(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134761
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 11/22 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F26B11/22
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045112
(22)【出願日】2023-03-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】391060199
【氏名又は名称】金井 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】金井 正夫
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA04
3L113AA07
3L113AB05
3L113AC16
3L113AC57
3L113AC58
3L113AC63
3L113AC67
3L113BA02
3L113BA04
3L113CB29
3L113CB34
3L113DA01
(57)【要約】
【課題】被乾燥物の蒸発速度を上げることを可能とし、乾燥効率をいっそう高めることができる乾燥装置を提供する。
【解決手段】被乾燥物が投入される縦型の円筒形状をなし内周壁が伝熱面12として加熱される乾燥槽11と、該乾燥槽11内で略鉛直な中心線Lに沿って延びる回転軸20に設けられた回転巻上羽根30とを有する。回転巻上羽根30の回転により、乾燥槽11内の被乾燥物は伝熱面12に薄膜状に押し付けられながら上昇する。回転巻上羽根30より上方に設けられ、前記伝熱面12に沿って薄膜状に上昇する被乾燥物を下方に落下させるバッフル40を有し、バッフル40は、回転巻上羽根30の回転方向と逆方向に回転する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物が投入される縦型の円筒形状をなし内周壁が伝熱面として加熱される乾燥槽と、該乾燥槽内で略鉛直な中心線に沿って延びる回転軸に設けられた回転巻上羽根とを有する乾燥装置において、
前記回転巻上羽根の回転により、前記乾燥槽内の被乾燥物は前記伝熱面に薄膜状に押し付けられながら上昇可能であり、
前記回転巻上羽根より上方に設けられ、前記伝熱面に沿って薄膜状に上昇する被乾燥物を下方に落下させるバッフルを有し、該バッフルは、前記回転巻上羽根の回転方向と逆方向に回転可能であることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記バッフルは、前記伝熱面に沿って2つ以上が円周方向に等間隔に並んで配置され、それぞれ前記回転巻上羽根の回転方向と対向する板状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記回転軸は、同軸上で上下に連なる2つの回転軸部からなり、下側の回転軸部に前記回転巻上羽根が設けられ、上側の回転軸部に前記バッフルが設けられ、
前記2つの回転軸部は、互いに逆方向に回転可能に連結されたことを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記下側の回転軸部の下端部に連結され、該下側の回転軸部を一方向に軸心を中心に回転させる下駆動モータと、
前記上側の回転軸部の上端部に連結され、該上側の回転軸部を前記一方向とは逆方向に軸心を中心に回転させる上駆動モータとを有し、
前記回転軸は、前記2つの回転軸部の対向し合う端部同士を、互いに逆向きに回転可能に連結する逆回転連結部を備えることを特徴とする請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記逆回転連結部は、
前記2つの回転軸部のいずれか一方の端部で同軸上に延びる係合凸部と、
前記2つの回転軸部のいずれか他方の端部で同軸上に凹み、前記係合凸部が回転可能に嵌入する被係合凹部とを備えることを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記2つの回転軸部のいずれか一方の上端部または下端部に連結され、該回転軸部を一方向に軸心を中心に回転させる1つの駆動モータを有し、
前記回転軸は、前記2つの回転軸部の対向し合う端部同士を、前記駆動モータが連結された一方から他方へ該駆動モータの回転力を逆転させて伝達可能に連結する逆回転伝達部を備えることを特徴とする請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記逆回転伝達部は、
前記2つの回転軸部のいずれか一方の端部で同軸上に延びる係合凸部と、
前記2つの回転軸部のいずれか他方の端部で同軸上に凹み、前記係合凸部が回転可能に嵌入する被係合凹部と、
前記係合凸部および前記被係合凹部の周りに設けられ、それぞれ同軸上に配置された一対の第1かさ歯車と、
前記一対の第1かさ歯車の間で、前記回転軸の周りに間隔を置いて配置され、それぞれ前記回転軸に対して径方向に姿勢調整された歯車軸周りに回転可能であり、かつ前記各第1かさ歯車に対して回転可能に噛み合う複数の第2かさ歯車とを備えることを特徴とする請求項6に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型の円筒形状をなし内周壁が伝熱面として加熱され被乾燥物が投入される乾燥槽と、該乾燥槽内で略鉛直な中心線に沿って延びる回転軸に設けられた回転巻上羽根とを有する乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粒状、粉末状、液状、塊状等と種々様々な被乾燥物を乾燥させる乾燥装置が知られている。特に本出願人は、サイクロンフィンと呼ばれる独自の羽根の開発により、理想の乾燥条件を実現することができる乾燥装置を既に提案している(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
このような乾燥装置は、縦型の円筒形状の乾燥槽内に投入された被乾燥物が、回転軸に設けられた回転巻上羽根をなす複数の基羽根の回転により巻き上げられるように構成されている。かかる構成では、回転巻上羽根が回転すると、被乾燥物が遠心力と慣性力によって乾燥槽の内周壁の伝熱面に薄膜状に押し付けられ、後から巻き上げられる被乾燥物が先に巻き上げられた被乾燥物を上方へ押し上げる作用と相俟って、被乾燥物を乾燥させることができる。
【0004】
また、
図8に示すように、回転巻上羽根より上方に、伝熱面に沿って薄膜状に上昇する被乾燥物を下方に落下させるバッフルを備えた乾燥装置も知られている。このような乾燥装置では、乾燥槽の内周壁に複数枚のバッフルが円周方向に等間隔に固定されており、伝熱面に沿って薄膜状に上昇した被乾燥物がバッフルに到達した時点で、被乾燥物はバッフルに接触して乾燥槽の下方に落下する。そして、落下した被乾燥物は、回転巻上羽根の回転により再び伝熱面に薄膜状に接触して上昇する現象(被乾燥物の循環)が繰り返されるため、加熱された被乾燥物から水分が効率良く蒸発して乾燥効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2840639号公報
【特許文献2】特許第2958869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した乾燥装置は、特にバッフルを備えた構成により、乾燥効率を高めることができるものであるが、バッフルは固定されているため、定位置にあるバッフルの枚数分のみでしか被乾燥物を下方に積極的に落下させることができなかった。従って、被乾燥物の乾燥がバッチ処理的なものとなり、乾燥効率の主要因であるいわゆる蒸発速度は固定化されて限界があり、よりいっそう乾燥効率を高めるための工夫が望まれていた。
【0007】
そこで、例えばバッフルの枚数を増やすことにより、乾燥槽の伝熱面に沿って薄膜状に上昇した被乾燥物を下方に落下させる頻度を高め、被乾燥物の循環回数を増やして蒸発速度を上げることが考えられる。しかしながら、バッフルの枚数を増した場合には、各バッフル間の間隔が狭くなって被乾燥物が堆積しやすくなるため、被乾燥物が循環不能となって乾燥効率が逆に損なわれる虞があった。
【0008】
本発明は、前述したような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであり、バッフルに被乾燥物を堆積させることなく、乾燥槽内における被乾燥物の循環回数を増やすことにより、被乾燥物の蒸発速度を上げることを可能とし、乾燥効率をいっそう高めることができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
被乾燥物が投入される縦型の円筒形状をなし内周壁が伝熱面として加熱される乾燥槽と、該乾燥槽内で略鉛直な中心線に沿って延びる回転軸に設けられた回転巻上羽根とを有する乾燥装置において、
前記回転巻上羽根の回転により、前記乾燥槽内の被乾燥物は前記伝熱面に薄膜状に押し付けられながら上昇可能であり、
前記回転巻上羽根より上方に設けられ、前記伝熱面に沿って薄膜状に上昇する被乾燥物を下方に落下させるバッフルを備え、該バッフルは、前記回転巻上羽根の回転方向と逆方向に回転可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る乾燥装置によれば、バッフルに被乾燥物を堆積させることなく、乾燥槽内における被乾燥物の循環回数を増やすことにより、被乾燥物の蒸発速度を上げることを可能とし、乾燥効率をいっそう高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る乾燥装置の内部構造を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る乾燥装置の回転巻上羽根を示す横断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る乾燥装置のバッフルを示す横断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る乾燥装置の逆回転連結部を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る乾燥装置における被乾燥物の乾燥処理中の様子を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る乾燥装置の逆回転伝達部を拡大して示す縦断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る乾燥装置の逆回転伝達部を拡大して示す分解斜視図である。
【
図8】従来の乾燥装置の内部構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
本実施形態に係る乾燥装置10は、縦型の円筒形状の乾燥槽11内に投入した被乾燥物を巻き上げつつ、乾燥槽11の内周壁に薄膜状に押し付けて乾燥させるものである。被乾燥物は、生ゴミ、残飯、食品残滓、汚泥、スラッジ、家畜糞尿等と多岐に渡り、その形態も、粒状、粉末状、液状、塊状等、種々様々で、水分含量も多様である。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、既に周知な事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成に対する重複説明等は、適宜省略する場合がある。
【0013】
<乾燥装置10の概要>
図1に示すように、乾燥装置10は、その主要部をなし被乾燥物が投入される乾燥槽11と、該乾燥槽11内で略鉛直な中心線Lに沿って延びる回転軸20に設けられた回転巻上羽根30と、該回転巻上羽根30の上方に設けられたバッフル40と、を有する。特に乾燥装置10は、後述するがバッフル40を、回転巻上羽根30の回転方向と逆方向に回転可能に構成したことに特徴がある。なお、
図1の縦断面図においてハッチングを省略している。また、各図において、各構成要素の相対的な寸法関係や形状等は、適宜設計変更されるものであり、実際とは異なる場合がある。
【0014】
<乾燥槽11について>
図1に示すように、乾燥槽11は、縦型の円筒形状に金属材により構成されている。乾燥槽11は、その下側に設けられた複数の脚部11a(一部のみ図示)によって、フロア上に中心線Lが鉛直となる姿勢に設置される。乾燥槽11の内周壁は、加熱手段からの熱を被乾燥物に伝える伝熱面12となっている。ここで加熱手段は、例えば、乾燥槽11の外周壁を囲むように形成したジャケット13と、このジャケット13に連通するように接続され、ジャケット13内に熱媒体として例えば蒸気を送り込むボイラー(図示省略)と、を備えてなる。
【0015】
ジャケット13には、熱媒体として蒸気をジャケット13内に導く蒸気流入部13aと、廃蒸気をジャケット13外に排出する蒸気排出部(図示省略)と、が設けられている。また、加熱手段の他の例として、蒸気の代わりに熱風をジャケット13内に送り込むように構成したり、あるいは、ジャケット13内に収容した熱媒体と、ジャケット13の外周壁に配設した電気ヒーターとから構成しても良い。すなわち、電気ヒーターからの熱を熱媒体を介して伝熱面12に伝えるものである。さらに構成を簡略化して、ジャケット13の外周壁に配設した電気ヒーターの熱を伝熱面12に直接伝えるように構成しても良い。このように加熱手段には種々のものが考えられる。
【0016】
乾燥槽11の内部に被乾燥物を供給したり外部に排出する構成も様々であり、例えば、乾燥槽11の上面部15の一部に開閉可能な供給口(図示省略)を設けて、この供給口より被乾燥物を内部に投入すると良い。一方、乾燥槽11の底面部14付近に開閉可能な排出口(図示省略)を設けて、この排出口より乾燥済みの被乾燥物を外部に排出するように構成すると良い。このような構成によれば、全ての工程が終了するまで、途中で被乾燥物の供給ないし排出を行わないバッチ式の処理を行うものとなる。
【0017】
あるいは、図示省略したが、乾燥槽11の底面部14付近の周壁に供給管を接続して、被乾燥物を供給管より乾燥槽11内に供給する一方、上面部15付近の周壁に排出管を接続して、乾燥物を排出管より外部に排出するように構成しても良い。このような構成によれば、被乾燥物の供給を区切って、間欠的に乾燥物を得るバッチ式の処理だけでなく、被乾燥物を連続的に供給すると共に乾燥物を連続的に排出する連続式の処理も可能となる。
【0018】
<回転軸20について>
図1に示すように、乾燥槽11内には、略鉛直な中心線Lに沿って延びる回転軸20が配設されている。回転軸20は、乾燥槽11の底面部14と上面部15の中心を貫通した状態で軸支されている。回転軸20は、同軸上で上下に連なる2つの回転軸部21,22からなる。ここで下側の回転軸部21には回転巻上羽根30が設けられ、上側の回転軸部22にはバッフル40が設けられている。2つの回転軸部21,22は、互いに逆方向に回転可能に連結されている。
【0019】
下側の回転軸部21の下端部は、乾燥槽11の底面部14より下方に突出し、下駆動モータ17にギヤボックス16を介して動力伝達可能に連結されている。下側の回転軸部21は、下駆動モータ17によって一方向に軸心を中心に回転するように設定されている。ここで一方向は、
図1中の矢印R1で示すように平面視で時計回りの方向であり、以下に「一方向R1」とする。
【0020】
一方、上側の回転軸部22の上端部は、乾燥槽11の上面部15の上方に突出し、上駆動モータ19にギヤボックス18を介して動力伝達可能に連結されている。上側の回転軸部22は、上駆動モータ19によって前記一方向R1とは逆方向に軸心を中心に回転するように設定されている。ここで逆方向は、
図1中の矢印R2で示すように平面視で反時計回りの方向であり、以下に「逆方向R2」とする。
【0021】
<<逆回転連結部23>>
回転軸20は、上下の回転軸部21,22の対向し合う端部同士を、互いに逆向きに回転可能に連結する逆回転連結部23を備えている。
図4に示すように、逆回転連結部23は、下側の回転軸部21の上端側で同軸上に上方に延びる係合凸部231と、上側の回転軸部22の下端側で同軸上に上方に凹み、前記係合凸部231が回転可能に嵌入する被係合凹部232と、を備えている。
【0022】
係合凸部231は、下側の回転軸部21の上端側より縮径した軸状に設けられている。一方、被係合凹部232は、上側の回転軸部22の下端側が筒状に形成され、その内側として設けられている。なお、逆の態様として、下側の回転軸部21の上端側に被係合凹部232を設ける一方、上側の回転軸部22の下端側に係合凸部231を設けるように構成しても良い。また、係合凸部231の外周側と被係合凹部232の内周側の間には、複数のベアリング233~235が配置されている。
【0023】
各ベアリング233~235は、それぞれ係合凸部231が被係合凹部232に対して軸心を中心に回転することを円滑にするものであり、その構成は一般的であるので詳細な説明は省略する。また、各ベアリング233~235の具体的な数や配置は、適宜定め得る設計事項である。なお、上下のベアリング233,234の間の係合凸部231には、上下のベアリング間の距離を保つためのカラー236が外装されている。
【0024】
上側の回転軸部22の下端側にて、被係合凹部232の開口周囲にはフランジ237が設けられている。このフランジ237と、下側の回転軸部21の上端側にて係合凸部231の基端周囲の段差面と間には、リング状のプレート238が配置されている。プレート238は、フランジ237と一体に固定されており、係合凸部231の回転を阻害することなく各ベアリング233~235の抜け止めを防止している。
【0025】
<回転巻上羽根30について>
図1に示すように、回転軸20のうち下側の回転軸部21に回転巻上羽根30が設けられている。下側の回転軸部21は、下駆動モータ17の駆動によって一方向R1へ回転するため、回転巻上羽根30は、回転軸部21と同期して一方向R1へ回転する。回転巻上羽根30は、回転軸20を中心とする円周方向に並ぶように配された複数の基羽根31からなり、本実施形態では3枚の基羽根31を備えている。各基羽根31は、互いに同一形状に形成されており、例えば位相が120度ずれた状態に配置されている。
【0026】
図2に示すように、各基羽根31は、それぞれ下側の回転軸部21に放射状に固定されたアーム32の先端より連続して延びるように支持されている。アーム32は、基羽根31の構成の一部と見做しても良い。本実施形態では、基羽根31とアーム32とは一体成形されたものであり、一枚の金属板を裁断して曲げ加工することにより構成されている。各基羽根31は、それぞれ平面視で回転軸20を中心とする円周方向に延び、被乾燥物をアーム32の先端に連なる始端から載せて終端まで移動させつつ巻き上げ可能な平坦面31a(
図5参照)を備えている。
【0027】
各基羽根31の平坦面31aは、それぞれ下側の回転軸部21の回転方向である一方向R1(
図1参照)と逆方向に向かって、始端から終端にかけて斜め上方に弧状に延びるように形成されている。ここで平坦面31aは、平面視で360度の円周範囲内の長さで一定幅に延び、かつ平面視で同一円周上に並ぶ隣り合う基羽根31同士の平坦面31aが始端から終端にかけて円周方向に互いに重ならない長さに設定されている。
【0028】
このように回転巻上羽根30の各基羽根31は、被乾燥物を平坦面31a上に載せて巻き上げつつ、遠心力P(
図5参照)と慣性力によって、乾燥槽11の伝熱面12に薄膜状に押し付けるように構成されている。なお、各基羽根31の平坦面31aの外周端と伝熱面12との間には、各基羽根31の回転を許容する隙間U(
図5参照)が設けられている。また、各基羽根31の終端寄りの途中箇所は、回転軸部21から径方向に延在する補助アーム33に支持されている。ここで補助アーム33の先端は、各基羽根31における平坦面の裏側に固定されている。
【0029】
<バッフル40について>
図1に示すように、回転軸20のうち上側の回転軸部22にバッフル40が設けられている。バッフル40は、回転巻上羽根30より上方に設けられ、伝熱面12に沿って薄膜状に上昇する被乾燥物を下方に落下させるものである。上側の回転軸部22は、上駆動モータ19の駆動により逆方向R2へ回転し、バッフル40は、回転軸部22と同期して逆方向R2へ回転する。
【0030】
バッフル40は、矩形の平板状に形成されており、回転軸20を中心とする円周方向に複数が並ぶように配されている。
図2に示すように、本実施形態では3枚のバッフル40が設けられており、各バッフル40は、例えば回転軸20を中心として円周方向に120度ずつ等間隔に並ぶように配置されている。各バッフル40は、それぞれ同一形状であり、回転巻上羽根30の回転方向である一方向R1と対向する面を備えた平板状に形成されている。
【0031】
図3に示すように、各バッフル40は、それぞれ回転軸部22に放射状に固定されたアーム41を介して、回転軸部22側を向く面が伝熱面12の円周接線方向に対して略45度に傾き、前記一方向R1と対向するように設定されている。このようにバッフル40は、伝熱面12に沿って薄膜状に上昇してきた被乾燥物を接触させて受け止め、回転巻上羽根30の回転方向とは逆方向R2の回転駆動も相俟って、被乾燥物を積極的に下方に落下させるように構成されている。なお、各バッフル40の外端縁と伝熱面12との間にも、各バッフル40の回転を許容する隙間が設けられている。
【0032】
<乾燥装置10の作用>
次に、第1実施形態に係る乾燥装置10の作用について説明する。
図1において、乾燥槽11の上面部15等にある供給口(図示省略)より被乾燥物を投入する。乾燥槽11では、ボイラーからジャケット13内に蒸気が導入され、伝熱面12が加熱されている。そして、下駆動モータ17と上駆動モータ19とを、それぞれ同時に駆動する。
【0033】
図2に示すように、下側の回転軸部21と回転巻上羽根30は、平面視で時計回りの一方向R1へ回転する。一方、上側の回転軸部22とバッフル40は、平面視で反時計回りの逆方向R2へ回転する。このように、回転巻上羽根30とバッフル40は、互いに逆方向に回転する。なお、回転巻上羽根30とバッフル40との回転速度は、必ずしも同一とする必要はなく、例えばバッフル40の方は回転速度を下げて、回転巻上羽根30よりもゆっくりと回転させても良い。
【0034】
乾燥槽11内では、回転巻上羽根30の回転によって、底面部14上の被乾燥物がアーム32に掻き取られ、各基羽根31の始端側にすくい上げられる。各基羽根31の始端にすくい上げられた被乾燥物は、そのまま平坦面31a上を終端側に向かって、一方向R1と逆方向に巻き上げられて上昇する。このとき、
図5に示すように、各基羽根31の平坦面31a上の被乾燥物は、遠心力Pと慣性力によって伝熱面12に薄膜状に押し付けられる。
【0035】
図3に示すように、伝熱面12に薄膜状に押し付けられた被乾燥物は、一側で伝熱面12に接触する被加熱面を有すると共に、他側で乾燥槽11内の空間の空気と接触する蒸発面を有する。そして、伝熱面12に接触した被乾燥物は、伝熱面12からの熱により、その場である程度の水分が蒸発する。次いで、伝熱面12への接触時の水分蒸発によって含水率が低くなった被乾燥物は、含水率の高い被乾燥物と入れ換わるようにして蒸発面に移動する。蒸発面に移動した被乾燥物は、空気に晒されることでさらに水分蒸発が進む。
【0036】
被乾燥物は、伝熱面12側から蒸発面へ移動すると同時に、各基羽根31による巻き上げ作用により、後から巻き上げる被乾燥物が先に巻き上げた被乾燥物を連続的に押し、被乾燥物は伝熱面12に沿って上昇していく。これにより、被乾燥物は、伝熱面12から蒸発面へ移動しつつ、伝熱面12に沿って巻き上がり、上昇しつつ効率良く乾燥することになる。
【0037】
そして、伝熱面12に沿って薄膜状に上昇した被乾燥物がバッフル40に到達すると、被乾燥物は、バッフル40に接触することで受け止められて下方に落下する。ここでバッフル40は、前記回転巻上羽根30が回転する一方向R1とは逆向きの逆方向R2に回転しているため、被乾燥物はより積極的に下方に落下することになる。よって、乾燥槽11内で被乾燥物が上昇ないし落下する循環が連続的となり、被乾燥物の上昇に伴う乾燥と落下時の蒸発もいっそう迅速に連続する。
【0038】
このように、被乾燥物が迅速に連続して落下することにより、被乾燥物の循環に伴う落下時の蒸発速度は速くなる。また、伝熱面12に沿って被乾燥物が上昇する量も速度も増加し、伝熱面12における境面乱流接触が速くなり、被乾燥物の全体の乾燥効率をいっそう高めることができる。これにより、従来技術のように固定したバッフルでは、乾燥がバッチ処理的となって蒸発速度が固定化され抑えられていた問題を、バッフルの数を増やして被乾燥物が堆積する虞を生じさせることなく効果的に解決することができる。
【0039】
なお、乾燥が完了した被乾燥物は、伝熱面12の加熱や下駆動モータ17と上駆動モータ19の駆動を停止した後、乾燥槽11の底面部14付近にある排出口から外部に取り出すことになる。また、乾燥槽11の内部で生じた廃蒸気は、外部に排出された後、例えば直接燃焼させる脱臭炉や、白金触媒等を用いた脱臭器により脱臭処理されてから外気に放出される。
【0040】
本実施形態に係る乾燥装置10によれば、回転巻上羽根30とバッフル40とを、それぞれ別々の駆動モータ17,19によって駆動するため、互いに異なる回転速度で回転することも可能となる。ここで回転巻上羽根30とバッフル40とを設けた各回転軸部21,22は、互いに逆方向の回転であっても、また回転速度の異同に関わらず、逆回転連結部23を介して同軸上に連結可能であるため、1つの回転軸20として構成することができる。
【0041】
<逆回転伝達部24について>
前述した逆回転連結部23の変形例として、
図6および
図7に示すように、逆回転伝達部24によって、2つの各回転軸部21,22を互いに逆回転可能に連結すると共に、一つの駆動モータによって駆動するように構成することができる。
図6は、逆回転伝達部24を拡大して示す縦断面図であり、
図7は、逆回転伝達部24の要部を分解して示す斜視図である。なお、前述した逆回転連結部23と同種の部位については、同一符号を付し重複した説明を省略する。
【0042】
図7は、逆回転伝達部24の部品を概略的に示し、必ずしも厳密に図示したものではない。また、各図において、逆回転伝達部24の各構成要素の相対的な寸法関係や形状等は、適宜設計変更されるものであり、実際とは異なる場合がある。逆回転伝達部24によれば、各図において図示省略した駆動モータは、下側の回転軸部21の下端部または上側の回転軸部22の上端部のいずれか一方に動力伝達可能に連結すれば良い。
【0043】
図6に示すように、逆回転伝達部24は、前述した逆回転連結部23と共通する係合凸部241および被係合凹部242に加えて、これらの周りに配置された一対の第1かさ歯車25A,25Bと、各第1かさ歯車25A,25Bに対して回転可能に噛み合う複数の第2かさ歯車26,26…と、を備えている。また、係合凸部241の先端側の外周側と被係合凹部242の内周側の間には、第1実施形態と同様に複数のベアリング233~235およびカラー236等が設けられている。
【0044】
一対の第1かさ歯車25A,25Bは、一方の第1かさ歯車25Aが係合凸部241の基端側に固定され、他方の第1かさ歯車25Bが被係合凹部242の開口周囲のフランジ237に固定され、互いに同軸上で対向するように配置されている。
図7に示すように、複数の第2かさ歯車26,26…は、本実施形態では4つが上下の第1かさ歯車25A,25Bの間で、回転軸20の周りに間隔を置いて配置されている。
図6に示すように、各第2かさ歯車26は、それぞれ中心線Lに対して径方向に姿勢調整された歯車軸27の周りに回転可能であり、かつ各第1かさ歯車25A,25Bに対して回転可能に噛み合っている。
【0045】
係合凸部241の基端側で一方の第1かさ歯車25Aの上側には、円盤状のプレート28が固定されている。各第2かさ歯車26の歯車軸27の一端には、それぞれ車輪29が軸支されている。各車輪29は、それぞれプレート28に対して回転可能に当接している。このような状態で各第2かさ歯車26は、上下の第1かさ歯車25A,25Bに対して回転可能に噛み合っており、駆動モータに連結された上側の回転軸部22と共に第1かさ歯車25Aが逆方向R2へ回転すると、各第2かさ歯車26を介して下側の第1かさ歯車25Bと共に回転軸部21が一方向R1へ回転する。
【0046】
逆回転伝達部24によれば、駆動モータにより上側の回転軸部22が逆方向R2に回転すると、この回転軸部22に固定された一方の第1かさ歯車25Aも逆方向R2へ回転する。一方の第1かさ歯車25Aの回転は、4つの第2かさ歯車26を介して他方の第1かさ歯車25Bに逆転して伝達される。よって、他方の第1かさ歯車25Bが固定されている下側の回転軸部21は、下段の回転巻上羽根30と共に一方向R1へ回転する。
【0047】
このように、回転巻上羽根30とバッフル40とは、それぞれ1つの駆動モータによって駆動するため、2つの駆動モータを備える場合に比べてコストを低減することができる。なお、逆回転伝達部24は、図示した構成に限られるものではなく、回転力を逆転して伝達できるものであれば別の構成であっても良い。
【0048】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は前述した各種実施形態に限定されるものではない。前述した各種実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0049】
先ず、本発明は、被乾燥物が投入される縦型の円筒形状をなし内周壁が伝熱面12として加熱される乾燥槽11と、該乾燥槽11内で略鉛直な中心線Lに沿って延びる回転軸20に設けられた回転巻上羽根30とを有する乾燥装置10において、
前記回転巻上羽根30の回転により、前記乾燥槽11内の被乾燥物は前記伝熱面12に薄膜状に押し付けられながら上昇可能であり、
前記回転巻上羽根30より上方に設けられ、前記伝熱面12に沿って薄膜状に上昇する被乾燥物を下方に落下させるバッフル40を有し、該バッフル40は、前記回転巻上羽根30の回転方向と逆方向に回転可能であることを特徴とする。
【0050】
このような乾燥装置10によれば、乾燥槽11内で被乾燥物が上昇ないし落下を繰り返す循環回数を増やすことができる。従って、バッフル40に被乾燥物を堆積させることなく、乾燥槽11内における被乾燥物の循環回数を増やすことにより、被乾燥物の蒸発速度を上げることを可能とし、乾燥効率をいっそう高めることができる。
【0051】
また、本発明では、前記バッフル40は、前記伝熱面12に沿って2つ以上が円周方向に等間隔に並んで配置され、それぞれ前記回転巻上羽根30の回転方向と対向する板状に形成されたことを特徴とする。
【0052】
このようなバッフル40によれば、乾燥槽11内で伝熱面12に沿って薄膜状に上昇してきた被乾燥物を、簡易な構成でもって被乾燥物が到達して接触するだけで、積極的に下方に落下させることが可能となる。
【0053】
また、本発明では、前記回転軸20は、同軸上で上下に連なる2つの回転軸部21,22からなり、下側の回転軸部21に前記回転巻上羽根30が設けられ、上側の回転軸部22に前記バッフル40が設けられ、
前記2つの回転軸部21,22は、互いに逆方向に回転可能に連結されたことを特徴とする。
このような構成によれば、回転巻上羽根30とバッフル40とを、それぞれ同軸上の回転軸部21,22によって、互いに逆方向に回転させることができる。
【0054】
また、本発明では、前記下側の回転軸部21の下端部に連結され、該下側の回転軸部21を一方向に軸心を中心に回転させる下駆動モータ17と、
前記上側の回転軸部22の上端部に連結され、該上側の回転軸部22を前記一方向とは逆方向に軸心を中心に回転させる上駆動モータ19とを有し、
前記回転軸20は、前記2つの回転軸部21,22の対向し合う端部同士を、互いに逆向きに回転可能に連結する逆回転連結部23を備えることを特徴とする。
【0055】
このような構成によれば、回転巻上羽根30とバッフル40とは、それぞれ別々の駆動モータ17,19によって駆動するため、互いに異なる回転速度で回転させることも可能となる。ここで各回転軸部21,22は、互いに逆方向の回転であっても、また回転速度の異同に関わらず、逆回転連結部23を介して同軸上に連結可能であり、1つの回転軸20として構成することができる。
【0056】
また、本発明では、前記逆回転連結部23は、
前記2つの回転軸部21,22のいずれか一方の端部で同軸上に延びる係合凸部231と、
前記2つの回転軸部21,22のいずれか他方の端部で同軸上に凹み、前記係合凸部231が回転可能に嵌入する被係合凹部232とを備えることを特徴とする。
【0057】
このような構成によれば、互いに逆方向に回転する2つの回転軸部21,22の端部同士を、それぞれの回転を妨げることなく、簡易な構成でもって同軸上に連結することができる。ここで係合凸部231の外周側と被係合凹部232の内周側の間には、ベアリング233~235を介在させれば、より円滑に互いに逆方向に回転する状態を維持することができる。
【0058】
また、本発明では、前記2つの回転軸部21,22のいずれか一方の上端部または下端部に連結され、該回転軸部21,22を一方向に軸心を中心に回転させる1つの駆動モータを有し、
前記回転軸20は、前記2つの回転軸部21,22の対向し合う端部同士を、前記駆動モータが連結された一方から他方へ該駆動モータの回転力を逆転させて伝達可能に連結する逆回転伝達部24を備えることを特徴とする。
【0059】
このような構成によれば、1つの駆動モータに連結された一方の回転軸部21/22が、先ず一方向R1(逆方向R2)へ回転する。他方の回転軸部22/21は、逆回転伝達部24を介して駆動モータの回転力が逆転して伝達されるため、逆方向R2(一方向R1)へ回転する。これにより、2つの回転軸部21,22を、それぞれ別々の駆動モータによって逆向きに回転させる場合に比べて、コストを低減することができる。
【0060】
また、本発明では、前記逆回転伝達部24は、
前記2つの回転軸部21,22のいずれか一方の端部で同軸上に延びる係合凸部241と、
前記2つの回転軸部21,22のいずれか他方の端部で同軸上に凹み、前記係合凸部241が回転可能に嵌入する被係合凹部242と、
前記係合凸部241および前記被係合凹部242の周りに設けられ、それぞれ同軸上に配置された一対の第1かさ歯車25A,25Bと、
前記一対の第1かさ歯車25A,25Bの間で、前記回転軸20の周りに間隔を置いて配置され、それぞれ前記回転軸20に対して径方向に姿勢調整された歯車軸27周りに回転可能であり、かつ前記各第1かさ歯車25A,25Bに対して回転可能に噛み合う複数の第2かさ歯車26とを備えることを特徴とする。
【0061】
このような構成によれば、2つの回転軸部21,22の端部同士を同軸上に連結した状態で、1つの駆動モータに連結された一方の回転軸部21/22に固定された第1かさ歯車25Aが一方向R1(逆方向R2)へ回転すると、他方の回転軸部22/21に固定された第1かさ歯車25Bが、第2かさ歯車26を介して逆方向R2(一方向R1)へ回転する。従って、駆動モータに連結された一方の回転軸部21/22の回転力を、他方の回転軸部22/21に対して、確実に逆方向に変換して伝達することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば前記乾燥槽11は、全体的に寸胴の円筒形であるが、他に例えば、乾燥槽11の上面部15から底面部14に向かって横断面積が漸次縮径する逆円錐台形に構成しても良い。また、前記回転軸20は、上下の回転軸部21,22が逆回転連結部23を介して連なっているが、逆回転連結部23を設けずに、上下の回転軸部21,22を互いに分離した状態で同軸上に軸支しても良い。
【0063】
また、前記回転巻上羽根30は、3つの基羽根31を備えるが、基羽根31の数は、2つ、あるいは4つ以上に構成しても良い。また、回転巻上羽根30は、1段だけとは限らず、2段あるいは3段以上が回転軸部21に上下に並ぶように設けても良い。さらに、前記バッフル40は、矩形板状のものを3つ設けたが、バッフル40の具体的な形状や数、それに配置は、適宜定め得る設計事項であり、例えば乾燥槽11の内径寸法に応じて、数を増やしたり形状を大きくすると良い。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の乾燥装置においては、様々な種類の被乾燥物に対応可能であり、特に、固形物や半固形物を含む被乾燥物や粘性の強い被乾燥物であっても、効率良く乾燥させることが可能な乾燥装置として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…乾燥装置
11…乾燥槽
12…伝熱面
13…ジャケット
14…底面部
15…上面部
17…下駆動モータ
19…上駆動モータ
20…回転軸
21…下側の回転軸
22…上側の回転軸部
23…逆回転連結部
24…逆回転伝達部
30…回転巻上羽根
31…基羽根
32…アーム
40…バッフル
41…アーム