(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134797
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】油圧ポンプユニットの送り速度切替バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20240927BHJP
F15B 11/024 20060101ALI20240927BHJP
F16K 17/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F15B11/02 B
F15B11/024 Z
F16K17/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045167
(22)【出願日】2023-03-22
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 良太
【テーマコード(参考)】
3H059
3H089
【Fターム(参考)】
3H059AA03
3H059BB05
3H059CA02
3H059CC02
3H059CD05
3H059CE02
3H059EE01
3H059FF03
3H089AA72
3H089BB15
3H089CC01
3H089DA02
3H089DA07
3H089DA13
3H089DB03
3H089DB43
3H089GG02
(57)【要約】
【課題】ピストンの高速送りと低速送りを行う制御と、低速送りのみを行う制御を切り替えられるポンプユニットを構成するための送り速度切替バルブ装置を提供する。
【解決手段】送り速度切替バルブ装置9は、弁ケース91、ポペット弁体92、弁棒93、クランクレバー94を具備する。クランクレバー94は、180°正逆回転して、弁棒93を高速送り位置又は低速送り位置に配置する。弁棒93が高速送り位置にあると,ポペット弁体92はリリーフばね95で、入り口91aを閉じ、ばね95の設定油圧に達するまで、2つのポンプ3a、3bの油が油路7に送られピストンの早送りが行われる。弁棒93が低速送り位置にあると、ポペット弁体92が開放位置に引き上げられ、ポンプ3bからの油が排油され、ポンプ3bのみによるピストンの低速送りが行われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種のポンプと、当該ポンプを駆動する駆動装置と、前記ポンプから油路を介してシリンダへ送られる油を制御する制御装置とを具備し、当該制御装置内において前記2種のポンプが前記油路に直列に接続されるポンプユニットにおいて、
前記2種のポンプの一方と前記油路との間に介設される、ピストンの送り速度切替バルブ装置であって、
一方の前記ポンプと前記油路に連通する入り口と、当該入り口と油タンクとに連通する排油口とを有する弁ケースと、
前記弁ケース内に、前記入り口を閉鎖して前記一方のポンプからの油を前記油路に送る閉鎖位置と、開放して前記一方のポンプからの油を排油する開放位置の2位置に軸線方向に移動可能に組み込まれ、かつリリーフばねにより閉鎖位置に付勢されるポペット弁体と、
一端側が前記弁ケース内で前記ポペット弁体に接続され、他端側が前記弁ケースから外部に突出し、前記弁ケースに対し押し込まれる高速送り位置と、引き出される低速送り位置の2位置に軸線方向に移動可能に組み込まれる弁棒と、
前記弁ケースの外側において前記弁棒の他端に接続され当該弁棒を高速送り位置と低速送り位置の2位置に切り替えるクランクレバーとを具備し、
前記弁棒は、前記リリーフばねよりばね定数の大きい圧縮ばねにより高速送り位置に付勢され、
前記弁棒と前記ポペット弁体とは、前記弁棒が高速送り位置にあるとき前記ポペット弁体が前記弁棒から自由で閉鎖位置に配置され、前記弁棒が低速送り位置にあるとき前記ポペット弁体が前記弁棒により開放位置に引き上げられるように、軸線方向に所定の遊びをもって接続され、
前記弁棒が高速送り位置にあるとき前記リリーフばねの設定圧まで前記2つのポンプによるピストンの早送りが行われ、前記弁棒が低速送り位置にあるときピストンの早送りが終了されるように構成されることを特徴とする送り速度切替バルブ装置。
【請求項2】
前記ポペット弁体は、前記弁棒側の端から軸線に沿う所定深さの接続穴を具備し、
前記弁棒は、軸線方向の長孔を有する一端側が、前記ポペット弁体の前記接続穴に挿入され、当該長孔を貫通するピンにて前記ポペット弁体に対し当該長孔の範囲で軸線方向相対移動自在であり、かつ早送り位置において前記ピンが前記長孔の中間位置に配置されることにより、前記ポペットが前記リリーフばねの付勢力のみのより閉鎖位置に配置されるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の送り速度切替バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線接続用スリーブの圧縮器のような油圧工具のシリンダに接続されるポンプユニットにおいて、ピストンの送り速度を切り替えるために設けられる手動式の切替バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低圧用と高圧用の2種のポンプと、これを駆動するエンジンと、ポンプからの送油を制御する制御装置とを具備するポンプユニットが知られている。このポンプユニットでは、ポンプからの吐油を油路径由でシリンダへ流入させ、まずピストンを早送りさせ、ダイスが被圧縮物に当接して所定圧力に達したとき、バルブを切替えて、高圧用ポンプによる低速、大圧力の本圧縮を行うように構成される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のポンプユニットは、早送りの工程を省略して低速送りのみが求められる油圧工具には適用することができない。
従って、本発明は、ピストンの早送りと低速送りを順次行う制御と、低速送りのみを行う制御を切り替えて各種の油圧工具に適用することができるポンプユニットを構成するための送り速度切替バルブ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の説明において添付図面の符号を参照するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の送り速度切替バルブ装置9は、2種のポンプ3a、3bが油路7に直列に接続されるポンプユニット4において、一方のポンプ3bと油路7との間に介設される。送り速度切替バルブ装置9は、弁ケース91と、ポペット弁体92と、弁棒93と、クランクレバー94とを具備する。弁ケース91は、一方のポンプ3bと油路7に連通する入り口91aと、当該入り口91aと油タンク10とに連通する排油口91bとを有する。ポペット弁体92は、弁ケース91内に、入り口91aを閉鎖して一方のポンプ3bからの油を油路7に送る閉鎖位置と、開放して一方のポンプ3bからの油を排油する開放位置の2位置に軸線方向に移動可能に組み込まれ、かつリリーフばね95により閉鎖位置に付勢される。弁棒93は、一端側が弁ケース91内でポペット弁体92に接続され、他端側が弁ケース91から外部に突出し、弁ケース91に対し引き込まれた高速送り位置と、引き出された低速送り位置の2位置に軸線方向に移動可能に組み込まれる。クランクレバー94は、弁ケース91の外側において弁棒93の他端に接続され、弁棒93を高速送り位置と低速送り位置の2位置に切り替える。弁棒93は、リリーフばね95よりばね定数の大きい圧縮ばね96により高速送り位置に付勢され、弁棒93とポペット弁体92とは、弁棒93が高速送り位置にあるとき、ポペット弁体92が弁棒93から自由で、閉鎖位置に配置され、弁棒93が低速送り位置にあるときポペット弁体92が弁棒93により開放位置に引き上げられるように、軸線方向に所定の遊びをもって接続される。弁棒93が高速送り位置にあるとき、リリーフばね95の設定圧まで2つのポンプ3a、3bによるピストンの早送りが行われ、弁棒93が低速送り位置にあるとき、ピストンの早送りが行われないように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の送り速度切替バルブ装置によれば、ピストンの早送りと低速送りを順次行う制御と、低速送りのみを行う制御を切り替えて、各種の油圧工具に適用することができるポンプユニットを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の送り速度切替バルブ装置を備えたポンプユニットの説明図である。
【
図2】1の送り速度切替バルブ装置を備えたポンプユニットの油圧回路図である。
【
図3】本発明の送り速度切替バルブ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、油圧ポンプユニット1は、モータ、エンジンのような駆動装置2と、それによつて駆動される油圧ポンプ3と、ポンプ3からの送油の制御装置4とを具備する。圧縮機5のシリンダ6は、加圧側油路7aと戻り側油路7bの2本の油路を介して制御装置4に接続される。制御装置4は、手動切替バルブ8、送り速度切替バルブ装置9を具備する。
【0009】
図2に、制御装置4の油圧回路を示す。ポンプ3は、高圧低速用のポンプ3a、低庄高速用のポンプ3bの2つからなる。
図2において、ポンプ3は駆動しているが、切替弁8が中立位置にあり、シリンダ6には送油されていない。
【0010】
いま、送り速度切替バルブ装置9が、図示左側の高速送り位置に切り替えられ、かつ手動切替バルブ8がオン位置に切り替えられると、ポンプ3a及びポンプ3bの双方の油が油路7に合流し、手動切替バルブ8を通つて油路7a、7bへ琉れる。 シリンダ6はピストン10を早送りし、圧縮機5の可動ダイス11が図示しない被圧縮体に当接すると、油路7の油圧が上昇し、例えば、50kg/cm2程度に達すると、送り速度切替バルブ装置9がアンロードし、以後ポンプ3aのみによる圧縮送りが行われる。
【0011】
また、送り速度切替バルブ装置9が、図示右側の低速送り位置に切り替えられ、かつ手動切替バルブ8がオン位置に切り替えられると、低庄高速用ポンプ3bからの油は当初からアンロードされ、ポンプ3aの油だけが手動切替バルブ8を通つて油路7a、7bへ琉れ、圧縮機5がゆっくりと動作する。
【0012】
送り速度切替バルブ装置9の構造を
図3に示す。送り速度切替バルブ装置9は、弁ケース91、これに組み込まれるポペット弁体92、弁棒93,クランクレバー94を具備する。
【0013】
弁ケース91は、入り口91aと、これに連通する排油口91bを具備する。入り口91aは、低庄高速用ポンプ3bと油路7とに連通する。排油口91bは、入り口91aと油タンク10とに連通する。
【0014】
ポペット弁体92は、弁ケース93内に、軸線方向に移動可能に組み込まれ、
図3(A)に示す閉鎖位置において先端が、入り口91aを閉鎖し、
図3(B)に示す開放位置において、先端が入り口91aを開放し、かつリリーフばね95により閉鎖位置に付勢される。したがって、ポペット弁体92が閉鎖位置にあるとき、ポンプ3bからの油は油路7に送られ、ポペット弁体92が開放位置にあるとき、ポンプ3bからの油は排油口91bから排油される。ポペット弁体92は、基端側に弁棒93の先端部を軸線方向相対移動自在に受け入れる軸線に沿う所定深さの接続穴92aを具備する。
【0015】
弁棒93は、弁ケース91に軸線方向に移動可能に組み込まれ、一端側が弁ケース91内においてポペット弁体92の接続穴92aに、軸線方向相対移動自在に受け入れられ、長孔93aと枢ピン92bを介してポペット弁体92に接続される。弁棒93の他端側は、弁ケース91から外部に突出し、長孔93bと枢ピン94aを介してクランクレバー94に接続される。弁棒93は、リリーフばね95よりばね定数の大きい圧縮ばね96により、常時、弁ケース91の内方へ引き込まれている。
【0016】
クランクレバー94は、円周面94bを有する基端側が、弁ケース91の外側において、弁棒93の長孔93bに、枢ピン94aで枢支される。枢ピン94aは、円周面94bに対して偏心した位置にあり、常時圧縮ばね96を圧縮した状態で、弁棒93を枢支している。このため、枢ピン94aは、常時長孔93aの外方端に位置し、クランクレバー94の円周面94aが常時弁ケース91の外端面に圧接されている。したがって、クランクレバー94は、円周面94aを弁ケース91の外端面に摺接させつつ、180°正逆回転することにより、弁棒93を高速送り位置(
図3(A))と低速送り位置(
図3(B))の2位置に切り替える。
【0017】
弁体92と弁棒93とは、枢ピン92bと長孔93aの係合により、軸線方向に所定の遊びを持って接続される。弁棒93が高速送り位置にあるとき、枢ピン92が長孔93aの中間位置にあって、ポペット弁体92は、弁棒93から自由で、リリーフばね95により、閉鎖位置に配置される。弁棒93が低速送り位置にあるとき、枢ピン92bが長孔93aの先端に当接し、ポペット弁体92は、弁棒93により開放位置に引き上げられる。
【0018】
したがって、弁棒93が高速送り位置(
図3(A))にあるとき、油路7内の油圧がリリーフばね95の設定圧に至るまで、入り口91aが閉じ、2つのポンプ3a、3bの油が油路7に送られ、ピストンの早送りが行われる。油路7内の油圧がリリーフばね95の設定圧を超えると、入り口91aが開いてポンプ3bからの油が、排油口91bからドレンされ、早送りが終了し、ポンプ3aのみによる低速送りが継続する。一方、弁棒93が低速送り位置(
図3(B))にあれば、最初から入り口91aが開いて、ポンプ3bからの油はドレンされるので、ピストンの早送りは行わることなく、低速送りのみが行われる。
【符号の説明】
【0019】
1 油圧ポンプユニット
2 エンジン(駆動装置)
3 ポンプ
3a ポンプ
3b ポンプ
4 油圧制御装置
5 圧縮機
6 油圧シリンダ
7 油路
7a,7b 油路
8 手動切替バルブ
9 送り速度切替バルブ装置
91 弁ケース
91a 入り口
91b 排油口
92 ペポット弁体
92a 接続穴
92b 枢ピン
93 弁棒
93a 長孔
93b 長孔
94 クランクレバー
94a 枢ピン
94b 円周面
95 リリーフばね
96 圧縮ばね
10 ピストン
11 可動ダイス