(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134776
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】肩関節用サポーター
(51)【国際特許分類】
A61F 5/02 20060101AFI20240927BHJP
A41D 13/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A41D13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045130
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510201562
【氏名又は名称】ディーエムチェーン協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】細江 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】▲かせ▼野 英憲
(72)【発明者】
【氏名】福畑 康史
【テーマコード(参考)】
3B211
4C098
【Fターム(参考)】
3B211AB08
4C098AA03
4C098BB09
4C098BC03
4C098BC13
(57)【要約】
【課題】回旋筋腱板の動きを適切にサポートでき、及び/又は着用者が肩関節の可動域を無理なく拡げることのできる肩関節用サポーターを提供する。
【解決手段】肩関節用サポーター1は、着用者の腹部から一方の肩部を介して該肩部下方の上腕部までを被覆する本体部2と、本体部2の上腕部に対応する部分の下部に支持され、当該支持部分20から着用者の上腕部背面側に回って脇下から正面側に引き出され、一方の肩部を通り背中に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設される、伸縮性を有する帯状体からなる第1ベルト部3と、本体部2の上腕部に対応する部分の下部に支持され、当該支持部分20から着用者の上腕部正面側に回って第1ベルト部3と交差しながら脇下から背面側に引き出され、一方の肩部で第1ベルト部3と交差して、胸部に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設される、伸縮性を有する帯状体からなる第2ベルト部4とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部から一方の肩部を介して該肩部下方の上腕部までを被覆する本体部と、
前記本体部の上腕部に対応する部分の下部に支持され、当該支持部分から着用者の上腕部背面側に回って脇下から正面側に引き出され、一方の肩部を通り背中に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設される、伸縮性を有する帯状体からなる第1ベルト部と、
前記本体部の上腕部に対応する部分の下部に支持され、当該支持部分から着用者の上腕部正面側に回って前記第1ベルト部と交差しながら脇下から背面側に引き出され、一方の肩部で前記第1ベルト部と交差して、胸部に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設される、伸縮性を有する帯状体からなる第2ベルト部とを備えることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項2】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を前記本体部に位置決めする一又は複数のベルトループを備えることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項3】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
着用者の上腕部に対応する部分に配設され、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部が挿通されて前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を肩部方向へ案内する一又は複数の第1のベルトループを備えることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項4】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
着用者の背中及び胸部に対応する部分に配設されて、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部が挿通されて前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を他方の肩部下方の脇下方向へ案内する一又は複数の第2のベルトループを備えることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項5】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
着用者の肩部に対応する部分に配設され、前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部が挿通されて、その内部で前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部を交差状態とする第3のベルトループを備えることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項6】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
前記本体部が、その下縁の全周にわたって配設される被係着部分と、
前記被係着部分の一端側であって当該被係着部分に係着され、前記本体部に配設される係着部分とを備えることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項7】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部が、前記本体部の上腕部に対応する部分の下部に位置する各々の端部を互いに連結された、連続する一つの帯状体からなることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項8】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部が、前記本体部の着用者の上腕部に対応する部分において、着用者の肘部側となる一側端のみが前記本体部に固着されることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項9】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
着用者の上腕部に対応する部分の下部に配設され、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部の端部が挿入される第4のベルトループを備えることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項10】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
前記本体部が、その上縁に沿って配設される被係着部分を備え、
前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部が、前記被係着部分に沿って他方の肩部下方の脇下方向へ案内されることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【請求項11】
請求項1に記載の肩関節用サポーターにおいて、
前記本体部が、着用者の腹部から一方の肩部までを被覆する上体被覆部分と、前記上体被覆部分に連続して縫着され、一方の肩部下方の上腕部を被覆する上腕被覆部分とを備え、
前記上腕被覆部分が、長手方向における伸縮抵抗を内側よりも外側が大きくなるように形成されることを
特徴とする肩関節用サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回旋筋腱板の動きを適切にサポートでき、及び/又は着用者が肩関節の可動域を無理なく拡げることのできる肩関節用サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
肩関節周囲炎は、肩関節を構成する骨、軟骨、靱帯、腱などが老化して、肩関節の周囲の組織に炎症が起きることが主な原因と考えられており、発症すると日常動作や運動時の痛みに加えて安静時や夜間にも痛みが出現し、徐々に関節拘縮が現れて肩の可動域が制限されるようになる。このような肩関節周囲炎は、中高年に多く発症することから、五十肩、四十肩とも呼ばれている。
【0003】
肩関節周囲炎の病期は、炎症期、拘縮期、回復期に分類され、炎症期においては、肩を動かすときだけでなく、安静時や夜間にも痛みがあるため、肩を安静とし、場合によっては薬を服用する。
一方で、拘縮期は、肩が硬くなり、肩の可動域が狭くなるため、治療として、肩の痛みを強くしないように肩の可動域を増やしていき、回復期は、肩の痛みがほとんどないため、積極的に肩を動かし、その可動域を更に拡げるように治療(リハビリ)が進められる。
【0004】
ところで、肩関節を保護するものとして、これまで各種サポーターが開発されている。
例えば、従来の肩関節用バンデージは、上腕を取り囲む弾性材料製のチューブ状区分と、該チューブ状区分に接続しかつ肩をおおう弾性材料製のキャップ状区分と、チューブ状区分の、キャップ状区分とは離れた方の縁部の上縁範囲においてチューブ状区分に取り付けられていてまず初め該チューブ状区分のまわりを螺旋状に延び、次いでキャップ状区分の一方の側縁に沿って延び、さらに他方の肩のわきの下を通って延びる第1の伸縮ベルトと、チューブ状区分の、キャップ状区分とは離れた方の縁部の上側範囲においてチューブ状区分に取り付けられていて、まず初め第1の伸縮ベルトとは逆向きに該伸縮ベルトと交差するようにチューブ状区分のまわりを螺旋状に延び、次いでキャップ状区分の他方の側縁に沿って延び、さらに第1の伸縮ベルトと交差して背中を横切り、そこで第1の伸縮ベルトと結合された第2の伸縮ベルトとから成る(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、従来の肩関節用バンデージは、上腕を取り囲む弾性材料製のチューブ状区分と、該チューブ状区分に接続しかつ肩をおおう弾性材料製のキャップ状区分と、チューブ状区分の、キャップ状区分とは離れた方の縁部の上部範囲においてチューブ状区分に取り付けられていて、チューブ状区分のまわりを螺旋状に延び、キャップ状区分の一方の側縁に沿って延び、次いで他方の肩の下を通って延びる第1の伸縮ベルトと、チューブ状区分の、キャップ状区分とは離れた方の縁部の上部範囲においてチューブ状区分に取り付けられていて、第1の伸縮ベルトとは逆向きに第1の伸縮ベルトと交差しながらチューブ状区分のまわりを螺旋状に延び、キャップ状区分の他方の側縁に沿って延び、次いで新たに第1の伸縮ベルトと交差しながら背中を越えて延び、第1の伸縮ベルトに結合可能な第2の伸縮ベルトとを備えている形式のものにおいて、第1の伸縮ベルトと第2の伸縮ベルトとが交差部の範囲において互いに縫い付けられており、第1の伸縮ベルトと第2の伸縮ベルトとが、交差部に接続している各1つの結合区分をそれぞれ有しており、この場合一方の結合区分が背中を緊張状態で締め付けており、他方の結合区分が胸部を緊張状態で締め付けている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-161963号公報
【特許文献2】特開平5-131006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、上述したような肩関節周囲炎の拘縮期や回復期等の痛みを伴う肩関節のリハビリの場合、発症者に負担の少ない範囲で肩関節の可動域を拡げながら、柔軟性を取り戻していく。肩関節の各種の動き、特に、外転や屈曲を行わせるには、肩関節下方の上腕部を持ち上げて上腕骨頭を関節窩の適切な位置に引き付け、回旋筋腱板の動きを適切にサポートする必要がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている肩関節用バンデージは、上腕部を第1の伸縮ベルトと第2の伸縮ベルトとで螺旋状に支持しているものの、これら伸縮ベルトは着用者の背中で交差するように設計され、上腕部が着用者の背中側に引っ張られる結果、上腕部の持ち上げ力が十分でなく、また、上腕骨頭を関節窩の適切な位置に引き付けられず、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができない。また、第1の伸縮ベルト及び第2の伸縮ベルトは、チューブ状区分及び/キャップ状区分において、ポケットをとおして案内されてもよいものとされているが、当該ポケットは、第1の伸縮ベルト及び第2の伸縮ベルトの背中での交差をより安定的にするものであり、同様に、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることを補助するものではない。
【0009】
また、特許文献2に開示されている肩関節用バンデージは、第1の伸縮ベルトと第2の伸縮ベルトとが交差部にて互いに縫い付けられており、第1の伸縮ベルト及び第2の伸縮ベルトによる伸縮力は着用者の上腕部の範囲においてのみ作用し、上腕部の持ち上げを十分に補助できるものではなく、その効果は限定的である。
【0010】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、回旋筋腱板の動きを適切にサポートでき、及び/又は着用者が肩関節の可動域を無理なく拡げることのできる肩関節用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る肩関節用サポーターは、着用者の腹部から一方の肩部を介して該肩部下方の上腕部までを被覆する本体部と、前記本体部の上腕部に対応する部分の下部に支持され、当該支持部分から着用者の上腕部背面側に回って脇下から正面側に引き出され、一方の肩部を通り背中に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設される、伸縮性を有する帯状体からなる第1ベルト部と、前記本体部の上腕部に対応する部分の下部に支持され、当該支持部分から着用者の上腕部正面側に回って前記第1ベルト部と交差しながら脇下から背面側に引き出され、一方の肩部で前記第1ベルト部と交差して、胸部に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設される、伸縮性を有する帯状体からなる第2ベルト部とを備えるものである。
【0012】
このように本発明においては、前記第1ベルト部が、前記支持部分から着用者の上腕部背面側に回って脇下から正面側に引き出され、一方の肩部を通り背中に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設され、前記第2ベルト部が、前記支持部分から着用者の上腕部正面側に回って第1ベルト部と交差しながら脇下から背面側に引き出され、一方の肩部で第1ベルト部と交差して、胸部に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設されることから、前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部で着用者の三角筋や棘上筋を支持しながら、上腕部から肩部を介して他方の肩部下方の脇下まで配設される各ベルト部の長さに応じた伸縮力で上腕部を持ち上げることとなり、回旋筋腱板の動きを適切にサポートし、また、着用者が肩関節の可動域を無理なく拡げることができる。
【0013】
また、前記第1ベルト部と前記第2ベルト部とが、着用者の上腕部内側及び肩部で交差するように構成されていることから、これらベルト部による伸縮力を正面側又は背面側に偏らせることなく作用させることとなり、上腕骨頭を関節窩の適切な位置に引き付け、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【0014】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を前記本体部に位置決めする一又は複数のベルトループを備えるものである。
【0015】
このように本発明においては、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を位置決めする一又は複数のベルトループを備える場合には、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を適切な所定の位置へ案内することができることとなり、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【0016】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、着用者の上腕部に対応する部分に配設され、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部が挿通されて前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部を肩部方向へ案内する一又は複数の第1のベルトループを備えるものである。
【0017】
このように本発明においては、一又は複数の前記第1のベルトループが前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を肩部方向へ案内する場合には、着用者の肩部で前記第1ベルト部と前記第2ベルト部とを交差状態とすることができることとなり、より確実に各ベルト部による伸縮力を上腕部に作用させるとともに、着用者の前方及び後方に作用させることができる。
【0018】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、着用者の背中及び胸部に対応する部分に配設されて、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部が挿通されて前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を他方の肩部下方の脇下方向へ案内する一又は複数の第2のベルトループを備えるものである。
【0019】
このように本発明においては、一又は複数の前記第2のベルトループが前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部を一方の肩部から他方の肩部下方の脇下方向へ案内する場合には、着用者の肩部で前記第1ベルト部と前記第2ベルト部とを交差状態とすることができることとなり、より確実に各ベルト部による伸縮力を上腕部に作用させるとともに、着用者の前方及び後方に作用させることができる。
【0020】
また、前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部を他方の肩部下方の脇下方向へ案内することから、滑車の原理により、上腕部に対してより強い伸縮力を作用させることができる。
【0021】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、着用者の肩部に対応する部分に配設され、前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部が挿通されて、その内部で前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部を交差状態とする第3のベルトループを備えるものである。
【0022】
このように本発明においては、前記第3のベルトループが、その内部で前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部を交差状態とする場合には、着用者の肩部の適切な位置で前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部を交差させることとなり、使用による時間経過やなで肩による前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部の交差位置のズレを防ぐことができる。
【0023】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、前記本体部が、その下縁の全周にわたって配設される被係着部分と、前記被係着部分の一端側であって当該被係着部分に係着され、前記本体部に配設される係着部分とを備えるものである。
【0024】
このように本発明においては、下縁の全周にわたって配設される前記被係着部分と、この前記被係着部分に係着される前記係着部分とを備える場合には、前記係着部分と係着した前記被係着部分が着用者の腹部にてアンカーとして機能することとなり、上腕部の下部においてアンカーとして機能する前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部とともに、これら各ベルト部に生じる伸縮力を最大限に発揮させることができる。
【0025】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部が、前記本体部の上腕部に対応する部分の下部に位置する各々の端部を互いに連結された、連続する一つの帯状体から構成されるものである。
【0026】
このように本発明においては、連続する一つの帯状体から前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部が構成される場合には、着用者の上腕部に対応する部分の下縁において、前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部の肩部方向への伸縮力を途切れさせることなく作用させることとなり、より効果的に着用者の上腕部の持ち上げ動作を補助することができる。
【0027】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部が、前記本体部の着用者の上腕部に対応する部分において、着用者の肘部側となる一側端のみが前記本体部に固着されるものである。
【0028】
このように本発明においては、着用者の肘部側となる第1ベルト部及び/又は第2ベルト部の一側端のみが前記本体部に固着される場合には、各ベルト部の前記本体部への縫着範囲における伸縮力を利用することができることとなり、より強い伸縮力で着用者の上腕部の持ち上げ動作を補助することができる。
【0029】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、着用者の上腕部に対応する部分の下部に配設され、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部の各々の端部が挿入される第4のベルトループを備えるものである。
【0030】
このように本発明においては、前記第1ベルト部及び/又は前記第2ベルト部の各々の端部が挿入される前記第4のベルトループが、着用者の上腕部に対応する部分の下部に配設される場合には、前傾姿勢などの着用者の姿勢の状態にかかわらず上腕部を肩部方向に持ち上げることとなり、上腕骨頭を関節窩の適切な位置に引き付け、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【0031】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、前記本体部が、その上縁に沿って配設される被係着部分を備え、前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部が、前記被係着部分に沿って他方の肩部下方の脇下方向へ案内されるものである。
【0032】
このように本発明においては、前記被係着部分に沿って前記第1ベルト部及び前記第2ベルト部が他方の肩部下方の脇下方向へ案内される場合には、着用者の肩部で前記第1ベルト部と前記第2ベルト部とを交差状態とすることができることとなり、より確実に各ベルト部による伸縮力を上腕部に作用させるとともに、着用者の前方及び後方に作用させることができる。
【0033】
本発明に係る肩関節用サポーターは、必要に応じて、前記本体部が、着用者の腹部から一方の肩部までを被覆する上体被覆部分と、前記上体被覆部分に連続して縫着され、一方の肩部下方の上腕部を被覆する上腕被覆部分とを備え、前記上腕被覆部分が、長手方向における伸縮抵抗を内側よりも外側が大きくなるように形成されるものである。
【0034】
このように本発明においては、長手方向における伸縮抵抗を内側よりも外側が大きくなるように形成される前記上腕被覆部分を備える場合には、上腕部の肩部方向への持ち上げを補助することとなり、上腕骨頭を関節窩に引き付け、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの展開状態を示す正面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの展開状態を示す背面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの内部構造を示す要点部拡大図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの展開状態の他の例を示す正面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの展開状態の他の例を示す背面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターの各ベルト部における伸縮力の作用について説明するための概略図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る肩関節用サポーターを装着した際の平面図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る肩関節用サポーターを装着した際の他の例を示す平面図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る肩関節用サポーターを装着した際の他の例を示す平面図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る肩関節用サポーターの展開状態を示す正面図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態に係る肩関節用サポーターの展開状態を示す背面図である。
【
図16】本発明の第3の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図17】本発明の第3の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図18】本発明の第3の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図19】本発明の第3の実施形態に係る肩関節用サポーターの他の例を示す概略図である。
【
図20】本発明の第4の実施形態に係る肩関節用サポーターの展開状態を示す正面図である。
【
図21】本発明の第4の実施形態に係る肩関節用サポーターの展開状態を示す背面図である。
【
図22】本発明の第4の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図23】本発明の第4の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【
図24】本発明の第4の実施形態に係る肩関節用サポーターの装着方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の実施形態を開示する。
また、以下の各実施形態では、左肩関節用の肩関節用サポーターを開示しているが、これに限らず、右肩関節用とすることもできる。
【0037】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る肩関節用サポーターについて、
図1ないし
図3、及び
図10を用いて説明する。本実施形態の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
【0038】
本実施形態に係る肩関節用サポーター1は、着用者の腹部から一方の肩部を介して該肩部下方の上腕部までを被覆する本体部2と、本体部2の上腕部に対応する部分の下部に支持され、当該支持部分20から着用者の上腕部背面側に回って脇下から正面側に引き出され、一方の肩部を通り背中に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設される、伸縮性を有する帯状体からなる第1ベルト部3と、本体部2の上腕部に対応する部分の下部に支持され、当該支持部分20から着用者の上腕部正面側に回って第1ベルト部3と交差しながら脇下から背面側に引き出され、一方の肩部で第1ベルト部3と交差して、胸部に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設される、伸縮性を有する帯状体からなる第2ベルト部4とを備える。
【0039】
なお、以下では、肩関節用サポーター1の一例として、左肩関節用、すなわち、着用者の左肩関節における回旋筋腱板の動きを適切にサポートする肩関節用サポーターについて説明する。
【0040】
本体部2は、第1ベルト部3及び第2ベルト部4による締付け力や摩擦から着用者の肌を保護するものであり、着用者が肩関節用サポーター1を装着した際に、少なくとも第1ベルト部3及び第2ベルト部4が配設される部分に設けられる。
【0041】
本実施形態に係る本体部2は、着用者の腹部から左肩部までを被覆する上体被覆部分5と、上体被覆部分5に連続して縫着され、左上腕部を被覆する上腕被覆部分6を備える。
上体被覆部分5は、着用者の腹部から左肩部までの全てを被覆していてもよいし、一部被覆されていない部分を有していてもよい。
【0042】
上体被覆部分5は、伸縮性を有する略三角形状の前身頃5aと、前身頃5aよりも大きく形成され、前身頃5aの側縁部に縫着される、伸縮性を有する略三角形状の後身頃5bとを備え、着用者が肩関節用サポーター1を装着した際には、着用者の右肩部が露出するように構成されている。
【0043】
上体被覆部分5の表面側の上縁全体には、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分7aが配設されている。また、上体被覆部分5の裏面側の被係着部分7aの一端に対応する位置には、面ファスナーのフック面で形成された係着部分7bが形成されている。
係着部分7bは、着用者が肩関節用サポーター1を装着した際に、着用者の体型にあわせて被係着部分7aの他端近傍に係着される。
【0044】
なお、以下では、二つの部材間の係着を面ファスナーのループ面及びフック面を例にとって説明しているが、これに限らず、重なる二つの部材を係着させられるものであれば、他の係着部分と被係着部分の組合せ、例えば、線ファスナー(ジッパー、チャック)、ボタンとボタン穴、ホック(ドットボタン、スナップ)、前カン、尾錠、紐とスピンドルストッパーなどを用いてもよい。
【0045】
上体被覆部分5の表面側の下縁全体には、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分8aが配設されている。また、上体被覆部分5内側の下縁には、装着した際の着用者の左脇腹に対応する部分に、前身頃5aから後身頃5bにかけて面ファスナーのループ面で形成された被係着部分9が配設されている。
一方で、被係着部分8aの一端側(前身頃5a側)の裏面には、被係着部分8aに脱着可能な面ファスナーのフック面で形成された係着部分8bが形成され、また、被係着部分8aの他端側(後身頃5b側)の表面には、被係着部分9に脱着可能な面ファスナーのフック面で形成された係着部分8cが形成されている。
被係着部分7aの他端は、被係着部分8aの他端側において、被係着部分8a及び係着部分8cに挟持された状態で、これらが一体的に縫着されている。
なお、係着部分8bの被係着部分8aへの係着は、上述したように、面ファスナーのループ面、フック面による係着に限らず、その他の係着部分と被係着部分の組合せであってもよい。この場合、係着部分8bは、本体部2の表面に配設されていてもよい。
【0046】
以上のように、下縁の全周にわたって配設される被係着部分8aと、この被係着部分8aに係着される係着部分8bとを備えることから、係着部分8bと係着した被係着部分8aが着用者の腹部にてアンカーとして機能することとなり、上腕部の下部外側においてアンカーとして機能する第1ベルト部3及び第2ベルト部4とともに、これら各ベルト部に生じる伸縮力を最大限に発揮させることができる。
【0047】
第1ベルト部3及び第2ベルト部4は、本体部2の上腕部に対応する部分の下部外側に位置する各々の一端部を互いに連結された、連続する一つの帯状体として構成されている。
なお、第1ベルト部3及び第2ベルト部4は、本体部2の上腕部に対応する部分の下部内側に支持されていてもよいが、下部外側に支持されていることが好ましい。また、第1ベルト部3及び第2ベルト部4は、連続する一つの帯状体とせずに、それぞれ一つの帯状体として構成することもできる。
【0048】
以上のように、連続する一つの帯状体から第1ベルト部3及び第2ベルト部4が構成されることから、着用者の上腕部に対応する部分の下縁において、第1ベルト部3及び第2ベルト部4の肩部方向への伸縮力を途切れさせることなく作用させることとなり、より効果的に着用者の上腕部の持ち上げ動作を補助することができる。
【0049】
第1ベルト部3及び第2ベルト部4の他端側の裏面には、それぞれ面ファスナーのフック面で形成された係着部分10、11が形成されている。
【0050】
第1ベルト部3及び第2ベルト部4の伸縮率は、上体被覆部分5の伸縮率よりも小さく、伸びにくくなっている。
【0051】
第1ベルト部3は、本体部2における上腕被覆部分6の下部に縫着されている。第1ベルト部3は、本体部2における上腕被覆部分6の下部外側において、着用者の肘部側となる一側端のみが縫着されている。第1ベルト部3は、この縫着(支持)部分20から、上腕被覆部分6に巻き付くように、上腕被覆部分6の背面側に回って、着用者の脇下に対応する部分を通って、正面側に引き出されるようになっている。正面側に引き出された第1ベルト部3は、上体被覆部分5と上腕被覆部分6との縫着部分正面側に配設された前記第1のベルトループとしてのベルトループ12に固定されることなく、伸縮自在に挿通されて着用者の肩部に対応する部分方向へ案内されて、この肩部に対応する部分を通り、更に、上体被覆部分5の背面側に配設された前記第2のベルトループとしてのベルトループ13に伸縮自在に挿通されて右脇下に対応する部分に案内されるようになっている。
【0052】
第2ベルト部4は、本体部2における上腕被覆部分6の下部に縫着されている。第2ベルト部4は、本体部2における上腕被覆部分6の下部外側において、着用者の肘部側となる一側端のみが縫着されている。第2ベルト部4は、この縫着(支持)部分20から、上腕被覆部分6に巻き付くように、上腕被覆部分6の正面側に回って、着用者の脇下に対応する部分で第1ベルト部3と交差して、背面側に引き出されるようになっている。背面側に引き出された第2ベルト部4は、上腕被覆部分6の背面側に配設された前記第1のベルトループとしてのベルトループ14に固定されることなく、伸縮自在に挿通されて着用者の肩部に対応する部分方向へ案内されて、着用者の肩部に対応する部分で再度第1ベルト部3と交差して、上体被覆部分5の正面側に配設された前記第2のベルトループとしてのベルトループ15に伸縮自在に挿通されて右脇下に対応する部分に案内されるようになっている。
【0053】
なお、第1ベルト部3及び第2ベルト部4は、いずれか一方のみが上腕被覆部分6の下部外側において着用者の肘部側となる一側端のみが縫着されていてもよいが、第1ベルト部3及び第2ベルト部4による伸縮力を着用者の正面側及び背面側でほぼ均等に作用させる点から、第1ベルト部3及び第2ベルト部4の両方が上腕被覆部分6の下部外側において着用者の肘部側となる一側端のみが縫着されていることが好ましい。
また、前記第1のベルトループとしてのベルトループ12及びベルトループ14は、いずれか一方のみが本体部2に配設されていてもよいし、また、前記第2のベルトループとしてのベルトループ13及びベルトループ15は、いずれか一方のみが本体部2に配設されていてもよい。
【0054】
以上のように、着用者の肘部側となる第1ベルト部3及び/又は第2ベルト部4の一側端のみが本体部2に固着されることから、各ベルト部の本体部2への縫着範囲における伸縮力を利用することができることとなり、より強い伸縮力で着用者の上腕部の持ち上げ動作を補助することができる。
【0055】
また、第1ベルト部3及び/又は第2ベルト部4を位置決めするベルトループ12ないし15を備えることから、第1ベルト部3及び/又は第2ベルト部4を適切な所定の位置へ案内することができることとなり、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【0056】
また、ベルトループ12及び/又はベルトループ14が第1ベルト部3及び/又は第2ベルト部4を肩部方向へ案内することから、着用者の肩部で第1ベルト部3と第2ベルト部4とを交差状態とすることができることとなり、より確実に各ベルト部による伸縮力を上腕部に作用させるとともに、着用者の正面側及び背面側にほぼ均等に作用させることができる。
【0057】
また、ベルトループ13及び/又はベルトループ15が第1ベルト部3及び/又は第2ベルト部4を一方の肩部から他方の肩部下方の脇下方向へ案内することから、着用者の肩部で第1ベルト部3と第2ベルト部4とを交差状態とすることができることとなり、より確実に各ベルト部による伸縮力を上腕部に作用させるとともに、着用者の正面側及び背面側にほぼ均等に作用させることができる。
【0058】
また、第1ベルト部3及び第2ベルト部4を他方の肩部下方の脇下方向へ案内することから、滑車の原理により、上腕部に対してより強い伸縮力を作用させることができる。
【0059】
さらに、ベルトループ12ないし15により、第1ベルト部3及び第2ベルト部4が乱雑に絡まることなく本体部2に保持された状態となることから、より装着性を向上させることができる。
【0060】
第1ベルト部3及び第2ベルト部4は、上述したように、着用者の肘部側となる一側端が所定の範囲で上腕被覆部分6に縫着されているが、反対側となる第1ベルト部3及び第2ベルト部4の他側端は、第1ベルト部3及び第2ベルト部4の伸縮力に影響を及ぼさない範囲において上腕被覆部分6に縫い付けられており(例えば、点状)、これにより、第1ベルト部3及び第2ベルト部4の着用者の肘部側への捲れを防止している。
【0061】
各ベルトループ12ないし15は、案内する第1ベルト部3及び第2ベルト部4に沿って複数設けることもできる。この場合、例えば、複数のベルトループのうち、一つのベルトループを第1ベルト部3及び第2ベルト部4が着用者の肩部で交差する位置の直前に設けて、他のベルトループで第1ベルト部3及び第2ベルト部4を所定の方向へ案内するようにすることもできる。
【0062】
なお、肩関節用サポーター1は、
図4及び
図5に示すように、着用者の上腕部に対応する部分の下部外側に配設され、第1ベルト部3及び第2ベルト部4の各々の端部が挿入される第4のベルトループとしてのベルトループ19を備えていてもよい。
第1ベルト部3及び第2ベルト部4が互いに連結された連続する一つの帯状体として構成されている場合には、第1ベルト部3及び第2ベルト部4の着用者の肘部側となる一側端は本体部2に縫着されている必要はなく、一つの帯状体としての第1ベルト部3及び第2ベルト部4がベルトループ19に挿通される。
なお、ベルトループ19には、第1ベルト部3及び第2ベルト部4のいずれか一方のみが挿入されていてもよい。また、第1ベルト部3及び第2ベルト部4が上腕被覆部分6の下部内側に支持されている場合には、ベルトループ19は、上腕被覆部分6の下部内側に配設される。
【0063】
このように、第1ベルト部3及び/又は第2ベルト部4の各々の端部が挿入されるベルトループ19が、着用者の上腕部に対応する部分の下部に配設されることから、前傾姿勢などの着用者の姿勢の状態にかかわらず上腕部を肩部方向に持ち上げることとなり、上腕骨頭を関節窩の適切な位置に引き付け、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【0064】
また、第1ベルト部3及び第2ベルト部4が互いに連結された連続する一つの帯状体として構成され、本体部2に縫着されていない場合には、ベルトループ19内に挿入される第1ベルト部3及び第2ベルト部4の伸縮力を損なうことなく、第1ベルト部3及び第2ベルト部4を支持することができる。
【0065】
次に、本実施形態に係る肩関節用サポーター1(左肩関節用)の装着方法について、
図6ないし
図9を用いて説明する。
装着に際し、第1ベルト部3及び第2ベルト部4は、それぞれベルトループ13、15まで挿通されているものとする。
【0066】
まず、
図6に示すように、着用者は、右手で肩関節用サポーター1を持ち、本体部2の上腕被覆部分6に左腕を挿通し、肩関節用サポーター1を肩部まで十分に引き上げて、上腕被覆部分6を左上腕部に密着させる。
続けて、右手で上体被覆部分5の被係着部分8aの他端を把持して腹部に押し当てた状態で、左手で上体被覆部分5の一端を把持して右脇下方向に引っ張ることで、上体被覆部分5他端側の係着部分8cを上体被覆部分5内側に配設された被係着部分9に左腹部近傍で係着させるとともに、上体被覆部分5の一端側の係着部分8bを被係着部分8aに右腹部近傍で係着させる。また、上体被覆部分5の一端側の係着部分7bを被係着部分7aに右腹部近傍で係着させる。係着部分8cと被係着部分9との係着、及び係着部分8bと被係着部分8aとの係着により、本体部2を着用者に固定して位置決めするとともに、第1ベルト部3及び第2ベルト部4のアンカーとすることができる。
【0067】
次に、
図7に示すように、着用者の肩関節の回復度に合わせて、第2ベルト部4の他端を右手で把持して右脇下方向へ引っ張り、係着部分11を着用者の体型にあわせて被係着部分7a又は被係着部分8aに係着させる。
【0068】
最後に、
図8に示すように、第1ベルト部3の他端を右手で把持し、右脇下を経由して腹部正面側まで第1ベルト部3を引っ張りながら、第2ベルト部4と右脇下近傍で交差させて、係着部分10を被係着部分8aに係着させることにより、肩関節用サポーター1の装着を完了する(
図9参照)。
【0069】
図9に示すように、右腹部近傍で第1ベルト部3と第2ベルト部4との交差状態をつくることができれば、より各ベルト部による伸縮力を前方又は後方に偏らせることなく、ほぼ均等に作用させることができる。
【0070】
なお、肩関節用サポーター1の装着時において、右手での装着を容易にするために、第1ベルト部3の係着部分10及び第2ベルト部4の係着部分11を、あらかじめ、それぞれ被係着部分7a、8aの適切な位置に係着させ、右手で各ベルト部を把持しやすくしておいてもよい。
【0071】
次に、本実施形態に係る肩関節用サポーター1の第1ベルト部3及び第2ベルト部4における伸縮力の作用について、
図10を用いて説明する。
【0072】
図10(a)に示すように、着用者の上腕部において、第2ベルト部4の伸縮力F2は、これらが縫着されている上腕被覆部分6の下部をアンカーとして、着用者の上腕部内側での第1ベルト部3との交差状態を経て、着用者の肩部に向かって作用する。
【0073】
次に、この肩部に向かった作用する伸縮力F2は、着用者の上体において、第1ベルト部3との肩部での交差位置で途切れることなく、着用者の右脇下に向かって作用する。
この右脇下において、再度、第1ベルト部3との交差状態を経て、被係着部分8aに第2ベルト部4が係着されることにより、左上腕部から右脇下まで連続した伸縮力F2で着用者の上腕部を持ち上げることができる。
【0074】
同様に、
図10(b)に示すように、着用者の上腕部において、第1ベルト部3の伸縮力F1は、これらが縫着されている上腕被覆部分6の下部をアンカーとして、着用者の上腕部内側での第2ベルト部4との交差状態を経て、着用者の肩部に向かって作用する。
【0075】
次に、この肩部に向かった作用する伸縮力F1は、着用者の上体において、第2ベルト部4との肩部での交差位置で途切れることなく、着用者の右脇下に向かって作用する。
この右脇下において、再度、第2ベルト部4との交差状態を経て、被係着部分8aに第1ベルト部3が係着されることにより、左上腕部から右脇下まで連続した伸縮力F2で着用者の上腕部を持ち上げることができる。
【0076】
このように、本実施形態に係る肩関節用サポーター1は、第1ベルト部3が、支持部分20から着用者の上腕部背面側に回って脇下から正面側に引き出され、一方の肩部を通り背中に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設され、第2ベルト部4が、支持部分20から着用者の上腕部正面側に回って第1ベルト部3と交差しながら脇下から背面側に引き出され、一方の肩部で第1ベルト部3と交差して、胸部に沿って一方の肩部から他方の肩部下方の脇下まで配設されることから、第1ベルト部3及び第2ベルト部4で着用者の三角筋や棘上筋を支持しながら、上腕部から肩部を介して他方の肩部下方の脇下まで配設される各ベルト部の長さに応じた伸縮力で上腕部を持ち上げることとなり、回旋筋腱板の動きを適切にサポートし、着用者が肩関節の可動域を無理なく拡げることができる。
【0077】
また、第1ベルト部3と第2ベルト部4とが、着用者の上腕部内側及び肩部で交差するように構成されていることから、これらベルト部による伸縮力を正面側又は背面側に偏らせることなくほぼ均等に作用させることとなり、上腕骨頭を関節窩の適切な位置に引き付け、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【0078】
(本発明の第2の実施形態)
上記第1の実施形態に係る肩関節用サポーターにおいては、本体部の正面側及び背面側に形成されたベルトループにより第1ベルト部及び第2ベルト部を着用者の肩部に案内し、こられを肩部で交差状態とする構成としているが、これに限らず、
図11に示すように、着用者の肩部に対応する部分に十字状のベルトループを設け、このベルトループに第1ベルト部及び第2ベルト部を挿通させて、これらを交差させる構成とすることもできる。
なお、以下では、上記第1の実施形態と重複する記載については、その説明を省略する。
【0079】
上体被覆部分5の着用者の肩部に対応する部分には、十字状のベルトループ16が設けられている。ベルトループ16の中央部分から4方向に延在する矩形部分の端部には、開口部16aないし16dが設けられている。
開口部16aないし16dの大きさ(幅)は、着用者の体型等を考慮して、第1ベルト部3及び第2ベルト部4の幅よりも大きく形成されていてもよい。
【0080】
ベルトループ12に挿通されて着用者の肩部に対応する部分方向へ案内された第1ベルト部3は、ベルトループ16の開口部16a側から挿通されて開口部16c側に引き出されて、上体被覆部分5の背面側に案内される。また、ベルトループ14に挿通されて着用者の肩部に対応する部分方向へ案内された第2ベルト部4は、ベルトループ16の開口部16b側から挿通されて、ベルトループ16の中央部分で第1ベルト部3と交差して、開口部16d側に引き出されて、上体被覆部分5の正面側に案内される。
【0081】
また、十字状のベルトループ16に代えて、
図12及び
図13に示すようなベルトループ17、18を用いることもできる。
【0082】
ベルトループ17は、着用者の肩部に対応する部分に、平面視矩形状に形成され、長手方向の両端部に開口部17a、17bが設けられている。また、ベルトループ17の長手方向中央部分には、長手方向に沿って、開口部17c、17dが設けられている。
【0083】
ベルトループ12に挿通されて着用者の肩部に対応する部分方向へ案内された第1ベルト部3は、ベルトループ17の開口部17a側から挿通されて開口部17b側に引き出されて、上体被覆部分5の背面側に案内される。また、ベルトループ14に挿通されて着用者の肩部に対応する部分方向へ案内された第2ベルト部4は、ベルトループ17の開口部17c側から挿通されて、ベルトループ17の内側中央にて第1ベルト部3と交差して、開口部17d側に引き出されて、上体被覆部分5の正面側に案内される。
【0084】
なお、ベルトループ17は、その長手方向が第2ベルト部4に沿うようにして設けられていてもよく、第2ベルト部4をベルトループ17の開口部17aから挿通し、第1ベルト部3をベルトループ17中央の開口部17cから挿通するようにしてもよい。
【0085】
ベルトループ18は、第1ベルト部3及び第2ベルト部4が挿通される開口部を正面側及び背面側に向けるようにして、左右方向に沿って設けられている。ベルトループ18は、第1ベルト部3及び第2ベルト部4の交差部分の対向する2頂点を挟むように本体部2に縫着されている。
【0086】
なお、ベルトループ18は、第1ベルト部3及び第2ベルト部4が挿通される開口部を左右方向に向けるようにして、前後方向に沿って設けてもよい。
【0087】
このように、本実施形態に係る肩関節用サポーター1は、ベルトループ16、17が、その内部で第1ベルト部3及び第2ベルト部4を交差状態とすることから、着用者の肩部の適切な位置で第1ベルト部3及び第2ベルト部4を交差させることとなり、使用による時間経過やなで肩による第1ベルト部3及び第2ベルト部4の交差位置のズレを防ぐことができる。
【0088】
なお、ベルトループ12ないし18は、それぞれ単独に設けることもでき、例えば、ベルトループ16を設けて、ベルトループ12ないし15を省略することもできる。
【0089】
(本発明の第3の実施形態)
上記第1の実施形態に係る肩関節用サポーターにおいては、各ベルト部がベルトループに挿通されて案内される構成としているが、これに限らず、
図14ないし
図15に示すように、本体部における上体被覆部分の上縁に設けられた被係着部分をベルトループとして各ベルト部が案内される構成とすることもできる。
なお、以下では、上記第1及び第2の実施形態と重複する記載については、その説明を省略する。
【0090】
本実施形態に係る本体部2は、着用者の腹部から左肩部までを被覆する上体被覆部分5と、上体被覆部分5に連続して縫着され、左上腕部を被覆する上腕被覆部分36とを備える。
【0091】
本実施形態に係る肩関節用サポーター1における上体被覆部分5の表面側の上縁全体には、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分37が配設され、この被係着部分37が第1ベルト部3及び第2ベルト部4のベルトループとして機能する。
被係着部分37は、着用者の胸部に対応する部分から右脇下に対応する部分まで配設される前被係着部分37aと、着用者の胸部に対応する部分から肩部を通り、背中に沿って右脇下まで配設される後被係着部分37bとから構成される。なお、後被係着部分37bの面ファスナーのループ面は、全面に形成されている必要はなく、着用者の右脇腹に対応する部分のみに形成されていてもよい。
【0092】
後被係着部分37bは、長手方向両端は本体部2に縫着されず、本体部2の前後において、本体部2との間に前開口部37c及び後開口部37dを形成している。また、後被係着部分37bの上端は、長手方向全体にわたって本体部2に縫着される一方で、後被係着部分37bの下端は、着用者の肩部に対応する部分を除く部分のみが本体部2に縫着されている。すなわち、後被係着部分37bは、着用者の肩部に対応する部分に下向きに開いた中央開口部37eを有することとなる。
【0093】
上体被覆部分5の裏面側の前被係着部分37aの一端に対応する位置には、面ファスナーのフック面で形成された係着部分7bが形成され、着用者が肩関節用サポーター1を装着した際に、着用者の体型にあわせて後被係着部分37bの他端、又は後述する被係着部分38aの他端に係着される。
【0094】
上体被覆部分5の表面側の下縁全体には、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分38aが配設されている。また、上体被覆部分5における後身頃5bの内側の下縁には、装着した際の着用者の右脇腹に対応する部分に、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分39が配設されている。
一方で、被係着部分38aの一端側(前身頃5a側)の表面には、被係着部分39に脱着可能な面ファスナーのフック面で形成された係着部分38bが形成され、また、被係着部分38aの他端側(後身頃5b側)の裏面には、被係着部分38aに脱着可能な面ファスナーのフック面で形成された係着部分38cが形成されている。
【0095】
上腕被覆部分36は、着用者が上腕部を概ね水平に上げた状態を基本姿勢として立体縫製され、着用者の上腕部に対応する部分の上部を被覆する上被覆部分36aと、着用者の上腕部に対応する部分の下部を被覆する下被覆部分36bとを備える。
また、上被覆部分36aは、長手方向(上腕部の軸方向)の伸縮抵抗が、下被覆部分36bの長手方向における伸縮抵抗よりも大きくなるように形成されている。
【0096】
以上のように、長手方向における伸縮抵抗を内側よりも外側が大きくなるように形成される上腕被覆部分36を備えることから、上腕部の肩部方向への持ち上げを補助することとなり、上腕骨頭を関節窩に引き付け、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【0097】
また、上腕被覆部分36は、その中央部分に周方向に配設されたベルト案内部40を備える。ベルト案内部40は、上被覆部分36aの外側で、上腕被覆部分36の周方向に沿って縫着された縫着部分40aと、下被覆部分36bの内側で、上腕被覆部分36の軸方向に沿って縫着された縫着部分40bとで上腕被覆部分36に縫着されている。これにより、縫着部分40aと縫着部分40bとの間には、上腕被覆部分36の正面側においてはベルト挿通部分40cが形成され、上腕被覆部分36の背面側においてはベルト挿通部分40dが形成されることとなる。
第1ベルト部3は、ベルト挿通部分40cの開口範囲において周方向に移動可能とされ、第2ベルト部4は、ベルト挿通部分40dの開口範囲において周方向に移動可能とされ、これにより、着用者の脇下での第1ベルト部3と第2ベルト部4との交差を可能とする。
【0098】
第1ベルト部3及び第2ベルト部4は、本体部2の上腕部に対応する部分の下部外側に位置する各々の一端部を互いに連結された、連続する一つの帯状体として構成されるが、これに限らず、第1ベルト部3と第2ベルト部4とを別体として、それぞれ一つの帯状体から構成されるものとすることもできる。
【0099】
第1ベルト部3の他端は、後被係着部分37bの他端側に形成された後開口部37dから引き出され、被係着部分38の他端側において、被係着部分38及び係着部分38cに挟持された状態で一体的に縫着されている。
また、第2ベルト部4の他端側の裏面には、それぞれ面ファスナーのフック面で形成された係着部分11が形成されている。
【0100】
第1ベルト部3は、本体部2における上腕被覆部分36(上被覆部分36a)の下部外側において、着用者の肘部側となる一側端のみが縫着されている。第1ベルト部3は、この縫着(支持)部分20から、上腕被覆部分36に巻き付くように、上腕被覆部分36の背面側に回って着用者の脇下に対応する部分を通り、ベルト挿通部分40cに挿通されて正面側に引き出されるようになっている。正面側に引き出された第1ベルト部3は、着用者の肩部に対応する部分にて、被係着部分37の中央開口部37eから被係着部分37と本体部2との間に伸縮自在に挿通され、背面側の後被係着部分37bに沿って着用者の右脇下に対応する部分まで案内され、後開口部37dから引き出される。引き出された第1ベルト部3は、被係着部分38に一体的に縫着される。
【0101】
第2ベルト部4は、本体部2における上腕被覆部分36(上被覆部分36a)の下部外側において、着用者の肘部側となる一側端のみが縫着されている。第2ベルト部4は、この縫着(支持)部分20から、上腕被覆部分36に巻き付くように、上腕被覆部分36の正面側に回って着用者の脇下に対応する部分で第1ベルト部3と交差し、ベルト挿通部分40dに挿通されて背面側に引き出されるようになっている。背面側に引き出された第2ベルト部4は、着用者の肩部に対応する部分にて、再度第1ベルト部3と交差し、被係着部分37の中央開口部37eから被係着部分37と本体部2との間に伸縮自在に挿通され、正面側の後被係着部分37bに沿って着用者の右脇下に対応する部分に向けて案内され、前開口部37cから引き出される。
【0102】
次に、本実施形態に係る肩関節用サポーター1(左肩関節用)の装着方法について、
図16ないし
図18を用いて説明する。
装着に際し第2ベルト部4は、被係着部分37に挿通されて前開口部37cから引き出されているものとする。
【0103】
まず、
図16に示すように、着用者は、右手で肩関節用サポーター1を持ち、本体部2の上腕被覆部分36に左腕を挿通し、肩関節用サポーター1を肩部まで十分に引き上げて、上腕被覆部分36を左上腕部に密着させる。
続けて、左手で上体被覆部分5の被係着部分38aの一端を把持して右脇下方向に伸長させた状態で腹部に押し当て、右手で上体被覆部分5の被係着部分38aの他端を把持して左脇下方向に引っ張ることで、係着部分38bを上体被覆部分5内側に配設された被係着部分39に左腹部近傍で係着させるとともに、第1ベルト部3と一体的に配設された係着部分38cを被係着部分38aに係着させる。また、上体被覆部分5の一端側の係着部分7bを、着用者の体型に合わせて、後被係着部分37b又は被係着部分38aに右腹部近傍で係着させる。係着部分38bと被係着部分39との係着、及び係着部分38cと被係着部分38aとの係着により、本体部2を着用者の腹部まわりに固定して位置決めするとともに、第1ベルト部3及び第2ベルト部4のアンカーとすることができる。
【0104】
最後に、
図17に示すように、第2ベルト部4の他端を右手で把持して右脇下方向へ引っ張り、係着部分11を着用者の体型にあわせて、後被係着部分37b又は被係着部分38aに係着させることにより、肩関節用サポーター1の装着を完了する(
図18参照)。
【0105】
このように、本実施形態に係る肩関節用サポーター1は、被係着部分37に沿って第1ベルト部3及び第2ベルト部4が他方の肩部下方の脇下方向へ案内されることから、着用者の肩部で第1ベルト部3と第2ベルト部4とを交差状態とすることができることとなり、より確実に各ベルト部による伸縮力を上腕部に作用させるとともに、着用者の前方及び後方に作用させることができる。
【0106】
なお、上腕部の持ち上げを補助することを目的として、肩関節用サポーター1における着用者の肩部に対応する部分と上腕被覆部分6との間に伸縮抵抗の大きい補助バンドを架け渡すこともできる。
具体的には、
図19に示すように、補助バンド41は、被係着部分37における着用者の肩部に対応する部分とベルト案内部40との間に架け渡されている。この場合、ベルト案内部40表面には、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分が配設されている。補助バンド41の長手方向両端には、面ファスナーのフック面で形成された係着部がそれぞれ配設され、補助バンド41が伸び切った状態で、補助バンド41の各係着部が被係着部分37及びベルト案内部40の被係着部分に係着される。
この際、被係着部分37を補助バンド41のアンカーとして機能させるため、補助バンド41の一端には係着部を形成せず、被係着部分37を含む、本体部2の着用者の肩部に対応する部分近傍に補助バンド41をあらかじめ固着させておいてもよい。
【0107】
(本発明の第4の実施形態)
上記第1の実施形態に係る肩関節用サポーターにおいては、各ベルト部がベルトループに挿通されて案内される構成としているが、これに限らず、
図20ないし
図21に示すように、本体部における上体被覆部分の上縁に設けられた被係着部分をベルトループとして各ベルト部が案内される構成とすることもできる。
なお、以下では、上記第1及び第2の実施形態と重複する記載については、その説明を省略する。
【0108】
本実施形態に係る本体部2は、着用者の腹部から左肩部までを被覆する上体被覆部分5と、上体被覆部分5に連続して縫着され、左上腕部を被覆する上腕被覆部分36とを備える。
【0109】
本実施形態に係る肩関節用サポーター1における上体被覆部分5の表面側の上縁全体には、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分37が配設され、この被係着部分37が第1ベルト部3及び第2ベルト部4のベルトループとして機能する。
被係着部分37は、着用者の胸部に対応する部分から右脇下に対応する部分まで配設される前被係着部分37aと、着用者の胸部に対応する部分から肩部を通り、背中に沿って右脇下まで配設される後被係着部分37bとから構成される。なお、後被係着部分37bの面ファスナーのループ面は、全面に形成されている必要はなく、着用者の右脇腹に対応する部分のみに形成されていてもよい。
【0110】
後被係着部分37bは、長手方向両端は本体部2に縫着されず、本体部2の前後において、本体部2との間に前開口部37c及び後開口部37dを形成している。また、後被係着部分37bの上端は、長手方向全体にわたって本体部2に縫着される一方で、後被係着部分37bの下端は、着用者の肩部に対応する部分を除く部分のみが本体部2に縫着されている。すなわち、後被係着部分37bは、着用者の肩部に対応する部分に下向きに開いた中央開口部37eを有することとなる。
【0111】
上体被覆部分5の裏面側の前被係着部分37aの一端に対応する位置には、面ファスナーのフック面で形成された係着部分7bが形成され、着用者が肩関節用サポーター1を装着した際に、着用者の体型にあわせて後被係着部分37bの他端、又は後述する被係着部分38aの他端に係着される。
【0112】
上体被覆部分5の表面側の下縁全体には、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分38aが配設されている。また、上体被覆部分5における後身頃5bの内側の下縁には、装着した際の着用者の右脇腹に対応する部分に、面ファスナーのループ面で形成された被係着部分39が配設されている。
一方で、被係着部分38aの一端側(前身頃5a側)の表面には、被係着部分39に脱着可能な面ファスナーのフック面で形成された係着部分38bが形成され、また、被係着部分38aの他端側(後身頃5b側)の裏面には、被係着部分38aに脱着可能な面ファスナーのフック面で形成された係着部分38cが形成されている。
【0113】
上腕被覆部分36は、着用者が上腕部を概ね水平に上げた状態を基本姿勢として立体縫製され、着用者の上腕部に対応する部分の上部を被覆する上被覆部分36aと、着用者の上腕部に対応する部分の下部を被覆する下被覆部分36bとを備える。
また、上被覆部分36aは、長手方向(上腕部の軸方向)の伸縮抵抗が、下被覆部分36bの長手方向における伸縮抵抗よりも大きくなるように形成されている。
【0114】
以上のように、長手方向における伸縮抵抗を内側よりも外側が大きくなるように形成される上腕被覆部分36を備えることから、上腕部の肩部方向への持ち上げを補助することとなり、上腕骨頭を関節窩に引き付け、回旋筋腱板の動きを適切にサポートすることができる。
【0115】
第1ベルト部3及び第2ベルト部4は、本体部2の上腕部に対応する部分の下部外側に位置する各々の一端部を互いに連結された、連続する一つの帯状体として構成されるが、これに限らず、第1ベルト部3と第2ベルト部4とを別体として、それぞれ一つの帯状体から構成されるものとすることもできる。
【0116】
第1ベルト部3の他端は、後被係着部分37bの他端側に形成された後開口部37dから引き出され、被係着部分38の他端側において、被係着部分38及び係着部分38cに挟持された状態で一体的に縫着されている。
また、第2ベルト部4の他端側の裏面には、それぞれ面ファスナーのフック面で形成された係着部分11が形成されている。
【0117】
第1ベルト部3は、本体部2における上腕被覆部分36(上被覆部分36a)の下部外側において、着用者の肘部側となる一側端のみが縫着されている。第1ベルト部3は、この縫着(支持)部分20から、上腕被覆部分36に巻き付くように、上腕被覆部分36の背面側に回って着用者の脇下に対応する部分を通り、正面側に引き出されるようになっている。正面側に引き出された第1ベルト部3は、着用者の肩部に対応する部分にて、被係着部分37の中央開口部37eから被係着部分37と本体部2との間に伸縮自在に挿通され、背面側の後被係着部分37bに沿って着用者の右脇下に対応する部分まで案内され、後開口部37dから引き出される。引き出された第1ベルト部3は、被係着部分38に一体的に縫着される。
【0118】
第2ベルト部4は、本体部2における上腕被覆部分36(上被覆部分36a)の下部外側において、着用者の肘部側となる一側端のみが縫着されている。第2ベルト部4は、この縫着(支持)部分20から、上腕被覆部分36に巻き付くように、上腕被覆部分36の正面側に回って着用者の脇下に対応する部分で第1ベルト部3と交差し、背面側に引き出されるようになっている。背面側に引き出された第2ベルト部4は、着用者の肩部に対応する部分にて、再度第1ベルト部3と交差し、被係着部分37の中央開口部37eから被係着部分37と本体部2との間に伸縮自在に挿通され、正面側の後被係着部分37bに沿って着用者の右脇下に対応する部分に向けて案内され、前開口部37cから引き出される。
【0119】
次に、本実施形態に係る肩関節用サポーター1(左肩関節用)の装着方法について、
図22ないし
図24を用いて説明する。
装着に際し第2ベルト部4は、被係着部分37に挿通されて前開口部37cから引き出されているものとする。
【0120】
まず、
図22に示すように、着用者は、右手で肩関節用サポーター1を持ち、本体部2の上腕被覆部分36に左腕を挿通し、肩関節用サポーター1を肩部まで十分に引き上げて、上腕被覆部分36を左上腕部に密着させる。
続けて、左手で上体被覆部分5の被係着部分38aの一端を把持して右脇下方向に伸長させた状態で腹部に押し当て、右手で上体被覆部分5の被係着部分38aの他端を把持して左脇下方向に引っ張ることで、係着部分38bを上体被覆部分5内側に配設された被係着部分39に左腹部近傍で係着させるとともに、第1ベルト部3と一体的に配設された係着部分38cを被係着部分38aに係着させる。また、上体被覆部分5の一端側の係着部分7bを、着用者の体型に合わせて、後被係着部分37b又は被係着部分38aに右腹部近傍で係着させる。係着部分38bと被係着部分39との係着、及び係着部分38cと被係着部分38aとの係着により、本体部2を着用者の腹部まわりに固定して位置決めするとともに、第1ベルト部3及び第2ベルト部4のアンカーとすることができる。
【0121】
最後に、
図23に示すように、第2ベルト部4の他端を右手で把持して右脇下方向へ引っ張り、係着部分11を着用者の体型にあわせて、後被係着部分37b又は被係着部分38aに係着させることにより、肩関節用サポーター1の装着を完了する(
図24参照)。
【0122】
このように、本実施形態に係る肩関節用サポーター1は、被係着部分37に挿通されて第1ベルト部3及び第2ベルト部4が他方の肩部下方の脇下方向へ案内されることから、着用者の肩部で第1ベルト部3と第2ベルト部4とを交差状態とすることができることとなり、より確実に各ベルト部による伸縮力を上腕部に作用させるとともに、着用者の前方及び後方に作用させることができる。
【符号の説明】
【0123】
1 肩関節用サポーター
2 本体部
3 第1ベルト部
4 第2ベルト部
5 上体被覆部分
5a 前身頃
5b 後身頃
6 上腕被覆部分
7a 被係着部分
7b 係着部分
8a 被係着部分
8b 係着部分
8c 係着部分
9 被係着部分
10 係着部分
11 係着部分
12~15 ベルトループ
16 ベルトループ
16a~16d 開口部
17 ベルトループ
17a~17d 開口部
18 ベルトループ
19 ベルトループ
20 縫着(支持)位置
36 :上腕被覆部分
36a 上被覆部分
36b 下被覆部分
37 被係着部分
37a 前被係着部分
37b 後被係着部分
37c 前開口部
37d 後開口部
37e 中央開口部
38 被係着部分
38a 被係着部分
38b 係着部分
38c 係着部分
39 被係着部分
40 ベルト案内部
40a 縫着部分
40b 縫着部分
40c ベルト挿通部分
40d ベルト挿通部分
41 補助バンド
F1、F2 伸縮力