター52のそれぞれの群遅延量を適切な値に設定することにより、この非線形性によって生じる振動整流誤差と第1被測定信号TRG1の非対称性及び第2被測定信号TRG2の非対称性によって生じる振動整流誤差とが打ち消しあい、測定値DOに含まれる振動整流誤差が低減される。
【0080】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態のセンサーモジュール1について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0081】
図9は、第2実施形態のセンサーモジュール1の構成を示すブロック図である。図9において、図1と同じ構成要素には同じ符号が付されている。図9に示すように、第2実施形態のセンサーモジュール1は、第1物理量センサー11、第2物理量センサー12、第1カウント部21、第2カウント部22、第1フィルター31、第2フィルター32、基準周期信号生成部40及びフィルター部50を備える。第1物理量センサー11、第2物理量センサー12、第1カウント部21、第2カウント部22、第1フィルター31、第2フィルター32及び基準周期信号生成部40の構成及び機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
第1実施形態と同様、フィルター部50は、第1フィルター31から出力される第3カウント値CNT3と第2フィルター32から出力される第4カウント値CNT4との差分に基づく測定値DOを出力する。ただし、フィルター部50の構成は、第1実施形態と異なる。図9に示すように、フィルター部50は、第3フィルター53と、第4フィルター54と、減算器55とを含む。
【0083】
第3フィルター53は、第1フィルター31から出力される第3カウント値CNT3が入力され、第3カウント値CNT3に対してフィルター処理を行って第5カウント値CNT5を出力する。第3フィルター53は、基準周期信号CLKに同期して動作する。第3フィルター53が行うフィルター処理は、例えば、移動平均処理であってもよいし、デシメーション処理であってもよいし、移動平均処理及びデシメーション処理であってもよい。
【0084】
第4フィルター54は、第2フィルター32から出力される第4カウント値CNT4が入力され、第4カウント値CNT4に対してフィルター処理を行って第6カウント値CNT6を出力する。第4フィルター54は、基準周期信号CLKに同期して動作する。第4フィルター54が行うフィルター処理は、例えば、移動平均処理であってもよいし、デシメーション処理であってもよいし、移動平均処理及びデシメーション処理であってもよい。
【0085】
減算器55は、第3フィルター53から出力される第5カウント値CNT5と第4フィルター54から出力される第6カウント値CNT6との差分値を測定値DOとして出力する。減算器55から出力される測定値DOは、センサーモジュール1から不図示の外部装置に出力される。
【0086】
第2実施形態のセンサーモジュール1のその他の構成及び機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0087】
以上に説明した第2実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1実施形態のセンサーモジュール1と同様の効果が得られる。
【0088】
さらに、第2実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1物理量センサー11の特性と第2物理量センサー12の特性とが互いに異なっていても、フィルター部50において、第1物理量センサー11の特性を第3フィルター53で補償し、第2物理量センサー12の特性を第4フィルター54で補償することができる。例えば、第1物理量センサー11の構造共振周波数と第2物理量センサー12の構造共振周波数とが異なる場合、第1物理量センサー11の周波数特性を第3フィルター53で補償し、第2物理量センサー12の周波数特性を第4フィルター54で補償することができる。例えば、設計者は、第1物理量センサー11のゲイン特性と位相特性を補償する第3フィルター53としてのFIRフィルターと、第2物理量センサー12のゲイン特性と位相特性を補償する第4フィルター54としてのFIRフィルターとを、個別に設計することができる。FIRは、Finite Impulse Responseの略である。
【0089】
また、第2実施形態のセンサーモジュール1では、第1フィルター31が第1被測定信号TRG1に同期して動作し、第1フィルター31の後段に設けられた第3フィルター53が第1被測定信号TRG1とは異なる基準周期信号CLKに同期して動作することにより、第1フィルター31に入力される第1カウント値CNT1と第3フィルター53から出力される第5カウント値CNT5との関係に非線形性が生じる。同様に、第2フィルター32が第2被測定信号TRG2に同期して動作し、第2フィルター32の後段に設けられた第4フィルター54が第2被測定信号TRG2とは異なる基準周期信号CLKに同期して動作することにより、第2フィルター32に入力される第2カウント値CNT2と第4フィルター54から出力される第6カウント値CNT6との関係に非線形性が生じる。そして、これらの非線形性によって生じる振動整流誤差は、第1フィルター31、第2フィルター32、第3フィルター53及び第4フィルター54のそれぞれの群遅延量に応じて変化する。したがって、第2実施形態のセンサーモジュール1によれば、第1フィルター31、第2フィルター32、第3フィルター53及び第4フィルター54のそれぞれの群遅延量を適切な値に設定することにより、この非線形性によって生じる振動整流誤差と第1被測定信号TRG1の非対称性及び第2被測定信号TRG2の非対称性によって生じる振動整流誤差とが打ち消しあい、第5カウント値CNT5と第6カウント値CNT6との差分値である測定値DOに含まれる振動整流誤差が低減される。
【0090】
3.変形例
上記の各実施形態では、合成出力値生成部63は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの両方に同期して合成出力値DTSを生成している。この場合、測定値DOは、第1被測定信号TRG1の半周期の時間に対応する。これに対して、合成出力値生成部63は、被測定信号TRGの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの一方のみに同期して合成出力値DTSを生成してもよい。この場合、測定値DOは、第1被測定信号TRG1の1周期の時間に対応する。
【0091】
また、上記の各実施形態では、第1カウント部21のカウント方式として、基準周期信号CLKを動作クロックとして用いるレシプロカルカウント方式を例に挙げて説明したが、第1カウント部21のカウント方式は、第1被測定信号TRG1を動作クロックとして用いる直接カウント方式であってもよい。同様に、上記の各実施形態では、第2カウント部22のカウント方式として、基準周期信号CLKを動作クロックとして用いるレシプロカルカウント方式を例に挙げて説明したが、第2カウント部22のカウント方式は、第2被測定信号TRG2を動作クロックとして用いる直接カウント方式であってもよい。
【0092】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0093】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0094】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0095】
前記センサーモジュールの一態様は、
第1軸を検出軸として物理量を検出し、当該物理量の大きさに応じて周波数が変化する第1被測定信号を出力する第1物理量センサーと、
前記第1軸と逆方向の第2軸を検出軸として物理量を検出し、当該物理量の大きさに応じて周波数が変化する第2被測定信号を出力する第2物理量センサーと、
基準周期信号を出力する基準周期信号生成部と、
前記第1被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第1カウント値を生成する第1カウント部と、
前記第2被測定信号及び前記基準周期信号の一方に同期して他方の時間イベントをカウントして第2カウント値を生成する第2カウント部と、
前記第1カウント値が入力され、第3カウント値を出力する第1フィルターと、
前記第2カウント値が入力され、第4カウント値を出力する第2フィルターと、
前記第3カウント値と前記第4カウント値との差分に基づく測定値を出力するフィルター部と、を備える。
【0096】
このセンサーモジュールでは、第1物理量センサーから出力される第1被測定信号に基づく第3カウント値と、第2物理量センサーから出力される第2被測定信号に基づく第4カウント値との差分により、第3カウント値及び第4カウント値に含まれる同相ノイズが低減された測定値が得られる。また、第1物理量センサーの検出軸と第2物理量センサーの検出軸とが逆方向であるので、第1被測定信号に基づく第3カウント値と第2被測定信号に基づく第4カウント値との差分により、感度の大きい測定値が得られる。したがって、このセンサーモジュールによれば、同相ノイズを低減させるとともに測定感度を向上させることができる。
【0097】
また、このセンサーモジュールでは、第1物理量センサーから出力される第1被測定信号に基づく第1カウント値に含まれるノイズが第1フィルターによって低減され、第2物理量センサーから出力される第2被測定信号に基づく第2カウント値に含まれるノイズが第2フィルターによって低減される。すなわち、このセンサーモジュールによれば、第1カウント値及び第2カウント値に含まれる同相でないノイズを、第1フィルター及び第2フィルターによって個別に低減させることができる。
【0098】
また、このセンサーモジュールは、第1物理量センサーから出力される第1被測定信号に対して、アナログ信号処理をすることなくデジタル値である第1カウント値を生成し、第2物理量センサーから出力される第2被測定信号に対して、アナログ信号処理をすることなくデジタル値である第2カウント値を生成する。したがって、このセンサーモジュールによれば、第1被測定信号及び第2被測定信号に、被測定物に生じる高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分が含まれていたとしても、高周波ノイズの影響を受けやすいアナログ回路が不要であるので、高周波電磁振動ノイズの影響を受けにくい。また、このセンサーモジュールによれば、第1被測定信号及び第2被測定信号から、高周波電磁振動ノイズに起因する周波数成分およびその高調波成分を除去する必要がないので、回路規模が低減される。
【0099】
また、このセンサーモジュールによれば、フィルター部において、第1被測定信号に基づく第3カウント値及び第2被測定信号に基づく第4カウント値に対して各種の信号処理を行うことができる。
【0100】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記フィルター部は、
前記第3カウント値と前記第4カウント値との差分値を出力する減算器と、
前記差分値が入力され、前記測定値を出力する第3フィルターと、を含んでもよい。
【0101】
このセンサーモジュールによれば、フィルター部において、第3カウント値と第4カウント値に対するフィルターを共通化することができるので、必要な回路リソースの増加を抑制することができる。
【0102】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記第1フィルターは、前記第1被測定信号に同期して動作し
前記第2フィルターは、前記第2被測定信号に同期して動作し、
前記第3フィルターは、前記基準周期信号に同期して動作してもよい。
【0103】
このセンサーモジュールでは、第1フィルターが第1被測定信号に同期して動作し、第1フィルターの後段に設けられた第3フィルターが第1被測定信号とは異なる基準周期信号に同期して動作することにより、第1フィルターに入力される第1カウント値と第3フィルターから出力される測定値との関係に非線形性が生じる。同様に、第2フィルターが第2被測定信号に同期して動作し、第2フィルターの後段に設けられた第3フィルターが第2被測定信号とは異なる基準周期信号に同期して動作することにより、第2フィルターに入力される第2カウント値と第3フィルターから出力される測定値との関係に非線形性が生じる。そして、これらの非線形性によって生じる振動整流誤差は、第1フィルター、第2フィルター及び第3フィルターのそれぞれの群遅延量に応じて変化する。したがって、このセンサーモジュールによれば、第1フィルター、第2フィルター及び第3フィルターのそれぞれの群遅延量を適切な値に設定することにより、この非線形性によって生じる振動整流誤差と第1被測定信号の非対称性及び第2被測定信号の非対称性によって生じる振動整流誤差とが打ち消しあい、測定値に含まれる振動整流誤差が低減される。
【0104】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記フィルター部は、
前記第3カウント値が入力され、第5カウント値を出力する第3フィルターと、
前記第4カウント値が入力され、第6カウント値を出力する第4フィルターと、
前記第5カウント値と前記第6カウント値との差分値を前記測定値として出力する減算器と、を含んでもよい。
【0105】
このセンサーモジュールによれば、第1物理量センサーの特性と第2物理量センサーの特性とが互いに異なっていても、フィルター部において、第1物理量センサーの特性を第3フィルターで補償し、第2物理量センサーの特性を第4フィルターで補償することができる。例えば、第1物理量センサーの構造共振周波数と第2物理量センサーの構造共振周波数とが異なる場合、第1物理量センサーの周波数特性を第3フィルターで補償し、第2物理量センサーの周波数特性を第4フィルターで補償することができる。例えば、設計者は、第1物理量センサーのゲイン特性と位相特性を補償する第3フィルターとしてのFIRフィルターと、第2物理量センサーのゲイン特性と位相特性を補償する第4フィルターとしてのFIRフィルターとを、個別に設計することができる。
【0106】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記第1フィルターは、前記第1被測定信号に同期して動作し
前記第2フィルターは、前記第2被測定信号に同期して動作し、
前記第3フィルター及び前記第4フィルターは、前記基準周期信号に同期して動作してもよい。
【0107】
このセンサーモジュールでは、第1フィルターが第1被測定信号に同期して動作し、第1フィルターの後段に設けられた第3フィルターが第1被測定信号とは異なる基準周期信号に同期して動作することにより、第1フィルターに入力される第1カウント値と第3フィルターから出力される第5カウント値との関係に非線形性が生じる。同様に、第2フィルターが第2被測定信号に同期して動作し、第2フィルターの後段に設けられた第4フィルターが第2被測定信号とは異なる基準周期信号に同期して動作することにより、第2フィルターに入力される第2カウント値と第4フィルターから出力される第6カウント値との関係に非線形性が生じる。そして、これらの非線形性によって生じる振動整流誤差は、第1フィルター、第2フィルター、第3フィルター及び第4フィルターのそれぞれの群遅延量に応じて変化する。したがって、このセンサーモジュールによれば、第1フィルター、第2フィルター、第3フィルター及び第4フィルターのそれぞれの群遅延量を適切な値に設定することにより、この非線形性によって生じる振動整流誤差と第1被測定信号の非対称性及び第2被測定信号の非対称性によって生じる振動整流誤差とが打ち消しあい、第5カウント値と第6カウント値との差分値である測定値に含まれる振動整流誤差が低減される。
【0108】
前記センサーモジュールの一態様において、
前記第1カウント部は、
前記第1被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第1時間デジタル値を生成する第1時間デジタル値生成部と、
前記第1時間デジタル値と前記第1カウント値とに基づいて第1合成出力値を生成する第1合成出力値生成部と、を含み、
前記第1合成出力値の量子化誤差が次の前記第1合成出力値の生成にフィードバックされ、
前記第2カウント部は、
前記第2被測定信号と前記基準周期信号との位相差に基づく第2時間デジタル値を生成する第2時間デジタル値生成部と、
前記第2時間デジタル値と前記第2カウント値とに基づいて第2合成出力値を生成する第2合成出力値生成部と、を含み、
前記第2合成出力値の量子化誤差が次の前記第2合成出力値の生成にフィードバックされてもよい。
【0109】
このセンサーモジュールでは、第1合成出力値の量子化誤差が次の第1合成出力値の生成にフィードバックされるので、第1合成出力値はデルタシグマ変調信号の性質を満たし、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。同様に、第2合成出力値の量子化誤差が次の第2合成出力値の生成にフィードバックされるので、第2合成出力値はデルタシグマ変調信号の性質を満たし、ノイズシェーピング効果が得られ、量子化誤差が高周波数帯域にシフトする。したがって、このセンサーモジュールによれば、第1合成出力値に基いて生成される第1時間デジタル値及び第2合成出力値に基いて生成される第2時間デジタル値のS/N比が向上する。
【0110】
また、一般に直接カウント方式とレシプロカルカウント方式とでは計測精度に差があるため被測定信号の周波数帯域と基準周期信号の周波数との関係に応じて最適なカウント方式を選択する必要があるが、このセンサーモジュールによれば、第1合成出力値及び第2合成出力値がデルタシグマ変調信号の性質を満たすことで、いずれの方式でも同等の測定精度を得ることができるので、計測精度の制約を考慮せずにカウント方式を選択することができる。例えば、第1カウント部において、第1被測定信号及び基準周期信号のうち、周期が長い方の信号に同期して周期が短い方の信号の時間イベントをカウントする構成とし、第2カウント部において、第2被測定信号及び基準周期信号のうち、周期が長い方の信号に同期して周期が短い方の信号の時間イベントをカウントする構成とすることができる。これにより、第1被測定信号及び基準周期信号のうち、周期が短い方の信号に同期して周期が長い方の信号の時間イベントをカウントし、第2被測定信号及び基準周期信号のうち、周期が短い方の信号に同期して周期が長い方の信号の時間イベントをカウントする構成よりも、動作周波数を下げることができるため、測定精度を保ったまま低消費電力化が可能となる。
【符号の説明】
【0111】
1…センサーモジュール、11…第1物理量センサー、12…第2物理量センサー、21…第1カウント部、22…第2カウント部、31…第1フィルター、32…第2フィルター、40…基準周期信号生成部、50…フィルター部、51…減算器、52…第3フィルター、53…第3フィルター、54…第4フィルター、55…減算器、61…カウンター、62…時間デジタル値生成部、63…合成出力値生成部、64…Dフリップフロップ、65…減算器、71…Dフリップフロップ、72…乗算器、73…減算器、74…Dフリップフロップ、81…制御部、82…発振部、83…カウンター、84…Dフリップフロップ、85…加算器、86…Dフリップフロップ、91…論理積回路、92…論理反転回路
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