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特開2024-134799廃熱利用システム及び廃熱の利用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134799
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】廃熱利用システム及び廃熱の利用方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240927BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F25B1/00 397Z
F25B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045173
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
(72)【発明者】
【氏名】松村 尭之
(57)【要約】
【課題】冷凍サイクル装置で生じる廃熱の有効利用を図ることを可能とする廃熱利用システム及び廃熱の利用方法を提供する。
【解決手段】廃熱の利用方法は、第1熱媒体が流れると共に車載熱交換部123を含む車載熱媒体回路網120と、前記第1熱媒体と同種の第2熱媒体が流れると共に施設熱交換部143を含む施設熱媒体回路網140とを通路部材150によって分離可能に接続して前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体が熱媒体として流れる新たな熱媒体回路160を形成すること、及び、新たな熱媒体回路160により、車載冷凍サイクル装置110の廃熱を車載熱交換部123で前記熱媒体に回収して施設側に運ぶこと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網であって、前記第1熱媒体と前記車両に搭載された車載冷凍サイクル装置の第1冷媒とを熱交換させる車載熱交換部を含む車載熱媒体回路網と、
施設に設置されて前記第1熱媒体と同種の第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網であって、前記第2熱媒体と前記施設に設置された施設冷凍サイクル装置の第2冷媒とを熱交換させる施設熱交換部を含む施設熱媒体回路網と、
前記車載熱媒体回路網と前記施設熱媒体回路網とを分離可能に接続する通路部材と、
を含み、
前記通路部材によって前記車載熱媒体回路網と前記施設熱媒体回路網とが接続された場合に形成されて前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体が熱媒体として前記車載熱交換部及び前記施設熱交換部を経由して流れる新たな熱媒体回路により、前記車載冷凍サイクル装置の廃熱が前記車載熱交換部で前記熱媒体に回収されて前記施設側に運ばれるか、又は、前記施設冷凍サイクル装置の廃熱が前記施設熱交換部で前記熱媒体に回収されて前記車両側に運ばれるように構成される、
廃熱利用システム。
【請求項2】
車両に搭載されて第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網と、施設に設置されて前記第1熱媒体と同種の第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網とを通路部材によって分離可能に接続して新たな熱媒体回路を形成することであって、前記車載熱媒体回路網は前記第1熱媒体と前記車両に搭載された車載冷凍サイクル装置の第1冷媒とを熱交換させる車載熱交換部を含み、前記施設熱媒体回路網は前記第2熱媒体と前記施設に設置された施設冷凍サイクル装置の第2冷媒とを熱交換させる施設熱交換部を含み、前記新たな熱媒体回路は前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体が熱媒体として前記車載熱交換部及び前記施設熱交換部を経由して流れる回路である、新たな熱媒体回路を形成すること、及び、
形成された新たな熱媒体回路により、前記車載冷凍サイクル装置の廃熱を前記車載熱交換部で前記熱媒体に回収して前記施設側に運ぶこと、
を含む、廃熱の利用方法。
【請求項3】
車両に搭載されて第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網と、施設に設置されて前記第1熱媒体と同種の第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網とを通路部材によって分離可能に接続して新たな熱媒体回路を形成することであって、前記車載熱媒体回路網は前記第1熱媒体と前記車両に搭載された車載冷凍サイクル装置の第1冷媒とを熱交換させる車載熱交換部を含み、前記施設熱媒体回路網は前記第2熱媒体と前記施設に設置された施設冷凍サイクル装置の第2冷媒とを熱交換させる施設熱交換部を含み、前記新たな熱媒体回路は前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体が熱媒体として前記車載熱交換部及び前記施設熱交換部を経由して流れる回路である、新たな熱媒体回路を形成すること、及び、
前記新たな熱媒体回路により、前記施設冷凍サイクル装置の廃熱を前記施設熱交換部で前記熱媒体に回収して前記車両側に運ぶこと、
を含む、廃熱の利用方法。
【請求項4】
前記新たな熱媒体回路から前記通路部材を取り外して前記新たな熱媒体回路を元の車載熱媒体回路網と元の施設熱媒体回路網とに分離すること、
をさらに含む、請求項2又は3に記載の廃熱の利用方法。
【請求項5】
前記車載熱媒体回路網は、前記第1熱媒体によって運ばれた熱を蓄える車載蓄熱部と前記第1熱媒体又は前記熱媒体によって温度調整される温調機器とを含み、
前記施設熱媒体回路網は、前記第2熱媒体又は前記熱媒体によって運ばれた熱を蓄える施設蓄熱部を含む、請求項2又は3に記載の廃熱の利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置で生じる廃熱を利用するための廃熱利用システム及び廃熱の利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載されて車室内の空気調和を行う車両用空気調和装置の一例が記載されている。特許文献1に記載された車両用空気調和装置は、冷凍サイクル装置の一例であるヒートポンプサイクル装置を有する。特許文献1に記載された車両用空気調和装置では、車室内を冷房しているときに圧縮によって生じた冷媒の温熱が冷凍サイクル装置の廃熱として放出され、車室内を暖房しているときに減圧膨張によって生じた冷媒の冷熱が冷凍サイクル装置の廃熱として放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-40518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、省エネルギーの観点から廃熱の有効利用が求められている。しかし、従来の車両用空気調和装置の冷凍サイクル装置の廃熱は、ほとんど利用されていないか、利用されているとしても、それは車両用空気調和装置が搭載されている車両内で利用されるにとどまり、車両用空気調和装置の冷凍サイクル装置の廃熱が十分に利用されているとはいえないという課題があった。
【0005】
なお、このような課題は、車両用空気調和装置の冷凍サイクル装置に限られるものではなく、例えば、施設に設置された各種装置(例えば、施設用空気調和装置、給湯装置、冷蔵/冷凍装置)を構成する冷凍サイクル装置などにも共通するものである。
【0006】
そこで、本発明は、冷凍サイクル装置で生じる廃熱の有効利用を図ることを可能とする廃熱利用システム及び廃熱の利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、廃熱利用システムが提供される。提供される廃熱利用システムは、車両に搭載されて第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網であって、前記第1熱媒体と前記車両に搭載された車載冷凍サイクル装置の第1冷媒とを熱交換させる車載熱交換部を含む車載熱媒体回路網と、施設に設置されて前記第1熱媒体と同種の第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網であって、前記第2熱媒体と前記施設に設置された施設冷凍サイクル装置の第2冷媒とを熱交換させる施設熱交換部を含む施設熱媒体回路網と、前記車載熱媒体回路網と前記施設熱媒体回路網とを分離可能に接続する通路部材と、を含み、前記通路部材によって前記車載熱媒体回路網と前記施設熱媒体回路網とが接続された場合に形成されて前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体が熱媒体として前記車載熱交換部及び前記施設熱交換部を経由して流れる新たな熱媒体回路により、前記車載冷凍サイクル装置の廃熱が前記車載熱交換部で前記熱媒体に回収されて前記施設側に運ばれるか、又は、前記施設冷凍サイクル装置の廃熱が前記施設熱交換部で前記熱媒体に回収されて前記車両側に運ばれるように構成される。
【0008】
本発明の他の側面によると、廃熱の利用方法が提供される。提供される廃熱の利用方法は、車両に搭載されて第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網と、施設に設置されて前記第1熱媒体と同種の第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網とを通路部材によって分離可能に接続して新たな熱媒体回路を形成することであって、前記車載熱媒体回路網は前記第1熱媒体と前記車両に搭載された車載冷凍サイクル装置の第1冷媒とを熱交換させる車載熱交換部を含み、前記施設熱媒体回路網は前記第2熱媒体と前記施設に設置された施設冷凍サイクル装置の第2冷媒とを熱交換させる施設熱交換部を含み、前記新たな熱媒体回路は前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体が熱媒体として前記車載熱交換部及び前記施設熱交換部を経由して流れる回路である、新たな熱媒体回路を形成すること、及び、形成された新たな熱媒体回路により、前記車載冷凍サイクル装置の廃熱を前記車載熱交換部で前記熱媒体に回収して前記施設側に運ぶこと、を含む。
【0009】
本発明の他の側面によると、廃熱の利用方法が提供される。提供される廃熱の利用方法は、車両に搭載されて第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網と、施設に設置されて前記第1熱媒体と同種の第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網とを通路部材によって分離可能に接続して新たな熱媒体回路を形成することであって、前記車載熱媒体回路網は前記第1熱媒体と前記車両に搭載された車載冷凍サイクル装置の第1冷媒とを熱交換させる車載熱交換部を含み、前記施設熱媒体回路網は前記第2熱媒体と前記施設に設置された施設冷凍サイクル装置の第2冷媒とを熱交換させる施設熱交換部を含み、前記新たな熱媒体回路は前記第1熱媒体及び前記第2熱媒体が熱媒体として前記車載熱交換部及び前記施設熱交換部を経由して流れる回路である、新たな熱媒体回路を形成すること、及び、前記新たな熱媒体回路により、前記施設冷凍サイクル装置の廃熱を前記施設熱交換部で前記熱媒体に回収して前記車両側に運ぶこと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷凍サイクル装置で生じる廃熱の有効利用を図ることを可能とする廃熱利用システム及び廃熱の利用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による廃熱利用システムの全体構成を模式的に示した図である。
図2】車両側設備(車載冷凍サイクル装置及び車載熱媒体回路網)の一例を示す図である。
図3】車載冷凍サイクル装置における第1冷媒の流れを示す図である。
図4】車載冷凍サイクル装置における第1冷媒の流れ及び車載熱媒体回路網における第1熱媒体の流れを示す図である。
図5】車載冷凍サイクル装置における第1冷媒の流れ及び車載熱媒体回路網における第1熱媒体の流れを示す図である。
図6】車載冷凍サイクル装置における第1冷媒の流れ及び車載熱媒体回路網における第1熱媒体の流れを示す図である。
図7】施設側設備(施設冷凍サイクル装置及び施設熱媒体回路網)の一例を示す図である。
図8】施設冷凍サイクル装置における第2冷媒の流れ及び施設熱媒体回路網における第2熱媒体の流れを示す図である。
図9】施設冷凍サイクル装置における第2冷媒の流れ及び施設熱媒体回路網における第2熱媒体の流れを示す図である。
図10】施設冷凍サイクル装置における第2冷媒の流れ及び施設熱媒体回路網における第2熱媒体の流れを示す図である。
図11】施設冷凍サイクル装置における第2冷媒の流れ及び施設熱媒体回路網における第2熱媒体の流れを示す図である。
図12】車載冷凍サイクル装置の廃熱(冷熱)を施設側で利用する場合の例を説明するための図である。
図13】車載冷凍サイクル装置の廃熱(冷熱)を施設側で利用する場合の例を説明するための図である。
図14】車載冷凍サイクル装置の廃熱(温熱)を施設側で利用する場合の例を説明するための図である。
図15】車載冷凍サイクル装置の廃熱(温熱)を施設側で利用する場合の例を説明するための図である。
図16】施設冷凍サイクル装置の廃熱(冷熱)を車両側で利用する場合の例を説明するための図である。
図17】施設冷凍サイクル装置の廃熱(冷熱)を車両側で利用する場合の例を説明するための図である。
図18】施設冷凍サイクル装置の廃熱(温熱)を車両側で利用する場合の例を説明するための図である。
図19】施設冷凍サイクル装置の廃熱(温熱)を車両側で利用する場合の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の概要]
まず、本発明の概要を説明する。本発明は、大型店舗などを含む施設の所定の駐車スペースに駐車した車両と前記施設との間で互いの冷凍サイクル装置の廃熱を相互利用することを可能とする廃熱利用システム及び廃熱の利用方法を提供する。特に限定されないが、前記施設は充電設備を有した施設であり、前記車両は、例えば電気自動車であって、バッテリ充電のために前記駐車スペースの駐車した駐車であり得る。
【0013】
本発明による廃熱利用システム及び廃熱の利用方法は、前記車両側の冷凍サイクル装置の廃熱(温熱又は冷熱)を、熱媒体を介して前記施設側に運び、前記施設において熱源等として利用することを可能とする。及び/又は、本発明による廃熱利用システム及び廃熱の利用方法は、前記施設側の冷凍サイクル装置の廃熱(温熱又は冷熱)を、熱媒体を介して前記車両側に運び、前記車両において熱源等として利用することを可能とする。
【0014】
図1(a)、(b)は、本発明による廃熱利用システム100の全体構成を模式的に示した図である。図1(a)に示されるように、本発明による廃熱利用システム100は、施設の所定の駐車スペースに駐車した車両に搭載された車載冷凍サイクル装置110と、前記車両に搭載され、熱媒体(例えば、水)が流れると共に車載冷凍サイクル装置110の廃熱を回収可能な車載熱媒体回路網120と、前記施設に設置された施設冷凍サイクル装置130と、前記施設に設置され、車載熱媒体回路網120の熱媒体と同種の熱媒体(例えば、水)が流れると共に施設冷凍サイクル装置130の廃熱を回収可能な施設熱媒体回路網140と、車載熱媒体回路網120と施設熱媒体回路網140とを分離可能に接続する通路部材150と、を含む。
【0015】
なお、以下の説明においては、車載冷凍サイクル装置110及び車載熱媒体回路網120をまとめて「車両側設備」といい、施設冷凍サイクル装置130及び施設熱媒体回路網140をまとめて「施設側設備」という。また、車載冷凍サイクル装置110の冷媒を「第1冷媒」といい、車載熱媒体回路網120を流れる熱媒体を「第1熱媒体」といい、施設冷凍サイクル装置130の冷媒を「第2冷媒」といい、施設熱媒体回路網140を流れる熱媒体を「第2熱媒体」という。
【0016】
車載冷凍サイクル装置110は、例えば、前記車両の車室内を空調する車両用空気調和装置を構成するヒートポンプサイクル装置である。この場合、前記車両用空気調和装置が前記車室内を冷房しているときに、車載冷凍サイクル装置110において第1冷媒が圧縮されることで第1冷媒に生じる温熱が車載冷凍サイクル装置110の廃熱となり得る。また、前記車両用空気調和装置が前記車室内を暖房しているときに、車載冷凍サイクル装置110において第1冷媒が減圧膨張されることで第1冷媒に生じる冷熱が車載冷凍サイクル装置110の廃熱となり得る。
【0017】
車載熱媒体回路網120は、通路部材150の一方側が取り外し可能に取り付けられる第1取付部121と、第1熱媒体を流すための第1ポンプ装置122とを有する。また、車載熱媒体回路網120は、自身を流れる第1熱媒体と車載冷凍サイクル装置110の第1冷媒(圧縮された第1冷媒や減圧膨張された第1冷媒)とを熱交換させる車載熱交換部123を含み、車載熱交換部123で車載冷凍サイクル装置110の廃熱を第1熱媒体に回収可能に構成されている。なお、車載熱媒体回路網120は、例えば、複数の通路切替弁や通路切替装置を含むことにより、第1熱媒体によって運ばれた熱を蓄える車載蓄熱部(例えば、温熱を蓄える蓄熱器や冷熱を蓄える蓄冷器)及び/又は第1熱媒体によって温度調整される車載温調機器(例えば、バッテリ)などをさらに含むことができる。
【0018】
施設冷凍サイクル装置130は、例えば、前記施設において所定の空調対象空間を空調する施設用空気調和装置を構成するヒートポンプサイクル装置であり得る。この場合、車載冷凍サイクル装置110の場合と同様、前記施設用空気調和装置が前記空調対象空間を冷房しているときに、施設冷凍サイクル装置130において第2冷媒が圧縮されることで第2冷媒に生じる温熱が施設冷凍サイクル装置130の廃熱となり得、前記施設用空気調和装置が前記空調対象空間を暖房しているときに、施設冷凍サイクル装置130において第2冷媒が減圧膨張されることで第2冷媒に生じる冷熱が施設冷凍サイクル装置130の廃熱となり得る。但し、施設冷凍サイクル装置130は、施設用空気調和装置を構成するものに限られるものではなく、前記施設に設置された各種の装置(例えば、給湯装置や冷凍/冷蔵装置)を構成する冷凍サイクル装置であってもよい。
【0019】
施設熱媒体回路網140は、通路部材150の他方側が取り外し可能に取り付けられる第2取付部141と、第2熱媒体を流すための第2ポンプ装置142とを有する。また、施設熱媒体回路網140は、第2熱媒体と施設冷凍サイクル装置130の第2冷媒(圧縮された第2冷媒や減圧膨張された第2冷媒)とを熱交換させる施設熱交換部143を含み、施設熱交換部143で施設冷凍サイクル装置130の廃熱を第2熱媒体に回収可能に構成されている。車載熱媒体回路網120と同様、施設熱媒体回路網140は、例えば、複数の通路切替弁や通路切替装置を含むことにより、さらに、第2熱媒体によって運ばれた熱を蓄える施設蓄熱部(例えば、温熱を蓄える蓄熱槽や冷熱を蓄える蓄熱槽)などを含むことができる。
【0020】
通路部材150は、第1熱媒体及び第2熱媒体が流れ得る一対の通路151、152を含み、車載熱媒体回路網120の第1取付部121及び施設熱媒体回路網140の第2取付部141に取り付けられる。つまり、車載熱媒体回路網120及び施設熱媒体回路網140は、通路部材150(一対の通路151、152)によって互いに接続され得る。特に限定されないが、通路部材150(一対の通路151、152)は、可撓性を有することが好ましい。
【0021】
廃熱利用システム100においては、通路部材150によって車載熱媒体回路網120と施設熱媒体回路網140とが接続された場合、図1(b)に示されるように、車載熱媒体回路網120の一部、通路部材150(一対の通路151、152)及び施設熱媒体回路網140の一部によって新たな熱媒体回路160が形成され得る。形成される新たな熱媒体回路160は、第1熱媒体及び第2熱媒体が(一つの)熱媒体として車載熱交換部123及び施設熱交換部143を経由して流れ得る回路である。
【0022】
例えば、車載熱媒体回路網120は、通路部材150の前記一方側が第1取付部121に取り付けられると、一対の通路151、152の一方に接続された第1接続部を通路始端とし、一対の通路151、152の他方が接続された第2接続部を通路終端とする熱媒体通路を形成するように構成される。同様に、施設熱媒体回路網140は、通路部材150の前記他方側が第2取付部141に取り付けられると、一対の通路151、152の一方に接続された第1接続部を通路始端とし、一対の通路151、152の他方が接続された第2接続部を通路終端とする熱媒体通路を形成するように構成される。そして、このような構成により、通路部材150によって車載熱媒体回路網120と施設熱媒体回路網140とが接続された場合、第1熱媒体及び第2熱媒体が熱媒体として車載熱交換部123及び施設熱交換部143を経由して流れる新たな熱媒体回路160が形成される。
【0023】
廃熱利用システム100においては、新たな熱媒体回路160が形成されると、第1ポンプ装置122及び/又は第2ポンプ装置142によって新たな熱媒体回路160に前記熱媒体(第1熱媒体及び第2熱媒体)が流される。そして、車載冷凍サイクル装置110の廃熱を前記施設側で利用するため、車載冷凍サイクル装置110の廃熱が車載熱交換部123で前記熱媒体に回収されて前記施設側に運ばれるようになっている。あるいは、施設冷凍サイクル装置130の廃熱を前記車両側で利用するため、施設冷凍サイクル装置130の廃熱が施設熱交換部143で前記熱媒体に回収されて前記車両側に運ばれるようになっている。
【0024】
また、廃熱利用システム100は、通路部材150が新たな熱媒体回路160から取り外されると、新たな熱媒体回路160が元の車載熱媒体回路網120と元の施設熱媒体回路網140とに分離されるように構成される。これにより、前記車両は、前記施設(の前記駐車スペース)から移動することが可能となる。
【0025】
なお、例えば、車載熱媒体回路網120が上述の車載蓄熱部を含む場合、施設冷凍サイクル装置130の廃熱が前記車載蓄熱部に蓄えられ、及び前記車両が前記施設から前記施設と同様の施設側設備を有する他の施設へと移動することにより、施設冷凍サイクル装置130の廃熱が前記他の施設で利用されることも可能である。
【0026】
ところで、以上では本発明の廃熱利用システムについて説明したが、本発明による廃熱の利用方法は、(a)前記車両に搭載されて第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網120と、前記施設に設置されて第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網140とを通路部材150によって分離可能に接続して新たな熱媒体回路160を形成すること、及び、(b)形成された新たな熱媒体回路160により、車載冷凍サイクル装置110の廃熱を前記施設側で利用するため、車載冷凍サイクル装置110の廃熱を車載熱交換部123で前記熱媒体に回収して前記施設側に運ぶこと、及び、(c)新たな熱媒体回路160から通路部材150を取り外して新たな熱媒体回路160を元の車載熱媒体回路網120と元の施設熱媒体回路網140とに分離すること、を含む、ということもできる。
【0027】
あるいは、本発明による廃熱の利用方法は、(a)前記車両に搭載されて第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網120と、前記施設に設置されて第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網140とを通路部材150によって分離可能に接続して新たな熱媒体回路160を形成すること、(b)形成された新たな熱媒体回路160により、施設冷凍サイクル装置130の廃熱を前記車両側又は他の施設で利用するため、施設冷凍サイクル装置130の廃熱を施設熱交換部143で前記熱媒体に回収して前記車両側に運ぶこと、及び、(c)新たな熱媒体回路160から通路部材150を取り外して新たな熱媒体回路160を元の車載熱媒体回路網120と元の施設熱媒体回路網140とに分離すること、を含む、ということもできる。
【0028】
このように、本発明による廃熱利用システム及び廃熱の利用方法では、車載熱媒体回路網120と施設熱媒体回路網140とが通路部材150に接続されると、車載熱媒体回路網120の一部、通路部材150及び施設熱媒体回路網140の一部により、前記車両側及び前記施設側の両方に亘る新たな熱媒体回路160が形成される。そして、この新たな熱媒体回路160によって、さらに言えば、新たな熱媒体回路160を流れる熱媒体(一つの熱媒体としての第1熱媒体及び第2熱媒体)によって、車載冷凍サイクル装置110の廃熱が回収されて前記施設側に運ばれ、又は、施設冷凍サイクル装置130の廃熱が回収されて前記車両側に運ばれる。そのため、車載冷凍サイクル装置110の廃熱を前記施設側で利用すること、及び/又は、施設冷凍サイクル装置130の廃熱を前記車両側等で利用することが可能になり、従来に比べて、冷凍サイクル装置で生じる廃熱の有効利用を図ることができる。
【0029】
以下、本発明による廃熱利用システム100及び廃熱の利用方法の実施形態について具体的に説明する。
【0030】
[車両側設備]
図2は、車両側設備の一例を示す図である。車両側設備は、前記車両に搭載された設備であり、第1冷媒が用いられた車載冷凍サイクル装置110と、第1熱媒体が流れる車載熱媒体回路網120とを含む。
【0031】
(車載冷凍サイクル装置)
車載冷凍サイクル装置110は、前記車両の車室内の空調を行う車両用空調装置を構成するヒートポンプサイクル装置であり、第1冷媒が流れる第1冷媒配管群2と、電動式の圧縮機3と、車両用HVACユニット50の空気流通路51内に配置された放熱器4と、室外膨張弁6と、室外熱交換器8と、第1室内膨張弁10と、空気流通路51内に配置された吸熱器12と、アキュームレータ14と、を含む。
【0032】
また、車両用HVACユニット50において、空気流通路51における吸熱器12よりも空気流の上流側には、外気を取り込むための外気取込口52と、車室内の空気である内気を取り込むための内気取込口53と、外気取込口52又は内気取込口53を開放する取込口切替ダンパ54と、内気又は外気を空気流通路51に送り込む室内送風機(ブロワファン)55とが設けられている。さらに、空気流通路51における吸熱器12と放熱器4との間には、放熱器4を通過させる空気流の割合を調整するエアミックスダンパ56が設けられている。
【0033】
第1冷媒配管群2は、圧縮機3と放熱器4とを接続する第1配管2Aと、放熱器4から延びて室外膨張弁6を経由して室外熱交換器8と接続する第2配管2Bと、室外熱交換器8とアキュームレータ14とを接続する第3配管2Cと、アキュームレータ14と圧縮機3とを接続する第4配管2Dと、を含む。
【0034】
また、第1冷媒配管群2は、第1分岐部B1にて第1配管2Aから分岐して第2配管2Bの室外膨張弁6と室外熱交換器8との間に接続する第5配管2Eと、第2分岐部B2にて第3配管2Cから分岐して第1室内膨張弁10を経由して吸熱器12に接続する第6配管2Fと、吸熱器12から延びて第2分岐部B2とアキュームレータ14の間の第1接続部C1にて第3配管2Cに接続する第7配管2Gと、を含む。
【0035】
さらに、第1冷媒配管群2は、放熱器4と室外膨張弁6の間の第3分岐部B3にて第2配管2Bから分岐して第2分岐部B2と第1室内膨張弁10の間の第2接続部C2にて第6配管2Fに接続する第8配管2Hと、第2接続部C2と第1室内膨張弁10の間の第4分岐部B4にて第6配管2Fから分岐して第1接続部C1とアキュームレータ14の間の第3接続部C3にて第3配管2Cに接続する第9配管2Jと、第1分岐部B1と放熱器4の間の第5分岐部B5にて第1配管2Aから分岐して第2配管2Bの放熱器4と第3分岐部B3の間に接続する第10配管2Kと、を含む。
【0036】
ここで、第9配管2Jには、第2室内膨張弁11が設けられている。また、第10配管2Kには、第1熱交換器22が配置され、第9配管2Jの第2室内膨張弁11と第3接続部C3との間には、第2熱交換器23が配置されている。なお、第1熱交換器22及び第2熱交換器23は、後述するように、車載熱媒体回路網120の構成要素でもあり、車載冷凍サイクル装置110の第1冷媒と車載熱媒体回路網120を流れる第2熱媒体とを熱交換させるように構成されている。
【0037】
第1配管2Aにおいて、第1分岐部B1と第5分岐部B5との間には第1電磁弁V1が設けられ、第5分岐部B5と放熱器4との間には第2電磁弁V2が設けられている。第2配管2Bにおいて、放熱器4と第3分岐部B3との間には第3電磁弁V3が設けられ、第3分岐部B3と室外膨張弁6との間には第4電磁弁V4が設けられている。第3配管2Cの第2分岐部B2と第1接続部C1との間には第5電磁弁V5が設けられている。
【0038】
第5配管2Eには第6電磁弁V6と第2配管2Bからの第1冷媒の流入を阻止する第1逆止弁CV1とが設けられている。第6配管2Fにおいて、第2分岐部B2と第2接続部C2との間には第7電磁弁V7と第8配管2Hからの第1冷媒の流入を阻止する第2逆止弁CV2とが設けられ、第4分岐部B4と第1室内膨張弁10との間には第8電磁弁V8が設けられている。第7配管2Gには第3配管2Cからの第1冷媒の流入を阻止する第3逆止弁CV3が設けられている。
【0039】
第8配管2Hには第9電磁弁V9が設けられている。第9配管2Jにおいて、第4分岐部B4と第2室内膨張弁11との間には第10電磁弁V10が設けられ、第3接続部C3の近傍には第3配管2Cからの第1冷媒の流入を阻止する第4逆止弁CV4が設けられている。第10配管2Kにおいて、第5分岐部B5の近傍には第11電磁弁V11が設けられ、第2配管2Bに近い側には第2配管2Bからの第1冷媒の流入を阻止する第5逆止弁CV5が設けられている。
【0040】
圧縮機3は、第1冷媒配管群2を流れる第1冷媒を圧縮する。放熱器4は、車室内の暖房時に圧縮機3から吐出された高温高圧の第1冷媒と空気流通路51を流れる空気とを熱交換させて第1冷媒を放熱させる。室外膨張弁6は、車室内の暖房時に第1冷媒を減圧膨張させる。室外熱交換器8は、車室内の暖房時には吸熱器として機能して外気と室外膨張弁6によって減圧膨張された第1冷媒とを熱交換させ、車室内の冷房時には放熱器として機能して外気と圧縮機3によって圧縮された第1冷媒とを熱交換させる。室外熱交換器8には外気を室外熱交換器8に向けて送風する室外送風機9が付設されている。第1室内膨張弁10は、車室内の冷房時に第1冷媒を減圧膨張させる。第2室内膨張弁11は、車室内の暖房時に室外膨張弁6に代わって第1冷媒を減圧膨張させることが可能である。吸熱器12は、主に車室内の冷房時に第1室内膨張弁10によって減圧膨張された第1冷媒と空気流通路51を流れる空気とを熱交換させて第1冷媒に吸熱させる。アキュームレータ14は、液状の第1冷媒を分離するための液分離器である。
【0041】
(車載熱媒体回路網)
車載熱媒体回路網120は、第1熱媒体が流れる第1熱媒体配管群20と、第1~第3三方電磁弁(以下単に「三方弁」という。)21A~21Cと、第1取付部121と、第1熱交換器22と、第2熱交換器23と、第1電動ポンプ24と、第2電動ポンプ25と、温調機器26と、蓄熱器27と、蓄冷器28、通路切替装置29と、を含む。第1熱交換器22及び/又は第2熱交換器23が上述の車載熱交換部123を構成し、第1電動ポンプ24及び/又は第2電動ポンプ25が上述の第1ポンプ装置122を構成する。
【0042】
第1熱媒体配管群20は、第1取付部121の一方側と通路切替装置29の第1入口部291Aとを接続する第1配管20Aと、通路切替装置29の第1出口部292aから延びて第1熱交換器22を経由して通路切替装置29の第2入口部291Bに接続する第2配管20Bと、通路切替装置29の第2出口部292bから延びて第2熱交換器23を経由して通路切替装置29の第3入口部291Cに接続する第3配管20Cと、を含む。
【0043】
また、第1熱媒体配管群20は、通路切替装置29の第3出口部292cと第1三方弁21Aの第1ポートaとを接続する第4配管20Dと、通路切替装置29の第4出口部292dから延びて温調機器26を経由して第1三方弁21Aの第2ポートbに接続する第5配管20Eと、通路切替装置29の第5出口部292eから延びて蓄熱器27を経由して第2三方弁21Bの第1ポートaに接続する第6配管20Fと、通路切替装置29の第6出口部292fから延びて蓄冷器28を経由して第2三方弁21Bの第2ポートbに接続する第7配管20Gとを含む。
【0044】
さらに、第1熱媒体配管群20は、第1三方弁21Aの第3ポートcと第3三方弁21Cの第1ポートaとを接続する第8配管20Hと、第2三方弁21Bの第3ポートcと第3三方弁21Cの第2ポートbとを接続する第9配管20Jと、第3三方弁21Cの第3ポートcと第1取付部121の他方側とを接続する第10配管20Kとを含む。
【0045】
第1取付部121は、熱媒体流入ポート121inと熱媒体流出ポート121outとを有する。第1取付部121には、上述のように、通路部材150の一方側が取り外し可能に取り付けられる。第1取付部121は、図示省略の通路切替装置を内蔵しており、第1配管20Aが接続された前記一方側と第10配管20Kが接続された前記他方側とを連通させた通常状態と、第1配管20Aが接続された前記一方側と熱媒体流入ポート121inとを連通させると共に、第10配管20Kが接続された前記他方側と熱媒体流出ポート121outとを連通させた状態とを切り替えることが可能に構成されている。
【0046】
第1熱交換器22は、車室内の冷房時に室外熱交換器8に代わって放熱器として機能し得るものである。第1熱交換器22は、第1熱媒体と車載冷凍サイクル装置110の第10配管2Kを流れる第1冷媒(圧縮機3によって圧縮された第1冷媒)とを熱交換させるように構成されており、車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)を第1熱媒体に回収することが可能である。
【0047】
第2熱交換器23は、車室内の暖房時に室外熱交換器8に代わって吸熱器として機能し得るものである。第2熱交換器23は、第1熱媒体と車載冷凍サイクル装置110の第9配管2Jを流れる冷媒(第2室内膨張弁11によって減圧膨張された第1冷媒)とを熱交換させるように構成されており、車載冷凍サイクル装置110の廃熱(冷熱)を第1熱媒体に回収することが可能である。
【0048】
第1電動ポンプ24は、第2配管20Bに設けられ、通路切替装置29の第1出口部292aからの第1熱媒体を吸引して第2入口部291Bに向けて吐出する。第2電動ポンプ25は、第3配管20Cに設けられ、通路切替装置29の第2出口部292bからの第1熱媒体を吸引して第3入口部291Cに向けて吐出する。
【0049】
通路切替装置29は、第1入口部291Aを第1出口部292a又は第2出口部292bに接続し、及び、第2入口部291B又は第3入口部291Cを第3~第6出口部292c~292fのいずれかに接続することが可能に構成されている。
【0050】
このような車両側設備において、車載冷凍サイクル装置110の圧縮機3、室外送風機9及び第1~第11電磁弁V1~V11、並びに、車載熱媒体回路網120の第1~第3三方弁21A~21C、第1電動ポンプ24、第2電動ポンプ25、通路切替装置29及び第1取付部121の通路切替装置などは、例えば、図示省略の車載コントローラによって制御される。
【0051】
[車両側設備の動作]
図3図6を参照して車両側設備の動作例について説明する。
【0052】
(車室内の暖房)
図3は、車室内の通常暖房時の車載冷凍サイクル装置110における第1冷媒の流れを示す図である。通常暖房時には、車載冷凍サイクル装置110において、第1~第5電磁弁V1~V5が「開」とされ、それ以外の電磁弁が「閉」とされ、圧縮機3及び室外送風機9が「ON」される。これにより、図3に示されるように、車載冷凍サイクル装置110において、第1冷媒は、「圧縮機3→放熱器4→室外膨張弁6→室外熱交換器8→アキュームレータ14(→圧縮機3)」の順に循環する。この場合、室外膨張弁6による減圧膨張によって第1冷媒に生じた冷熱が室外熱交換器8において車載冷凍サイクル装置110の廃熱として放出される。
【0053】
(車室内の暖房及び蓄冷)
図4は、車室内の暖房時に車載冷凍サイクル装置110の廃熱(冷熱)を蓄熱(蓄冷)する場合の車載冷凍サイクル装置110における第1冷媒の流れ及び車載熱媒体回路網120における第1熱媒体の流れを示す図である。この場合、車載冷凍サイクル装置110において、第1~第3電磁弁V1~V3、第9電磁弁V9及び第10電磁弁V10が「開」とされ、それ以外の電磁弁が「閉」とされ、圧縮機3が「ON」される。これにより、図4に示されるように、車載冷凍サイクル装置110において、第1冷媒は、「圧縮機3→放熱器4→第2室内膨張弁11→第2熱交換器23→アキュームレータ14(→圧縮機3)」の順に循環する。
【0054】
また、車載熱媒体回路網120において、通路切替装置29は、第1入口部291Aと第2出口部292bとを接続し、及び、第3入口部291Cと第6出口部292fとを接続する。第2三方弁21Bは、第1ポートaと第3ポートcとを連通させ、第3三方弁21Cは、第2ポートbと第3ポートcとを連通させる。第1取付部121は、前記通常状態のままである。また、第2電動ポンプ25が「ON」される。これにより、図4に示されるように、車載熱媒体回路網120において、第1熱媒体は、「第2電動ポンプ25→第2熱交換器23→蓄冷器28(→第2電動ポンプ25)」の順に循環する。そして、第1熱媒体は、第2熱交換器23における第1冷媒(第2室内膨張弁11によって減圧膨張された第1冷媒)との熱交換によって車載冷凍サイクル装置110の廃熱(冷熱)を回収する。第1熱媒体に回収された車載冷凍サイクル装置110の廃熱(冷熱)は蓄冷器28に蓄えられる。蓄冷器28に蓄えられた車載冷凍サイクル装置110の廃熱(冷熱)は後で利用され得る。
【0055】
(車室内の冷房)
図5は、車室内の通常冷房時の車載冷凍サイクル装置110における第1冷媒の流れを示す図である。通常冷房時には、車載冷凍サイクル装置110において、第6~第8電磁弁V6~V8が「開」とされ、それ以外の電磁弁が「閉」とされ、圧縮機3及び室外送風機9が「ON」される。これにより、図5に示されるように、車載冷凍サイクル装置110において、第1冷媒は、「圧縮機3→室外熱交換器8→第1室内膨張弁10→吸熱器12→アキュームレータ14(→圧縮機3)」の順に循環する。この場合、圧縮機3による圧縮によって第1冷媒に生じた温熱が室外熱交換器8において車載冷凍サイクル装置110の廃熱として放出される。
【0056】
(車室内の冷房及び蓄熱)
図6は、車室内の冷房時に車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)を蓄熱する場合の車載冷凍サイクル装置110における第1冷媒の流れ及び車載熱媒体回路網120における第1熱媒体の流れを示す図である。この場合には、車載冷凍サイクル装置110において、第1電磁弁V1、第11電磁弁V11、第9電磁弁V9、第8電磁弁V8が「開」とされ、それ以外の電磁弁が「閉」とされ、圧縮機3が「ON」される。これにより、図6に示されるように、車載冷凍サイクル装置110において、第1冷媒は、「圧縮機3→第1熱交換器22→第1室内膨張弁10→吸熱器12→アキュームレータ14(→圧縮機3)」の順に循環する。
【0057】
また、車載熱媒体回路網120において、通路切替装置29は、第1入口部291Aと第1出口部292aとを接続し、及び、第2入口部291Bと第5出口部292eとを接続する。第2三方弁21Bは、第1ポートaと第3ポートcとを連通させ、第3三方弁21Cは、第2ポートbと第3ポートcとを連通させる。第1取付部121は、前記通常状態のままである。また、第1電動ポンプ24が「ON」される。これにより、図6に示されるように、車載熱媒体回路網120において、第1熱媒体は、「第1電動ポンプ24→第1熱交換器22→蓄熱器27(→第1電動ポンプ24)」の順に循環する。そして、第1熱媒体は、第1熱交換器22における第1冷媒(第2室内膨張弁11によって減圧膨張された第1冷媒)との熱交換によって車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)を回収する。第1熱媒体に回収された車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)は蓄熱器27に蓄えられる。蓄熱器27に蓄えられた車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)は後で利用され得る。
【0058】
なお、詳細な説明は省略するが、図4において第1熱媒体を蓄冷器28に代えて温調機器26を通過させることで車室内の暖房時に温調機器26を冷却することも可能であり、図6において第1熱媒体を蓄熱器27に代えて温調機器26を通過させることで車室内の冷房時に温調機器26を加温することも可能である。
【0059】
[施設側設備]
図7は、施設側設備の一例を示す図である。施設側設備は、前記施設に設置された設備であり、第2冷媒が用いられた施設冷凍サイクル装置130と、車載熱媒体回路網120を流れる第1熱媒体と同種の第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網140とを含む。
【0060】
(施設冷凍サイクル装置)
施設冷凍サイクル装置130は、例えば、前記施設において所定の空調対象空間の空調を行う施設用空気調和装置を構成するヒートポンプサイクル装置であり、第2冷媒が流れる第2冷媒配管群30と、四方電磁弁(以下単に「四方弁」という。)31と、電動式の圧縮機32と、前記空調対象空間内に配置された利用側熱交換器33と、熱源側熱交換器34と、膨張弁35と、を含む。
【0061】
第2冷媒配管群30は、四方弁31の第1ポートaと圧縮機32の吐出側とを接続する第1配管30Aと、四方弁31の第2ポートbと利用側熱交換器33の一方側とを接続する第2配管30Bと、利用側熱交換器33の他方側と熱源側熱交換器34の一方側とを膨張弁35を経由して接続する第3配管30Cと、熱源側熱交換器34の他方側と四方弁31の第3ポートcとを接続する第4配管30Dと、四方弁31の第4ポートdと圧縮機32の吸入側とを接続する第5配管30Eと、を含む。
【0062】
四方弁31は、第1ポートaと第2ポートbとが連通し、及び第3ポートcと第4ポートdが連通する第1の状態、すなわち、圧縮機32の吐出側が利用側熱交換器33に接続され、及び圧縮機32の吸入側が熱源側熱交換器34に接続される第1の状態と、第1ポートaと第3ポートcとが連通し、及び第2ポートbと第4ポートdとが連通する第2の状態、すなわち、圧縮機32の吐出側が熱源側熱交換器34に接続され、及び圧縮機32の吸入側が利用側熱交換器33に接続される第2の状態とを切り替えることができるように構成されている。
【0063】
圧縮機32は、第2冷媒配管群30を流れる第2冷媒を圧縮する。利用側熱交換器33は、第2冷媒(圧縮機32によって圧縮された第2冷媒又は膨張弁35によって減圧膨張された第2冷媒)と前記空調対象空間内の空気とを熱交換させる。利用側熱交換器33には、前記空調対象空間内の空気を利用側熱交換器33に向けて送風する送風機36が付設されている。熱源側熱交換器34は、後述するように、第2熱媒体が流れる施設熱媒体回路網140の構成要素でもあり、第2冷媒と施設熱媒体回路網140を流れる第2熱媒体とを熱交換させる。膨張弁35は、第3配管30Cを流れる第2冷媒を減圧膨張させる。
【0064】
(施設熱媒体回路網)
施設熱媒体回路網140は、第2熱媒体が流れる第2熱媒体配管群40と、第1~第6三方弁41A~41Fと、上述の第2取付部141と、上述の熱源側熱交換器34と、電動ポンプ42と、室外熱交換器43と、蓄冷槽44と、蓄熱槽45と、を含む。熱源側熱交換器34が上述の施設熱交換部143を構成し、電動ポンプ42が上述の第2ポンプ装置142を構成する。
【0065】
第2熱媒体配管群40は、第1三方弁41Aの第1ポートaと第2三方弁41Bの第1ポートaとを熱源側熱交換器34を経由して接続する第1配管40Aと、第2三方弁41Bの第2ポートbと第3三方弁41Cの第1ポートaとを接続する第2配管40Bと、第3三方弁41Cの第2ポートbと第1三方弁41Aの第2ポートbとを室外熱交換器43を経由して接続する第3配管40Cと、を含む。
【0066】
また、第2熱媒体配管群40は、第3三方弁41Cの第3ポートcと第4三方弁41Dの第1ポートaとを接続する第4配管40Dと、第4三方弁41Dの第2ポートbと第5三方弁41Eの第1ポートaとを接続する第5配管40Eと、第5三方弁41Eの第2ポートbと第6三方弁41Fの第1ポートaとを蓄冷槽44を経由して接続する第6配管40Fと、第5三方弁41Eの第3ポートcと第6三方弁41Fの第2ポートbとを蓄熱槽45を経由して接続する第7配管40Gと、第6三方弁41Fの第3ポートcと第1三方弁41Aの第3ポートcとを接続する第8配管40Hと、を含む。
【0067】
さらに、第2熱媒体配管群40は、第2三方弁41Bの第3ポートcと第2取付部141の熱媒体流出ポート141outとを接続する第9配管40Jと、第4三方弁41Dの第3ポートcと第2取付部141の熱媒体流入ポート141inとを接続する第10配管40Kと、を含む。
【0068】
第2取付部141には、上述のように、通路部材150の他方側が取り外し可能に取り付けられる。熱源側熱交換器34は、上述のように、第2熱媒体と施設冷凍サイクル装置130の第2冷媒とを熱交換させる。電動ポンプ42は、第1配管40Aに設けられ、第1三方弁41Aからの第2熱媒体を吸引して第2三方弁41Bに向けて吐出する。室外熱交換器43は、第2熱媒体と外気とを熱交換させる。室外熱交換器43には、外気を室外熱交換器43に向けて送風する室外送風機46が付設されている。
【0069】
施設側設備において、施設冷凍サイクル装置130の四方弁31、圧縮機32及び送風機36、並びに、施設熱媒体回路網140の第1~第6三方弁41A~41F、電動ポンプ42及び室外送風機46などは、例えば、図示省略の施設コントローラによって制御される。
【0070】
[施設側設備の動作]
図8図10を参照して施設側設備の動作例について説明する。
【0071】
(空調対象空間の暖房)
図8は、空調対象空間の暖房時の施設冷凍サイクル装置130における第2冷媒の流れ及び施設熱媒体回路網140における第2熱媒体の流れを示す図である。暖房時、施設冷凍サイクル装置130においては、四方弁31が前記第1の状態とされる。すなわち、四方弁31は、第1ポートaと第2ポートbとを連通させると共に第3ポートcと第4ポートdとを連通させる。また、圧縮機32及び送風機36が「ON」される。施設熱媒体回路網140において、第1~第3三方弁41A~41Cは、それぞれ第1ポートaと第2ポートbとを連通させる。また、電動ポンプ42及び室外送風機46が「ON」される。
【0072】
これにより、図8に示されるように、施設冷凍サイクル装置130において、第2冷媒は、「圧縮機32→利用側熱交換器33→膨張弁35→熱源側熱交換器34(→圧縮機32)」の順に循環する。また、施設熱媒体回路網140において、第2熱媒体は、「電動モータ42→室外熱交換器43→熱源側熱交換器34(→電動ポンプ42)」の順に循環する。この場合、熱源側熱交換器34は、施設冷凍サイクル装置130における吸熱器として機能し、第2熱媒体と施設冷凍サイクル装置130の第2冷媒(膨張弁35で減圧膨張された第2冷媒)とを熱交換させ、これによって、施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)を第2熱媒体に回収する。第2熱媒体に回収された施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)は、室外熱交換器43で放出される。
【0073】
(空調対象空間の暖房及び蓄冷)
図9は、空調対象空間の暖房時に施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)を蓄熱(蓄冷)する場合の施設冷凍サイクル装置130における第2冷媒の流れ及び施設熱媒体回路網140における第2熱媒体の流れを示す図である。
【0074】
施設冷凍サイクル装置130における第2冷媒の流れは図8と同様である。つまり、施設冷凍サイクル装置130において、第2冷媒は、「圧縮機32→利用側熱交換器33→膨張弁35→熱源側熱交換器34(→圧縮機32)」の順に循環する。他方、施設熱媒体回路網140においては、第1三方弁41A、第3三方弁41C及び第6三方弁41Fがそれぞれ第1ポートaと第3ポートcとを連通させ、第2三方弁41B、第4三方弁41D及び第5三方弁41Eがそれぞれ第1ポートaと第2ポートbと連通させる。また、電動ポンプ42が「ON」される。これにより、図9に示されるように、施設熱媒体回路網140において、第2熱媒体は、「電動モータ42→蓄冷槽44→熱源側熱交換器34(→電動ポンプ42)」の順に循環する。この場合においても、熱源側熱交換器34は、施設冷凍サイクル装置130における吸熱器として機能し、第2熱媒体と施設冷凍サイクル装置130の第2冷媒(膨張弁35で減圧膨張された第2冷媒)とを熱交換させ、これによって、施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)を第2熱媒体に回収する。第2熱媒体に回収された施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)は、蓄冷槽44に蓄えられ、後で利用することが可能である。
【0075】
(空調対象空間の冷房)
図10は、空調対象空間の冷房時の施設冷凍サイクル装置130における第2冷媒の流れ及び施設熱媒体回路網140における第2熱媒体の流れを示す図である。通常冷房時には、施設冷凍サイクル装置130において、四方弁31は前記第2の状態とされる。すなわち、四方弁31は、第1ポートaと第3ポートcとを連通させると共に第2ポートbと第4ポートdとを連通させる。また、圧縮機32及び送風機36が「ON」される。これにより、図10に示されるように、施設冷凍サイクル装置130において、第2冷媒は、「圧縮機32→熱源側熱交換器34→膨張弁35→利用側熱交換器33(→圧縮機32)」の順に循環する。なお、施設熱媒体回路網140における第2熱媒体の流れは図8と同様である。この場合、熱源側熱交換器34は、施設冷凍サイクル装置130における放熱器として機能し、第2熱媒体と施設冷凍サイクル装置130の第2冷媒(圧縮機32で圧縮された第2冷媒)とを熱交換させ、これによって、施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)を第2熱媒体に回収する。第2熱媒体に回収された施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)は、室外熱交換器43で放出される。
【0076】
(空調対象空間の冷房及び蓄熱)
図11は、空調対象空間の冷房時に施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)を蓄熱する場合の施設冷凍サイクル装置130における第2冷媒の流れ及び施設熱媒体回路網140における第2熱媒体の流れを示す図である。
【0077】
施設冷凍サイクル装置130における第2冷媒の流れは図10と同様である。つまり、施設冷凍サイクル装置130において、第2冷媒は、「圧縮機32→熱源側熱交換器34→膨張弁35→利用側熱交換器33(→圧縮機32)」の順に循環する。他方、施設熱媒体回路網140においては、第1三方弁41A、第3三方弁41C及び第5三方弁41Eがそれぞれ第1ポートaと第3ポートcとを連通させ、第2三方弁41B及び第4三方弁41Dがそれぞれ第1ポートaと第2ポートbと連通させ、第6三方弁41Fが第2ポートbと第3ポートcとを連通させる。また、電動ポンプ42が「ON」される。これにより、図11に示されるように、施設熱媒体回路網140において、第2熱媒体は、「電動モータ42→蓄熱槽45→熱源側熱交換器34(→電動ポンプ42)」の順に循環する。この場合おいても、熱源側熱交換器34は、施設冷凍サイクル装置130における放熱器として機能し、第2熱媒体と施設冷凍サイクル装置130の第2冷媒(圧縮機32で圧縮された第2冷媒)とを熱交換させ、これによって、施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)を第2熱媒体に回収する。第2熱媒体に回収された施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)は、蓄熱槽45に蓄えられ、後で利用することが可能である。
【0078】
次に、車載冷凍サイクル装置110の廃熱を施設側で利用する場合、及び、施設冷凍サイクル装置130の廃熱を車両側で利用する場合について説明する。
【0079】
なお、いずれの場合においても、まず、車載熱媒体回路網120と施設熱媒体回路網140とが通路部材150によって接続される。具体的には、通路部材150の一方側が車載熱媒体回路網120の第1取付部121に取り付けられ、通路部材150の他方側が施設熱媒体回路網140の第2取付部141に取り付けられる。そして、これにより、車載熱媒体回路網120の第1取付部121の熱媒体流入ポート121inと施設熱媒体回路網140の熱媒体流出ポート141outとが通路部材150の一方の通路151によって接続され、車載熱媒体回路網120の第1取付部121の熱媒体流出ポート121outと施設熱媒体回路網140の第2取付部141の熱媒体流入ポート141inとが通路部材150の他方の通路152によって接続される。
【0080】
[車載冷凍サイクル装置の廃熱(冷熱)の施設側での利用例]
図12及び図13は、前記車両用空調装置が車室内を暖房しているときの車載冷凍サイクル装置110の廃熱(冷熱)を前記施設側で利用する場合の例を説明するための図である。図12は、車両側設備の状態を示し、図13は、施設側設備の状態を示している。
【0081】
この場合、車載冷凍サイクル装置110は、図4に示された状態(車室内の暖房及び蓄冷)と同じ状態とされる。つまり、図12に示されるように、車載冷凍サイクル装置110において、第1冷媒は、「圧縮機3→放熱器4→第2室内膨張弁11→第2熱交換器32→アキュームレータ14(→圧縮機3)」の順に循環する。
【0082】
また、車載熱媒体回路網120において、通路切替装置29は、第1入口部291Aと第2出口部292bとを接続し、及び第3入口部291Cと第3出口部292cとを接続する。第1三方弁21Aは、第1ポートaと第3ポートcとを連通させ、第3三方弁21Cは、第1ポートaと第3ポートcとを連通させる。第1取付部121は、第1配管20Aが接続された前記一方側と熱媒体流入ポート121inとを連通させると共に、第10配管20Kが接続された前記他方側と熱媒体流出ポート121outとを連通させる。
【0083】
これにより、車載熱媒体回路網120においては、図12に示されるように、第1取付部121の熱媒体流入ポート121inを始端部とし、第2熱交換器23を経由し、温調機器26、蓄熱器27及び蓄冷器28をバイパスし、第1取付部121の熱媒体流出ポート121outを終端部とする熱媒体通路(以下「第1車両側熱媒体通路」という。)が形成される。
【0084】
他方、施設熱媒体回路網140においては、第1三方弁41A、第2三方弁41B及び第6三方弁41Fがそれぞれ第1ポートaと第3ポートcとを連通させ、第4三方弁41Dが第2ポートbと第3ポートcとを連通させ、第5三方弁41Eが第1ポートaと第2ポートbとを連通させる。
【0085】
これにより、施設熱媒体回路網140においては、図13に示されるように、第2取付部141の熱媒体流入ポート141inを始端部とし、蓄冷槽44及び熱源側熱交換器34を経由し、第2取付部141の熱媒体流出ポート141outを終端部とする熱媒体通路(以下「第1施設側熱媒体通路」という。)が形成される。
【0086】
ここで、上述のように、車載熱媒体回路網120の第1取付部121の熱媒体流入ポート121inと施設熱媒体回路網140の熱媒体流出ポート141outとは通路部材150の一方の通路151によって接続され、車載熱媒体回路網120の第1取付部121の熱媒体流出ポート121outと施設熱媒体回路網140の第2取付部141の熱媒体流入ポート141inとは通路部材150の他方の通路152によって接続される。したがって、前記第1車両側熱媒体通路、通路部材150(一対の通路151、152)及び前記第1施設側熱媒体通路によって第1熱媒体回路が形成される。形成される第1熱媒体回路は、第1熱媒体及び第2熱媒体が熱媒体として流れることができる共に、車載熱交換部123としての第2熱交換器23及び施設熱交換部143としての熱源側熱交換器34を経由しており、上述の新たな熱媒体回路160に相当する。
【0087】
そして、第1熱媒体回路が形成されると、車載冷凍サイクル装置110の圧縮機3、車載熱媒体回路網120の第2電動ポンプ25、施設熱媒体回路網140の電動ポンプ42が「ON」される。この場合、前記熱媒体(第1熱媒体及び第2熱媒体)が第2熱交換器23で車載冷凍サイクル装置110の廃熱(冷熱)を回収する。前記熱媒体に回収された施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)は、施設側へと運ばれて蓄冷槽44に蓄えられる。蓄冷槽44に蓄えられた車載冷凍サイクル装置110の廃熱(冷熱)は、施設側で利用することが可能である。
【0088】
なお、ここでは施設冷凍サイクル装置130が動作していないが、施設冷凍サイクル装置130が動作していてもよい。
【0089】
[車載冷凍サイクル装置の廃熱(温熱)の施設側での利用例]
図14及び図15は、前記車両用空調装置が車室内を冷房しているときの車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)を前記施設側で利用する場合の例を説明するための図である。図14は、車両側設備の状態を示し、図15は、施設側設備の状態を示している。
【0090】
この場合、車載冷凍サイクル装置110は、図6に示された状態(車室内の冷房及び蓄熱)と同じ状態とされる。つまり、図14に示されるように、車載冷凍サイクル装置110において、第1冷媒は、「圧縮機3→第1熱交換器22→第1室内膨張弁10→吸熱器12→アキュームレータ14(→圧縮機3)」の順に循環する。
【0091】
また、車載熱媒体回路網120において、通路切替装置29は、第1入口部291Aと第1出口部292aとを接続し、及び第2入口部291Bと第3出口部292cとを接続する。第1三方弁21A及び第3三方弁21Cは、それぞれ第1ポートaと第3ポートcを連通させる。第1取付部121は、第1配管20Aが接続された前記一方側と熱媒体流入ポート121inとを連通させると共に、第10配管20Kが接続された前記他方側と熱媒体流出ポート121outとを連通させる。これにより、車載熱媒体回路網120においては、図14に示されるように、第1取付部121の熱媒体流入ポート121inを始端部とし、第1熱交換器22を経由し、温調機器26、蓄熱器27及び蓄冷器28をバイパスし、第1取付部121の熱媒体流出ポート121outを終端部とする熱媒体通路(以下「第2車両側熱媒体通路」という。)が形成される。
【0092】
他方、施設熱媒体回路網140においては、第1三方弁41A、第2三方弁41B及び第5三方弁41Eがそれぞれ第1ポートaと第3ポートcとを連通させ、第4三方弁41D及び第6三方弁41Fがそれぞれ第2ポートbと第3ポートcとを連通させる。これにより、施設熱媒体回路網140においては、図15に示されるように、第2取付部141の熱媒体流入ポート141inを始端部とし、蓄熱槽45及び熱源側熱交換器34を経由し、第2取付部141の熱媒体流出ポート141outを終端部とする熱媒体通路(以下「第2施設側熱媒体通路」という。)が形成される。
【0093】
したがって、前記第2車両側熱媒体通路、通路部材150(一対の通路151、152)及び前記第2施設側熱媒体通路によって第2熱媒体回路が形成される。形成される第2熱媒体回路は、第1熱媒体及び第2熱媒体が熱媒体として流れることができると共に、車載熱交換部123としての第1熱交換器22及び施設熱交換部143としての熱源側熱交換器34を経由しており、上述の新たな熱媒体回路160に相当する。
【0094】
そして、第2熱媒体回路が形成されると、車載冷凍サイクル装置110の圧縮機3、車載熱媒体回路網120の第1電動ポンプ24、施設熱媒体回路網140の電動ポンプ42が「ON」される。この場合、前記熱媒体が第1熱交換器22で車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)を回収する。前記一つの熱媒体に回収された車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)は、前記施設側へと運ばれて蓄熱槽45に蓄えられる。蓄熱槽45に蓄えられた車載冷凍サイクル装置110の廃熱(温熱)は、施設側で利用することが可能である。
【0095】
なお、ここでは施設冷凍サイクル装置130が動作していないが、施設冷凍サイクル装置130が動作していてもよい。
【0096】
[施設冷凍サイクル装置の廃熱(冷熱)の車両側での利用例]
図16図17は、前記施設用空気調和装置が空調対象空間を暖房しているときの施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)を車両側で利用する場合の例を説明するための図である。図16は、施設側設備の状態を示し、図17は、車両側設備を示している。
【0097】
この場合、施設冷凍サイクル装置130は、図8に示された状態と同じ状態になる。つまり、図16に示されるように、施設冷凍サイクル装置130において、第2冷媒は、「圧縮機32→利用側熱交換器33→膨張弁35→熱源側熱交換器34(→圧縮機32)」の順に循環する。また、施設熱媒体回路網140は、図15に示された状態と同じ状態とされる。つまり、施設熱媒体回路網140においては、図16に示されるように、第2取付部141の熱媒体流入ポート141inを始端部とし、蓄熱槽45及び熱源側熱交換器34を経由し、第2取付部141の熱媒体流出ポート141outを終端部とする前記第2施設側熱媒体通路が形成される。
【0098】
他方、車載熱媒体回路網120において、通路切替装置29は、第1入口部291Aと第1出口部292aとを接続し、及び第2入口部291Bと第6出口部292fとを接続する。第2三方弁21B及び第3三方弁21Cは、それぞれ第2ポートbと第3ポートcを連通させる。第1取付部121は、第1配管20Aが接続された前記一方側と熱媒体流入ポート121inとを連通させると共に、第10配管20Kが接続された前記他方側と熱媒体流出ポート121outとを連通させる。これにより、車載熱媒体回路網120においては、図17に示されるように、第1取付部121の熱媒体流入ポート121inを始端部とし、第1熱交換器22及び蓄冷器28を経由し、第1取付部121の熱媒体流出ポート121outを終端部とする熱媒体通路(以下「第3車両側熱媒体通路」という。)が形成される。
【0099】
したがって、前記第3車両側熱媒体通路、通路部材150(一対の通路151、152)及び前記第2施設側熱媒体通路によって第3熱媒体回路が形成される。形成される第3熱媒体回路は、第1熱媒体及び第2熱媒体が熱媒体として流れることができると共に、車載熱交換部123としての第1熱交換器22及び施設熱交換部143としての熱源側熱交換器34を経由しており、上述の新たな熱媒体回路160に相当する。
【0100】
そして、第3熱媒体回路が形成されると、車載熱媒体回路網120の第1電動ポンプ24、施設冷凍サイクル装置130の圧縮機32及び送風機36、施設熱媒体回路網140の電動ポンプ42が「ON」される。この場合、前記熱媒体が熱源側熱交換器34で施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)を回収する。前記熱媒体に回収された施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)は、車両側へと運ばれて蓄冷器28に蓄えられる。蓄冷器28に蓄えられた施設冷凍サイクル装置130の廃熱(冷熱)は、車両側で利用することが可能である。
【0101】
なお、ここでは車載冷凍サイクル装置110を動作させていないが、車載冷凍サイクル装置110を、例えば図6に示された状態(車室内の冷房及び蓄熱)と同じ状態で動作させてもよい。
[施設冷凍サイクル装置の廃熱(温熱)の車両側での利用例]
図18図19は、前記施設用空気調和装置が空調対象空間を冷房しているときの施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)を車両側で利用する場合の例を説明するための図である。図18は、施設側設備の状態を示し、図19は、車両側設備を示している。
【0102】
この場合、施設冷凍サイクル装置130は、図10に示された状態と同じ状態になる。つまり、図18に示されるように、第2冷媒は、「圧縮機32→熱源側熱交換器34→膨張弁35→利用側熱交換器33(→圧縮機32)」の順に循環する。また、施設熱媒体回路網140は、図13に示された状態と同じ状態とされる。つまり、施設熱媒体回路網140においては、図18に示されるように、第2取付部141の熱媒体流入ポート141inを始端部とし、蓄冷槽44及び熱源側熱交換器34を経由し、第2取付部141の熱媒体流出ポート141outを終端部とする前記第1施設側熱媒体通路が形成される。
【0103】
他方、車載熱媒体回路網120において、通路切替装置29は、第1入口部291Aと第2出口部292bとを接続し、及び第3入口部291Cと第5出口部292eとを接続する。第2三方弁21Bは、第1ポートaと第3ポートcとを連通させ、第3三方弁21Cは、第2ポートbと第3ポートcを連通させる。第1取付部121は、第1配管20Aが接続された前記一方側と熱媒体流入ポート121inとを連通させると共に、第10配管20Kが接続された前記他方側と熱媒体流出ポート121outとを連通させる。これにより、車載熱媒体回路網120においては、図19に示されるように、第1取付部121の熱媒体流入ポート121inを始端部とし、第2熱交換器23及び蓄熱器27を経由し、第1取付部121の熱媒体流出ポート121outを終端部とする熱媒体通路(以下「第4車両側熱媒体通路」という。)が形成される。
【0104】
したがって、前記第4車両側熱媒体通路、通路部材150(一対の通路151、152)及び前記第1施設側熱媒体通路によって第4熱媒体回路が形成される。形成される第4熱媒体回路は、第1熱媒体及び第2熱媒体が熱媒体として流れることができると共に、車載熱交換部123としての第1熱交換器22及び施設熱交換部143としての熱源側熱交換器34を経由しており、上述の新たな熱媒体回路160に相当する。
【0105】
そして、第4熱媒体回路が形成されると、車載熱媒体回路網120の第2電動ポンプ25、施設冷凍サイクル装置130の圧縮機32及び送風機36、施設熱媒体回路網140の電動ポンプ42が「ON」される。この場合、前記熱媒体が熱源側熱交換器34で施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)を回収する。前記熱媒体に回収された施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)は、車両側へと運ばれて蓄熱器27に蓄えられる。蓄熱器27に蓄えられた施設冷凍サイクル装置130の廃熱(温熱)は、車両側で利用することが可能である。
【0106】
なお、ここでは車載冷凍サイクル装置110を動作させていないが、車載冷凍サイクル装置110を、例えば図4に示された状態(車室内の暖房及び蓄冷)と同じ状態で動作させてもよい。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0108】
100…廃熱利用システム、110…車載冷凍サイクル装置、120…車載熱媒体回路網、121…第1取付部、122…第1ポンプ装置、123…車載熱交換部、130…施設冷凍サイクル装置、140…施設熱媒体回路網、141…第2取付部、142…第2ポンプ装置、143…施設熱交換部、150…通路部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19