(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134822
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20240927BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045214
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常盤 祐二
(72)【発明者】
【氏名】武本 一隆
(72)【発明者】
【氏名】大槻 慧
(72)【発明者】
【氏名】福田 修也
(72)【発明者】
【氏名】清水 昇明
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EB00
3B084EC01
3B084HA00
3B087BD03
3B087DB03
3B087DB04
(57)【要約】
【課題】座り心地が担保された状態で着座者の仙骨部を支持することが可能な車両用シートを得る。
【解決手段】シート上下に配置された2本のワイヤ80、ワイヤ82によって着座者Pの仙骨部を支持する。これにより、1本の線材によって着座者Pの仙骨部を支持する場合と比較して着座者Pの仙骨部を支持する支持力を向上させることができる。また、ワイヤ82は、片持ち状に支持されている。このため、例えば、ワイヤ82が両持ち支持された場合と比較して、ワイヤ82は、上端部に形成されたフック部80Cを中心に撓み変形可能となる。このように、ワイヤ82が撓み変形することで当該支持力を緩和することが可能となる。すなわち、着座者Pの骨盤の倒れを抑制すると共に座り心地を担保することが可能となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに着座した着座者の上体を支持するシートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、
前記シートバックフレームのシート幅方向の両側に設けられた一対のサイドフレーム間に配置され、前記着座者の仙骨部を支持する第1線材と、
前記第1線材とシート上下に配置され、片持ち状に支持されて当該第1線材と共に前記着座者の仙骨部を支持する第2線材と、
を備えている車両用シート。
【請求項2】
前記第1線材は、前記一対のサイドフレーム間に架け渡された支持部材に対して片持ち状に支持されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第2線材は、前記第1線材に対して片持ち状に支持されている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記第2線材は、前記第1線材のシート上下方向の上方側に配置されている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記第1線材においてシート前後方向の前方側へ向かって突出し前記着座者の仙骨部を支持する第1突出部と、
前記第2線材におけるシート幅方向の中央部において、前記第1突出部よりもシート幅方向の内側でシート前後方向の前方側へ向かって突出し当該第1突出部に対して略平行に配置され、前記着座者の仙骨部を支持する第2突出部と、
をさらに備えている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記第2突出部はシート前後方向の前方側へ向かうにつれてシート上下方向の下方側へ向かって傾斜している請求項5に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートバックフレームのシート幅方向の両側に設けられた一対のサイドフレームに対して、着座者の仙骨部を支持する仙骨支持部材が架け渡された技術が開示されている。この仙骨支持部材により、着座者の骨盤が安定し、着座姿勢が崩れにくくなるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術では、仙骨支持部材を設けることで、着座者の仙骨部に対して当該仙骨支持部材が間接的に当接し、着座者の腰部がシート前後方向の後方側へ入り過ぎないようにすることで骨盤の倒れを抑制し、着座者の着座姿勢が維持される。その一方で、着座者の骨盤の倒れを抑制するため、仙骨支持部材による支持力が強い場合、座り心地が悪化する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、座り心地が担保された状態で着座者の仙骨部を支持することが可能な車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る車両用シートは、シートクッションに着座した着座者の上体を支持するシートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、前記シートバックフレームのシート幅方向の両側に設けられた一対のサイドフレーム間に配置され、前記着座者の仙骨部を支持する第1線材と、前記第1線材とシート上下に配置され、片持ち状に支持されて当該第1線材と共に前記着座者の仙骨部を支持する第2線材と、を備えている。
【0007】
第1の態様に係る車両用シートでは、シートバックフレームと、第1線材と、第2線材と、を備えている。シートバックフレームは、シートクッションに着座した着座者の上体を支持するシートバックの骨格を構成しており、当該シートバックフレームのシート幅方向の両側には、一対のサイドフレームが設けられている。
【0008】
第1線材は、この一対のサイドフレーム間に配置されており、着座者の仙骨部を支持するように設定されている。また、第2線材は、第1線材とシート上下に配置されており、片持ち状に支持されて第1線材と共に着座者の仙骨部を支持するように設定されている。
【0009】
このように、本態様では、シート上下に配置された2本の線材によって着座者の仙骨部を支持するため、例えば、1本の線材によって着座者の仙骨部を支持する場合と比較して着座者の仙骨部を支持する支持力を向上させることができる。つまり、着座者の仙骨部を安定して支持することが可能となる。
【0010】
また、本態様では、シート上下に配置された2本の線材によって着座者の仙骨部を支持するため、1本の線材によって着座者の仙骨部を支持する場合と比較して、当該2本の線材によって着座者が線材から受ける反力を分散させることができる。これにより、着座者にとって、仙骨部を支持する支持力が強すぎる(硬すぎる)ことを抑制し、線材による仙骨部の支持力を緩和して座り心地を向上させることができる。
【0011】
また、本態様では、第2線材は、片持ち状に支持されている。このため、例えば、第2線材が両持ち支持された場合と比較して、本態様では、第2線材の支持部を中心に当該第2線材が撓み変形可能となる。つまり、本態様では、第2線材において、所定値以上の外力が作用すると撓み変形し、これにより、第2線材による反力を低減させることが可能となる。
【0012】
このように、本態様では、第1線材及び第2線材により、着座者の仙骨部を支持する支持力を向上させると共に支持力を緩和することによって、着座者の骨盤の倒れを抑制すると共に座り心地を担保することが可能となる。
【0013】
第2の態様に係る車両用シートは、第1の態様に係る車両用シートにおいて、前記第1線材は、前記一対のサイドフレーム間に架け渡された支持部材に対して片持ち状に支持されている。
【0014】
第2の態様に係る車両用シートでは、第1線材は、一対のサイドフレーム間に架け渡された支持部材に対して片持ち状に支持されており、第1線材が支持部を中心に撓み変形可能となる。したがって、本態様では、第2線材に加え、第1線材が撓み変形する分、第1線材、第2線材のそれぞれにおいて支持力をより緩和することが可能となる。
【0015】
第3の態様に係る車両用シートは、第1の態様又は第2の態様に係る車両用シートにおいて、前記第2線材は、前記第1線材に対して片持ち状に支持されている。
【0016】
第3の態様に係る車両用シートでは、第2線材は、第1線材に対して片持ち状に支持されているため、第2線材が撓み変形するためには、第1線材から反力を受ける必要がある。このため、第2線材よりも第1線材の剛性が高くなるように設定される。つまり、第2線材は、第1線材よりも支持力を緩和することが可能となる。
【0017】
第4の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記第2線材は前記第1線材のシート上下方向の上方側に配置されている。
【0018】
第4の態様に係る車両用シートでは、第2線材は第1線材のシート上下方向の上方側に配置されている。つまり、第2線材によって着座者の仙骨部の上部側が支持され、第1線材によって着座者の仙骨部の下部側が支持可能とされる。
【0019】
ここで、第2線材は第1線材に対して片持ち状に支持されているため、第2線材は第1線材よりも剛性は低くなっている。第1線材及び第2線材によって、着座者の仙骨部は支持され、第2線材は第1線材のシート上下方向の上方側に配置されているため、第1線材は第2線材よりも着座者のヒップポイント側に配置される。
【0020】
すなわち、本態様では、剛性が高い第1線材をヒップポイント側に配置することによって、着座者の骨盤の倒れをより確実に抑制することが可能となる。
【0021】
第5の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記第1線材において、シート前後方向の前方側へ向かって突出し前記着座者の仙骨部を支持する第1突出部と、前記第2線材におけるシート幅方向の中央部において、前記第1突出部よりもシート幅方向の内側でシート前後方向の前方側へ向かって突出し当該第1突出部に対して略平行に配置され、前記着座者の仙骨部を支持する第2突出部と、をさらに備えている。
【0022】
第5の態様に係る車両用シートでは、第1突出部と、第2突出部と、をさらに備えている。第1突出部は、第1線材に設けられており、シート前後方向の前方側へ向かって突出し、着座者の仙骨部を支持するように設定されている。
【0023】
また、第2突出部は、第2線材におけるシート幅方向の中央部に設けられており、第1突出部よりもシート幅方向の内側でシート前後方向の前方側へ向かって突出し、当該第1突出部に対して略平行に配置されて着座者の仙骨部を支持するように設定されている。
【0024】
当該第1突出部は第1線材に設けられ、第2突出部は第2線材におけるシート幅方向の中央部に設けられている。シート幅方向の中央部にシート前後方向の前方側へ向かって突出する第2突出部を設けることによって、例えば、第2突出部がシート幅方向の全域に亘って設けられた場合と比較して、第2線材の剛性を向上させることが可能となる。
【0025】
第1突出部、第2突出部は、それぞれ着座者の仙骨部を支持するように設定されているため、剛性を向上させることによって、着座者の仙骨部を支持する支持力を向上させることが可能となる。
【0026】
第6の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第5の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記第2突出部はシート前後方向の前方側へ向かうにつれてシート上下方向の下方側へ向かって傾斜している。
【0027】
第6の態様に係る車両用シートでは、第2突出部がシート前後方向の前方側へ向かうにつれてシート上下方向の下方側へ向かって傾斜することによって、例えば、第2突出部がシート前後方向の前方側へ向かうにつれてシート上下方向の上方側へ向かって傾斜する場合と比較して、着座者に対する反力が高くなり過ぎないようにすることができる。これにより、座り心地が担保されるようにしている。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、座り心地が担保された状態で着座者の仙骨部を支持することが可能な車両用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施の形態に係る車両用シートのシートバックの骨格を示す正面図である。
【
図2】
図1において要部が拡大された要部拡大図である。
【
図3】本実施の形態に係る車両用シートのシートバックの要部を拡大して右斜め前方側から見た要部拡大斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係る車両用シートのシートバックの作用を説明するための側面図である。
【
図5】
図4において要部が拡大された要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、図中矢印FRはシート前後方向の前方向を示し、矢印UPはシート上下方向の上方向を示し、矢印RHはシート幅方向の右方向を示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート幅方向の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。
【0031】
(車両用シートの構成)
まず、本実施形態の形態に係る車両用シートの構成について説明する。
【0032】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シートは、フロントシート(図示省略)よりも車両前後方向の後方側に配置されたリヤシート12である。このリヤシート12は、着座した乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、当該シートクッション14に着座した着座乗員の上体を支持可能なシートバック16と、当該着座乗員の頭部を支持可能なヘッドレスト18と、に大別されている。
【0033】
ここで、シートバック16は、車両10の荷室であるラゲージスペース20の前端を構成しており、車両右側に配置される右側シートバック部22と、車両左側に配置される左側シートバック部24と、右側シートバック部22と左側シートバック部24の間に設けられ車両幅方向の中央部に配置されるセンタシートバック部26と、を備えている。
【0034】
右側シートバック部22には、当該右側シートバック部22の骨格を成す右側シートバックフレーム部28が設けられており、左側シートバック部24には、当該左側シートバック部24の骨格を成す左側シートバックフレーム部30が設けられている。また、センタシートバック部26には、当該センタシートバック部26の骨格を成すセンタシートバックフレーム部32が設けられている。
【0035】
右側シートバックフレーム部28は、金属で形成されており、車両前後方向から見て枠状に形成されている。当該右側シートバックフレーム部28は、右側シートバック部22の高さ方向に延びる右側サイドフレーム部34、左側サイドフレーム部36と、当該右側サイドフレーム部34、左側サイドフレーム部36の上端部同士をシート幅方向に連結したアッパフレーム部38と、当該右側サイドフレーム部34、左側サイドフレーム部36の下端部同士をシート幅方向に連結したロアフレーム部40と、を含んで構成されている。
【0036】
また、右側シートバックフレーム部28におけるシート上下方向の略中央部には、右側サイドフレーム部34及び左側サイドフレーム部36を貫通する、例えば、円筒状を成す支持部材35が固定されている。なお、この支持部材35は、後述するセンタシートバック部26の右側サイドフレーム部50及び左側サイドフレーム部52を貫通し固定されている。
【0037】
一方、左側シートバックフレーム部30は、右側シートバックフレーム部28と同様に、金属で形成されており、車両前後方向から見て枠状に形成されている。当該左側シートバックフレーム部30は、左側シートバック部24の高さ方向に延びる右側サイドフレーム部42、左側サイドフレーム部44と、当該右側サイドフレーム部42と左側サイドフレーム部44の上端部同士を車両幅方向に連結したアッパフレーム部46と、右側サイドフレーム部42、左側サイドフレーム部44の下端部同士を車両幅方向に連結したロアフレーム部48と、を含んで構成されている。
【0038】
また、左側シートバックフレーム部30におけるシート上下方向の略中央部には、支持部材35の略同一軸線上に右側サイドフレーム部42及び左側サイドフレーム部44を貫通する、例えば、円筒状を成す支持部材43が固定されている。
【0039】
さらに、センタシートバック部26は、右側シートバック部22、左側シートバック部24と同様に、金属で形成されており、車両前後方向から見て枠状に形成されている。また、センタシートバック部26は、センタシートバック部26の高さ方向に延びる右側サイドフレーム部50、左側サイドフレーム部52と、当該右側サイドフレーム部50、左側サイドフレーム部52の上端部同士をシート幅方向に連結したアッパフレーム部54と、当該右側サイドフレーム部50、左側サイドフレーム部52の下端部同士を車両幅方向に連結したロアフレーム部56と、を含んで構成されている。
【0040】
ロアフレーム部40のシート幅方向の両端部には、シート上方側へ向かって起立する金属製の板状のブラケット58、60がそれぞれ設けられており、当該ブラケット58、60を介して、右側サイドフレーム部34、左側サイドフレーム部36がそれぞれ連結されている(連結部62、64)。
【0041】
また、ロアフレーム部48のシート幅方向の両端部にはシート上方側へ向かって起立する金属製の板状のブラケット66、68がそれぞれ設けられており、当該ブラケット66、68を介して、右側サイドフレーム部42、左側サイドフレーム部44がそれぞれ連結されている(連結部70、72)。なお、ブラケット66には、センタシートバック部26の左側サイドフレーム部52が連結されている(連結部74)。
【0042】
そして、右側シートバック部22、センタシートバック部26及び左側シートバック部24は、連結部62、64、74及び連結部70、72において、軸芯線Pを中心に回動可能とされており、それぞれ前倒可能とされている。なお、右側シートバック部22及びセンタシートバック部26は、軸芯線Pを中心に回動する際は、互いに連結された状態で一体となって回動する。
【0043】
本実施形態のリヤシート12は、一例として、6:4分割可倒式シートとして構成されている。但し、リヤシート12は、6:4分割割合に限定されるものではなく、例えば5:5分割可倒式シート、4:2:4分割可倒式シート等に適用されてもよい。
【0044】
また、センタシートバック部26は、軸芯線Pの上方側においてシート幅方向に沿って設けられたヒンジ部76を中心に回動可能とされ、前倒可能とされている。前倒された状態でセンタシートバック部26は、右側シートバック部22、左側シートバック部24に着座された着座乗員の肘等を支持するいわゆるアームレストとして機能する。
【0045】
ここで、本実施形態では、前述のように、左側シートバックフレーム部30におけるシート上下方向の略中央部には支持部材43が固定されており、支持部材43には、シートクッション14に着座した着座者の仙骨部を支持する仙骨支持部78が設けられている。
【0046】
なお、この仙骨支持部78は、右側シートバックフレーム部28にも設けられている。左側シートバックフレーム部30に設けられた仙骨支持部78と右側シートバックフレーム部28に設けられた仙骨支持部78は左右対称となっており、基本的な構成は略同じであるため、両者を代表して左側シートバックフレーム部30に設けられた仙骨支持部78について説明する。
【0047】
図2~
図4に示されるように、仙骨支持部78は、金属製のワイヤ(第1線材)80及びワイヤ(第2線材)82を含んで構成されている。ワイヤ82はワイヤ80のシート上方側に配置されている。つまり、ワイヤ82によって着座者Pの仙骨部の上部側が支持され、ワイヤ80によって着座者Pの仙骨部の下部側が支持可能とされる。
【0048】
ワイヤ80は、シート正面視でシート上方側を開口とする略U字状を成しており、シート左右に配置された一対の垂下部80A、80Bの上端部にはシート後方側かつシート下方側へ向かって湾曲するフック部80Cがそれぞれ形成されている。このフック部80Cが支持部材43にそれぞれ係止され溶接等により接合されている。つまり、ワイヤ80は、上端部に設けられたフック部80Cを介して片持ち状に固定され、フック部80Cを中心に撓み変形可能とされている。
【0049】
また、ワイヤ80は、シート平面視でシート後方側を開口する略U字状を成しており、垂下部80A、80Bの下端81を起点としてシート前方側へ向かって屈曲している。つまり、ワイヤ80の下端部には、シート前方側へ向かって突出する突出部(第1突出部)84が設けられており、突出部84の前端84Aはシート幅方向に沿って形成されている。
【0050】
一方、ワイヤ82は、シート平面視でシート後方側を開口とする略U字状を成しており、両端部にはシート幅方向沿って延在されたフランジ部82A、82Bがそれぞれ形成されている。当該ワイヤ82は、ワイヤ80の上方側に配置されており、フランジ部82Aはワイヤ80の垂下部80Aに対して溶接等により固定されている。また、フランジ部82Bは、先端部がシート上方側へ向かって屈曲している(屈曲部82B1)。
【0051】
ここで、左側シートバックフレーム部30の左側サイドフレーム部44には、シート幅方向の内側へ向かって張り出す台座44Aが形成されている。当該台座44Aは、シート正面視で略矩形状を成している。ワイヤ82のフランジ部82Bは、ワイヤ80の垂下部80Bに当接すると共に、当該屈曲部82B1が、台座44Aに対して当接し溶接等により固定されている。つまり、ワイヤ82は、ワイヤ80、左側サイドフレーム部44に対して片持ち状に固定されている。
【0052】
また、ワイヤ82には、シート幅方向の中央部において、シート平面視でシート後方側を開口する略U字状を成しシート前方側かつシート斜め下方側へ向かって突出する突出部(第2突出部)86が設けられており、突出部86の前端86Aはシート幅方向に沿って形成されている。
【0053】
ワイヤ82の突出部86は、ワイヤ80の突出部84のシート幅方向の内側に形成されており、突出部86の前端86Aは、突出部84の前端84Aよりもシート上方側に配置され、突出部86の前端86Aと突出部84の前端84Aは略平行に配置されている。そして、ワイヤ82の突出部86によって着座者Pの仙骨部の上部側が支持され、ワイヤ80の突出部84によって着座者Pの仙骨部の下部側が支持可能とされる。
【0054】
(車両用シートの作用及び効果)
次に、本実施形態の形態に係る車両用シートの作用及び効果について説明する。
【0055】
図2~
図4に示されるように、本実施形態に係る車両用シートとしてのリヤシート12では、ワイヤ80及びワイヤ82を含んで構成された仙骨支持部78が設けられている。
【0056】
ワイヤ80は、例えば、左側シートバックフレーム部30のシート幅方向の両側に設けられた右側サイドフレーム部42、左側サイドフレーム部44間に配置されており、着座者Pの仙骨部を支持するように設定されている。また、ワイヤ82は、ワイヤ80のシート上方側に配置されており、片持ち状に支持されてワイヤ80と共に着座者Pの仙骨部を支持するように設定されている。
【0057】
このように、本実施形態では、シート上下に配置された2本のワイヤ80、ワイヤ82によって着座者Pの仙骨部を支持するため、例えば、図示はしないが、1本の線材によって着座者Pの仙骨部を支持する場合と比較して着座者Pの仙骨部を支持する支持力を向上させることができる。つまり、着座者Pの仙骨部を安定して支持することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、2本のワイヤ80、ワイヤ82によって着座者Pの仙骨部を支持する。このため、本実施形態では、1本の線材によって着座者Pの仙骨部を支持する場合と比較して、ワイヤ80、ワイヤ82によって着座者Pが線材から受ける反力を分散させることができる。
【0059】
これにより、本実施形態では、着座者Pにとって、仙骨部を支持する支持力が強すぎることを抑制し、ワイヤ80、ワイヤ82による仙骨部の支持力を緩和して座り心地を向上させることができる。また、2本のワイヤ80、ワイヤ82によって着座者Pの仙骨部を支持することで、例えば、1本のワイヤで着座者Pの仙骨部を支持するいわゆる線状の支持と異なり、面状の支持となり着座者Pの骨盤の倒れをより抑制することが可能となる。
【0060】
ところで、本実施形態では、ワイヤ82は、片持ち状に支持されている。このため、例えば、図示はしないが、ワイヤ82が両持ち支持された場合と比較して、本実施形態では、ワイヤ82が支持部を中心に撓み変形可能となる。つまり、本実施形態では、ワイヤ82において、所定値以上の外力が作用すると撓み変形する。これにより、ワイヤ82による反力を低減させることが可能となり、ワイヤ82自体が有する支持力を緩和することが可能となる。
【0061】
このように、本実施形態では、ワイヤ80及びワイヤ82により、着座者Pの仙骨部を支持する支持力を向上させると共に支持力を緩和することによって、着座者Pの骨盤の倒れを抑制すると共に座り心地を担保することが可能となる。
【0062】
さらに、本実施形態では、ワイヤ80が、一対の右側サイドフレーム部42、左側サイドフレーム部44間に架け渡された支持部材43に対して片持ち状に支持されている。このため、当該ワイヤ80は、フック部80Cを中心に撓み変形可能となる。したがって、本実施形態では、ワイヤ82に加え、ワイヤ80が撓み変形する分、ワイヤ80、ワイヤ82のそれぞれにおいて支持力をより緩和することが可能となる。
【0063】
ここで、本実施形態では、ワイヤ82は、ワイヤ80に対して片持ち状に支持されている。このため、ワイヤ82が撓み変形するためには、ワイヤ80から反力を受ける必要がある。このため、ワイヤ82よりもワイヤ80の剛性が高くなるように設定される。つまり、本実施形態では、ワイヤ82は、ワイヤ80よりも支持力を緩和することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、ワイヤ82はワイヤ80のシート上方側に配置されている。ワイヤ82はワイヤ80に対して片持ち状に支持されているため、ワイヤ82はワイヤ80よりも剛性は低くなっている。ワイヤ80及びワイヤ82によって、着座者Pの仙骨部は支持され、ワイヤ82はワイヤ80のシート上方側に配置されているため、ワイヤ80はワイヤ82よりも着座者PのヒップポイントHP側に配置される。
【0065】
すなわち、
図4、
図5に示されるように、本実施形態では、剛性が高いワイヤ80をヒップポイントHP側に配置することによって、着座者Pの骨盤の倒れをより確実に抑制することが可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態では、突出部84及び突出部86をさらに備えている。
図3に示されるように、突出部84は、ワイヤ80に設けられており、シート前方側へ向かって突出し、着座者Pの仙骨部を支持するように設定されている。また、突出部86は、ワイヤ82におけるシート幅方向の中央部に設けられており、突出部84よりもシート幅方向の内側でシート前方側へ向かって突出し、当該突出部84に対して略平行に配置されて着座者Pの仙骨部を支持するように設定されている。
【0067】
当該突出部84はワイヤ80に設けられ、突出部86はワイヤ82におけるシート幅方向の中央部に設けられている。このように、シート幅方向の中央部にシート前方側へ向かって突出する突出部86を設けることによって、例えば、図示はしないが、突出部86がシート幅方向の全域に亘って設けられた場合と比較して、ワイヤ82の剛性を向上させることが可能となる。
【0068】
突出部84、突出部86は、それぞれ着座者Pの仙骨部を支持するように設定されているため、剛性を向上させることによって、着座者Pの仙骨部を支持する支持力を向上させることが可能となる。
【0069】
また、
図5に示されるように、本実施形態では、突出部86は、シート前方側へ向かうにつれてシート下方側へ向かって傾斜している。例えば、比較例として、図示はしないが、突出部86がシート前後方向の前方側へ向かうにつれてシート上下方向の上方側へ向かって傾斜する場合と比較して、着座者Pに対する反力が高くなり過ぎないようにすることができる。
【0070】
つまり、着座者Pの腰部が突出部86に当接し所定値以上の押圧力になったとき、着座者Pの荷重方向に沿ってワイヤ82が撓み変形し易くなっている。これにより、着座者Pに対して必要以上に反力が高くならないようにして、座り心地が担保されるようにしている。
【0071】
なお、本実施形態では、ワイヤ80及びワイヤ82が片持ち状に支持されているが、少なくともワイヤ80又はワイヤ82が片持ち状であればよい。
【0072】
また、本実施形態では、リヤシート12について説明したが、図示はしないが、フロントシートに適用されてもよい。
【0073】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
10 車両
12 リヤシート(車両用シ-ト)
14 シートクッション
16 シートバック
22 右側シートバック部
24 左側シートバック部
28 右側シートバックフレーム部(シートバックフレーム)
30 左側シートバックフレーム部(シートバックフレーム)
34 右側サイドフレーム部
35 支持部材
36 左側サイドフレーム部
42 右側サイドフレーム部
43 支持部材
44 左側サイドフレーム部
78 仙骨支持部
80 ワイヤ(第1線材)
82 ワイヤ(第2線材)
84 突出部(第1突出部)
86 突出部(第2突出部)
P 着座者