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特開2024-134728収容トレイおよびこれを備えた保冷容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134728
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】収容トレイおよびこれを備えた保冷容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B65D81/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045072
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔太
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AC01
3E067AC03
3E067BA05A
3E067BB17A
3E067BC06A
3E067BC07A
3E067CA18
3E067EA17
3E067EA18
3E067EA32
3E067EC11
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA02
3E067GD01
(57)【要約】
【課題】収容トレイに形成された貫通孔に、保冷材の冷気を効率良く流すことができる収容トレイを提供する。
【解決手段】収容トレイ10は、上方に開放した開口部21が形成された保冷用の容器本体20に、前記開口部21を覆うよう被着され、ブロック状の保冷材Dが収容される収容凹部11が形成された収容トレイ10である。収容凹部11を形成する底面12には、容器本体20に被着された状態で、保冷材Dが配置される位置に、容器本体20の内部空間23に向かって貫通した貫通孔13が形成されている。底面12には、貫通孔13に向かって、下方に傾斜する傾斜面14が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開放した開口部が形成された保冷用の容器本体に、前記開口部を覆うよう被着され、ブロック状の保冷材が収容される収容凹部が形成された収容トレイであって、
前記収容凹部を形成する底面には、前記容器本体に被着された状態で、前記保冷材が配置される位置に、前記容器本体の内部空間に向かって貫通した貫通孔が形成されており、
前記底面には、前記貫通孔に向かって、下方に傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする収容トレイ。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記貫通孔を囲うように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収容トレイ。
【請求項3】
前記貫通孔を含む前記傾斜面の周りには、前記傾斜面の上端縁よりも高い段差部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の収容トレイ。
【請求項4】
前記貫通孔の周りには、前記内部空間に連通する複数の連通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収容トレイ。
【請求項5】
前記連通孔の周縁の一部と、前記傾斜面の上端縁の一部とが、一致していることを特徴とする請求項4に記載の収容トレイ。
【請求項6】
前記収容凹部の前記底面を覆うように、前記底面には、複数の開口が形成されたメッシュ部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の収容トレイ。
【請求項7】
請求項1~6に記載のいずれか一項の前記収容トレイと、前記容器本体と、を含む、保冷容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷材を収容する収容トレイおよびこれを備えた保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、保冷材を収容する収容トレイを備えた保冷容器が用いられている。例えば、特許文献1には、保冷材を収容する収容空間の底部に貫通孔が形成された収容トレイが提案されている。収容トレイは、保冷容器の容器本体の開口部を覆うように、容器本体に取り付けられている。収容トレイに収容された保冷材の冷気は、収容トレイの貫通孔を通過し、容器本体の内部に流れ込む。これにより、容器本体に収容された生鮮食品などの被保冷物の保冷を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7-29660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案される収容トレイに、ブロック状の保冷材を収容した場合、開口部を覆うように保冷材を配置することになるが、収容トレイに形成された収容凹部の底面に対して、保冷材の底面が接触する割合が多いほど、保冷材の底面で生成された冷気は、貫通孔に向かって流れ難くなる。この結果、収容トレイに形成された貫通孔を介して、保冷材の冷気を効率的に流すことができず、容器本体の保冷性を高めることが難しい。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、収容トレイに形成された貫通孔に、保冷材の冷気を効率良く流すことができる収容トレイおよびこれを備えた保冷容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る収容トレイは、上方に開放した開口部が形成された保冷用の容器本体に、前記開口部を覆うよう被着され、ブロック状の保冷材が収容される収容凹部が形成された収容トレイであって、前記収容凹部を形成する底面には、前記容器本体に被着された状態で、前記保冷材が配置される位置に、前記容器本体の内部空間に向かって貫通した貫通孔が形成されており、前記底面には、前記貫通孔に向かって、下方に傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、収容凹部を形成する底面には、貫通孔に向かって傾斜する傾斜面が形成されているため、保冷材と傾斜面との間に隙間が形成される。この隙間には、保冷材の冷気が生成されるため、生成された冷気を、傾斜面に沿って貫通孔に向かわせることができる。このような結果、貫通孔を介して、容器本体の内部空間に流すことができる。
【0008】
より好ましい態様としては、前記傾斜面は、前記貫通孔を囲うように形成されている。この態様によれば、貫通孔を囲うように傾斜面を形成することにより、貫通孔の周りに形成された隙間を利用して、保冷材の底面で生成された冷気を、貫通孔により効果的に流すことができる。
【0009】
より好ましい態様としては、前記貫通孔を含む前記傾斜面の周りには、前記傾斜面の上端縁よりも高い段差部が形成されている。この態様によれば、傾斜面の周りに段差部を設けることにより、収容凹部の底面に配置した保冷材の位置ずれ等を抑えることができる。
【0010】
より好ましい態様としては、前記貫通孔の周りには、前記内部空間に連通する複数の連通孔が形成されている。この態様によれば、保冷材の側面および上面で生成された冷気を、貫通孔の周りに形成された連通孔から、容器本体の内部空間に流すことができる。
【0011】
より好ましい態様としては、前記連通孔の周縁の一部と、前記傾斜面の上端縁の一部とが、一致している。この態様によれば、連通孔の周縁の一部と、傾斜面の上端縁の一部とを一致させることにより、保冷材を連通孔の近くに配置し、冷気を連通孔に流すことができる。
【0012】
より好ましい態様としては、前記収容凹部の前記底面を覆うように、前記底面には、複数の開口が形成されたメッシュ部材が配置されている。この態様によれば、収容トレイの収容凹部に形成された底面にメッシュ部材を配置することにより、ドライアイスなどの保冷材が小さくなったとしても、メッシュ部材の開口よりも大きい保冷材が、貫通孔から容器本体の内部空間に落下することを防止することができる。さらに、メッシュ部材が、保冷材の底面に接触するため、保冷材の位置ずれを抑えることができる。
【0013】
上述した収容トレイは、容器本体とともに、保冷容器を構成してもよく、保冷容器は、収容トレイの収容凹部を覆う蓋体をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、収容トレイに形成された貫通孔に、保冷材の冷気を効率良く流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る保冷容器の分解斜視図である。
図2】(a)は、図1に示す収容トレイの平面図であり、(b)は、A-A線に沿った収容トレイの矢視断面図であり、(c)は、B-B線に沿った収容トレイの矢視断面図である。
図3】(a)は、図1に示す保冷容器の断面図であり、(b)は、(a)の要部拡大断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る保冷容器の分解斜視図である。
図5】(a)~(c)は、第1実施形態に係る保冷容器の収容トレイの変形例に係る斜視図である。
図6】(a)、(b)は、第1実施形態に係る保冷容器の収容トレイの変形例に係る斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図3を参照しながら、以下に、本発明の第1実施形態に係る収容トレイ10と、これを備えた保冷容器1を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る保冷容器1の分解斜視図である。図2(a)は、図1に示す収容トレイ10の平面図であり、図2(b)は、A-A線に沿った収容トレイ10の矢視断面図であり、図2(c)は、B-B線に沿った収容トレイ10の矢視断面図である。図3(a)は、図1に示す保冷容器1の断面図であり、図3(b)は、図3(a)の要部拡大断面図である。
【0017】
図1に示すように、保冷容器1は、保冷材Dで生成される冷気により、冷凍食品または生鮮食品などの被保冷物(図示せず)を保冷するための容器であり、収容トレイ10と、容器本体20と、蓋体30とを備えている。収容トレイ10、容器本体20、および蓋体30を構成する材料は、被保冷物の保冷性を確保することができるのであれば、特に限定されるものではない。
【0018】
収容トレイ10、容器本体20、および蓋体30は、たとえば、互いに融着した複数の発泡粒子から構成されている熱可塑性樹脂発泡体からなり、型内蒸気発泡成形により成形される。熱可塑性樹脂発泡体としては、たとえば、ポリスチレン、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ハイインパクトポリスチレン、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂のビーズ発泡による成形体を挙げることができる。
【0019】
中でも、ポリスチレンまたはスチレン改質ポリオレフィン系樹脂の発泡成形体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40~90重量%、好ましくは50~85重量%、さらに好ましくは55~75重量%のものが用いられる。また、ポリスチレンの発泡体の発泡倍率は20~60倍が好ましく、より好ましくは25~40倍である。
【0020】
収容トレイ10は、上方に開放した開口部21が形成された保冷用の容器本体20に、開口部21を覆うよう被着され、ブロック状の保冷材Dが収容される収容凹部11が形成されている。容器本体20には、被保冷物を収容する内部空間23が形成されており、内部空間23の上方には、開口部21が形成されている。
【0021】
図2(b)および図3(a)に示すように、収容トレイ10には、開口部21の形状に応じて突出した底部10aが形成されており、収容トレイ10の底部10aを、容器本体20の開口部21に嵌合することにより、収容トレイ10を容器本体20に取り付けることができる。収容トレイ10の縁部には、指掛かり用の第1凹部19が形成されている。収容トレイ10を容器本体20に取り付けた状態で、作業者は、第1凹部19に指を掛けることにより、容器本体20から収容トレイ10を簡単に取り外すことができる。
【0022】
収容トレイ10には、保冷材Dを収容する収容凹部11が形成されている。蓋体30は、収容凹部11を覆うように、開口縁11aに嵌合する形状を有している。収容凹部11の開口縁には、指掛かり用の第2凹部17が形成されている。蓋体30を収容トレイ10に取り付けた状態で、作業者は、第2凹部17に指を掛けることにより、収容トレイ10から蓋体30を簡単に取り外すことができる。
【0023】
保冷材Dは、ブロック状の保冷材であり、後述する貫通孔13を介して、保冷材Dから生成される冷気Rを、容器本体20の内部空間23に流すことができるのであれば、特に限定されるものではない。本実施形態では、保冷材Dに、ブロック状のドライアイスを用いるが、たとえば、保冷材Dは、凍結させた液体またはゲルなどが収容されたブロック状の保冷容器であってもよい。なお、ブロック状とは、板状、直方体状、矩形状などの形状が好ましいが、保冷材Dを後述する傾斜面14に配置した状態で、図3(b)に形成するように、保冷材Dの底面と傾斜面14との間に、隙間Sが形成される形状であれば、その形状は特に限定されるものでない。
【0024】
上述したように、収容トレイ10には、保冷材Dを収容する収容凹部11が形成されている。収容凹部11を形成する底面12には、容器本体20に被着された状態で、保冷材Dが配置される位置に、容器本体20の内部空間23に向かって貫通した貫通孔13が形成されている。貫通孔13は、円形状の開口を有した貫通孔であるが、保冷材Dにより生成された冷気Rを容器本体20の内部空間23に流すことができるものであれば、その形状および個数は特に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態では、底面12には、貫通孔13に向かって、下方に傾斜する傾斜面14が形成されている。傾斜面14は、底面12のうち、傾斜面14を除く他の平面12aに対して傾斜している。本実施形態では、この他の平面12aは、水平面である。傾斜面14は、水平面に対して、1.0°~33°の範囲で傾斜していることが好ましく、より好ましくは、1.0°~10.0°の範囲で傾斜していることが好ましい。
【0026】
傾斜面14は、貫通孔13を囲うように形成された4つの傾斜平面からなり、4つの傾斜面14により、矩形状の傾斜した傾斜領域15が形成される。このように、本実施形態では、平面視における貫通孔13の周りの4方向から、4つの傾斜面14に沿って、保冷材Dの冷気を流すことができる。
【0027】
傾斜面14は、保冷材Dを配置した状態で、保冷材Dと傾斜面14との間に隙間Sが形成されるものであれば、その形状および個数は特に限定されるものではない。図2に示すように、本実施形態では、傾斜面14は、水平面に対して傾斜した平面であるが、たとえば、この平面に対して、容器本体20側に凹んだ曲面であってもよい。傾斜面14を凹んだ曲面にすることにより、保冷材Dと傾斜面14との間の隙間Sを確保することができるため、保冷材Dの冷気Rを、効率的に貫通孔13に流すことができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、貫通孔13を含む傾斜面14の周りには、傾斜面14の上端縁14aよりも高い段差部16が形成されている。段差部16は、傾斜領域15の4隅に形成されている。具体的には、図2(c)および図3(b)に示すように、段差部16は、底面のうち、傾斜面14を除く他の平面12aを、傾斜面14(の上端縁14a)よりも高くすることにより形成されている。このようにして、傾斜面14の周りに段差部16を設けることにより、貫通孔13を覆うように、傾斜領域15に配置した保冷材Dの位置ずれ等を抑えることができる。
【0029】
本実施形態では、貫通孔13の周り(具体的には傾斜領域15の周り)には、内部空間23に連通する複数の連通孔18が形成されている。本実施形態では、連通孔18は、平面視において矩形状の貫通孔である。さらに、収容トレイ10には、傾斜領域15を挟んで、収容トレイ10の長手方向に沿って延在した、複数の(本実施形態では4つの)連通孔18がされている。底面12の長手方向に沿った両縁部には、収容トレイ10の長手方向に間隔を空けて、複数の(本実施形態では片側に4つ)連通孔18が形成されている。このような連通孔18を設けることにより、これらの連通孔18同士の間には、収容トレイ10の長手方向および短手方向に、補強用のリブを形成することができる。
【0030】
本実施形態では、連通孔18を設けることにより、保冷材Dの側面および上面の冷気を、貫通孔13の周りに形成された連通孔18から、容器本体20の内部空間23に流すことができる。
【0031】
このような効果を発現するには、収容トレイ10の平面視において、貫通孔13および複数の連通孔18を設けない状態の底面12の全体の面積に対する貫通孔13および複数の連通孔18の開口面の総面積の割合(開口率)が、18%~55%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、20%~50%の範囲であり、さらに好ましくは、20%~30%である。たとえば、この開口率が、18%未満であると、被保冷物によっては、冷気Rにより冷却効率が十分得られない場合があり、この開口率が、55%を超えると、保冷材Dの重量によっては、収容トレイ10の強度の低下を招くことがある。
【0032】
さらに、本実施形態では、連通孔18の周縁18aの一部と、傾斜面14の上端縁14aの一部とが、一致している。これにより、連通孔18の周縁18aの一部と、傾斜面14の上端縁14aの一部とを一致させることにより、保冷材Dを連通孔18の近くに配置し、保冷材Dの冷気Rを連通孔18に流すことができる。
【0033】
本実施形態によれば、図3(a)、(b)に示すように、収容凹部11を形成する底面12には、貫通孔13に向かって傾斜する傾斜面14が形成されているため、保冷材Dと傾斜面14との間に隙間Sが形成される。この隙間Sには、保冷材Dの冷気Rが生成されるため、生成された冷気Rを、傾斜面14に沿って貫通孔13に向かわせ、貫通孔13を介して、容器本体20の内部空間23に流すことができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、傾斜面14を貫通孔13を囲うように形成することにより、保冷材Dの底面で生成された冷気Rを、貫通孔13の周りに形成された隙間Sを利用して、貫通孔13により効果的に流すことができる。
【0035】
図4は、本発明の第2実施形態に係る保冷容器1の分解斜視図である。本実施形態が、第1実施形態と相違する点は、収容トレイ10に、メッシュ部材40をさらに設けた点である。したがって、第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0036】
図4に示すように、本実施形態では、収容凹部11の底面12を覆うように、底面12には、複数の開口が形成されたメッシュ部材40が配置されている。メッシュ部材40の材質は、樹脂(たとえばポリエチレン)、金属(たとえばステンレス鋼)などを挙げることができ、網目状、繊維状など、複数の開口が形成されていれば、特に限定されるものではない。たとえば、間隔を空けて複数の開口を形成したシートまたは箔であってもよい。メッシュ部材40の空間率は、50%以上であることが好ましい。本実施形態では、メッシュ部材40は、収容凹部11の底面12を含む壁面に、固定されていなくてもよいが、たとえば、メッシュ部材40は、接着剤または粘着剤を介して固定されていてもよく、ステープルなどを介して固定されていてもよい。
【0037】
本実施形態によれば、収容凹部11の底面12にメッシュ部材40を配置することにより、昇華によりドライアイスなどの保冷材Dが小さくなったとしても、メッシュ部材40の開口よりも大きい保冷材Dが、貫通孔13を介して容器本体20の内部空間23に落下することを防止することができる。また、保冷材Dが、凍結させた液体を袋体に収容している場合も、液体が溶解することにより袋体が変形したとしても、貫通孔13を介して容器本体20の内部空間23に落下することを防止することができる。さらに、メッシュ部材40が、保冷材Dの底面に接触するため、保冷材Dの位置ずれを抑えることができる。
【0038】
図5(a)~(c)は、第1実施形態に係る保冷容器1の収容トレイ10の変形例に係る斜視図であり、図6は、(a)、(b)は、第1実施形態に係る保冷容器1の収容トレイ10の変形例に係る斜視図である。
【0039】
図5(a)に示す収容トレイ10のごとく、第1実施形態のものにくらべて、連通孔18の形状が異なり、連通孔18の開口率が高くてもよい。この変形例では、連通孔18は、傾斜領域15を確保しつつ、矩形状の収容トレイ10の短手方向に沿って形成されている。連通孔18は、複数形成されており、複数の連通孔18は間隔を空けて形成されている。したがって、隣り合う連通孔18、18同士の間には、収容トレイ10の短手方向に沿って、補強用のリブが形成される。さらに、図5(b)に示す収容トレイ10のごとく、第1実施形態のものにくらべて、連通孔18の形状が異なり、連通孔18の開口率が低くてもよい。この変形例では、収容凹部11の底面12の周りに、正方形状の連通孔18が形成されていてもよい。
【0040】
図5(c)に示す収容トレイ10のごとく、第1実施形態のものにくらべて、傾斜領域15の面積を小さくし、連通孔18の周縁18aの一部と、傾斜面14の上端縁14aの一部とを、一致させなくてもよい。
【0041】
図6(a)に示す収容トレイ10のごとく、第1実施形態のものにくらべて、貫通孔13と傾斜領域15とを、複数(この例では3つ)設けてもよく、図6(d)に示すように、傾斜領域15の形状を円形状にしてもよい。
【実施例0042】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0043】
〔実施例1〕
図1に示す保冷容器を準備した。保冷容器は、EPSからなるビーズ発泡成形体の容器であり、発泡倍率は、30倍である。収容トレイの貫通孔の直径を50mmとし、傾斜領域の大きさを150mm×150mmにし、開口率を、26%とした。また、各傾斜面の角度を、2.3°にした。
【0044】
〔実施例2〕
実施例1と同様の保冷容器を準備した。実施例2が、実施例1と相違する点は、収容トレイの各傾斜面の角度を、それぞれ、4.6°にした点である。
【0045】
〔実施例3、4〕
図5に示す収容トレイを備えた保冷容器を準備した。実施例1と相違する点は、傾斜領域の大きさをそれぞれ、100mm×100mmにし、各傾斜面の角度を、それぞれ、23.6°、32.6°にした点である。
【0046】
〔実施例5、6〕
実施例1と同様の保冷容器を準備した。実施例と相違する点は、開口率を、18%、55%にした点である。
【0047】
〔実施例7~9〕
図4に示す保冷容器を準備した。この保冷容器は、実施例1の保冷容器に、メッシュ部材を設けたものである。実施例7では、メッシュ部材として、空間率77%のポリエチレン製メッシュシートを用いた。実施例8では、メッシュ部材として、空間率50%のステンレス鋼製の金網を用いた。実施例9では、空間率40%のポリエチレンテレフタレート製不織布シート(坪量20g/m)を用いた点である。なお、実施例7および8における空間率Aを、メッシュの線径をd (mm)、目開きをW (mm)としたとき、以下の式(1)で算出した。
A=〔W/(W+d)〕×100…(1)
【0048】
〔評価試験〕
実施例の保冷容器の容器本体に-23℃に調温した1.2kgの冷凍食品を入れ、収容トレイの傾斜領域にはドライアイスブロックを1.0kg分入れた。これを4℃に設定した恒温槽内に静置し、12時間後の冷凍食品の中心部温度を測定した。この結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1~4では、冷凍食品の中心部温度の冷却温度が、同程度であった。したがって、傾斜面とドライアイスとの間に、ドライアイスの底面に生成された冷気を流す隙間が形成されていれば、保冷容器の保冷性は確保されることがわかる。今回の評価試験とは異なり、傾斜領域を越えた範囲まで、ドライアイスを配置する際には、実施例1および2の如く、連通孔の周縁の一部と、傾斜面の上端縁の一部とを一致させた収容トレイを用いれば、ドライアイスを連通孔の近くに配置し、保冷材の冷気を連通孔に流すことができると考えられる。
【0051】
実施例1、5、および6の結果を比較すると、開口率が高い収容トレイを用いることにより、連通孔にドライアイスの冷気がより多く流れるため、冷凍食品の中心部温度の冷却温度が低くなるといえる。
【0052】
実施例7~9の結果を比較すると、空間率が高いメッシュ部材を用いることにより、メッシュ部材の開口にドライアイスの冷気がより多く流れるため、冷凍食品の中心部温度の冷却温度が低くなるといえる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0054】
1:保冷容器、10:収容トレイ、11:収容凹部、12:底面、13:貫通孔、14:傾斜面、14a:上端縁、16:段差部、18:連通孔、18a:周縁、20:容器本体、21:開口部、23:内部空間、30:蓋体、D:保冷材、R:冷気、S:隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6