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特開2024-134837外断熱建築物において通気層を有する密着型外断熱に用いられる外壁構造
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  • 特開-外断熱建築物において通気層を有する密着型外断熱に用いられる外壁構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134837
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】外断熱建築物において通気層を有する密着型外断熱に用いられる外壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20240927BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20240927BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20240927BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E04B1/70 D
E04B2/56 645B
E04B2/56 644B
E04B2/56 644H
E04B1/76 500F
E04B1/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045239
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】396027108
【氏名又は名称】株式会社テスク
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 高光
(72)【発明者】
【氏名】橘 裕滋
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DB01
2E001DB02
2E001DD01
2E001FA04
2E001GA12
2E001GA17
2E001GA24
2E002EA01
2E002EA02
2E002FB03
2E002GA01
2E002MA23
2E002MA27
2E002MA33
(57)【要約】
【課題】 通気層に関連する漏水を防止する機能を有する密着通気層型の外断熱外壁構造を提供する。
【解決手段】 本発明に係る外壁構造は、「雨仕舞」と呼ばれる施工原理にしたがった構造を有することを特徴とする。雨仕舞の施工原理とは、雨水が濡らす部位や部材の形態及び配置の選択によって、表面や隙間の雨水を適切に処理し、不具合の発生を防ぐものである。外壁構造は、コンクリート外壁と、断熱層と、外装下地材とを備える。断熱層は、コンクリート外壁に接して配置される。外装下地材は、断熱層に対向して配置された上下方向の複数の条溝を有し、それらの複数の条溝の間の部分が断熱層に接する。外装下地材には、それに接するように外装材が配置される。外壁構造は、さらに、少なくとも複数の条溝の開口を覆うように配置された防水シートを備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外断熱建築物において通気層を有する密着型外断熱に用いられる(雨仕舞対応型)外壁構造であって、
コンクリート外壁と、
前記コンクリート外壁に接する断熱層と、
前記断熱層に対向して配置された複数の条溝を有し、前記複数の条溝の間の部分が前記断熱層に接する、外装下地材と、
前記外装下地材に接する外装材と、
少なくとも前記複数の条溝の開口を覆うように配置された防水シートと
を備える外壁構造。
【請求項2】
前記防水シートは、前記外装下地材の頂面全体を覆うように配置された通気防水シートであり、前記通気防水シートは、少なくとも前記複数の条溝に対応する位置に、水を通さず空気を通す大きさの複数の孔が設けられている、
請求項1に記載の外壁構造。
【請求項3】
前記防水シートは、前記外装下地材の頂面全体を覆うように配置された透湿防水シートであり、前記透湿防水シートは、少なくとも前記複数の条溝に対応する位置において、水を通さず水蒸気を通すものである、
請求項1に記載の外壁構造。
【請求項4】
前記外装下地材の内部において、前記複数の条溝を互いに連通させる1つ又は複数の横条溝が設けられている、
請求項1に記載の外壁構造。
【請求項5】
前記1つ又は複数の横条溝は、前記外装下地材の頂面における前記複数の条溝の前記開口から所定の距離だけ離れた位置に設けられている、
請求項4に記載の外壁構造。
【請求項6】
前記1つ又は複数の横条溝は、換気口の下方、又は、換気口の上方及び下方の両方に設けられている、
請求項4に記載の外壁構造。
【請求項7】
前記外断熱建築物は、2つ又はそれより多い階で構成され、前記断熱層及び前記外装下地材は、それぞれの階の高さに対応する高さを有し、上下に隣接する2つの前記断熱層の間の接合位置は、各階の床スラブの上面に対応する位置と整合している、
請求項1に記載の外壁構造。
【請求項8】
上下に隣接する2つの前記外装下地材の間には目地が設けられ、前記目地は、前記接合位置の下方に配置される、
請求項7に記載の外壁構造。
【請求項9】
窓枠と、
前記窓枠との間に間隔をもって前記断熱層及び前記外装下地材の底面に設けられ、前記底面の長さ方向に沿って延びる長さと外気を前記複数の条溝に導入するための複数の開口とを有する、チャンネル部材と、
前記窓枠と前記チャンネル部材との間に、前記間隔にわたって配置された第1のシーリングと
を有する窓部をさらに備える、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の外壁構造。
【請求項10】
前記チャンネル部材は、前記底面に接する上面と、前記上面に対向する下面とを有し、
前記上面には、前記複数の条溝に対応する位置において前記上面の長さ方向に延びるスリットが設けられ、前記下面には、その長さ方向に間隔をもって複数の開口が設けられた、
請求項9に記載の外壁構造。
【請求項11】
前記チャンネル部材は、前記底面に接する上面と、前記上面に対向する下面とを有し、
前記上面には、前記複数の条溝に対応する位置において前記上面の長さ方向に間隔を持って複数の開口が設けられ、前記下面には、その長さ方向に間隔をもって複数の開口が設けられた、
請求項9に記載の外壁構造。
【請求項12】
前記断熱層と前記チャンネル部材との境界部分において、前記窓枠と前記第1のシーリングとに接するように配置されるバッカーを有する、
請求項9に記載の外壁構造。
【請求項13】
前記チャンネル部材は、前記外装材より外方に突出する突出部を有し、前記突出部と前記外装材の底面との間に第2のシーリングが配置される、請求項9に記載の外壁構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造の外断熱建築物に関し、より具体的には、通気層に関連する漏水を防止することが可能な密着通気層型の外断熱外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の外断熱建築物は、コンクリート躯体の外側を断熱層で被覆するため、太陽の日射による熱ストレスを原因とするひび割れを抑制できること、コンクリート躯体が空気に接触しないため、コンクリートの中性化を抑制することができて、鉄筋棒鋼の腐蝕を防止することが可能であり、建物の耐久性が向上すること、さらに、建物内の温度環境を維持することができて、建物内の結露発生を抑制することが可能であるため、カビ、ダニの発生を抑制することができ、健康面でも優れていることなどの理由により、省エネルギーの高性能建物として評価されている。
【0003】
こうした外断熱建築物に用いられる主な外断熱工法として、以下の4つの工法を挙げることができる(非特許文献1)。
(1)乾式密着工法
外装下地材と断熱層とを一体化した断熱複合パネルを外壁(躯体)に張設する工法である。
(2)湿式密着工法
外壁(躯体)に断熱層を張設し、断熱層に薄い塗壁を塗布する工法である。
(3)通気層工法
外壁(躯体)に断熱層を張設し、その外側に空間を空けて外装下地材又は外装材を配置する工法である。断熱層と外装下地材又は外装材との間の空間が通気層となる。
(4)二重壁工法
躯体に断熱層を張設し、その外側に空間を空けて肉厚のレンガ、コンクリートブロック、コンクリート板などの外壁を配置する工法である。断熱層と外壁との間の空間が通気層となる。
【0004】
これらの工法の中で、外壁構造の内部結露を防止することができる工法として、特に(3)の通気層工法が優れると言われている。通気層工法は、断熱層と外装下地材又は外装材との間に通気層が設けられているため、室内からの水蒸気(湿気)が通気層を通って外部に排出されるとともに、外装下地材又は外装材の日射熱による温度上昇の室内への影響を抑制することができる。本出願の出願人は、通気層工法に用いることができる外断熱外壁構造として、例えば特許文献1に記載される構造を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7174995号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】北海道外断熱建築協会編、「外断熱工法ハンドブック」、2003年、P.30~39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に提案された外壁構造は、火災時において断熱材への延焼を防止する機能をきわめて効果的に発揮する構造であるものの、通気層に起因する漏水を防止する観点からは、さらに改良の余地がある。
【0008】
第1に、特許文献1の外壁構造においては、特に笠木部において通気層と外気とが遮るものなく連通しており、気流に乗った雨滴が笠木内部に付着し、さらに風力によって水滴が通気層内に誘導され、通気層を降下する場合がある。通気層を降下した雨滴は、窓部において雨漏りを発生させるおそれがある。
【0009】
次に、特許文献1の外壁構造においては、窓部の上側に見切枠が設置されている。見切枠と窓枠とは当接して設けられ、そのため、見切枠と断熱層下面との間にシーリング材を充填する場合に、工程上、外装材及び外装下地材と見切枠との間の狭い隙間から上方に向かってシーリング材を充填する必要がある。シーリング材の充填精度が悪いときには、シーリング材が断熱層の屋外側の表面より通気層内に突出することがあり、この突出部分が通気層を降下する水滴の受け皿となり、溜まった水滴が窓部内外の圧力差によって室内側に吸い込まれるおそれがある。
【0010】
さらに、特許文献1の外壁構造においては、上下階で隣接する断熱層の接合部分は、各階の床スラブ上面より下方に位置する。こうした構造の場合、コンクリート外壁の打設時に設置される型枠に起因して、断熱層を損傷させたり、汚損させたりする可能性があり、その結果、断熱層の接合部に隙間が発生するおそれがある。
【0011】
さらに、特許文献1の外壁構造においては、横目地の位置が断熱層の接合部分に位置しているため、横目地のシーリング材が経年劣化や施工不良によって外装材から剥離した場合、剥離部分から浸入した雨水が断熱層の接合部分に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0012】
上記の背景技術における課題に鑑み、本発明は、通気層に関連する漏水を防止する機能を有する密着通気層型の外断熱外壁構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る外壁構造は、「雨仕舞」と呼ばれる施工原理にしたがった構造を有することを特徴とする。雨仕舞の施工原理とは、雨水が濡らす部位や部材の形態及び配置の選択によって、表面や隙間の雨水を適切に処理し、不具合の発生を防ぐものである。
【0014】
一態様において、本発明は、通気層を有する密着型外断熱に用いられる雨仕舞対応型の外壁構造を提供する。外壁構造は、コンクリート外壁と、断熱層と、外装下地材とを備える。断熱層は、コンクリート外壁に接して配置される。外装下地材は、断熱層に対向して配置された上下方向の複数の条溝を有し、それらの複数の条溝の間の部分が断熱層に接する。外装下地材には、それに接するように外装材が配置される。外壁構造は、さらに、少なくとも複数の条溝の開口を覆うように配置された防水シートを備える。
【0015】
防水シートは、通気防水シートとすることも透湿防水シートとすることもできる。通気防水シートは、外装下地材の頂面全体を覆うように配置され、少なくとも複数の条溝に対応する位置に、水を通さず空気を通す大きさの複数の孔が設けられている。透湿防水シートは、外装下地材の頂面全体を覆うように配置され、少なくとも複数の条溝に対応する位置において、水を通さず水蒸気を通すものである。
【0016】
一実施形態においては、外装下地材の内部に、複数の条溝を互いに連通させる1つ又は複数の横条溝が設けられていることが好ましい。この横条溝は、外装下地材の頂面における複数の条溝の開口から所定の距離だけ離れた位置に設けられている。別の実施形態においては、横条溝は、換気口の周囲において、換気口の下方、又は、換気口の上方及び下方の両方に設けられている、
【0017】
一実施形態において、外断熱建築物は、2つ又はそれより多い階で構成されており、この場合、断熱層及び外装下地材は、それぞれの階の高さに対応する高さを有し、上下に隣接する2つの断熱層の間の接合位置は、各階の床スラブの上面に対応する位置と整合していることが好ましい。この形態においては、上下に隣接する2つの外装下地材の間には目地が設けられ、目地は、前記接合位置の下方に配置されることがより好ましい。
【0018】
外壁構造は、窓部を備える場合には、窓枠と、チャンネル部材とを有する。チャンネル部材は、窓枠との間に間隔をもって断熱層及び外装下地材の底面に設けられる。チャンネル部材は、底面の長さ方向に沿って延びる長さと外気を複数の条溝に導入するための複数の開口とを有する。
【0019】
一実施形態において、チャンネル部材は、断熱層及び外装下地材の底面に接する上面と、上面に対向する下面とを有する。上面には、複数の条溝に対応する位置において上面の長さ方向に延びるスリットが設けられる。下面には、その長さ方向に間隔をもって複数の開口が設けられる。別の実施形態において、チャンネル部材は、断熱層及び外装下地材の底面に接する上面と、上面に対向する下面とを有する。上面には、複数の条溝に対応する位置において上面の長さ方向に間隔を持って複数の開口が設けられる。下面には、その長さ方向に間隔をもって複数の開口が設けられる。
【0020】
窓部の断熱層とチャンネル部材との境界部分において、窓枠と第1のシーリング部材とに接するように配置されるバッカーを有することが好ましい。また、チャンネル部材は、外装材より外方に突出する突出部を有することが好ましい。突出部と外装材の底面との間には、第2のシーリングが配置される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る外壁構造は、「雨仕舞」の施工原理にしたがった構造を有することを特徴とする。雨仕舞の施工原理を取り入れた外壁構造は、現場における造膜や接着、シーリング処理などといった、品質管理の難しい技術に依存せず、その性能が施工次第で決まるものではないため、より確実で信頼性の高い漏水防止効果を奏する。また、使用される部材の位置や寸法が変化しない限り、耐久性のある材料を使用することによって長期間の使用でも最小限のメンテナンスで同じ性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による外壁構造を示す断面斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による外壁構造の一部(窓部以外の部分)を示す拡大縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態による外壁構造に用いられる断熱複合パネルの横断面図である。
図4】本発明の一実施形態による外壁構造の笠木付近(空気流出口)及び基礎付近(空気流入口)を示す縦断面図である。
図5】本発明の一実施形態による外壁構造における笠木を示し、(A)は笠木と他の構成部分との関係を示す上面図、(B)は笠木の一部の斜視図、(C)は笠木の支持部材の斜視図である。
図6】本発明の一実施形態による外壁構造の窓部周辺を示す縦断面図である。
図7】本発明の一実施形態による外壁構造の窓部と区画通気層との関係を示し、(A)は図6における窓部上部の拡大図、(B)はチャンネル部材の一部の斜視図、(C)はチャンネル部材の平板の一部の斜視図である。
図8】本発明の別の実施形態による外壁構造の窓部と区画通気層との関係を示し、(A)は窓部上部の拡大図、(B)はチャンネル部材の一部の斜視図、(C)はチャンネル部材と外装下地材との位置関係を示す上面図、((D)はチャンネル部材の平板の一部の斜視図である。
図9】本発明のさらに別の実施形態による外壁構造の窓部と区画通気層との関係を示し、(A)は窓部上部の拡大図、(B)はチャンネル部材の一部の斜視図、(C)はチャンネル部材の平板の一部の斜視図である。
図10】本発明の一実施形態による外壁構造の外装下地材の条溝を示し、(A)は窓部上方の一部の拡大図、(B)は換気口周辺の拡大図、(C)は横条溝部分の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(外壁構造の概要)
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による、外断熱建築物において通気層を有する密着型外断熱に用いられる外壁構造G(以下、単に構造Gという)を示す断面斜視図である。図2は、構造Gの窓部以外の一部を拡大して示す拡大縦断面図である。図3は、断熱複合パネル1の構造を示し、断熱複合パネル1の一部の横断面図である。図4は、本発明の一実施形態による外壁構造の笠木付近(空気流出口)及び基礎付近(空気流入口)を示す縦断面図である。
【0024】
本発明に係る外壁構造は、「雨仕舞」の施工原理にしたがった構造を有することを特徴とする。雨仕舞の施工原理とは、雨水が濡らす部位や部材の形態及び配置の選択によって、表面や隙間の雨水を適切に処理し、不具合の発生を防ぐものである。以下においては、外装材21の外面に沿って地面に平行な方向を幅方向、外装材21の外面に沿って幅方向と直交する方向を高さ方向、幅方向及び高さ方向と直交する方向を厚さ方向という。
【0025】
構造Gは、コンクリート外壁31と、その外側に配置される断熱複合パネル1とを備える。コンクリート外壁31は、コンクリート躯体3の一部を構成しており、コンクリート躯体3は、コンクリート外壁31に加えて、各階を隔てる床スラブ32と基礎33とをさらに有する。断熱複合パネル1は、断熱層15と、断熱層15に対して厚さ方向に接する外装下地材11と、外装下地材11に対して厚さ方向に接する外装材21とを有する。断熱複合パネル1は、複数の条溝14からなる区画通気層7を内部に有し、断熱層15がコンクリート外壁31に接するように配置されている。
【0026】
構造Gには、窓が配置される窓開口部が設けられている。窓開口部の内側周囲には、外窓を取り付けるための窓枠80が配置される。窓開口部の上方、下方及び側方には、複数の断熱複合パネルが並置される。複数の断熱複合パネルは、互いに縦目地42a、42bを介して幅方向に並置され、横目地41を介して高さ方向に並置される。断熱複合パネル1は、複数の脱落アンカー35によって、コンクリート外壁31に固定される。構造Gは、必要に応じて、コンクリート外壁31及び断熱複合パネル1を貫通する換気口24が設けられる。
【0027】
構造Gは、さらに、コンクリート外壁31と、断熱層15の頂面に配置する、炭酸カルシウム発泡体や高密度ポリスチレンフォームなどの断熱材15aとに接するように配置される防水層44を備える。構造Gは、さらに、防水層44の少なくとも一部の上に接し、そこから断熱複合パネル1の頂面の上方を覆うように配置される笠木5を備える。笠木5に覆われた断熱複合パネル1の外装下地材11の頂面には、後に詳しく説明される通気防水シート71が配置される。
【0028】
(断熱複合パネル)
構造Gにおいては、断熱複合パネル1として、例えば特許文献1に開示されるものと同じ構成のものを用いることができる。以下、特許文献1に開示される断熱複合パネル1を説明する。図3は、断熱複合パネル1の構造を示し、断熱複合パネル1の一部の横断面図である。断熱複合パネル1は、断熱層15の外側に外装下地材11が接し、外装下地材11の外側に外装材2が接する構造を有する。断熱層15は、例えば厚さ75mm、幅500mm、高さ2700mmのサイズの1つの断熱材を、高さ方向及び幅方向に必要な枚数並べることによって形成することができる。断熱材の材質は、限定されるものではないが、典型的には、発泡プラスチック断熱材(JIS A9511)が用いられる。
【0029】
外装下地材11は、高さ方向に延びる複数の条溝14を有し、条溝14の間には厚肉部13が配置されており、条溝14の厚さ方向に隣接して薄肉部12が配置される。すなわち、外装下地材11は、幅方向に、厚肉部13と、条溝14及び薄肉部12とが交互に並んだ構造を有する。断熱層15には、厚肉部13が接する。外装下地材11は、例えば厚さ26mm、幅490mm、高さ2700mmのサイズを有し、例えば深さ13mm、開口幅30mmの複数の条溝14を有する1つの押出成形セメント板が、高さ方向及び幅方向に必要な枚数並べられることによって、形成される。外装材2は、限定されるものではないが、典型的には外装用タイル、石材、塗装仕上げなどが用いられる。
【0030】
幅方向に隣接する外装材2及び外装下地材11の間には、縦目地42a、42bが設けられ、高さ方向に隣接する外装材2及び外装下地材11の間には、横目地41が設けられる。横目地41には、図2に示されるように、高さ方向に隣接する外装下地材11の各々の条溝14を連通させる通気バッカー413が配置されることが好ましい。外装下地材11の下から上まで連通する条溝14は、上昇空気流70が通る区画通気層7となる。横目地41、縦目地42a、42bには、それぞれシーリング411、421、422が充填される。
【0031】
ここで、構造Gにおいては、図2に示されるように、高さ方向に隣接する2つの断熱複合パネル1の断熱層15の接合位置は、床スラブ32の上面の位置と同じ高さ方向位置になるように配置される。このように高さ方向に隣接する断熱層15の接合位置と床スラブ32の上面の位置とが同じ高さとなることによって、コンクリート外壁31の打設時に設置される型枠に起因する断熱層15の損傷や汚損を防止することができる。
【0032】
さらに、高さ方向に隣接する2つの断熱複合パネル1の外装下地材11及び外装材2の間の横目地41の位置は、断熱層15の接合位置より下方になるように配置される。このように、横目地41の位置が断熱層15の接合位置より下方になることによって、例えば横目地41のシーリング411に隙間が生じても、横目地41から浸入した雨水は条溝14から下降するため、断熱層15の接合部分に入って断熱層15とコンクリート外壁31との間に入り込むおそれが少ない。
【0033】
コンクリート躯体3の基礎33に対応する部分においては、図4に示されるように、構造Gは、他の断熱層15より薄く形成された下部断熱層222と、下部断熱層222に接して配置された外装材221とを有するものとすることができる。このように構成されることによって、外装材221の表面とその上方に位置する他の断熱層15の表面とが同一面上に位置することになる。通気層の換気量は、通気層の最も狭い部分の断面積、通気層の高さ、空気の流動係数、重力加速度、外気温度、室温で決まり、他の条件が同じであれば通気層の最も狭い部分の断面積で決まることから、区画通気層7の上端から下端まで均一の断面積を確保することによって、火災時における区画通気層7の排気は、無風時においても滞ることがない。
【0034】
(笠木)
構造Gは、防水層44の少なくとも一部に接し、断熱複合パネル1の頂面の上方を覆うように配置される笠木5を備える。図5は、構造Gにおける笠木5を示し、図5(A)は、隣接する笠木5の端部(すなわち、接続部分)と他の部分との関係を示す上面図、図5(B)は、笠木5の一部の斜視図、図5(C)は、笠木5の支持部材6の斜視図である。なお、図5(A)において、2つの曲線で区切られた3図のうちの左図は、防水層44及び断熱複合パネル1と通気防水シート71との位置関係を示し、中図は、防水層44、笠木5、ジョイント部材53及び支持部材6の位置関係を示し、右図は、コンクリート外壁31及び断熱複合パネル1の位置関係を示す。
【0035】
笠木5は、幅方向に連続して配置される複数の笠木本体50から構成される。笠木本体50は、図4及び図5に示されるように、防水層44の少なくとも一部の上面に接して配置される基部5aと、基部5aに連続し、断熱複合パネル1の区画通気層7、外装下地材11及び外装材21の上方においてこれらに接することなく水平に延びる張出部5bと、張出部5bの外縁から下方に延びる立下り部5cとを有する。基部5a及び張出部5bを合わせて、水平板51ともいう。立下り部5cの下端縁には、外方に向かって斜めに形成された斜辺5dが設けられることが好ましい。笠木本体50の各々は、例えば鋼、アルミニウム、ステンレスなどを用いて作製することができ、耐火性の観点から考えれば鋼製が好ましく、耐腐食性も考慮すればアルミニウム製又はステンレス製であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0036】
笠木本体50は、さらに、笠木本体50を固定する固定具54が配置される部分に突起部52を有することが好ましい。突起部52を設けて、この下の空間にシーリング(図示せず)を充填することによって、固定具54を挿入した部分からの雨水の浸入を防止することができる。図4に示されるように、笠木5の直下の断熱層15は、上端の一部に切欠16が設けられ、切欠16にコンクリート外壁31と同じコンクリート材31aが充填されており、固定具54が、このコンクリート材31aの部分に固定されることが好ましい。
【0037】
隣接する笠木本体50間には、図5(A)及び図5(B)に示されるように、ジョイント部材53が2つの笠木本体50の端部間にわたって配置されることが好ましい。隣接する笠木本体50の接続部分の下方にジョイント部材53を配置することによって、隣接する笠木本体50の接続部からの雨水の浸入を防止し、仮に浸入した場合でもジョイント部材53で受けて屋上床部に排出することができる。ジョイント部材53は、笠木本体50と同形状であることが好ましい。
【0038】
笠木5の張出部5bの下には、外装下地材11の上端との間に空間を設けるとともに張出部5bを支持することができる支持部材6(図5(C))が配置される。支持部材6は、図5(A)に示されるように、2つの笠木本体50が隣接する接続部分と、笠木本体50の幅方向中央部分とに配置されることが好ましいが、これらの場所に限定されるものではない。支持部材6は、図5(C)に示されるように、水平片61と、水平片61の両側から下方に延びる2つの立下り片62とを有し、水平片61の上面が張出部5b又はジョイント部材53の下面に接する。支持部材6は、例えば鋼、アルミニウム、ステンレスなどを用いて作製することができ、耐火性の観点から考えれば鋼製が好ましく、耐腐食性も考慮すればアルミニウム製又はステンレス製であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
支持部材6は、孔64に挿入された、例えばねじなどの固定具63によって、外装下地材11の厚肉部13に固定される。支持部材60は、固定具63で固定するのではなく、外装下地材11の厚肉部13に挿入される固定具54を用いて、笠木本体50とともに固定してもよい。支持部材60は、水平片61の上面をジョイント部材53又は笠木本体50の下面に、例えば両面テープなどを用いて接着することによって仮固定してもよい。また、支持部材6を上下逆にして用い、水平片61の下面を外装下地材11の厚肉部13の上面に、例えば両面テープなどを用いて接着してもよい。
【0040】
(通気防水シート)
笠木5の下方、より具体的には笠木5の支持部材6の下には、図4及び図5に示されるように、水を通さず空気を通す通気防水シート71が配置される。通気防水シート71は、図5(A)に示されるように、外装下地材11の頂面全体を覆うように配置することができる。ただし、外装下地材11の頂面全体が通気防水シート71に覆われることに限定されるものではなく、通気防水シート71は、少なくとも複数の条溝14の開口を覆うように配置されればよい。この場合は、図5(A)の左図に示されるクロスハッチングの部分が通気防水シート71で覆われることになる。また、通気防水シート71は、複数の外装下地材11の幅方向すべて(すなわち、建築物の幅全体)の頂面に配置することもできるが、通気防水シート71によって覆われる条溝14の数が多くなると、通気防水シート71は空気を通すことができるものではあるものの、空気の排出効率が低下する可能性があることを考慮すれば、通気防水シート71は、窓部8の幅に対応する部分のみにわたって外装下地材11の頂面に配置されることが好ましい。
【0041】
通気防水シート71は、外部から笠木5の下の空間を通って浸入してくる雨水は通さないが、複数の条溝14からの空気は通すことができるものであれば、限定されるものではない。このような通気防水シート71として、例えば、建築用途で用いられる不織布(例えば、デュポン社製のタイベックス(商標))に、少なくとも複数の条溝14に対応する位置に、雨水は通さないが空気は通す微細な空気孔を設けたものを用いることができる。空気孔は、空気の粒子の大きさ(0.01μm~10μm)より大きい10μm以上のサイズであり、雨の粒子の大きさ約2000μmより小さいサイズとすればよい。
【0042】
(通気量について)
上述のように、笠木5は、断熱複合パネル1の上方において、外装下地材11の複数の条溝14との間に空間を保持した状態で取り付けられる。そのため、複数の条溝14からなる区画通気層7の内部を上昇する上昇空気流70は、区画通気層7の上端から排出された後、笠木5と外装下地材11との間の空間を滞りなく通り、笠木5の立下り部5cと外装材21の外面との間を下降し、屋外に排出される。したがって、本発明に係る外壁構造においては、区画通気層7から排出された空気は、笠木5の下部に溜まることなく屋外に排出され、区画通気層からの空気の排出が溜まった空気によって阻害されるということがない。
【0043】
また、本発明に係る構造においては、外装下地材11と笠木5との間の上昇空気流70の流れが、区画通気層7の上昇空気流70の流れを阻害しないように構成されている。すなわち、本発明において、笠木5と外装下地材11との間の空間の広さは、複数の条溝14の並び方向(すなわち、幅方向)における当該空間の単位長さ当たりの断面積が、複数の条溝14の並び方向における複数の条溝14の単位長さあたりの断面積より大きくなるように設定されている。一実施形態においては、笠木5と外装下地材11との間の空間の単位長さ当たりの断面積を約100m/mとすることができ、区画通気層7の単位長さあたりの断面積を約70m/mとすることができる。したがって、区画通気層7の下端から入り内部を上昇する上昇空気流70は、滞ることなくスムーズに流れる。
【0044】
コンクリート躯体3の基礎33に対応する部分においては、図4に示されるように、構造Gは、他の断熱層15より薄く形成された下部断熱層222と、下部断熱層222に接して配置された外装材221とを有するものとすることができる。このように構成されることによって、外装材221の表面とその上方に位置する他の断熱層15の表面とが同一面上に位置することになる。したがって、区画通気層7の断面積が、区画通気層7の上端と下端とで均一になり、排気がスムーズになる。すなわち、通気層の換気量は、通気層の最も狭い部分の断面積、通気層の高さ、空気の流動係数、重力加速度、外気温度、室温で決まり、他の条件が同じであれば通気層の最も狭い部分の断面積で決まることから、区画通気層7の上端から下端まで均一の断面積を確保することによって、区画通気層7の排気は滞ることがない。
【0045】
(窓部)
次に、構造Gが備える窓部8について説明する。図6は、構造Gの窓部8とその周辺部を示す縦断面図である。図6においては、窓開口部の中間部分が一部省略して示されている。窓部8は、窓枠80と、窓枠80の外側に設けられたチャンネル部材9と、見切枠81bと、窓枠80の内側に設けられた木製枠82とを有するものとすることができる。窓枠80、チャンネル部材9、及び見切枠81bは、耐火性の高いものであることが好ましく、典型的にはアルミニウムで作製される。窓枠80、木製枠82、断熱層15及びコンクリート外壁31の間の空間には、屋外側から順に、モルタル801と発泡ウレタン802とが充填されている。この構造は、燃焼しづらいモルタル801が外側に配置され、燃焼しやすい発泡ウレタン802が内側に配置されているため、屋外での火災時に断熱層15に延焼する可能性を低減させることができる。
【0046】
なお、図6に示されるように、実際の製造工程においては断熱層15の下面の外装下地材11側に下方に突出する突起151が設けられ、外装下地材11の下端は、突起151の下端と面一となっている。また、窓枠80は、支持棒鋼803を介してコンクリート外壁31と連結されるが、支持棒鋼803がモルタル801に埋設されているため、支持棒鋼803の腐食を防止し、窓の耐久性を向上させることができる。
【0047】
(チャンネル部材)
特許文献1の外壁構造においては、既に述べたように、窓部の上部の見切枠と窓枠とが当接して設けられているため、見切枠と断熱層下面との間のシーリングの充填精度が悪いと、断熱層の屋外側の表面より区画通気層側に突出したシーリング材が区画通気層を降下する水滴の受け皿となり、溜まった水滴が窓部内外の圧力差によって室内側に吸い込まれるおそれがある。こうした問題の発生を防止するために、本発明に係る構造Gでは、チャンネル部材9を用いて窓枠80と区画通気層7とを分離する。
【0048】
図7は、窓部8の上部における断熱複合パネル1の下端付近を拡大して、構造Gの窓部8と区画通気層7との関係を示す図である。図7(A)は、図6における窓部8の上部の拡大図、図7(B)はチャンネル部材9の一部の斜視図、(C)はチャンネル部材9の平板91の一部の斜視図である。チャンネル部材9は、図7(B)に示されるように、長尺の部材92を有する。部材92は、下面921、側面922、及び上面923a、923bによって構成された上向き略C字形状の横断面を有し、スリット形態の開口924が上向きの状態で、その長さ方向が断熱複合パネル1の幅方向に延びるように、断熱複合パネル1の低面に取り付けられる。より具体的には、部材92は、上面923aが外装下地材11の底面の少なくとも一部に接し、上面923bが断熱層15の底面の少なくとも一部に接するように、外装下地材11に取り付けられる。部材92は、例えば、ねじ孔92cを挿通するねじなどで取り付けることができる。
【0049】
部材92の開口924の幅は、断熱複合パネル1の条溝14の開口幅と概ね同じ幅とすることもそれより狭い幅とすることもできる。上面923a、923bに対向する下面921には、複数の開口92aが、部材92の長さ方向に沿って間隔をもって設けられる。上昇空気流(外気)70は、これらの開口924及び92aを通って、複数の条溝14に供給される。開口924は、上述のようにスリット形態で設けられているため、外装下地材11における条溝14の位置の制約を受けることなく、条溝14に上昇空気流70を供給することができる。開口924はスリット形態であるため、空気や水の膜が形成されることがない。
【0050】
開口92aは、下面921の中央部ではなく、開口924の位置に対して屋外側にずれた位置に設けられることが好ましい。開口924と開口92aとの位置関係をこのようにずらすことによって、開口92aが雨水で閉止され上昇空気流70の流入時に水しぶきが発生しても、開口92aから入った空気が部材92の上面(例えば、図7(B)の上面923a)にあたり、部材92と断熱層15との接合部に雨水が浸入する可能性は低い。
【0051】
この実施形態においては、上面923aのねじ孔92cは、下面の開口92aに対応する位置に設けられることが好ましい。開口92aとねじ孔92cとをこのような位置関係で設けることによって、ねじ孔92cを挿通するねじの取り付けを開口92aから実施することができ、施工が容易である。
【0052】
チャンネル部材9は、図7(C)に示される平板91を有することが好ましい。平板91は、部材92と同じ長さ、部材92より広い幅を有し、例えば孔91b及び孔92bに挿通されたねじによって、部材92の下面921に取り付けることができる。平板91は、開口91aを有する。平板91は、図7(A)に示されるように、開口91aが部材92の開口92aに整合し、一方の側辺が部材92の側面922と面一になり、他方の側辺が外装材21より外方に突出するように、部材92に取り付けられる。平板91の外装材21からの突出部は、水切りとして機能する。平板91と外装材21との間には、シーリング(第2のシーリング)431e及びバッカー432eが配置される。
【0053】
チャンネル部材9(部材92及び平板91)の材質は、耐候性を有するものであれば特に限定されず、例えばアルミニウムを用いることができる。
【0054】
チャンネル部材9と窓枠80とは離間しており、その空間には、シーリング(第1のシーリング)431a及びバッカー432aが配置される。シーリング431aは、図7(A)に示されるように、チャンネル部材9の側面922と窓枠80の屋外側の面との間に、下面が平板91と概ね同じ位置になるように配置される。特許文献1の外壁構造においては、上述のとおり、シーリングの充填が難しく、充填精度に問題が生じる可能性があった。しかし、本発明に係る構造Gでは、この位置にシーリング431aを配置することによって、シーリングの充填が容易であり、充填精度を高めることができる。
【0055】
また、バッカー432aは、図7(A)に示されるように、チャンネル部材9の部材92と断熱層15との境界部分において、窓枠80の屋外側の面とモルタル801とシーリング431aとに接するように配置される。したがって、断熱層15と部材92との間に隙間が生じたとしても、内外の圧力差に起因する雨水の浸入を防止することができる。また、バッカー432aをこの位置に配置することによって、シーリング431aの実質的な2面接着を実現している。すなわち、シーリング431aは、実際には窓枠80、チャンネル部材9及びバッカー432aとの3面接着となっているが、バッカー432aとモルタル801との境界は接着されていない。したがって、シーリング431aは、実質的に、窓枠80及びチャンネル部材9の2面によって制約を受けるに留まり、そのため、3面接着の場合には問題となる可能性がある構造Gの振動などによる亀裂等を、効果的に防止することができる
【0056】
図8は、窓部8の上部における断熱複合パネル1の下端付近を拡大して、構造Gの窓部8と区画通気層7との関係を示す図である。図8(A)は、図7とは別のチャンネル部材9が用いられた、窓部8の上部の拡大図、図8(B)は別のチャンネル部材9の一部の斜視図、(C)は別のチャンネル部材9と外装下地材11との位置関係を示す上面図、(D)はチャンネル部材9の平板91の一部の斜視図である。このチャンネル部材9は、図8(B)に示されるとおり、長尺の部材94を有する。部材94は、下面941、側面942、及び上面943によって構成された矩形状の横断面を有し、孔として形成された開口94bが上向きの状態で、その長さ方向が断熱複合パネル1の幅方向に延びるように、断熱複合パネル1の低面に取り付けられる。より具体的には、部材94は、上面943が、断熱層15の底面の少なくとも一部と外装下地材11の底面の少なくとも一部とにわたって、取り付けられる。部材94は、例えばねじ孔94cを挿通するねじなどで取り付けられる。
【0057】
部材94の開口94bは、断熱複合パネル1の条溝14と整合するように上面943に設けられている。開口94bの径は、条溝14の幅(厚さ方向の幅)と同じとすることも、それより小さくすることもできる。上面943に対向する下面941には、複数の開口94aが、部材94の長さ方向に沿って間隔をもって設けられる。上昇空気流70は、これらの開口94a及び94bを通って、複数の条溝14に供給される。
【0058】
開口94aと開口94bとは、図8(C)に示されるように上面からみて、チャンネル部材9の長さ方向に沿って互い違いに配置されることが好ましい。すなわち、下面941の開口94aが、上面943の隣接する2つの開口94bの間に対応する位置に配置されることが好ましい。このような位置関係で開口94a及び94bが設けられることによって、開口94aが雨水で閉止され上昇空気流70の流入時に水しぶきが発生しても、開口94aから入った空気が部材94の上面943にあたり、部材94と断熱層15との接合部に雨水が浸入する可能性は低い。
【0059】
この実施形態においては、図8(C)に示されるように、上面943のねじ孔94cは、下面941の開口94aに対応する位置に設けられることが好ましい。開口94aとねじ孔94cとをこのような位置関係で設けることによって、ねじ孔94cを挿通するねじの取り付けを開口94aから実施することができる。
【0060】
この実施形態のチャンネル部材9は、図8(D)に示される平板93を有することが好ましい。平板93の構成、配置及び作用効果は、図7を用いて説明した上述の平板91と同様である。平板93と外装材21との間には、シーリング431e及びバッカー432eが配置される。また、このチャンネル部材9と窓枠80との間には、シーリング431a及びバッカー432bが配置されるが、これらの構造、配置及び作用効果についても、図7を用いて説明したとおりである。
【0061】
図9は、窓部8の上部における断熱複合パネル1の下端付近を拡大して、構造Gの窓部8と区画通気層7との関係を示す図である。図9(A)は、図7及び図8とはさらに別のチャンネル部材9が用いられた、窓部8の上部の拡大図、図7(B)はチャンネル部材9の一部の斜視図、(C)はチャンネル部材9の上面図である。このチャンネル部材9は、図9(B)に示されるとおり、長尺の部材95を有する。部材95は、下面951、側面952、及び上面953a、953bによって構成された上向き略C字形状の横断面を有し、スリット形態の開口954が上向きの状態で、その長さ方向が断熱複合パネル1の幅方向に延びるように、断熱複合パネル1の低面に取り付けられる。より具体的には、部材95は、上面953aが外装下地材11の底面の少なくとも一部に接し、上面953bが断熱層15の底面の少なくとも一部に接するように、外装下地材11に取り付けられる。部材95は、例えば、ねじ孔95bを挿通するねじなどで取り付けることができる。
【0062】
部材95の開口954、上面953に対向する下面951に設けられる複数の開口95aについて、これらの構成、配置及び作用効果は、図7を用いて説明した上述の開口924及び開口92aと同様である。
【0063】
この実施形態においては、図9(C)に示されるように、上面のねじ孔95bは、下面の開口95aに対応する位置に設けられている。開口95aとねじ孔95bとをこのような位置関係で設けることによって、ねじ孔95cを挿通するねじの取り付けを開口95aから実施することができ、施工が容易である。
【0064】
この実施形態におけるチャンネル部材9は、図7及び図8で説明されたチャンネル部材9とは異なり、下面951の幅が広く、その一部が側面952から屋外側に延びて、外装材21より外方に突出するようになっている。下面951の外装材21からの突出部は、水切りとして機能する。下面951と外装材21との間には、シーリング431e及びバッカー432eが配置される。
【0065】
また、下面に平板が取り付けられた形態を有する、図7及び図8で説明された実施形態のチャンネル部材9に対して、図9の実施形態のチャンネル部材9は、下面951が突出部を含む1枚の板で形成されているため、図7の開口91a及び92aの組み合わせや図8の開口93a及び94bの組み合わせと比べて開口95aの内壁が薄くなり、したがって、開口95aが雨水で閉止されにくく、上昇空気流70の流入の際のしぶきが少ない。
【0066】
図6に戻ると、窓枠の下部の見切枠81aは、外部と連通する複数の空気孔811aと、複数の条溝14と連通する複数の空気孔811bとを、いずれも下部に有する。複数の条溝14の内部を上昇してきた上昇空気流70は、複数の空気孔811b及び複数の空気孔811aをこの順に通って外部に排出される。複数の空気孔811bの総面積は、複数の空気孔811aの総面積と同じであるか、又はそれより小さいことが好ましい。このように構成することによって、空気孔811bを通って区画通気層7から排出される空気量が、空気孔811aによって阻害されないようにすることができる。
【0067】
図10は、構造Gの外装下地材11の条溝4を示し、図10(A)は窓部8の上方の一部の拡大図であり、図10(B)は換気口周辺の拡大図であり、図10(C)は外装下地材11の横条溝14a部分の横断面図である。この実施形態においては、窓部8上方の外装下地材11の内部及び/又は換気口24周囲の外装下地材11の内部に、複数の条溝14を互いに連通させる1つ又は複数の横条溝14aを設ける。横条溝14aは、外装下地材11の複数の厚肉部13の一部を除去(除去された部分は、図10(C)において参照番号131で示される)することによって形成することができる。
【0068】
横条溝14aは、外装下地材11の窓部8の幅に対応する部分に、通気防水シート71に代えて透湿防水シート72を配置する場合に、設けることが好ましい。すなわち、透湿防水シート72は、水蒸気(粒子のサイズは、約0.0004μm)を通し雨水(粒子のサイズは、約2000μm)を通さないシートであるが、この透湿防水シート72が配置された条溝14からは、空気が排出されにくい。したがって、図10(A)及び図10(C)に示されるように、窓部8の上部に配置される外装下地材11に、複数の条溝14を横方向に連通する横条溝14aを設けるとともに、窓部8の上部に配置される外装下地材11の端部の条溝14とその幅方向に隣接する外装下地材11の端部の条溝14との間にも、互いに連通する横条溝14aを設ける。このように横条溝14aを設けることによって、複数の条溝14を上昇してきた上昇空気流70のうち、透湿防水シート72の存在により外部に排出されずに残った空気を、横向き空気流70aとして、窓部8の上部の条溝14から横条溝14aを通して隣接する外装下地材11の条溝14(すなわち、透湿防水シート72が配置されていない条溝14)に淀みなく排出することができる。横条溝14aは、条溝14の上部に残った空気を排出することができるように、外装下地材11の上端の近くに設けることが好ましく、例えば、上端から約100mm下方に設けることが好ましい。
【0069】
また、図10(B)に示されるように、換気口24の周囲にも横条溝14aを設けることが好ましい。横条溝14aは、換気口24の下方に位置する複数の条溝14をそれぞれ横方向に連通するように設けられることが好ましい。このように横条溝14aを設けることによって、換気口24の下方の複数の条溝14を上昇してきた空気流を、横向き空気流70aとして、横条溝14aを通して換気口24の側方の条溝14に移動させることができるため、換気口24周辺に水蒸気が滞留することによる結露を防止することができる。横条溝14aは、換気口24の上方にも設けられることがより好ましい。換気口24の上方にも横条溝14aを設けることによって、換気口24の側方の条溝14内の上昇空気流70を、横向き空気流70aとして、横条溝14aを通して換気口24の上方の複数の条溝14に導入することができ、横条溝14aが換気口24の下方のみの場合と比較して、より効果的に空気流の排出を促すことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 断熱複合パネル
11 外装下地材
12 薄肉部
13 厚肉部
14 条溝
14a 横条溝
15 断熱層
151 断熱層の突起
16 切り欠き部
2 外装
21 外装材
22 基礎複合パネル
221 外装材
222 断熱層
24 換気口
3 躯体
30 コンクリート躯体
31 コンクリート外壁
31a コンクリート材
32 床スラブ
33 基礎
35 脱落アンカー
351 アンカー
352 皿ボルト
353 ジョイントプレート
4 防水
41 横目地
411 シーリング
412 バッカー
413 通気バッカー
42a、42b 縦目地
421、422 シーリング
423 バッカー
43 窓回りシーリング
431a、431b、431c、431d、431e シーリング
432a、432b、432c、432d、432e バッカー
44 防水層
5 笠木
5a 基部
5b 張出部
5c 立下り部
5d 斜片
50 笠木本体
51 水平板
52 突起部
53 ジョイント部材
54 固定具
6 支持部材
61 水平片
62 立下り片
63 固定具
64 固定具挿入孔
7 区画通気層
70 上昇空気流
70a 横向き空気流
71 通気防水シート
72 透湿防水シート
8 窓部
80 窓枠
801 モルタル
802 発泡ウレタン
803 支持棒鋼
81a 見切枠
811a、811b 空気孔
82 木製枠
9 チャンネル部材
91、93 平板
91a、93a 開口
91b、93b ねじ孔
92 部材
92a 開口(孔)
92b、92c ねじ孔
921 下面
922 側面
923a、923b 上面
924 開口(スリット)
94 部材
94a、94b 開口(孔)
94c、94d ねじ孔
941 下面
942 側面
943 上面
95 部材
95a 開口(孔)
95b ねじ孔
951 下面
952 側面
953a、953b 上面
954 開口(スリット)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10