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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134737
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】組電池の制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20240927BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20240927BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/54
H01M10/48 P
H01M50/293
H01M50/202 501S
H01M50/262
H02J7/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045083
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】小堀 大智
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 宏司
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503DA12
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB21
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H031RR07
5H040AT02
5H040CC20
5H040CC34
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】低SOC領域におけるΔ荷重の増大を抑えられる組電池の制御方法を提供する。
【解決手段】本発明により、複数の角形二次電池と、配列方向において隣り合う上記角形二次電池の間に配置された多孔質弾性部材と、を備える組電池の制御方法が提供される。この制御方法は、角形二次電池を予め定められた下限の充電状態を下回らないように放電させる通常放電工程と、上記通常放電工程が行われていないときに、上記角形二次電池を上記下限の充電状態よりも上記充電状態が低くなるまで放電させるリフレッシュ放電工程と、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、
前記配列方向において隣り合う前記角形二次電池の間に配置された多孔質弾性部材と、
複数の前記角形二次電池と前記多孔質弾性部材とを拘束する拘束機構と、
を備え、
前記多孔質弾性部材は、外部に連通する連通孔を有し、弾性変形可能である、組電池の制御方法であって、
前記角形二次電池を、予め定められた下限の充電状態を下回らないように放電させる通常放電工程と、
前記通常放電工程が行われていないときに、前記角形二次電池を、前記下限の充電状態よりも前記充電状態が低くなるまで放電させるリフレッシュ放電工程と、
を含む、組電池の制御方法。
【請求項2】
前記通常放電工程の実績状況に基づいて前記リフレッシュ放電工程が必要であるか否かを判定する判定工程を含み、
前記判定工程で前記リフレッシュ放電工程が必要と判定された場合に、前記リフレッシュ放電工程を実行するように構成されている、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記通常放電工程で行われた放電の総放電量を算出する総放電量算出工程を含み、
前記判定工程は、前記総放電量が予め定められた閾値を超えるか否かに基づいて前記リフレッシュ放電工程の要否を判定するように構成されている、
請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記判定工程で前記リフレッシュ放電工程が必要と判定された場合に、ユーザに前記リフレッシュ放電工程が必要であることを通知する通知工程を含む、
請求項2または3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記通知工程の後、ユーザの指示に基づいて前記リフレッシュ放電工程を開始するように構成されている、
請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記リフレッシュ放電工程において、前記充電状態が10%以下となるまで前記角形二次電池を放電させるように構成されている、
請求項1から3のいずれか1つに記載の制御方法。
【請求項7】
前記角形二次電池を、前記充電状態が90%以上となるまで充電する通常充電工程を含み、
前記通常充電工程を実行する場合に、まず前記リフレッシュ放電工程を実行し、次いで前記通常充電工程を実行するように構成されている、
請求項1から3のいずれか1つに記載の制御方法。
【請求項8】
所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、前記配列方向において隣り合う前記角形二次電池の間に配置された多孔質弾性部材と、複数の前記角形二次電池と前記多孔質弾性部材とを拘束する拘束機構と、を備え、前記多孔質弾性部材は、外部に連通する連通孔を有し、弾性変形可能である、組電池の制御装置であって、
前記角形二次電池を、予め定められた下限の充電状態を下回らないように放電させる通常放電処理を実行する通常放電制御部と、
前記通常放電処理が行われていないときに、前記角形二次電池を、前記下限の充電状態よりも前記充電状態が低くなるまで放電させるリフレッシュ放電処理を実行するリフレッシュ放電制御部と、
を含む、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池の制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両駆動用電源等では、高出力化のために複数の二次電池(単電池)を電気的に接続してなる組電池が広く利用されている。これに関連する従来技術文献として、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、所定の配列方向に配列された複数の二次電池と、配列方向において隣り合う二次電池の間に配置された熱伝導抑制部材と、上記複数の二次電池および上記熱伝導抑制部材を拘束する拘束機構と、を備える組電池が開示されている。
【0003】
特許文献1において、熱伝導抑制部材は多孔質体を含んでいる。多孔質体は、外部に連通する複数の連通孔を有する。このため、例えば充電等によって二次電池が膨張して荷重が加えられた際、多孔質体は、内部の空気を排出しながら圧縮される。一方、例えば放電等によって二次電池が収縮して荷重が解放されると、多孔質体は、外周部の空気を吸い込むことで元の形状に戻り、弾性が復帰する。これにより、組電池の使用時に二次電池が膨張収縮しても、二次電池に所定の荷重を安定して印加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/061894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、充放電サイクルが進むにつれ、放電によって二次電池のSOC(State Of Charge:充電状態)が低くなっても、多孔質体の厚みが戻らず、元の弾性に復帰しないことがあった。その結果、図12に示すように、充放電サイクルが進むほど、低SOC領域、すなわち二次電池の厚みが減少する領域(図12ではSOC15%)で、二次電池に加わる荷重が小さくなる。これにより、充電時と放電時の荷重の差(Δ荷重、図12ではSOC95%の時とSOC15%の時との荷重の差)が大きくなってしまう課題があった。また、これに伴って、金属Liが析出したり活物質が劣化したりする、所謂、ハイレート劣化が生じ易くなることも新たに判明した。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、充放電サイクルを繰り返したときに低SOC領域におけるΔ荷重の増大を抑えられる組電池の制御方法および制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが種々検討を重ねたところ、充放電サイクルが進むにつれて、二次電池のSOCが低くなっても多孔質弾性部材が空気を十分に取り込むことができず、これによって元のサイズに復帰できずに、上記荷重の差(Δ荷重)が大きくなっていることが判明した。そこで、本発明が創出されるに至った。
【0008】
本発明により、所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、上記配列方向において隣り合う上記角形二次電池の間に配置された多孔質弾性部材と、複数の上記角形二次電池と上記多孔質弾性部材とを拘束する拘束機構と、を備え、上記多孔質弾性部材は、外部に連通する連通孔を有し、弾性変形可能である、組電池の制御方法が提供される。この制御方法は、上記角形二次電池を、予め定められた下限の充電状態を下回らないように放電させる通常放電工程と、上記通常放電工程が行われていないときに、上記角形二次電池を、上記下限の充電状態よりも上記充電状態が低くなるまで放電させるリフレッシュ放電工程と、を含む。
【0009】
また、本発明により、所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、上記配列方向において隣り合う上記角形二次電池の間に配置された多孔質弾性部材と、複数の上記角形二次電池と上記多孔質弾性部材とを拘束する拘束機構と、を備え、上記多孔質弾性部材は、外部に連通する連通孔を有し、弾性変形可能である、組電池の制御装置が提供される。この制御装置は、上記角形二次電池を、予め定められた下限の充電状態を下回らないように放電させる通常放電処理を実行する通常放電制御部と、上記通常放電処理が行われていないときに、上記角形二次電池を、上記下限の充電状態よりも上記充電状態が低くなるまで放電させるリフレッシュ放電処理を実行するリフレッシュ放電制御部と、を含む。
【0010】
ここに開示される技術では、通常放電時の下限の充電状態(下限SOC)よりも低くなるまで角形二次電池を強制的に放電させて、角形二次電池をリフレッシュ放電させるようにしている。リフレッシュ放電では、通常放電時よりも相対的に角形二次電池の厚みを薄くすることができるため、多孔質弾性部材が空気を取り込みやすくなる。よって、多孔質弾性部材が元のサイズに形状復帰しやすくなる。したがって、ここに開示される技術によれば、充放電サイクルを繰り返したときに低SOC領域で角形二次電池に加わる荷重が低くなることを抑制して、荷重変動(Δ荷重)の増大を抑えることができる。ひいては、ハイレート劣化が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る組電池を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1の二次電池を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4図4は、封口板に取り付けられた電極体群を模式的に示す斜視図である。
図5図5は、1つの電極体を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、電極体の構成を示す模式図である。
図7図7は、図1の多孔質弾性部材を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、制御装置の機能ブロック図である。
図9図9は、リフレッシュ放電に係る処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、充放電サイクル数と荷重増加率との関係を表すグラフである。
図11図11は、充放電サイクル数と抵抗増加率との関係を表すグラフである。
図12図12は、従来技術に係る、充放電サイクル数と荷重との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない角形二次電池および組電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される組電池は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0013】
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0014】
[組電池]
まず、ここに開示される制御の対象となる組電池について説明する。図1は、一実施形態に係る組電池500を模式的に示す斜視図である。組電池500は、ここでは、複数の角形二次電池100と、複数の多孔質弾性部材200と、拘束機構300と、を備えている。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、角形二次電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。短辺方向Xは、角形二次電池100の配列方向でもある。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、組電池500の設置形態を何ら限定するものではない。
【0015】
拘束機構300は、角形二次電池100と多孔質弾性部材200とを拘束する機構である。拘束機構300は、複数の角形二次電池100と複数の多孔質弾性部材200とに対して、配列方向Xから規定の拘束圧を印加するように構成されていることが好ましい。拘束機構300は、ここでは、一対のエンドプレート310と、一対のサイドプレート320と、複数のビス330とで、構成されている。一対のエンドプレート310は、配列方向Xに並んでいる。一対のエンドプレート310は、配列方向Xにおいて組電池500の両端に配置されている。一対のエンドプレート310は、複数の角形二次電池100と複数の多孔質弾性部材200とを配列方向Xに挟み込んでいる。
【0016】
一対のサイドプレート320は、一対のエンドプレート310を架橋している。一対のサイドプレート320は、例えば、拘束荷重が概ね10~15kN程度となるように、複数のビス330によってエンドプレート310に固定されている。これにより、複数の角形二次電池100と複数の多孔質弾性部材200とに対して配列方向Xから拘束荷重が印加され、組電池500が一体的に保持されている。ただし、拘束機構はこれに限定されるものではない。拘束機構300は、例えばサイドプレート320にかえて、複数の拘束バンドやバインドバー等を備えていてもよい。
【0017】
角形二次電池100は、繰り返し充放電が可能な電池である。なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の蓄電池と、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタと、を包含する概念である。また、組電池500を構成する角形二次電池100の形状、サイズ、個数、配置等はここに開示される態様に限定されることなく、適宜変更することができる。
【0018】
図1において、複数の角形二次電池100は、一対のエンドプレート310の間に、配列方向X(言い換えれば角形二次電池100の厚み方向X)に沿って配置されている。配列方向Xにおいて隣り合う角形二次電池100の間には、多孔質弾性部材200が配置されている。すなわち、配列方向Xでは、角形二次電池100と多孔質弾性部材200とが交互に並んでいる。ただし、後述する変形例にも記載する通り、配列方向Xにおいて隣り合う角形二次電池100と多孔質弾性部材200との間には、さらに他の部材(例えば耐熱部材等)が介在していてもよい。複数の角形二次電池100は、ここでは直列に接続されている。ただし、複数の角形二次電池100の接続方法は、直列には制限されず、例えば、並列や多直列多並列等であってもよい。
【0019】
図2は、角形二次電池100の斜視図である。図1図2に示すように、複数の角形二次電池100は、後述する長側壁12bが相互に対向するように、配列方向Xに並んでいる。言い換えれば、複数の角形二次電池100は、長側壁12bが平行に並ぶ方向に配置されている。図3は、図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。図3に示すように、角形二次電池100は、電池ケース10と、電極体群20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50と、負極集電部60と、電解液(図示せず)と、を備えている。角形二次電池100は、電池ケース10と、電極体群20と、電解液と、を備えることが好ましい。角形二次電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0020】
電池ケース10は、電極体群20および電解液を収容する筐体である。図1に示すように、電池ケース10は、扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。電池ケース10は、本実施形態のように、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板14とを備えることが好ましい。
【0021】
外装体12は、図1に示すように、底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12h(図3参照)と対向している。長側壁12bは平坦である。図1からわかるように、長側壁12bは、多孔質弾性部材200と対向する面である。長側壁12bは、ここでは多孔質弾性部材200と直接接触している。ただし、他の部材を介して多孔質弾性部材200と対向していてもよい。なお、本明細書において「略矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、例えば、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。
【0022】
平面視において、長側壁12bの面積は、短側壁12cの面積よりも大きい。特に限定されるものではないが、車載用等として用いられるような高容量タイプの場合は、長側壁12bの面積が、概ね10,000mm以上であるとよく、15,000mm以上が好ましく、20,000mm以上がより好ましく、25,000mm以上が更に好ましく、30,000mm以上が特に好ましい。このように長側壁12bの面積が大きい場合、後述する多孔質弾性部材200の内部、特には長辺方向Yの中央部に、とりわけ空気が行き渡りにくい。したがって、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。また、長側壁12bの面積は、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮する観点から、概ね150,000mm以下が好ましい。
【0023】
長側壁12bは、横長であることが好ましい。すなわち、長辺方向Yの長さが上下方向Zの長さよりも長いことが好ましい。長側壁12bの長辺方向Yの長さ(横幅)は200mm以上が好ましく、上下方向Zの長さ(高さ)は100mm以上が好ましい。長辺方向Yの中央から端までの距離が長い場合ほど、長辺方向Yの中央部に空気が行き渡りにくいため、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。長側壁12bは、長辺方向Yの長さに対する上下方向Zの長さの比(縦/横の比)が、1/1~2/3を満たすことが好ましく、2/3~1/3を満たすことがより好ましく、1/3~1/15を満たすことが更に好ましい。
【0024】
封口板14は、図2のXY平面に沿って広がる板状部材である。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(好ましくは溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。
【0025】
電池ケース10が、開口12hと一対の長側壁12bと、一対の短側壁12cと、を有する外装体12と、開口12hを封口する封口板14と、を備え、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合されており、長側壁12bの面積が20,000mm以上である場合、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。
【0026】
図3に示すように、封口板14には、注液孔15と、排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、それぞれ、封口板14に取り付けられる前の(かしめ加工前の)の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。
【0027】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含有する非水電解液である。電解液は、必要に応じてさらに添加剤を含んでもよい。非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含む。非水溶媒は、カーボネート類を含むことが好ましい。特に、環状カーボネートおよび鎖状カーボネートを含むことが好ましい。支持塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等のフッ素含有リチウム塩である。
【0028】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側の端部(図2図3の左端部)に配置されている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側の端部(図2図3の右端部)に配置されている。図3に示すように、正極端子30および負極端子40は、それぞれ、端子引出孔18、19を挿通して封口板14の内部から外部へと延びている。正極端子30および負極端子40は、封口板14に固定されていることが好ましい。正極端子30および負極端子40は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18、19を囲む周縁部分に、かしめられている。正極端子30および負極端子40の外装体12の側の端部(図3の下端部)には、かしめ部30c、40cが形成されている。
【0029】
図3に示すように、正極端子30は、外装体12の内部で、正極集電部50を介して電極体群20の正極22(図6参照)と電気的に接続されている。負極端子40は、外装体12の内部で、負極集電部60を介して電極体群20の負極24(図6参照)と電気的に接続されている。正極端子30は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。負極端子40は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。
【0030】
封口板14の外側の面には、板状の正極外部導電部材32および負極外部導電部材42が取り付けられている。正極外部導電部材32は、正極端子30と電気的に接続されている。負極外部導電部材42は、負極端子40と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。図1に示すように、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42には、複数の角形二次電池100を相互に電気的に接続するバスバーが付設されている。ここでは、隣り合う角形二次電池100のうち、一方の角形二次電池100の正極外部導電部材32と、他方の角形二次電池100の負極外部導電部材42とが、バスバーで電気的に接続されている。これにより、組電池500は直列に電気接続されている。
【0031】
図4は、封口板14に取り付けられた電極体群20を模式的に示す斜視図である。電極体群20は、ここでは複数の電極体を有している。電極体群20は、ここでは3つの電極体20a、20b、20cを有している。ただし、1つの外装体12の内部に配置される電極体の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。電極体20a、20b、20cは、短辺方向Xに並んで配置されている。電極体20a、20b、20cは、ここでは並列に電気的に接続されている。電極体20a、20b、20cは、それぞれ外形が扁平形状である。電極体20a、20b、20cは、ここでは、それぞれ捲回電極体である。電極体20a、20b、20cは、それぞれ捲回軸WL(図6参照)が長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。
【0032】
図5は、電極体20bを模式的に示す斜視図である。電極体20bの構成は従来と同様でよく、特に制限はない。なお、以下では電極体20bを例として詳しく説明するが、電極体20a、20cについても同様の構成とすることができる。電極体20bは、一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結する平坦部20fと、を有している。一方(図5の上側)の湾曲部20rは、封口板14と対向し、他方(図5の下側)の湾曲部20rは、外装体12の底壁12aと対向している。平坦部20fは、外装体12の長側壁12bと対向している。短辺方向Xに隣り合う電極体20a、20b、20cでは、平坦部20f同士が対向している。
【0033】
図6は、電極体20bの構成を示す模式図である。電極体20bは、正極22と、負極24と、セパレータ26と、を有する。電極体20bは、ここでは、帯状の正極22と、帯状の負極24とが、帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回されて構成されている。捲回軸WL方向は、ここでは長辺方向Yと略平行の向きである。ただし、他の実施形態において、捲回軸WL方向は、上下方向Zと略平行の向きであってもよい。また、電極体20bは、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層型電極体であってもよい。
【0034】
正極22は従来と同様でよく、特に制限はない。正極22は、図6に示すように、正極芯体22cと、正極芯体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極芯体22cは、帯状である。正極芯体22cは、金属製であることが好ましく、金属箔からなることがより好ましい。正極芯体22cは、ここではアルミニウム箔である。
【0035】
正極芯体22cの長辺方向Yの一方の端部(図6の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、長辺方向Yの一方側(図6の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。正極タブ22tは、ここでは正極芯体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。図3図6に示すように、複数の正極タブ22tは長辺方向Yの一方の端部(図3図6の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続されている。
【0036】
正極活物質層22aは、図6に示すように、正極芯体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、等の各種添加成分を含んでいてもよい。
【0037】
正極保護層22pは、図6に示すように、長辺方向Yにおいて正極芯体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。
【0038】
負極24は従来と同様でよく、特に制限はない。負極24は、図6に示すように、負極芯体24cと、負極芯体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極芯体24cは、帯状である。負極芯体24cは、金属製であることが好ましく、金属箔からなることがより好ましい。負極芯体24cは、ここでは銅箔である。
【0039】
負極芯体24cの長辺方向Yの一方の端部(図6の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、長辺方向Yの一方側(図6の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。負極タブ24tは、ここでは負極芯体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。図3図6に示すように、複数の負極タブ24tは長辺方向Yの一方の端部(図3図6の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。負極タブ群25は、長辺方向Yにおいて正極タブ群23と対称的な位置に設けられている。負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。
【0040】
負極活物質層24aは、図6に示すように、負極芯体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aの長辺方向Yの長さLnは、正極活物質層22aの長辺方向Yの長さLpと同じかそれよりも長い。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、例えば黒鉛等の炭素材料が挙げられる。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、増粘剤、分散剤、等の各種添加成分を含んでいてもよい。
【0041】
セパレータ26は、正極22と負極24との間に配置されている。セパレータ26は、正極22と負極24とを絶縁する部材である。電極体20bは、セパレータ26を含むことが好ましい。セパレータ26の長辺方向Yの長さLsは、負極活物質層24aの長辺方向Yの長さLnと同じかそれよりも長い。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シート(微多孔膜)が好適である。セパレータ26は、表面に機能層(例えば、接着層や耐熱層等)が設けられていてもよい。
【0042】
正極集電部50は、図3に示すように、複数の正極タブ22tからなる正極タブ群23と正極端子30とを電気的に接続する導通経路を構成している。正極集電部50は、正極第1集電部51と正極第2集電部52とを備えている。正極第1集電部51は、封口板14の内側の面に取り付けられている。正極第2集電部52は、外装体12の短側壁12cに沿って延びている。図3図5に示すように、正極第2集電部52は、電極体20bに付設されている。
【0043】
負極集電部60は、図3に示すように、複数の負極タブ24tからなる負極タブ群25と負極端子40とを電気的に接続する導通経路を構成している。負極集電部60は、負極第1集電部61と負極第2集電部62とを備えている。負極第1集電部61および負極第2集電部62の構成は、正極集電部50の正極第1集電部51および正極第2集電部52と同等であってよい。
【0044】
多孔質弾性部材200は、図1に示すように、ここでは配列方向Xにおいて複数の角形二次電池100の間にそれぞれ配置されている。ただし、多孔質弾性部材200は、配列方向Xに隣り合う少なくとも2つの角形二次電池100の間に配置されていればよく、必ずしも全ての角形二次電池100の間に配置されている必要はない。多孔質弾性部材200は、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上の角形二次電池100の間に配置されているとよい。多孔質弾性部材200は、角形二次電池100と別体であってもよく、角形二次電池100に固定され、角形二次電池100と一体化されていてもよい。多孔質弾性部材200は、例えば相対する2つの角形二次電池100の間に挟持されていてもよいし、接着剤やテープ等で角形二次電池100に接着されていてもよい。多孔質弾性部材200の形状、サイズ、配置等は、例えば角形二次電池100の形状、サイズ、容量(膨張・収縮の度合い)等に応じて適宜決定することができる。
【0045】
多孔質弾性部材200は、弾性変形可能な部材である。多孔質弾性部材200は、気体を吸気または排気することで、少なくとも配列方向Xに弾性変形可能なように構成されていることが好ましい。多孔質弾性部材200は、角形二次電池100を加圧状態で拘束したときや、充電等によって角形二次電池100の厚みが大きくなった(膨張した)ときに収縮する一方、放電等によって角形二次電池100の厚みが小さくなったときに膨張して、その厚みを復帰できることが好ましい。特に限定されるものではないが、多孔質弾性部材200の弾性力は、概ね1~1000kN/mmであるとよい。
【0046】
多孔質弾性部材200は、外部に連通する複数の連通孔を有する多孔質構造体である。これにより、多孔質弾性部材200は、いったん収縮した後、再び膨張する際に、外周部から吸気して、吸気した気体(空気等)を内部に移動させることができる。多孔質弾性部材200は、3次元状に連通する連通孔を有する3次元網目状であってもよい。多孔質弾性部材200の空隙率(空隙体積/多孔質弾性部材200の体積)は、10~90体積%が好ましく、20~80体積%がより好ましく、25~75体積%が更に好ましい。多孔質弾性部材200は、樹脂材料で構成されていることが好ましい。樹脂材料としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0047】
充電時等に角形二次電池100が膨張して配列方向Xの厚みが大きくなると、多孔質弾性部材200にかかる荷重が大きくなる。これにより、多孔質弾性部材200は内部の空気を排出しながら圧縮される。そのため、角形二次電池100に所定以上の過剰な拘束荷重が加わることを防止できる。一方、放電時等に角形二次電池100が収縮し、配列方向Xの厚みが減少すると、多孔質弾性部材200にかかる荷重が小さくなる。これにより、多孔質弾性部材200は外部から空気を吸い込んで元の形状に戻り、弾性が復帰する。これにより、角形二次電池100に所定の荷重を安定して印加することができる。
【0048】
図7は、多孔質弾性部材200を模式的に示す斜視図である。多孔質弾性部材200の厚み(配列方向Xの長さ)Tは、組電池500に組み付けられ、例えば拘束機構300で圧縮される前の状態において、1~10mmが好ましく、1~8mmがより好ましく、3~5mmが更に好ましい。多孔質弾性部材200の厚みTは、組電池500に組み付けられ、例えば拘束機構300で圧縮された状態において、2~9mmが好ましく、3~8mmがより好ましく、4~7mmが更に好ましい。多孔質弾性部材200の長辺方向Yの全体長さL1は、正極活物質層22aの長辺方向Yの長さ(平均長さ)Lp(図6参照)と略同じ(概ね±1cm程度)であるとよい。全体長さL1は、セパレータ26の長辺方向Yの長さLsよりも短くてもよい。
【0049】
多孔質弾性部材200は、ここでは平面視において略矩形状である。多孔質弾性部材200の平面視での総面積は、10,000mm以上が好ましく、15,000mm以上がより好ましく、25,000mm以上が更に好ましい。長側壁12bの面積に対する多孔質弾性部材200の総面積の割合は、概ね50%以上が好ましく、60%以上、さらには70%以上がより好ましく、75%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。このような場合、多孔質弾性部材200の内部に空気が行き渡りにくいため、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。また、上記面積の割合は、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮する観点から、概ね95%以下が好ましく、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。
【0050】
なお、本明細書において「多孔質弾性部材200の平面視での総面積」とは、対向する部材(ここでは長側壁12b)と当接する面(図7のYZ平面)の面積をいい、例えば多孔質弾性部材200が複数の部分から構成される場合は、それらの合計の面積である。また、多孔質弾性部材200にスリットや凹部等、対向する部材と接しない部位が形成されている場合は、当該スリットや凹部等の面積を除いた面積をいう。
【0051】
組電池500は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0052】
[組電池の制御装置]
ところで、本発明者らの検討によれば、従来の技術では、充放電サイクルが進むにつれて多孔質弾性部材200が空気を十分に吸い込めなくなり、元のサイズに復帰しにくくなることがあった。その結果、充放電サイクルを繰り返すと低SOC領域(例えばSOC30%以下、さらにはSOC20%以下、特にはSOC15%以下の領域)で角形二次電池100に加わる荷重が小さくなり、同じSOC領域で充放電を行った場合でも、充電時と放電時の荷重の差(Δ荷重)が増大してしまう課題があった。
【0053】
さらに、本発明者らの検討によれば、これに伴ってハイレート劣化が生じ易くなることも新たに判明した。すなわち、Δ荷重とハイレート劣化(例えば抵抗上昇)との間には、強い正の相関が認められた。特に限定解釈されることを意図したものではないが、本発明者らは、この理由を次のように考えている。
【0054】
すなわち、配列方向Xへの変化量が制限されている環境下(例えば、本実施形態のように電極体20bが電池ケース10に収容されている態様や、電極体20bの膨張収縮を抑制するように荷重が加えられている態様等)では、通常、充電によって負極24が膨張すると、正極22と負極24との間に含まれる電解液が押し出される。押し出された電解液は、放電によって負極24が収縮すると電極体20bの内部に戻ってくる。しかし、このときΔ荷重が大きいと、電極体20bの内部に戻ってくる電解液の量が増え、電解液の出入りが多くなる。そのため、充放電を繰り返すことで電解液の分布の均一化が追いつかなくなり、特に電極体20bの長辺方向Y(幅方向)に塩濃度のムラ(濃度勾配)が生じやすくなる。例えば、長辺方向Yの両端部では、電解液の出入りが多くなって支持塩の濃度が薄くなる一方、長辺方向Yの中央部では、支持塩の濃度が濃くなりやすくなる。この濃度勾配が抵抗のバラつきにつながり、例えば長辺方向Yの両端部が相対的に高抵抗となる結果、ハイレート劣化が生じやすくなることが考えられた。
【0055】
そこで、次に、制御装置600(図8参照)について説明する。制御装置600は、組電池500(詳しくは、複数の角形二次電池100)と電気的に接続され、組電池500(ないし角形二次電池100)の充放電を制御可能に構成されている。組電池500(ないし角形二次電池100)は、制御装置600で充放電を制御することが好ましい。制御装置600は、典型的には、有線または無線を介して組電池500と通信可能に接続されたコンピュータ等である。制御装置600は、典型的には、組電池500と共に製品(例えば車両)に搭載されている。制御装置600は、例えば車両のECU(Electronic Control Unit)と電気的に接続されていてもよいし、車両のECUに内蔵されていてもよい。
【0056】
制御装置600のハードウェア構成は特に限定されない。制御装置600は、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
【0057】
制御装置600は、コンピュータのCPUを制御装置600として動作させるコンピュータプログラムであってもよい。かかるコンピュータプログラムは、後述する制御装置600の各処理が書き込まれ、コンピュータで読み取り可能な記録媒体であっていてもよい。記録媒体としては、例えば、半導体記録媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリーカード)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク)等が例示される。上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体あるいはインターネットやイントラネット等のネットワークを介して、サーバーコンピュータに送信することができる。この場合、サーバーコンピュータもまた、制御装置600の一形態である。
【0058】
図8は、制御装置600の機能ブロック図である。図8に示すように、制御装置600は、組電池500(ないし角形二次電池100)に付設された電気化学的な計測器110、および表示画面700と通信可能に接続されている。計測器110は、例えば電圧計や電流計等である。表示画面700は、例えばモニタやディスプレイ、タッチパネル等である。
【0059】
本実施形態の制御装置600は、通常充電制御部610と、通常放電制御部620と、総放電量算出部630と、判定部640と、リフレッシュ放電制御部650と、通知部660と、記憶部670と、入出力部680と、を備えている。ただし、総放電量算出部630と判定部640と通知部660と記憶部670とは必須ではなく、他の実施形態において、その一部または全部を省略することもできる。制御装置600の各部は、相互に通信可能に構成されている。制御装置600の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御装置600の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0060】
通常充電制御部610は、角形二次電池100を、予め定められた上限の充電状態(上限SOC)を上回らないように充電させる通常充電処理を実行し、外部から角形二次電池100に電力を入力する制御部である。上限SOCの値は、予め設定され、記憶部670に記憶されている。上限SOCの値は、例えば、SOC50~100%、SOC80~100%、SOC90~100%等であり、高容量化を実現する観点から、好ましくはSOC90%以上、さらにはSOC95%以上であり、一例では、SOC95%である。
【0061】
通常放電制御部620は、角形二次電池100を、予め定められた下限の充電状態(下限SOC)を下回らないように放電させる通常放電処理を実行し、角形二次電池100から外部(例えば車両等の製品)に電力を供給(出力)する制御部である。下限SOCの値は、予め設定され、記憶部670に記憶されている。下限SOCの値は、例えば、SOC5~40%、SOC10~30%、SOC10~20%等であり、高容量化を実現する観点から、好ましくはSOC30%以下、さらにはSOC20%以下であり、一例では、SOC15%である。
【0062】
なお、電池構成によっても異なり得るが、例えば、本実施形態のように角形二次電池100がリチウムイオン二次電池である場合や、特には負極活物質が炭素材料である場合等には、下限SOCにおける電池電圧が、概ね3.5V以下(例えば、3.0±0.3V)であることが好ましい。
【0063】
総放電量算出部630は、通常放電制御部620で行われた放電の総放電量ΣQを算出する総放電量算出処理を実行する制御部である。総放電量算出部630は、例えばまず、入出力部680を介して、計測器110から通常放電処理の際に計測された電気化学的なデータ、例えば電圧や電流等のデータを所定の間隔で取得する。総放電量算出部630は、例えば1回分の通常放電処理における放電量Qを算出する。なお、一例としてここでは総放電量算出部630が放電量Qを算出しているが、他の実施形態において、総放電量算出部630は、例えば上位の制御装置であるECU等から、放電量Qの値を取得してもよい。
【0064】
記憶部670に放電量Qが記憶されていない場合、総放電量算出部630は、算出した放電量Qを、総放電量ΣQとする。総放電量ΣQは、記憶部670に記憶されることが好ましい。記憶部670に既に総放電量ΣQが記憶されている場合、総放電量算出部630は、算出した放電量Qを、記憶部670に記憶されている総放電量ΣQに累積して、新たに総放電量ΣQを算出する。そして、記憶部670の総放電量ΣQを更新する。なお、記憶部670に記憶された総放電量ΣQは、典型的には、後述のリフレッシュ放電処理が行われた場合にはリセットされ、ゼロに戻る。この場合、記憶部670に記憶されている総放電量ΣQは、最後に(直近に)リフレッシュ放電処理が行われてからの放電量Qの合計である。
【0065】
判定部640は、例えば通常放電制御部620における通常放電処理の実績状況に基づいて、後述のリフレッシュ放電処理が必要であるか否かを判定する判定処理を実行する制御部である。通常放電処理の実績状況は、例えば、通常放電処理の回数(放電回数)、総放電時間、総放電量ΣQ等である。これらの情報は、入出力部680を介してECUや計測器110から取得されるか、あるいは計測器110等から取得した情報に基づいて算出される。
【0066】
本実施形態において、判定部640は、総放電量算出部630で算出された総放電量ΣQが予め定められた閾値を超えるか否かに基づいて、リフレッシュ放電処理の要否を判定するように構成されている。閾値は、予め設定され、記憶部670に記憶されている。閾値は、例えば後述の実施例に記載するような充放電サイクル数とΔ荷重との関係に基づいて決定してもよい。例えば、Δ荷重が許容値を超える地点を、閾値として設定してもよい。このため、特に限定されるものではないが、一例では、総放電量ΣQの閾値が、8kAhである。
【0067】
ただし、判定部640は、例えば、最後にリフレッシュ放電処理が行われてからの放電回数が所定の回数(閾値)を超えている場合や、最後にリフレッシュ放電処理が行われてからの総放電時間が所定の時間(閾値)を超えている場合等に、リフレッシュ放電処理が必要であると判定するように構成されてもよい。
【0068】
リフレッシュ放電制御部650は、角形二次電池100を、通常放電処理の下限SOCよりも充電状態が低くなるまで(リフレッシュSOCとなるまで)強制的に放電させるリフレッシュ放電処理を実行する制御部である。本実施形態において、リフレッシュ放電処理は、通常充電制御部610が通常充電処理を実行しておらず、かつ、通常放電制御部620が通常放電処理を実行していないときに実行される。リフレッシュ放電制御部650は、角形二次電池100のSOCが低くなっている状況、例えば、通常放電制御部620が通常放電処理を実行した後、あるいは通常充電制御部610が通常充電処理を実行する前等のタイミングで、リフレッシュ放電処理を実行するように構成されていてもよい。これにより、角形二次電池100をリフレッシュSOCまで効率よく放電できる。
【0069】
リフレッシュSOCの値は、予め設定され、記憶部670に記憶されている。リフレッシュSOCの値は、下限SOCよりも低い限りにおいて特に限定されないが、下限SOCよりも5%以上低いことが好ましく、10%以上低いことがより好ましく、例えば15%以上低いことがより好ましい。具体的には、リフレッシュSOCの値は、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮する観点から、SOC30%以下が好ましく、SOC20%以下がより好ましく、SOC10%以下が更に好ましく、SOC5%以下、さらにはSOC0%以下が特に好ましく、一例では、SOC0%である。ただし、リフレッシュSOCの値は、角形二次電池100の劣化を抑制する観点から、SOC0%以上、SOC1%以上、SOC3%以上であってもよい。
【0070】
なお、電池構成によっても異なり得るが、例えば、本実施形態のように角形二次電池100がリチウムイオン二次電池である場合、特には負極活物質が炭素材料である場合等には、リフレッシュSOCにおける電池電圧が、概ね2.0V以下(例えば、2.0±0.3V程度)であることが好ましい。また、下限SOCにおける電池電圧と、リフレッシュSOCにおける電池電圧との差が、0.5V以上であることが好ましい。
【0071】
リフレッシュ放電処理では、リフレッシュSOCの状態を予め定められた維持時間、維持することが好ましい。維持時間は、ここに開示される技術の効果を高いレベルで発揮する観点から、30秒以上とすることが好ましく、3分以上とすることがより好ましく、5分以上とすることが更に好ましい。維持時間は、ユーザの利便性や角形二次電池100の劣化状態等を考慮して、30分以下とすることが好ましい。
【0072】
リフレッシュ放電制御部650は、ユーザの利便性等を考慮し、ユーザの指示に基づいてリフレッシュ放電処理を実行するように構成されていることが好ましい。また、リフレッシュ放電制御部650は、定期的にリフレッシュ放電処理を実行するように構成されていることが好ましい。好適な一態様において、リフレッシュ放電制御部650は、判定部640による判定処理でリフレッシュ放電処理が必要であると判定された場合に、リフレッシュ放電処理を実行するように構成されている。本実施形態では、総放電量ΣQが閾値を超えると判定された場合に、リフレッシュ放電処理を実行するように構成されている。
【0073】
通知部660は、角形二次電池100の充放電の状況等を、入出力部680を介して、ユーザに通知する通知処理を実行する制御部である。好適な一態様において、通知部660は、リフレッシュ放電制御部650がリフレッシュ放電処理を実行する前に、ユーザに通知するように構成されている。本実施形態では、判定部640による判定処理でリフレッシュ放電処理が必要であると判定された場合に、ユーザにリフレッシュ放電処理が必要であることを通知するように構成されている。通知部660は、例えば、表示画面700等に文字やイラスト等を表して通知を行ってもよいし、警告音や音声案内等の音声によって通知を行ってもよい。
【0074】
通知部660は、制御装置600で行われている処理の内容、例えば、通常充電制御部610が通常充電処理を実行していること、通常放電制御部620が通常放電処理を実行していること、リフレッシュ放電制御部650がリフレッシュ放電処理を実行していること等を、ユーザに通知するように構成されていることが好ましい。例えばリフレッシュ放電処理を実行中であることを通知するようにすれば、ユーザは、組電池500の搭載されている製品(例えば車両)を所定の時間、通常使用することができないことを把握できる。通知部660は、組電池500(ないし角形二次電池100)の充電状態(SOC)を、例えば数字やイラスト等で通知するように構成されていてもよい。
【0075】
通知部660は、例えば判定部640による判定処理でリフレッシュ放電処理が必要であると判定された場合に、ユーザが、リフレッシュ放電処理を行うか否かを選択するための第1の選択メッセージや、リフレッシュ放電処理を行う場合にそのタイミング(日時等)を入力するための第2の選択メッセージを表示するように構成されていることが好ましい。
【0076】
記憶部670には、各種パラメータ、例えば、通常充電処理における上限SOCの値、通常放電処理における下限SOCの値、総放電量ΣQの値、判定処理における閾値、リフレッシュ放電処理におけるリフレッシュSOCの値、等が記憶される。記憶部670には、さらに、少なくともリフレッシュ放電処理を含む充放電パターンが1つまたは複数、予め記憶されていてもよい。充放電パターンは、リフレッシュ放電処理のみを実行する第1充放電パターンと、リフレッシュ放電処理の後に略満充電まで(例えばSOC90%以上、さらにはSOC95%以上となるまで)充電する通常充電処理を続けて実行する第2充放電パターンと、を含むことが好ましい。記憶部670には、さらに、リフレッシュ放電処理の予約情報が記憶されてもよい。
【0077】
以上のような制御装置600では、リフレッシュ放電処理の際、通常の通常放電処理よりも角形二次電池100の厚みを薄くすることができるので、多孔質弾性部材200が空気を取り込みやすくなる。その結果、多孔質弾性部材200が元のサイズ(特には、配列方向Xの厚み)に形状復帰しやすくなる。したがって、充放電サイクルを繰り返したときに低SOC領域で角形二次電池100に加わる荷重が低くなることを抑制して、SOC変動時の荷重変動(Δ荷重)を低減できる。ひいては、電極体20bの長辺方向Yで塩濃度のムラ(濃度勾配)の増大を抑えることができ、ハイレート劣化が生じることを未然防止できる。
【0078】
[組電池の制御方法]
図9は、本実施形態のリフレッシュ放電に係る処理の一例を示すフローチャートである。ここに開示される制御方法では、例えば通常放電制御部620によって通常放電処理が実行されると、図9のフローチャートに示す手順に沿って、リフレッシュ放電処理を実行するまでの制御が行われる。
【0079】
ステップS1では、まず通常放電制御部620によって通常放電処理が開始されると、計測器110で計測された電気化学的なデータ(例えば電圧や電流等の変化)が、入出力部680を介して総放電量算出部630に入力される。総放電量算出部630では、これに基づいて放電量Qが算出される。一例では、通常放電処理時に電流計を用いて一定間隔で角形二次電池100の放電電流値が計測され、放電電流値を積算することによって放電量Qが算出される。そして、例えば1回分の通常放電処理が終わり、放電量Qが得られると、ステップS2に進む。
【0080】
ステップS2では、総放電量算出部630により、総放電量算出処理が実行される。総放電量算出部630は、通常放電処理で行われた放電の総放電量を算出する。総放電量算出部630は、記憶部670に放電量Qが記憶されていない場合、ステップS1で算出された放電量Qを、そのまま総放電量ΣQとして算出し、記憶部670に記憶する。一方、総放電量算出部630は、記憶部670に総放電量ΣQ(典型的には、最後にリフレッシュ放電処理が行われた後から現在までの間に行われた放電の総放電量ΣQ)が記憶されている場合、ステップS1で算出された放電量Qを、記憶部670に記憶されている総放電量ΣQと合計して、総放電量ΣQを算出する。そして、記憶部670の総放電量ΣQを更新し、ステップS3に進む。
【0081】
ステップS3では、判定部640により、判定処理が実行される。本実施形態では、通常放電処理の実績状況に基づいて、判定部640により、リフレッシュ放電処理が必要であるか否かが判定される。具体的には、判定部640により、ステップS2で算出された総放電量ΣQが、予め定められた閾値を超えているか否かが判定される。閾値を適宜設定し、かつ総放電量ΣQと対比することによって、適切なタイミングでリフレッシュ放電処理を実行することができる。判定部640によって総放電量ΣQが閾値を超えていると判定された場合には、図9のステップS3の判定をYESとして、ステップS4に進む。
【0082】
一方、判定部640によって総放電量ΣQが閾値を超えていないと判定された場合は、低SOC領域において多孔質弾性部材200の弾性が大きく低下していない状態である。この場合、リフレッシュ放電処理は実行しなくてもよいため、図9のステップS3の判定をNOとして、ステップS1に戻る。そして、通常放電処理が実行されるたびに放電量Qが積算され、総放電量ΣQが更新されることとなる。
【0083】
ステップS4では、通知部660により、通知処理が実行される。詳しくは、通知部660により、ユーザに対してリフレッシュ放電処理が必要である旨の通知がなされる。これにより、ユーザは、実際にリフレッシュ放電処理が実行される前に、リフレッシュ放電処理が必要であることを認識できる。通知部660は、例えば、表示画面700に「メンテナンス(リフレッシュ放電処理)が必要です」等とメッセージを表示する。そして、ステップS5に進む。
【0084】
ステップS5では、ユーザによって、リフレッシュ放電処理を行うか否か、およびリフレッシュ放電処理を行う場合はそのタイミングが選択される。リフレッシュ放電処理が行われている間は、通常放電処理や通常充電処理を実行することができない。すなわち、組電池500が搭載されている製品(例えば車両)を、通常使用することができない。そのため、リフレッシュ放電処理を行うか否か、およびリフレッシュ放電処理を行う場合はそのタイミングを、ユーザの都合や予定に合わせることで、ユーザの利便性を向上できる。ただし、後述する変形例にも記載するように、他の実施形態において、本工程を省略し、リフレッシュ放電処理を自動で実施するように設定(例えば充放電パターンを設定)してもよい。
【0085】
本実施形態では、通知部660によって、表示画面700に「今すぐメンテナンス(リフレッシュ放電処理)を行いますか?」等と、第1の選択メッセージが表示される。そこでユーザが、例えば図示しない選択画面等から「はい」を選択する(すなわち、リフレッシュ放電処理を指示する)と、図9のステップS5の判定をYESとして、ステップS6に進む。一方、例えば直ぐに組電池500を通常使用する(通常放電処理を実行する)予定がある等、今すぐリフレッシュ放電処理を行うことに不都合がある場合、ユーザが、例えば図示しない選択画面等から「いいえ」を選択すると、通知部660によって、表示画面700に「メンテナンス(リフレッシュ放電処理)の予約を行いますか?」等と、第2の選択メッセージがさらに表示される。
【0086】
そこでユーザが、例えば図示しない選択画面等から「はい」を選択する(すなわち、リフレッシュ放電処理を指示する)と、表示画面700には、リフレッシュ放電処理を実行するための予約情報を入力する予約画面が表示される。予約情報には、例えば、リフレッシュ放電処理を開始する日時の情報と、リフレッシュ放電処理を含む充放電パターンの情報と、が含まれる。充放電パターンは、例えば、記憶部670に記憶されている複数の充放電パターンから(例えば、上記した第1充放電パターンおよび第2充放電パターンのなかから)選択してもよいし、ユーザが自由に設定することもできる。ユーザが、図示しない予約画面からリフレッシュ放電処理を開始する日時と充放電パターンを入力すると、記憶部670にリフレッシュ放電処理の予約情報が記憶される。そして、この場合も図9のステップS5の判定をYESとして、ステップS6に進む。
【0087】
一方、ユーザが、第2の選択メッセージが表示された際に、例えば図示しない選択画面等から「いいえ」を選択すると、図9のステップS5の判定をNOとして、ステップS8に進む。ステップS8では、通知部660によって、表示画面700に「メンテナンス(リフレッシュ放電処理)を行なわない場合、電池の寿命が短くなることがあります。」等と、警告が表示される。そして、制御を終了する。
【0088】
ステップS6では、通常充電処理および通常放電処理が行われていない状態で、リフレッシュ放電制御部650により、リフレッシュ放電処理が実行される。詳しくは、リフレッシュ放電制御部650により、角形二次電池100がリフレッシュSOCまで強制的に放電される。好ましくは、さらにリフレッシュSOCの状態で、所定の維持時間、維持される。なお、ステップS5において第1の選択メッセージで「はい」が選択された場合は、ステップS5の後、直ちにリフレッシュ放電処理が実行される。リフレッシュ放電処理により、角形二次電池100が大きく凹むと、多孔質弾性部材200が吸気しやすくなる。これにより、多孔質弾性部材200を適切に形状復帰させることができる。そして、ステップS7に進む。
【0089】
一方、ステップS5において第2の選択メッセージで「はい」が選択された場合は、予約情報に従ってリフレッシュ放電処理が実行される。このとき、予約画面で第1充放電パターンが選択されていれば、リフレッシュ放電制御部650によってリフレッシュ放電処理のみが実行される。一方、予約画面で第2充放電パターンが選択されていれば、リフレッシュ放電制御部650によってリフレッシュ放電処理が実行された後に、通常充電制御部610によって、略満充電まで(例えばSOC90%以上となるまで)充電する通常充電処理が続けて実行される。そして、ステップS7に進む。
【0090】
ステップS7では、記憶部670に記憶されている総放電量ΣQが消去される。言い換えれば、総放電量ΣQがリセットされてゼロになる。このとき、記憶部670に記憶された予約情報は、あわせて消去されてもよい。そして制御を終了する。
【0091】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0092】
本試験例では、リフレッシュ放電処理の有効性を確認した。具体的には、まず、連通孔を有し、厚み方向に弾性変形可能な多孔質弾性部材を用意した。次に、角形二次電池(リチウムイオン二次電池)と多孔質弾性部材とを、一対の拘束治具(拘束機構)で配列方向に挟み込み、多孔質弾性部材の厚みが拘束前の80%になるように拘束して、試験用電池を複数作製した。なお、一対の拘束治具のうち一方には荷重測定用のロードセルが設置されており、角形二次電池の長側壁(多孔質弾性部材と対向する面)に印加される荷重を測定できるように構成されている。
【0093】
[Δ荷重の測定]
以下のようにして、充電時と放電時の荷重の差(Δ荷重)の推移を測定した。まず、25℃の温度環境下で、構築した試験用電池をSOC15~95%の範囲にて複数回充放電させ、このときの荷重をロードセルで測定した。なお、実施例の試験用電池については、50サイクルごとにリフレッシュ放電処理を行った。具体的には、角形二次電池をSOC0%まで強制的に放電させて、多孔質弾性部材の荷重を緩和させた。一方、比較例の試験用電池については、リフレッシュ放電処理を行わなかった。そして、各サイクルについて、SOC95%のときの荷重からSOC15%のときの荷重を差し引いてΔ荷重を算出し、1サイクル目のΔ荷重を100%としたときのΔ荷重増加率で表した。結果を図10に示す。
【0094】
図10は、充放電サイクル数と荷重増加率(%、相対値)との関係を表すグラフである。なお、図10では、実施例でリフレッシュ放電処理を行ったサイクルの箇所に星印を付している。リフレッシュ放電処理を行った実施例の試験用電池では、リフレッシュ放電処理後にSOC15%での荷重が高くなっており、図10に示すように、リフレッシュ放電処理を行わなかった比較例の試験用電池に比べて、相対的にΔ荷重の増大が小さく抑えられていた。これは、リフレッシュ放電処理により、多孔質弾性部材が空気を取り込みやすくなり、元のサイズに形状復帰しやすくなったためと考えられる。かかる結果は、ここに開示される技術の意義を示すものである。
【0095】
[IV抵抗の測定]
構成の同じ2つの角形二次電池(実施例および比較例)を用意し、以下のようにして、ハイレート劣化を測定した。まず、2つの角形二次電池を、それぞれSOC50%の状態に調整した後、240Aで10秒間の定電流放電を行い、放電抵抗を測定した。次に、10秒間で降下した電池電圧ΔVを読み取り、その電池電圧ΔVと放電電流値(240A)とに基づき、IV抵抗(初期抵抗)を算出した。
【0096】
次に、25℃の温度環境下で耐久試験を行った。具体的には、角形二次電池をSOC20%の状態に調整し、2Cの充電レートで30分間、定電流充電をした後、10分間休止し、次いで1/5Cの放電レートで180分間、定電流放電をした後、10分間休止する充放電を1サイクルとして、これを15サイクル繰り返した。このとき、実施例の角形二次電池については、3サイクルごとにリフレッシュ放電処理を行った。具体的には、充放電サイクルの放電後、角形二次電池をSOC0%まで強制的に放電させて、多孔質弾性部材の荷重を緩和させた後、元のSOCに戻して充放電サイクルを再開させた。一方、比較例の角形二次電池については、リフレッシュ放電処理を行わなかった。そして、5サイクルごとに、初期抵抗と同様にIV抵抗を測定し、初期抵抗に対する耐久試験後のIV抵抗の比から、それぞれ抵抗増加率を算出した。結果を図11に示す。
【0097】
図11は、充放電サイクル数と抵抗増加率(%、相対値)との関係を表すグラフである。図11に示すように、リフレッシュ放電処理を行った実施例の角形二次電池では、リフレッシュ放電処理を行わなかった比較例の角形二次電池に比べて、相対的に抵抗増加が小さく抑えられ、ハイレート劣化が抑えられていた。両者の差は、サイクル数が増えるほど顕著になっていた。かかる結果は、ここに開示される技術の意義を示すものである。
【0098】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形例に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形例を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0099】
(第1変形例)例えば、上記した実施形態では、組電池500は直列に接続されており、制御装置600は組電池500の充放電を制御するように構成されていた。しかしこれには限定されない。例えば組電池500が並列に接続されているような場合、制御装置600は角形二次電池100の充放電を個別に制御するように構成されていてもよい。
【0100】
(第2変形例)例えば、上記した実施形態では、判定部640が、通常放電処理の実績状況に基づいて、リフレッシュ放電処理の要否を判定するように構成されていた。具体的には、総放電量算出部630で算出された総放電量ΣQが予め定められた閾値を超えたときに、リフレッシュ放電処理が必要であると判定するように構成されていた。しかしこれには限定されない。判定部640は、例えば、角形二次電池100に加わる荷重が所定の値に達したことを検出して、リフレッシュ放電処理が必要であると判定するように構成されていてもよいし、最後にリフレッシュ放電処理が行われてから所定の時間が経過したときに、リフレッシュ放電処理が必要であると判定するように構成されていてもよい。
【0101】
(第3変形例)例えば、上記した図9の実施形態では、フローチャートにステップS5を含み、リフレッシュ放電制御部650がユーザからの指示を受けてリフレッシュ放電処理を実行するように構成されていた。言い換えれば、ユーザが、リフレッシュ放電処理の要否ないしリフレッシュ放電処理のタイミングを決定していた。しかしこれには限定されない。リフレッシュ放電制御部650は、例えば判定部640の判定結果に基づいて、自動でリフレッシュ放電処理を実行するように構成されていてもよい。例えば、記憶部670には、判定部640でリフレッシュ放電処理が必要であると判定された場合の手順が予め記憶されており、これに基づいて自動でリフレッシュ放電処理を実行するように構成されていてもよい。
【0102】
一例において、リフレッシュ放電制御部650は、例えば通常放電処理が実行されることが少ない時間帯(例えば、予め設定された夜間の時間帯)を選んで、リフレッシュ放電処理を自動で実行するように構成されていてもよい。なお、夜間は、電気料金が夜間料金となる深夜の時間帯であることが好ましい。リフレッシュ放電制御部650は、例えば判定部640でリフレッシュ放電処理が必要であると判定された後、最初に夜間の時間帯に通常充電処理を実行する場合に、まずリフレッシュ放電処理を実行し、次いで通常充電処理を実行するように構成されていてもよい。すなわち、リフレッシュ放電処理を通常充電処理と組み合わせて実行してもよい。
【0103】
(第4変形例)例えば、上記した実施形態では、配列方向Xにおいて隣り合う角形二次電池100の間に多孔質弾性部材200が配置され、多孔質弾性部材200の配列方向Xの両面が、いずれも角形二次電池100の長側壁12bに当接していた。しかし、角形二次電池100と多孔質弾性部材200との間には、他の部材が介在していてもよい。角形二次電池100と多孔質弾性部材200との間に介在し得る他の部材の一例として、例えば、非多孔性の絶縁フィルム;高融点樹脂を含む耐熱部材;樹脂材料とセラミック粒子とを含む耐熱部材;シリカエアロゲルや、シリカを主体としたナノ多孔体等を含む断熱部材;等が挙げられる。他の部材の形状、サイズ、配置は、例えば多孔質弾性部材200の形状、サイズ、気体流路の位置等に応じて適宜決定することができる。他の部材は、例えばシート状であってもよく、多孔質弾性部材200と同形状であってもよい。
【0104】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、上記配列方向において隣り合う上記角形二次電池の間に配置された多孔質弾性部材と、複数の上記角形二次電池と上記多孔質弾性部材とを拘束する拘束機構と、を備え、上記多孔質弾性部材は、外部に連通する連通孔を有し、弾性変形可能である、組電池の制御方法であって、上記角形二次電池を、予め定められた下限の充電状態を下回らないように放電させる通常放電工程と、上記通常放電工程が行われていないときに、上記角形二次電池を、上記下限の充電状態よりも上記充電状態が低くなるまで放電させるリフレッシュ放電工程と、
を含む、組電池の制御方法。
項2:上記通常放電工程の実績状況に基づいて上記リフレッシュ放電工程が必要であるか否かを判定する判定工程を含み、上記判定工程で上記リフレッシュ放電工程が必要と判定された場合に、上記リフレッシュ放電工程を実行するように構成されている、項1に記載の制御方法。
項3:上記通常放電工程で行われた放電の総放電量を算出する総放電量算出工程を含み、上記判定工程は、上記総放電量が予め定められた閾値を超えるか否かに基づいて上記リフレッシュ放電工程の要否を判定するように構成されている、項2に記載の制御方法。
項4:上記判定工程で上記リフレッシュ放電工程が必要と判定された場合に、ユーザに上記リフレッシュ放電工程が必要であることを通知する通知工程を含む、項2または項3に記載の制御方法。
項5:上記通知工程の後、ユーザの指示に基づいて上記リフレッシュ放電工程を開始するように構成されている、項4に記載の制御方法。
項6:上記リフレッシュ放電工程において、上記充電状態が10%以下となるまで上記角形二次電池を放電させるように構成されている、項1~項5のいずれか一つに記載の制御方法。
項7:上記角形二次電池を、上記充電状態が90%以上となるまで充電する通常充電工程を含み、上記通常充電工程を実行する場合に、まず上記リフレッシュ放電工程を実行し、次いで上記通常充電工程を実行するように構成されている、項1~項6のいずれか一つに記載の制御方法。
項8:所定の配列方向に沿って配置された複数の角形二次電池と、上記配列方向において隣り合う上記角形二次電池の間に配置された多孔質弾性部材と、複数の上記角形二次電池と上記多孔質弾性部材とを拘束する拘束機構と、を備え、上記多孔質弾性部材は、外部に連通する連通孔を有し、弾性変形可能である、組電池の制御装置であって、上記角形二次電池を、予め定められた下限の充電状態を下回らないように放電させる通常放電処理を実行する通常放電制御部と、上記通常放電処理が行われていないときに、上記角形二次電池を、上記下限の充電状態よりも上記充電状態が低くなるまで放電させるリフレッシュ放電処理を実行するリフレッシュ放電制御部と、を含む、組電池の制御装置。
【符号の説明】
【0105】
10 電池ケース
20 電極体群
20a、20b、20c 電極体
100 角形二次電池
200 多孔質弾性部材
300 拘束機構
500 組電池
600 制御装置
610 通常充電制御部
620 通常放電制御部
630 総放電量算出部
640 判定部
650 リフレッシュ放電制御部
660 通知部
670 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12