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特開2024-134780溶接施工技術評価装置、溶接施工技術評価方法、および溶接施工技術評価プログラム
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  • 特開-溶接施工技術評価装置、溶接施工技術評価方法、および溶接施工技術評価プログラム 図1
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  • 特開-溶接施工技術評価装置、溶接施工技術評価方法、および溶接施工技術評価プログラム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134780
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】溶接施工技術評価装置、溶接施工技術評価方法、および溶接施工技術評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20240927BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20240927BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B23K9/095 515Z
B23K31/00 N
G09B19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045139
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】野々村 将一
(72)【発明者】
【氏名】中西 省太
(72)【発明者】
【氏名】田辺 祥大
(57)【要約】
【課題】溶接施工に関する溶接士の技能評価を高い精度で行うことが可能な溶接施工技術評価装置を提供する。
【解決手段】溶接施工技術評価装置1は、電流・電圧値取得部201と位置情報取得部202と高さ安定性指標値算出部203と電流・電圧指標値算出部204と溶接速度指標値算出部205と技術評価値算出部209とを備える。電流・電圧値取得部201は溶接器具の電流値または電圧値を取得する。位置情報取得部202は溶接士の身体の所定部位および溶接器具の位置情報を取得する。高さ安定性指標値算出部203は電流値または電圧値の変動量に基づいて溶接器具の高さ安定性指標値を算出する。電流・電圧指標値算出部204は電流値または電圧値の適正度を示した電流・電圧指標値を算出する。溶接速度指標値算出部205は溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する。技術評価値算出部209は各指標値に基づいて技術評価値を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接士が溶接器具を用いて一又は複数の溶接パスを含む溶接施工を行っているときに、前記溶接器具が使用している電流値または電圧値の少なくともいずれかを所定時間間隔で取得する電流・電圧値取得部と、
前記溶接施工中に、前記溶接士の身体の所定部位の位置情報および前記溶接器具の位置情報を所定時間間隔で取得する位置情報取得部と、
前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得部が取得した電流値または電圧値の変動量に基づいて、前記溶接器具の高さの安定性を示した高さ安定性指標値を算出する高さ安定性指標値算出部と、
前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得部が取得した電流値または電圧値の適正度を示した電流・電圧指標値を算出する電流・電圧指標値算出部と、
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得部が取得した情報に基づいて前記溶接器具の移動速度を示す溶接速度を算出し、算出した溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する溶接速度指標値算出部と、
前記高さ安定性指標値算出部が算出した高さ安定性指標値と、前記電流・電圧指標値算出部が算出した電流・電圧指標値と、前記溶接速度指標値算出部が算出した溶接速度指標値とに基づいて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出する技術評価値算出部と、を備える溶接施工技術評価装置。
【請求項2】
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得部が取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接時の前記溶接士の動作の安定性を示したウィービング安定性指標値を算出するウィービング安定性指標値算出部と、
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得部が取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接に関する項目の値の適正度を示したウィービング適正度指標値を算出するウィービング適正度指標値算出部と、をさらに備え、
前記技術評価値算出部は、前記ウィービング安定性指標値算出部が算出したウィービング安定性指標値と、前記ウィービング適正度指標値算出部が算出したウィービング適正度指標値とをさらに含めて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出する、請求項1に記載の溶接施工技術評価装置。
【請求項3】
前記技術評価値算出部は、各指標値を複数段階の数値で示した段階評価値を用いて、前記技術評価値を算出する、請求項1または2に記載の溶接施工技術評価装置。
【請求項4】
前記技術評価値算出部が算出した技術評価値を出力するための出力情報を生成する出力情報生成部をさらに備える、請求項1または2に記載の溶接施工技術評価装置。
【請求項5】
溶接士が溶接器具を用いて一又は複数の溶接パスを含む溶接施工を行っているときに、前記溶接器具が使用している電流値または電圧値の少なくともいずれかを所定時間間隔で取得する電流・電圧値取得工程と、
前記溶接施工中に、前記溶接士の身体の所定部位の位置情報および前記溶接器具の位置情報を所定時間間隔で取得する位置情報取得工程と、
前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得工程で取得した電流値または電圧値の変動量に基づいて、前記溶接器具の高さの安定性を示した高さ安定性指標値を算出する高さ安定性指標値算出工程と、
前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得工程で取得した電流値または電圧値の適正度を示した電流・電圧指標値を算出する電流・電圧指標値算出工程と、
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて前記溶接器具の移動速度を示す溶接速度を算出し、算出した溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する溶接速度指標値算出工程と、備え、
前記高さ安定性指標値算出工程で算出した高さ安定性指標値と、前記電流・電圧指標値算出工程で算出した電流・電圧指標値と、前記溶接速度指標値算出工程で算出した溶接速度指標値とに基づいて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出する溶接施工技術評価方法。
【請求項6】
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接時の前記溶接士の動作の安定性を示したウィービング安定性指標値を算出するウィービング安定性指標値算出工程と、
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接に関する項目の値の適正度を示したウィービング適正度指標値を算出するウィービング適正度指標値算出工程と、をさらに実行し、
前記ウィービング安定性指標値算出工程で算出したウィービング安定性指標値と、前記ウィービング適正度指標値算出工程で算出したウィービング適正度指標値とをさらに含めて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出する、請求項5に記載の溶接施工技術評価方法。
【請求項7】
コンピュータに、
溶接士が溶接器具を用いて一又は複数の溶接パスを含む溶接施工を行っているときに、前記溶接器具が使用している電流値または電圧値の少なくともいずれかを所定時間間隔で取得する電流・電圧値取得工程と、
前記溶接施工中に、前記溶接士の身体の所定部位の位置情報および前記溶接器具の位置情報を所定時間間隔で取得する位置情報取得工程と、
前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得工程で取得した電流値または電圧値の変動量に基づいて、前記溶接器具の高さの安定性を示した高さ安定性指標値を算出する高さ安定性指標値算出工程と、
前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得工程で取得した電流値または電圧値の適正度を示した電流・電圧指標値を算出する電流・電圧指標値算出工程と、
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて前記溶接器具の移動速度を示す溶接速度を算出し、算出した溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する溶接速度指標値算出工程と、
前記高さ安定性指標値算出工程で算出した高さ安定性指標値と、前記電流・電圧指標値算出工程で算出した電流・電圧指標値と、前記溶接速度指標値算出工程で算出した溶接速度指標値とに基づいて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出する技術評価値算出工程と、を実行させる溶接施工技術評価プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接時の前記溶接士の動作の安定性を示したウィービング安定性指標値を算出するウィービング安定性指標値算出工程と、
前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接に関する項目の値の適正度を示したウィービング適正度指標値を算出するウィービング適正度指標値算出工程と、をさらに実行させ、
前記技術評価値算出工程において前記コンピュータに、前記ウィービング安定性指標値算出工程で算出したウィービング安定性指標値と、前記ウィービング適正度指標値算出工程で算出したウィービング適正度指標値とをさらに含めて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出させる、請求項7に記載の溶接施工技術評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接施工技術評価装置、溶接施工技術評価方法、および溶接施工技術評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接施工に関して、溶接士の技能の優劣を評価し、評価結果を自動溶接機の動作制御に反映させたり、溶接士に報知したりする技術が知られている。特許文献1では、溶接施工作業中の溶接士の挙動に関するデータを計測し、計測したデータから溶接士の姿勢を判断し、溶接士の姿勢から溶接士の溶接作業を評価する技術を開示している。このような技術を用いることで、溶接士の技術の優劣を客観的に評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-71140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接施工状態の良否には、施工時の溶接士の姿勢のみならず、溶接士の動作の安定性や溶接士の動作に関わる各種パラメータの適正度合いが影響する。しかし、特許文献1に記載の技術では、これらの要素を考慮して溶接士の技術評価を行っておらず、溶接施工状態の良否に基づく精度の高い技能評価が実行されていなかった。
【0005】
そこで、本開示は、溶接施工に関する溶接士の技能評価を高い精度で行うことが可能な、溶接施工技術評価装置、溶接施工技術評価方法、および溶接施工技術評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る溶接施工技術評価装置は、溶接士が溶接器具を用いて一又は複数の溶接パスを含む溶接施工を行っているときに、前記溶接器具が使用している電流値または電圧値の少なくともいずれかを所定時間間隔で取得する電流・電圧値取得部と、前記溶接施工中に、前記溶接士の身体の所定部位の位置情報および前記溶接器具の位置情報を所定時間間隔で取得する位置情報取得部と、前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得部が取得した電流値または電圧値の変動量に基づいて、前記溶接器具の高さの安定性を示した高さ安定性指標値を算出する高さ安定性指標値算出部と、前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得部が取得した電流値または電圧値の適正度を示した電流・電圧指標値を算出する電流・電圧指標値算出部と、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得部が取得した情報に基づいて前記溶接器具の移動速度を示す溶接速度を算出し、算出した溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する溶接速度指標値算出部と、前記高さ安定性指標値算出部が算出した高さ安定性指標値と、前記電流・電圧指標値算出部が算出した電流・電圧指標値と、前記溶接速度指標値算出部が算出した溶接速度指標値とに基づいて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出する技術評価値算出部と、を備える。
【0007】
上記の溶接施工技術評価装置は、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得部が取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接時の前記溶接士の動作の安定性を示したウィービング安定性指標値を算出するウィービング安定性指標値算出部と、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得部が取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接に関する項目の値の適正度を示したウィービング適正度指標値を算出するウィービング適正度指標値算出部と、をさらに備え、前記技術評価値算出部は、前記ウィービング安定性指標値算出部が算出したウィービング安定性指標値と、前記ウィービング適正度指標値算出部が算出したウィービング適正度指標値とをさらに含めて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出してもよい。
【0008】
また、上記の溶接施工技術評価装置は、技術評価値算出部が、各指標値を複数段階の数値で示した段階評価値を用いて、前記技術評価値を算出してもよい。
【0009】
また、上記の溶接施工技術評価装置は、前記技術評価値算出部が算出した技術評価値を出力する出力部をさらに備えてもよい。
【0010】
本開示の一態様に係る溶接施工技術評価方法は、溶接士が溶接器具を用いて一又は複数の溶接パスを含む溶接施工を行っているときに、前記溶接器具が使用している電流値または電圧値の少なくともいずれかを所定時間間隔で取得する電流・電圧値取得工程と、前記溶接施工中に、前記溶接士の身体の所定部位の位置情報および前記溶接器具の位置情報を所定時間間隔で取得する位置情報取得工程と、前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得工程で取得した電流値または電圧値の変動量に基づいて、前記溶接器具の高さの安定性を示した高さ安定性指標値を算出する高さ安定性指標値算出工程と、前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得工程で取得した電流値または電圧値の適正度を示した電流・電圧指標値を算出する電流・電圧指標値算出工程と、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて前記溶接器具の移動速度を示す溶接速度を算出し、算出した溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する溶接速度指標値算出工程と、備え、前記高さ安定性指標値算出工程で算出した高さ安定性指標値と、前記電流・電圧指標値算出工程で算出した電流・電圧指標値と、前記溶接速度指標値算出工程で算出した溶接速度指標値とに基づいて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出する。
【0011】
また、上記の溶接施工技術評価方法は、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接時の前記溶接士の動作の安定性を示したウィービング安定性指標値を算出するウィービング安定性指標値算出工程と、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接に関する項目の値の適正度を示したウィービング適正度指標値を算出するウィービング適正度指標値算出工程と、をさらに実行し、前記技術評価値算出工程において、前記ウィービング安定性指標値算出工程で算出したウィービング安定性指標値と、前記ウィービング適正度指標値算出工程で算出したウィービング適正度指標値とをさらに含めて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出してもよい。
【0012】
本開示の一態様に係る溶接施工技術評価プログラムは、コンピュータに、溶接士が溶接器具を用いて一又は複数の溶接パスを含む溶接施工を行っているときに、前記溶接器具が使用している電流値または電圧値の少なくともいずれかを所定時間間隔で取得する電流・電圧値取得工程と、前記溶接施工中に、前記溶接士の身体の所定部位の位置情報および前記溶接器具の位置情報を所定時間間隔で取得する位置情報取得工程と、前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得工程で取得した電流値または電圧値の変動量に基づいて、前記溶接器具の高さの安定性を示した高さ安定性指標値を算出する高さ安定性指標値算出工程と、前記溶接パス毎に、前記電流・電圧値取得工程で取得した電流値または電圧値の適正度を示した電流・電圧指標値を算出する電流・電圧指標値算出工程と、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて前記溶接器具の移動速度を示す溶接速度を算出し、算出した溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する溶接速度指標値算出工程と、前記高さ安定性指標値算出工程で算出した高さ安定性指標値と、前記電流・電圧指標値算出工程で算出した電流・電圧指標値と、前記溶接速度指標値算出工程で算出した溶接速度指標値とに基づいて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出する技術評価値算出工程と、を実行させる。
【0013】
また、上記の溶接施工技術評価プログラムは、コンピュータに、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接時の前記溶接士の動作の安定性を示したウィービング安定性指標値を算出するウィービング安定性指標値算出工程と、前記溶接パス毎に、前記位置情報取得工程で取得した情報に基づいて、前記溶接施工中のウィービング溶接に関する項目の値の適正度を示したウィービング適正度指標値を算出するウィービング適正度指標値算出工程と、をさらに実行させ、前記技術評価値算出工程において前記コンピュータに、前記ウィービング安定性指標値算出工程で算出したウィービング安定性指標値と、前記ウィービング適正度指標値算出工程で算出したウィービング適正度指標値とをさらに含めて、前記溶接施工の技術に関する評価値である技術評価値を算出してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、溶接施工に関する溶接士の技能評価を高い精度で行うことが可能な、溶接施工技術評価装置、溶接施工技術評価方法、および溶接施工技術評価プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る溶接施工技術評価装置の構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る溶接施工技術評価装置の動作を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係る溶接施工技術評価装置により生成された出力情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、溶接士による溶接施工の技能評価を行う溶接施工技術評価装置の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
〈一実施形態による溶接施工技術評価装置の構成〉
図1は、一実施形態に係る溶接施工技術評価装置1の構成を示すブロック図である。溶接施工技術評価装置1は、基準データ記憶部10と、CPU20(コントローラ)と、出力部30とを備える。
【0018】
基準データ記憶部10は、溶接施工に関する各種評価値を算出する際に用いる基準データを記憶する。基準データ記憶部10に記憶される基準データの詳細については、後述する。
【0019】
CPU20(制御部または処理部の一例)は、演算装置、メモリ、及び入出力部を備える汎用のコンピュータである。CPU20には、溶接施工技術評価装置の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(溶接施工技術評価プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、CPU20は、溶接施工技術評価装置が備える複数の情報処理回路(201、202、203、204、205、206、207、208、209、210)として機能する。
【0020】
その他、溶接施工技術評価プログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。コンピュータ読取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な記録媒体である。溶接施工技術評価プログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【0021】
なお、以下では、ソフトウェアによって溶接施工技術評価装置が備える複数の情報処理回路(201、202、203、204、205、206、207、208、209、210)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(201、202、203、204、205、206、207、208、209、210)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(201、202、203、204、205、206、207、208、209、210)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0022】
CPU20は、電流・電圧値取得部201と、位置情報取得部202と、高さ安定性指標値算出部203と、電流・電圧指標値算出部204と、溶接速度指標値算出部205と、ウィービング安定性指標値算出部206と、ウィービング適正度指標値算出部207と、5段階評価値算出部208と、技術評価値算出部209と、出力情報生成部210とを有する。
【0023】
電流・電圧値取得部201は、溶接電源に接続された溶接器具であるトーチが使用している電流値または電圧値の少なくともいずれかを外部装置から取得する。トーチが使用している電流値および電圧値は、溶接士がトーチを用いて複数の溶接パスを含む溶接施工を行っているときに、例えば、クランプメータまたはデータロガーなどの外部装置によって、所定時間間隔で取得される。
【0024】
位置情報取得部202は、溶接士の身体の所定部位である関節、およびトーチ先端の位置情報を、外部装置から取得する。これらの位置情報は、溶接施工中に、例えば光学式モーションキャプチャまたはIMU(Inertial Measurement Unit)などの外部装置によって、所定時間間隔で取得される。
【0025】
高さ安定性指標値算出部203は、溶接パス毎に、電流・電圧値取得部201が取得した電流値または電圧値の変動量に基づいて、トーチの高さの安定性を示した高さ安定性指標値を算出する。
【0026】
電流・電圧指標値算出部204は、溶接パス毎に、電流・電圧値取得部201が取得した電流値または電圧値の適正度を示した電流・電圧指標値を算出する。
【0027】
溶接速度指標値算出部205は、溶接パス毎に、位置情報取得部202が取得した情報に基づいて前記溶接器具の移動速度を示す溶接速度を算出し、算出した溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する。
【0028】
ウィービング安定性指標値算出部206は、溶接パス毎に、位置情報取得部202が取得した情報に基づいて、溶接施工中のウィービング溶接時の溶接士の動作の安定性を示したウィービング安定性指標値を算出する。ウィービング溶接とは、トーチを溶接進行方向に対して垂直な方向に振幅させながら行う溶接手法である。
【0029】
ウィービング適正度指標値算出部207は、溶接パス毎に、位置情報取得部202が取得した情報に基づいて、溶接施工中のウィービング溶接に関する項目の値の適正度を示したウィービング適正度指標値を算出する。
【0030】
5段階評価値算出部208は、高さ安定性指標値算出部203で算出された高さ安定性指標値、電流・電圧指標値算出部204で算出された電流・電圧指標値、溶接速度指標値算出部205で算出された溶接速度指標値、ウィービング安定性指標値算出部206で算出されたウィービング安定性指標値、およびウィービング適正度指標値算出部207で算出されたウィービング適正度指標値に基づいて、評価項目および溶接パスごとの5段階評価値を算出する。
【0031】
技術評価値算出部209は、5段階評価値算出部208で算出された5段階評価値を評価項目ごとに合計した値を、溶接施工を行った溶接士の技術評価値として算出する。
【0032】
出力情報生成部210は、技術評価値算出部209が算出した技術評価値を出力するための出力情報を生成する。出力部30は、例えば表示装置で構成され、出力情報生成部210が生成した出力情報を出力する。その結果、技術評価値が、ユーザ(溶接士X、その他、溶接施工技術評価装置の利用者)に報知される。
【0033】
〈一実施形態による溶接施工技術評価装置の動作〉
本実施形態による溶接施工技術評価装置の動作として、溶接士Xがトーチを用いて3つの溶接パスP1~P3を含む溶接施工を行う際に溶接施工技術評価装置1が実行する、溶接士Xの溶接施工技術の評価処理について、説明する。溶接施工に含まれる溶接パスの数は3つには限定されず、2つまたは4つ以上でもよい。
【0034】
本実施形態においては、溶接施工技術に関し、(1) 施工中のトーチの高さの安定性、(2) トーチが使用している電流値の適正度、(3) 溶接速度の適正度、(4) ウィービング溶接時の溶接士Xの動作の安定性、および、(5) ウィービング溶接に関する項目の値の適正度、の5つの項目に関する指標値を用いて評価する。
【0035】
基準データ記憶部10には、評価処理対象の溶接施工に関して予め理想的な条件で所定期間に取得された、複数項目の基準データが記憶されている。基準データ記憶部10が記憶する基準データは、例えばトーチの電流値および電圧値に関する基準データ、溶接速度に関する基準データ、ならびに、ウィービング溶接に関する基準データである。これらの基準データは、例えば、トーチを台車に設置し、当該台車を、駆動装置により所定の高さで所定の幅および周期で振幅させながら所定速度で移動させて溶接を行うことで、取得される。
【0036】
トーチの電流値および電圧値に関する基準データは、例えば、該当期間に取得されたトーチの電流値および電圧値それぞれの平均値、最大値、最小値、標準偏差、または変動計数である。また、溶接速度に関する基準データは、例えば、該当期間に取得された溶接速度の平均値である。
【0037】
また、ウィービング溶接に関する基準データは、例えば、該当期間のウィービング溶接中に最も多く含まれるトーチ先端の振幅の幅(以下、「ウィービング幅」と記載する)もしくは周期(以下、「ウィービング周期」と記載する)、ウィービング幅およびウィービング周期それぞれの該当期間内の平均値、最大値、最小値、または標準偏差である。ウィービング幅およびウィービング周期は、例えばFFT解析(Fast Fourier Transform解析;高速フーリエ変換)により算出される。
【0038】
図2は、本実施形態による溶接施工技術評価装置1の動作を示すフローチャートである。溶接士Xにより1つ目の溶接パスP1の溶接施工が開始されると(S1の「YES」)、電流・電圧値取得部201が、溶接士Xが用いているトーチの電流値または電圧値の少なくともいずれかを所定時間間隔で取得する処理を開始する。この電流値および電圧値の取得間隔は、例えば数ミリ秒~数秒程度である。
【0039】
また、溶接パスP1の溶接施工が開始されると、位置情報取得部202が、溶接士Xの関節およびトーチの先端の位置情報を所定時間間隔で取得する処理を開始する(S2)。この関節の位置情報の取得間隔は、例えば数ミリ秒~数秒程度である。
【0040】
溶接パスP1の溶接施工が終了すると(S3の「YES」)、溶接パスP1の溶接施工中に取得されたトーチの電流値または電圧値の少なくともいずれかと、溶接士Xの関節およびトーチの先端の位置情報とに基づいて、上述した(1)~(5)の項目に対応する各種指標値が算出される。
【0041】
具体的には、高さ安定性指標値算出部203が、「(1) 施工中のトーチの高さの安定性」の項目に対応する高さ安定性指標値を算出する。また、電流・電圧指標値算出部204が、「(2) トーチが使用している電流・電圧値の適正度」の項目に対応する電流・電圧指標値を算出する。溶接速度指標値算出部205が、「(3) 溶接速度の適正度」の項目に対応する溶接速度指標値を算出する。また、ウィービング安定性指標値算出部206が、「(4) ウィービング溶接時の溶接士Xの動作の安定性」の項目に対応するウィービング安定性指標値を算出する。また、ウィービング適正度指標値算出部207が、「(5) ウィービング溶接に関する項目の値の適正度」の項目に対応するウィービング適正度指標値を算出する(S4)。以下に、各指標値の算出処理について、詳細に説明する。
【0042】
(i) 高さ安定性指標値の算出処理
トーチの高さの変動量とトーチの電流値または電圧値との間には相関があり、トーチの高さが大きく変動する程、トーチで使用する電流または電圧が増加する。そこで高さ安定性指標値算出部203は、施工中の電流値または電圧値の変動量に基づいて、トーチの高さの変動量、つまりトーチの高さの安定性を評価する。
【0043】
トーチの高さの安定性を電流値の変動量から評価するか、電圧値の変動量から評価するかは、溶接施工に用いる溶接電源の外部特性である電流‐電源特性によって異なる。例えば、溶接電源が定電流特性電源の場合は、トーチの高さの変化に対して電流の変動量が小さいため、電圧値の変動量からトーチの高さの安定性を評価する。一方、溶接電源が定電圧特性電源の場合は、トーチの高さの変化に対して電圧の変動量が小さいため、電流値の変動量からトーチの高さの安定性を評価する。なお、溶接電源が垂下特性電源の場合は、定電流特性電源の場合と同様に、電圧値の変動量からトーチの高さの安定性を評価する。
【0044】
高さ安定性指標値算出部203は、溶接パスP1の施工中に電流・電圧値取得部201が取得した電流値または電圧値に基づいて、平均値、最大値、最小値、標準偏差、または変動計数(標準偏差÷平均値)の少なくともいずれかの項目の値を、溶接パスP1の電流成分または電圧成分として算出する。
【0045】
その際、施工開始から所定期間、および施工終了前の所定期間は施工が非定常状態であり、トーチの高さの変化量が大きくなる傾向にある。そのため、高さ安定性指標値算出部203は、これらの非定常状態の期間を除いた定常時の電流値または電圧値に基づいて、電流成分または電圧成分を算出する。
【0046】
次に高さ安定性指標値算出部203は、算出した電流成分または電圧成分の変動度合いに基づいて、溶接パスP1におけるトーチの高さの安定性を示した高さ安定性指標値を算出する。
【0047】
高さ安定性指標値算出部203は、例えば、「電流値に関する所定項目の基準データ」を、「溶接パスP1に関して算出した所定項目の電流成分」で除した値に任意の係数Aを掛けた値を、溶接パスP1の高さ安定性指標値として算出する。
【0048】
(ii) 電流・電圧指標値の算出処理
電流・電圧指標値算出部204は、まず(i) 高さ安定性指標値の算出処理で説明した場合と同様に、溶接パスP1の施工中の定常時に電流・電圧値取得部201が取得した電流値に基づいて、溶接パスP1の所定項目の電流成分または電圧成分を算出する。
【0049】
次に電流・電圧指標値算出部204は、電流値または電圧値に関する所定項目について記憶された基準データと、溶接パスP1について算出した電流成分または電圧成分との差異に基づいて、溶接パスP1の施工中に電流・電圧値取得部201が取得した電流値または電圧値の適正度を示す電流・電圧指標値を算出する。
【0050】
電流・電圧指標値算出部204は、例えば、「電流値に関する所定項目の基準データに任意の係数Bを掛けた値」から「溶接パスP1に関して算出した所定項目の電流成分に任意の係数Cを掛けた値」を引いた値を、「電流値に関する所定項目の基準データ」で除し、その値の絶対値を、溶接パスP1の電流指標値として算出する。
【0051】
(iii) 溶接速度指標値の算出処理
溶接速度指標値算出部205は、溶接パスP1の施工中に位置情報取得部202が取得した溶接士Xの身体の所定部位である関節、およびトーチ内の所定部位である先端の位置情報を取得する。
【0052】
溶接速度指標値算出部205は、取得した情報に基づいて、溶接速度の平均値、最大値、最小値、標準偏差、または変動計数の少なくともいずれかの項目の値を、溶接パスP1の溶接速度成分として算出する。
【0053】
次に溶接速度指標値算出部205は、算出した溶接速度成分と、基準データ記憶部10に記憶された溶接速度に関する基準データとの差異に基づいて、溶接パスP1における溶接速度の適正度を示した溶接速度指標値を算出する。
【0054】
溶接速度指標値算出部205は、例えば、「溶接速度に関する所定項目の基準データに任意の係数Dを掛けた値」から「溶接パスP1に関して算出した溶接速度に任意の係数Eをかけた値」を引いた値を、「溶接速度に関する所定項目の基準データ」で除し、その値の絶対値を、溶接パスP1の溶接速度指標値として算出する。
【0055】
(iv) ウィービング安定性指標値の算出処理
ウィービング安定性指標値算出部206は、溶接パスP1の施工中に位置情報取得部202が取得した溶接士Xの身体の所定部位である関節、およびトーチ内の所定部位である先端の位置情報を取得する。
【0056】
ウィービング安定性指標値算出部206は、取得した情報に基づいて、ウィービング幅およびウィービング周期について、それぞれ平均値、最大値、最小値、標準偏差、またはP値(Probability- value;確率)の少なくともいずれかの項目の値を、溶接パスP1のウィービング成分として算出する。
【0057】
次にウィービング安定性指標値算出部206は、算出したウィービング成分の変動度合いに基づいて、溶接パスP1におけるウィービング溶接時の溶接士Xの動作の安定性を示したウィービング安定性指標値を算出する。
【0058】
ウィービング安定性指標値算出部206は、例えば、「ウィービング溶接に関する基準データ」を「溶接パスP1に関して算出した所定項目のウィービング成分」で除した値に任意の係数Fを掛けた値と、「ウィービング溶接に関する基準データ」を「溶接パスP1に関して算出した所定項目のウィービング成分」で除した値に任意の係数Gを掛けた値とを足した値を、溶接パスP1のウィービング安定性指標値として算出する。
【0059】
(v) ウィービング適正度指標値の算出処理
ウィービング適正度指標値算出部207は、(iii) 溶接速度指標値の算出処理で説明した場合と同様に、溶接パスP1の所定項目の溶接速度成分を算出する。またウィービング適正度指標値算出部207は、(iv) ウィービング安定性指標値の算出処理で説明した場合と同様に、ウィービング周期に関する所定項目のウィービング成分を算出する。
【0060】
次にウィービング適正度指標値算出部207は、算出した溶接速度成分とウィービング成分との関係性を数値化することで、溶接施工中のウィービング溶接に関する項目の値の適正度を示すウィービング適正度指標値を算出する。
【0061】
ウィービング適正度指標値算出部207は、例えば、「溶接パスP1に関して算出した所定項目の溶接速度成分に任意の係数Hを掛けた値」を「溶接パスP1に関して算出した所定項目のウィービング成分」で除した値を、溶接パスP1のウィービング適正度指標値として算出する。
【0062】
溶接パスP1に関して各指標値が算出されると、ステップS2に戻り(S5の「YES」)、溶接パスP2に関してステップS2~S4の処理が実行される。その後、さらにステップS2に戻り(S5の「YES」)、溶接パスP3に関してステップS2~S4の処理が実行される。
【0063】
溶接パスP3に関して各指標値が算出され、ステップS5において未実行の溶接パスがないと判定されると(S5の「NO」)、ステップS6に移行する。
【0064】
次に、5段階評価値算出部208が、算出された各指標値に基づいて、上述した(1)~(5)の各項目について、溶接パス毎に「1」~「5」の5段階評価値を算出する(S6)。この5段階評価は、例えば、「1」が最も評価が低く、「5」が最も評価が高い。5段階評価値算出部208による、(1)~(5)の項目ごとの具体的な5段階評価値の算出手法について、以下に説明する。
【0065】
5段階評価値算出部208は、高さ安定性指標値算出部203で算出された高さ安定性指標値と、電流成分が基準データと同値であった場合に算出される高さ安定性指標値との差異を算出する。5段階評価値算出部208は、算出した差異が大きい程、評価が低くなるようにして、溶接パス毎に「(1) 施工中のトーチの高さの安定性」に関する5段階評価値を算出する。
【0066】
また5段階評価値算出部208は、電流・電圧指標値算出部204で算出された電流・電圧指標値が大きい程、評価が低くなるようにして、溶接パス毎に「(2) トーチが使用している電流値の適正度」に関する5段階評価値を算出する。
【0067】
また5段階評価値算出部208は、溶接速度指標値算出部205で算出された溶接速度指標値が大きい程、評価が低くなるようにして、溶接パス毎に「(3) 溶接速度の適正度」に関する5段階評価値を算出する。
【0068】
また5段階評価値算出部208は、ウィービング安定性指標値算出部206で算出されたウィービング安定性指標値と、ウィービング成分が基準データと同値であった場合に算出されるウィービング安定性指標値との差異を算出する。5段階評価値算出部208は、算出した差異が大きい程、評価が低くなるようにして、溶接パス毎に「(4) ウィービング溶接時の溶接士Xの動作の安定性」に関する5段階評価値を算出する。
【0069】
また5段階評価値算出部208は、ウィービング適正度指標値算出部207で算出されたウィービング適正度指標値が予め設定した適正範囲内に収まっているか、収まっていない場合にはどの程度離れているかに応じて、溶接パス毎に「(5) ウィービング溶接に関する項目の値の適正度」に関する5段階評価値を算出する。この「適正範囲」は、予め取得された、溶接速度成分とウィービング成分との複数の組み合わせに関するウィービング適正度指標値に基づいて設定される。
【0070】
次に、技術評価値算出部209が、5段階評価値算出部208で算出された5段階評価値を、(1)~(5)の項目ごとに溶接パスP1~P3分だけ合計する。技術評価値算出部209は、このようにして算出した値を、溶接士Xの技術評価値とする(S7)。
【0071】
出力情報生成部210は、技術評価値算出部209が算出した技術評価値を出力するための出力情報を生成する。出力部30は、出力情報生成部210が生成した出力情報を出力する(S8)。
【0072】
図3は、溶接施工の熟練者に関する技術評価値と、初心者に関する技術評価値とに基づいて生成された出力情報の一例を示す図である。この出力情報内の実線は、熟練者の施工技術に対して算出された技術評価値を示し、点線は、初心者の施工技術に対して算出された技術評価値を示す。
【0073】
この出力情報からは、トーチの高さを一定に保った状態で最後まで溶接しきる技術、および溶接速度を一定に保つ技術等は初心者でもある程度習得可能であることがわかる。一方で、トーチの高さを一定且つ溶接速度を一定にしつつ、安定した幅および周期でウィービングを行うことは初心者には難しいことがわかる。
【0074】
上述した実施形態によれば、溶接士の動作の安定性や溶接士の動作に関わる各種パラメータの適正度合いに基づいて、溶接施工に関する溶接士の技能評価を高い精度で行うことができる。
【0075】
その際、溶接士ごとの5段階の技術評価値を算出することで、複数の施工士に対して客観的な評価を行うことができる。これにより、技術評価の基準を統一して適正に施工士間の技能レベルを比較することができる。また、様々な熟練度の施工士の技術評価値を算出することで、施工士の教育内容に反映させることができる。
【0076】
上述した実施形態では、1つの溶接施工に含まれる3つの溶接パスP1~P3が終了してから技術評価値を算出する場合について説明したが、1つの溶接パスが終了する都度、または所定の数(例えば2つ)の溶接パスが終了する都度、技術評価値を算出するようにしてもよい。
【0077】
また出力情報生成部210は、例えば算出された技術評価値が一定値を下回った項目を検出した際に、溶接士が装着している遮光面またはヘッドセット内の液晶ディスプレイに光でアラートを出力させたり、スピーカから音でアラートを出力させたりしてもよい。
【0078】
このような機構を備えることで、溶接士に対し、連続して行う溶接パスの施工中であっても、不適切な項目の情報を報知して、適正な溶接条件への変更を適宜促すことができる。
【0079】
また、上述した実施形態では、算出された各指標値に基づいて5段階の評価値を算出する場合について説明したが、これには限定されず、2~4段階、または6段階以上の評価位置を算出してもよい。
【0080】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサや、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置や、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0081】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正又は変形をすることが可能である。上記の実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 溶接施工技術評価装置
10 基準データ記憶部
30 出力部
201 電流・電圧値取得部
202 位置情報取得部
203 高さ安定性指標値算出部
204 電流・電圧指標値算出部
205 溶接速度指標値算出部
206 ウィービング安定性指標値算出部
207 ウィービング適正度指標値算出部
208 5段階評価値算出部
209 技術評価値算出部
210 出力情報生成部
図1
図2
図3