(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134810
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】姿勢変更治具およびアーチ支保工の積み替え方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/08 20060101AFI20240927BHJP
B66C 1/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B66C13/08 R
B66C1/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045193
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】596104728
【氏名又は名称】日本メンテナンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠之
(72)【発明者】
【氏名】小島 和祈
(72)【発明者】
【氏名】西澤 和男
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】嶋岡 陽
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004EA04
3F004EA06
3F004KA01
3F004LA01
3F004LB01
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、アーチ支保工などの対象物を吊った状態のまま姿勢変更を実現するための姿勢変更治具を提供する。
【解決手段】クレーンと対象物との間に介在させて、対象物を吊った状態のまま姿勢変更させるための姿勢変更治具であって、本体部10と、本体部10の少なくとも二点からクレーンのフックに係留する第1のワイヤ20と、本体部10に設けたシーブ30と、一端をフックに係留し、途上をシーブ30に巻き掛ける第2のワイヤ40と、第2のワイヤ40の他端を接続して巻き上げ可能なウインチ50と、本体部10に設けて対象物を吊り可能な第3のワイヤ60と、を少なくとも具備し、第2のワイヤ40の巻き上げによる本体部10の回転によって第3のワイヤ60で吊った対象物の姿勢を変更可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンと対象物との間に介在させて、前記対象物を吊った状態のまま姿勢変更させるための姿勢変更治具であって、
本体部と、
前記本体部の少なくとも二点から前記クレーンのフックに係留する、第1のワイヤと、
前記本体部に設けた、シーブと、
一端を前記フックに係留し、途上を前記シーブに巻き掛ける、第2のワイヤと、
前記第2のワイヤの他端を接続して巻き上げ可能な、ウインチと、
前記本体部に設けて、前記対象物を吊り可能な、第3のワイヤと、
を少なくとも具備し、
前記第2のワイヤの巻き上げによる前記本体部の回転によって、前記第3のワイヤで吊った前記対象物の姿勢を変更可能としたことを特徴とする、
姿勢変更治具。
【請求項2】
前記対象物が、アーチ支保工であり、
前記第3のワイヤの吊り箇所が、前記アーチ支保工の頂部および左右の側部の三箇所に設定されていることを特徴とする、
請求項1に記載の姿勢変更治具。
【請求項3】
前記本体部が、
長尺部材からなる、梁材と、
平面視して前記梁材の長手方向に直交する方向へと延びる、張出材と、からなり、
前記第1のワイヤを、前記梁材の上面に設け、
前記シーブを、前記張出材の上面に設け、
前記ウインチを、前記梁材の上面または前記張出材の上面に設け、
前記第3のワイヤを、前記梁材の下面に設けてあることを特徴とする、
請求項1に記載の姿勢変更治具。
【請求項4】
横倒しで積載してあるアーチ支保工を、起こした姿勢で積み替える、アーチ支保工の積み替え方法であって、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の姿勢変更治具を、クレーンに取り付け、
横倒しで積載してあるアーチ支保工の上方に、前記姿勢変更治具を位置させて、前記第3のワイヤを用いて前記アーチ支保工に玉掛けして、前記アーチ支保工を横倒しのまま吊り上げ、
前記ウインチを巻き上げて、前記アーチ支保工を起こした姿勢に遷移させてから、積み替え先で積み替えることを特徴とする、
アーチ支保工の積み替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーチ支保工などの対象物を、吊った状態のまま姿勢変更を行うための姿勢変更治具、および当該姿勢変更治具を用いたアーチ支保工の積み替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事等で使用されるアーチ型の支保工(「アーチ支保工」ともいう。)は、トラック等の車両の荷台に横倒しで積載した状態で工事現場まで搬送された後、縦置きに姿勢変更した状態で別の車両の荷台に積み替えて、坑内へと運び込まれる。
この作業にあたり、
図4に示す従来方法では、荷台に搭載した横倒し状態のアーチ支保工を吊り上げたのち(
図4(a))、横倒し状態のまま一度地面に仮置きし(
図4(b))、玉掛け位置を変更して吊り直すことで姿勢変更を行い(
図4(c))、別の車両の荷台へと積み替えを行っていた(
図4(d))。
【0003】
その他、揚重中の対象物の姿勢を変更する装置として、以下の特許文献1に記載の姿勢切替装置がある。
しかし、この姿勢切替装置を、例えばアーチ支保工に適用しようとする場合、当該姿勢切替装置の構成部材(レールや鋼板など)を当該支保工の円弧面に対応させた形状に加工する必要があり、製作コストの圧縮に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡易な構造で、アーチ支保工などの対象物を吊った状態のまま姿勢の変更を実現するための手段を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、クレーンと対象物との間に介在させて、前記対象物を吊った状態のまま姿勢変更させるための姿勢変更治具であって、本体部と、前記本体部の少なくとも二点から前記クレーンのフックに係留する、第1のワイヤと、前記本体部に設けた、シーブと、一端を前記フックに係留し、途上を前記シーブに巻き掛ける、第2のワイヤと、前記第2のワイヤの他端を接続して巻き上げ可能な、ウインチと、前記本体部に設けて、対象物を吊り可能な、第3のワイヤと、を少なくとも具備し、前記第2のワイヤの巻き上げによる前記本体部の回転によって、前記第3のワイヤで吊った対象物の姿勢を変更可能としたことを特徴とする。
また、本願発明は、前記対象物をアーチ支保工としたときに、前記第3のワイヤの吊り箇所を、前記アーチ支保工の頂部および左右の側部の三箇所に設定した構成とすることができる。
また、本願発明は、前記本体部が、長尺部材からなる、梁材と、平面視して前記梁材の長手方向に直交する方向へと延びる、張出材と、からなり、前記第1のワイヤを、前記梁材の上面に設け、前記シーブを、前記張出材の上面に設け、前記ウインチを、前記梁材の上面または前記張出材の上面に設け、前記第3のワイヤを、前記梁材の下面に設けた構成とすることができる。
また、本願発明は、横倒しで積載してあるアーチ支保工を、起こした姿勢で積み替える、アーチ支保工の積み替え方法であって、前記した姿勢変更治具を、クレーンに取り付け、横倒しで積載してあるアーチ支保工の上方に、前記姿勢変更治具を位置させて、前記第3のワイヤを用いて前記アーチ支保工に玉掛けして、前記アーチ支保工を横倒しのまま吊り上げ、前記ウインチを巻き上げて、前記アーチ支保工を起こした姿勢に遷移させてから、積み替え先で積み替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を有する。
(1)本体部の姿勢変更に連動する形で、対象物を吊った状態のまま姿勢変更することができる。
(2)積み替え作業の途中で、対象物の仮置きや玉掛けのし直しが必要なくなるため、作業時間の短縮につながる。
(3)姿勢変更のための吊り直し作業が必要無くなり、安全性が高くなる。
(4)姿勢変更のための仮置きに起因する対象物の汚れの付着や損傷の恐れなどを回避できる。
(5)ウインチの作動のみで対象物の姿勢を変更することができ、複雑な操作を要しない。
(6)姿勢変更治具の製作にあたり、本体部を円弧状に加工するなどの複雑な加工を要しないため、製作コストの圧縮に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る姿勢変更治具の一例を示す概略斜視図。
【
図2】ウインチの作動による本体部および対象物の姿勢変化の遷移を示す概略図。
【
図3】本発明に係るアーチ支保工の積み替え方法のイメージ図。
【
図4】従来のアーチ支保工の積み替え方法のイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例0010】
<1>全体構成(
図1)
本発明に係る姿勢変更治具は、吊り対象である対象物を、吊り状態のまま姿勢変更を行う為に使用する治具である。
本発明において、対象物は特段限定せず、吊り状態のまま姿勢変更を要するあらゆる物が含まれる。なお、本実施例では、吊り対象となる対象物としてアーチ支保工を想定している。
本発明に係る姿勢変更治具は、本体部10、第1のワイヤ20、シーブ30、第2のワイヤ40、ウインチ50、および第3のワイヤ60を少なくとも具備して構成する。
また、後述する説明では、
図1に示すX軸を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向と定義する。
以下、各構成部材の詳細について説明する。
【0011】
<2>本体部(
図1)
本体部10は、姿勢変更治具の本体部分に相当する部材である。
本発明において、本体部10の形状は特段限定せず、平板状、枠状、T字状、などを選択することができる。
本実施例では、本体部10の形状を、左右方向を長手方向とする長尺部材で構成した梁材11と、梁材11の長手方向から水平方向に直交する方向(前後方向)へと延びる張出材12とで平面視T字状を呈する形状としている。
【0012】
<2.1>吊り部
また、本発明では、本体部10に、クレーンとの間での吊り部と、対象物との間での吊り部をそれぞれ設けている。
本発明において各吊り部を設ける位置は特段限定せず、適宜設計すればよい。
本実施例では、梁材11の上面二箇所に、クレーンとの間での吊り部を設け、梁材11の下面二箇所と、張出材12の下面一箇所に、対象物(アーチ支保工A)との間での吊り部を設けている。
【0013】
<3>第1のワイヤ(
図1)
第1のワイヤ20は、クレーンと本体部10との間を繋ぐための部材である。
第1のワイヤ20は、少なくとも2本以上を設けるものとする。
本実施例では、本体部10を構成する梁材11の長手方向に間隔をあけて設けた二箇所の吊り部に、それぞれ第1のワイヤ20の一端を係留している。
各第1のワイヤ20の他端は、何れもクレーンのフックに係留している。
【0014】
<4>シーブ(
図1)
シーブ30は、第2のワイヤ40を巻き掛けておくための部材である。
シーブ30は、本体部10の上面での第1のワイヤ20を係留する吊り部を繋ぐ仮想線上から、前後方向に変位させた位置に設けるものとする。
本実施例では、本体部10を構成する張出材12の上面にシーブ30を設けている。
【0015】
<5>第2のワイヤ(
図1)
第2のワイヤ40は、クレーンとウインチ50との間を繋ぐ部材である。
第2のワイヤ40の一端はクレーンのフックに係留し、第2のワイヤ40の途上はシーブ30に巻き掛けておき、第2のワイヤ40の他端はウインチ50に接続するものとする。
本実施例では、第2のワイヤ40を一本設けている。したがって、本実施例では、二本の第1のワイヤ20と一本の第2のワイヤ40とで、本体部10を三点吊りする格好となる。
【0016】
<6>ウインチ(
図1)
ウインチ50は、第2のワイヤ40の巻上・繰り出しを行うための部材である。
ウインチ50は、シーブ30を経由した第2のワイヤ40の他端を接続するよう構成する。
本実施例では、本体部10を構成する張出材12の上面において、シーブ30よりも梁材11側に接近した箇所に、ウインチ50を固定している。
当該構成により、ウインチ50で第2のワイヤ40の巻上・繰り出しを行うことで、第2のワイヤ40の長さを調整することができる。
より詳細に説明すると、ウインチ50で第2のワイヤ40を巻きあげた場合には、本体部10はシーブ30側が上方に引き上がるように姿勢変更し、ウインチ50で第2のワイヤ40を繰り出した場合には、本体部10はシーブ30側が下方に倒れるように姿勢変更することとなる。
通常時は、本体部10を構成する梁材11および張出材12が略水平状態となるように第2のワイヤ40の長さを調整しておく。
【0017】
<7>第3のワイヤ(
図1)
第3のワイヤ60は、本体部10と対象物との間を繋ぐための部材である。
第3のワイヤ60は、前記本体部10に設けて、対象物を吊り可能に構成する。
本実施例では、梁材11の下面に所定間隔を設けて二箇所、張出材12の下面に一箇所の計三箇所に、等長の第3のワイヤ60の一端をそれぞれ係留し、各第3のワイヤ60を鉛直方向に降ろして、各第3のワイヤ60の他端を、対象物であるアーチ支保工Aの頂部と、左右の側部とに係留した構成としている。
当該構成により、本体部10が水平状態を維持している際には、対象物(アーチ支保工A)も、水平状態を維持した状態で吊られることになる。
【0018】
<8>姿勢変化イメージ(
図2)
次に、ウインチ50の動作に伴う、本体部10および対象物であるアーチ支保工Aの姿勢変化について説明する。
【0019】
<8.1>水平時(
図2(a))
本体部10を略水平に保つように、第2のワイヤ40の長さを調整した状態では、本体部10に吊られているアーチ支保工Aも略水平を保った状態となる。
【0020】
<8.2>巻上時(
図2(b))
水平時から、ウインチ50でもって第2のワイヤ40を巻きあげはじめると、本体部10を構成する張出材12のシーブ30側が上方に引き上げられて、本体部10、および本体部10に吊られているアーチ支保工Aは、
図2における紙面反時計回りに徐々に回転する。
【0021】
<8.3>巻上完了時(
図2(c))
さらに第2のワイヤ40の巻き上げを進めた段階では、本体部10およびアーチ支保工Aは、水平時の状態から約90度回転して略起立した状態となる。
【0022】
<8.4>繰り出し時
なお、<8.3>の状態から、ウインチ50でもって第2のワイヤ40を繰り出していけば、順に<8.2>から<8.1>の状態へと復帰するように作用することは言うまでもない。
【0023】
<9>使用例(
図3)
次に、本実施例に係る姿勢変更治具を用いて、アーチ支保工の積み替え方法の手順について説明する。
なお、本発明において、アーチ支保工の積み替え元の場所や積み替え先の場所は特段限定せず、車両の荷台、仮置きヤード、スライドセントル、などに適用することができる。
本実施例では、トンネル坑外の車両C1の荷台に、横倒しで積載してあるアーチ支保工Aを、空中で起こして縦置き状態にしてから、別の車両C2の荷台に積み替える場合を想定している。
【0024】
<9.1>姿勢変更治具の取り付け(
図3(a))
まず、クレーンBのフックに、本実施例に係る姿勢変更治具を取り付ける。
このとき、第3のワイヤ60は、予め本体部10に係留してもおいてもよいし、後述するアーチ支保工Aの上方まで姿勢変更治具を位置させてから本体部10に係留してもよい。
また、ウインチ50を動作させて、本体部10が水平状態を維持するように第2のワイヤ40の長さを調整しておく。
【0025】
<9.2>アーチ支保工の吊り上げ(
図3(a))
次に、クレーンBを動作させて、車両C1に積載しているアーチ支保工Aの上方に姿勢変更治具を位置させる。
その後、第3のワイヤ60を用いてアーチ支保工Aへの玉掛けを行い、クレーンBでもって、アーチ支保工Aを横倒し姿勢を維持したまま吊り上げる。
【0026】
<9.3>ウインチの巻上(
図3(b))
吊り上げたアーチ支保工Aを、積み替え先の別の車両C2の荷台上まで移動させたあとは、ウインチ50でもって第2のワイヤ40の巻き上げを行い、アーチ支保工Aを回転させて縦置き状態に近づける。
なお、本発明は、車両C1から吊り上げた直後に、アーチ支保工の姿勢変更を行ってから別の車両C2へと移動させてもよい。
【0027】
<9.4>荷解き作業(
図3(c))
荷解きに支障が無い程度までアーチ支保工Aが縦置き状態になっている場合には、クレーンBでもって、アーチ支保工Aを車両C2に吊り降ろし、第3のワイヤ60による玉掛けを外して荷解き作業を行う。