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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013480
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/262 20110101AFI20240125BHJP
   H04N 21/24 20110101ALI20240125BHJP
   H04N 21/238 20110101ALI20240125BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20240125BHJP
   H04H 20/18 20080101ALI20240125BHJP
   H04H 60/23 20080101ALI20240125BHJP
【FI】
H04N21/262
H04N21/24
H04N21/238
H04L7/00 330
H04H20/18
H04H60/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115594
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 智也
(72)【発明者】
【氏名】西田 順一
(72)【発明者】
【氏名】山本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 日向子
(72)【発明者】
【氏名】武井 大輔
【テーマコード(参考)】
5C164
5K047
【Fターム(参考)】
5C164SB21P
5C164SB29S
5C164SB41P
5C164SC21P
5C164TC13S
5C164YA24
5K047AA18
(57)【要約】
【課題】 ネットワークの揺らぎを反映した放送開始時刻を設定でき、また、セキュリティを向上させた放送を実現することができる通信システムを提供する。
【解決手段】 複数の無線装置3が、時刻情報を付して、各々に放送制御サーバ1に遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報を要求し、放送制御サーバ1が、要求を受信すると、当該要求に含まれる時刻情報と当該要求の受信時刻との差からネットワークの遅延時間を算出して集計し、集計結果に基づいて遅延に関する情報を生成して、当該遅延に関する情報と、回線の種類に応じた回線状態とを含むサーバ情報を各々の無線装置3に送信し、複数の無線装置における最大の遅延時間に基づいて放送開始時刻を調整し、回線状態に応じて放送データの配信方式を変更する通信システムとしている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送データを配信する放送制御サーバと、前記配信された放送データを入力して無線送信する複数の無線装置とを有する通信システムであって、
前記複数の無線装置は、各々に時刻情報を付して、遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報を前記放送制御サーバに要求し、
前記放送制御サーバは、前記複数の無線装置の各々から前記要求を受信すると、前記サーバ情報の要求に付された時刻情報と前記要求の受信時刻との差をネットワークの遅延時間として算出して集計し、前記集計結果から前記遅延に関する情報を生成し、当該遅延に関する情報と設定された回線の種類に応じた回線状態とを含む前記サーバ情報を当該各々の無線装置に送信し、前記複数の無線装置のネットワークの遅延時間の内、最大の時間に基づいて放送開始時刻を調整し、前記回線状態に応じて放送データの配信方式を変更することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記無線装置は、暗号化された通信接続を行うために認証情報を前記放送制御サーバに要求し、
前記放送制御サーバは、前記無線装置に対する認証を行い、前記無線装置に認証情報を付与し、当該認証に要した時間を前記ネットワークの遅延時間に含めることを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記無線装置は、前記サーバ情報に含まれる回線状態を示す情報が低信頼回線である場合は、前記放送制御サーバに放送データと放送開始時刻を要求し、
前記放送制御サーバは、放送データと前記放送開始時刻を前記無線装置に送信することを特徴とする請求項1又は2記載の通信システム。
【請求項4】
前記放送制御サーバは、前記サーバ情報に含まれる回線状態を示す情報が高信頼回線である場合は、放送データと前記放送開始時刻を前記無線装置に一斉に配信することを特徴とする請求項1又は2記載の通信システム。
【請求項5】
放送データを配信する放送制御サーバであって、
前記複数の無線装置からの遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報の要求を受けると、前記サーバ情報の要求に付された時刻情報と前記要求の受信時刻との差をネットワークの遅延時間として算出して集計し、前記集計結果から前記遅延に関する情報を生成し、当該遅延に関する情報と設定された回線の種類に応じた回線状態とを含む前記サーバ情報を当該各々の無線装置に送信し、前記複数の無線装置のネットワークの遅延時間の内、最大の時間に基づいて放送開始時刻を調整し、前記回線状態に応じて放送データの配信方式を変更することを特徴とする放送制御サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに係り、特にネットワークの揺らぎを反映した放送開始時刻を設定でき、また、セキュリティを向上させた放送を実現することができる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、ネットワーク上の複数拠点に配置された無線装置を用いて放送を行う通信システムがある。
このような無線システムでは、中央局に放送サービスの制御を行う放送制御サーバを備え、各拠点(無線局と言うこともある)に複数の無線装置を備えており、無線装置が中央局から指示されたスケジュールに従って同一周波数にて放送データを放送する。
複数の無線局の無線装置が同時に放送を開始する必要があるため、放送制御サーバでは、予め遅延時間が最も大きい無線装置に合わせてオフセット時間を設定し、放送データと共に放送開始時刻を各無線装置に配信する。
【0003】
また、中央局及び無線局には、それぞれ時刻管理サーバ(時刻同期サーバ)が設けられており、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)から取得した絶対時間に基づく時刻情報及び、それを基に生成した基準信号を配信する。
【0004】
[従来の無線装置の構成:図10
従来の無線装置の構成について図10を用いて説明する。図10は、従来の無線装置の構成を示す説明図である。
図10に示すように、従来の無線装置7は、ネットワーク部71と、無線アクセス制御部72と、無線信号処理部73と、高周波部74とを備えており、時刻管理サーバ6に接続されている。また、無線装置7は、ネットワーク(図示せず)を介して、放送制御サーバ5に接続されている。
【0005】
ネットワーク部71は、主として、放送制御サーバ5とのインタフェースとなり、放送開始時刻等の制御情報や、放送用データのやり取りを行う。
ネットワーク部71は、更に、放送データ送受信部75と、通信方式制御部76と、無線フレーム送受信部77とを備えている。
放送データ送受信部75は、放送制御サーバから放送データを受信し、無線フレーム送受信部77に出力する。
【0006】
通信方式制御部76は、時刻管理サーバ6から時刻情報及び基準信号を取得し、無線アクセス制御部72、無線信号処理部73、高周波部74に配信する。また、通信方式制御部76は、設定された通信方式に基づいて、無線アクセス制御部72の送信制御部78、無線信号処理部73、高周波部74の設定を切り替える。
無線フレーム送受信部77は、設定された通信方式に基づいて、放送データからフレームを生成して無線アクセス制御部73に出力する。
【0007】
無線アクセス制御部72は、送信制御部78を備え、放送データの送信制御を行う。
具体的には、無線アクセス制御部72の送信制御部78は、ネットワーク部71から入力された制御情報と時刻情報(時刻管理サーバ6から取得)に基づいて、指定された放送開始時刻かどうかを判断する。
そして、放送開始時刻となった場合には、無線アクセス制御部72の送信制御部78は、放送データから生成されたフレームを複数連結して、暗号化等を実施し、無線信号処理部73に出力する。
【0008】
無線信号処理部73は、通信の誤りを訂正するための符号化やインタリーブを行い、搬送波への変調処理を行った後、同期信号・制御信号等を付与し、高周波部74に出力する。
高周波部74は、搬送波を周波数の高い高周波に変換し、既定の電力に増幅して送信(放送)する。
従来の無線装置7における動作は、後述する。
【0009】
[従来の送信制御サーバの構成:図11
次に、従来の送信制御サーバの構成について図11を用いて説明する。図11は、従来の送信制御サーバの構成を示す説明図である。
図11に示すように、従来の放送制御サーバ5は、放送データバンクサーバ61から放送データを受信して、無線装置7に伝送するものであり、放送データバンクサーバ通信部51と、時刻サーバ通信部52と、放送スケジュール処理部53と、受信データ確認部54とを備えている。
【0010】
放送データバンクサーバ通信部51は、放送データバンクサーバ61と通信を行う。
時刻サーバ通信部52は、時刻管理サーバ6と通信を行って時刻情報を取得する。
放送スケジュール処理部53は、放送スケジュールを制御する。
受信データ確認部54は、無線装置7からのデータを受信する。但し、従来の放送制御サーバ5では、無線装置7から送信されるデータを受信する双方向通信を行うことはなく、放送制御サーバ5から無線装置7への送信のみを行う単方向通信としていた。
従来の放送制御サーバ5における動作は、後述する。
【0011】
[従来の通信フォーマット:図12
次に、従来の通信フォーマットについて図12を用いて説明する。図12は、従来の通信フォーマットを示す説明図である。
図12に示すように、従来の通信フォーマットは、Ethernetヘッダと、IPヘッダと、TCPヘッダと、放送時刻情報と、放送データとを備えている。つまり、従来の通信フォーマットは、Ethernet/IPプロトコル上に構成され、TCPヘッダの中に放送時刻情報と放送データが格納される形となっている。
放送時刻情報は、放送開始の時刻を指定する情報である。
放送データは、放送データバンクサーバ61から取得した放送用のデータである。
【0012】
[従来の通信システムにおける通信時のシーケンス:図13
従来の通信システムにおける通信の流れについて図13を用いて説明する。図13は、従来の通信システムにおける通信時のシーケンスを示す説明図である。
図13では、放送制御サーバ5を備えた中央局と、複数の無線局(ここでは無線局#1、無線局#2)を備えた通信システムについて説明する。
【0013】
図13に示すように、まず、放送制御サーバ5と、無線局#1内の無線装置7-11,…,7-1n、及び無線局#2内の無線装置7-21,…,7-2nは、NTPプロトコル等を介して、それぞれの拠点内に設けられた時刻管理サーバ6に時刻情報取得を要求し(S71)、時刻管理サーバ6から時刻情報を取得する(S72)。
尚、無線装置7-11,…,7-1n、及び無線装置7-21,…,7-2nをまとめて無線装置7と記載することもある。
各拠点の無線装置7は、時刻情報に加えて、基準信号を受信する。
【0014】
そして、放送制御サーバ5は、放送データバンクサーバ61から放送データの配信要求を受信すると(S73)、図13の通信フォーマットに基づいて、各無線装置7に対して一斉に放送データを配信する(S74)。
【0015】
その際、放送制御サーバ5は、送信から各無線装置7で受信するまでの遅延時間の最大値を反映させた遅延時間オフセットに基づいて(現在時刻に遅延時間オフセットを加算して)放送開始時刻を設定して、各無線装置7に配信する。これにより、遅延時間に差があっても、全ての無線装置7で同時に放送を開始する(S75)ことができるものである。
【0016】
ネットワークでは、ハブやルータにデータが蓄積することでデータ量に応じて処理遅延の時間が変化し、これをネットワーク揺らぎと称する。
このネットワーク揺らぎにより、同一拠点の無線装置間であっても遅延時間が異なる場合がある。また、ネットワーク揺らぎのため、次の配信の際には前回の遅延時間と異なる場合がある。
放送制御サーバ5では、予め測定された遅延時間の値に基づいて、想定される最大の遅延時間に応じて放送開始時刻を設定するためのオフセット時間を記憶している。
【0017】
従来の通信システムは、専用回線を利用した閉塞網であることが多く、回線遅延や揺らぎによる影響を抑えることは比較的容易であった。
しかし、広域網を利用する場合には、回線遅延や揺らぎに対応することは困難であり、更にセキュリティリスクへの対応も必要となる。
従来の無線装置では、WEBアクセスをはじめとする一般的なセキュリティ保護を行うと、処理が増大して通信の遅延にもつながってしまう。
【0018】
[関連技術]
尚、放送通信システムに関する従来技術としては、特開2016-111396号公報「無線通信装置」(特許文献1)がある。
特許文献1には、伝送遅延時間を考慮して基準遅延時間との差分をタイミング調整時間として算出し、単一周波数FM同期放送を実現することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2016-111396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述したように、従来の通信システムでは、公衆回線を用いた広域網を利用した場合、ネットワークの揺らぎによる遅延時間のバラつきに応じた放送開始時刻の設定や、セキュリティリスクへの対応が困難であるという問題点があった。
【0021】
尚、特許文献1には、放送制御サーバが、ネットワークの揺らぎを含む遅延時間に応じて放送開始時刻を設定し、回線状態に応じて放送データの配信方法を変更することは記載されていない。
【0022】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、ネットワークの揺らぎを反映した放送開始時刻を設定でき、また、セキュリティを向上させた放送を実現することができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、放送データを配信する放送制御サーバと、配信された放送データを入力して無線送信する複数の無線装置とを有する通信システムであって、複数の無線装置は、各々に時刻情報を付して、遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報を前記放送制御サーバに要求し、放送制御サーバは、複数の無線装置の各々から当該要求を受信すると、サーバ情報の要求に付された時刻情報と要求の受信時刻との差をネットワークの遅延時間として算出して集計し、集計結果から遅延に関する情報を生成し、当該遅延に関する情報と設定された回線の種類に応じた回線状態とを含むサーバ情報を当該各々の無線装置に送信し、複数の無線装置のネットワークの遅延時間の内、最大の時間に基づいて放送開始時刻を調整し、回線状態に応じて放送データの配信方式を変更することを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記通信システムにおいて、無線装置は、暗号化された通信接続を行うために認証情報を放送制御サーバに要求し、放送制御サーバは、無線装置に対する認証を行い、無線装置に認証情報を付与し、当該認証に要した時間をネットワークの遅延時間に関する情報に含めることを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、上記通信システムにおいて、無線装置は、サーバ情報に含まれる回線状態を示す情報が低信頼回線である場合は、放送制御サーバに放送データと放送開始時刻を要求し、放送制御サーバは、放送データと放送開始時刻を無線装置に送信することを特徴としている。
【0026】
また、本発明は、上記通信システムにおいて、放送制御サーバは、サーバ情報に含まれる回線状態を示す情報が高信頼回線である場合は、放送データと放送開始時刻を無線装置に一斉に配信することを特徴としている。
【0027】
また、本発明は、放送データを配信する放送制御サーバであって、複数の無線装置からの遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報の要求を受けると、サーバ情報の要求に付された時刻情報と要求の受信時刻との差をネットワークの遅延時間として算出して集計し、集計結果から遅延に関する情報を生成し、当該遅延に関する情報と設定された回線の種類に応じた回線状態とを含むサーバ情報を当該各々の無線装置に送信し、複数の無線装置のネットワークの遅延時間の内、最大の時間に基づいて放送開始時刻を調整し、回線状態に応じて放送データの配信方式を変更することを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、放送データを配信する放送制御サーバと、配信された放送データを入力して無線送信する複数の無線装置とを有する通信システムであって、複数の無線装置は、各々に時刻情報を付して、遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報を前記放送制御サーバに要求し、放送制御サーバは、複数の無線装置の各々から当該要求を受信すると、サーバ情報の要求に付された時刻情報と要求の受信時刻との差をネットワークの遅延時間として算出して集計し、集計結果から遅延に関する情報を生成し、当該遅延に関する情報と設定された回線の種類に応じた回線状態とを含むサーバ情報を当該各々の無線装置に送信し、複数の無線装置のネットワークの遅延時間の内、最大の時間に基づいて放送開始時刻を調整し、回線状態に応じて放送データの配信方式を変更する通信システムとしているので、実際のネットワークの揺らぎを反映した遅延時間に基づいて放送開始時刻を設定でき、また、回線状態に応じて放送データの配信方法を変更して、セキュリティ及び遅延時間を適切にして安定した放送通信を行うことができる効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、無線装置は、暗号化された通信接続を行うために認証情報を放送制御サーバに要求し、放送制御サーバは、無線装置に対する認証を行い、無線装置に認証情報を付与し、当該認証に要した時間をネットワークの遅延時間に関する情報に含める上記通信システムとしているので、セキュリティリスクを低減した放送サービスを実現できる効果がある。
【0030】
また、本発明によれば、無線装置は、サーバ情報に含まれる回線状態を示す情報が低信頼回線である場合は、放送制御サーバに放送データと放送開始時刻を要求し、放送制御サーバは、放送データと放送開始時刻を無線装置に送信する上記通信システムとしているので、回線が低信頼回線であっても放送におけるセキュリティを確保できる効果がある。
【0031】
また、本発明によれば、放送制御サーバは、サーバ情報に含まれる回線状態を示す情報が高信頼回線である場合は、放送データと放送開始時刻を無線装置に一斉に配信する上記通信システムとしているので、セキュリティリスクの低い高信頼回線の場合には、処理を簡易にして遅延時間を押さえることができる効果がある。
【0032】
また、本発明によれば、放送データを配信する放送制御サーバであって、複数の無線装置からの遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報の要求を受けると、サーバ情報の要求に付された時刻情報と要求の受信時刻との差をネットワークの遅延時間として算出して集計し、集計結果から遅延に関する情報を生成し、当該遅延に関する情報と設定された回線の種類に応じた回線状態とを含むサーバ情報を当該各々の無線装置に送信し、複数の無線装置のネットワークの遅延時間の内、最大の時間に基づいて放送開始時刻を調整し、回線状態に応じて放送データの配信方式を変更する放送制御サーバとしているので、実際のネットワークの揺らぎを反映した遅延時間に基づいて放送開始時刻を設定でき、また、回線状態に応じて放送データの配信方法を変更して、セキュリティ及び遅延時間を適切にして安定した放送通信を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本通信システムの概略構成を示す説明図である。
図2】本通信システムの無線装置3の構成を示す説明図である。
図3】本通信システムの放送制御サーバ1の構成を示す説明図である。
図4】サーバ情報の伝送データを示す説明図である。
図5】放送データ/制御データの伝送データを示す説明図である。
図6】本通信システムにおける暗号化通信開始・サーバ情報取得のシーケンスを示す説明図である。
図7】放送データ配信時のシーケンス(低信頼回線)を示す説明図である。
図8】放送データ配信時のシーケンス(高信頼回線)を示す説明図である。
図9】無線装置内放送開始に向けた制御の流れの例を示す説明図である。
図10】従来の無線装置の構成を示す説明図である。
図11】従来の送信制御サーバの構成を示す説明図である。
図12】従来の通信フォーマットを示す説明図である。
図13】従来の通信時のシーケンスを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る通信システム(本通信システム)は、放送データを配信する放送制御サーバと、配信された放送データを入力して無線送信する複数の無線装置とを有し、複数の無線装置は、時刻情報を付して、各々に放送制御サーバに遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報を要求し、放送制御サーバは、複数の無線装置の各々から要求を受信すると、サーバ情報の要求に含まれる時刻情報と当該要求の受信時刻との差からネットワークの遅延時間を算出して集計し、当該遅延時間に基づいて遅延に関する情報を生成して、当該遅延に関する情報と、予め設定された回線の種類に応じた回線状態とを含むサーバ情報を各々の無線装置に送信し、最大の遅延時間に基づいて放送開始時刻を調整し、回線状態に応じて放送データの配信方式を変更するものであり、実際のネットワークの揺らぎを反映した遅延時間に基づいて放送開始時刻を設定でき、また、回線状態に応じて放送データの配信方法を変更して、安定した放送通信を行うことができるものである。
【0035】
また、本通信システムは、放送制御サーバにおいて無線装置を認証し、回線状態が低信頼回線の場合にはセキュリティの高い暗号化・配信方法とし、高信頼回線の場合には低遅延の暗号化・配信方法としているので、無線装置における負荷を増大させずにセキュリティを確保すると共に、適切な遅延時間で放送を実現することができるものである。
【0036】
[本通信システムの概略構成:図1
本通信システムの概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本通信システムの概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、本通信システムの基本的な構成は、従来の通信システムと同様であり、中央局の放送制御サーバ1と、複数の拠点(無線局)に設けられた複数の無線装置3(無線装置3-11,3-12,…3-1N,…3-N1,…3-NN)とがそれぞれルータを介してネットワークで接続された構成である。
図1の例では、ネットワークはWAN(Wide Area Network:広域通信網)としているが、広域通信網に限るものではなく、閉塞網であってもよい。
【0037】
中央局の放送制御サーバ1は、放送の情報管理及びスケジュール管理を行う。
本通信システムの放送制御サーバ1は、無線装置3からの要求に対して認証を行って、認証した無線装置3との暗号化通信を実現し、セキュリティリスクの低減を図るものである。
また、本通信システムの放送制御サーバ1は、通信回線の状態に応じて放送データの配信方法を切り替えて、配信を行う。
【0038】
具体的には、低信頼回線の場合には、無線装置3からの個別要求に応じて、個別に放送データを配信し、高信頼回線の場合には、複数の拠点の無線装置3に一斉に放送データを配信する(マルチキャスト)。
放送制御サーバ1の構成及び具体的な動作については後述する。
また、時刻管理サーバ2は、放送制御サーバ1にGNSSに同期した時刻情報を配信する。
【0039】
各拠点の無線装置3は、従来と同様に放送制御サーバ1から配信された放送データ及び開始時刻に従って放送を行う。
但し、従来の通信システムでは、無線装置7は、放送制御サーバ5から一方的に配信される情報に基づいて動作を行っていたが、本通信システムの無線装置3は、放送制御サーバ1と双方向通信を行う。
【0040】
具体的には、本通信システムの無線装置3は、放送制御サーバ1に対して制御情報を要求し、取得した制御情報に基づいて放送データ取得の動作を行う。
また、本通信システムの無線装置3は、サーバとの通信を暗号化通信で行い、セキュリティを向上させる。
無線装置3の構成及び動作については後述する。
また、時刻管理サーバ4(時刻管理サーバ4-1,4-2,…4-n)は、拠点ごとに設けられ、拠点内の無線装置3に対してGNSSに同期した時刻情報及び基準信号を配信する。
【0041】
[無線装置3の構成:図2
次に、本通信システムの無線装置3の構成について図2を用いて説明する。図2は、本通信システムの無線装置3の構成を示す説明図である。
図2に示すように、本通信システムの無線装置3は、ネットワーク部31と、無線アクセス制御部32と、無線信号処理部33と、高周波部34に加え、本通信システムの特徴として、セキュリティクライアント通信部35と、セキュリティ署名取得部36とを備えている。
【0042】
これらの内、無線アクセス制御部32と、無線信号処理部33と、高周波部34については従来と構成及び動作が同様であるため、説明は省略する。尚、無線アクセス制御部32は、送信制御部37を備えている。
また、ネットワーク部31は、従来と同様に、放送データ送受信部311と、通信方式制御部312と、無線フレーム送受信部313を備えているが、動作が一部従来とは異なっており、後述する。
【0043】
無線装置3の特徴部分について説明する。
本通信システムの無線装置3は、セキュリティクライアント通信部35と、セキュリティ署名取得部36とを設けて通信のセキュリティ向上を図るようにしている。
セキュリティクライアント通信部35は、中央局の放送制御サーバ1との暗号化通信を行うものであり、暗号化や復号に伴う処理を行う。
【0044】
セキュリティ署名取得部36は、拠点の時刻管理サーバ4に接続して、時刻情報及び基準信号を取得する。
また、セキュリティ署名取得部36は、放送制御サーバ1に対して認証を要求し、認証後は、セキュリティクライアント通信部35を介して暗号化通信を行い、放送制御サーバ1から放送に関する制御情報であるサーバ情報を取得する。そして、取得したサーバ情報をネットワーク部31に送出する。サーバ情報については後述する。
【0045】
また、本通信システムの特徴として、ネットワーク部31が、回線状態に応じて送信データの取得方法を変えるようにしており、安定した放送サービスを提供する。
ネットワーク部31の通信方式制御部312は、後述するように、放送制御サーバ1から取得した回線状態を放送データ送受信部311に出力する。
【0046】
ネットワーク部31の放送データ送受信部311は、入力された回線状態に基づいて、暗号化方式及び放送データの取得方法を切り替える。
具体的には、放送データ送受信部311は、サーバ情報に含まれる回線状態を示す情報が低信頼回線であった場合には、署名付き公開鍵を用いた暗号化方式を用い、放送制御サーバ1に対して放送データの取得を要求して、要求に応じて配信された放送データを取得する。放送データは公開鍵に対応する秘密鍵で暗号化されている。
つまり、低信頼回線の場合には、セキュリティの高い方式で通信を行う。
【0047】
また、サーバ情報に含まれる回線状態を示す情報が高信頼回線であった場合には、共通鍵を用いた暗号化方式を用い、放送データ送受信部311は、放送制御サーバ1からマルチキャストで配信される放送データを取得する。
いずれの場合にも、放送データ送受信部311は、放送データと共に受信する放送開始時刻に従って放送を開始する。
これらの動作については後述する。
【0048】
[放送制御サーバ1の構成:図3
次に、本通信システムの放送制御サーバ1の構成について図3を用いて説明する。図3は、本通信システムの放送制御サーバ1の構成を示す説明図である。
図3に示すように、本通信システムの放送制御サーバ1は、従来と同様の構成部分として、放送データバンクサーバ通信部21と、時刻サーバ通信部12と、放送スケジュール処理部13と、受信データ確認部14とを備え、本システムの特徴部分として、セキュリティサーバ通信部15と、セキュリティ署名管理部16とを備えている。
従来と同様の部分については、説明を省略する。
【0049】
セキュリティサーバ通信部15は、暗号化通信に伴う暗号化や復号の処理を行い、無線装置3のセキュリティクライアント通信部35と暗号化通信を行う。
また、セキュリティ署名管理部16は、無線装置3に対して認証を行うための署名を管理している。署名には、有効期限(例えば3か月)が設けられており、無線装置3からの認証要求(後述するデジタル認証署名取得要求)があると、対応する署名を出力する。
これにより、本通信システムは通信のセキュリティを向上させている。
【0050】
本通信システムでは、放送データを配信する前に、放送制御サーバ1が、無線装置3からの要求に応じて無線装置3の認証を行って暗号化方式を決定する。
そして、無線装置3から当該暗号化方式を用いた通信によってサーバ情報の要求があると、放送制御サーバ1はそれに応じてサーバ情報を配信する。無線装置3では、サーバ情報に含まれる情報に基づいて、放送データ取得の処理を切り替えて行うようにしている。
サーバ情報は、本通信システムの特徴部分であり、後述する。
【0051】
[サーバ情報の伝送データ構成:図4
次に、放送制御サーバ1から伝送されるサーバ情報の伝送データについて図4を用いて説明する。図4は、サーバ情報の伝送データを示す説明図であり、(a)はデータ構成を示す説明図、(b)はサーバ情報のフォーマットを示す表である。
図4(a)に示すように、サーバ情報の伝送データは、従来と同様の、Ethernetヘッダ、IPヘッダ、TCP/UDPヘッダに加え、認証機能や暗号通信方式が実現されているCoAP(Constrained Application Protocol)/HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)ヘッダが付されており、それに続いてサーバ情報が格納されている。
【0052】
また、図4(b)に示すように、サーバ情報は、「認証トークン」と、「遅延時間最小」と、「遅延時間平均」と、「回線判断」の情報とを含んでいる。
「認証トークン」は、サーバ認証を示すトークン情報である。
「遅延時間最小」は、放送制御サーバ1と当該無線装置3との通信の遅延時間の最小となる時間(最短回線遅延時間)である。
【0053】
また、「遅延時間平均」は、放送制御サーバ1と当該無線装置3との間の通信における遅延時間の平均(平均回線遅延時間)である。
「遅延時間最小」及び「遅延時間平均」は、後述するシーケンスにおいて算出される値である。
「回線判断」は、当該システムの放送制御サーバ1と無線装置3との間の回線の種類に応じて放送制御サーバ1が判断した回線の品質を示す情報であり、「低信頼回線」又は「高信頼・低遅延回線」のいずれかが選択される。尚、回線の種類は放送制御サーバ1に予め設定されている。
【0054】
[放送データ/制御データの伝送データ構成:図5
次に、放送制御サーバ1から伝送される放送データ/制御データの伝送データについて図5を用いて説明する。図5は、放送データ/制御データの伝送データを示す説明図であり、(a)はデータ構成を示す説明図、(b)は放送データ/制御データのフォーマットを示す表である。
図5(a)に示すように、放送データ/制御データもサーバ情報と同様に、Ethernetヘッダ、IPヘッダ、TCP/UDPヘッダ、CoAP/HTTPヘッダに続いて放送データ/制御データが格納されている。
【0055】
また、図5(b)に示すように、放送データ/制御データは、「認証トークン」「放送開始時刻」「放送コード」「放送データ」の情報を含む。
「認証トークン」は、サーバ情報と同様にサーバ認証を示す情報である。
「放送開始時刻」は、放送の開始を行う時刻であり、本通信システムでは、後述するように複数の無線装置におけるネットワーク遅延の最大値に基づいて設定される。
「放送コード」は、放送データに付与される制御情報である。
「放送データ」は、放送するデータ(ユーザ情報)である。
【0056】
[暗号化通信開始・サーバ情報取得時のシーケンス:図6
次に、本通信システムにおいて暗号化通信開始時及びサーバ情報取得時のシーケンスについて図6を用いて説明する。図6は、本通信システムにおける暗号化通信開始・サーバ情報取得のシーケンスを示す説明図である。
図6の例では、中央局と、2つの拠点(無線局#1,無線局#2)とを備えており、中央局には、放送データバンクサーバ21、時刻管理サーバ2、放送制御サーバ1が設けられている。
また、無線局#1には、時刻管理サーバ4-1、無線装置#1-1、…無線装置#1-Nが設けられ、同様に、無線局#2には、時刻管理サーバ4-2、無線装置#2-1…、無線装置#2-N置が設けられている。
【0057】
まず、放送制御サーバ1は、中央局の時刻管理サーバ2から時刻情報を取得する(S11,S12)。
そして、放送制御サーバ1は、放送データバンクサーバ21に対して、放送データ配信不可を通知する(S13)。本通信システムの放送制御サーバ1は、全ての無線装置と接続が完了するまでは放送データ配信を許可しない。
同様に、各拠点の無線装置は、同一拠点の時刻管理サーバ4から時刻情報を取得する(S14~S17)。無線装置#1-2及び無線局#2の無線装置については省略しているが、無線装置#1-1と同様の処理を行う。
【0058】
以降は、無線装置#1-1を例として説明する。
無線装置#1-1は、放送制御サーバ1に対して、デジタル認証署名情報取得の要求を送出する(S18)。
放送制御サーバ1のセキュリティ署名管理部16では、当該無線装置#1-1のIPアドレスに基づいて、認証予定の無線装置であるかどうかを判断し、認証対象であると判断すると、放送制御サーバ1は、当該無線装置#1-1にデジタル認証署名情報(署名)を応答する(S19)。
【0059】
次に、無線装置#1-1は、取得した署名を付して放送制御サーバ1に公開鍵を送付する(S20)。
放送制御サーバ1のセキュリティ署名管理部16は、署名に対応する秘密鍵を用いて復号を行い、無線装置#1-1に応答する(S21)。これにより、無線装置#1-1と放送制御サーバ1との間で、公開鍵と秘密鍵とを用いて暗号化された通信接続(セッション)が構築される。
無線局#1の他の無線装置や、無線局#2の無線装置についても同様の処理が行われ(S26~S31)、システム内の全ての無線装置と放送制御サーバ1との間で暗号化通信が可能となるものである。
【0060】
そして、無線装置#1-1は、放送制御サーバ1に対して、S15で取得した時刻情報を付して、暗号化通信によりサーバ情報取得要求を送信する(S25)。
放送制御サーバ1は、無線装置#1-1からサーバ情報取得要求を受信すると、当該要求に含まれる時刻情報と、当該要求の受信時刻を比較して、ネットワーク遅延として算出する。つまり、ネットワーク遅延には、処理S18~S23の認証に要した時間も含まれている。また、ネットワーク揺らぎによる遅延も含まれている。
【0061】
そして、放送制御サーバ1は、遅延に関する情報と、回線状態の情報とを含むサーバ情報を、無線装置#1-1に応答する。
その際、放送制御サーバ1は、当該無線装置#1-1のネットワーク遅延を集計して、それらの中の最小値を特定し、当該最小値を図4に示した「遅延時間最小」としてサーバ情報に組み込む。
また、放送制御サーバ1は、無線装置#1-1のネットワーク遅延の値の平均値を算出し、当該平均値を図4に示した「遅延時間平均」としてサーバ情報に組み込む。
請求項に記載した遅延に関する情報は、遅延時間最小と遅延時間平均に相当している。
【0062】
更に、放送制御サーバ1は、予め設定されている回線情報に基づいて回線状態を判断し、低信頼回線又は高信頼・低遅延回線(高信頼回線と称することもある)のいずれかを示す情報を「回線判断」としてサーバ情報に組み込む。
ここで、回線状態が低信頼回線であるか高信頼回線であるかによって、放送制御サーバ1における放送データの配信時の動作、及び無線装置における放送データ取得時の動作が変わるものである。
【0063】
各無線装置は、情報同期のために定期的に時刻情報を付してサーバ情報取得要求を送信するようにしており、放送制御サーバ1では、サーバ情報取得要求を受信する度にネットワーク遅延を算出して集計し、遅延時間最小及び遅延時間平均を更新して保持し、サーバ情報を配信する。
これにより、各無線装置は最新の状況に基づいた遅延に関する情報及び回線状態の情報をサーバ情報として取得することができるものである。
【0064】
[放送データ配信時のシーケンス(低信頼回線):図7
次に、放送データ配信時のシーケンス(低信頼回線)について図7を用いて説明する。図7は、放送データ配信時のシーケンス(低信頼回線)を示す説明図である。
放送制御サーバ1は、上述した図6のシーケンスにおいて、複数の無線装置についてのネットワーク遅延の値を算出すると、各無線装置についてネットワーク遅延の平均値、最小値、最大値、偏差等を計算して、保持しておく。
【0065】
そして、放送制御サーバ1は、複数の無線装置における最大のネットワーク遅延の値に基づいて、放送データの配信から放送開始までのオフセット時間を算出し、放送開始時刻を調整する。
具体的には、放送制御サーバ1は、複数の無線装置におけるネットワーク遅延の最大値だけでなく、ネットワーク遅延の変動量や平均値(遅延時間平均)を参照してオフセット時間を算出し、放送データの受信処理に要する時間も加味して放送開始時刻を決定する(S40)。
【0066】
そして、放送制御サーバ1は、放送データバンクサーバ21に対して、放送データ配信可能の情報を送信し(S41)、放送データバンクサーバ21は放送データを配信する(S42)。
回線状態が低信頼回線であった場合、放送制御サーバ1は、放送データ取得後、無線装置からの放送データ取得要求を待ち受ける。
【0067】
一方、無線装置#1-1は、図6の処理で取得したサーバ情報に含まれる回線状態の情報が低信頼回線であった場合、放送制御サーバ1に対して放送データ・放送時刻取得要求を送信する(S43)。
放送制御サーバ1は、放送データ・放送時刻取得要求を受信すると、図5に示した放送データ/制御データとして、放送データ及び処理S40で決定した放送開始時刻を配信する(S44)。
【0068】
他の無線装置も、取得したサーバ情報に含まれる回線状態が低信頼回線を示すものであった場合には、同様に、放送制御サーバ1に放送データ・放送時刻取得要求を送信し、同一の放送データ/制御データを受信する(S43~S50)。
これにより、システム内の全ての無線装置が、同一の放送開始時刻に基づいて放送を開始する(S50)。
【0069】
このように、回線状況が低信頼回線であった場合には、セキュリティを向上させるために、無線装置から上述した暗号化方式により公開鍵で暗号化した放送データ・放送時刻取得要求を送信し、放送制御サーバ1は、対応する秘密鍵で要求を復号化すると共に、秘密鍵で暗号化した放送データ/制御データを送信する。
これにより、低信頼回線でもセキュリティリスクを避けることができるものである。
【0070】
[放送データ配信時のシーケンス(高信頼回線):図8
次に、放送データ配信時のシーケンス(高信頼回線)について図8を用いて説明する。図8は、放送データ配信時のシーケンス(高信頼回線)を示す説明図である。
尚、高信頼回線の場合にも、図6に示した暗号化通信開始・サーバ情報取得のシーケンスは同様に行われる。
【0071】
そして、図7に示した処理と同様に、放送制御サーバ1は、ネットワーク遅延の最大値及びネットワーク遅延の変動量や平均値(遅延時間平均)に基づいて放送開始時刻を決定する(S60)。
一方、無線装置では、図6の処理で取得したサーバ情報に含まれる回線状態が高信頼性回線であった場合には、簡易的な処理(簡易受信サーバの処理)を設定する(S61)。図8の例では、S61の処理は無線装置#2-Nのみに記載されているが、システム内の全ての無線装置がS61の処理を行うものである。
【0072】
具体的には、無線装置は、取得したサーバ情報に含まれる回線状態が高信頼回線を示すものであった場合には、共通鍵を用いた簡易的な暗号化通信として、放送制御サーバ1からの配信を待ち受けるよう、処理を切り替える。
つまり、本通信システムの無線装置では、放送データ送受信部311が、放送制御サーバから取得したサーバ情報で指定された回線状態に基づいて、低信頼回線の場合の高セキュアな処理と、高信頼回線の場合の簡易的な処理のいずれかを選択して動作するものである。
【0073】
そして、放送制御サーバ1は、予定されている全ての無線装置と接続が完了すると、放送データバンクサーバ21に放送データ配信可能を通知し(S62)、放送データバンクサーバ21から放送データを受信する(S63)。
そして、放送制御サーバ21は、複数の無線装置に対して、IPマルチキャスト通信による同報通信(マルチキャスト)で、図5に示した放送データ/制御データの配信を行う(S64~S67)。当該配信は共通鍵で暗号化される。
【0074】
各無線装置は、放送データ/制御データを受信して、当該受信データに含まれる放送開始時刻になると、一斉に放送を行う(S68)。
このように、高信頼回線の場合には、セキュリティのリスクが低いので、受信処理を簡易にして処理遅延を抑え、放送遅延を小さくすることができるものである。
【0075】
[放送開始に向けた制御の流れの例:図9
次に、無線装置における放送開始に向けた制御の流れについて図9を用いて説明する。図9は、無線装置内放送開始に向けた制御の流れの例を示す説明図である。
図9に示すように、無線装置3には、時刻管理サーバ4から基準信号と1PPS信号が入力されている。
そして、無線装置3は、予め設定された放送時刻の一定時間前になると、放送制御サーバ1から放送データ/制御データを取得する(図では「放送開始時間」と記載)。
【0076】
そして、無線装置3のネットワーク部3の放送データ送受信部311は、無線アクセス制御部32の送信制御部37に放送開始指示を出力する。
無線アクセス制御部32の送信制御部37は、放送開始指示を受けて、放送開始契機信号をH(High)レベルとする(アサートする)。
また、送信制御部37は、送信データから放送用のサブフレームを生成し、無線信号処理部33に転送しておく。
【0077】
そして、放送開始契機信号がHレベルの状態で1PPS信号と基準信号が立ち上がると、無線アクセス制御部32の送信制御部37は、放送許可信号をHレベルとして、無線信号処理部33に出力する。
【0078】
無線信号処理部では、放送許可信号を受信すると、サブフレームの変調を開始して、変調処理に要する一定の遅延時間(変調遅延)の後、変調信号を高周波部34に出力して放送を開始する。これにより、全ての無線装置3から一斉に放送が開始される。
尚、無線アクセス制御部32の送信制御部37は、Hレベルとしている放送開始契機信号を、1PPS信号が立ち下がるとL(Low)レベルとする。
このようにして、放送開始の制御が行われるものである。
【0079】
[実施の形態の効果]
本通信システムによれば、複数の無線装置3は、時刻情報を付して、各々に放送制御サーバ1に遅延に関する情報と回線状態を示す情報を含むサーバ情報を要求し、放送制御サーバ1は、複数の無線装置3の各々から要求を受信すると、サーバ情報の要求に含まれる時刻情報と当該要求の受信時刻との差からネットワークの遅延時間を算出して集計し、当該遅延時間に基づいて遅延に関する情報を生成して、当該遅延に関する情報と、回線の種類に応じた回線状態とを含むサーバ情報を各々の無線装置3に送信し、集計された最大の遅延時間に基づいて放送開始時刻を調整し、回線状態に応じて放送データの配信方式を変更する通信システムとしているので、実際のネットワークの揺らぎを反映した遅延時間に基づいて放送開始時刻を設定でき、また、回線状態に応じて放送データの配信方法を変更して、セキュリティ及び遅延時間を適切にして安定した放送通信を行うことができる効果がある。
【0080】
また、本通信システムによれば、放送制御サーバ1が無線装置3を認証し、回線状態が低信頼回線の場合にはセキュリティの高い暗号化・配信方法とし、高信頼回線の場合には低遅延の暗号化・配信方法としているので、無線装置3における負荷を増大させずにセキュリティを確保すると共に、適切な遅延時間で放送を実現することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ネットワークの揺らぎを反映した放送開始時刻を設定でき、また、セキュリティを向上させた放送を実現することができる通信システムに適している。
【符号の説明】
【0082】
1,5…放送制御サーバ、 2,4,6…時刻管理サーバ、 3,7…無線装置、 11,51…放送データバンクサーバ通信部、 12,52…時刻サーバ通信部、 13,53…放送スケジュール処理部、 14,54…受信データ確認部、 15…セキュリティサーバ通信部、 16…セキュリティ署名管理部、 61…放送データバンクサーバ、 31,71…ネットワーク部、 32,72…無線アクセス制御部、 33,73…無線信号処理部、 34,74…高周波部、 35…セキュリティクライアント通信部、 36…セキュリティ署名取得部、 37…送信制御部、 75,311…放送データ送受信部、 76,312…通信方式制御部、 77,313…無線フレーム送受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13