(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134716
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/01 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045059
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勝
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB27
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC42
2C056FA09
2C056FB09
2C056HA07
2C056HA11
2C056HA38
(57)【要約】
【課題】印刷画質を向上させる。
【解決手段】印刷装置は、第1ノズル列と第2ノズル列とを有するヘッドユニットと、ワークとヘッドユニットとを相対移動させる多関節ロボットと、を有する印刷装置であって、多関節ロボットがワークとヘッドユニットとを主走査方向に相対移動させつつ、ヘッドユニットが複数の異なるタイミングでインク滴を吐出する印刷動作を実行し、印刷動作において第1ノズル列から吐出されることによりワーク上に付与された複数のインク滴間における主走査方向での距離の増減について、任意の頂点を第1頂点とし、第1頂点に隣接する頂点を第2頂点とし、第1頂点と第2頂点との間の距離をL1とし、第1ノズル列と第2ノズル列との間の主走査方向での距離をL2とし、任意の整数をnとしたとき、L1≠n×L2の関係を満たす。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ノズル列と第2ノズル列とを有するヘッドユニットと、
ワークと前記ヘッドユニットとを相対移動させる多関節ロボットと、を有する印刷装置であって、
前記多関節ロボットが前記ワークと前記ヘッドユニットとを主走査方向に相対移動させつつ、前記ヘッドユニットが複数の異なるタイミングでインク滴を吐出する印刷動作を実行し、
前記印刷動作において前記第1ノズル列から吐出されることにより前記ワーク上に付与された複数のインク滴間における前記主走査方向での距離の増減について、任意の頂点を第1頂点とし、前記第1頂点に隣接する頂点を第2頂点とし、前記第1頂点と前記第2頂点との間の距離をL1とし、
前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間の前記主走査方向での距離をL2とし、
任意の整数をnとしたとき、
L1≠n×L2
の関係を満たす、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
L1>L2
の関係を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷動作において、前記ヘッドユニットは、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との両方からインク滴を吐出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ヘッドユニットは、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との両方から同色のインク滴を吐出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
L1およびL2は、
L1×1/4≦n×L2≦L1×3/4
の関係を満たす、
ことを特徴とする請求項1または4に記載の印刷装置。
【請求項6】
L1およびL2は、
L1/2=n×L2
の関係を満たす、
ことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1頂点および前記第2頂点は、前記増減のうち、前記主走査方向での距離が最も短くなる頂点の対である、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間の前記主走査方向での距離を調整可能な調整機構をさらに有する、
ことを特報とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記印刷動作において、前記第1ノズル列または前記第2ノズル列の延びる方向にみたとき、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが互いに並ぶ並列方向は、前記主走査方向と交差する、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記印刷動作において、前記ヘッドユニットからのインク滴の吐出方向にみたとき、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが互いに並ぶ並列方向は、前記主走査方向と交差する、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記ヘッドユニットは、第1ヘッドと第2ヘッドとを有し、
前記第1ヘッドには、前記第1ノズル列が設けられ、
前記第2ヘッドには、前記第2ノズル列が設けられる、
ことを特徴とする請求項4または8に記載の印刷装置。
【請求項12】
L1は、0.5mm以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、印刷用紙にインクジェット方式により印刷を行う印刷装置が一般的である。特許文献1に記載の印刷装置では、インクジェットヘッドからのインクの吐出タイミングは、主走査方向に沿って設けられたリニアエンコーダーの検出結果に基づいて制御される。
【0003】
一方、多関節ロボット等のロボットを用いて立体的なワークの表面にインクジェット方式により印刷を行う印刷装置が知られている。例えば、特許文献1には、6軸の多関節ロボットを用いて、インク等の液体を吐出するヘッドユニットをワークに対して移動させながら印刷動作を行う装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-165210号公報
【特許文献2】特開2022-10639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように多関節ロボットを用いる印刷装置では、主走査方向に沿って設けられるリニアエンコーダーを使用できない場合がある。この場合、従来では、ヘッドユニットの位置とインクの吐出タイミングとにずれが生じてしまい、印刷された画像の品質が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示の印刷装置の一態様は、第1ノズル列と第2ノズル列とを有するヘッドユニットと、ワークと前記ヘッドユニットとを相対移動させる多関節ロボットと、を有する印刷装置であって、前記多関節ロボットが前記ワークと前記ヘッドユニットとを主走査方向に相対移動させつつ、前記ヘッドユニットが複数の異なるタイミングでインク滴を吐出する印刷動作を実行し、前記印刷動作において前記第1ノズル列から吐出されることにより前記ワーク上に付与された複数のインク滴間における前記主走査方向での距離の増減について、任意の頂点を第1頂点とし、前記第1頂点に隣接する頂点を第2頂点とし、前記第1頂点と前記第2頂点との間の距離をL1とし、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間の前記主走査方向での距離をL2とし、任意の整数をnとしたとき、L1≠n×L2の関係を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る印刷装置の概略を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態のヘッドユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る印刷装置の距離L2を決定する際の流れを説明するための図である。
【
図6】試験印刷ステップで得られる印刷結果の一例を示す図である。
【
図7】距離L1、L2の関係を説明するための図である。
【
図8】距離L2が距離L1の1/4である場合を説明するための図である。
【
図9】第2実施形態のヘッドユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る印刷装置の動作を説明するための図である。
【
図11】ノズル列の延びる方向にみて並列方向が主走査方向と平行である場合の距離L2を説明するための図である。
【
図12】ノズル列の延びる方向にみて並列方向が主走査方向に対して傾斜する場合の距離L2を説明するための図である。
【
図13】ノズル列からのインク滴の吐出方向にみて並列方向が主走査方向と平行である場合の距離L2を説明するための図である。
【
図14】ノズル列からのインク滴の吐出方向にみて並列方向が主走査方向に対して傾斜する場合の距離L2を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
以下では、説明の便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて説明を行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0010】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のロボット2が設置される空間に設定されるワールド座標系の座標軸に相当する。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。当該ワールド座標系には、ロボット2の後述の基部210の位置を基準とするベース座標系がキャリブレーションにより対応付けられる。以下では、便宜上、ワールド座標系をロボット座標系として用いてロボット2の動作を制御する場合が例示される。
【0011】
なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0012】
1-1.印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る印刷装置1の概略を示す斜視図である。印刷装置1は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0013】
ワークWは、印刷対象となる面WFを有する。
図1に示す例では、ワークWが直方体であり、面WFがZ1方向を向く平面である。なお、印刷対象は、ワークWが有する複数の面のうち面WF以外の面でもよい。また、ワークWの大きさ、形状または設置姿勢は、
図1に示す例に限定されず、任意である。例えば、面WFは、曲面または段差を含む形状であってもよい。
【0014】
図1に示すように、印刷装置1は、ロボット2とヘッドユニット3とコントローラー5と配管部10とを有する。以下、まず、
図1に基づいて、これらを順に簡単に説明する。
【0015】
ロボット2は、ワークWとヘッドユニット3とを相対移動させる多関節ロボットである。
図1に示す例では、ロボット2は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。
【0016】
図1に示すように、ロボット2は、基部210と腕部220とを有する。
【0017】
基部210は、腕部220を支持する台である。
図1に示す例では、基部210は、Z1方向を向く床面または基台等の設置面にネジ止め等により固定される。なお、基部210が固定される設置面は、いかなる方向を向く面でもよく、
図1に示す例に限定されず、例えば、壁、天井、移動可能な台車等が有する面でもよい。
【0018】
腕部220は、基部210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、腕部220は、リンクとも称されるアーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。
【0019】
アーム221は、基部210に対して回動軸O1まわりに回動可能に関節J1を介して連結される。アーム222は、アーム221に対して回動軸O2まわりに回動可能に関節J2を介して連結される。アーム223は、アーム222に対して回動軸O3まわりに回動可能に関節J3を介して連結される。アーム224は、アーム223に対して回動軸O4まわりに回動可能に関節J4を介して連結される。アーム225は、アーム224に対して回動軸O5まわりに回動可能に関節J5を介して連結される。アーム226は、アーム225に対して回動軸O6まわりに回動可能に関節J6を介して連結される。
【0020】
関節J1~J6のそれぞれは、基部210およびアーム221~226のうち互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。なお、以下では、関節J1~J6のそれぞれを「関節J」という場合がある。
【0021】
図1では図示しないが、関節J1~J6のそれぞれには、対応する当該互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、関節J1~J6の当該駆動機構の集合体は、後述の
図2に示すアーム駆動機構2aに相当する。
【0022】
以上のロボット2のアーム221~226のうち最も先端に位置するアーム226には、エンドエフェクターとしてヘッドユニット3が装着される。ここで、ヘッドユニット3は、ネジ止め等によりアーム226に固定される。
【0023】
ヘッドユニット3は、ヘッドユニット3インクをワークWに向けて吐出するヘッド3aを有するアセンブリーであり、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とを有する。本実施形態では、ヘッドユニット3は、ヘッド3aのほか、圧力調整弁3bとエネルギー出射部3cとを有する。なお、ヘッドユニット3の詳細については、後に
図3に基づいて説明する。
【0024】
当該インクとしては、特に限定されないが、本実施形態では、紫外線硬化性インクが用いられる。なお、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、例えば、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよいし、クリアインクでもよいし、ワークWの表面処理のための処理液でもよい。
【0025】
コントローラー5は、ロボット2の駆動を制御するロボットコントローラーである。以下、
図2に基づいて、印刷装置1の電気的な構成について、コントローラー5の詳細な説明を含めて説明する。
【0026】
1-2.印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
図2では、印刷装置1の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。
図2に示すように、印刷装置1は、前述の
図1に示す構成要素のほか、コントローラー5に通信可能に接続される制御モジュール6と、コントローラー5および制御モジュール6に通信可能に接続されるコンピューター7と、を有する。ここで、コントローラー5、制御モジュール6およびコンピューター7は、制御部8を構成する。制御部8は、ロボット2およびヘッドユニット3のそれぞれの動作を制御する。以下、
図2に基づいて、制御部8の各部を順に説明する。
【0027】
なお、
図2に示す電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、コントローラー5または制御モジュール6の機能の一部または全部は、コンピューター7により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー5に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0028】
コントローラー5は、ロボット2の駆動を制御する機能と、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作をロボット2の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。
【0029】
コントローラー5は、記憶回路5aと処理回路5bとを有する。
【0030】
記憶回路5aは、処理回路5bが実行する各種プログラムと、処理回路5bが処理する各種データと、を記憶する。なお、記憶回路5aの一部または全部は、処理回路5bに含まれてもよい。
【0031】
記憶回路5aには、経路情報Daが記録される。
【0032】
経路情報Daは、ロボット2の動作の制御に用いられ、印刷動作の実行時にヘッド3aまたはヘッドユニット3の移動すべき経路におけるヘッド3aまたはヘッドユニット3の目標位置および目標姿勢を示す情報である。ここで、ヘッド3aの位置および姿勢は、ロボット2の後述のツールセンターポイントTCPの位置および姿勢で定義される。したがって、経路情報Daは、ツールセンターポイントTCPの目標位置を示す位置情報と、ツールセンターポイントTCPの目標姿勢を示す姿勢情報と、を含む。例えば、当該位置情報は、ロボット座標系における目標位置を示す複数の座標値で表され、当該姿勢情報は、当該目標位置に対応する目標姿勢を示す複数のベクトルで表される。なお、ツールセンターポイントTCPは、ヘッド3aに対する位置関係を固定した仮想的な点であり、ヘッド3aから離れた位置となる場合がある。また、経路情報Daは、ワーク座標系を用いて表されてもよい。この場合、経路情報Daは、ワーク座標系の座標値からベース座標系またはワールド座標系の座標値に変換した後にロボット2の動作の制御に用いられる。
【0033】
処理回路5bは、経路情報Daに基づいてロボット2のアーム駆動機構2aの動作を制御するとともに、信号D3を生成する。
【0034】
ここで、アーム駆動機構2aは、前述の関節J1~J6の駆動機構の集合体であり、関節Jごとに、ロボット2の関節を駆動するためのモーターと、ロボット2の関節の回転角度を検出するエンコーダーと、を有する。
【0035】
処理回路5bは、経路情報Daをロボット2の各関節Jの回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路5bは、各関節Jの実際の回転角度および回転速度等の動作量が経路情報Daに基づく前述の演算結果となるように、アーム駆動機構2aの各エンコーダーからの出力D1に基づいて、制御信号Sk1を出力する。制御信号Sk1は、アーム駆動機構2aのモーターの駆動を制御するための信号である。ここで、制御信号Sk1は、必要に応じて、図示しない距離センサーからの出力に基づいて処理回路5bにより補正される。
【0036】
また、処理回路5bは、アーム駆動機構2aの有する複数のエンコーダーのうちの少なくとも1つからの出力D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路5bは、当該複数のエンコーダーのうちの1つからの出力D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0037】
制御モジュール6は、コントローラー5から出力される信号D3とコンピューター7からの印刷データImgとに基づいて、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を制御する回路である。制御モジュール6は、タイミング信号生成回路6aと電源回路6bと制御回路6cと駆動信号生成回路6dとを有する。
【0038】
タイミング信号生成回路6aは、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路6aは、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。すなわち、タイミング信号生成回路6aは、信号D3に同期する一定時間間隔のタイミング信号PTSを生成する。
【0039】
電源回路6bは、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、制御モジュール6およびヘッドユニット3の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路6bは、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッドユニット3に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路6dに供給される。
【0040】
制御回路6cは、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路6dに入力され、それ以外の信号は、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eに入力される。
【0041】
制御信号SIは、ヘッドユニット3のヘッド3aが有する駆動素子の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、印刷データImgに基づいて、当該駆動素子に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定するための信号である。この指定により、例えば、当該駆動素子に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、当該駆動素子の駆動タイミングを規定することにより、当該ノズルからのインクの吐出タイミングを規定するための信号である。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。
【0042】
駆動信号生成回路6dは、ヘッドユニット3のヘッド3aの有する各駆動素子を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路6dは、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路6dでは、当該DA変換回路が制御回路6cからの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路6bからの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、当該駆動素子に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eを介して、駆動信号生成回路6dから当該駆動素子に供給される。
【0043】
ここで、スイッチ回路3eは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を含む回路である。
【0044】
コンピューター7は、経路情報Daを生成する機能と、コントローラー5に経路情報Da等の情報を供給する機能と、制御モジュール6に印刷データImg等の情報を供給する機能と、を有する。本実施形態のコンピューター7は、これらの機能のほか、エネルギー出射部3cの駆動を制御する機能を有する。
【0045】
コンピューター7は、記憶回路7aと処理回路7bとを有する。そのほか、図示しないが、コンピューター7は、ユーザーからの操作を受け付けるキーボートまたはマウス等の入力装置を有する。なお、コンピューター7は、経路情報Daの生成に必要な情報を表示する液晶パネル等の表示装置を有してもよい。
【0046】
記憶回路7aは、処理回路7bが実行する各種プログラムと、処理回路7bが処理する各種データと、を記憶する。記憶回路7aは、例えば、RAM等の揮発性のメモリーとROM、EEPROMまたはPROM等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路7aの一部または全部は、処理回路7bに含まれてもよい。
【0047】
記憶回路7aには、経路情報Daとワーク情報Dcと印刷データImgとプログラムPRとが記録される。
【0048】
ワーク情報Dcは、ワークWの少なくとも一部の形状を表すデータである。具体的には、ワーク情報Dcは、例えば、ワークWの形状を複数のポリゴンによって表すSTL(Standard Triangulated Language)形式等の3次元データである。ワーク情報Dcは、ポリゴンの各頂点の座標に関する情報である座標情報と、ポリゴン面の表裏を示す法線ベクトルに関する情報であるベクトル情報と、を含む。ワーク情報Dcは、ワークWの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データを必要に応じて変換処理することにより得られる。なお、ワーク情報Dcは、ワーク座標系の座標値を用いて表されてもよいし、ベース座標系またはワールド座標系の座標値を用いた点群データによって表されてもよい。また、ワーク情報Dcは、数式等によって表されてもよく、ワーク情報Dcの形式は必要に応じて適宜変換され得る。
【0049】
印刷データImgは、経路情報Daの示す印刷経路の経路(パス)ごとにワークW上に印刷すべき画像を示す情報である。ここで、最終的にワークW上に印刷すべき画像は、微小な点であるドットの集合によって表され、当該ドットに対応するインク滴がワークW上に付与されることで印刷がなされる。印刷すべき画像は、後述の第1ノズル列NL1から吐出されるインク滴により形成される画像と、後述の第2ノズル列NL2から吐出されるインク滴により形成される画像と、の重ね合わせにより構成される。本実施形態では、印刷データImgは、後述の第1ノズル列NL1用の第1印刷データと、後述の第2ノズル列NL2用の第2印刷データと、を含む。当該第1印刷データは、最終的にワークW上に印刷すべき画像のうち、後述の第1ノズル列NL1から吐出されるインク滴により形成される画像を示す情報である。一方、当該第2印刷データは、最終的にワークW上に印刷すべき画像のうち、後述の第2ノズル列NL2から吐出されるインク滴により形成される画像を示す情報である。
【0050】
プログラムPRは、経路情報Daの取得と経路情報Daに基づく印刷とを実行するためのプログラムである。
【0051】
処理回路7bは、プログラムPR等のプログラムの実行により前述の各機能を実現する。処理回路7bは、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。
【0052】
以上のように、経路情報Daに基づいてロボット2の駆動が制御されるとともに、印刷データImgおよび信号D3に基づいてヘッド3aの駆動が制御されることにより、印刷動作が行われる。印刷動作では、ロボット2が経路情報Daに基づいてヘッド3aの位置および姿勢を変化させつつ、ヘッド3aが印刷データImgおよび信号D3に基づく適宜のタイミングでヘッド3aからワークWに向けてインクをインク滴として吐出させる。吐出されたインク滴は空間中を飛翔した後、ワークW上に付着する。なお、このインク滴の付着をインク滴の着弾と表現することがある。以上のようにして、ワークW上に印刷データImgに基づく画像が形成される。
【0053】
ここで、ヘッド3aからインク滴の吐出されるタイミングは、前述のタイミング信号PTSまたはクロック信号CLKに基づく一定時間間隔である。これは、印刷用紙の幅方向にインクジェットヘッドを往復移動させるシリアル型のプリンターのような通常のプリンターと異なり、リニアエンコーダーを用いてヘッド3aの位置を検出する構成を採用できないことによる。これに対し、当該通常のプリンターでは、当該往復移動によるインクジェットヘッドの位置を検出するリニアエンコーダーが用いられる。このため、当該リニアエンコーダーの検出結果に基づいてインクジェットヘッドの位置に対応したタイミングでインクジェットヘッドからインク滴を吐出させることができる。
【0054】
1-3.ヘッドユニットの構成
図3は、第1実施形態のヘッドユニット3の概略構成を示す斜視図である。以下の説明は、便宜上、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、a軸に沿う一方向がa1方向であり、a1方向と反対の方向がa2方向である。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向がb1方向およびb2方向である。また、c軸に沿って互いに反対の方向がc1方向およびc2方向である。
【0055】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、ヘッドユニット3に設定されるツール座標系の座標軸に相当し、前述のロボット2の動作により前述のワールド座標系またはロボット座標系との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。
図3に示す例では、c軸が前述の回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。なお、ツール座標系とベース座標系またはロボット座標系とは、キャリブレーションにより対応付けされる。
【0056】
ツール座標系は、ツールセンターポイントTCPを基準として設定される。したがって、ヘッド3aの位置および姿勢は、ツールセンターポイントTCPを基準として規定される。
図3に示す例では、ツールセンターポイントTCPは、ノズル面FNの中心に配置される。なお、ツールセンターポイントTCPの位置は、
図3に示す例に限定されず、例えば、ヘッド3aからインクの吐出方向DEに間隔を隔てた位置でもよい。この場合、後述の移動経路RUがワークWの表面に設定される。
【0057】
ヘッドユニット3は、前述のように、ヘッド3aと圧力調整弁3bとエネルギー出射部3cとを有する。これらは、
図3中の二点鎖線で示される支持体3fに支持される。なお、
図3に示す例では、ヘッドユニット3が有するヘッド3aおよび圧力調整弁3bのそれぞれの数が1個であるが、当該数は、
図3に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、圧力調整弁3bの設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基部210に対して固定の位置でもよい。
【0058】
支持体3fは、前述のアーム226に装着される。したがって、ヘッド3a、圧力調整弁3bおよびエネルギー出射部3cが支持体3fにより一括してアーム226に支持される。このため、アーム226に対するヘッド3a、圧力調整弁3bおよびエネルギー出射部3cのそれぞれの相対的な位置が固定される。
図3に示す例では、ヘッド3aに対してc1方向の位置には、圧力調整弁3bが配置される。ヘッド3aに対してa2方向の位置には、エネルギー出射部3cが配置される。
【0059】
ヘッド3aは、ノズル面FNと、ノズル面FNに開口する複数のノズルNと、を有する。ノズル面FNは、ノズルNが開口するノズル面であり、例えば、シリコン(Si)または金属等の材料で構成されるか、または、その板面を延長した平面上に他の部材がヘッドユニット3の構成要素として配置される場合、ノズルプレートの板面と当該他の部材の面とで構成される面である。当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とに区分される。第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2のそれぞれは、b軸に沿う方向であるノズル列方向DNに直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、ヘッド3aにおける第1ノズル列NL1の各ノズルNに関連する要素と第2ノズル列NL2の各ノズルNに関連する要素とがa軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。
【0060】
本実施形態では、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2が同一のヘッド3aに設けられるため、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の距離は、固定されている。また、本実施形態では、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが並ぶ方向である並列方向DLが後述の主走査方向DSに平行であり、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の距離は、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の主走査方向DSでの距離L2に等しい。なお、
図3では、並列方向DLは、a軸に沿う方向、すなわちa1方向またはa2方向である。
【0061】
ただし、第1ノズル列NL1における複数のノズルNと第2ノズル列NL2における複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2のうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、第1ノズル列NL1における複数のノズルNと第2ノズル列NL2における複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0062】
なお、以下では、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2の全体をノズル列NLという場合がある。ノズル列NLは、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2を含む。
【0063】
図示しないが、ヘッド3aは、ノズルNごとに、駆動素子である圧電素子と、インクを収容するキャビティと、有する。ここで、当該圧電素子は、当該圧電素子に対応するキャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出方向DEに吐出させる。このようなヘッド3aは、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0064】
以上のヘッド3aには、配管部10を介して図示しないインクタンクからインクが供給される。ここで、配管部10は、圧力調整弁3bを介してヘッド3aに接続される。
【0065】
圧力調整弁3bは、ヘッド3a内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド3aと前述の図示しないインクタンクとの位置関係が変化しても、ヘッド3a内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。
【0066】
エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放直線等のエネルギーを出射する。例えば、インクが紫外線硬化性を有する場合、エネルギー出射部3cは、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等で構成される。また、エネルギー出射部3cは、エネルギーの出射方向または出射範囲等を調整するためのレンズ等の光学部品等を適宜に有してもよい。
【0067】
1-4.印刷方法
図4は、印刷動作の一例を示す図である。
図4では、ロボット2よりもX2方向の位置に載置されるワークWの面WFに対して印刷する場合が例示される。
【0068】
印刷動作では、印刷データImgに基づいてノズルNから適宜に吐出されるインクがワークWに付与されることにより、ワークW上にインクによる印刷が行われる。このとき、ロボット2は、経路情報Daに基づいてヘッド3aの位置および姿勢を変化させる。このように、印刷動作とは、ロボット2がワークWとヘッドユニット3とを主走査方向DSに相対移動させつつ、ヘッドユニット3が複数の異なるタイミングでインク滴を吐出する印刷装置1の動作である。このような印刷動作により、ヘッド3aは、面WFに対して、経路情報Daの姿勢情報に基づく所定の姿勢を保ちつつ、経路情報Daの位置情報に基づく移動経路RUに沿って移動する。移動経路RUは、位置PSから位置PEまでの経路である。
【0069】
図4に示す例では、移動経路RUは、Z2方向にみてX軸に沿って延びる。すなわち、主走査方向DSは、Z軸に沿う方向にみてX軸に平行である。そして、ロボット2は、印刷動作の実行中において、関節Jのうち、主に関節J2と関節J3と関節J5との3個の関節Jを動作させる。ここで、当該3個の関節Jのそれぞれの回動軸をY軸に平行な状態とし、当該3個の関節Jのみを動作させることにより、4個以上の関節Jを動作させる態様に比べて、主走査方向DSに交差する方向での蛇行を低減しつつ、ヘッド3aを主走査方向DSに移動させることができる。
【0070】
なお、ロボット2は、6個の関節Jのうち4個以上の関節Jを動作させることにより印刷動作を行ってもよい。この場合、ワークWの設置位置および設置姿勢は、
図4に示す例に限定されず、任意である。また、移動経路RUは、ワークWの形状、印刷範囲、設置位置および設置姿勢等に応じて決められ、
図4に示す例に限定されず、任意である。印刷動作において動作させる関節Jの位置および数等は、移動経路RUおよび印刷動作時のワークWに対するヘッドユニット3の姿勢に応じて決められる。
【0071】
以上の印刷動作において、前述のようにヘッドユニット3からインク滴の吐出されるタイミングは、一定時間間隔である。このため、ヘッドユニット3を主走査方向DSに一定速度で移動させるように、ロボット2の動作が制御される。しかし、このような一定速度でのヘッドユニット3の移動を試みても、実際には、その移動の速度に誤差が生じてしまう。従来では、このような速度の誤差に起因して、印刷された画像の品質が低下する場合があった。
【0072】
このような速度の誤差は、一定の周期性を有している場合がある。つまり、ヘッドユニット3の速度が速くなる期間と、速度が遅くなる期間と、が交互に繰り返され、結果として印刷された画像には、これを反映したムラが生じる。ここで、このような速度の誤差の要因としては、様々あるが、例えば、ロボット2の複数の関節Jに設けられた駆動機構の各動作誤差の重畳、ロボット2の動作をフィードバック制御する際の制御周期による誤差等が挙げられる。
【0073】
そこで、このような画像の品質の低下を防止すべく、印刷装置1では、前述のような速度の誤差の周期に応じて、前述の第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の主走査方向DSでの距離L2が設定される。以下、この点について詳述する。
【0074】
図5は、第1実施形態に係る印刷装置1の距離L2を決定する際の流れを説明するための図である。距離L2を決定するには、まず、
図5に示すように、試験印刷ステップS10が行われる。試験印刷ステップS10では、印刷装置1が第2ノズル列NL2を用いずに第1ノズル列NL1のみを用いて試験印刷用のワークWに対して試験印刷を行う。当該試験印刷用のワークWは、特に限定されないが、例えば、最終的な印刷対象となるワークWである。また、当該試験印刷の画像は、特に限定されないが、例えば、一様な色および濃度の画像であるいわゆるベタ画像、ハーフトーン画像またはドットパターン等の画像である。当該画像の一例については、後に
図6に基づいて説明する。
【0075】
試験印刷ステップS10の後、テストパターン確認ステップS20が行われる。テストパターン確認ステップS20では、試験印刷ステップS10の試験印刷の結果に基づいて、後述の距離L1が測定される。この測定の詳細については、後に
図6に基づいて説明する。
【0076】
テストパターン確認ステップS20の後、ステップS30において、距離L1が距離L2の整数倍に等しいか否かが判断される。すなわち、L1≠n×L2の関係を満たすか否かが判断される。nは、1以上の整数である。
【0077】
L1≠n×L2の関係を満たす場合、第1ヘッド決定ステップS40が行われる。第1ヘッド決定ステップS40では、試験印刷ステップS10で使用したヘッドユニット3またはヘッド3aを採用することが決定される。
【0078】
一方、L1≠n×L2の関係を満たさない場合、第2ヘッド決定ステップS50が行われる。第2ヘッド決定ステップS50では、試験印刷ステップS10で使用したヘッドユニット3またはヘッド3aを採用せず、L1≠n×L2の関係を満たすようなヘッドユニット3またはヘッド3aを採用することが決定される。すなわち、第2ヘッド決定ステップS50では、試験印刷ステップS10で使用したヘッドユニット3またはヘッド3aとは距離L2の異なるヘッドユニット3またはヘッド3aを採用することが決定される。
【0079】
図6は、試験印刷ステップS10で得られる印刷結果の一例を示す図である。
図6では、試験印刷の画像としてハーフトーン画像を用いた場合の印刷結果が模式的に示される。当該ハーフトーン画像においては、主走査方向DSに対応する方向において、複数のドットが等間隔に配置されることが好ましい。なお、
図6では、作図の便宜上、印刷画像の濃淡が3段階で示されるが、実際の印刷画像の濃淡は、主走査方向DSに連続的に変化する。
【0080】
図6に示すように、試験印刷用のワークWである媒体Mには、ヘッドユニット3の移動速度の誤差に起因して、濃淡ムラが生じる。この濃淡ムラには、一定の周期性を有する。すなわち、この濃淡ムラは、距離L1で最も濃い部分または最も薄い部分が現れる。このように、ヘッドユニット3の移動速度が速くなる期間と、ヘッドユニット3の移動速度が遅くなる期間と、が交互に繰り返され、結果として印刷画像には、これを反映した濃淡ムラが生じる。詳細は
図7を参照して後述するが、ヘッドユニット3の移動速度が速くなる期間に対応する部分は、印刷結果が薄い部分となり、一方で、ヘッドユニット3の移動速度が遅くなる期間に対応する部分は、印刷結果が濃い部分となり、これらが交互に現れることで濃淡ムラが生じる。
【0081】
図7は、距離L1、L2の関係を説明するための図である。
図7では、第1ノズル列NL1から吐出されたインク滴Dt1と第2ノズル列NL2から吐出されたインク滴Dt2とについて、分布の疎密と主走査方向DSでの位置との関係が示される。なお、
図7では、主走査方向DSに一定間隔で配置されるインク滴Dt0の位置、つまり理想着弾位置が比較対象として示される。
【0082】
ヘッドユニット3の第1ノズル列NL1から一定の時間間隔でインク滴Dt1を吐出する場合、
図7に示すように、ロボット2による主走査方向DSの移動速度が速くなる期間では、ワークW上に形成されるインク滴Dt1の間隔が広くなり、インク滴Dt1の分布が「疎」になるため、印刷画像としては他と比較して淡い色となる領域が形成される。一方で、ロボット2による主走査方向DSの移動速度が遅くなる期間では、ワークW上に形成されるインク滴Dt1の間隔が狭くなり、インク滴Dt1の分布が「密」になるため、印刷画像としては他と比較して濃い色となる領域が形成される。
【0083】
ここで、ロボット2による主走査方向DSの移動速度が速くなる期間と遅くなる期間とは、交互に並び、周期性を有する。このため、ヘッドユニット3が一定の時間間隔でインク滴Dt1を吐出すると、当該周期性を反映した形で、ワークW上のインク滴Dt1の間隔に「疎密」が生じる。すなわち、濃淡ムラが生じる。
【0084】
そこで、印刷装置1では、これを抑制するように、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との主走査方向DSでの距離L2が設定される。具体的には、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の主走査方向DSでの距離L2が前述の濃淡ムラの周期の距離L1と異なり、最も好ましくは、
図7に示すように距離L2が前述の周期の半分である。
【0085】
このように、L1≠n×L2の関係を満たす状態で、印刷動作において、ヘッドユニット3が第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との両方からインク滴を吐出する。これにより、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2から吐出されたインク滴により形成される疎密が互いに補い合うので、全体として印刷画像の濃淡ムラを抑制することができる。ここで、距離L1は、第1頂点PV1と第2頂点PV2との距離である。第1頂点PV1は、印刷動作において第1ノズル列NL1から吐出されることによりワークW上に付与された複数のインク滴Dt1間における主走査方向DSでの距離の増減について、任意の頂点である。第2頂点PV2は、当該増減について、第1頂点PV1に隣接する頂点である。距離L2は、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の主走査方向DSでの距離である。nは、任意の整数である。
【0086】
ここで、当該増減の有する複数の頂点の間隔は、様々の要因により変動する場合がある。このため、濃度ムラを好適に低減する観点から、第1頂点PV1および第2頂点PV2は、当該増減のうち、主走査方向DSでの距離が最も短くなる頂点の対であることが好ましい。この場合、疎密周期が変動しても、濃淡ムラを好適に低減することができる。
【0087】
また、距離L1は、特に限定されないが、0.5mm以上である。このような距離L1である場合、前述の濃淡ムラが人間の目で視認し得るので、L1≠n×L2の関係を満たすことによる印刷画像の濃淡ムラを抑制する効果が顕著に得られる。
【0088】
なお、当該増減の頂点は、ノイズ等による微細な波形変化を考慮せずに決められる。ここで、例えば、必要に応じて、ノイズ等を除去するため、当該増減の波形を三角関数等によりフィッティングを行った後、当該増減の頂点が決められる。また、当該頂点は、当該増減の極大点であるともいえる。また、当該頂点に代えて、当該増減の極小点を用いても、距離L1を規定することができる。
【0089】
ここで、第1ノズル列NL1から吐出された任意のインク滴Dt1と、当該インク滴DT1から主走査方向DSとは反対の方向に距離L2だけ離れた位置ある第2ノズル列NL2から吐出されたインク滴Dt2と、は、互いに同じ吐出タイミングによるインク滴である。つまり、印刷動作の実行中において第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との距離は固定されているため、2つのノズル列がインク滴を吐出し、両者によって着弾したインク滴の分布が密となる2つの領域が形成されるタイミングは互いに等しいが、密となる当該2つの領域は距離L2だけ離間する。同様に、2つのノズル列がインク滴を吐出し、両者によって着弾したインク滴の分布が疎となる2つの領域が形成されるタイミングは互いに等しいが、疎となる当該2つの領域は距離L2だけ離間する。また、第1ノズル列NL1からのインク滴Dt1の吐出に用いる前述の印刷データImgの第1印刷データと第2ノズル列NL2からのインク滴Dt2の吐出に用いる印刷データImgの第2印刷データとは、互いに距離L2分ずれた画像を形成するようにインク滴Dt1、Dt2を同一タイミングで吐出させる。
【0090】
また、ヘッドユニット3は、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との両方から同色のインク滴を吐出することが好ましい。この場合、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2から吐出されたインク滴により形成される疎密が互いに補い合うことにより、異色のインクを用いる態様に比べて色ムラを低減することができる。
【0091】
距離L1、L2は、前述のように、L1≠n×L2の関係を満たせばよいが、L1>L2の関係を満たすことが好ましい。この場合、L1<L2の関係を満たす態様に比べて、印刷画像の濃淡ムラを抑制することができる。
【0092】
これに対し、L1=L2の場合は、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2で疎密を強め合う。また、L1<L2の場合でも、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2によって互いに吐出したインク滴が形成する疎密を補い、全体として印刷画像の濃淡を抑制することができる。ただし、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の距離L2が大きくなるほど、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2が設けられるノズル面FNの面積が大きくなってしまい、この結果、ワークWに対するノズル面FNの追従性が低下したり、印刷動作中におけるヘッドユニット3のヨーイングによる第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間でインク滴の着弾ずれの影響が大きくなったりする。このため、L1>L2とすることが好ましい。ここで、ヘッドユニット3のヨーイングとは、ヘッドユニット3が関節J6の回動軸O6またはc軸まわりに回動することをいう。
【0093】
前述の濃淡ムラを低減する効果を最大化する観点では、L1およびL2は、L1/2=n×L2の関係を満たすことが最も好ましい。この場合、第1ノズル列NL1からのインク滴Dt1による最の濃い部分と第2ノズル列NL2からのインク滴Dt2による最も薄い部分とが互いに重なるので、濃淡ムラの低減効果が最大となる。
【0094】
図8は、距離L2が距離L1の1/4である場合を説明するための図である。前述の濃淡ムラを効果的かつ容易に低減する観点では、L1およびL2は、L1×1/4≦n×L2≦L1×3/4の関係を満たせばよい。この場合、印刷画像の濃淡ムラを好適に抑制することができる。すなわち、
図8に示すように、濃淡ムラの位相が45度~135度ずれることにより、第1ノズル列NL1からのインク滴Dt1による最の濃い部分と、第2ノズル列からのインク滴による平均よりも薄い部分が重なるので、濃淡ムラの低減効果が大きくなる。
【0095】
これに対し、濃淡ムラの位相のずれが45度よりも小さい場合、すなわち距離L1と距離L2との差が±25%以下である場合では、印刷動作中におけるヘッドユニット3のヨーイングによる第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間でインク滴の着弾ずれの影響の方が大きくなる場合がある。この場合、第1ノズル列NL1のみを用いて印刷動作を行えばよい。
【0096】
以上のように、第1実施形態では、L1≠n×L2の関係を満たすことにより、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2から吐出されたインク滴により形成される疎密が互いに補い合うので、全体として印刷画像の濃淡ムラを抑制することができる。
【0097】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0098】
図9は、第2実施形態のヘッドユニット3Aの概略構成を示す斜視図である。第2実施形態は、ヘッドユニット3に代えてヘッドユニット3Aを用いること以外は、第1実施形態と同様である。ヘッドユニット3Aは、ヘッド3aに代えてヘッド3a-1、3a-2を有するとともに調整機構3gを追加したこと以外は、第1実施形態のヘッドユニット3と同様に構成される。ヘッド3a-1は、「第1ヘッド」の一例である。ヘッド3a-2は、「第2ヘッド」の一例である。
【0099】
ヘッド3a-1は、第2ノズル列NL2を省略したこと以外は、第1実施形態のヘッド3aと同様に構成される。すなわち、ヘッド3a-1は、第1ノズル列NL1を有するが、第2ノズル列NL2を有しない。
【0100】
一方、ヘッド3a-2は、第1ノズル列NL1を省略したこと以外は、第1実施形態のヘッド3aと同様に構成される。すなわち、ヘッド3a-2は、第2ノズル列NL2を有するが、第1ノズル列NL1を有しない。ここで、ヘッド3a-2は、ヘッド3a-1に対してa1方向の位置に配置される。このように、ヘッド3a-1およびヘッド3a-1は、a軸に沿う方向に並ぶ。
【0101】
このように、ヘッドユニット3Aは、「第1ヘッド」の一例であるヘッド3a-1と「第2ヘッド」の一例であるヘッド3a-2とを有する。そして、ヘッド3a-1には、第1ノズル列NL1が設けられる。一方、ヘッド3a-2には、第2ノズル列NL2が設けられる。このため、ヘッド3a-1とヘッド3a-2との間隔を調整することにより、距離L2を調整することができる。
【0102】
具体的には、ヘッド3a-1、3a-2は、調整機構3gを介して支持体3fに支持される。調整機構3gは、ヘッド3a-1とヘッド3a-2との間のa軸に沿う方向での距離を調整可能である。調整機構3gは、例えば、直動機構で構成される。なお、調整機構3gによる調整は、手動式であってもよいし、制御部8による制御可能な電動式であってもよい。
【0103】
このように、本実施形態の印刷装置は、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間の主走査方向DSでの距離L2を調整可能な調整機構3gを有する。このため、前述の疎密周期が変動しても、調整機構3gによる調整により、濃淡ムラを低減する効果を高めることができる。なお、多パス印刷を行う場合、パスごとにL2を異ならせてもよい。
【0104】
また、本実施形態では、調整機構3gによる距離L2の調整に加えて、印刷動作の実行時におけるヘッドユニット3のc軸まわりの姿勢とb軸まわりの姿勢とを調整可能である。これらの姿勢の調整は、関節J1~J6のうちの少なくとも1つの動作量の変更により実現される。具体的には、ヘッドユニット3のc軸まわりの姿勢は、関節J6の動作量の変更により調整可能である。また、ヘッドユニット3のb軸まわりの姿勢は、例えば、前述の
図4に示す印刷動作を実行する場合、関節J2、J3、J5のうちの少なくとも1つの動作量の変更により調整可能である。このように、本実施形態では、ロボット2が距離L2を調整可能な調整機構としても機能する。
【0105】
このように、本実施形態では、調整機構3gによる調整とロボット2の動作量の変更とのそれぞれにより、距離L2が調整可能である。ここで、距離L2の調整は、調整機構3gによる調整とロボット2の動作量の変更とのうち、一方で行ってもよいし、両方で行ってもよい。なお、この調整の詳細については、後に
図11から
図14に基づいて説明する。
【0106】
図10は、第2実施形態に係る印刷装置の動作を説明するための図である。本実施形態の印刷を行うには、まず、
図10に示すように、前述の第1実施形態と同様、試験印刷ステップS10およびテストパターン確認ステップS20がこの順で行われた後、ステップS30において、L1≠n×L2の関係を満たすか否かが判断される。
【0107】
L1≠n×L2の関係を満たす場合、必要に応じて、印刷データ調整ステップS80が行われた後、印刷ステップS90が行われる。印刷ステップS90では、試験印刷ステップS10で使用したヘッドユニット3またはヘッド3aを用いて印刷動作が実行される。
【0108】
印刷データ調整ステップS80では、テストパターン確認ステップS20で確認した濃淡ムラの密になる部分のインク滴によるドットを間引いたり、濃淡ムラの疎になる部分にインク滴によるドットを追加したりする処理が行われる。また、印刷データ調整ステップS80では、後述の距離L2の調整に伴って印刷データImgの第1印刷データおよび第2印刷データを修正する処理が行われる。
【0109】
一方、L1≠n×L2の関係を満たさない場合、ステップS60において、距離L2が調整可能であるか否かが判断される。この判断は、前述の調整機構3gによる調整とロボット2の動作量の変更との一方または両方により、当該関係を満たすことが可能であるか否かにより行われる。
【0110】
距離L2が調整可能である場合、L2調整ステップS70が行われる。L2調整ステップS70では、前述の調整機構3gによる調整とロボット2の動作量の変更との一方または両方により、L1≠n×L2の関係を満たすように距離L2が調整される。
【0111】
距離L2が調整可能でない場合、または、L2調整ステップS70の後、前述のように、必要に応じて、印刷データ調整ステップS80が行われた後、印刷ステップS90が行われる。ここで、距離L2が調整可能でない場合、印刷データ調整ステップS80では、テストパターン確認ステップS20で確認した濃淡ムラの密になる部分のインク滴によるドットを間引いたり、濃淡ムラの疎になる部分にインク滴によるドットを追加したりする処理が行われる。また、L2調整ステップS70の後、印刷データ調整ステップS80では、後述の距離L2の調整に伴って印刷データImgの第1印刷データおよび第2印刷データを修正する処理が行われる。
【0112】
図11は、ノズル列NLの延びる方向にみて並列方向DLが主走査方向DSと平行である場合の距離L2を説明するための図である。この場合、
図11に示すように、距離L2は、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間のa軸に沿う方向での距離に等しい。
【0113】
図12は、ノズル列NLの延びる方向にみて並列方向DLが主走査方向DSに対して傾斜する場合の距離L2である距離L2aを説明するための図である。この場合、
図12に示すように、距離L2aは、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間のa軸に沿う方向での距離よりも大きい。すなわち、距離L2aは、前述の
図11に示す距離L2よりも大きい。ここで、主走査方向DSに対する並列方向DLの傾斜角度をθとしたとき、距離L2aは、L2a=L2/cosθの関係を満たす。このように、ヘッドユニット3のb軸まわりの姿勢の変更により、距離L2を調整することができる。
【0114】
このように、印刷動作において、第1ノズル列NL1または第2ノズル列NL2の延びる方向にみたとき、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが互いに並ぶ並列方向DLは、主走査方向DSと交差することにより、第1ノズル列NL1または第2ノズル列NL2の延びる方向に沿う軸まわりにヘッドユニット3Aの姿勢が変更されるので、距離L2を調整することができる。
【0115】
図13は、ノズル列NLからのインク滴の吐出方向DEに沿う方向にみて並列方向DLが主走査方向DSと平行である場合の距離L2を説明するための図である。この場合、
図13に示すように、距離L2は、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間のa軸に沿う方向での距離に等しい。なお、
図13では、ヘッドユニット3のb軸まわりの姿勢は、
図11に示す姿勢である。
【0116】
図14は、ノズル列NLからのインク滴の吐出方向DEに沿う方向にみて並列方向DLが主走査方向DSに対して傾斜する場合の距離L2である距離L2bを説明するための図である。この場合、
図14に示すように、距離L2bは、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2との間のa軸に沿う方向での距離よりも大きい。すなわち、距離L2bは、前述の
図11に示す距離L2よりも大きい。ここで、主走査方向DSに対する並列方向DLの傾斜角度をθとしたとき、距離L2bは、L2b=L2/cosθの関係を満たす。このように、ヘッドユニット3のc軸まわりの姿勢の変更により、距離L2を調整することができる。
【0117】
このように、印刷動作において、ヘッドユニット3Aからのインク滴の吐出方向にみたとき、第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とが互いに並ぶ並列方向DLは、主走査方向DSと交差することにより、ヘッドユニット3Aからのインク滴の吐出方向に沿う軸まわりにヘッドユニット3Aの姿勢が変更されるので、距離L2を調整することができる。
【0118】
以上の第2実施形態によっても、L1≠n×L2の関係を満たすことにより、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2から吐出されたインク滴により形成される疎密が互いに補い合うので、全体として印刷画像の濃淡ムラを抑制することができる。
【0119】
3.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0120】
3-1.変形例1
前述の第2実施形態では、調整機構3gが省略されてもよい。この場合、印刷動作の実行時におけるヘッドユニット3のc軸まわりの姿勢とb軸まわりの姿勢とのうちの一方または両方を変更することにより距離L2が調整可能である。
【0121】
3-2.変形例2
前述の形態では、Z軸に沿う方向にみて印刷動作の実行時におけるヘッド3aの移動方向がX1方向である場合が例示されるが、これに限定されない。例えば、Z軸に沿う方向にみて、印刷動作の実行時におけるヘッド3aの移動方向がX2方向であってもよいし、Z軸に沿う方向にみて、印刷動作の実行時におけるヘッド3aの移動方向がX軸に直交する方向であってもよいし、Z軸に沿う方向にみて、印刷動作の実行時におけるヘッド3aの移動方向がX軸およびY軸の両方に傾斜する方向であってもよい。
【0122】
3-3.変形例3
前述の形態では、ロボットとして6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。ロボットは、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。また、ロボットの腕部は、回動機構で構成される関節に加えて、伸縮機構または直動機構等を有してもよい。ただし、印刷動作での印刷品質と非印刷動作でのロボットの動作の自由度とのバランスの観点から、ロボットは、6軸以上の多軸ロボットであることが好ましい。
【0123】
3-4.変形例4
前述の形態では、ロボットに対するヘッドの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ロボットのエンドエフェクターとして装着されるハンド等の把持機構によりヘッドを把持することにより、ロボットに対してヘッドを固定してもよい。
【0124】
3-5.変形例5
また、前述の形態では、ヘッドを移動させる構成のロボットが例示されるが、当該構成に限定されず、例えば、ヘッドの位置が固定されており、ロボットがワークを移動させ、ヘッドに対してワークの位置および姿勢を3次元的に変化させる構成でもよい。この場合、例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構によりワークが把持される。
【0125】
3-6.変形例6
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本開示を適用することができる。また、ノズル列の数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0126】
4.付記
以下、本開示のまとめを付記する。
【0127】
(付記1)本開示の好適例である第1態様の印刷装置は、第1ノズル列と第2ノズル列とを有するヘッドユニットと、ワークと前記ヘッドユニットとを相対移動させる多関節ロボットと、を有する印刷装置であって、前記多関節ロボットが前記ワークと前記ヘッドユニットとを主走査方向に相対移動させつつ、前記ヘッドユニットが複数の異なるタイミングでインク滴を吐出する印刷動作を実行し、前記印刷動作において前記第1ノズル列から吐出されることにより前記ワーク上に付与された複数のインク滴間における前記主走査方向での距離の増減について、任意の頂点を第1頂点とし、前記第1頂点に隣接する頂点を第2頂点とし、前記第1頂点と前記第2頂点との間の距離をL1とし、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間の前記主走査方向での距離をL2とし、任意の整数をnとしたとき、
L1≠n×L2の関係を満たす。
【0128】
以上の第1態様では、L1≠n×L2の関係を満たすことにより、第1ノズル列および第2ノズル列から吐出されたインク滴により形成される疎密が互いに補い合うので、全体として印刷画像の濃淡ムラを抑制することができる。
【0129】
(付記2)第1態様の好適例である第2態様において、L1>L2の関係を満たす。以上の第2態様では、L1<L2の関係を満たす態様に比べて、印刷画像の濃淡ムラを抑制することができる。
【0130】
(付記3)第1態様または第2態様の好適例である第3態様において、前記印刷動作において、前記ヘッドユニットは、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との両方からインク滴を吐出する。以上の第3態様では、第1ノズル列および第2ノズル列から吐出されたインク滴により形成される疎密が互いに補い合うことにより、全体として印刷画像の濃淡ムラを抑制することができる。
【0131】
(付記4)第1態様から第3態様のいずれかの好適例である第4態様において、前記ヘッドユニットは、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との両方から同色のインク滴を吐出する。以上の第4態様では、第1ノズル列および第2ノズル列から吐出されたインク滴により形成される疎密が互いに補い合うことにより、異色のインクを用いる態様に比べて色ムラを低減することができる。
【0132】
(付記5)第1態様から第4態様のいずれかの好適例である第5態様において、L1およびL2は、L1×1/4≦n×L2≦L1×3/4の関係を満たす。以上の第5態様では、印刷画像の濃淡ムラを好適に抑制することができる。すなわち、濃淡ムラの位相が45度~135度ずれることにより、第1ノズル列からのインク滴による最の濃い部分と、第2ノズル列からのインク滴による平均よりも薄い部分が重なるので、濃淡ムラの低減効果が大きくなる。
【0133】
(付記6)第1態様から第6態様のいずれかの好適例である第6態様において、L1およびL2は、L1/2=n×L2の関係を満たす。以上の第6態様では、第1ノズル列からのインク滴による最の濃い部分と第2ノズル列からのインク滴による最も薄い部分とが互いに重なるので、濃淡ムラの低減効果が最大となる。
【0134】
(付記7)第1態様から第6態様のいずれかの好適例である第7態様において、前記第1頂点および前記第2頂点は、前記増減のうち、前記主走査方向での距離が最も短くなる頂点の対である。以上の第7態様では、疎密周期が変動しても、濃淡ムラを好適に低減することができる。
【0135】
(付記8)第1態様から第7態様のいずれかの好適例である第8態様において、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間の前記主走査方向での距離を調整可能な調整機構をさらに有する。以上の第8態様では、疎密周期が変動しても、調整機構による調整により、濃淡ムラを低減する効果を高めることができる。なお、多パス印刷を行う場合、パスごとにL2を異ならせてもよい。
【0136】
(付記9)第1態様から第8態様のいずれかの好適例である第9態様において、前記印刷動作において、前記第1ノズル列または前記第2ノズル列の延びる方向にみたとき、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが互いに並ぶ並列方向は、前記主走査方向と交差する。以上の第9態様では、第1ノズル列または第2ノズル列の延びる方向に沿う軸まわりにヘッドユニットの姿勢を変更することにより、L2を調整することができる。
【0137】
(付記10)第1態様から第9態様のいずれかの好適例である第10態様において、前記印刷動作において、前記ヘッドユニットからのインク滴の吐出方向にみたとき、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが互いに並ぶ並列方向は、前記主走査方向と交差する。以上の第10態様では、ヘッドユニットからのインク滴の吐出方向に沿う軸まわりにヘッドユニットの姿勢を変更することにより、L2を調整することができる。
【0138】
(付記11)第1態様から第10態様のいずれかの好適例である第11態様において、前記ヘッドユニットは、第1ヘッドと第2ヘッドとを有し、前記第1ヘッドには、前記第1ノズル列が設けられ、前記第2ヘッドには、前記第2ノズル列が設けられる。以上の第11態様では、第1ヘッドと第2ヘッドとの間隔を調整することにより、L2を調整することができる。
【0139】
(付記12)第1態様から第11態様のいずれかの好適例である第12態様において、L1は、0.5mm以上である。以上の第12態様では、L1≠n×L2の関係を満たすことによる印刷画像の濃淡ムラを抑制する効果が顕著に得られる。
【符号の説明】
【0140】
1…印刷装置、2…ロボット(多関節ロボット)、2a…アーム駆動機構、3…ヘッドユニット、3A…ヘッドユニット、3a…ヘッド、3a-1…ヘッド(第1ヘッド)、3a-2…ヘッド(第2ヘッド)、3b…圧力調整弁、3c…エネルギー出射部、3e…スイッチ回路、3f…支持体、3g…調整機構、5…コントローラー、5a…記憶回路、5b…処理回路、6…制御モジュール、6a…タイミング信号生成回路、6b…電源回路、6c…制御回路、6d…駆動信号生成回路、7…コンピューター、7a…記憶回路、7b…処理回路、8…制御部、10…配管部、210…基部、220…腕部、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、CLK…クロック信号、CNG…チェンジ信号、Com…駆動信号、D1…出力、D3…信号、DE…吐出方向、DL…並列方向、DN…ノズル列方向、DS…主走査方向、Da…経路情報、Dc…ワーク情報、Dt0…インク滴、Dt1…インク滴、Dt2…インク滴、FN…ノズル面、Img…印刷データ、J…関節、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、L1…距離、L2…距離、L2-a…距離、L2-b…距離、L2a…距離、L2b…距離、LAT…ラッチ信号、M…媒体、N…ノズル、NL…ノズル列、NL1…第1ノズル列、NL2…第2ノズル列、O1…回動軸、O2…回動軸、O3…回動軸、O4…回動軸、O5…回動軸、O6…回動軸、PD…駆動パルス、PE…位置、PR…プログラム、PS…位置、PTS…タイミング信号、PV1…第1頂点、PV2…第2頂点、RU…移動経路、S10…試験印刷ステップ、S20…テストパターン確認ステップ、S30…ステップ、S40…第1ヘッド決定ステップ、S50…第2ヘッド決定ステップ、S60…ステップ、S70…L2調整ステップ、S80…印刷データ調整ステップ、S90…印刷ステップ、SI…制御信号、Sk1…制御信号、TCP…ツールセンターポイント、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、W…ワーク、WF…面、dCom…波形指定信号。