(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134802
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】滑性付与装置および管体接続方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/26 20060101AFI20240927BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240927BHJP
F16L 58/18 20060101ALI20240927BHJP
F16L 101/16 20060101ALN20240927BHJP
F16L 101/30 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
F16L55/26
F16L55/00 D
F16L58/18
F16L101:16
F16L101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045178
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】藤田 弘司
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義徳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健吾
(72)【発明者】
【氏名】魚津 颯二郎
(72)【発明者】
【氏名】小西 賛良
【テーマコード(参考)】
3H024
【Fターム(参考)】
3H024EA04
3H024EB09
3H024EC01
3H024EE03
3H024EF07
(57)【要約】
【課題】滑剤が乾燥した状態で管体の接続作業が行われるのを防止することが可能な滑性付与装置および管体接続方法を提供する。
【解決手段】滑性付与装置1を、軸周りに回転操作可能な操作ロッド2と、操作ロッド2の軸心から径方向外向きに突出して設けられ、操作ロッド2の回転操作によって軸周りに回転し、管体の内部に設けられたゴム輪10の表面に摺動して、その表面に滑性を付与するゴム輪表面摺動部3と、操作ロッド2を回転操作可能に支持しつつ前記管体の内部を走行可能な台車4と、を有する構成とし、管体接続方法を、先行管体P1の内部に、滑性付与装置1を待機させた上で、接続管体P2をその軸方向から接近させる工程と、操作ロッド2を軸周りに回転操作して、ゴム輪表面摺動部3の表面に滑性を付与する工程と、ゴム輪10の表面の滑性状態が保たれている間に、先行管体P1に接続管体P2を接続する工程と、を有する構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りに回転操作可能な操作ロッド(2)と、
前記操作ロッド(2)の軸心から径方向外向きに突出して設けられ、前記操作ロッド(2)の回転操作によって軸周りに回転し、管体の内部に設けられたゴム輪(10)の表面に摺動して、その表面に滑性を付与するゴム輪表面摺動部(3)と、
前記操作ロッド(2)を回転操作可能に支持しつつ前記管体の内部を走行可能な台車(4)と、
を有する滑性付与装置。
【請求項2】
前記操作ロッド(2)に着脱可能に設けられて、前記管体の外部で前記操作ロッド(2)を支持する支柱(5)と、
前記支柱(5)に接続された支柱回収部材(6)と、
をさらに有する請求項1に記載の滑性付与装置。
【請求項3】
前記ゴム輪表面摺動部(3)に水または滑剤の少なくとも一方を供給する供給管(11)をさらに有する請求項1または2に記載の滑性付与装置。
【請求項4】
前記管体の内部の状態を確認する撮像装置(16)をさらに有する請求項1または2に記載の滑性付与装置。
【請求項5】
前記台車(4)に、接続された前記管体の継ぎ目にその内面側から水圧を付与して水密性の試験を行うことが可能な水圧試験機(15)が設けられている請求項1または2に記載の滑性付与装置。
【請求項6】
先行する管体(P1)の内部に、軸周りに回転操作可能な操作ロッド(2)と、前記操作ロッド(2)の軸心から径方向外向きに突出して設けられ、前記操作ロッド(2)の回転操作によって軸周りに回転するゴム輪表面摺動部(3)と、前記操作ロッド(2)を回転操作可能に支持しつつ管体の内部を走行可能な台車(4)と、を有する滑性付与装置(1)を待機させた上で、前記先行する管体(P1)に接続する管体(P2)をその軸方向から接近させる工程と、
前記操作ロッド(2)を軸周りに回転操作して、前記ゴム輪表面摺動部(3)を前記先行する管体(P1)のゴム輪(10)の表面に摺動して、その表面に滑性を付与する工程と、
前記ゴム輪(10)の表面の滑性状態が保たれている間に、前記先行する管体(P1)に前記接続する管体(P2)を接続する工程と、
を有する管体接続方法。
【請求項7】
前記台車(4)に、接続された管体の継ぎ目にその内面側から水圧を付与して水密性の試験を行うことが可能な水圧試験機(15)が設けられており、前記管体を接続する工程に続いて、前記水圧試験機(15)で前記継ぎ目の水密性を試験する工程をさらに有する請求項6に記載の管体接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道管をはじめとする流体輸送配管路の敷設工事に用いられる、管体への滑性付与装置、および、滑性を付与した上で管体同士を接続する管体接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発進立坑から到達立坑に至るさや管を形成し、発進立坑側から本管となるΦ600mm以下のT形継手、PN形継手などのプッシュオン継手のダクタイル鉄管をさや管内に1本ずつ運搬し、先行する管体の受口に挿入することで配管する工法においては、管体同士をスムーズに接続するために、先行する管体の受口内に設けられたゴム輪の表面に、管体の挿入に伴う摺動抵抗を減らすための滑剤が塗布される。
【0003】
例えば、さや管の口径がΦ1000mmで、本管の口径がΦ500mmの場合、本管の外側とさや管の内側との間に、作業者が通る隙間を確保することが難しい。このため、先行する管体の受口内に設けられたゴム輪への滑剤の塗布は、先行する管体の配管が完了した時点で行われる。そして、滑剤の塗布後に、管体を運搬してきた運搬台車を配管位置から発進立坑まで移動する工程、運搬台車に次の管体を積み込む工程、その管体を乗せた運搬台車を再び配管位置まで移動する工程、および、次の管体の心出しを行ってこの管体を先行する管体に挿入する工程、の一連の工程を経て管体同士が接続される。
【0004】
この一連の工程は、滑剤の滑性が保持されている時間内に完了するように施工管理が行われる。しかしながら、作業の遅れが生じた場合、ゴム輪に塗布した滑剤が乾燥してその滑性が失われ、その状態で次の管体を接続するとゴム輪がずれるなどの不具合を生じるおそれがある。
【0005】
そこで、例えば下記特許文献1においては、滑剤の塗布部にフィルムを設け、施工前にこのフィルムを剥がすことによって、塗布した滑剤の乾燥を防止している(特許文献1の段落0045、0059、
図8などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る構成においては、フィルムを設けている状態では滑剤の乾燥を防ぐことができるが、管体の接続前にこのフィルムを剥離しておく必要がある。この剥離は作業者の手作業によって行われるが、その剥離後の運搬台車の移動や管体の積み込みなどの各工程に時間がかかると、上記の工法と同様に滑剤が乾燥して接続作業に不具合が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、この発明は、滑剤が乾燥した状態で管体の接続作業が行われるのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明では、
軸周りに回転操作可能な操作ロッドと、
前記操作ロッドの軸心から径方向外向きに突出して設けられ、前記操作ロッドの回転操作によって軸周りに回転し、管体の内部に設けられたゴム輪の表面に摺動して、その表面に滑性を付与するゴム輪表面摺動部と、
前記操作ロッドを回転操作可能に支持しつつ前記管体の内部を走行可能な台車と、
を有する滑性付与装置を構成した。
【0010】
このようにすると、操作ロッドの回転操作によって、先行する管体から離れた位置から、接続する管体の接続直前にゴム輪の表面に滑性を付与することができるため、滑剤の乾燥に起因するゴム輪のずれなどの不具合を生じることなく、管体の接続作業をスムーズに行うことができる。
【0011】
前記構成においては、前記操作ロッドに着脱可能に設けられて、前記管体の外部で前記操作ロッドを支持する支柱と、前記支柱に接続された支柱回収部材と、をさらに有するのが好ましい。このようにすると、操作ロッドの先端の垂れ下がりを防止して、先行する管体に接続される管体に、この操作ロッドをスムーズに通すことができ、作業性を向上することができる。また、支柱に支柱回収部材を接続したので、支柱が不要になった際に支柱回収部材を操作する(例えば、発進立坑側に引っ張る)ことでこの支柱をスムーズに回収することができ、支柱が台車の走行の障害となるのを防ぐことができる。
【0012】
前記のすべての構成においては、前記ゴム輪表面摺動部に水または滑剤の少なくとも一方を供給する供給管をさらに有するのが好ましい。このようにすると、ゴム輪表面摺動部によるゴム輪表面の滑性付与機能を常に確保することができる。
【0013】
前記のすべての構成においては、前記管体の内部の状態を確認する撮像装置をさらに有するのが好ましい。このようにすると、ゴム輪表面の滑剤の状態や、管体同士を接続した際のゴム輪のずれの有無などを直接視認することができるため、接続に伴う不具合の発生を防止することができる。
【0014】
前記のすべての構成においては、前記台車に、接続された前記管体の継ぎ目にその内面側から水圧を付与して水密性の試験を行うことが可能な水圧試験機が設けられているのが好ましい。このようにすると、管体の接続作業に続いて水圧試験を連続的に行うことができるため、作業性を高めることができる。
【0015】
また、上記の課題を解決するため、この発明では、
先行する管体の内部に、軸周りに回転操作可能な操作ロッドと、前記操作ロッドの軸心から径方向外向きに突出して設けられ、前記操作ロッドの回転操作によって軸周りに回転するゴム輪表面摺動部と、前記操作ロッドを回転操作可能に支持しつつ管体の内部を走行可能な台車と、を有する滑性付与装置を待機させた上で、前記先行する管体に接続する管体をその軸方向から接近させる工程と、
前記操作ロッドを軸周りに回転操作して、前記ゴム輪表面摺動部を前記先行する管体のゴム輪の表面に摺動して、その表面に滑性を付与する工程と、
前記ゴム輪の表面の滑性状態が保たれている間に、前記先行する管体に前記接続する管体を接続する工程と、
を有する管体接続方法を構成した。
【0016】
このようにすると、先行する管体への接続直前にゴム輪表面摺動部によってゴム輪の表面に滑性を付与することができるため、滑剤の乾燥に起因するゴム輪のずれなどの不具合を生じることなく、管体の接続作業をスムーズに行うことができる。
【0017】
前記の管体接続方法においては、前記台車に、接続された管体の継ぎ目にその内面側から水圧を付与して水密性の試験を行うことが可能な水圧試験機が設けられており、前記管体を接続する工程に続いて、前記水圧試験機で前記継ぎ目の水密性を試験する工程をさらに有するのが好ましい。このようにすると、管体の接続作業に続いて水圧試験を連続的に行うことができるため、作業性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明では、軸周りに回転操作可能な操作ロッドを回転することによってゴム輪表面摺動部を回転させ、ゴム輪の表面に滑性を付与するようにしたので、先行する管体から離れた位置から、接続する管体の接続直前にゴム輪の表面に滑性を付与することができる。このため、滑剤の乾燥に起因するゴム輪のずれなどの不具合を生じることなく、管体の接続作業をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係る滑性付与装置の一実施形態を示す断面図
【
図4】この発明に係る管体接続方法の工程を示す断面図であって、(a)は先行する管体の内部に滑性付与装置を待機させた状態、(b)は先行する管体に接続する管体を接近させた上で、先行する管体のゴム輪の表面にゴム輪表面摺動部を摺動させている状態、(c)は管体同士を接続した上で水圧試験機を用いて水密性の試験を行っている状態
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る滑性付与装置1の一実施形態を図面に基づいて説明する。この滑性付与装置1は、
図1から
図3に示すように、操作ロッド2と、ゴム輪表面摺動部3と、台車4と、を主要な構成要素としており、管体同士の接続作業の際に用いられる。
【0021】
操作ロッド2は、軸周りに回転可能に設けられている。その長さは、先行する管体(以下、先行管体P1と称する。)の受口内に滑性付与装置1の台車4が待機している状態において、この先行管体P1に軸方向に隣り合うように接続する管体(以下、接続管体P2と称する。)を配置したときに、この接続管体P2の受口から操作ロッド2の端部が突出して、作業者がこの端部を把持できるように設定されている(
図4(b)を参照)。
【0022】
操作ロッド2には、管体(先行管体P1)の外部でその下方から操作ロッド2を支持する支柱5が着脱可能に設けられている。支柱5には、ひも状の支柱回収部材6が接続されている。支柱回収部材6を引っ張ることによって、支柱5を操作ロッド2から取り外して回収することができる。また、操作ロッド2には、管体内で軸方向に移動可能な車輪付き支柱7が設けられている。
【0023】
ゴム輪表面摺動部3は、
図2に示すように、操作ロッド2の軸心から径方向外向きに突出して設けられており、操作ロッド2の回転操作によって軸周りに回転するようになっている。このゴム輪表面摺動部3は、径方向外向きに延びるアーム部8と、アーム部8の先端に設けられた摺動体9とを有している。この実施形態では、摺動体9として多孔質体(スポンジ)が設けられている。この摺動体9には、水や滑剤などが含浸されている。ゴム輪表面摺動部3の摺動体9を管体の内部に設けられたゴム輪10の表面に摺動させることによって、その表面に滑性が付与される。
【0024】
ゴム輪表面摺動部3には、水と滑剤を供給する供給管11が設けられている。これにより、摺動体9は常に所定量の水と滑剤が含浸された状態となっている。
【0025】
台車4は、
図3に示すように、操作ロッド2に対し軸周りに相対回転可能かつ軸方向に一体的に移動する基部12と、基部12から径方向外向きに延びる側面視においてX字形に組まれたフレーム13と、フレーム13の先端に設けられたキャスタ14と、を有しており、操作ロッド2を回転操作可能に支持しつつ、管体の内部を軸方向に沿ってキャスタ14で走行可能とされている。なお、キャスタ14の代わりに、管体の内面との接触部に不織布などの保護部材を設けたソリを採用することもできる。
【0026】
この実施形態においては、台車4に、接続された両管体(先行管体P1と接続管体P2)の継ぎ目にその内面側から水圧を付与して水密性の試験を行うことが可能な水圧試験機15を設けている。
【0027】
この水圧試験機15は、接続された先行管体P1と接続管体P2に跨る密閉空間を管体の内面側に形成し、この密閉空間内の空気を抜きつつ密閉空間に所定圧の水を供給してこの密閉空間を水で満たした状態とし、所定時間の経過後における密閉空間内の圧力低下の程度から水密性を評価する方式を採用している。
【0028】
操作ロッド2には、管体の内部の状態を確認する照明付きの撮像装置16が設けられている。撮像装置16には、モニタ17が接続されており、作業者は内部の状態を確認しながら作業を行うことができるようになっている。また、操作ロッド2を回転操作することによって、管体内周の全周に亘って撮像装置16による撮影が可能となっている。
【0029】
上記の滑性付与装置1においては、操作ロッド2の軸心から対向する2方向に向かってゴム輪表面摺動部3が突出する構成としたが、少なくとも1方向に向かって突出していればよく、例えば、操作ロッド2の軸心から周方向に90度ピッチで4方向に向かって突出する構成とすることもできる。また、上記においては摺動体9を多孔質体(スポンジ)としたが、多孔質体の代わりに、所定量の水や滑剤を保持可能なゴム材や刷毛などを用いることができる可能性もある。
【0030】
また、ゴム輪表面摺動部3のアーム部8をその長さ方向の途中でその先端側が軸心側に向かって折れ曲がる可倒式としたり、径方向に向かって出没可能なロッド式としたりすることによって、滑性付与装置1を管体内で移動する際に、摺動体9と管体内面との接触を防止してその移動をよりスムーズに行うことができる。
【0031】
上記の滑性付与装置1においては、台車4(水圧試験機15)に対しゴム輪表面摺動部3を発進立坑側(
図1において右側)に設けた構成としたが、台車4(水圧試験機15)に対しゴム輪表面摺動部3を到達立坑側(
図1において左側)に設けた構成としても、ゴム輪表面摺動部3による上記と同様の作用が期待できる。
【0032】
上記の滑性付与装置1においては、供給管11から水と滑剤の両方が供給される構成としたが、単にゴム輪10の表面の乾燥を防ぐことで十分であれば水のみ供給する構成とすることができ、滑剤を追加供給するだけでよければ滑剤のみ供給する構成とすることができる。
【0033】
上記の滑性付与装置1においては、台車4に水圧試験機15を設けた構成としたが、水圧試験の実施が不要な場合や、他の方法で水圧試験を行う場合などは、水圧試験機能を省略できる場合もある。また、上記の滑性付与装置1に設けられた支柱5、車輪付き支柱7、撮像装置16などの周辺部材や周辺装置は適宜省略できる場合がある。
【0034】
以下、
図4(a)~(c)に基づいて、上記の滑性付与装置1を用いた管体接続方法について説明する。この管体接続方法は、例えば、発進立坑から到達立坑に至るさや管Sを形成し、発進立坑側から本管となる主にΦ600mm以下のT形継手、PN形継手などのプッシュオン継手のダクタイル鉄管をさや管S内に1本ずつ運搬し、先行管体P1の受口に接続管体P2の挿し口を挿入することで順次配管する工法に適用される。なお、
図4(a)~(c)においては、管体をさや管S内に運搬するための搬入台車など、この発明に直接関係しない部材の記載は省略している。
【0035】
この管体接続方法においては、まず、
図4(a)に示すように、さや管S内に設置された先行管体P1の内部に、上記において説明した滑性付与装置1を待機させる。このとき、操作ロッド2は、先行管体P1の受口から突出した状態で支柱5によって支持されている。先行管体P1の受口に設けられたゴム輪10の表面には、作業者の手作業によって滑剤が予め塗布されている。また、先行管体P1の受口側の端部は、管受台18によって、さや管Sの内面から所定高さ浮いた状態となっている。
【0036】
次に、
図4(b)に示すように、先行管体P1に、発進立坑側から搬入した接続管体P2をその受口から操作ロッド2の端部が突出するまでその軸方向から接近させる。操作ロッド2が接続管体P2の内部に入り込んだら、支柱回収部材6を発進立坑側から引っ張ることによって、支柱5を操作ロッド2から取り外して回収する。このとき、車輪付き支柱7は、操作ロッド2を支持しながら、接続管体P2の内面を走行可能な状態となっている。
【0037】
さらに、滑性付与装置1のゴム輪表面摺動部3と先行管体P1の受口に設けられたゴム輪10の軸方向位置を合わせた状態で操作ロッド2の回転操作によってゴム輪表面摺動部3を軸周りに回転させ、供給管11から適宜供給される水や滑剤を含浸させた摺動体9(
図2を参照)をゴム輪10に摺動させ、このゴム輪10の表面に滑性を付与する。ゴム輪10と摺動体9との間の摺動状態やゴム輪10の表面の潤滑状態は、モニタ17を通じてモニタリングされる。
【0038】
ゴム輪表面摺動部3によるゴム輪10の滑性付与が完了したら、
図4(c)に示すように、ゴム輪10の表面の滑性状態が保たれている間に、先行管体P1に接続管体P2を接続して、接続管体P2の受口下部に管受台18を設ける。このとき、撮像装置16によって得られた管体内部の接続状態をモニタ17を通じてモニタリングして、接続状態に異常がないかどうか確認する。この接続状態で、水圧試験機15を両管体P1、P2の継ぎ目まで移動して、その継ぎ目にその内面側から水圧を付与して水密性の試験を行い、水密性に問題がないことを確認する。
図4(a)~
図4(c)の工程を繰り返して発進立坑まで接続管体P2が届いたら、さや管Sと接続された管体との間の隙間に充填材を充填して、一連の接続作業を完了する。
【0039】
上記の滑性付与装置1は、操作ロッド2の回転操作によってゴム輪表面摺動部3をゴム輪10の表面に摺動させるため、先行管体P1から離れた位置から、接続管体P2の接続直前にゴム輪10の表面に滑性を付与することができる。このため、滑剤の乾燥に起因するゴム輪10のずれなどの不具合を生じることなく、管体の接続作業をスムーズに行うことができる。
【0040】
また、上記の滑性付与装置1は、管体(先行管体P1)の外部で操作ロッド2を支持する支柱5を設けたので、操作ロッド2の先端の垂れ下がりを防止して、接続管体P2に操作ロッド2をスムーズに通すことができ、作業性を向上することができる。また、支柱5に支柱回収部材6を接続したので、支柱5が不要になった際に支柱回収部材6を操作する(例えば、発進立坑側に引っ張る)ことでこの支柱5をスムーズに回収することができ、支柱5が台車4の走行の障害となるのを防ぐことができる。
【0041】
また、上記の滑性付与装置1は、ゴム輪表面摺動部3の摺動体9に多孔質体(スポンジ)を採用したので、管体内面との接触によって多孔質体が変形することによって、ゴム輪表面摺動部3を管体内でスムーズに移動することができる。
【0042】
また、上記の滑性付与装置1は、ゴム輪表面摺動部3に水と滑剤を供給する供給管11が設けられているので、ゴム輪表面摺動部3の摺動体9に所定量の水や滑剤が常に含浸された状態となり、ゴム輪表面の滑性付与機能を確保することができる。
【0043】
また、上記の滑性付与装置1は、管体の内部の状態を確認する撮像装置16が設けられているので、ゴム輪表面の滑剤の状態や、管体同士を接続した際のゴム輪10のずれの有無などを直接視認することができ、接続に伴う不具合の発生を防止することができる。
【0044】
また、上記の滑性付与装置1は、台車4に水圧試験機15を設けることによって、管体を接続する工程に続いて、水圧試験機15で管体同士の継ぎ目の水密性を試験することができるため、作業性を高めることができる。
【0045】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 滑性付与装置
2 操作ロッド
3 ゴム輪表面摺動部
4 台車
5 支柱
6 支柱回収部材
7 車輪付き支柱
8 アーム部
9 摺動体
10 ゴム輪
11 供給管
12 基部
13 フレーム
14 キャスタ
15 水圧試験機
16 撮像装置
17 モニタ
18 管受台
P1 先行する管体(先行管体)
P2 接続する管体(接続管体)
S さや管