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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134812
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】変速機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20240927BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20240927BHJP
   F16H 61/662 20060101ALI20240927BHJP
   F16H 61/688 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/42
F16H61/662
F16H61/688
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045196
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】井川 将
(72)【発明者】
【氏名】岩野 勉
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552MA07
3J552MA30
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA02
3J552PA54
3J552RA13
3J552RA26
3J552SA07
3J552SA34
3J552SB33
3J552TA10
3J552TB13
3J552VA32W
3J552VA33W
3J552VA37W
3J552VA74W
3J552VA76W
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アクセル開度が高開度である状態に限定されることなく、モードの切り替えに伴うショックを抑制可能な状況においてモード切替処理を実行可能とする制御装置の提供を目的とした。
【解決手段】ECUは、ベルト変速機構33を有し、スプリットモードからベルトモードへとモード切替を行う際に、入力軸回転数の目標変化率と、非スプリット点モード切替処理においてクラッチC1の解放及びクラッチC2の係合に要する切替時間と、に基づいて導出される増加予測回転数と、ベルト45モードへの切り替え後における目標入力軸回転数と、ベルトモードへの切り替え時における入力軸回転数である切替時入力軸回転数との差に基づいて導出される差回転数と、を導出し、増加予測回転数が差回転数よりも小さいことを条件として、非スプリット点モード切替処理の実行を許可する判定を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と出力軸との間の第一動力伝達経路上に介在される第一係合要素と、前記入力軸と前記出力軸との間の第二動力伝達経路に介在される第二係合要素とを備え、前記第二動力伝達経路上にベルト変速機構を有し、前記第一係合要素の解放および前記第二係合要素の係合により、前記ベルト変速機構によるプーリ比が大きいほど前記入力軸と前記出力軸との間でのトータル変速比が大きくなる第一モードとなり、前記第一係合要素の係合および前記第二係合要素の解放により、前記プーリ比が大きいほど前記トータル変速比が小さくなる第二モードとなり、前記トータル変速比が所定のスプリット変速比であるときに、前記第一係合要素および前記第二係合要素に差回転が生じないように構成された無段変速機を制御する制御装置であって、
前記トータル変速比の目標を目標トータル変速比として設定する目標トータル変速比設定部と、
前記目標トータル変速比設定部により設定される目標トータル変速比に基づいて、前記プーリ比を変更するプーリ比変更部と、
前記第二モードで前記目標トータル変速比設定部により設定される前記目標トータル変速比が前記スプリット変速比よりも大きいことを条件として、前記トータル変速比が前記スプリット変速比と一致しない状態において、前記第一係合要素を解放させ、前記第二係合要素を係合させることにより前記第二モードから前記第一モードへと切り替える非スプリット点モード切替処理を行う切替制御部と、
前記非スプリット点モード切替処理の実行可否を判定する判定部と、
を有し、
前記判定部が、
入力軸回転数の目標変化率と、前記非スプリット点モード切替処理において前記第一係合要素の解放及び前記第二係合要素の係合に要する時間と、に基づいて導出される増加予測回転数と、
前記第一モードへの切り替え後における目標入力軸回転数と、前記第一モードへの切り替え時における入力軸回転数である切替時入力軸回転数との差に基づいて導出される差回転数と、を導出し、
前記増加予測回転数が前記差回転数よりも小さいことを条件として、前記非スプリット点モード切替処理の実行を許可する判定を行うこと、を特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記切替時入力軸回転数が、前記出力軸の回転数と、前記プーリ比と、に基づいて導出されること、を特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記入力軸に入力される動力を減速させた状態で前記ベルト変速機構に向けて出力する前減速機構を備えており、
前記切替時入力軸回転数が、前記前減速機構における減速比、前記出力軸の回転数、及び前記プーリ比に基づいて導出されること、を特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記増加予測回転数が前記差回転数以下であることを条件として、前記判定部が、前記非スプリット点モード切替処理を禁止する判定を行うこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記増加予測回転数が前記差回転数より大きいことを条件として、前記トータル変速比が前記スプリット変速比と一致する状態において、前記第一係合要素を解放させ、前記第二係合要素を係合させることにより前記第二モードから前記第一モードへと切り替えるスプリット点モード切替処理を行うこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載される変速機として、動力を無段階に変速するベルト変速機構を備え、入力軸と出力軸との間で動力を2つの経路で分割して伝達可能な動力分割式無段変速機が提案されている。
【0003】
下記特許文献1に開示されている変速機の制御装置は、上述した動力分割式無段変速機において、第二モードであるスプリットモードから第一モードであるベルトモードに遷移するダウンシフトにおける変速ショックの発生を抑制すべく提供されたものである。特許文献1の制御装置は、スプリットモードにおいてトータル変速比の目標が一定値よりも大きい値に設定された場合に、スプリットモードからベルトモードへの切り替え、つまり第一クラッチと第二クラッチとの係合の切り替えを行う。この場合に、特許文献1の制御装置は、キックダウン要求発生時のプーリ比のアップシフト方向への時間変化率が所定の変速閾値以上である場合に、プーリ比がスプリット点に一致しない状態でのクラッチツークラッチ制御の実施を禁止する制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-118278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで本発明者らは、上記特許文献1に開示されているような動力分割式の無段変速機において、アクセル開度が低回度から中開度である状態でスプリットモードからベルトモードに切り替える場合の制御について鋭意検討した。その結果、図6(a)に示すように、第一係合要素及び第二係合要素に差回転が生じない状態までプーリ比を到達させた後に、スプリットモードからベルトモードに切り替えることとすれば、モードの切り替え時に生じるショックが小さくなるものの、モードの切り替えに時間を要してしまい、ユーザーがタイムラグを感じやすいとの知見が得られた。その一方で、アクセル開度が低回度から中開度である状態のように、スプリットモードからベルトモードへの切り替えの前後における差回転が小さい状況において、上述のようなクラッチツークラッチ制御を行うと、目標入力軸回転数を超えてから第二係合要素が係合することになり、モードの切り替えに伴うショックが大きくなるとの知見が得られた。そのため、アクセル開度に基づいてクラッチツークラッチ制御を行うこととした場合には、アクセル開度が高開度であるという限定的な条件下においてクラッチツークラッチ制御を行うこととしなければ、モードの切り替えに伴うショックを抑制することができないという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、アクセル開度が高開度である状態に限定されることなく、モードの切り替えに伴うショックを抑制可能な状況においてクラッチツークラッチ制御によってスプリットモードからベルトモードへのモード切替処理を実行可能とする制御装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の制御装置は、入力軸と出力軸との間の第一動力伝達経路上に介在される第一係合要素と、前記入力軸と前記出力軸との間の第二動力伝達経路に介在される第二係合要素とを備え、前記第二動力伝達経路上にベルト変速機構を有し、前記第一係合要素の解放および前記第二係合要素の係合により、前記ベルト変速機構によるプーリ比が大きいほど前記入力軸と前記出力軸との間でのトータル変速比が大きくなる第一モードとなり、前記第一係合要素の係合および前記第二係合要素の解放により、前記プーリ比が大きいほど前記トータル変速比が小さくなる第二モードとなり、前記トータル変速比が所定のスプリット変速比であるときに、前記第一係合要素および前記第二係合要素に差回転が生じないように構成された無段変速機を制御する制御装置であって、前記トータル変速比の目標を目標トータル変速比として設定する目標トータル変速比設定部と、前記目標トータル変速比設定部により設定される目標トータル変速比に基づいて、前記プーリ比を変更するプーリ比変更部と、前記第二モードで前記目標トータル変速比設定部により設定される前記目標トータル変速比が前記スプリット変速比よりも大きいことを条件として、前記トータル変速比が前記スプリット変速比と一致しない状態において、前記第一係合要素を解放させ、前記第二係合要素を係合させることにより前記第二モードから前記第一モードへと切り替える非スプリット点モード切替処理を行う切替制御部と、前記非スプリット点モード切替処理の実行可否を判定する判定部と、を有し、前記判定部が、入力軸回転数の目標変化率と、前記非スプリット点モード切替処理において前記第一係合要素の解放及び前記第二係合要素の係合に要する時間と、に基づいて導出される増加予測回転数と、前記第一モードへの切り替え後における目標入力軸回転数と、前記第一モードへの切り替え時における入力軸回転数である切替時入力軸回転数との差に基づいて導出される差回転数と、を導出し、前記増加予測回転数が前記差回転数よりも小さいことを条件として、前記非スプリット点モード切替処理の実行を許可する判定を行うこと、を特徴とするものである。
【0008】
本発明の制御装置は、トータル変速比がスプリット変速比と一致しない状態において第二モードから第一モードへと切り替える非スプリット点モード切替処理の許否を判定する処理において、入力軸回転数の変化率と、第一係合要素の解放及び第二係合要素の係合に要する時間とに基づいて回転数の増加予測回転数を導出する。また、本発明の制御装置は、第一モードへの切り替え後における目標入力軸回転数と、第一モードへの切り替え時における入力軸回転数(切替時入力軸回転数)との差に基づいて差回転数を導出する。このようにして導出された増加予測回転数が差回転数よりも小さい場合には、非スプリット点モード切替処理を実行しても、ふきあがりが発生せず、第二モードから第一モードへのモード切り替えに伴うショックを最小限に抑制できる。本発明の制御装置は、かかる知見に基づき、増加予測回転数が差回転数よりも小さい場合に、非スプリット点モード切替処理の実行を許可するものとされている。従って、本発明の制御装置は、アクセル開度が高開度である状態に限定されることなく、ショックを抑制可能な状況において非スプリット点モード切替処理によってスプリットモードからベルトモードへの切り替えを実行することができる。
【0009】
(2)本発明の制御装置は、前記切替時入力軸回転数が、前記出力軸の回転数と、前記プーリ比と、に基づいて導出されるものであると良い。
【0010】
本発明の制御装置は、上記(2)のような構成とすることにより、出力軸の回転数、及びプーリ比に基づいて適切に切替時入力軸回転数を導出できる。これにより、本発明の制御装置は、非スプリット点モード切替処理の実行に係る許可判定を適確に行うことができる。
【0011】
(3)本発明の制御装置は、前記入力軸に入力される動力を減速させた状態で前記ベルト変速機構に向けて出力する前減速機構を備えており、前記切替時入力軸回転数が、前記前減速機構における減速比、前記出力軸の回転数、及び前記プーリ比に基づいて導出されるものであると良い。
【0012】
本発明の制御装置は、上記(3)のような構成とすることにより、出力軸の回転数、及びプーリ比に加えて、前減速機構における減速比を加味して適切に切替時入力軸回転数を導出できる。これにより、本発明の制御装置は、前減速機構を設けた構成とした場合において、非スプリット点モード切替処理の実行に係る許可判定を適確に行うことができる。
【0013】
(4)本発明の制御装置は、前記増加予測回転数が前記差回転数以下であることを条件として、前記判定部が、前記非スプリット点モード切替処理を禁止する判定を行うものであると良い。
【0014】
本発明の制御装置は、上記(4)のような構成とすることにより、非スプリット点モード切替処理を行うことによりふきあがりが発生するのを抑制できる。これにより、本発明の制御装置は、第二モードから第一モードへのモード切り替えに伴う大きなショックが発生してしまうのを抑制できる。
【0015】
(5)本発明の制御装置は、前記増加予測回転数が前記差回転数以下であることを条件として、前記トータル変速比が前記スプリット変速比と一致する状態において、前記第一係合要素を解放させ、前記第二係合要素を係合させることにより前記第二モードから前記第一モードへと切り替えるスプリット点モード切替処理を行うものであると良い。
【0016】
本発明の制御装置は、上記(5)のような構成とすることにより、非スプリット点モード切替処理を行うことでふきあがりや、大きなショックの発生が懸念される場合において、非スプリット点モード切替処理ではなくスプリット点モード切替処理によりモード切替を行うことができる。これにより、本発明の制御装置は、増加予測回転数が差回転数以下であるような条件下においても、ふきあがりや、大きなショックが発生するのを抑制しつつ、第二モードから第一モードへのモード切り替えを行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上述した本発明の課題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る変速システムを採用した車両の駆動系の構成を示すスケルトン図である。
図2図1の変速システムを構成する変速機が備える各係合要素の状態を示す図である。
図3図1の変速システムを構成する変速機が備える遊星歯車機構のサンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤの回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。
図4図1の変速システムを構成する変速機が備えるベルト変速機構のプーリ比と動力分割式無段変速機全体の減速比(ユニット変速比)との関係を示す図である。
図5図1の変速システムが備える制御系の構成を示す図である。
図6】スプリット点モード切替処理、及び非スプリット点モード切替処理に係る説明図である。
図7】非スプリット点モード切替処理の実行可否を判断するための判定に係る説明図である。
図8】非スプリット点モード切替処理の実行可否を判断するための判定を経て行われるモード切替処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る変速システムSについて、これを搭載した車両1を例に挙げ、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
≪車両の駆動系≫
図1は、車両1の駆動系の構成を示すスケルトン図である。車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。
【0021】
エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)、及び燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。また、エンジン2には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。エンジン2の動力は、トルクコンバータ3、及び変速機4を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達され、デファレンシャルギヤ5から左右のドライブシャフト6L,6Rを介してそれぞれ左右の駆動輪7L,7Rに伝達される。
【0022】
エンジン2は、E/G出力軸11を備えている。E/G出力軸11は、エンジン2が発生する動力により回転される。
【0023】
トルクコンバータ3は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンランナ23、及びロックアップ機構24を備えている。フロントカバー21には、E/G出力軸11が接続され、フロントカバー21は、E/G出力軸11と一体に回転する。ポンプインペラ22は、フロントカバー21に対するエンジン2側と反対側に配置されている。ポンプインペラ22は、フロントカバー21と一体回転可能に設けられている。タービンランナ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されて、フロントカバー21と共通の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0024】
ロックアップ機構24は、ロックアップピストン25を備えている。ロックアップピストン25は、フロントカバー21とタービンランナ23との間に設けられている。ロックアップ機構24は、ロックアップピストン25とフロントカバー21との間の解放油室26の油圧とロックアップピストン25とポンプインペラ22との間の係合油室27の油圧との差圧により、ロックアップオン(係合)/オフ(解放)される。すなわち、解放油室26の油圧が係合油室27の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップピストン25がフロントカバー21から離間し、ロックアップオフとなる。係合油室27の油圧が解放油室26の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップピストン25がフロントカバー21に押し付けられて、ロックアップオンとなる。
【0025】
ロックアップオフの状態では、E/G出力軸11が回転されると、ポンプインペラ22が回転する。ポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ23に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ23で受けられて、タービンランナ23が回転する。このとき、トルクコンバータ3の増幅作用が生じ、タービンランナ23には、E/G出力軸11のトルクよりも大きなトルクが発生する。
【0026】
ロックアップオンの状態では、E/G出力軸11が回転されると、E/G出力軸11、ポンプインペラ22、及びタービンランナ23が一体となって回転する。
【0027】
変速機4は、入力軸31、及び出力軸32を備え、入力軸31に入力される動力を2つの経路に分岐して出力軸32に伝達可能に構成された、いわゆる動力分割式(トルクスプリット式)変速機である。2つの動力伝達経路を構成するため、変速機4は、ベルト変速機構33、前減速機構34、遊星歯車機構35、及びスプリット変速機構36を備えている。
【0028】
入力軸31は、トルクコンバータ3のタービンランナ23に連結され、タービンランナ23と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
【0029】
出力軸32は、入力軸31と平行に設けられている。出力軸32には、出力ギヤ37が相対回転不能に支持されている。出力ギヤ37は、デファレンシャルギヤ5(デファレンシャルギヤ5のリングギヤ)と噛合している。
【0030】
ベルト変速機構33は、ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)によって構成されている。具体的には、ベルト変速機構33は、プライマリ軸41、セカンダリ軸42、プライマリプーリ43、セカンダリプーリ44、及びベルト45を備えている。プライマリ軸41及びセカンダリ軸42は、互いに並行に設けられている。また、プライマリプーリ43は、プライマリ軸41に相対回転不能に支持されたプーリである。セカンダリプーリ44は、セカンダリ軸42に相対回転不能に支持されたプーリである。ベルト45は、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とに亘って巻き掛けられている。
【0031】
プライマリプーリ43は、固定シーブ51、及び可動シーブ52を備えている。固定シーブ51は、プライマリ軸41に固定されたシーブである。また、可動シーブ52は、ベルト45を挟んで固定シーブ51に対して対向配置され、プライマリ軸41にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたシーブである。また、可動シーブ52に対して固定シーブ51と反対側には、シリンダ53が設けられている。シリンダ53は、プライマリ軸41に固定されている。可動シーブ52とシリンダ53との間には、油圧室54が形成されている。
【0032】
セカンダリプーリ44は、固定シーブ55、及び可動シーブ56を備えている。固定シーブ55は、セカンダリ軸42に固定されたシーブである。可動シーブ56は、ベルト45を挟んで固定シーブ55に対して対向配置され、セカンダリ軸42にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたシーブである。可動シーブ56に対して固定シーブ55と反対側には、シリンダ57が設けられている。シリンダ57は、セカンダリ軸42に固定されている。また、可動シーブ56とシリンダ57との間には、油圧室58が形成されている。回転軸線方向において、固定シーブ55と可動シーブ56との位置関係は、プライマリプーリ43の固定シーブ51と可動シーブ52との位置関係と逆転している。
【0033】
ベルト変速機構33では、プライマリプーリ43の油圧室54、及びセカンダリプーリ44の油圧室58に供給される油圧がそれぞれ制御されて、プライマリプーリ43、及びセカンダリプーリ44の各溝幅が変更される。これにより、ベルト変速機構33は、プーリ比(プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44との比)が連続的に無段階に変更できるものとされている。
【0034】
具体的には、プーリ比が小さくされるときには、プライマリプーリ43の油圧室54に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ43の可動シーブ52が固定シーブ51側に移動し、固定シーブ51と可動シーブ52との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ43に対するベルト45の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ44の固定シーブ55と可動シーブ56との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比が小さくなる。
【0035】
プーリ比が大きくされるときには、プライマリプーリ43の油圧室54に供給される油圧が下げられる。これにより、セカンダリプーリ44の推力(セカンダリ推力)に対するプライマリプーリ43の推力(プライマリ推力)の比である推力比が小さくなり、セカンダリプーリ44の固定シーブ55と可動シーブ56との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ51と可動シーブ52との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比が大きくなる。
【0036】
一方、プライマリプーリ43、及びセカンダリプーリ44の推力は、プライマリプーリ43、及びセカンダリプーリ44とベルト45との間で滑り(ベルト滑り)が生じない大きさを必要とする。そのため、ベルト滑りを生じない必要十分な挟圧が得られるよう、プライマリプーリ43の油圧室54、及びセカンダリプーリ44の油圧室58に供給される油圧が制御される。
【0037】
前減速機構34は、入力軸31に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸41に伝達する構成である。具体的には、前減速機構34は、入力軸ギヤ61と、プライマリ軸ギヤ62とを備えている。入力軸ギヤ61は、入力軸31に相対回転不能に支持されたギヤである。また、プライマリ軸ギヤ62は、入力軸ギヤ61よりも大径で歯数が多く、入力軸ギヤ61と噛合するギヤである。プライマリ軸ギヤ62は、プライマリ軸41にスプライン嵌合により相対回転不能に支持されている。
【0038】
遊星歯車機構35は、サンギヤ71、キャリヤ72、及びリングギヤ73を備えている。サンギヤ71は、セカンダリ軸42にスプライン嵌合により相対回転不能に支持されている。キャリヤ72は、出力軸32に相対回転可能に外嵌されている。キャリヤ72は、複数個のピニオンギヤ74を回転可能に支持している。ピニオンギヤ74は、円周上に複数個配置され、それぞれサンギヤ71と噛合している。リングギヤ73は、複数個のピニオンギヤ74を一括して取り囲む円環状の形状を有し、各ピニオンギヤ74にセカンダリ軸42の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ73には、出力軸32が接続され、リングギヤ73は、出力軸32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
【0039】
スプリット変速機構36は、スプリットドライブギヤ81と、スプリットドライブギヤ81と噛合するスプリットドリブンギヤ82とを含む平行軸式歯車機構である。
【0040】
スプリットドライブギヤ81は、入力軸31に相対回転可能に外嵌されている。
【0041】
スプリットドリブンギヤ82は、遊星歯車機構35のキャリヤ72と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ82は、スプリットドライブギヤ81よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ81よりも少ない歯数を有している。
【0042】
また、変速機4は、クラッチC1,C2、及びブレーキB1を備えている。
【0043】
クラッチC1(第一係合要素)は、油圧により、入力軸31とスプリットドライブギヤ81とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
【0044】
クラッチC2(第二係合要素)は、油圧により、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
【0045】
ブレーキB1は、油圧により、遊星歯車機構35のキャリヤ72を制動する係合状態と、キャリヤ72の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
【0046】
≪動力伝達モード≫
図2は、車両1の前進時、及び後進時におけるクラッチC1,C2、及びブレーキB1の状態を示す図である。図3は、遊星歯車機構35のサンギヤ71、キャリヤ72、及びリングギヤ73の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図4は、ベルト変速機構33によるプーリ比と変速機4の全体でのトータル変速比(ユニット変速比)との関係を示す図である。
【0047】
図2において、「○」は、クラッチC1,C2、及びブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2、及びブレーキB1が解放状態であることを示している。
【0048】
車両1の車室内には、運転者が操作可能な位置に、複数のポジション間で変位可能に設けられた変位部材が設けられている。本実施形態では、シフトレバー(セレクトレバー)が、変位部材として配設されている。シフトレバーの可動範囲には、たとえば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、S(スポーツ)ポジション、及びB(ブレーキ)ポジションがこの順に一列に並べて設けられている。
【0049】
シフトレバーがPポジションに位置する状態では、クラッチC1,C2、及びブレーキB1のすべてが解放され、パーキングロックギヤ(図示せず)が固定されることにより、変速機4の変速レンジの1つであるPレンジが構成される。また、シフトレバーがNポジションに位置する状態では、クラッチC1,C2、及びブレーキB1のすべてが解放されて、パーキングロックギヤが固定されないことにより、変速機4の変速レンジの1つであるNレンジが構成される。クラッチC1、及びブレーキB1の両方が解放された状態では、エンジン2の動力がセカンダリ軸42まで伝達されて、セカンダリ軸42が回転するが、遊星歯車機構35のサンギヤ71、及びピニオンギヤ74が空転し、エンジン2の動力は駆動輪7L,7Rに伝達されない。
【0050】
シフトレバーがDポジション、Sポジション、又はBポジションに位置する状態では、変速機4の変速レンジの1つである前進レンジが構成される。この前進レンジでの動力伝達モードには、ベルトモード、及びスプリットモードが含まれる。ベルトモードとスプリットモードとは、クラッチC1が係合している状態とクラッチC2が係合している状態との切り替え(クラッチC1,C2の掛け替え)により切り替えられる。
【0051】
ベルトモードでは、図2に示されるように、クラッチC1、及びブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ81が入力軸31から切り離され、遊星歯車機構35のキャリヤ72がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが直結される。
【0052】
入力軸31に入力される動力は、前減速機構34により逆転かつ減速されて、ベルト変速機構33のプライマリ軸41に伝達され、プライマリ軸41、及びプライマリプーリ43を回転させる。プライマリプーリ43の回転は、ベルト45を介して、セカンダリプーリ44に伝達され、セカンダリプーリ44、及びセカンダリ軸42を回転させる。遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが直結されているので、セカンダリ軸42と一体となって、サンギヤ71、リングギヤ73、及び出力軸32が回転する。したがって、ベルトモードでは、図3、及び図4に示されるように、変速機4のトータル変速比(ユニット変速比)がベルト変速機構33のプーリ比(プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44との比)に前減速比α(入力軸31の回転数/プライマリ軸41の回転数)を乗じた値と一致する。
【0053】
スプリットモードでは、図2に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2、及びブレーキB1が解放される。これにより、入力軸31とスプリットドライブギヤ81とが結合されて、入力軸31の回転がスプリットドライブギヤ81、及びスプリットドリブンギヤ82を介して遊星歯車機構35のキャリヤ72に伝達可能になり、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが切り離される。
【0054】
入力軸31に入力される動力は、スプリットドライブギヤ81からスプリットドリブンギヤ82を介して遊星歯車機構35のキャリヤ72に増速されて伝達される。キャリヤ72に伝達される動力は、キャリヤ72からサンギヤ71、及びリングギヤ73に分割して伝達される。サンギヤ71の動力は、セカンダリ軸42、セカンダリプーリ44、ベルト45、プライマリプーリ43、及びプライマリ軸41を介してプライマリ軸ギヤ62に伝達され、プライマリ軸ギヤ62から入力軸ギヤ61に伝達される。そのため、ベルトモードでは、入力軸ギヤ61が駆動ギヤとなり、プライマリ軸ギヤ62が被動ギヤとなるのに対し、スプリットモードでは、プライマリ軸ギヤ62が駆動ギヤとなり、入力軸ギヤ61が被動ギヤとなる。
【0055】
スプリットドライブギヤ81とスプリットドリブンギヤ82とのギヤ比は一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、入力軸31に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構35のキャリヤ72の回転が一定速度に保持される。そのため、プーリ比が上げられると、遊星歯車機構35のサンギヤ71の回転数が下がるので、図3に破線で示されるように、遊星歯車機構35のリングギヤ73(出力軸32)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、図4に示されるように、ベルト変速機構33のプーリ比が大きいほど、変速機4の減速比が小さくなり、プーリ比に対する減速比の感度(プーリ比の変化量に対する減速比の変化量の割合)がベルトモードと比べて低い。
【0056】
ベルトモード、及びスプリットモードにおける出力軸32の回転は、出力ギヤ37を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト6L,6R、及び駆動輪7L,7Rが前進方向に回転する。
【0057】
なお、シフトレバーがDポジション、Sポジション、又はBポジションのいずれに位置する状態であっても、前進レンジでは、変速比を自動的かつ連続的に無段階で変化させる変速制御が行われる。ただし、シフトレバーがSポジションに位置する状態(Sレンジ)では、シフトレバーがDポジションに位置する状態(Dレンジ)と比較して、エンジン回転数が高めに維持されるように変速比が変更される。これにより、Sレンジでは、Dレンジと比較して、運転者がスポーティな走行を楽しむことができ、また、減速時に強いエンジンブレーキが得られる。シフトレバーがBポジションに位置する状態(Bレンジ)では、Sレンジよりもエンジン回転数がさらに高めに維持されるように変速比が変更され、減速時にSレンジよりもさらに強いエンジンブレーキが得られる。
【0058】
シフトレバーがRポジションに位置する状態では、変速機4の変速レンジの1つである後進レンジが構成される。後進レンジでは、図2に示されるように、クラッチC1,C2が解放され、ブレーキB1が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ81が入力軸31から切り離され、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが切り離され、遊星歯車機構35のキャリヤ72が制動される。
【0059】
入力軸31に入力される動力は、前減速機構34により逆転かつ減速されて、ベルト変速機構33のプライマリ軸41に伝達され、プライマリ軸41からプライマリプーリ43、ベルト45、及びセカンダリプーリ44を介してセカンダリ軸42に伝達され、セカンダリ軸42と一体に、遊星歯車機構35のサンギヤ71を回転させる。遊星歯車機構35のキャリヤ72が制動されているので、サンギヤ71が回転すると、遊星歯車機構35のリングギヤ73がサンギヤ71と逆方向に回転する。このリングギヤ73の回転方向は、前進時(ベルトモード、及びスプリットモード)におけるリングギヤ73の回転方向と逆方向となる。そして、リングギヤ73と一体に、出力軸32が回転する。出力軸32の回転は、出力ギヤ37を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト6L,6R、及び駆動輪7L,7Rが後進方向に回転する。
【0060】
≪車両の制御系≫
図5は、車両1の制御系の構成を示すブロック図である。
【0061】
車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU91(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が制御装置として備えられている。マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。図5には、1つのECU91のみが示されているが、車両1には、各部を制御するため、ECU91と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU91を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0062】
ECU91は、エンジン2の始動、停止、及び出力調整などのため、エンジン2に設けられた電子スロットルバルブ、インジェクタ、及び点火プラグなどを制御する。また、トルクコンバータ3のロックアップ制御、及び変速機4の変速制御などのため、トルクコンバータ3、及び変速機4を含むユニットの各部に油圧を供給するための油圧回路92に含まれる各種のバルブを制御する。
【0063】
ECU91には、その制御に必要な各種センサが接続されている。一例として、ECU91には、トルクコンバータ3のタービンランナ23の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するタービン回転センサ93と、プライマリ軸41の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するプライマリ回転センサ94と、セカンダリ軸42の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するセカンダリ回転センサ95と、出力軸32の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するアウトプット回転センサ96と、運転者により操作されるアクセルペダル(図示せず)の操作量に応じた検出信号を出力するアクセルセンサ97とが接続されている。
【0064】
ECU91では、タービン回転センサ93、プライマリ回転センサ94、セカンダリ回転センサ95およびアウトプット回転センサ96の各検出信号から、タービンランナ23の回転数であるタービン回転数、プライマリ軸41(プライマリプーリ43)の回転数であるプライマリ回転数、セカンダリ軸42(セカンダリプーリ44)の回転数であるセカンダリ回転数、および出力軸32の回転数であるアウトプット回転数が取得される。また、ECU91では、アクセルセンサ97の検出信号から、アクセルペダルの最大操作量に対する操作量の割合、つまりアクセルペダルが踏み込まれていないときを0%とし、アクセルペダルが最大に踏み込まれたときを100%とする百分率であるアクセル開度が求められる。
【0065】
なお、タービン回転センサ93、プライマリ回転センサ94、セカンダリ回転センサ95、アウトプット回転センサ96およびアクセルセンサ97の一部は、他のECUに接続されて、その一部のセンサから取得される情報は、他のECUから受信してもよい。
【0066】
≪変速制御≫
変速機4のトータル変速比は、ECU91によるプーリ比の変更ならびにクラッチC1,C2及びブレーキB1の係合/解放により制御される。この変速制御では、まず、変速線図に基づいて、アクセル開度及び車速に応じた目標回転数が設定される。変速線図は、アクセル開度及び車速と目標回転数との関係を定めたマップであり、ECU91のROMに格納されている。車速の情報は、たとえば、エンジン2を制御するエンジンECUからECU91に送信される。目標回転数が設定されると、入力軸31に入力される回転数、つまりタービン回転数を目標回転数に一致させるトータル変速比の目標が求められ、その目標に応じたプーリ比の目標が設定される。
【0067】
その後、プーリ比の目標に基づいて、プライマリプーリ43の可動シーブ52に供給される油圧であるプライマリ圧及びセカンダリプーリ44の可動シーブ56に供給される油圧であるセカンダリ圧の指令値が設定され、各指令値に基づいて、プーリ比の目標と実プーリ比との偏差が零に近づくように、プライマリ圧及びセカンダリ圧が制御される。実プーリ比は、プライマリ回転数をセカンダリ回転数で除することにより求められる。
【0068】
トータル変速比がスプリットドライブギヤ81とスプリットドリブンギヤ82とのギヤ比に等しいスプリット点(スプリット変速比)を跨いで変更される場合、そのトータル変速比の変更には、ベルトモードとスプリットモードとの切り替え(以下、単に「モード切替」という。)が伴う。モード切替は、クラッチC1,C2の係合を切り替える制御(クラッチツークラッチ制御)により達成される。すなわち、クラッチC1,C2に供給される油圧の制御により、解放状態のクラッチC1(係合側)が係合され、係合状態のクラッチC2(解放側)が解放されることにより、ベルトモードからスプリットモードに切り替えられる。逆に、係合状態のクラッチC1(解放側)が解放され、解放状態のクラッチC2(係合側)が係合されることにより、スプリットモードからベルトモードに切り替えられる。
【0069】
ここで、トータル変速比がスプリット点(スプリット変速比)からずれている状態では、出力軸32とセカンダリ軸42とに差回転が生じており、タービン回転数(=入力軸31の回転数)とアウトプット回転数にプーリ比を乗じて計算される同期回転数とに差が生じている。
【0070】
この状態で運転者によりアクセルペダルが素早くかつ大きく踏み込まれる等して、ダウンシフト要求(キックダウン要求)が発生すると、これに応じて、係合状態のクラッチC1に供給される油圧が低減される。この油圧の低減により、クラッチC1の伝達トルク容量が低下し、その伝達トルク容量が入力トルクを下回ると、クラッチC1が半クラッチ状態となって、クラッチC1に滑りが発生し、運転者のキックダウン要求に応じた目標変化率でタービン回転数が上昇し始める。
【0071】
その後、タービン回転数が同期回転数を超えるタイミングで、プーリ比の目標のダウンシフト方向への変更が開始される。これに応じて、実際のプーリ比がダウンシフト方向に変速すると、その変速に伴って同期回転数が上昇する。
【0072】
ここで、本実施形態の変速システムSに係る変速制御においては、スプリット点モード切替処理、あるいは非スプリット点モード切替処理により、スプリットモードからベルトモードへのモード切替を行う処理を行うことができる。スプリット点モード切替処理(一点切替処理)は、図6(a)に示すように、トータル変速比をスプリット点(スプリット変速比)まで低下させた状態において、クラッチツークラッチ制御により、スプリットモードからベルトモードへのモード切替を行う処理である。これに対し、非スプリット点モード切替処理は、図6(b)に示すように、トータル変速比をスプリット点(スプリット変速比)まで低下させることなく、トータル変速比がスプリット点と一致しない状態において、クラッチツークラッチ制御によってスプリットモードからベルトモードへのモード切替を行う処理である。スプリット点モード切替処理がスプリット点(スプリット変速比)を経るようにトータル変速比を変化させてモード切替を行う処理であるのに対し、非スプリット点モード切替処理は、スプリット点(スプリット変速比)を経ることなく、スプリット点(スプリット変速比)よりも高い変速比においてモード切替を行う処理である点において相違している。
【0073】
本実施形態の変速システムSは、上述した非スプリット点モード切替処理の実行可否を判断するための判定(非スプリット点モード切替判定)がECU91により実行される。ECU91は、非スプリット点モード切替を許可する判定(許可判定)がなされることを条件として、非スプリット点モード切替処理によるモード切替を実行する。一方、ECU91は、非スプリット点モード切替を許可しない判定(禁止判定)がなされることを条件として、非スプリット点モード切替処理ではなく、スプリット点モード切替処理によるモード切替を実行する。
【0074】
具体的には、ECU91は、非スプリット点モード切替判定に際して、アクセル開度に応じて設定されるタービン回転数(=入力軸31への入力軸回転数)の目標変化率と、クラッチツークラッチ制御によりクラッチC1の解放、及びクラッチC2の係合により非スプリット点モード切替処理を実行するのに要する時間(切替時間)とに基づいて回転数の増加数の予測値(増加予測回転数Rs)を導出する。すなわち、タービン回転数(入力軸回転数)の目標変化率をC、切替時間をtとした場合、ECU91は、Rs=C×tとして増加予測回転数Rsを導出する(図7参照)。
【0075】
また、図7に示すように、ECU91は、第一モードへの切り替え後における目標タービン回転数(目標入力軸回転数Ng)と、第一モードへの切り替え時におけるタービン回転数(入力軸回転数)である切替時入力軸回転数Nsとの差(Ng-Ns)を差回転数Rdとして導出する。
【0076】
切替時入力軸回転数Nsは、アウトプット回転センサ96の検出信号に基づいて取得される出力軸32の回転数であるアウトプット回転数Noutと、モード切替時におけるプーリ比γとに基づいて、ECU91により導出される。本実施形態では、前減速機構34が設けられていることから、ECU91は、前減速機構34における前減速比αを加味して、切替時入力軸回転数を導出する。具体的には、ECU91は、Ns=Nout×α×γとして、切替時入力軸回転数Nsを導出する。
【0077】
ECU91は、上述したようにして導出した切替時入力軸回転数Nsに基づいて差回転数Rdを導出すると共に、上述した数式に基づいて導出された増加予測回転数Rsと、差回転数Rdとを比較する。増加予測回転数Rsが差回転数Rdよりも小さい場合(Rs<Rd)には、クラッチC1,C2を切り替えによりクラッチツークラッチ制御を実行しても、ふきあがりが発生する可能性が低く、モード切替に伴うショックが発生する可能性も低い。そのため、ECU91は、増加予測回転数Rsが差回転数Rdよりも小さい場合に、クラッチツークラッチ制御を許可する判定(許可判定)を行う。一方、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きい場合(Rs>Rd)には、クラッチC1,C2を切り替えによりクラッチツークラッチ制御を実行すると、ふきあがりが発生してショックが発生する可能性がある。そのため、非スプリット点モード切替判定においてECU91は、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きい場合に、クラッチツークラッチ制御の実行を許可しない判定(禁止判定)を行う。
【0078】
上述したECU91による非スプリット点モード切替判定は、図8に示したフローに則って実行される。以下、図8を参照しつつ、具体的に説明する。
【0079】
(ステップ1)
ステップ1において、ECU91は、トータル変速比がスプリット点からずれている状態において、スプリットモードからベルトモードへのモード切替の実行要求が発生しているか否かについて確認する。ここで、トータル変速比がスプリット点からずれている状態においてモード切替の実行要求が発生していることが確認されると、制御フローは、ステップ2に進められる。
【0080】
(ステップ2)
ステップ2において、ECU91は、増加予測回転数Rsを導出する。具体的には、ECU91は、上述したように、アクセル開度に応じて設定されるタービン回転数の目標変化率Cと、切替時間tとを乗じることにより、増加予測回転数Rs(Rs=C×t)を導出する。その後、制御フローは、ステップ3に進められる。
【0081】
(ステップ3)
ステップ3において、ECU91は、切替時入力軸回転数Nsを導出する。具体的には、ECU91は、上述したように、アウトプット回転数Noutと、プーリ比γと、前減速機構34における前減速比αとを乗じることにより、切替時入力軸回転数Ns(Ns=Nout×α×γ)を導出する。その後、制御フローは、ステップ4に進められる。
【0082】
(ステップ4)
ステップ4において、ECU91は、目標入力軸回転数Ngと、ステップ3において導出した切替時入力軸回転数Nsとの差(Ng-Ns)から、差回転数Rdを導出する。その後、制御フローは、ステップ5に進められる。
【0083】
(ステップ5)
ステップ5において、ECU91は、上述したステップ2において導出した増加予測回転数Rsと、ステップ4において導出した差回転数Rdとの大きさを比較する。その結果、増加予測回転数Rsが差回転数Rdよりも小さい場合(ステップ5におけるYESの場合)には、制御フローがステップ6に進められる。一方、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きい場合(ステップ5におけるNoの場合)には、制御フローがステップ8に進められる。
【0084】
(ステップ6)
制御フローがステップ5からステップ6に進んだ場合には、増加予測回転数Rsが差回転数Rdよりも小さいため、トータル変速比がスプリット点(スプリット変速比)と一致しない状態のまま、クラッチツークラッチ制御によりクラッチC1,C2を切り替えて非スプリット点モード切替処理を実行しても、ふきあがりが発生する可能性が低く、モード切替に伴うショックが発生する可能性も低い。そのため、ECU91は、非スプリット点モード切替処理を許可する判定(許可判定)を行う。その後、制御フローは、ステップ7に進められる。
【0085】
(ステップ7)
制御フローがステップ7に進むと、ECU91は、非スプリット点モード切替処理により、スプリットモードからベルトモードにモードを切り替える処理を実行する。すなわち、ECU91は、トータル変速比をスプリット点(スプリット変速比)まで低下させることなく、トータル変速比がスプリット点と一致しない状態のまま、クラッチツークラッチ制御によってスプリットモードからベルトモードへのモード切替を行う。
【0086】
(ステップ8)
一方、制御フローがステップ5からステップ8に進んだ場合には、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きいため、クラッチツークラッチ制御によりクラッチC1,C2を切り替えて非スプリット点モード切替処理を実行すると、ふきあがりが発生し、モード切替に伴うショックが発生する可能性が高い。そのため、ECU91は、非スプリット点モード切替処理を禁止する判定(禁止判定)を行う。その後、制御フローは、ステップ9に進められる。
【0087】
(ステップ9)
制御フローがステップ9に進むと、ECU91は、スプリット点モード切替処理により、スプリットモードからベルトモードにモードを切り替える処理を実行する。すなわち、ECU91は、トータル変速比をスプリット点(スプリット変速比)まで低下させ、プーリ比をスプリット点(スプリット変速比)と一致させた状態において、クラッチツークラッチ制御によってスプリットモードからベルトモードへのモード切替を行う。
【0088】
≪作用効果≫
上述した本実施形態の変速機4のECU91(制御装置)は、以下の(a)~(e)のような特徴的構成を備えている。これにより、変速機4のECU91は、以下に記載のような特有の効果を奏することができる。
【0089】
(a)本実施形態のECU91(制御装置)は、入力軸31と出力軸32との間の第一動力伝達経路上に介在されるクラッチC1(第一係合要素)と、入力軸31と出力軸32との間の第二動力伝達経路に介在されるクラッチC2(第二係合要素)とを備え、第二動力伝達経路上にベルト変速機構33を有し、クラッチC1の解放およびクラッチC2の係合により、ベルト変速機構33によるプーリ比γが大きいほど入力軸31と出力軸32との間でのトータル変速比が大きくなるベルトモード(第一モード)となり、クラッチC1の係合およびクラッチC2の解放により、プーリ比γが大きいほどトータル変速比が小さくなるスプリットモード(第二モード)となり、トータル変速比が所定のスプリット変速比であるときに、クラッチC1およびクラッチC2に差回転が生じないように構成された変速機4を制御するECU91であって、トータル変速比の目標を目標トータル変速比として設定する目標トータル変速比設定部と、目標トータル変速比設定部により設定される目標トータル変速比に基づいて、プーリ比γを変更するプーリ比変更部と、スプリットモードで目標トータル変速比設定部により設定される目標トータル変速比がスプリット変速比よりも大きいことを条件として、トータル変速比がスプリット変速比と一致しない状態において、クラッチC1を解放させ、クラッチC2を係合させることによりスプリットモードからベルトモードへと切り替える非スプリット点モード切替処理を行う切替制御部と、非スプリット点モード切替処理の実行可否を判定する判定部と、を有し、判定部が、アクセル開度に応じて設定される入力軸回転数の目標変化率Cと、非スプリット点モード切替処理においてクラッチC1の解放及びクラッチC2の係合に要する切替時間tと、に基づいて導出される増加予測回転数Rsと、ベルトモードへの切り替え後における目標入力軸回転数Ngと、ベルトモードへの切り替え時における入力軸回転数である切替時入力軸回転数Nsとの差に基づいて導出される差回転数Rdと、を導出し、増加予測回転数Rsが差回転数Rdよりも小さいことを条件として、非スプリット点モード切替処理の実行を許可する判定を行うこと、を特徴とするものである。
【0090】
本実施形態のECU91は、トータル変速比がスプリット変速比と一致しない状態においてスプリットモードからベルトモードへと切り替える非スプリット点モード切替処理の許否を判定する処理において、入力軸回転数の目標変化率Cと、クラッチC1の解放及びクラッチC2の係合に要する切替時間tとに基づいて回転数の増加予測回転数Rsを導出する。また、本実施形態のECU91は、ベルトモードへの切り替え後における目標入力軸回転数Ngと、ベルトモードへの切り替え時における入力軸回転数(切替時入力軸回転数Ns)との差に基づいて差回転数Rdを導出する。このようにして導出された増加予測回転数Rsが差回転数Rdよりも小さい場合には、非スプリット点モード切替処理を実行しても、ふきあがりが発生せず、スプリットモードからベルトモードへのモード切り替えに伴うショックを最小限に抑制できる。本実施形態のECU91は、かかる知見に基づき、増加予測回転数Rsが差回転数Rdよりも小さい場合に、非スプリット点モード切替処理の実行を許可するものとされている。従って、本実施形態のECU91は、アクセル開度が高開度である状態に限定されることなく、ショックを抑制可能な状況において非スプリット点モード切替処理によってスプリットモードからベルトモードへの切り替えを実行することができる。
【0091】
(b)本実施形態のECU91は、切替時入力軸回転数Nsが、出力軸32のアウトプット回転数Noutと、プーリ比γと、に基づいて導出されるものであると良い。
【0092】
本実施形態のECU91は、上記(b)のような構成とすることにより、出力軸32のアウトプット回転数Nout、及びプーリ比γに基づいて適切に切替時入力軸回転数Nsを導出できる。これにより、本実施形態のECU91は、非スプリット点モード切替処理の実行に係る許可判定を適確に行うことができる。
【0093】
(c)本実施形態のECU91は、入力軸31に入力される動力を減速させた状態でベルト変速機構33に向けて出力する前減速機構34を備えており、切替時入力軸回転数Nsが、前減速機構34における前減速比α、出力軸32のアウトプット回転数Nout、及びプーリ比γに基づいて導出されるものであると良い。
【0094】
本実施形態のECU91は、上記(c)のような構成とすることにより、出力軸32のアウトプット回転数Nout、及びプーリ比γに加えて、前減速機構34における前減速比αを加味して適切に切替時入力軸回転数Nsを導出できる。これにより、本実施形態のECU91は、前減速機構34を設けた構成とした場合において、非スプリット点モード切替処理の実行に係る許可判定を適確に行うことができる。
【0095】
(d)本実施形態のECU91は、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きいことを条件として、判定部が、非スプリット点モード切替処理を禁止する判定を行うものであると良い。
【0096】
本実施形態のECU91は、上記(d)のような構成とすることにより、非スプリット点モード切替処理を行うことによりふきあがりが発生するのを抑制できる。これにより、本実施形態のECU91は、スプリットモードからベルトモードへのモード切り替えに伴う大きなショックが発生してしまうのを抑制できる。
【0097】
(e)本実施形態のECU91は、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きいことを条件として、トータル変速比がスプリット変速比と一致する状態において、クラッチC1を解放させ、クラッチC2を係合させることによりスプリットモードからベルトモードへと切り替えるスプリット点モード切替処理を行うものであると良い。
【0098】
本実施形態のECU91は、上記(e)のような構成とすることにより、非スプリット点モード切替処理を行うことでふきあがりや、大きなショックの発生が懸念される場合において、非スプリット点モード切替処理ではなくスプリット点モード切替処理によりモード切替を行うことができる。これにより、本実施形態のECU91は、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きい条件下においても、ふきあがりや、大きなショックが発生するのを抑制しつつ、スプリットモードからベルトモードへのモード切り替えを行うことができる。
【0099】
≪変形例≫
上記実施形態において例示した変速機4のECU91は本発明の一例を示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、例えば上述した(a)~(e)に係る構成を上記実施形態において例示したものとは異なるものとすることが可能である。また、変速機4のECU91は、上述した(a)~(e)に含まれる構成に加えて、あるいは(a)~(e)に含まれる構成に代えて他の構成を備えたものとしたり、一部の構成を省略した構成としたりしても良い。具体的には、以下に説明するような変形例が考えられる。
【0100】
本実施形態では、エンジン2を駆動源として駆動力が変速機4に入力される例を示したが、本発明はこれに限定されず、エンジン2に加えて、あるいはエンジン2に代えてモータ等の駆動源からの動力を受けて動作するものとしても良い。
【0101】
本実施形態では、上記(b)のように、切替時入力軸回転数Nsについて、出力軸32のアウトプット回転数Noutと、プーリ比γとを乗じて導出する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、アウトプット回転数Noutや、プーリ比γに加えて、あるいはこれらの要素に代えて、他の要素を加味して切替時入力軸回転数Nsを導出するようにしても良い。
【0102】
本実施形態では、上記(c)のように、変速機4が前減速機構34を備えたものであることから、出力軸32のアウトプット回転数Nout、及びプーリ比γに加えて、前減速機構34における前減速比αを加味して切替時入力軸回転数Nsを導出するものとした例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、変速機4が前減速機構34を備えていない場合には、切替時入力軸回転数Nsの導出に際して、前減速比αを加味する必要はない。
【0103】
本実施形態では、上記(d)のように、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きい場合に、判定部が、非スプリット点モード切替処理を禁止する判定(禁止判定)を行うものを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ECU91は、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きい場合に直ちに禁止判定を行うのではなく、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きいという条件に加えて、他の条件を満足する場合に、非スプリット点モード切替処理を禁止する判定を行うもの等とすることができる。
【0104】
本実施形態では、上記(e)のように、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きいことを条件として、スプリット点モード切替処理を行うものを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ECU91は、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きいことを条件として、スプリット点モード切替処理以外の処理方法により、モード切替処理を行うものとしたり、増加予測回転数Rsが差回転数Rdより大きいことを条件としてモード切替を行わないものとしたりすることが可能である。
【0105】
また、本実施形態では、ECU91により、エンジン2ならびにトルクコンバータ3、及びCVT4の油圧回路92が制御される例を示したが、エンジン2とトルクコンバータ3、及び変速機4の油圧回路92とは、別々のECUによって制御されるものとしても良い。
【0106】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素又は課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正又は分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、いわゆる動力分割式変速機構を備えた変速システム全般において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
4 :変速機
31 :入力軸
32 :出力軸
33 :ベルト変速機構
34 :前減速機構
91 :ECU
C :目標変化率
C1 :クラッチ
C2 :クラッチ
Ng :目標入力軸回転数
Nout :アウトプット回転数
Ns :切替時入力軸回転数
Rd :差回転数
Rs :増加予測回転数
t :切替時間
α :前減速比
γ :プーリ比
図1
図2
図3
図4
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図8