(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134824
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ワーク取り出し装置
(51)【国際特許分類】
B65G 59/02 20060101AFI20240927BHJP
B21D 43/24 20060101ALI20240927BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240927BHJP
B65G 59/10 20060101ALI20240927BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20240927BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20240927BHJP
B25J 9/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65G59/02 Z
B21D43/24 B
B25J13/08 A
B65G59/10
B25J15/00 F
B25J15/06 M
B25J9/16
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045220
(22)【出願日】2023-03-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】久田 桂司
(72)【発明者】
【氏名】小柴 健太
【テーマコード(参考)】
3C707
3F030
【Fターム(参考)】
3C707AS23
3C707BS10
3C707KT03
3C707KT05
3C707NS09
3F030AA00
3F030AA06
3F030BA02
3F030BB00
(57)【要約】
【課題】U字状断面を有する形状のワークであっても、より確実に1つずつ取り出し可能にすること。
【解決手段】ワーク積層体21から、複数個のワーク10を上から順に1つずつ取り出すワーク取り出し装置30である。前記ワーク10は、板面11tが上下方向を向いている少なくとも1つの第1板部11と、前記第1板部11から上下方向へ延びて板面12tが側方を向いている複数の第2板部12とによって、U字状断面に構成された部位を有する。前記ワーク取り出し装置30は、ロボットハンド33と、前記ロボットハンド33に設けられた吸着部40及び変形装置50を備えている。前記吸着部40は、前記第1板部11に吸着して持ち上げることが可能である。前記変形装置50は、前記複数の第2板部12の少なくとも1つを、前記第2板部12の板面方向Rtに弾性変形させることが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間をあけて上下方向に積み重ねられた複数個のワークによって、ワーク積層体が構成されており、
前記複数個のワークは、成形された板材によって構成されており、板面が上下方向を向いている少なくとも1つの第1板部と、前記第1板部から上下方向へ延びて板面が側方を向いている複数の第2板部とによって、U字状断面に構成された部位を有しており、
前記ワーク積層体から、前記複数個のワークを上から順に1つずつ取り出すワーク取り出し装置であって、
ロボットに設けられたロボットハンドと、
前記ロボットハンドに設けられ、前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの前記第1板部に吸着して持ち上げることが可能な少なくとも1つの吸着部と、
前記ロボットハンドに設けられ、前記上端に位置する前記ワークの前記複数の第2板部の少なくとも1つを、直ぐ下に重なっている前記ワークとの当接部を支点に前記第2板部の板面方向に弾性変形させ、前記吸着部を介して対峙する前記第2板部に弾性変形を連動することが可能な少なくとも1つの変形装置と、
を備えていることを特徴とするワーク取り出し装置。
【請求項2】
前記ロボットハンドと前記吸着部と前記変形装置とを制御する制御部を、更に備え、
前記制御部は、
少なくとも、前記吸着部が前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの前記第1板部に吸着しているときには、前記上端に位置する前記ワークの前記第2板部を弾性変形させるように前記変形装置を制御するとともに、
前記吸着部が前記第1板部を持ち上げたときには、前記変形装置を前記第2板部から離反させるように制御する構成である、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【請求項3】
前記ワーク積層体から前記吸着部によって持ち上げられる最上部の前記ワークのことを上のワークといい、前記上のワークの直ぐ下に重なっている前記ワークのことを下のワークというときに、
前記制御部は、前記上のワークが前記下のワークに対する分離位置までの持ち上げを完了したと判断するまでは、前記変形装置による前記第2板部の弾性変形作動を継続するように制御する構成である、請求項2に記載のワーク取り出し装置。
【請求項4】
前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの位置及び角度を検出することが可能に、前記ロボットハンドに設けられている3Dビジョンセンサを、更に備え、
前記制御部は、前記3Dビジョンセンサによって検出された、前記上端に位置する前記ワークの位置及び角度に基づいて前記ロボットハンドの姿勢を補正する構成である、請求項2に記載のワーク取り出し装置。
【請求項5】
前記ワークは、車体の一部を構成する車体パネルであって、前記ワーク積層体として積み重ねられたときに上に凸となる、少なくとも1つの凸部分を有し、
前記凸部分は、前記第1板部と前記複数の第2板部とによって前記U字状断面に構成された部位であり、
前記複数の第2板部の端部は、それぞれ折り返しフランジを有し、
前記吸着部は、前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの、前記凸部分から成る前記第1板部を吸着して持ち上げることが可能な構成であり、
前記変形装置は、前記上端に位置する前記ワークの、前記複数の第2板部のうちの一方を、前記第2板部の板面方向に弾性変形させることが可能に位置している、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【請求項6】
前記ワークは、少なくとも4つの前記第2板部を有しており、
前記変形装置は、前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの、稜線を介して隣接し合う2つの前記第2板部を、それぞれの板面方向に弾性変形させることが可能に、異なる2方向に配列されている、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【請求項7】
前記変形装置は、少なくとも前記吸着部が、前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの、前記第1板部を持ち上げている状態で、前記第2板部に対して板面方向に振動を加えるバイブレータを備えている、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【請求項8】
前記ワークを上から見て三角形の頂点を想定し、
前記吸着部は、前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの、前記三角形の前記頂点に対応する位置に、各々配置されている、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【請求項9】
前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークを最上位ワークとし、前記最上位ワークの直ぐ下に重なっている前記ワークを下位のワークとするとともに、
前記最上位ワークの前記複数の第2板部のうち、前記変形装置によって板面方向へ弾性変形される第2板部を特定第2板部とし、前記特定第2板部を除く他の第2板部を残りの第2板部としたときに、
前記変形装置によって前記特定第2板部を弾性変形させる変形量は、前記下位のワークに対する前記残りの第2板部の嵌り込み状態を分離可能な大きさに設定されている、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【請求項10】
前記変形装置は、
前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの全体を、このワークの前記第2板部と共に弾性変形状態とすることが可能な付勢力を、前記上端に位置する前記ワークの前記第2板部の板面に付与するバネと、
前記バネの付勢力の付与を解除するアクチュエータとを備えている、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【請求項11】
前記変形装置は、
前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの全体を、このワークの前記第2板部と共に弾性変形状態とすることが可能な押し力を、前記上端に位置する前記ワークの前記第2板部の板面に付与するとともに、前記押し力の付与を解除することも可能な、アクチュエータを備えている、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【請求項12】
前記変形装置は、
少なくとも、前記吸着部が前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの前記第1板部に吸着し且つこの第1板部を押し下げている状態では、前記上端に位置する前記ワークの前記第2板部を弾性変形させるバネ機構と、
前記吸着部が前記第1板部を持ち上げた状態では、前記バネ機構を前記第2板部から離反させるアクチュエータとを備えている、請求項1に記載のワーク取り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形された複数個のワークを台車に積み重ねた(段積みした)、いわゆるワーク積層体の上から、ワークを1つずつ取り出すためのワーク取り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの中には、車体のダッシュボードロア、フロアパネル、サイドシル等の比較的大型の部材がある。これらのワークは、鋼板等の金属板のプレス成形されたプレス成形品であって、U字状断面を有する。例えばダッシュボードロアは、中央に逆U字状断面のトンネルを挟んで左右に2つのU字状断面のトーボード部を有し、周縁は隣接する車体と結合のため折り曲げた接合フランジを有した複雑な立体形状である。また、サイドシルインナやサイドシルアウタは、1つのU字状断面にフランジを追加したハット状断面で長尺かつ撓みやすい。
【0003】
これらの複数個のワークは、U字状断面を有する、複雑な立体形状や長尺かつ撓みやすいため上下に積み重ねると隙間をあけた状態で台車に積み重ねられて、例えば、プレス工程から溶接工程の加工場所へ搬送される。この加工場所では、台車に積み重ねられている複数個のワークを、上から1つずつ取り出して溶接加工をしている。
【0004】
近年、ワーク取り出し作業の効率化のために、取り出し作業を自動化する多軸ロボットなどを用いたワーク取り出し装置の開発が進められている。このようなワーク取り出し装置の技術としては、例えば特許文献1によって知られている。
【0005】
特許文献1で知られているワーク取り出し装置の技術は、ボンネットなど緩やかに湾曲するワークが対象であって、ロボットのアームに設けられている複数の吸着部(吸盤)により、上のワークを持ち上げて上下に揺するとともに、このワークの後端に高圧エアーを噴き出すことによって、重なっている下側のワークを分離して落下させると、いうものである(特許文献1の段落[0023]~[0025]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ワークの中には、ダッシュボードロアパネルなどのように、更に湾曲させた立体形状もある。この種のワークには、少なくとも、板面が上下方向を向いている第1板部と、この第1板部の両端部から折り曲げられた一対の第2板部とを有し、急峻な湾曲形状を有する、U字状断面形状のワークがある。このU字状断面形状のワークを、プレス成形後に、第1板部を天側(UPWARD)にして上下に重ねた場合には、上下では所定の隙間を有するものの、重ねられているワークの第2板部同士が嵌り合っていることが多い。特に、次の溶接工程へ向け、台車に複数個のワークを積み重ねて運搬すると、運搬中の台車の振動によって、第2板部同士が深く嵌り合いやすい。
【0008】
また、特許文献1の技術では、吸着部(吸盤)は、上のワークに吸着するときには、吸盤とワークの密着のため、このワークを上から押し付ける必要がある。このため、吸着部によって上下のワークが共に押し付けられる。その後、吸着部により上のワークを持ち上げるときには、このワークは自重によって、吸着部を支点に垂れ下がる。このようなことから、上のワークの第2板部は、下のワークの第2板部と強く嵌り合ってしまう傾向にある。この結果、上のワークを持ち上げるときに、その下のワークをも持ち上げてしまう。
【0009】
このように嵌り合っている状態のワークを、特許文献1の技術のように、単に吸着部により上のワークを持ち上げて上下に揺すったり、ワークの後端に高圧エアーを噴き出すだけによって、U字状断面を有する形状のワークを確実に1つずつ取り出すには、課題が残る。
【0010】
本発明は、U字状断面を有する形状のワークであっても、より確実に1つずつ取り出すことが可能な技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意検討の結果、U字状断面の弾性変形に着目した。つまり、U字状断面の形状のワークは、板面が上下方向を向いている第1板部と、板面が側方を向いている第2板部とを有している。上下に重ねられているワークの第1板部は、吸着部により吸着されて持ち上げられるので、一方の第2板部の弾性変形が他方の第2板部の弾性変形と連動し、上下の嵌合状態を解除することを発見した。この弾性変形に持ち上げの動作を追加することで、より確実に1つずつ取り出すことが可能になることを知見した。本発明は、この知見に基づいて完成させた。なお、「板面が上下方向を向いて」や「板面が側方を向いて」は、板面が上下や側方と斜めに向いている場合も含む。
【0012】
本開示によれば、隙間をあけて上下方向に積み重ねられた複数個のワークによって、ワーク積層体が構成されており、前記複数個のワークは、成形された板材によって構成されており、板面が上下方向を向いている少なくとも1つの第1板部と、前記第1板部から上下方向へ延びて板面が側方を向いている複数の第2板部とによって、U字状断面に構成された部位を有しており、前記ワーク積層体から、前記複数個のワークを上から順に1つずつ取り出すワーク取り出し装置であって、ロボットに設けられたロボットハンドと、前記ロボットハンドに設けられ、前記ワーク積層体の上端に位置する前記ワークの前記第1板部に吸着して持ち上げることが可能な少なくとも1つの吸着部と、前記ロボットハンドに設けられ、前記上端に位置する前記ワークの前記複数の第2板部の少なくとも1つを、直ぐ下に重なっている前記ワークとの当接部を支点に前記第2板部の板面方向に弾性変形させ、前記吸着部を介して対峙する前記第2板部に弾性変形を連動することが可能な少なくとも1つの変形装置とを備えていることを特徴とするワーク取り出し装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本開示では、U字状断面に構成された部位を有する急峻な湾曲形状のワークであっても、より確実に1つずつ取り出すことが可能な技術を、提供することができる。すなわち、U字状断面の弾性変形に着目した。つまり、U字状断面の形状のワークは、板面が上下方向を向いている第1板部と、板面が側方を向いている第2板部とを有している。隙間をあけて上下に重ねられているワークは、一方の第2板部の弾性変形が下のワークとの当接部を支点に吸着部を介し、対峙する他方の第2板部の弾性変形へと連動し、他方の第2板部における上下の嵌合状態を解除することを発見した。この弾性変形に持ち上げの動作を追加することで、より確実に1つずつ取り出すことが可能になることを知見した。本発明は、この知見に基づいて完成させた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは実施例1によるワーク取り出し装置によって取り出されるワークの斜視図、
図1Bは
図1Aの1B矢視線方向から見たワークの端面図、
図1Cは
図1Bに示される複数個のワークから成るワーク積層体とワーク取り出し装置の模式図である。
【
図2】実施例1によるワーク積層体とワーク取り出し装置の模式図である。
【
図5】
図2に示される制御部の制御フローチャートの前半部分である。
【
図6】
図2に示される制御部の制御フローチャートの後半部分である。
【
図7】
図7Aは
図1Cに示される上のワークに吸着部を押し付ける動作の作用図、
図7Bは
図7Aに示される上のワークに変形装置を押し付ける動作の作用図、
図7Cは
図7Bに示される上のワークの変形状態の作用図である。
【
図8】
図8Aは
図7Cに示される上のワークを持ち上げて変形装置を離反した状態の作用図、
図8Bは
図8Aに示される上のワークが元の水平に戻った状態の作用図、
図8Cは
図8Bに示される上のワークが次工程の位置へ移送される状態の作用図である。
【
図9】実施例2によるワーク取り出し装置の変形装置の模式図である。
【
図11】実施例4によるワーク取り出し装置によって取り出されるワークの斜視図である。
【
図13】
図12Aに示されるワークに対する吸着部及び変形装置の位置関係を説明する斜視図である。
【
図14】
図13に示されるワークの更に概念的に表した図である。
【
図15】
図12Bに示される複数個のワークから成るワーク積層体とワーク取り出し装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。
【0016】
<実施例1>
図1~
図8を参照しつつ、実施例1のワーク取り出し装置30と、このワーク取り出し装置30によって取り出されるワーク10を説明する。
【0017】
図1A~
図1Cは、ワーク取り出し装置30によって取り出される複数のワーク10を示している。これらのワーク10は、成形された板材によって構成されている。例えば、これらのワーク10は、鋼板や軽金属板等の金属製板材や樹脂製板材により構成されたプレス成形品であって、例えば車体の一部を構成する車体パネルとして用いることが可能である。ワーク10は、金属製板材や樹脂製板材のプレス成形品であるから、鍛造品や鋳造品よりも弾性変形が可能である。樹脂製板材のプレス成形品には、例えば熱プレス成形品がある。また、ワーク10は、射出成形された樹脂パネルを含む。
【0018】
各ワーク10は、板面11t,11tが上下方向を向いている少なくとも1つ(実施例1では1つ)の第1板部11と、この第1板部11から上下方向へ延びて板面12t,12tが側方を向いている複数(実施例1では2つ)の第2板部12とによって、U字状断面に構成された部位を有している。このワーク10は、例えばサイドシルインナやサイドシルアウタなどの長尺材(
図1A参照)の構成である。
【0019】
図1Cに示されるように、隙間Crをあけて複数個のワーク10は上下方向に積み重ねられることによって、ワーク積層体21を構成している。例えば、複数個のワーク10は、下側を開放した状態で台車22(台車22の枠フレーム部は図を略す)の上に積み重ねられて、取り出し場所Fp(ピックアップ位置Fp)へ移動される。このように、ワーク10は、ワーク積層体21として積み重ねられたときに上に凸となる、少なくとも1つの凸部分を有している。この凸部分は、第1板部11と一対の第2板部12とによってU字状断面に構成された部位である。
【0020】
ここで、第1板部11の両側の板面11t,11tのうち、特に上側の板面11tのことを、「上面11tu(上側の板面11tu)」という。第1板部11の上側の板面11tuは、凸部分の凸側上面11tuを成しており、水平状態(概ね水平状態を含む)である。
【0021】
また、ワーク積層体21を構成する各ワーク10について、次のように定義する。ワーク積層体21の上端に位置する最上部のワーク10を、特に「上のワーク10U(最上位ワーク10U)」といい、この上のワーク10Uの直ぐ下に重なっているワーク10を「下のワーク10D(下位のワーク10D)」ということにする。
【0022】
上のワーク10Uの第1板部11と下のワーク10Dの第1板部11との間には、同一U字断面の積み重ねのため上下方向の隙間Crを有している。
【0023】
図2に示されるように、ワーク取り出し装置30は、ワーク取り出し場所Fp(ピックアップ位置Fp)に位置した台車22上のワーク積層体21から、複数個のワーク10を上から順に1つずつ取り出すことが可能な構成である。このワーク取り出し装置30は、ワーク取り出し場所Fpに設置された産業用ロボット31(以下「ロボット31」と略称する)と、このロボット31に設けられたロボットハンド33と、このロボットハンド33に設けられた少なくとも1つの吸着部40及び少なくとも1つの変形装置50とを備えている。
【0024】
ロボット31は、例えば多軸または垂直多関節型ロボットであって、ロボットアーム32を備えている。このロボットアーム32の先端に、ロボットハンド33が設けられている。このロボットハンド33の構成、大きさ、形状は任意であり、吸着部40及び変形装置50によって、ワーク積層体21から複数個のワーク10を上から順に1つずつ取り出すのに、適切に設定されておればよい。
【0025】
例えば、ロボットハンド33は、ロボットアーム32の先端に連結されたバー状のメインハンド33aと、このメインハンド33aの両端に連結された一対のバー状のサブハンド33b,33bとを備えている。ロボットアーム32の先端に対して、メインハンド33aは自己のバー長手方向へ進退可能な構成とすることが可能である。また、メインハンド33aに対して、サブハンド33b,33bは自己のバー長手方向へ進退可能且つスイング可能な構成とすることが可能である。
【0026】
さらにワーク取り出し装置30は、3Dビジョンセンサ71(三次元ビジョンセンサ71)及び制御部72を備えている。
【0027】
この3Dビジョンセンサ71は、物体を三次元的に認識する計測器の一種であって、三次元計測データ(三次元画像データ)を生成する。この3Dビジョンセンサ71は、台車22によって取り出し場所Fpに移送されたワーク積層体21の、上のワーク10Uの三次元計測データを生成して制御部72へ送る。この3Dビジョンセンサ71は、ワーク積層体21の上端に位置する上のワーク10Uの、位置及び角度を検出(認識)することが可能に、ロボットハンド33に設けられている。
【0028】
制御部72は、ロボット31とロボットハンド33と吸着部40と変形装置50とを制御する。制御内容の詳細については後述する。
【0029】
さらに制御部72は、3Dビジョンセンサ71によって検出(認識)された、上端に位置するワーク10の位置及び角度に基づいてロボットハンド33の姿勢を補正する構成である。つまり、3Dビジョンセンサ71によって検出(認識)されたセンサ座標系と、実際のワーク10の座標系との関係に変化が有った場合には、3Dビジョンセンサ71を備えたロボットハンド33の位置を補正する。
【0030】
台車22は、取り出し場所Fpの所定位置に正確にセットされるとは限らない。また、台車22に積まれているワーク積層体21の、各ワーク10の位置や角度は、一定であるとは限らない。これに対し、センサ座標系と実際のワーク10の座標系との関係に基づいて、制御部72がロボットハンド33の位置を補正することにより、各ワーク10に対する吸着部40及び変形装置50の位置を個別に且つ正確に位置決めすることができる。
【0031】
図3に示されるように、吸着部40は、ワーク積層体21(
図1C参照)のうち、上のワーク10Uの第1板部11の上面11tuに吸着して持ち上げることが可能であって、例えば真空吸着式の構成である。この吸着部40は、ロボットハンド33(
図1C参照)から下方へ延びたロッド41と、このロッド41の先端部にピボット42を介して取り付けられた吸盤43とを備えている。この吸盤43の窪んだ空間部44は、切換え弁45(第1切換え弁45)を介して真空ポンプ46の吸引口に接続されている。
【0032】
第1切換え弁45は、例えば制御部72によって切り替え制御される電磁式三方弁によって構成される。この第1切換え弁45は、通常時には吸盤43の空間部44と真空ポンプ46の吸引口との間を連通することによって、空間部44を真空または負圧状態に維持するとともに、制御部72の信号を受けて空間部44を大気圧に戻す。
【0033】
なお、吸着部40は、真空吸着式の構成に限定されるものではなく、例えば、電磁石の励磁、非励磁による磁石式の構成とすることができる。この場合には、制御部72によって電磁石の動作を制御する。また、上のワーク10Uを上から見たときに、第1板部11の上面11tuのうち、吸着部40によって持ち上げる位置は、上のワーク10Uの重心であることが好ましい。上のワーク10Uを傾けることなく安定して、持ち上げることができるからである。
【0034】
図4に示されるように、変形装置50は、複数の第2板部12の少なくとも1つを、この第2板部12の板面方向Rt(押し方向Rt)に弾性変形させることが可能である。
【0035】
ここで、
図1も参照すると、上のワーク10Uの複数の第2板部12のうち、変形装置50によって第2板部12の板面方向Rtへ弾性変形される第2板部12を「特定第2板部12A」といい、この特定第2板部12Aに対峙する(向かい合う)他の第2板部12を「残りの第2板部12B」という。
【0036】
図4に示されるように、変形装置50は、ロボットハンド33から下方へ延びたロッド51の先端部にピボット52を介して取り付けられている。この変形装置50は、特定第2板部12Aを板面方向Rtへ押すことが可能な押し部53と、この押し部53を特定第2板部12Aの板面方向Rtへ向かって付勢する押し圧用バネ54と、この押し圧用バネ54の付勢力に抗して押し部53を特定第2板部12Aから離反させるアクチュエータ55とを備えている。押し圧用バネ54は、圧縮バネによって構成されている。なお、圧縮バネ54は、後述するシリンダー61の外に出して大型にすることにより、より大きなワークを弾性変形させることが可能となる。
【0037】
変形装置50が押し圧用バネ54によって特定第2板部12Aを弾性変形させる変形量deは、下位のワーク10Dに対する他の第2板部12の嵌り込み状態を分離可能な大きさに設定されている。
【0038】
変形装置50によって特定第2板部12Aを押す板面方向Rtは、この特定第2板部12Aの板面12tに対して垂直方向であることが好ましい。この方が特定第2板部12Aを効果的に弾性変形させることができる。
【0039】
アクチュエータ55は、ロボットハンド33に連結されたシリンダ61と、このシリンダ61内を加圧室62とバネ室63とに区画するピストン64と、このピストン64と押し部53とを連結しているピストンロッド65と、バネ室63に収納されたリターン用バネ66とを備えている。リターン用バネ66は、圧縮バネによって構成されている。
【0040】
加圧室62は、切換え弁56(第2切換え弁56)を介してコンプレッサ57の吐出口に接続されている。この第2切換え弁56は、例えば制御部72によって切り替え制御される電磁式三方弁によって構成される。この第2切換え弁56は、通常時にはコンプレッサ57の吐出口と加圧室62との間を連通することによって、コンプレッサ57の加圧空気により加圧室62は加圧されている。ピストン64は押し圧用バネ54及びリターン用バネ66の付勢力に抗して後退し、ピストンロッド65を介して、押し部53を特定第2板部12Aから離反させている。
【0041】
第2切換え弁56が制御部72から信号を受けて、加圧室62を大気へ開放した状態に切り替えた場合には、押し圧用バネ54は、付勢力により押し部53を特定第2板部12Aに押し付け可能である。
【0042】
制御部72の制御信号によって、第2切換え弁56が切り替え動作を繰り返すことにより、押し部53は特定第2板部12Aの板面12tに対して、押し動作と離反動作を繰り返すことが可能である。つまり、変形装置50は、第2板部12に対して板面方向Rtに振動を加えるバイブレータ58の構成(機能)も備えていることになる。このバイブレータ58は、押し部53と押し圧用バネ54と加圧室62とピストン64とによって構成される。さらには、押し部53と押し圧用バネ54とによって、バネ機構59が構成されている。
【0043】
前記押し圧用バネ54は、押し部53が特定第2板部12Aの板面12tに接触すると同時に弾性変形(収縮作用)が可能となり、その付勢力は、押し部53が特定第2板部12Aの板面12tに衝突する衝突力(打力)を強める機能と、押し部53が特定第2板部12Aの板面12tを押す力を増幅する機能とを、兼ね備えている。このため、上のワーク10Uに対して嵌り込んでいる下のワークを、変形装置50によって効果的に外すことができる。
【0044】
このように、押し圧用バネ54は、特定第2板部12Aと共に上のワーク10Uの全体を弾性変形状態とすることが可能な付勢力を、特定第2板部12Aの板面12tに付与する。この押し圧用バネ54の付勢力の付与は、アクチュエータ55によって解除される。
【0045】
特定第2板部12Aの板面12tに対する、変形装置50による押し動作と離反動作の周期、押し動作の時間や離反動作の時間、振動の強さ(特定第2板部12Aの板面12tに対する押し部53の押し付け強さ)は、上のワーク10Uに対して下のワーク10Dが嵌り込んでいる場合に、上のワーク10Uを弾性変形させることによって下のワーク10Dが外れやすくなるように設定される。例えば、制御部72は、押し部53によって特定第2板部12Aの板面12tを、1回のみ又は数回のみ押すか、連続して振動を付加するように、変形装置50を制御することができる。
【0046】
なお、アクチュエータ55は、押し圧用バネ54の付勢力に抗して押し部53を特定第2板部12Aから離反させる構成であればよく、例えばソレノイドの構成とすることが可能である。
【0047】
次に、
図1~
図4を参照しつつ、
図5及び
図6に基づいて、制御部72による制御を説明する。制御部72は、例えばマイクロコンピュータによって構成される。マイクロコンピュータによって構成した制御部72の、具体的な制御の一例を説明すると、次の通りである。
【0048】
図5及び
図6は、制御部72の制御フローチャートであって、制御部72の一連の制御のなかの、ロボット31とロボットハンド33と吸着部40と変形装置50の作動制御の処理を実行する、サブルーチンを示している。このサブルーチンは、例えば所定の条件による割込処理や、時分割処置によって実行する。
【0049】
制御部72は制御を開始すると、先ずステップS01では、ロボットハンド33を待機位置(図示せず)から台車22に積載されているワーク積層体21の上、つまりピックアップ位置Fpまで移動させるように、ロボット31及びロボットハンド33を駆動制御する。
【0050】
次のステップS02では、ロボットハンド33に備えている3Dビジョンセンサ71によって検出(認識)された、上のワーク10Uの位置及び角度の検出データ、つまり三次元計測データを読み込む。
【0051】
次のステップS03では、検出された上のワーク10Uの位置及び角度の検出データにより、ロボットハンド33の位置を補正する。
【0052】
次のステップS04では、ロボットハンド33の位置補正が完了したか否かを判断し、位置補正が完了したと判断するまで、ステップS02~S03を繰り返す。台車22に積載されているワーク積層体21の、各ワーク10の位置及び角度は一定ではない。ワーク積層体21から上のワーク10Uだけを確実に取り出すためには、吸着部40及び変形装置50が設けられているロボットハンド33の正確な位置を、上のワーク10Uに対して決める必要がある。ステップS02~S03によって、ロボットハンド33の正確な位置に設定することができる。ステップS04において、位置補正が完了したと判断した場合には、次のステップS05へ進む。
【0053】
ステップS05では、ロボットアーム32及びロボットハンド33を下げるように駆動制御することによって、吸着部40を下降する。
【0054】
次のステップS06では、吸着部40により上のワーク10Uの第1板部11の上面11tuを押し下げつつ、吸着部40を上面11tuに吸着させる。具体的には、吸盤43内は、真空状態または減圧状態にある。ロボットアーム及びロボットハンド33を下げるように駆動制御することによって、上のワーク10Uの第1板部11に吸盤43を吸着させる。なお、このステップS06を実行しているときには、変形装置50の押し部53は、上のワーク10Uの第2板部12の特定第2板部12Aを押して、弾性変形させる。
【0055】
すなわち、次のステップS07では、変形装置50を上のワーク10Uの特定第2板部12Aに接触させる。引き続き、次のステップS08では、変形装置50によって特定第2板部12Aを連続的に弾性変形又は断続的に弾性変形させる。より具体的には、制御部72が第2切換え弁56(
図4参照)を切り替え制御することによって、押し圧用バネ54は、付勢力により押し部53を特定第2板部12Aに押し付ける。この結果、特定第2板部12Aは残りの第2板部12B側へ弾性変形する。このときには、特定第2板部12Aに作用した押し付け力は、吸着された第1板部11を介して残りの第2板部12Bにも伝わり、残りの第2板部12Bも押し方向と同一方向に弾性変形させる。
【0056】
ステップS08を実行してから、予め設定されている一定の基準時間(押し付け基準時間)を経過した後の、次のステップS09では、ロボットアーム32及びロボットハンド33を駆動制御することにより、吸着部40によって上のワーク10Uを所定距離、すなわち、嵌合状態が解除され落下しても、その下のワーク10Dに重なる位置に戻れる距離(
図1Cに示される第1基準高さLs1)だけ持ち上げる。この場合、上のワーク10Uに下のワーク10Dが嵌り込んでいたことを想定して、上のワーク10Uを急速に持ち上げることが好ましい。上のワーク10Uを急速に持ち上げることによって、下のワーク10Dを自己の慣性によって落下させ易くなる。この段階では、変形装置50による特定第2板部12Aの弾性変形動作を、続行している。
【0057】
次のステップS10では、吸着部40による上のワーク10Uを持ち上げ動作が完了したか否かを判断する。例えば、持ち上げられている上のワーク10Uの高さが、予め設定されている第1基準高さLs1(
図1C参照)に到達した場合には、持ち上げ動作が完了したと判断する。ここで、第1基準高さLs1は、例えばピックアップ位置Fpのフロア面からの、一定高さに設定される。つまり、上のワーク10Uが下のワーク10Dに対する分離位置Ls1(第1基準高さLs1)までの持ち上げを完了したか否かを判断する。実際の上のワーク10Uの持ち上がり高さは、図示せぬ高さ検出部によって検出される。このステップS10において、持ち上げ動作が完了したと判断するまで、ステップS09を続行する。ステップS10において、持ち上げ動作が完了したと判断した場合には、次のステップS11へ進む。
【0058】
ステップS11では、変形装置50による特定第2板部12Aの弾性変形の動作を停止する。引き続き、次のステップS12では、変形装置50を特定第2板部12Aから離反させる。より具体的には、制御部72は、第2切換え弁56(
図4参照)を切り替え制御する。ピストン64は後退して、押し部53を特定第2板部12Aから離反させる。この離反により弾性変形は解除され、上のワーク10Uは吸着部40を支点に揺り戻され、嵌合状態が解除され、下のワーク10Dが下方に落下することも可能である。
【0059】
次のステップS13では、ロボットアーム32及びロボットハンド33を駆動制御することにより、吸着部40によって上のワーク10Uを更に持ち上げる(再持ち上げ)。この再持ち上げに対し慣性により、上下のワーク10U,10Dの嵌合状態が解除され、下のワーク10Dが下方に落下することも可能である。
【0060】
次のステップS14では、吸着部40による上のワーク10Uを持ち上げ動作が完了したか否かを判断する。例えば、持ち上げられている上のワーク10Uの高さが、予め設定されている第2基準高さLs2(
図1C参照)に到達した場合には、持ち上げ動作が完了したと判断する。ここで、第2基準高さLs2は、例えばピックアップ位置Fpのフロア面からの、一定高さに設定されており、前記第1基準高さLs1よりも高い。実際の上のワーク10Uの持ち上がり高さは、図示せぬ高さ検出部によって検出される。このステップS14において、再持ち上げ動作が完了したと判断するまで、ステップS13を続行する。ステップS14において、再持ち上げ動作が完了したと判断した場合には、次のステップS15へ進む。
【0061】
ステップS15では、吸着部40によって持ち上げ状態にある上のワーク10Uを、ロボットアーム32及びロボットハンド33を駆動制御することによって、次工程である溶接工程の位置(移送位置)へ移送する。この移送位置では、吸着部40は上のワーク10Uを離れる。具体的には、制御部72によって第1切換え弁45を切り替え制御することにより、吸盤43の空間部44を大気圧に戻す。この結果、上のワーク10Uは吸着部40から離れる。
【0062】
次のステップS16では、ワーク積層体21から次のワーク10を取り出すか否かを判断する。例えば、台車22にワーク10が残っていることを検出部(図示せず)によって検出されたか、または、作業者による終了スイッチ(図示せず)が操作されていない場合には、次のワーク10を取り出すために、ステップS01へ戻って、ワーク取り出し動作が続行される。このステップS16で、次のワーク10を取り出しが無い、つまりピックアップ終了と判断した場合には、次のステップS17へ進む。ステップS17では、ロボットハンド33を待機位置(図示せず)へ移動させた後に、サブルーチンを終了する。
【0063】
次に、
図7及び
図8を参照しつつ、ワーク取り出し装置30の作動(ワーク取り出し方法)について説明する。
【0064】
先ず、
図7Aに示されるように、吸着部40が下降して、上のワーク10Uの第1板部11の上面11tuを押し下げつつ第1板部11の上面11tuに吸着する(
図5のステップS05~S06参照)。このときに、上のワーク10Uは、予め設定されている一定の押し下げ量Spだけ下がる。この押し下げ量Spは、上のワーク10Uに対して吸盤43を密着することが可能な下げ量に設定されている。
【0065】
同時にまたは次に、
図7Bに示されるように、変形装置50によって上のワーク10Uの特定第2板部12Aを弾性変形させる(
図5のステップS07~S08参照)。つまり、変形装置50は、押し圧用バネ54(
図4参照)の強い付勢力のみによって、押し部53を特定第2板部12Aに強く押し付ける、または振動させる。押し圧用バネ54は、特定第2板部12Aと共に上のワーク10Uの全体を弾性変形状態とすることが可能な付勢力を、押し部53を介して特定第2板部12Aの板面12tに付与することが可能である。
【0066】
この結果、
図7Cに示されるように、特定第2板部12Aの下端部12e(当接部12e)は、下のワーク10Dの第2板部12に当たることによって、弾性変形の支点となり、吸着部40を介し弾性変形が連動して特定第2板部12Aは対峙する残りの第2板部12B側(板面方向Rt)へ向かって弾性変形する。すなわち、変形装置50から特定第2板部12Aへ作用した押し付け力(
図4に示される押し圧用バネ54の強い付勢力)により、上のワーク10Uには、特定第2板部12Aの下端部12e(当接部12e)を支点に、吸着部40(厳密にはピボット42)を介し、力のモーメントMtが働く(つまり、弾性変形が連動する)。このため、上のワーク10Uの全体が、吸着部40を中心に特定第2板部12Aと共に板面方向Rt(
図7Cの反時計回り方向)へ弾性変形する。
【0067】
上のワーク10Uが板面方向Rtへ弾性変形する過程において、上のワーク10Uの対峙する残りの第2板部12Bは、下のワーク10Dの一方の第2板部12との当接部12eを支点に、下のワーク12Dの他方の第2板部12から離反する方向(嵌合解除方向)へ弾性変形する。この結果、上のワーク10Uは下のワーク10Dから外れる。このように、上のワーク10Uは、下のワーク10Dに嵌り込んでいても、変形装置50によって、特定第2板部12Aを板面方向Rtに弾性変形させることにより、下のワーク10Dの第2板部12との嵌り込み状態が外れやすくなる。
【0068】
次に、
図7Cにも示されるように、吸着部40によって上のワーク10Uを急速に持ち上げる(
図5のステップS09~S10参照)。つまり、上のワーク10Uを急上昇させる。この結果、上のワーク10Uに嵌り込んでいた下のワーク10Dは、慣性により外れて落下しやすくなる。
【0069】
次に、下のワーク10Dとの嵌合状態が解除されなかった場合、
図8Aに示されるように、持ち上がっている上のワーク10Uの特定第2板部12Aから、変形装置50を停止して離反させる(
図6のステップS11~S12参照)。この結果、持ち上がっている上のワーク10Uは、全体的に特定第2板部12A側へ揺れ戻り、
図8Bに示されるように元の水平状態に戻る。この揺れ戻りにより、上のワーク10Uに嵌り込んでいた下のワーク10Dの、嵌り込み状態が外れやすくなる。下のワーク10Dは、最終的に上のワーク10Uから外れて落下する。なお、嵌合状態が残っていれば、変形装置50を振動させることもできる。
【0070】
次に、
図8Cに示されるように、吸着部40によって持ち上げ状態にある上のワーク10Uだけを、ロボットハンド33によって移送位置へ移送する(
図6のステップS13~S15参照)。
【0071】
このようにして、ワーク取り出し装置30は、ワーク積層体21の上から、上のワーク10Uだけを確実に1つずつ取り出して、ピックアップ位置Fpまで移動させることができる。
【0072】
<実施例2>
図9を参照しつつ、実施例2のワーク取り出し装置130を説明する。
図9は上記
図4に相当する。
【0073】
実施例2のワーク取り出し装置130は、上記
図1~
図8に示される実施例1の変形装置50を、
図9に示される変形装置150に変更したことを特徴とする。その他の基本的な構成については、上記実施例1によるワーク取り出し装置30と共通する。実施例1によるワーク取り出し装置30と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0074】
実施例2の変形装置150(
図9参照)は、上記実施例1の変形装置50(
図4参照)のように大型の押し圧用バネ54(
図4参照)を備えず、アクチュエータ155だけで押し引きするため、小型であることを特徴とする。このため、変形装置50が入れないような狭い場所や、複数個のワーク10の向きを、上記実施例1とは上下逆向きとした場合に特に好ましい。つまり、U字断面が左右に並び隣接する第2板部12,12同士の間隔が狭い、ダッシュボードロアのトンネル部や、
図9に示されるように、複数個のワーク10が、上側を開放した状態で台車22(
図1C参照)の上に、ワーク積層体21として積み重ねられている場合に、上のワーク10Uの第2板部12,12間の狭いスペースArに、小型の変形装置150を位置させるのに、好適である。この場合には、
図3に示される吸着部40は、上のワーク10Uの第1板部11の底面11td(11t)に吸着して持ち上げることが可能である。
【0075】
上述のように実施例2では、ワーク10は、ワーク積層体21として積み重ねられたときに下に凸となる、少なくとも1つの凸部分を有している。この凸部分は、第1板部11と複数の第2板部12とによってU字状断面に構成された部位である。
【0076】
詳しく述べると、実施例2の変形装置150は、ロボットハンド33の先端部(ロッド51)にピボット52を介して設けられている。この変形装置150は、上のワーク10Uの特定第2板部12A(第2板部12)を板面方向Rtへ押すことが可能な押し部153と、この押し部153を板面方向Rtへ押し引き動作することによって、特定第2板部12A部を弾性変形状態と変形解除状態とに駆動することが可能なアクチュエータ155を備えている。
【0077】
このアクチュエータ155は、ロボットハンド33(ロッド51)に連結されたシリンダ161と、このシリンダ161内を空間部162とバネ室163とに区画するピストン164と、このピストン164と押し部153とを連結しているピストンロッド165と、バネ室163に収納されたリターン用バネ166とを備えている。リターン用バネ166は、圧縮バネによって構成されている。
【0078】
空間部162は、第2切換え弁56を介して、コンプレッサ157の吐出口と真空ポンプ159の吸引口とに接続されている。第2切換え弁56は、通常時には真空ポンプ159の吸引口と空間部162との間を連通することによって、空間部162を真空または負圧状態に維持する。このため、ピストン164は、リターン用バネ166の付勢力によって後退しており、ピストンロッド165を介して、押し部153を特定第2板部12Aから離反させている。
【0079】
一方、第2切換え弁56は、制御部72の信号を受けて空間部162をコンプレッサ157の加圧空気により加圧状態に切り替える。このため、ピストン164は、リターン用バネ166の付勢力に抗して前進し、ピストンロッド165を介して、押し部153を特定第2板部12Aに押し付け可能である。
【0080】
なお、アクチュエータ155は、押し圧用バネ154の付勢力に抗して押し部153を特定第2板部12Aに押し付け可能な構成であればよく、例えばソレノイドの構成とすることが可能である。
【0081】
実施例2は、この実施例2の作用、効果の他に、実施例1の作用、効果も有する。
【0082】
<実施例3>
図10を参照しつつ、実施例3のワーク210を説明する。
図10は上記
図1に相当する。実施例3では、上記
図1~
図8に示される実施例1のワーク取り出し装置30をそのまま用いている。
【0083】
実施例3のワーク210は、
図1~
図8に示される実施例1のワーク10に対して、複数の第2板部12の端部12eに、それぞれ接合用の折り返しフランジ213を追加した、ハット状断面に構成されていることを特徴とし、その他の基本的な構成については、上記実施例1によるワーク10と共通する。実施例1によるワーク10及びワーク取り出し装置30と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0084】
詳しく述べると、実施例3のワーク210は、例えばサイドシルインナやサイドシルアウタなどの車体パネルとして用いられる。このワーク210は、台車22(
図1C参照)にワーク積層体21として積み重ねられたときに上に凸となる、少なくとも1つの凸部分を有している。この凸部分は、実施例1と同様に、第1板部11と複数の第2板部12とによってU字状断面に構成された部位である。複数の第2板部12の端部12e(第1板部11とは反対側の端部12e)は、それぞれ外方へ折り返された折り返しフランジ213を有している。この折り返しフランジ213は、第2板部12の剛性を高めている。
【0085】
ここで、ワーク積層体21として積み重ねられたワーク210(車体パネル210)のうち、ワーク積層体21の上端に位置する最上部のワーク210を、特に「上のワーク210U(最上位ワーク210U)」といい、この上のワーク210Uの直ぐ下に重なっているワーク10を「下のワーク210D(下位のワーク210D)」ということにする。
【0086】
上のワーク210Uの第1板部11と下のワーク210Dの第1板部11との間には、上下方向の隙間Crを有している。
【0087】
吸着部40は、ワーク積層体21のうち、上のワーク210Uの第1板部11の上面11tuに吸着して持ち上げることが可能に位置している。
【0088】
変形装置50は、ワーク積層体21のうち、上のワーク210Uの、折り返しフランジ213を有している複数の第2板部12のうちの一方(特定第2板部12A)を、この第2板部12Aの板面方向Rtに弾性変形させることが可能に位置している。
【0089】
一方の第2板部12A(特定第2板部12A)を、変形装置50により弾性変形させることにより、第2板部12Aに対応する他方の第2板部12B(残りの第2板部12B)に弾性変形が伝わる。このため、上下のワーク210U,210Dを容易に分離できる。
【0090】
なお、実施例3では、ワーク積層体21を構成する複数個のワーク210の向きを、上記
図9に示される実施例2の複数個のワーク10の向きのように、上下逆向きとした場合にも適用できる。また、実施例3では、変形装置50の代わりに実施例2の変形装置150(
図9参照)を採用してもよい。
【0091】
実施例3は、この実施例3の作用、効果の他に、実施例1~2の作用、効果も有する。
【0092】
<実施例4>
図11~
図16を参照しつつ、実施例4のワーク取り出し装置330(
図14参照)と、このワーク取り出し装置330によって取り出される複数のワーク310について説明する。実施例1によるワーク10及びワーク取り出し装置30と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0093】
図11に示されるように、実施例4のワーク310は、実施例1のワーク10と同様に金属板のプレス成形品であって、例えば車体の一部を構成するダッシュボードロアなどの車体パネルとして、用いることが可能である。ダッシュボードロアは、車両の車室CAとエンジンルームER(動力室ER)との間を仕切ることが可能である。ワーク310のことを、適宜「ダッシュボードロア310」と言い換えることがある。
【0094】
【0095】
このダッシュボードロア310は、縦板状のボード上半部411と、このボード上半部411の下端から下方へ延びたボード下半部412(
図11参照)と、このボード下半部412の下端から車室CA側へ延びたフロア前部413と、ボード下半部412の幅方向中央から車室CA側へ延びたトンネル部414とを、一体にプレス成形したものである。ボード上半部411の縁及びボード下半部412の縁は、外方へ折り返された接合用フランジ415を有している。この接合用フランジ415は、ダッシュボードロア310の剛性を高めている。
【0096】
フロア前部413は、想像線によって示された車室CA側のフロアパネル421の前端に、接合される。このフロアパネル421の幅方向中央には、前後方向へ延びるフロアトンネル422が一体に構成されている。このフロアトンネル422の前端には前記トンネル部414が接合される。
【0097】
このトンネル部414は、ボード下半部412の上端から、フロア前部413に沿いつつ車室CA側へ延びるとともに、車室CA側へ膨出した部分である。さらに、トンネル部414は、エンジンルームER側及び下方を開放したU字状断面に構成されている。詳しく述べると、このトンネル部414は、左右の縦板状の側板414a,414aと、横板状の天板414bとによって構成されている。左右の縦板状の側板414a,414aは、ボード下半部412及びフロア前部413から車室CA側へ起立して、板面が側方を向いている。天板414bは、側板414a,414aの上端間を塞ぐように、板面が上下方向を向いている。
【0098】
ボード下半部412には、車室CA側へ湾曲状に膨出した一対のホイールハウス後部417,417と、エンジンルームERへ膨出した一対の膨出部分419,419とが、一体に構成されている。
【0099】
一対のホイールハウス後部417,417は、ボード下半部412の幅方向両側に位置し、ホイールハウスの後部を構成している。従って、ボード下半部412には、車室CA側へ湾曲状に窪んだ一対のハウス凹部418,418が構成される(
図12Cも参照)。
【0100】
一対の膨出部分419,419(トーボード部419,419)は、トンネル部414から一対のホイールハウス後部417,417にわたり形成され、エンジンルームERへ膨出することによって、車室CAで着座した乗員の足元周りのスペースを、拡大している。
【0101】
以上の説明から明らかなように、ダッシュボードロア310は、幅方向中央に位置している逆U字状断面のトンネル部414を挟んで、左右に2つのU字状断面の膨出部分419,419を有している。
【0102】
図13及び
図14も参照する。
図13は、ダッシュボードロア310をエンジンルームER側から表している。
図14は、
図13のダッシュボードロア310を更に概念的に表している。
図13及び
図14は、一対の膨出部分419,419(凸部分419,419)がボード下半部412に、エンジンルームERへ膨出した構成を示している。これらの凸部分419,419同士は、トンネル部414に対して左右対称形である。このように、ダッシュボードロア310は、板面に沿って互いに離間した少なくとも2つの凸部分419,419を備えている。
【0103】
以下、
図13及び
図14を参照しつつ、2つの凸部分419,419を台車22(
図15参照)に積載される状態と同じく上に向けた状態のダッシュボードロア310を説明する。凸部分419は、上から見て、少なくとも1つの角部を有した形状を呈しており、例えば四角形等の多角形に形成されている。この凸部分419は、板面511tが上下方向を向いている1つの第1板部511と、この第1板部511から上下方向へ延びて板面512tが側方を向いている複数(例えば4つ)の第2板部512とによって、U字状断面(
図12B,
図12D参照)に構成された部位である。
【0104】
ここで、4つの第2板部512を区別するときには、説明の理解を容易にするために、各符号の末尾にアルファベットの符号を追加する。つまり、4つの第2板部512のうちの、1番目を第2板部512A、2番目を第2板部512B、3番目を第2板部512C、4番目を第2板部512Dという。
【0105】
1番目の第2板部512Aは、ボード上半部411の下端から第1板部511の縁まで延びている。2番目の第2板部512Bは、トンネル部414の側板414a及びこの側板414aから第1板部511の縁まで延びている。3番目の第2板部512Cは、フロア前部413から第1板部511の縁まで延びている。4番目の第2板部512Dは、ハウス凹部418によって構成されている。このハウス凹部418は、折り返しフランジ415から第1板部511の縁まで延びた円弧状の板である。各第2板部512A~512Dは、傾斜板、円弧状の板、垂直板を含む。このように、各第2板部512A~512Dは、屈曲部を含む場合がある。例えば、2番目の第2板部512Bは、トンネル部414の側板414aを含む場合がある。3番目の第2板部512Cは、フロア前部413を含む場合がある。
【0106】
互いに隣接し合う各々の第2板部512,512間には、4つの角部513が位置する。4つの角部513のうち、隣接し合う2つの第2板部512A,512B間の角部513Aを「第1角部513A」、隣接し合う2つの第2板部512B,512C間の角部513Bを「第2角部513B」、隣接し合う2つの第2板部512C,512D間の第3角部513Cを「第3角部513C」、隣接し合う2つの第2板部512D,512A間の角部513Dを「第4角部513D」という。
【0107】
図12Dに示されるように、凸部分419は、第1板部511と1番目の第2板部512Aと3番目の第2板部512Cとによって、U字状断面に構成されている。また、
図12Bに示されるように、凸部分419は、第1板部511と2番目の第2板部512Bと4番目の第2板部512Dとによって、U字状断面に構成されている。
【0108】
図12B及び
図15に示されるように、板材によって構成された複数個のダッシュボードロア310は、各凸部分419,419を上に向けて台車22に積み重ねられる。上下方向に積み重ねられた複数個のダッシュボードロア310によって、ワーク積層体321が構成されている。
【0109】
ここで、第1板部511の両側の板面511t,511tのうち、特に上側の板面511tのことを、「上面511tu(上側の板面511tu)」という。第1板部511の上側の板面511tuは、凸部分419の凸側上面511tuを成しており、
図15に示されるように、水平状態(概ね水平状態を含む)である。
【0110】
また、ワーク積層体321を構成する各ワーク310について、次のように定義する。ワーク積層体321の上端に位置する最上部のダッシュボードロア310(ワーク310)を、特に「上のワーク310U(最上位ワーク310U)」といい、この上のワーク310Uの直ぐ下に重なっているワーク310を「下のワーク310D(下位のワーク310D)」ということにする。
【0111】
上のワーク310Uの第1板部511と下のワーク310Dの第1板部511との間には、上下方向の隙間Crを有している。
【0112】
図13~
図15に示されるように、実施例4のワーク取り出し装置330は、上のワーク310Uの複数の凸部分419に対応して、複数の吸着部40と複数の変形装置50を備えている。
【0113】
例えば、ワーク取り出し装置330は、少なくとも2つの吸着部40,40を、各凸部分419,419の上面511tu,511tuに個別に吸着して、上のワーク310Uを持ち上げることが可能である。
【0114】
好ましくは、ワーク取り出し装置330は、3つの吸着部40を上のワーク310Uに吸着して、持ち上げる構成である。この場合に、
図13及び
図14に示されるように、上のワーク310U(ダッシュボードロア310)を上から見て三角形Trの頂点P1~P3を想定する(予め設定する)。例えば、三角形Trの第1頂点P1と第2頂点P2は、2つの凸部分419,419の上面512tu,512tuの位置に設定される。残りの第3頂点P3の位置は、持ち上げられた上のワーク310Uの横振れ抑制を勘案して設定される。例えば第3頂点P3の位置は、2番目の第2板部512Bの上部に設定される。
【0115】
例えば、ワーク取り出し装置330は、少なくとも2つの変形装置50,50によって、各凸部分419,419の第2板部512,512を個別に弾性変形させることが可能である。なお、4つの変形装置50,50…のうち、トンネル部414は狭いため、トンネル部414の変形装置50は、実施例2の変形装置150(
図9参照)を採用することができる。また、実施例2の変形装置150において、単一のアクチュエータ155を用いて、ピストンロッド165を他方の第2板部12Bへ延長するリニアレール(連結部材)とし、両端に押し部153,153を取り付け、トンネル部414の左右それぞれの第2板部414a,414a(
図14参照)を押し引きすることもできる。
【0116】
好ましくは、ワーク取り出し装置330は、上のワーク310Uの各凸部分419,419毎に、少なくとも2つの変形装置50,50を配置している。例えば、変形装置50,50は、第2角部513B,513B(屈曲部513B,513B、稜線513B,513B)を介して隣接し合う2つの第2板部512,512を、それぞれの板面方向Rt1,Rt2に弾性変形させることが可能に、異なる2方向に配列されている。
【0117】
一例を挙げると、互いに隣接し合う、2番目の第2板部512Bと3番目の第2板部512Cとに、それぞれ変形装置50,50を配置する。2番目の第2板部512Bの板面方向はRt1であり、3番目の第2板部512Cの板面方向はRt2である。
【0118】
ここで、上のワーク310Uの複数の第2板部512のうち、変形装置50,50によって第2板部512の板面方向Rt1,Rt2へ弾性変形される第2板部512B,512Cを「特定第2板部512B,512C」といい、この特定第2板部512B,512Cに対峙する他の第2板部512A,512Dを「残りの第2板部512A,512D」という。
【0119】
次に、実施例4のワーク取り出し装置330の作動(ワーク取り出し方法)について説明する。
【0120】
先ず、
図14及び
図16Aに示されるように、2つの吸着部40が下降して、上のワーク310Uの各第1板部511の上面511tuを押し下げつつ、この上面511tuに吸着する。同時に、もう1つの吸着部40が2番目の第2板部512Bの板面512tに吸着する。
【0121】
同時にまたは次に、各凸部分419の特定第2板部512Cを、個別に各変形装置50の押し圧用バネ54(
図4参照)が弾性変形させる。この結果、特定第2板部512Cに連続しているフロア前部413(
図14参照)の下端が、下のワーク310Dに当たって当接部となり、この当接部が支点となって、上下のワーク310U,310D間の隙間Crを無くする方向に弾性変形する。この弾性変形が吸着部40を介して連動し、特定第2板部512Cに対峙している第2板部512Aは、下のワーク310Dから持ち上がるように、すなわち、下のワーク310Dから離反する方向に弾性変形する。第2板部512Aに連続するボード上半部411も持ち上がるので、接合フランジ415は下のワーク310Dとの嵌合を解除できる。
【0122】
同時に、または、次に、
図14及び
図16Bに示されるように、各凸部分419の特定第2板部512Bを、個別に各変形装置50によって弾性変形させる。この結果、特定第2板部512Bは、対峙している第2板部512Dを同様に弾性変形させる。
【0123】
このように、各変形装置50から特定第2板部512B,512Cへ作用した押し付け力(
図4に示される押し圧用バネ54の強い付勢力)により、上のワーク310Uには各吸着部40(厳密にはピボット42)を介して、力のモーメントMt,Mt(
図16B参照)が働く。このため、上のワーク310Uの全体が、特定第2板部512B,512Cと共に板面方向Rt1,Rt2へ弾性変形する。
【0124】
このときに、2つの特定第2板部512B(トンネル部414を含む),512Cの弾性変形量が加算される(増す)。上のワーク310Uの、第2角部513Dに繋がるボード上半部411から第2板部512Dにわたる、角部(コーナ)を含む接合フランジ415が、下のワーク310Dに上下に嵌り込んでいても、嵌り込み状態が外れやすくなる。つまり、上下のワーク310U,310Dを容易に分離できる。
【0125】
次に、
図14及び
図16Cに示されるように、吸着部40によって上のワーク310Uを持ち上げた後に、各々の変形装置50を特定第2板部512B,512Cから離反させる。この結果、持ち上がっている上のワーク310Uは、全体的に特定第2板部512B,512C側へ揺れ戻り、元の水平状態に戻るとともに、弾性変形状態も元に戻る。このため、互いに嵌合状態が強く、分離できなかった場合でも、上のワーク310Uに嵌り込んでいた下のワーク310Dの、角部513A~513Dを含む嵌り込み状態が外れやすくなる。下のワーク310Dは、上のワーク310Uから外れて落下する。
【0126】
このようにして、ワーク取り出し装置330は、ワーク積層体321の上から、上のワーク310Uだけを確実に1つずつ取り出すことができる。
【0127】
実施例4は、この実施例4の作用、効果の他に、実施例1~3の作用、効果も有する。実施例4では、トンネル部414の狭い空間に配置する変形装置50は、代わりに実施例2の変形装置150(
図9参照)を採用してもよい。
【0128】
以上に説明した実施例1~4の、ワーク10;210;310及びワーク取り出し装置30;130;330について、以下にまとめる。
【0129】
図1、
図9、
図10及び
図15を参照する。第1に、隙間Crをあけて上下方向に積み重ねられた複数個のワーク10;210;310によって、ワーク積層体21;321が構成されている。複数個のワークワーク10;210;310は、成形(賦形)された板材、例えば、鋼鈑のプレス成形や樹脂の射出成型など賦形された板材によって構成されており、板面11t;511tが上下方向を向いている少なくとも1つの第1板部11;511と、この第1板部11;511から上下方向へ延びて板面12t;512tが側方を向いている複数の第2板部12;512とによって、U字状断面に構成された部位を有している。
【0130】
ワーク取り出し装置30;130;330は、ワーク積層体21;321から、複数個のワーク10;210;310を上から順に1つずつ取り出すことが可能な構成である。このワーク取り出し装置;130;330は、ロボット31に設けられたロボットハンド33と、このロボットハンド33に設けられ、ワーク積層体21;321の上端に位置するワーク10U;210U;310Uの第1板部11;511に吸着して持ち上げることが可能な少なくとも1つの吸着部40と、ロボットハンド33に設けられ、上端に位置するワーク10U;210U;310Uの複数の第2板部12;512の少なくとも1つを、第2板部12;512の板面方向Rt;Rt1,Rt2に弾性変形させることが可能な少なくとも1つの変形装置50と、を備えている。
【0131】
このため、ワーク取り出し装置30;130;330によって、ワーク積層体21;321から1つずつ取り出されるワーク10;210;310は、板材によって構成されているので、弾性変形が可能である。このワーク10;210;310は、板面11t;511tが上下方向を向いている第1板部11;511と、この第1板部11;511から上下方向へ延びて板面12t;512tが側方を向いている第2板部12;512とにより、U字状断面に構成された部位を有する。上下方向に積み重ねられたワーク10;210;310の第2板部12,12;512,512同士は、プレス成形などのスプリングバック(高張力鋼鈑の冷間プレスの場合に顕著である)や、摩擦力やデザイン上の複雑な凹凸の係合などによって強く嵌り込む傾向がある。
【0132】
これに対して本発明では、持ち上げようとする上のワーク10U;210U;310Uが、下のワーク10D;210D;310Dに嵌り込んでいても、変形装置50によって、上のワーク10U;210U;310Uの一方の第2板部12;512を板面方向Rtに押し、下のワーク10D;210D;310Dとの当接部(当接点)を支点に、弾性変形させ、吸着部40を介し他方の第2板部12;512に弾性変形を連動させることで、下のワーク10D;310Dの第2板部12;512との嵌り込み状態が外れやすくなる。このため、第1板部11;511に吸着した吸着部40により、上のワーク10U;210U;310Uだけを容易に持ち上げることができる。複雑な形状のワーク10;210;310であっても、より確実に1つずつ取り出すことができる。
【0133】
図2、
図5、
図9、
図10及び
図15を参照する。第2には、前記第1に記載したワーク取り出し装置30;130;330であって、ロボットハンド33と吸着部40と変形装置50;150とを制御する制御部72を備えている。この制御部72は、少なくとも、吸着部40がワーク積層体21;321の上端に位置するワーク10U;210U;310Uの第1板部11;511に吸着しているときには、上端に位置するワーク10U;210U;310Uの第2板部12;512を弾性変形させるように変形装置50;150を駆動するとともに、吸着部40が第1板部11;511を持ち上げたときには、変形装置50;150を第2板部12;512から離反させるように制御する構成である(
図5のステップS05~S08参照)。
【0134】
このため、吸着部40が第1板部11;511に吸着して押し下げているときには、変形装置50;150は第2板部12;512を弾性変形させる。その後、吸着部40が第1板部11;511を持ち上げたときには、変形装置50;150は第2板部12;512から離れる。持ち上げようとする上のワーク10U;210U;310Uが、下のワーク10D;210D;310Dに嵌り込んでいても、第2板部12;512を弾性変形させながら、上のワーク10U;210U;310Uを持ち上げ、持ち上げたときには、変形装置50;150を第2板部12;512から離反させるように制御するので、下のワーク10D;210D;310Dが自重で落下して上のワーク10U;210U;310Uだけを効率よく取り出すことができる。
【0135】
図1C、
図2、
図5、
図9、
図10及び
図15を参照する。第3には、前記第2に記載したワーク取り出し装置30;130;330であって、ワーク積層体21;321から吸着部40によって持ち上げられる最上部のワーク10のことを上のワーク10U;210U;310U(最上位ワーク10U;210U;310U)といい、上のワーク10U;210U;310Uの直ぐ下に重なっているワーク10のことを下のワーク10D;210D;310D(下位のワーク10D;210D;310D)という。制御部72は、上のワーク10U;210U;310Uが下のワーク10D;210D;310Dに対する分離位置Ls1(
図1C参照)までの持ち上げを完了したと判断するまでは、変形装置50;150による第2板部12;512の弾性変形作動を継続するように制御する構成である(
図5、
図6のステップS09~S12参照)。
【0136】
このため、吸着部40が上のワーク10U;210U;310Uの第1板部11;511の分離位置Ls1(分離しても次の取出しが可能な高さLs1)までの持ち上げを完了するまでは、変形装置50;150は上のワーク10U;210U;310Uの第2板部12;512を弾性変形させ続ける。このため、下のワーク10Dは上のワーク10Uの持ち上げ動作(運動)に対して慣性により落下しやすい。分離位置Ls1は、下のワーク10D;210D;310Dが嵌合状態を解除して落下しても損傷なく元の位置に搭載される位置であるので、問題なく次のワーク10;210;310の取り出しを自動的に継続することができる。
【0137】
図2、
図5、
図9、
図10及び
図15を参照する。第4には、前記第2~第3に記載したワーク取り出し装置30;130;330であって、ワーク積層体21;321の上端に位置するワーク10;210;310の位置及び角度を検出(認識)することが可能に、ロボットハンド33に設けられている3Dビジョンセンサ71を、更に備えている。制御部72は、3Dビジョンセンサ71によって検出(認識)された、上端に位置する10U;210U;310Uの位置及び角度に基づいてロボットハンド33の姿勢を補正する構成である(
図5のステップS02~S04参照)。
【0138】
このように、ロボットハンド33の姿勢を補正することによって、このロボットハンド33に設けられている吸着部40と変形装置50;150とを、上のワーク10U;210U;310Uの適切な吸着位置及び適切な弾性変形位置に、正確に移動させることができる。
【0139】
図2、
図5、
図9、
図10及び
図15を参照する。第5には、前記第1~第4に記載したワーク取り出し装置30;130;330である。ワーク210;310は、車体の一部を構成する車体パネルであって、ワーク積層体21;321として積み重ねられたときに上に凸となる、少なくとも1つの凸部分を有している。この凸部分は、第1板部11;511と複数の第2板部12,12と;512,512によってU字状断面に構成された部位である。複数の第2板部12,12;512,512の端部12e,12eは、それぞれ折り返しフランジ213,213;415,415を有している。吸着部40は、ワーク積層体21;321の上端に位置するワーク10U;210U;310Uの凸部分から成る第1板部11;511を吸着して持ち上げることが可能な構成である。変形装置50;150は、上端に位置するワーク10U;210U;310Uの複数の第2板部12,12;512のうちの一方を、第2板部12;512の板面方向Rt;Rt1,Rt2に押して弾性変形させることが可能に位置している。
【0140】
折り返しフランジ213;415は、第2板部12;512の剛性を高めている。このため、複数の車体パネル210;310(ワーク210;310)を、台車22に上下に隙間Crをあけて重ねた状態では、上の車体パネル210U;310Uの第2板部12;512と下の車体パネル210D;310Dの第2板部12;512とは、高剛性である折り返しフランジ213,213;415近くの部位で、強く嵌り込みやすい。さらに、上の車体パネル210U;310Uの凸部分の凸側上面11tu;511tu(第1板部11;511の上面11tu;511tu)を吸着のため下方に押すと、上の車体パネル210U;310Uの凸部分419の凸側上面11tu;511tuと、下の車体パネル210D;310Dの凸部分の凸側上面11tu;511tuとの、上下間の隙間Crが無くなる又は減少する。このため、上の車体パネル210U;310Uの第2板部12;512と下の車体パネル210D;310Dの第2板部12;512とは、高剛性である折り返しフランジ213;415近くの部位で、強く嵌り込みやすい。
【0141】
これに対し、本発明では、折り返しフランジ213;415によって剛性の高まった一方の第2板部12A;512B,512Cを弾性変形させ、対応する他方の第2板部12B;512A,512Dに弾性変形が伝わることで、容易に分離できる。
【0142】
図13及び
図15を参照する。第6には、前記第1~第5に記載したワーク取り出し装置330であって、ワーク310は、少なくとも4つの第2板部512を有している。変形装置50(
図13参照)は、ワーク積層体321の上端に位置するワーク310U(
図15参照)の、稜線513B(
図13参照)を介し隣接し合う2つの第2板部512B(トンネル部414を含む),512C(フロア前部413を含む)を、それぞれの板面512t,512t方向に押して弾性変形させることが可能に、異なる2方向Rt1,Rt2に配列されている。
【0143】
このため、隣接し合う2つの第2板部512B,512Cを、2つの変形装置50によって個別に弾性変形させることができる。従って、2つの第2板部512B,512Cの各板面512t,512tを、同時に弾性変形させると、2つの第2板部512B,512Cの弾性変形量が加算され(増し)、対応する隣接し合う2つの第2板部512A,512Dの間の角部513Dおよび延長線上の414のコーナ部を跨ぐ平面視で屈曲する接合フランジ415が上下に嵌合していても容易に分離できる。また、2つの第2板部512B,512Cの各板面512t,512tを、同時に弾性変形または交互に弾性変形させることにより、ワーク310全体を複雑に(いびつに)変形させることができる。このため、上下のワーク310U,310D同士の強く嵌り合っている部分を、大きく、または連続、強弱を付けて変形させることによって、効果的に外すことができる。
【0144】
図4、
図8及び
図14を参照する。第7には、前記第1~第6に記載したワーク取り出し装置30;130;330であって、変形装置50;150は、少なくとも吸着部40が、ワーク積層体21;321の上端に位置するワーク10U;210U;310Uの、第1板部11;511を持ち上げている状態で、第2板部12;512に対して板面方向Rt;Et1,Rt2に振動を加えるバイブレータ58を備えている。
【0145】
このため、上のワーク10U;210U;310Uと、下のワーク10D;210D;310Dとの、嵌合している部分に振動を加えることによって、上のワーク10U;210U;310Uと、下のワーク10D;210D;310Dとの、嵌り合っている部分の解除を促進することができる。
【0146】
図13及び
図15を参照する。第8には、前記第1~第7に記載したワーク取り出し装置330であって、ワーク310を上から見て三角形Trの頂点P1~P3を想定する。吸着部40は、ワーク積層体321の上端に位置するワーク310U(
図15参照)の、三角形の頂点P1~P3に対応する位置に、各々配置されている。
【0147】
特に、ダッシュボードロアパネルのような薄板で大型ワーク310を、1つの吸着部40によって吸着且つ持ち上げた場合には、ワーク310の姿勢が安定しないため、変形装置50側の第2板部512B,512Cの変形が対応する他方の第2板部512A,512Dに伝達され難い。これに対して本発明では、ワーク310の3つの位置(三角形Trの頂点P1~P3)を、3つの吸着部40によって各々吸着且つ持ち上げるので、ワーク310の姿勢が安定して変形装置50側の第2板部512B,512Cの変形が対応する他方の第2板部512A,512Dに伝達しやすくなる。また、ワーク310の横振れを抑制することもできる。このため、変形装置50により第2板部512を板面方向Rt1,Rt2に弾性変形させて、上下のワーク310,310同士の嵌り合っている部分、例えば上半部411から、角部513A~513D、第2板部512A~512Dにわたる周縁(接合フランジ415)を安定的に解除することができる。
【0148】
図1、
図4、
図8、
図10、
図13及び
図15を参照する。第9には、前記第1~第8に記載したワーク取り出し装置30;130;330であって、ワーク積層体21;321の上端に位置するワーク10;210;310を最上位ワーク10U;210U;310Uとし、この最上位ワーク10U;210U;310Uの直ぐ下に重なっているワーク10;210;310を下位のワーク10D;210D;310Dとする。さらに、最上位ワーク10U;210U;310Uの複数の第2板部12;512のうち、変形装置50;150によって板面方向Rt;Rt1,Rt2へ弾性変形される第2板部12;512を特定第2板部12A;512B,512Cとし、この特定第2板部12A;512B,512Cを除く他の第2板部12;512を残りの第2板部12B;512A,512Dとする。変形装置50;150によって特定第2板部12A;512B,512Cを弾性変形させる変形量de(
図4参照)は、下位のワーク10D;210D;310Dに対する残りの第2板部12B;512A,512Dの嵌り込み状態を分離可能な大きさに設定されている。
【0149】
このため、特定第2板部12A;512B,512Cを弾性変形させる変形量deを、対応する残りの第2板部12B;512A,512Dの嵌り込み状態を分離可能な大きさに設定するので、より確実に解除することができる。
【0150】
図4を参照する。第10には、前記第1~第9に記載したワーク取り出し装置30;330であって、変形装置50は、ワーク積層体21の上端に位置するワーク10U(上のワーク10U)の全体を、この上のワーク10Uの第2板部12A(特定第2板部12A)と共に弾性変形状態とすることが可能な付勢力(押し力)を、上端に位置するワーク10Uの第2板部12Aの板面12tに付与するバネ54(押し圧用バネ54)と、このバネ54の付勢力の付与を解除するアクチュエータ55とを備えている。
【0151】
変形装置50は、制御部72の指令によりアクチュエータ55を駆動し(脱気し)、押し圧用バネ54の付勢力(リターン用バネ66の付勢力を含んでもよい)によって、第2板部12を弾性変形状態とすることができる。このため、吸着部40(
図1参照)が第1板部11に吸着すると同時に、変形装置50によって第2板部12を弾性変形状態とすることができるので、ワーク10,10同士の嵌り合っている部分を、吸着部40の吸着と同時に解除することができる。
【0152】
図9を参照する。第11には、前記第1~第9に記載したワーク取り出し装置130であって、変形装置150は、ワーク積層体21の上端に位置するワーク10U(上のワーク10U)の全体を、この上のワーク10Uの第2板部12A(特定第2板部12A)と共に弾性変形状態とすることが可能な押し力を、上端に位置するワーク10Uの第2板部12Aの板面12tに付与するとともに、押し力の付与を解除することも可能な、アクチュエータ155を備えている。
【0153】
このため、アクチュエータ155によって、変形装置150による第2板部12の弾性変形状態と変形解除状態との切り替え動作を、確実に行うことができる。
【0154】
図1C、
図4、
図10及び
図13を参照する。第12には、前記第1~第9に記載したワーク取り出し装置30;330であって、変形装置50は、少なくとも、吸着部40が第1板部11;511に吸着し且つ第1板部11を押し下げている状態では、第2板部12A;512B,512Cを弾性変形させるバネ機構59と、吸着部40が第1板部11;511を持ち上げた状態では、バネ機構59を第2板部12Aから離反させるアクチュエータ55とを備えている(
図5のステップS05~S12参照)。
【0155】
吸着部40は、上のワーク10U;210U;310Uに吸着するときには、この上のワーク10U;210U;310Uとの密着のため、この上のワーク10U;210U;310Uを上から押し付ける必要がある。このため、吸着部40によって、上のワーク10U;210U;310Uと下のワーク10D;210D;310Dとが共に押し付けられるので、上のワーク10U;210U;310Uの第2板部12は、下のワーク10D;210D;310Dの第2板部12と強く嵌り合ってしまう傾向にある。この結果、上のワーク10U;210U;310Uを持ち上げるときに、その下のワーク10D;210D;310Dをも、持ち上げてしまう。
【0156】
これに対し、本発明では、吸着部40が第1板部11;511に吸着し且つ第1板部11を押し下げている状態では、バネ機構59が第2板部12A;512B,512Cを弾性変形させる。その後、吸着部40が第1板部11;511を持ち上げた状態では、アクチュエータ55がバネ機構59を第2板部12Aから離反させる。持ち上げようとする上のワーク10U;210U;310Uが、下のワーク10D;210D;310Dに嵌り込んでいても、第2板部12;512を弾性変形させながら、上のワーク10U;210U;310Uを持ち上げ、持ち上げたときには、変形装置50を第2板部12;512から離反させるように制御するので、下のワーク10D;210D;310Dが自重で落下して上のワーク10U;210U;310Uだけを効率よく取り出すことができる。
【0157】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。例えば、各実施例の、いずれか2つ以上を組み合わせることは任意である。
図9に示される実施例2の変形装置150は、他の実施例の変形装置50から変更することができる。また、ワーク10;210;310は、車体パネルの構成に限定されるものではなく、U字状断面形状のプレス成形品であればよい。また、ワーク10;210;310を、車体パネルの構成とした場合であっても、ダッシュボードロアやサイドシルに限定されるものではなく、例えば大型であるフロアパネルの構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明のワーク取り出し装置30;130;330は、車体の一部を構成する車体パネルから成る複数個のワーク10;210;310を、上から順に1つずつ取り出すのに好適である。
【符号の説明】
【0159】
10,210,310 ワーク
10U,210U,310U 上のワーク(最上位ワーク)
10D,210D,310D 下のワーク(下位のワーク)
11,511 第1板部
11t,511t 第1板部の板面
11tu,511tu 第1板部の上側の板面(凸部分の凸側上面)
12 第2板部
12A 特定第2板部
12B 残りの第2板部
12e 第2板部の端部
12t 第2板部の板面
21,321 ワーク積層体
30,130,330 ワーク取り出し装置
31 ロボット
33 ロボットハンド
40 吸着部
50,150 変形装置
54 押し圧用バネ
55,155 アクチュエータ
58 バイブレータ
59 バネ機構
71 3Dビジョンセンサ
72 制御部
213 フランジ
Cr 隙間
de 変形量
Ls1 分離位置(第1基準高さ)
P1 三角形の第1頂点
P2 三角形の第2頂点
P3 三角形の第3頂点
Rt,Rt1,Rt2 第2板部の板面方向
Sp 上のワークの押し下げ量
Tr 三角形