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特開2024-134808計画立案方法、コンピュータプログラム、および、計画立案装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134808
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】計画立案方法、コンピュータプログラム、および、計画立案装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0631 20230101AFI20240927BHJP
   G05B 19/418 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
G06Q10/0631
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045189
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】山根 有輝也
【テーマコード(参考)】
3C100
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA12
3C100AA16
3C100AA45
3C100BB13
3C100BB36
3C100EE10
5L010AA09
5L049AA09
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】 計画立案方法において、改善された計画を短時間で立案する技術を提供する。
【解決手段】 計画立案方法は、立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得工程と、計画を評価するための評価指標を計画情報に基づいて設定する指標設定工程と、評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定工程と、計画情報を用いて、ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成工程と、目的関数が最小となる計画を探索する探索工程と、を備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画立案方法であって、
立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得工程と、
計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定工程と、
前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定工程と、
前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成工程と、
前記目的関数が最小となる計画を探索する探索工程と、を備える、
計画立案方法。
【請求項2】
請求項1に記載の計画立案方法であって、
前記指標設定工程では、複数の前記評価指標を設定し、
前記関数作成工程では、複数の前記評価指標のそれぞれにおける、複数の前記区間のそれぞれの度数と前記ペナルティ係数との積の線形和を含む前記目的関数を作成する、
計画立案方法。
【請求項3】
請求項2に記載の計画立案方法であって、
前記計画情報は、前記評価指標の許容範囲に関する情報を含んでおり、
前記区間における度数の大きさは、前記許容範囲における上限値および下限値の少なくとも一方に基づいて制限される、
計画立案方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の計画立案方法であって、
前記計画情報は、複数の前記評価指標間の優先度に関する優先度情報を含んでおり、
複数の前記評価指標間における前記ペナルティ係数の大小関係は、前記優先度情報に基づいて設定される、
計画立案方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の計画立案方法であって、
前記情報取得工程では、前記立案予定の計画に関連する過去の計画に関する情報を取得し、
前記係数設定工程では、前記ペナルティ係数は、前記過去の計画に関する情報に基づいて設定される、
計画立案方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の計画立案方法であって、
前記計画情報は、前記評価指標として設定されない条件に関する条件情報を含んでおり、
前記計画立案方法は、さらに、
前記条件情報に基づいて、制約式を設定する制約設定工程を備え、
前記探索工程では、前記制約設定工程において設定された前記制約式を満たしつつ、前記目的関数が最小となる計画を探索する、
計画立案方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の計画立案方法であって、
前記立案予定の計画は、複数の製品を生産する生産計画であり、
複数の前記評価指標は、複数の前記製品のそれぞれの在庫数と、複数の前記製品のそれ
ぞれを生産可能な設備の段取り替えの回数と、を含む、
計画立案方法。
【請求項8】
計画を立案するためのコンピュータプログラムであって、
立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得機能と、
計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定機能と、
前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定機能と、
前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成機能と、
前記目的関数が最小となる計画を探索する探索機能と、
をコンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【請求項9】
計画立案装置であって、
立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得部と、
計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定部と、
前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定部と、
前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成部と、
前記目的関数が最小となる計画を探索する探索部と、を備える、
計画立案装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計画立案方法、コンピュータプログラム、および、計画立案装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、計画を立案する計画立案方法が知られている。特許文献1~4には、立案予定の計画における目的が表現された目的関数に対し、数学的手法を用いて、目的関数の大きさを変化させた計画を立案する計画立案方法が開示されている。特許文献1~4に記載の計画立案方法では、目的関数には、立案される計画を評価するための複数の評価指標と、複数の評価指標のそれぞれに掛け合わされる複数の重みと、が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-98350号公報
【特許文献2】特開2019-200695号公報
【特許文献3】特開2018-180943号公報
【特許文献4】特開2015-90532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~4のような先行技術によっても、計画立案方法において、改善された計画を短時間で立案する技術については、なお、改善の余地があった。例えば、特許文献1~4に記載の計画立案方法では、目的関数に含まれる複数の評価指標のうち第1の評価指標と第2の評価指標とに相反的な関係がある場合、第1の評価指標の小さな改善が第2の評価指標の大きな劣化につながるおそれがある。このため、複数の評価指標のそれぞれに掛け合わされる重みの相反的な関係は重要であるが、重みは、調整すべき項目が多いため、改善された計画を短時間で立案することが困難である。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、計画立案方法において、改善された計画を短時間で立案する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、計画立案方法が提供される。この計画立案方法では、立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得工程と、計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定工程と、前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定工程と、前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成工程と、前記目的関数が最小となる計画を探索する探索工程と、を備える。
【0008】
この構成によれば、探索工程では、ペナルティ係数を含む目的関数が最小となる計画を探索する。ペナルティ係数は、評価指標の目標値からの乖離度を表しており、評価指標における所定の数値範囲を示す区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されている。これにより、計画を探索するとき、区間をまたぐことでペナルティ係数が変化するような計画に着目することとなるため、すでに作成されている過去の計画に対して明確
に改善された計画を出力することができる。また、ペナルティ係数は、評価指標における区間ごとに、一定の値を示すように定義されるため、評価指標の値に応じて逐一変化する目的関数を用いる場合に比べ、目的関数を作成するときに調整すべき項目が少なくなる。これにより、目的関数を容易に調整することができるため、短時間で改善された計画を立案することができる。このように、過去の計画に対して改善された計画を短時間で立案することができる。
【0009】
(2)上記形態の計画立案方法において、前記指標設定工程では、複数の前記評価指標を設定し、前記関数作成工程では、複数の前記評価指標のそれぞれにおける、複数の前記区間のそれぞれの度数と前記ペナルティ係数との積の線形和を含む前記目的関数を作成してもよい。この構成によれば、目的関数は、複数の区間のそれぞれの度数とペナルティ係数との積の線形和を含んでおり、比較的簡素な構成によって表される。これにより、計画の探索における演算が簡単になるため、改善された計画をさらに短時間で立案することができる。
【0010】
(3)上記形態の計画立案方法において、前記計画情報は、前記評価指標の許容範囲に関する情報を含んでおり、前記区間における度数の大きさは、前記許容範囲における上限値および下限値の少なくとも一方に基づいて制限されてもよい。この構成によれば、評価指標の区間における度数は、評価指標の許容範囲の上限値および下限値の少なくとも一方に基づいて設定される。これにより、計画の探索範囲に、実現不可能な計画が含まれなくなるため、過去の計画に対して改善されており、かつ、実現可能な計画を短時間で立案することができる。また、例えば、評価指標の許容範囲に計画立案担当者の考えを反映した場合には、探索結果の計画は、計画立案担当者の考えを反映した計画となる。これにより、計画立案担当者の考えに沿って改善された計画を立案することができる。
【0011】
(4)上記形態の計画立案方法において、前記計画情報は、複数の前記評価指標間の優先度に関する優先度情報を含んでおり、複数の前記評価指標間における前記ペナルティ係数の大小関係は、前記優先度情報に基づいて設定されてもよい。この構成によれば、計画情報には、複数の評価指標間の優先度に関する優先度情報が含まれている。複数の評価指標のそれぞれにおいて設定されるペナルティ係数は、この優先度情報に基づいて設定されるため、探索結果の計画は、評価指標の優先度を反映させた計画となる。したがって、計画を実行する現場に即した計画を立案することができる。
【0012】
(5)上記形態の計画立案方法において、前記情報取得工程では、前記立案予定の計画に関連する過去の計画に関する情報を取得し、前記係数設定工程では、前記ペナルティ係数は、前記過去の計画に関する情報に基づいて設定されてもよい。この構成によれば、ペナルティ係数は、計画情報に含まれる、過去の計画に関する情報に基づいて設定される。これにより、過去の計画における問題点を反映させたペナルティ係数を設定することができるため、過去の計画に対して確実に改善された計画を立案することができる。
【0013】
(6)上記形態の計画立案方法において、前記計画情報は、前記評価指標として設定されない条件に関する条件情報を含んでおり、前記計画立案方法は、さらに、前記条件情報に基づいて、制約式を設定する制約設定工程を備え、前記探索工程では、前記制約設定工程において設定された前記制約式を満たしつつ、前記目的関数が最小となる計画を探索してもよい。この構成によれば、制約設定工程では、評価指標として設定されない条件に関する条件情報に基づいて、制約式を設定する。ここで、制約式は、左辺または右辺のいずれか一方に変数が含まれていればよく、他方は、定数のみ、変数のみ、または、定数と変数の両方が含まれていてもよい。探索工程では、制約式を満たしつつ、目的関数が最小となる計画を探索するため、探索結果の計画は、評価指標に含まれなかった条件も含む計画とすることができる。また、条件情報として実現可能な情報を含む場合には、現実的でな
い計画が探索結果として出力されることを抑制することができる。これにより、過去の計画に対する改善度を向上させた現実的な計画を立案することができる。
【0014】
(7)上記形態の計画立案方法において、前記立案予定の計画は、複数の製品を生産する生産計画であり、複数の前記評価指標は、複数の前記製品のそれぞれの在庫数と、複数の前記製品のそれぞれを生産可能な設備の段取り替えの回数と、を含んでもよい。この構成によれば、計画立案方法は、複数の製品を生産するための生産計画を立案する。この場合、複数の評価指標には、複数の製品のそれぞれの在庫数と、複数の製品のそれぞれを生産可能な設備の段取り替えの回数を含んでいる。これにより、限られた生産設備を用いて複数の製品を生産する生産計画において、過去の計画に対して改善された生産計画を短時間で立案することができる。
【0015】
(8)本発明の別の形態によれば、計画を立案するためのコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得機能と、計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定機能と、前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定機能と、前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成機能と、前記目的関数が最小となる計画を探索する探索機能と、をコンピュータに実現させる。この構成によれば、探索機能によって計画を探索するときに用いる目的関数に含まれるペナルティ係数は、評価指標における区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されているため、区間をまたぐような大きな変更を含む計画に着目することとなる。これにより、過去の計画に対して明確に改善された計画を出力することができる。また、ペナルティ係数は、評価指標における区間ごとに一定の値となるため、目的関数を作成するときに調整すべき項目が比較的少なくなる。これにより、係数設定機能によって目的関数を容易に調整することができるため、改善された計画を短時間で立案することができる。
【0016】
(9)本発明のさらに別の形態によれば、計画立案装置が提供される。この計画立案装置は、立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得部と、計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定部と、前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定部と、前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成部と、前記目的関数が最小となる計画を探索する探索部と、を備える。この構成によれば、探索部が計画を探索するときに用いる目的関数に含まれるペナルティ係数は、評価指標における区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されているため、区間をまたぐような大きな変更を含む計画に着目することとなる。これにより、過去の計画に対して明確に改善された計画を出力することができる。また、ペナルティ係数は、評価指標における区間ごとに一定の値となるため、目的関数を作成するときに調整すべき項目が比較的少なくなる。これにより、係数設定部は、目的関数を容易に調整することができるため、改善された計画を短時間で立案することができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、計画立案方法によって立案された計画、立案された計画によって得られるもの、計画立案装置を含むシステム、これら装置およびシステムの制御方法、これら装置およびシステムを制御するコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の計画立案装置の概略構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態の計画立案方法のメインフローチャートである。
図3】第1実施形態の計画立案方法のサブフローチャートである。
図4】第1実施形態の計画立案方法を説明する図である。
図5】比較例の計画立案方法を説明する図である。
図6】第2実施形態の計画立案装置の概略構成を示す模式図である。
図7】第2実施形態の計画立案方法のメインフローチャートである。
図8】第2実施形態の計画立案方法のサブフローチャートである。
図9】第2実施形態の計画立案方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の計画立案装置1の概略構成を示す模式図である。計画立案装置1は、各種計画を計画の目的に果たすように立案するための装置である。計画立案装置1は、「立案予定の計画」として、例えば、鋳造工場において生産される、複数の鉄鋼製品(以下、単に「製品」という)を生産する生産計画であって、過去の生産計画に対して改善された生産計画を立案する。計画立案装置1は、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、中央処理装置(CPU)などを含んで構成されるコンピュータであり、入力部10と、記憶部20と、演算部30と、出力部40と、を備える。なお、計画立案装置1の構成は、これに限定されず、例えば、入力部10と演算部30とが別々の場所に存在していてもよい。
【0020】
入力部10は、立案予定の計画に関する計画情報を取得する。本実施形態では、入力部10は、例えば、計画立案装置1を操作して目的の計画を立案する計画立案担当者(以下、単に「担当者」という)の操作によって、計画情報を含む各種情報が入力される図示しないキーボードなどの入力デバイスを指す。入力部10によって計画立案装置1が取得する計画情報には、複数の製品を生産可能な対象期間(生産計画が実行される期間)、立案される生産計画の対象期間前における複数の製品のそれぞれの在庫数、個々の製品を生産するために必要な期間などが含まれる。なお、入力部10は、キーボードなどの入力デバイスに限定されず、計画情報が記憶されているUSBメモリやフラッシュメモリなど外部の記録デバイスとのインターフェースであってもよい。入力部10は、特許請求の範囲に記載の「情報取得部」に相当する。
【0021】
記憶部20は、入力部10によって入力される計画情報を記憶するとともに、演算部30が出力する計画を記憶する。本実施形態では、記憶部20は、メモリ装置の総称であり、ROM、RAM、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスク、フラッシュメモリカードなど様々な形式の記憶装置を使用することができる。記憶部20には、本実施形態に係るコンピュータプログラムも格納されている。
【0022】
演算部30は、記憶部20と電気的に接続されているCPUである。演算部30は、記憶部20に格納されているコンピュータプログラムを実行することにより、指標設定部31と、係数設定部32と、関数作成部33と、探索部34と、して機能する。
【0023】
指標設定部31は、計画を評価するための指標(評価指標)を計画情報に基づいて設定する。本実施形態では、指標設定部31は、複数の評価指標を設定する。指標設定部31は、複数の製品のそれぞれの在庫量を、評価指標として設定する。指標設定部31は、計画情報に基づいて、設定した複数の評価指標のそれぞれについて目標値を設定する。
【0024】
係数設定部32は、指標設定部31によって設定される評価指標のそれぞれについて、ペナルティ係数を設定する。ここで、ペナルティ係数とは、指標設定部31によって設定
される評価指標の目標値からの乖離度を表している。本実施形態の係数設定部32は、評価指標における所定の数値範囲を示す区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する。係数設定部32が設定するペナルティ係数は、計画情報に含まれる、複数の評価指標間の優先度に関する優先度情報に基づいて設定される。
【0025】
関数作成部33は、計画を探索するための目的関数を作成する。本実施形態では、関数作成部33は、係数設定部32によって設定されるペナルティ係数を含む目的関数を作成する。関数作成部33によって作成される目的関数の詳細は、後述する。
【0026】
探索部34は、関数作成部33が作成する目的関数を用いて、過去の計画に比べ改善された計画を探索する。具体的には、探索部34は、目的関数が最小となる計画を探索する。探索部34は、探索結果として得られる、目的関数が最小となる計画を記憶部20に送る。なお、探索部34は、目的関数が最小となる計画を、記憶部20に送ることなく、出力部40に直接送ってもよい。
【0027】
出力部40は、例えば、図示しない表示装置であって、探索部34によって探索された、目的関数が最小となる計画を、担当者に向かって表示する。なお、出力部40は、表示装置に限定されず、プリンタなどの出力装置、USBメモリ装置およびフラッシュメモリなどの記録装置など目的関数が最小となる計画を探索結果として出力するインターフェースであってもよい。また、出力部40は、目的関数が最小となる計画を、記憶部20を介することなく、そのまま出力してもよい。
【0028】
次に、本実施形態の計画立案方法の詳細を説明する。本実施形態の計画立案方法は、計画立案装置1を操作する計画立案者の操作指示によって、開始される。
【0029】
図2は、第1実施形態の計画立案方法のメインフローチャートである。最初に、計画立案装置1は、「情報取得工程」として、立案予定の計画に関する計画情報を取得する(ステップS11)。本実施形態では、担当者が、入力部10を利用して、立案予定の計画に関する計画情報を計画立案装置1に入力する。計画立案装置1に入力される計画情報としては、立案予定の計画が実行される対象期間、対象期間が始まる前における複数の製品のそれぞれの在庫数、製品の生産に使用される生産設備の稼働開始日からの所定の期間が納期となる製品の出荷数、製品の在庫量の許容範囲などである。入力部10を介して計画立案装置1に入力される計画情報は、入力部10と電気的に接続されている記憶部20に送られ、記憶部20に記憶される。
【0030】
本実施形態では、ステップS11において、計画立案装置1は、入力部10を利用して、過去の計画に関する情報も取得する。ここで、過去の計画とは、立案予定の計画に関連する計画であって、過去に、担当者や計画立案装置を用いて作成され、実際に実行された計画である。過去の計画に関する情報には、過去の計画を実行することで得られた問題点を含む実績に関する情報が含まれている。
【0031】
次に、ペナルティ係数を設定する(ステップS12)。演算部30では、記憶部20に記憶されている計画情報と過去の計画に関する情報とに基づいて、ペナルティ係数を設定する。
【0032】
図3は、第1実施形態の計画立案方法のサブフローチャートであって、図2に示すステップS12の詳細を説明するためのフローチャートである。ペナルティ係数を設定するステップS12では、最初に、計画情報と過去の計画に関する情報とを読み込む(ステップS121)。ステップS121では、演算部30は、記憶部20に記憶されている計画情
報を読み込む。本実施形態では、演算部30は、ステップS11において取得している過去の計画に関する情報も読み込む。
【0033】
次に、「指標設定工程」として、評価指標を設定する(ステップS122)。ステップS122では、指標設定部31は、記憶部20から読み込んだ計画情報と過去の計画に関する情報とに基づいて、評価指標を設定する。本実施形態では、評価指標として、複数の製品のそれぞれの在庫量が設定される。すなわち、本実施形態では、設定される評価指標の種類の数は、立案予定の生産計画において生産される製品の種類の数と同じとなる。本実施形態では、評価指標の値は、大きくなればなるほど、製品の在庫量として望ましくない状態とする。したがって、評価指標としての製品の在庫量は、製品の納期違反率、安全在庫基準の違反率、過剰在庫基準の違反率などで置き換えてもよい。
【0034】
次に、評価指標について区間を設定する(ステップS123)。ステップS123では、係数設定部32は、ステップS122において設定された複数の評価指標のそれぞれについて、所定の数値範囲に対応する区間(階級)を設定する。
【0035】
図4は、第1実施形態の計画立案方法を説明する図である。図4は、ステップS12におけるペナルティ係数の設定方法を具体的に説明するための図であって、複数の製品のうち、評価指標としての品番i(i:自然数)の製品の在庫量とペナルティ係数との関係を説明する図である。図4には、横軸に、品番iの製品の在庫数、言い換えると、先z直までのオーダ数が示されており、縦軸に、品番iの製品の在庫数におけるペナルティ係数が示されている。なお、図4では、品番iの製品について説明するが、複数の製品についての生産計画を立案する本実施形態では、製品の種類の数だけ、図4に示す在庫量とペナルティ係数との関係が設定される。
【0036】
図4を用いて説明すると、ステップS123において、評価指標における区間は、生産計画を立てる日の最初の直を基準としたときの先z直(z:0以上の整数)までのオーダ数に基づいて設定される。具体的には、品番iの製品の在庫数について、図4の横軸には、先0直までのオーダ数から先20直以上のオーダ数が示されている(変数a,b,c,d,e,f,g)。このうち、評価指標としての品番iの製品の在庫数には、「所定の数値範囲」として、先0直までのオーダ数もない区間Sc11と、先0直までのオーダ数はあるものの先1直までのオーダ数に満たない区間Sc12と、先1直までのオーダ数はあるのものの先2直までのオーダ数に満たない区間Sc13と、先2直までのオーダ数はあるのものの先3直までのオーダ数に満たない区間Sc14と、先3直から先6直までのオーダ数がある区間Sc15と、先6直までのオーダ数はあるものの先8直までのオーダ数はない区間Sc16と、先8直までのオーダ数はあるものの先20直までのオーダ数はない区間Sc17と、先20直までのオーダ数を満たす区間Sc18と、が設定されている。なお、図4において、白丸は、横軸の対応する数値を含まず、黒丸は、横軸の対応する数値を含むことを意味している。ステップS123では、係数設定部32は、このようにして、複数の評価指標のそれぞれについて、複数の区間を決定する。区間は、評価指標の数値に対して切れ目なく設定される。本実施形態では、係数設定部32は、このように、所定の数値範囲に対応する一定の範囲の区間において、妥協可能なしきい値をあらかじめ設定している。これにより、たとえ、複数の評価指標の全てが、担当者が望む値とならなくても、担当者が望む区間を満たす評価指標と担当者が望む区間を満たさない評価指標とのばらつきを小さくすることができる。したがって、後述する探索部34による探索結果の計画が、担当者の考え方が反映された計画とすることができる。
【0037】
ステップS123では、係数設定部32は、担当者による手作業によって区間の数値範囲を設定してもよいし、担当者の希望や最低限の基準などの制約をかけて区間の数値範囲を設定してもよい。また、係数設定部32は、過去の計画に関する情報を教師データとし
た機械学習に類する技術を用いて、区間を設定してもよい。
【0038】
次に、「係数設定工程」として、区間ごとにペナルティ係数を設定する(ステップS124)。ステップS124では、係数設定部32は、ステップS123において設定された複数の区間のそれぞれについて、ペナルティ係数を設定する。ステップS124におけるペナルティ係数の設定について、図4を用いて説明する。
【0039】
図4に示す品番iの製品の在庫量とペナルティ係数との関係では、ステップS124において、ステップS123で設定された複数の区間Sc11~Sc18のそれぞれにペナルティ係数を設定する。ペナルティ係数は、評価指標の各区間における重みを指すものであって、本実施形態では、区間ごとの望ましくない度合を数値化したものである。本実施形態では、1つの評価指標において、同一の区間に対するペナルティ係数は一定となっている。これにより、後述する探索部34による計画の探索では、同一の区間で留まる似通った複数の計画が排除され、ペナルティ係数がより小さくなる区間の組合せが、改善された計画として着目されるため、より担当者の考え方に即した計画を立案することができる。
【0040】
ペナルティ係数の設定方法の第1の例として、図4を用いて説明する。例えば、区間Sc11では、先0直までのオーダ数、すなわち、今まさに必要なオーダ数に対応する在庫もないことから、製品が欠品している状態である。したがって、ペナルティ係数は、図4においても最も大きいペナルティ係数である50とし、目的関数を大きくする区間となる。また、例えば、生産現場において、在庫数を先3直分から先6直分まで維持することが目標(目標値)となっている場合には、区間Sc15においてペナルティ係数を0とし、目的関数を最小とする。これにより、生産現場で実際に使われている基準を当てはめることで、目的関数を用いた計画の探索に有効となる。また、在庫量が目標値よりも少ない場合には、複数の区間Sc12,Sc13,Sc14を設定することで、生産現場において妥協できるラインを目的関数に反映することができるため、より生産現場の実態にあった計画を立案できる。
【0041】
ペナルティ係数の設定方法の第2の例として、計画情報とともに記憶部20に記憶されている過去の計画に関する情報を用いて、ペナルティ係数を設定してもよい。過去の計画に関する情報には、過去の計画について、既に実行されたことで得られた実績が含まれており、問題点や改善に貢献した項目などが含まれている。そこで、ペナルティ係数を設定するにあたり、過去の計画の実績を踏まえることで、探索部34は、過去の計画に対して改善された計画を探索することができる。
【0042】
本実施形態では、このようにして、ペナルティ係数が複数の区間ごとに決定される。なお、図4に示す品番iの製品の在庫数およびペナルティ係数の数値は、一例であって、これらの数値に限定されない。すなわち、横軸に示す製品の在庫数をそれぞれが示している変数a,b,c,d,e,f,g、および、縦軸に示すペナルティ係数をそれぞれが示している変数A,B,C,D,E,F,Gは、評価指標の種類によって異ならせることができる。また、変数a,b,c,d,e,f,g、および、変数A,B,C,D,E,F,Gの個数は、評価指標の種類によって増減させることができる。
【0043】
図2に戻り、ステップS12の次に、決定変数を定義する(ステップS13)。ステップS13では、係数設定部32は、ステップS123において設定される区間内に、評価指標の値が入るかどうかを表す変数δを決定変数として定義する。本実施形態では、決定変数δは、複数の製品のそれぞれの在庫量に対応する。
【0044】
次に、「関数作成工程」として、目的関数を作成する(ステップS14)。ステップS
14では、関数作成部33は、ステップS12において設定されるペナルティ関数を含む目的関数を作成する。本実施形態では、目的関数は、図4に示す製品の在庫量とペナルティ係数との関係を用いると、以下の式(1)によって表される。
【数1】
・・・(1)
なお、式(1)に含まれる文字のそれぞれは、以下の数値を示す(図4参照)
zaiko:製品の在庫量に関する目的関数
i:製品の種類を示す番号(製品の種類の数)
δa,i:品番iの製品の在庫量における区間Sc11の度数(決定変数)
δb,i:品番iの製品の在庫量における区間Sc12の度数(決定変数)
δc,i:品番iの製品の在庫量における区間Sc13の度数(決定変数)
δd,i:品番iの製品の在庫量における区間Sc14の度数(決定変数)
δe,i:品番iの製品の在庫量における区間Sc16の度数(決定変数)
δf,i:品番iの製品の在庫量における区間Sc17の度数(決定変数)
δg,i:品番iの製品の在庫量における区間Sc18の度数(決定変数)
A,B,C,D,E,F,G:順に区間Sc16,Sc14,Sc17,Sc13,Sc12,Sc18,Sc11のそれぞれに対応するペナルティ係数
【0045】
式(1)に含まれる「度数」について、図4を用いて説明する。図4において、最初に、生産計画を立てる日の最初の直における在庫数が、先何直分のオーダに該当するかを算出する。例えば、品番iの製品の在庫が区間Sc11(先0直分未満)に該当する場合、δa,i=1となる。この場合、他の区間Sc12~Sc18のそれぞれは、δ=0となる
。品番iの製品の在庫が先1直までのオーダ数はあるのものの先2直までのオーダ数に満たない場合(区間Sc13)、δc,i=1となる。この場合、他の区間Sc11,Sc1
2,Sc14~Sc18のそれぞれは、δ=0となる。このように、1つの評価指標において、度数が必ず1となる区間が存在する。したがって、式(1)に示す目的関数は、複数の製品における、(ペナルティ係数)×(区間の度数)の線形和であると言える。本実施形態では、目的関数の値Pzaikoを最小化することにより、生産現場にとって望ましい計画
を出力できる。
【0046】
また、度数は、計画情報に含まれる、製品の在庫量の許容範囲によっても制限される。具体的には、生産現場に貯留しておくことが可能な在庫量には上限値がある。したがって、例えば、図4に示す品番iの製品の在庫量では、先8直分より多い在庫量は生産現場に置くことができないとすると、区間Sc17,Sc18の度数は、常に0となる。また、評価指標の許容範囲に担当者の考えを反映させることも可能である。本実施形態の計画立案方法では、このように、評価指標の許容範囲に基づいて、度数が制限される。
【0047】
次に、「探索工程」として、目的関数が最小となる計画を探索する(ステップS15)。ステップS15では、探索部34は、目的関数が最小となる計画を探索する。ステップS15では、いわゆる数理計画ソルバのほか、遺伝的アルゴリズム(genetic algorithm)、その他のメタ・ヒューリスティクスとよばれる手法などを用いて、目的関数が最小となる計画を探索してもよい。目的関数が最小となる計画は、記憶部20に記憶される。
【0048】
最後に、立案した計画を出力する(ステップS16)。出力部40は、記憶部20に記憶された計画候補を、立案予定の計画として、担当者に向けて出力する。担当者は、出力部40から出力される計画を確認し、実際の生産計画として利用する。
【0049】
図5は、比較例の計画立案方法を説明する図である。図5には、横軸が、製品の出荷希望日からのずれを示す日数を示し、縦軸が、製品の希望納期からのずれを制御するための重みを示している。図5に示す日数と重みとの関係は、図4で示した評価指標とペナルティ係数との関係と同じである。
【0050】
図5に示す製品に関する日数と重みとの関係では、出荷希望日がt日となっている。さらに、図5には、出荷希望日に対するずれとして、t日からα日前の(t-α)日と、t日からβ日前の(t-β)日と、t日からα日後の(t+α)日と、t日からβ日後の(t+β)日と、が示されている。図5に示す比較例では、日数と重みとの関係は、重みづけに二次関数ベースの合成関数が用いられている。具体的には、重みWは、製品出荷日が(t-α)日から(t+α)日までの間である場合、式(2)で表される。
【数2】
・・・(2)
製品出荷日が(t-β)日から(t-α)日までの間、または、(t+α)日から(t+β)日までの間である場合、式(3)で表される。
【数3】
・・・(3)
製品出荷日が(t-β)日より前、または、(t+β)日より後である場合、式(4)で表される。
【数4】
・・・(4)
なお、式(2)~(4)に含まれる文字kは、製品の出荷における実績日を示し、文字α、β、γは、工場所定の定数を示している。比較例での目的関数の値は、本実施形態と同様に、図5に示す日数と重みとの積を含む、複数の評価指標とペナルティ係数との積との合計によって決定される。
【0051】
図5に示す比較例では、式(2)~(4)の文字α、β、γのように、複数の変数が含まれている。これらの変数は、他の評価指標との関係に応じて大きさを調整する必要があり、調整に手間がかかる。したがって、改善された計画を立案するために、比較的長い時間が必要となる。
【0052】
また、比較例の目的関数のように、重みづけに二次関数ベースの合成関数を用いる場合、評価指標の値がわずかに変化するだけでも重みも変化するため、目的関数の値が大きく変化する場合がある。このため、評価指標の小さな改善でも大きな効果が得られると錯覚しやすく、実際には大きな改善につながらないおそれがある。さらに、特定の評価指標におけるわずかな改善と、別の評価指標における大きな劣化とはトレードオフとなるおそれがある。このため、重みづけに、図5に示すような関数を用いる場合、明確に改善された計画を立案することが困難である。
【0053】
以上説明した、本実施形態の計画立案方法によれば、ステップS15では、ペナルティ係数を含む目的関数が最小となる計画を探索する。ペナルティ係数は、評価指標の目標値からの乖離度を表しており、評価指標における所定の数値範囲を示す区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されている。これにより、計画を探索するとき、自動
で立案される計画の評価指標における同じ区間のわずかな改善に停留することなく、区間をまたぐことでペナルティ係数が変化するような計画に着目することとなるため、すでに作成されている過去の計画に対して明確に改善された計画を出力することができる。また、ペナルティ係数は、評価指標における区間ごとに、一定の値を示すように定義されるため、評価指標の値に応じて逐一変化する目的関数を用いる場合に比べ、目的関数を作成するときに調整すべき項目が少なくなる。これにより、目的関数を容易に調整することができるため、短時間で改善された計画を立案することができる。このように、過去の計画に対して改善された計画を短時間で立案することができる。
【0054】
また、本実施形態の計画立案方法によれば、目的関数は、式(1)に示すように、複数の区間のそれぞれの度数とペナルティ係数との積の線形和を含んでおり、比較的簡素な構成によって表される。これにより、計画の探索における演算が簡単になるため、過去の計画に対して改善された計画をさらに短時間で立案することができる。
【0055】
また、本実施形態の計画立案方法によれば、評価指標の区間における度数は、例えば、生産現場に貯留しておくことが可能な在庫量のような、評価指標の許容範囲の上限値に基づいて制限される。これにより、計画の探索範囲に、実現不可能な計画が含まれなくなるため、過去の計画に対して改善された、実現可能な計画を短時間で立案することができる。また、評価指標の許容範囲に担当者の考えを反映した場合には、探索結果の計画は、担当者の考えを反映した計画となる。これにより、担当者の考えに沿って改善された計画を立案することができる。
【0056】
また、本実施形態の計画立案方法によれば、ペナルティ係数は、計画情報に含まれる、過去の計画に関する情報に基づいて設定される。これにより、過去の計画における問題点を反映させたペナルティ係数を設定することができるため、過去の計画に対して確実に改善された計画を立案することができる。
【0057】
また、本実施形態のコンピュータプログラムによれば、ペナルティ係数が区間ごとに一定の値を示すため、区間をまたぐような大きな変更を含む計画を探索結果として出力する。これにより、過去の計画に対して明確に改善された計画を出力することができる。また、目的関数を最小化するときに調整すべき項目が比較的少なくなるため、過去の計画に対して改善された計画を短時間で立案することができる。
【0058】
また、本実施形態の計画立案装置1によれば、探索部34が計画を探索するとき、ペナルティ係数が変化する、区間をまたぐような大きな変更を含む計画に着目することとなる。これにより、計画立案装置1は、過去の計画に対して明確に改善された計画を出力することができる。また、ペナルティ係数の特徴により、目的関数を作成するときに調整すべき項目が比較的少なくなるため、係数設定部32は、目的関数を容易に調整することができる。これにより、計画立案装置1は、過去の計画に対して改善された計画を短時間で立案することができる。
【0059】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の計画立案装置の概略構成を示す模式図である。第2実施形態の計画立案装置は、第1実施形態の計画立案装置(図1)と比較すると、演算部が、さらに、制約設定部を備える点が異なる。
【0060】
本実施形態の計画立案装置2は、入力部10と、記憶部20と、演算部50と、出力部40と、を備える。演算部50は、記憶部20に格納されているコンピュータプログラムを実行することにより、指標設定部31と、係数設定部32と、関数作成部33と、探索部34と、制約設定部51と、して機能する。
【0061】
制約設定部51は、探索部34における計画の探索において、計画を探索する範囲を制約する制約式を設定する。本実施形態では、計画立案装置2が取得する計画情報には、対象期間が始まる前における複数の製品のそれぞれの在庫数などの他に、製品の生産計画に関する条件情報を含んでいる。ここで、条件情報とは、例えば、製品の生産条件など、評価指標として設定されない、生産計画に関する条件の情報を指す。制約設定部51は、条件情報に基づいて、制約式を作成する。制約式は、左辺または右辺のいずれか一方に変数が含まれていればよく、他方は、定数のみ、変数のみ、または、定数と変数の両方が含まれていてもよい。本実施形態の探索部34は、制約設定部51が作成する制約式を満たしつつ、目的関数が最小となる計画を探索する。制約設定部51の機能の詳細は後述する。
【0062】
次に、本実施形態の計画立案方法の詳細を説明する。本実施形態の計画立案方法は、計画立案装置2を操作する計画立案者の操作指示によって、開始される。
【0063】
図7は、第2実施形態の計画立案方法のメインフローチャートである。図8は、第2実施形態の計画立案方法のサブフローチャートであって、図7に示すステップS22の詳細を説明するためのフローチャートである。本実施形態の計画立案方法では、最初に、「情報取得工程」として、立案予定の計画に関する計画情報を取得する(ステップS21)。ステップS21において計画立案装置2に入力される計画情報には、立案予定の計画が実行される対象期間、対象期間が始まる前における複数の製品のそれぞれの在庫数、利用できる生産設備の数、生産可能時間の上限などの他に、上述の条件情報と、優先度情報と、が含まれている。ここで、優先度情報とは、複数の評価指標間の優先度に関する情報であって、後述のステップS224においてペナルティ係数を設定する際に用いられる。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、入力部10を利用して、過去の計画に関する情報も取得する。
【0064】
次に、ペナルティ係数を設定する(ステップS22)。演算部50では、記憶部20に記憶されている計画情報と過去の計画に関する情報とに基づいて、ペナルティ係数を設定する。ステップS22では、最初に、第1実施形態の計画立案方法のステップS121と同様に、計画情報と過去の計画に関する情報とを読み込む(ステップS221)。
【0065】
次に、「指標設定工程」として、評価指標を設定する(ステップS222)。指標設定部31は、記憶部20から読み込んだ計画情報と過去の計画に関する情報とに基づいて、評価指標を設定する。本実施形態では、評価指標として、複数の製品のそれぞれの在庫量と、複数の製品のそれぞれを生産する生産設備の段取り替えの回数とを設定する。一方、計画情報に条件情報として含まれる生産条件は、評価指標として設定されないものとする。
【0066】
次に、評価指標について区間を決定する(ステップS223)。ステップS223では、係数設定部32は、ステップS222において設定された複数の評価指標のそれぞれについて、所定の数値範囲に対応する区間(階級)を設定する。
【0067】
図9は、第2実施形態の計画立案方法を説明する図である。図9は、ステップS22における、生産設備の段取り替えの回数についてのペナルティ係数の設定方法を具体的に説明するための図であって、評価指標としての品番iの製品を製造する生産設備M(i)の段取り替えの回数とペナルティ係数との関係を説明する図である。図9には、横軸に、生産設備M(i)の段取り替えの回数が示されており、縦軸に、生産設備M(i)の段取り替えの回数におけるペナルティ係数が示されている。なお、図9では、1台の生産設備M(i)について説明するが、複数の製品についての生産計画を立案する場合、生産する製品の種類の全てに対応するように、複数の生産設備を用いる場合がある。具体的には、1
0種類の製品を生産するにあたって、2台の生産設備を用いる場合などである。このような場合、複数の生産設備(具体例では、2台の生産設備)のそれぞれについて、図9に示す生産設備の段取り替えの回数とペナルティ係数との関係が設定される。
【0068】
図9を用いて説明すると、ステップS223において、評価指標における区間は、生産設備M(i)の1日当たりの段取り替えの回数をもとに決定される。具体的には、「所定の数値範囲」として、1回の段取り替えを行う場合の区間Sc21と、2回の段取り替えを行う場合の区間Sc22と、3回の段取り替えを行う場合の区間Sc23と、4回以上の段取り替えを行う場合の区間Sc24と、が設定されている。なお、図9において、白丸は、横軸の対応する数値を含まず、黒丸は、横軸の対応する数値を含むことを意味している。
【0069】
次に、「係数設定工程」として、優先度情報に基づいて、区間ごとにペナルティ係数を設定する(ステップS224)。ステップS224では、係数設定部32は、ステップS223において設定された複数の区間のそれぞれについて、ペナルティ係数を設定する。ステップS224におけるペナルティ係数の設定について、図9を用いて説明する。
【0070】
図9に示す生産設備M(i)の段取り替えの回数とペナルティ係数との関係では、第1実施形態における製品の在庫量とペナルティ係数との関係と同じように、複数の区間Sc121~Sc24のそれぞれにペナルティ係数を設定する。本実施形態では、目的関数の作成において、製品の在庫量とペナルティ係数との関係(図4参照)と、生産設備の段取り替えの回数とペナルティ係数(図9参照)とを併用することから、計画情報に含まれる優先度情報を用いて、製品の在庫量におけるペナルティ係数と、生産設備の段取り替えの回数におけるペナルティ係数との大小関係を決定する。なお、図9に示す生産設備M(i)の段取り替えの回数およびペナルティ係数の数値は、一例であって、これらの数値に限定されない。すなわち、横軸に示す段取り替えの回数をそれそれが示している変数q,r,s、および、縦軸に示すペナルティ係数をそれぞれが示している変数Q,R,S,Tは、評価指標の種類によって異ならせることができる。また、変数q,r,s、および、変数Q,R,S,Tの個数は、評価指標の種類によって増減させることができる。
【0071】
ここで、本実施形態における、製品の在庫量とペナルティ係数との関係(図4)と、生産設備の段取り替えの回数とペナルティ係数との関係(図9)との関係について、具体例を用いて説明する。第1の具体例として、製品の在庫が欠品している場合のペナルティ係数が50であると仮定する(図4に示す区間Sc11における変数Gに相当)。ここで、生産設備の段取り替えが4回発生することが、生産現場において、製品の在庫が欠品している場合と同じ影響があると考えると、図9において、生産設備の段取り替えの回数が4回発生する場合の区間Sc24のペナルティ係数も50と設定される。本実施形態では、このように、複数の評価指標間の比較において、生産現場への影響の大きさを考慮した優先度情報を用いてペナルティ係数の大小関係を設定することで、目的関数の値を、計画を実行する生産現場に即した計画とする。これにより、目的関数を最小化することで、確実に改善された計画を立案することができる。
【0072】
第2の具体例として、1カ月における製品iのオーダ数が生産設備M(i)を2日間占有すれば生産できる3000個であると仮定する。一方、製品iのオーダの頻度は、1か月間(実働日20日間)の毎日とし、1回のオーダ数は、150個であると仮定する。この場合、図4に示した製品の在庫量とペナルティ係数との関係を適用すると、先6直分の在庫数(例えば、450個とする)を超えると、ペナルティ係数が増加する(区間Sc15におけるペナルティ係数に対する区間Sc16におけるペナルティ係数)。このような事態を避けるためには、在庫数が450個に達するたびに、生産設備M(i)の段取り替えを行い、製品iの生産を一時中止する計画が、製品iにおいて最適な計画となる。しか
しながら、段取り替えを1回に抑えて、一度に3000個を生産し終える計画の方が、生産現場において最適な計画である。そこで、製品iの在庫量におけるペナルティ係数を、製品iの在庫量の超過に関する変数(図4に示されている変数e,f,g)に対応して適切に設定することで、生産現場において最適な計画を探索することができる。
【0073】
例えば、図4に示す変数eを「先6直分のオーダ数」または「生産設備M(i)を2日間占有すれば生産できる量」のいずれか大きい方の値とする。このようにすると、1回のオーダ数が150個である上述の第2の具体例では、変数eは、「生産設備M(i)を2日間占有すれば生産できる量」となる。また、1日のオーダ数が1500個を超えるような場合、変数eは、「先6直分のオーダ数」となる。このように、変数を設定することで、製品iの過剰生産を抑制することができるため、生産現場の状況に即した適切な在庫管理を実現することができる。
【0074】
図7に戻り、ステップS22の次に、第1実施形態の計画立案方法のステップS13と同様に、決定変数を定義する(ステップS23)。本実施形態では、決定変数δは、複数の製品のそれぞれの在庫量と、複数の製品のそれぞれに対応する生産設備の段取り替えの回数と、のそれぞれに対応する。
【0075】
次に、「関数作成工程」として、目的関数を作成する(ステップS24)。ステップS24では、関数作成部33は、製品の在庫量とペナルティ係数との関係と、生産設備の段取り替えの回数とペナルティ係数との関係の両方を用いて、目的関数を作成する。生産設備の段取り替えの回数に関する目的関数は、図9に示す生産設備の段取り替えの回数とペナルティ係数との関係を用いると、以下の式(5)によって表される。
【数5】
・・・(5)
なお、式(5)に含まれる文字のそれぞれは、以下の数値を示す(図9参照)
dandori:生産設備の段取り替えの回数に関する目的関数
i:製品の種類を示す番号(製品の種類の数)
δq,M(i):生産設備M(i)の段取り替えの回数における区間Sc21の度数(決定変数)
δr,M(i):生産設備M(i)の段取り替えの回数における区間Sc22の度数(決定変数)
δs,M(i):生産設備M(i)の段取り替えの回数における区間Sc23の度数(決定変数)
δover,M(i):生産設備M(i)の段取り替えの回数における区間Sc24の度数(決
定変数)
Q,R,S,T:順に区間Sc21,Sc22,Sc23,Sc24のそれぞれに対応するペナルティ係数
【0076】
本実施形態では、評価指標として、複数の製品のそれぞれの在庫量と、複数の製品のそれぞれを生産する生産設備の段取り替えの回数とが設定されている。したがって、複数の製品の生産計画全体としての目的関数は、式(1)で示す製品の在庫量に関する目的関数と、式(5)で示す生産設備の段取り替えの回数に関する目的関数とを組み合わせものとなる。
【0077】
次に、「制約設定工程」として、制約式を作成する(ステップS25)。ステップS25では、制約設定部51は、計画情報に含まれる生産条件などの条件情報に基づいて、計
画が満たすべき条件を制約式として作成する。生産条件としては、例えば、1日当たりの生産設備の段取り替えの上限回数などがある。この場合、生産設備の段取り替えの上限回数を定数で表される制約式として作成し、ステップS24で作成した目的関数とセットにする。このように、生産条件に関わる上限値を加えることで、現実的でない計画が立案されないようにできる。
【0078】
次に、「探索工程」として、制約式を満たしつつ、目的関数が最小となる計画を探索する(ステップS26)。ステップS26では、探索部34は、ステップS25において作成された制約式を満たすことを前提として、目的関数が最小となる計画を探索する。ステップS26においても、第1実施形態の計画立案方法のステップS15と同様に、数理計画ソルバや遺伝的アルゴリズムなどを用いて、目的関数が最小となる計画を探索してもよい。最後に、第1実施形態の計画立案方法のステップS16と同様に、立案した計画を出力する(ステップS27)。
【0079】
以上説明した、本実施形態の計画立案方法によれば、目的関数が含むペナルティ係数は、評価指標における所定の数値範囲を示す区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されている。これにより、計画を探索するとき、わずかな改善に停留することなく、区間をまたぐことでペナルティ係数が変化するような大きな改善の計画に着目することとなる。したがって、すでに作成されている過去の計画に対して明確に改善された計画を出力することができる。また、目的関数を作成するときに調整すべき項目が比較的少なくなるため、目的関数を容易に調整することができる。これにより、短時間で改善された計画を立案することができる。このように、過去の計画に対して改善された計画を短時間で立案することができる。
【0080】
また、本実施形態の計画立案方法によれば、計画情報には、複数の評価指標間の優先度に関する優先度情報が含まれている。複数の評価指標のそれぞれにおいて設定されるペナルティ係数は、この優先度情報に基づいて設定されるため、探索結果の計画は、評価指標の優先度を反映させた計画となる。したがって、計画を実行する現場に即した計画を立案することができる。
【0081】
また、本実施形態の計画立案方法によれば、ステップS25では、評価指標として設定されない条件に関する条件情報に基づいて、制約式を作成する。ステップS26では、制約式を満たしつつ、目的関数が最小となる計画を探索するため、探索結果の計画は、評価指標に含まれなかった、生産条件などの条件も含む計画とすることができる。また、現実的でない計画が探索結果として出力されることを抑制することができる。これにより、過去の計画に対する改善度を向上させた現実的な計画を立案することができる。
【0082】
また、本実施形態の計画立案方法によれば、複数の製品を生産するための生産計画を立案するため、複数の評価指標には、複数の製品のそれぞれの在庫数と、複数の製品のそれぞれを生産可能な設備の段取り替えの回数を含んでいる。これにより、限られた生産設備を用いて複数の製品を生産する生産計画において、過去の計画に対して改善された生産計画を短時間で立案することができる。
【0083】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0084】
[変形例1]
上述の実施形態では、計画立案方法は、複数の鉄鋼製品を生産する生産計画であって、過去の生産計画に対して改善された生産計画を立案するとした。しかしながら、計画立案
方法によって立案される計画は、鉄鋼製品の生産計画に限定されない。自動車等の工業製品であってもよいし、農産物などの農業製品の生産計画であってもよい。また、生産計画に限定されず、各種目標を達成するための計画であってもよい。
【0085】
[変形例2]
上述の実施形態では、評価指標の区間における度数は、例えば、生産現場に貯留しておくことが可能な在庫量のような、評価指標の許容範囲の上限値に基づいて制限されるとした。許容範囲の下限値に基づいて制限してもよいし、上限値および下限値による制限はなくてもよい。許容範囲の上限値および下限値の少なくとも一方によって評価指標の区間における度数することで、実現不可能な計画を計画の探索範囲から排除することができるため、実現可能な計画を短時間で立案することができる。
【0086】
[変形例3]
上述の実施形態では、複数の評価指標間において、生産現場への影響の大きさを考慮した優先度情報を用いてペナルティ係数の大小関係を設定するとした。しかしながら、複数の評価指標間におけるペナルティ係数の大小関係を設定する方法は、これに限定されない。例えば、担当者の経験や知識などに基づいて、設定してもよい。
【0087】
[変形例4]
上述の実施形態では、ペナルティ係数は、過去の計画に関する情報に基づいて設定するものとしたが、評価指標の種類や区間の幅も、過去の計画に関する情報に基づいて設定してもよい。また、評価指標の種類、区間の幅、および、ペナルティ係数の少なくとも1つは、担当者による手作業のほか、過去の計画に関する情報を教師データとした機械学習に類する技術を用いて設定してもよい。
【0088】
[変形例5]
第2実施形態では、計画情報に含まれる生産条件などの条件情報に基づいて、計画が満たすべき条件を制約式として作成し、ステップS26において、制約式を満たすことを前提として、目的関数が最小となる計画を探索するとした。しかしながら、制約式に用いる条件は、生産条件に限定されない。例えば、担当者の考えに反するような値に基づいて制約式を作成してもよい。例えば、ある期間において生産設備の段取り替えを2回以内に抑える必要があることがあらかじめ分かっている場合、生産設備の段取り替えの回数の制限を制約式に含むことで、計画を探索する空間が狭まるため、計画の探索をさらに短時間で行うことができる。また、計画が出力されてから、例えば、担当者が手直しをする必要もなくなり、立案に要する時間をさらに短縮することができる。
【0089】
[変形例6]
上述の実施形態では、計画立案装置は、入力部と、記憶部と、演算部と、出力部と、を備えるとした。しかしながら、計画立案装置の構成は、これに限定されない。また、演算部は、第1実施形態では、指標設定部と、係数設定部と、関数作成部と、探索部と、して機能するとし、第2実施形態では、指標設定部と、係数設定部と、関数作成部と、制約設定部と、探索部と、して機能するとした。演算部が備える機能の構成は、これに限定されない。
【0090】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0091】
<適用例1>
計画立案方法であって、
立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得工程と、
計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定工程と、
前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定工程と、
前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成工程と、
前記目的関数が最小となる計画を探索する探索工程と、を備える、
計画立案方法。
<適用例2>
適用例1に記載の計画立案方法であって、
前記指標設定工程では、複数の前記評価指標を設定し、
前記関数作成工程では、複数の前記評価指標のそれぞれにおける、複数の前記区間のそれぞれの度数と前記ペナルティ係数との積の線形和を含む前記目的関数を作成する、
計画立案方法。
<適用例3>
適用例1または適用例2に記載の計画立案方法であって、
前記計画情報は、前記評価指標の許容範囲に関する情報を含んでおり、
前記区間における度数の大きさは、前記許容範囲における上限値および下限値の少なくとも一方に基づいて制限される、
計画立案方法。
<適用例4>
適用例1から適用例3のいずれか一例に記載の計画立案方法であって、
前記計画情報は、複数の前記評価指標間の優先度に関する優先度情報を含んでおり、
複数の前記評価指標間における前記ペナルティ係数の大小関係は、前記優先度情報に基づいて設定される、
計画立案方法。
<適用例5>
適用例1から適用例4のいずれか一例に記載の計画立案方法であって、
前記情報取得工程では、前記立案予定の計画に関連する過去の計画に関する情報を取得し、
前記係数設定工程では、前記ペナルティ係数は、前記過去の計画に関する情報に基づいて設定される、
計画立案方法。
<適用例6>
適用例1から適用例5のいずれか一例に記載の計画立案方法であって、
前記計画情報は、前記評価指標として設定されない条件に関する条件情報を含んでおり、
前記計画立案方法は、さらに、
前記条件情報に基づいて、制約式を設定する制約設定工程を備え、
前記探索工程では、前記制約設定工程において設定された前記制約式を満たしつつ、前記目的関数が最小となる計画を探索する、
計画立案方法。
<適用例7>
適用例1から適用例6のいずれか一例に記載の計画立案方法であって、
前記立案予定の計画は、複数の製品を生産する生産計画であり、
複数の前記評価指標は、複数の前記製品のそれぞれの在庫数と、複数の前記製品のそれぞれを生産可能な設備の段取り替えの回数と、を含む、
計画立案方法。
<適用例8>
計画を立案するためのコンピュータプログラムであって、
立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得機能と、
計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定機能と、
前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定機能と、
前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成機能と、
前記目的関数が最小となる計画を探索する探索機能と、
をコンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
<適用例9>
計画立案装置であって、
立案予定の計画に関する計画情報を取得する情報取得部と、
計画を評価するための評価指標を前記計画情報に基づいて設定する指標設定部と、
前記評価指標の目標値からの乖離度を表すペナルティ係数であって、前記評価指標における所定の数値範囲に対応する区間ごとに、一定の値を示す離散的な関数によって定義されるペナルティ係数を設定する係数設定部と、
前記計画情報を用いて、前記ペナルティ係数を含む目的関数を作成する関数作成部と、
前記目的関数が最小となる計画を探索する探索部と、を備える、
計画立案装置。
【符号の説明】
【0092】
1,2…計画立案装置
10…入力部
31…指標設定部
32…係数設定部
33…関数作成部
34…探索部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9