(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134782
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】医療器具選定支援システム、および、その動作方法
(51)【国際特許分類】
G16H 40/40 20180101AFI20240927BHJP
【FI】
G16H40/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045143
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510192802
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立国際医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小室 良和
(72)【発明者】
【氏名】篠原 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】内尾 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】原 徹男
(72)【発明者】
【氏名】山田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三原 史規
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】手術工程で執刀医の使用する器具を、看護師が、事前に用意した複数の器具の中から正確に選択し、執刀医へ渡すことを支援する医療器具選定支援システムを提供する。
【解決手段】医療器具選定支援システムは、執刀医または看護師から術式の選択を受け付け、受け付けた術式の工程と、工程に用いられる1以上の器具とを、記憶部から読み出して表示部に表示し、執刀医から所望する器具の選択を受け付けて表示部に表示し、看護師が持ち上げた器具を検出し、看護師が前記執刀医に渡す前に、執刀医が所望した器具と一致しているかどうか判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の術式について、その術式ごとの1以上の工程と、前記工程ごとに用いられる予め定められた1以上の器具とを対応させて記憶した記憶部と、
執刀医または看護師から術式の選択を受け付ける術式受付部と、
前記術式受付部が受け付けた術式の前記工程と前記工程に用いられる1以上の器具とを前記記憶部から読み出して表示部に表示させる器具情報読出部と、
前記執刀医が所望する器具の指示の入力を受け付けて表示部に表示する器具指示受付部と、
前記看護師が選んだ器具が、前記器具指示受付部が受け付けた器具と一致しているかどうかを、前記看護師が前記執刀医に渡す前に判定する器具判定部と
を有することを特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医療器具選定支援システムであって、
前記記憶部には、前記1以上の器具のうち予め定められたデフォルト器具を示す情報が記憶され、
前記器具情報読出部は、前記デフォルト器具を示す情報を前記表示部にさらに表示させることを特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の医療器具選定支援システムであって、
前記器具情報読出部は、前記器具指示受付部が受け付けた執刀医が選択した器具を特定する情報を前記表示部に表示することを特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の医療器具選定支援システムであって、
前記器具指示受付部は、前記執刀医が前記看護師から器具を受け取った後、器具の変更を希望する場合、前記執刀医から器具の変更を音声により受け付け、
前記器具情報読出部は、前記器具指示受付部が受け付けた変更後の器具を特定する情報を前記表示部に表示することを特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の医療器具選定支援システムであって、現工程終了判定部をさらに有し、
前記現工程終了判定部は、前記器具情報読出部が前記表示部に表示させている工程が終了したかどうかを判定し、終了している場合、次の工程と、次の工程に用いられる1以上の器具とを前記記憶部から読み出して表示部に表示させることを特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の医療器具選定支援システムであって、前記器具指示受付部は、前記執刀医から器具の変更を受け付けた場合、前記記憶部に、変更後の器具と、前記執刀医を特定する情報と、前記術式と、器具を変更した前記工程と対応させて前記記憶部に格納し、
前記術式受付部は、執刀医または看護師から術式の選択を受け付ける際に、執刀医に対応させて前記器具を変更した工程の術式の選択を受け付け可能であることを特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項7】
請求項1に記載の医療器具選定支援システムであって、前記看護師が選んだ器具の情報を検出し、検出結果に基づいて、前記器具の種類およびサイズを特定する器具検出部をさらに有することを特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項8】
請求項7に記載の医療器具選定支援システムであって、前記器具検出部は、前記器具の情報として、前記器具の形状、重さ、および、器具に備えられたタグの情報のうち少なくとも一つを検出することを特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項9】
請求項1に記載の医療器具選定支援システムであって、前記器具指示受付部は、音声による器具の指示を受け付ける音声認識部を有すること特徴とする医療器具選定支援システム。
【請求項10】
医療器具選定支援システムの動作方法であって、
執刀医または看護師から術式の選択を受け付けるステップと、
受け付けた術式の工程と、工程に用いられる1以上の器具とを、記憶部から読み出して表示部に表示させるステップと、
執刀医から所望する器具の選択を受け付けるステップと、
前記看護師が持ち上げた器具が、執刀医が所望した器具と一致しているかどうか判定するステップと
を有することを特徴とする医療器具選定支援システムの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術中に医師が使用する器具(メス・鉗子・鑷子・剪刀等)を、看護師がトレーから選択して執刀医へ渡す際の補助をするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院における手術は、人体の複数の部位に対して行われ、部位ごとの疾患や損傷に応じて多数の術式があり、それぞれ複数の工程を含む。工程ごとに使用される器具(メス・鉗子・鑷子・剪刀等)の種類やサイズが異なる。複数の術式ごとの工程と、工程ごとに使用される器具は、紙に印刷された手術手順書に記載されている。執刀医は、多数の手術手順書から、今回の術式の手術手順書を探し、それをもとに工程を確認し、複数の医師によってカンファレンスを行って手術内容をさらに検討し、工程を工夫したりする。一方、看護師は、手術手順書をもとに、各工程で用いる複数の器具を予めそろえてトレーに並べ、器具の名称を覚え、工程ごとに使用する可能性の高い器具とそのサイズを覚える等して手術に備える。
【0003】
手術中の執刀医は、手術部位の視野から目を離すことができず、次に使用する器具の種類を、口頭で執刀医の横に立つ器械出し看護師に伝える。器械出し看護師は、執刀医が発語した機器の名称を聞き取り、予め用意しておいたトレーから器具を選び出し、執刀医の手のひらに載せて渡す。執刀医は、渡された器具のサイズが、所望するサイズと異なる場合は、「もっと小さいもの」や「○○番」等を発語して器械出し看護師に伝え、器械出し看護師は、トレーから指示されたサイズの器具を選び直し、執刀医の手のひらに載せて渡す。この動作が、手術の開始から、複数の工程がすべて完了するまで、繰り返される。
【0004】
よって、器械出し看護師は、使用する多数の器具の名称、複数のサイズ、および、工程ごとに標準的に使用される器具のサイズを事前に完璧に覚えて、執刀医が所望する種類およびサイズの器具を素早く渡すことが、手術時間を短縮するために望まれている。
【0005】
しかしながら、多数の術式の多数の器具の名称やサイズ、工程ごとの標準的な器具のサイズを事前に完璧に覚えるのは看護師にとって容易ではなく、負担が大きい。また、同一の器具であっても、執刀医や病院によって呼び方が異なることがあり、看護師が覚える必要のある名称の種類はさらに多くなる。また、執刀する医師によっては、好んで使用する器具のサイズが異なる場合もある。
【0006】
そのため、特許文献1では、器具の標準的な名称(例えば「○○メス」「××鉗子」)に対し、使用される可能性のある別の名称(例えば「○×式」やメーカー名)や、その器具が用いられる手術の術式、その器具が使用されるタイミング、その器具の用途、その器具のパーツの名称、その器具と同時に使用される物の名称等を対応付けた参照テーブルを記憶するシステムが開示されている。このシステムは、器具の名称等が、執刀医によって指示された場合、音声認識によりそれを認識して参照テーブルを検索し、対応付けられている他の名称等を表示する。これにより、例えば執刀医が「この前使った青いあれ、ください」と明確に器具の名称を指示しなかった場合であっても、システムは、「この前使った」「青い」「あれ」等の単語から、参照テーブルを検索して、対応する可能性のある器具の名称等を表示する、と記載されている。よって看護師は、可能性のある器具を認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多数の種類の器具の種類やサイズ、多数の術式の工程ごとに用いられる標準的な器具の種類とサイズを看護師が覚えるのは容易ではない。そのため、執刀医が要求する器具を間違わずに手渡せるかどうかは、器械出し看護師の熟練度に依存する。看護師が、執刀医が要求する器具を正確に選択できない場合、手術時間が長くなり、患者の負担が大きくなる。
【0009】
特許文献1に記載されているシステムは、執刀医の発語した器具の名称が、標準的な名称ではない場合、可能性のある器具が検索されて表示されるが、表示された器具が執刀医の要求している器具かどうかは看護師が判断しなければならない。そのため、表示された器具を選択するかどうかは、看護師の熟練度に依存する。また、その器具を、トレー内の複数の器具から正確に選ぶためには、器具の種類やサイズを事前に十分に覚えておく必要がある。
【0010】
本発明の目的は、手術工程で執刀医の使用する器具を、看護師が、事前に用意した複数の器具の中から正確に選択し、執刀医へ渡すことを支援するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の医療器具選定支援システムは、複数の術式について、その術式ごとの1以上の工程と、工程ごとに用いられる予め定められた1以上の器具とを対応させて記憶した記憶部と、執刀医または看護師から術式の選択を受け付ける術式受付部と、術式受付部が受け付けた術式の工程とその工程に用いられる1以上の器具とを記憶部から読み出して表示部に表示させる器具情報読出部と、執刀医が所望する器具の指示の入力を受け付ける器具指示受付部と、看護師が選んだ器具が、器具指示受付部が受け付けた器具と一致しているかどうかを、看護師が執刀医に渡す前に判定する器具判定部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、工程ごとに用いられる1以上の器具が表示部に表示されるため、器械出し看護師は、執刀医が指示する器具を容易に認識できるとともに、選んだ器具が、執刀医が所望する器具と一致しているかどうかの判定を受けることができるため、器具を間違わずに執刀医に渡すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の医療器具選定支援システム1の構成を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態の医療器具選定支援システム1の制御部2の機能ブロック図。
【
図3】第1実施形態の記憶部3内のデータベースの術式の一例を示す図。
【
図4】第1実施形態の医療器具選定支援システム1のフローチャート。
【
図5】(a)および(b)第1実施形態の医療器具選定支援システム1の動作を説明する図。
【
図6】(a)および(b)第1実施形態の医療器具選定支援システム1の表示画面例を説明する図。
【
図7】(a)~(e)第1実施形態の医療器具選定支援システム1の動作を説明する図。
【
図8】(a)および(b)第1実施形態の医療器具選定支援システム1の動作を説明する図。
【
図9】(a)および(b)第1実施形態の医療器具選定支援システム1の動作を説明する図。
【
図10】(a)および(b)第1実施形態の医療器具選定支援システム1の動作を説明する図。
【
図11】第2実施形態の医療器具選定支援システム1のフローチャート。
【
図12】(a)~(c)第1実施形態の医療器具選定支援システム1の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
<<第1実施形態>>
第1実施形態の医療器具選定支援システム1について説明する。第1実施形態の医療器具選定支援システム1は、手術に係わる執刀医から器具の指示を受けた器械出し看護師が、予め用意しておいた複数の器具の中から、指示された器具を正確に選んで執刀医に手渡すことを支援するシステムである。医療器具選定支援システム1は、術前に執刀医または看護師から術式の選択を受け付け、手術中に執刀医の発語等により、医療器具選定支援システム1に器具を指示する入力を行い、器械出し看護師は、医療器具選定支援システム1の表示部5の表示を見て器具を選んで執刀医に手渡す。器械出し看護師が器具を選んだ際に、医療器具選定支援システム1は、選ばれた器具が執刀医の指示した器具と一致しているかどうかを判定する機能を備える。これにより、器械出し看護師は、執刀医に指示された器具を間違いなく選んで、執刀医に渡すことができる。以下、詳しく説明する。
【0016】
図1は、医療器具選定支援システム1の全体構成図であり、
図2は、制御部2の機能を示すブロック図である。
図3は、記憶部3内のテーブルを示す図である。
【0017】
図1のように、医療器具選定支援システム1は、制御部2と、記憶部3と、表示部5と、入力部7と、器具検出部4とを備えて構成される。
【0018】
図3のように、記憶部3内には、複数の術式の手術内容を示す情報(データベース)がテーブル等の形式で予め格納されている。具体的には例えば、術式の工程と、工程内容と、工程ごとに用いられる1以上の器具とを対応づけたテーブルが、記憶部3内に術式ごとに格納されている。また、工程ごとの1以上の器具には、その工程において標準的に使用される器具(ここではデフォルト器具と呼ぶ)を示す情報も予め格納されている。
図3の例では、四角の枠で囲んだ器具がデフォルト器具である。
【0019】
入力部7は、執刀医、および、器械出し看護師から音声による入力を受け付ける。また、入力部7は、器械出し看護師の外側で作業する外回り看護師から、音声、または、キーボードやマウスやタッチパネル等の手動操作による入力を受け付ける。そのため、入力部7は、マイク71等の音声入力装置とキーボード72やマウスやタッチパネル等の手動入力装置とを備えている。
【0020】
制御部2は、
図2に示したように、入力受付部202と、器具情報読出部201と、演算処理部203とを備えて構成される。
【0021】
入力受付部202は、入力部7を介して、執刀医および看護師等から、手術の開始時までに術式を受け付ける術式受付部2021と、手術中に器具の指示を受け付ける器具指示受付部2022とを備えている。器具指示受付部2022は、指示を音声で受けた場合に、音声を認識する音声認識部2023を含む。
【0022】
器具情報読出部201は、術式受付部2021が受け付けた術式の工程と、各工程に用いられる1以上の器具と、デフォルト器具を示す情報とを読み出して表示部5に順次表示させる。
【0023】
演算処理部203は、器具判定部2031を含む。器具判定部2031は、看護師が選んだ器具が、器具指示受付部2022が受け付けた器具と一致しているかどうかを、看護師が執刀医に渡す前に判定し、判定結果を表示部5に表示する。
【0024】
また、演算処理部203は、医療器具選定支援システム1の全体の動作を制御する機能も有する。
【0025】
器具検出部4は、器械出し看護師が選んだ器具の情報を検出し、検出した情報から器具の種類およびサイズを特定する。なお、器具の情報を検出し、器具の種類およびサイズを特定する方法としては、どのような方法を用いてもよく、公知の方法を用いることができる。例えば、器具の情報として、器具検出部4は、器具の形状、重さ、および、器具に備えられたタグの情報、のうち少なくとも一つを検出する方法を用いることができる。
【0026】
具体的には、器具検出部4は、カメラと画像処理部を含み、カメラによって、看護師が選んだ器具を撮影し、画像処理部によりその輪郭を抽出することにより、器具の形状を検出し、形状からその器具の種類およびサイズを特定する構成のものを用いることができる。
【0027】
また、器具検出部4は、器械出し看護師が手術のために予め用意した複数の器具が置かれたトレーの重さを測定する重量計測装置と、器具の重さと器具の種類およびサイズとの関係を格納したテーブルを含むものを用いてもよい。重量計測装置は、器械出し看護師が器具を選択して持ち上げる前後のトレーの重量の差から、器械出し看護師が持ち上げた器具の重さを検出する。検出した器具の重さを、テーブルに格納された器具の重さと種類およびサイズの関係に参照することにより、器具の種類およびサイズを求めることができる。
【0028】
さらに、予め器具に消毒済みのタグを取り付けておき、タグに記されたバーコードまたはICチップ等の示す情報を、器具検出部4が読み取る構成としてもよい。器具検出部4は、バーコードやICチップ等の示す情報に対応する器具の種類およびサイズを、テーブル等を参照することにより求める。
【0029】
制御部2は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、予めプログラムが格納されたメモリとを含むコンピュータにより構成されている。プロセッサがプログラムを読み込んで実行することにより、ソフトウエアにより上述の入力受付部202、器具情報読出部201および演算処理部203の機能を実現する。なお、制御部2は、その一部または全部を、ハードウエアにより構成することができる。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて、入力受付部202、器具情報読出部201および演算処理部203の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0030】
医療器具選定支援システム1の各部の動作について、
図4のフローを用いて説明する。
【0031】
<ステップ401>
手術開始時までに、医師または看護師は、入力部7を介して本システム1を操作し、記憶部3に予め格納されている複数の術式を表示部5に表示させ、今回の手術の術式を音声または手動で選択する。術式受付部2021は、術式の選択を受け付け、器具情報読出部201に出力する。
【0032】
なお、器械出し看護師は、今回の手術の術式の工程ごとの器具として表示部5に
図3のように表示される器具を、予めすべて取り揃え、トレーの中に並べて置く。
【0033】
<ステップ402,403>
工程開始時には、ステップ402からステップ403に進み、ステップ403において、器具情報読出部201は、術式受付部2021が受け付けた術式と、その術式を構成する工程と、工程に用いられる1以上の器具と、デフォルト器具を示す情報とを記憶部3から読み出し、最初の工程で使用する器具名(メス、鉗子、鑷子、剪刀等)を表示部5に表示させる。
【0034】
ここでは、一例として、術式が、
図3のように腹腔鏡下胆のう摘出手術である場合を例に説明する。この術式は、工程(1)~工程(9)からなり工程(1)患者入室→工程(2)挿管・準備→工程(3)開腹・ポート留置→工程(4)頸部剥離→工程(5)クリッピング・体部底部剥離→工程(6)閉創→工程(4)レントゲン→工程(8)抜管→工程(9)患者退室、からなる。
【0035】
工程(1)では、器具を使用しないため、ステップ403で表示部5に表示する器具はなく、したがって、ステップ404~409も行わず、ステップ410に進む。
【0036】
<ステップ410>
ステップ410において、手術中の工程(ここでは工程(1))が終了したかどうかを、システム1の演算処理部203が判定する。判定は、手術室に配置されたカメラが撮影した映像を画像処理し、本工程が完了したことを示す予め定めた状態が検出されたならば、工程終了と判定し、ステップ402に戻る(
図5(a))。例えば、工程(1)患者入室の場合、カメラの画像から患者が手術台に搭載されたことを示す状態が、画像処理により検出されたならば、工程(1)が完了したと判定する。また、器具を使用する工程である場合、その器具が使用されたことがカメラにより撮影されたことが検出されたならば、工程終了と判定する。
【0037】
また、ステップ410において、器械出し看護師または外回り看護師が、入力部7を介して、現在の工程が終了したことを入力した場合にも、その工程が完了したと演算処理部203は判定する(
図5(b))。
【0038】
同様に、工程(2)挿管・準備においても器具を使用しないため、ステップ403で表示部5に表示する器具はなく、したがって、ステップ404~409も行わず、ステップ410に進み、工程終了を判定したならば、ステップ402に戻る。
【0039】
工程(3)開腹・ポート留置においては、ステップ402からステップ403に進み、使用する器具があるため、本工程で使用する器具名を表示部5に表示する。たとえは、
図6(a)のように、表示部5の表示画面の上部の領域601に工程内容を表示し、下部の器具表示領域602に、その工程の使用器具を記憶部3から読み出して表示する(
図3参照)。
図6(a)の例では、メス・鉗子・鑷子・剪刀が器具表示領域602に表示されている。
図6(b)の例は、
図3の工程(3)の例であり、サイズの異なる3種類のメス(No.8メス、No.10メス、No.12メス)が使用される器具として表示されている。このうち、No.10メスは、デフォルト器具(標準的に使用される器具)であるので、そのことを示す情報(ここでは、四角の枠囲み)が表示されている。なお、デフォルト器具であることを示す情報の表示方法は、枠囲みに限られるものではなく、ハイライト表示や着色表示等、所望の表示方法を用いることができる。
【0040】
器械出し看護師は、ステップ403で表示される
図6(a)、(b)等の表示を見ることにより、この工程で使用される器具の種類を認識することができ、そのうちデフォルト器具も把握することができる。
【0041】
<ステップ404>
執刀医が、所望する器具名を発声した場合、その音声が入力部7のマイク71により集音され、器具指示受付部2022の音声認識部2023により認識され、受け付けられる(
図7(a))。
【0042】
なお、執刀医の音声の認識を音声認識部2023が失敗した場合(
図7(b)、執刀医は術野より目が離せないので、器械出し看護師が、再度、音声により執刀医の所望する器具名を発声し、音声認識部2023に認識させる(
図7(c))。それでも音声認識部2023が認識に失敗する場合(
図7(d))、外回り看護師が、入力部7のキーボード72等の手動入力部により、執刀医の所望する器具名を手動入力し、器具指示受付部2022がこれを受け付けることができる。
【0043】
<ステップ405>
演算処理部203は、器具指示受付部2022が執刀医から受け付けた器具を、表示部5に表示されている器具の一覧の該当する器具名にハイライト表示する等により、表示する。
【0044】
<ステップ406>
器械出し看護師は、表示部5を見て、ハイライト表示等により表示された器具が、執刀医の所望している器具であると認識し、トレーからその器具を選んで持ち上げる。
【0045】
<ステップ407>
器具検出部4は、器具が持ち上げられたならば、その器具を検出し、種類と大きさを特定する。検出方法は、すでに述べた通り、トレーの重量で検出する方法、持ち上げられた器具の形状をカメラで検出する方法、持ち上げられた器具のタグ(バーコードやICチップ)を検出する方法等、を用いることができる。
【0046】
<ステップ408>
演算処理部203の器具判定部2031は、ステップ407で器具検出部4が検出した器具の検出結果を受け取って、ステップ404で器具指示受付部2022が受け付けた執刀医の所望する器具と一致しているかどうかを判定する。
【0047】
一致していない場合、器具判定部2031は、器械出し看護師が持っている器具が正しくないため、表示部5に、器械出し看護師が持っている器具を、注意を促す色(例えば、赤色)のハイライトをつけて表示し、ステップ406へ戻る(
図8(b))。これにより、器械出し看護師は、トレーから正しい器具を持ち上げ、再度器具検出部4の判定を受けることができるため、正しくない器具を医師に渡してしまうのを防ぐことができる。
【0048】
一方、ステップ408において、器具検出部4が検出した器具が、執刀医の所望する器具と一致している場合は、器具判定部2031は、表示部5に表示されているその器具を、使用中であることを示す色(例えば、青色)のハイライトに変更し、ステップ409へ進む(
図8(a)。器械出し看護師は、持ち上げた正しい器具を、執刀医に手渡す。
【0049】
<ステップ409>
つぎに、器具指示受付部2022の音声認識部2023は、器具を受け取った執刀医から器具の修正の発声があるかどうか判定する。
【0050】
執刀医が、「小さい」や「もっと小さい」等を発声した場合は、器具判定部2031は、器具指示受付部2022から器具の修正の指示を受け付け、現在使用中の器具(青色のハイライトの器具)よりも小さい器具を表示中の器具から選択して、変更を示す色(例えば、黄色)のハイライトで表示する(
図9(a)参照)。
【0051】
このとき、使用中の器具よりも大きい器具については、器械出し看護師が誤って選択することがないように、表示部5の表示から消してもよい。
【0052】
また、ステップ409において、執刀医の発声が音声認識部2023によってうまく認識されない場合には、外回り看護師が入力部7のキーボード72等を用いて、小さいものへの変更を入力してもよい。
【0053】
<ステップ410>
ステップ410において、手術中の工程(ここでは工程(3))が終了したかどうかを、システム1の演算処理部203が判定する。判定方法は、手術室のカメラが撮影した映像等を用いて判定するか、器械出し看護師または外回り看護師が、入力部7を介して、現在の工程が終了したことを入力してもよい。
【0054】
ステップ410において、現在の工程が終了したと判定されたならば、ステップ402に戻り、すべての工程が終了するまで、次工程に進んで、ステップ403~410を繰り返す。
【0055】
一方、ステップ410において、現在の工程がまだ終了していないと判定されたならば、ステップ403~409を繰り返す。
【0056】
以上のように、本実施形態の医療器具選定支援システム1は、器械出し看護師に対して、その手術の各工程で使用する可能性のある器具を記憶部3のデータベースから読み出して、表示部5に表示することができるため、器械出し看護師は、表示部5を見て使用する可能性のある器具を容易に把握できる。
【0057】
また、執刀医の音声を音声認識部2023で認識して、執刀医の所望する器具の入力を受け付け、その器具を表示部5においてハイライト等で表示することができるため、器械出し看護師は、その表示を見て執刀医の所望している器具を容易に認識し、トレーから持ち上げることができる。
【0058】
さらに、器械出し看護師がトレーから持ち上げた器具を、器具判定部2031により検出し、執刀医が所望している器具と一致しているかどうかを判定することができる。これにより、持ち上げた器具が正しいか、間違っているか、把握でき、間違っている場合には、再度器具を選び直すことができる。よって、間違った器具を、執刀医に渡してしまうのを防止することができる。
【0059】
よって、本実施形態の医療器具選定支援システム1は、器械出し看護師が、複数の器具の中から正確に選択し、執刀医へ渡すことを支援することができ、器械出し看護師の経験が浅い場合でも、執刀医への渡す器具の正確さを向上させ、手術時間を短縮することができる。
【0060】
なお、上述のステップ409において、執刀医が、現在持っている器具を別の器具への変更を求める場合、執刀医の発声した言葉が「小さい」→「もっと小さい」→「一番小さい」の順で、執刀医がさらに小さい器具を求めていることを器具指示受付部2022が認識してもよい。具体的には、「小さい」は、現在使用している器具よりも1段階小さいものを所望しており、「もっと小さい」は、現在使用している器具よりも2段階小さいものを所望しており、「一番小さい」は、その工程で使用する可能性のある器具で一番小さいものを所望している、と定めてもよい。
【0061】
<<第2実施形態>>
第2実施形態の医療器具選定システムについて説明する。
【0062】
第2実施形態の医療器具選定支援システムは、フローを
図11に示したように、第1実施形態の
図4と同様のフローであるが、執刀医が使用した器具情報を各工程で記録していくステップ422をステップ410の前に配置している。これにより、
図12(a)~(c)に示したように、執刀医A,執刀医B、執刀医Cによってそれぞれ、工程・術式で使用する器具が異なった場合、各執刀医が使用した器具が、執刀医ごとに記憶部3のデータベースに蓄積され、新たな術式として格納される。この点で第1実施形態とは異なる。
【0063】
また、
図11のフローでは、ステップ401において術式を選択した後、執刀医を選択するステップ421を行う点でも第1の実施形態とは異なっている。ステップ421により、同じ執刀医が前回同じ術式で手術を行った際に使用した器具が記録された術式を選択することができるため、ステップ403において工程で使用する器具名を表示する際に、同じ執刀医が前回使用した器具を先回りして表示することができる。
【0064】
よって、器械出しの看護師は、表示部5に表示された器具を確認することにより、その執刀医が好んで使用する器具を把握でき、その器具を指示された際に、慌てることなく選択することができる。
【0065】
他の構成、動作および効果は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【符号の説明】
【0066】
1 医療器具選定支援システム
2 制御部
3 記憶部
4 器具検出部
5 表示部
7 入力部
71 マイク
72 キーボード
201 器具情報読出部
202 入力受付部
203 演算処理部
601 領域
602 器具表示領域
2021 術式受付部
2022 器具指示受付部
2023 音声認識部
2031 器具判定部