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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134838
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/43 20180101AFI20240927BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20240927BHJP
   F21S 41/26 20180101ALI20240927BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20240927BHJP
   F21S 41/37 20180101ALI20240927BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240927BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240927BHJP
【FI】
F21S41/43
F21S41/148
F21S41/26
F21S41/32
F21S41/37
F21W102:155
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045241
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】松永 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 佑太
(57)【要約】
【課題】ロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図った上で、車両前方走行路の遠方視認性向上を図る。
【解決手段】光源と投影レンズとの間にシェードが配置された構成とすることにより、ロービーム用配光パターンPLのカットオフラインとして、下段カットオフラインCL1と上段カットオフラインCL2とが傾斜部CL3を介して繋がれた段付カットオフラインCLを形成するようにする。その際、傾斜部CL3の傾斜角度が、傾斜部CL3の上部領域よりも下部領域において小さくなるように、シェードの形状を設定する。このように傾斜部CL3の上部領域の傾斜角度を大きくすることにより、対向車ドライバや前走車ドライバ等に対するグレア防止を図るとともに、傾斜部CL3の下部領域の傾斜角度を小さくすることにより、車両前方走行路の遠距離領域の視認性向上を図る。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
投影レンズと、上記投影レンズの後側焦点よりも灯具後方側に配置された光源と、上記光源と上記投影レンズとの間に配置された状態で、上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために上記光源からの出射光の一部を遮光するシェードとを備えており、
上記シェードは、上記カットオフラインとして下段カットオフラインと上段カットオフラインとが傾斜部を介して繋がれた段付カットオフラインを形成するように構成されており、
上記傾斜部の傾斜角度が上記傾斜部の上部領域よりも下部領域において小さくなるように、上記シェードの形状が設定されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記傾斜部の傾斜角度が上記傾斜部の上端縁から下端縁へ向けて徐々に小さくなるように、上記シェードの形状が設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記傾斜部の下端縁が上記下段カットオフラインと滑らかに繋がるように、上記シェードの形状が設定されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記光源を上方側から覆うように配置された状態で上記光源からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタを備えており、
上記シェードは、上記リフレクタで反射した上記光源からの出射光の一部を遮光するように構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記シェードは、上記リフレクタからの反射光を上記投影レンズへ向けて上向きに反射させる上向き反射面を備えており、上記上向き反射面の前端縁において上記段付カットオフラインを形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項4記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロービーム用配光パターンを形成するための車両用灯具として、投影レンズと、その後側焦点よりも灯具後方側に配置された光源と、これらの間に配置された状態で、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために光源からの出射光の一部を遮光するシェードとを備えたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具において、上記カットオフラインとして下段カットオフラインと上段カットオフラインとが傾斜部を介して繋がれた段付カットオフラインを形成するように構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-183056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような車両用灯具からの照射光によって形成される段付カットオフラインとして、その傾斜部の傾斜角度を大きい値に設定すれば、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図ることが可能となるが、車両前方走行路の遠距離領域の視認性が低下してしまう。
【0006】
一方、傾斜部の傾斜角度を小さい値に設定すれば、車両前方走行路の遠距離領域の視認性向上を図ることは可能となるが、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図りにくくなってしまう。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図った上で、車両前方走行路の遠方視認性向上を図ることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、シェードの形状に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
ロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
投影レンズと、上記投影レンズの後側焦点よりも灯具後方側に配置された光源と、上記光源と上記投影レンズとの間に配置された状態で、上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために上記光源からの出射光の一部を遮光するシェードとを備えており、
上記シェードは、上記カットオフラインとして下段カットオフラインと上段カットオフラインとが傾斜部を介して繋がれた段付カットオフラインを形成するように構成されており、
上記傾斜部の傾斜角度が上記傾斜部の上部領域よりも下部領域において小さくなるように、上記シェードの形状が設定されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「シェード」は、リフレクタからの反射光の一部を遮光することによってロービーム用配光パターンのカットオフラインとして段付カットオフラインを形成するように構成されていれば、その具体的な構成については特に限定されるものではない。
【0011】
上記「シェードの形状」は、段付カットオフラインの傾斜部の傾斜角度がその上部領域よりも下部領域において小さくなるように形成する設定となっていれば、その具体的な形状は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
本願発明に係る車両用灯具は、光源と投影レンズとの間に配置されたシェードによって光源からの出射光の一部を遮光することにより、ロービーム用配光パターンのカットオフラインとして下段カットオフラインと上段カットオフラインとが傾斜部を介して繋がれた段付カットオフラインを形成する構成となっているが、上記傾斜部の傾斜角度がその上部領域よりも下部領域において小さくなるようにシェードの形状が設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0013】
すなわち、段付カットオフラインの傾斜部は、その上部領域の傾斜角度が大きいので、対向車ドライバや前走車ドライバ等に対するグレア防止を図ることが可能となり、一方、その下部領域の傾斜角度が小さいので、車両前方走行路の遠距離領域の視認性向上を図ることが可能となる。
【0014】
このように本願発明によれば、ロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図った上で、車両前方走行路の遠方視認性向上を図ることができる。
【0015】
上記構成において、さらに、傾斜部の傾斜角度がその上端縁から下端縁へ向けて徐々に小さくなるようにシェードの形状が設定された構成とすれば、対向車ドライバ等に対するグレア防止と車両前方走行路の遠方視認性向上との両立を図ることが容易に可能となる。
【0016】
その際、傾斜部の下端縁が下段カットオフラインと滑らかに繋がるようにシェードの形状が設定された構成とすれば、車両前方走行路の遠方視認性向上を最大限に図ることが可能となる。
【0017】
上記構成において、さらに、光源を上方側から覆うように配置された状態で光源からの出射光を投影レンズへ向けて反射させるリフレクタを備えた構成とした上で、このリフレクタで反射した光源からの出射光の一部をシェードによって遮光する構成とすれば、ロービーム用配光パターンを所望するパターン形状で形成することが容易に可能となる。
【0018】
このような構成を採用した場合において、シェードの構成として、リフレクタからの反射光を投影レンズへ向けて上向きに反射させる上向き反射面を備えたものとした上で、その上向き反射面の前端縁において段付カットオフラインを形成する構成とすれば、ロービーム用配光パターンの明るさを増大させることができる。
【0019】
その際、上向き反射面として、シェードにおいて段付カットオフラインの傾斜部を形成する部分の灯具後方領域についても、その傾斜角度が上部領域よりも下部領域において小さくなるように形成されたものとすれば、この灯具後方領域からの反射光を左右方向に拡散させることができ、これによりロービーム用配光パターンに配光ムラが発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
図2】上記車両用灯具の灯具ユニットを示す平面図
図3図2のIII-III線断面図
図4】上記灯具ユニットの要部を示す斜視図
図5図1のV部詳細図
図6】(a)は上記車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンを示す図、(b)は(a)のb部詳細図
図7】上記実施形態の第1変形例を示す、図5と同様の図
図8】上記第1変形例の作用を示す、図6と同様の図
図9】上記実施形態の第2変形例を示す、図1と同様の図
図10】上記第2変形例の作用を示す、図6と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、図2は、車両用灯具10の灯具ユニット20を示す平面図であり、図3は、図2のIII-III線断面図である。
【0023】
図1~3において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。図1~3以外の図においても同様である。
【0024】
図1~3に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両の前端部に配置されるヘッドランプであって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、灯具ユニット20が収容された構成となっている。
【0025】
灯具ユニット20は、プロジェクタ型の灯具ユニットであって、ロービーム用配光パターンを形成するように構成されている。
【0026】
具体的には、灯具ユニット20は、灯具前後方向に延びる光軸Axを有する投影レンズ22と、この投影レンズ22の後側焦点(正確には鉛直断面内における後側焦点)Fよりも灯具後方側に配置された光源24と、この光源24を上方側から覆うように配置された状態で、光源24からの出射光を投影レンズ22へ向けて反射させるリフレクタ26と、このリフレクタ26と投影レンズ22との間に配置された状態で、リフレクタ26からの反射光の一部を遮光するシェード28とを備えている。
【0027】
投影レンズ22は、前面22aが凸曲面で後面22bが平面の平凸非球面レンズであって、その後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。この投影レンズ22は、灯具正面視において横長矩形状の外形形状を有している。
【0028】
光源24は、発光素子(具体的には白色発光ダイオード)であって、横長矩形状の発光面24aを有している。そして、この光源24は、その発光面24aを光軸Ax上において上向きにした状態で基板30に支持されている。
【0029】
リフレクタ26は、光源24からの出射光を収束光として投影レンズ22に入射させるように構成されている。
【0030】
具体的には、リフレクタ26の反射面26aは、光源24の発光中心を第1焦点とする略楕円面状の曲面で構成されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そしてこれにより、リフレクタ26は、光源24からの出射光を鉛直断面内においては後側焦点Fの灯具前方側に位置する点に収束させるとともに水平断面内においてはその収束位置をさらに灯具前方側へ変位させるようになっている。
【0031】
シェード28は、リフレクタ26からの反射光の一部を投影レンズ22へ向けて上向きに反射させる上向き反射面28aを備えている。
【0032】
上向き反射面28aは、その前端縁28a1が投影レンズ22の後側焦点Fから左右両側へ向けて灯具前方側へ湾曲して延びるように形成されており、その後端縁28a2も左右両側へ向けて灯具前方側へ湾曲して延びるように形成されている。なお、この上向き反射面28aは、その後端縁28a2がリフレクタ26における反射面26aの前端縁よりも灯具前方側に位置するように形成されており、これにより平面視においてシェード28とリフレクタ26とが重複しないように構成されている。
【0033】
図4は、灯具ユニット20の要部を示す斜視図である。また、図5は、図1のV部詳細図である。
【0034】
図4、5にも示すように、シェード28の上向き反射面28aは、光軸Axよりも右側(灯具正面視では左側)に位置する右側領域28aRが光軸Axよりも僅かに下方側において水平面に沿って延びるように形成されており、光軸Axよりも左側に位置する左側領域28aLが斜面領域28aSを介して光軸Axよりも上方側において水平面に沿って延びるように形成されている。
【0035】
すなわち、斜面領域28aSと右側領域28aRとの接続位置Aは、光軸Axの下方近傍に位置している。また、左側領域28aLを構成する水平面の光軸Axからの上方変位量は、右側領域28aRを構成する水平面の光軸Axからの下方変位量よりも大きい値に設定されている。
【0036】
斜面領域28aSは、上向きの凸曲線状の鉛直断面形状で灯具前後方向に延びるように形成されている。この斜面領域28aSを構成する凸曲面は、右側領域28aRとの接続位置Aから45°程度の傾斜角度で斜め上方に延びた後、徐々に上向き傾斜角が小さくなるように形成されており、かつ、左側領域28aLの一般領域と滑らかに接続されるように形成されている。
【0037】
灯具ユニット20は、基板30を介して金属製のヒートシンク40に支持されており、このヒートシンク40は樹脂製のホルダ部材50に支持されている。
【0038】
ホルダ部材50は、リフレクタ26の外周縁部を囲むようにして水平面に沿って延びる水平フランジ部50aを備えている。
【0039】
ヒートシンク40は、水平面に沿って左右方向に延びる本体部42と、この本体部42の下面から下方へ延びるように形成された複数の放熱フィン44とを備えており、複数の放熱フィン44は左右方向に間隔をおいて配置されている。そして、ヒートシンク40は、その本体部42をホルダ部材50の水平フランジ部50aに下方側から当接させた状態でホルダ部材50に取り付けられている。
【0040】
リフレクタ26およびシェード28は、ホルダ部材50と一体的に形成されており、投影レンズ22はホルダ部材50に支持されている。
【0041】
ホルダ部材50の前端部には、灯具前後方向と直交する鉛直面に沿って延びるフレーム部50bが形成されている。このフレーム部50bは、灯具正面視において横長U字形状に形成されており、L字形の断面形状を有している。そして、投影レンズ22は、その後面の周縁部をホルダ部材50のフレーム部50bに灯具前方側から当接させた状態でホルダ部材50に支持されている。
【0042】
なお、灯具ユニット20において、そのリフレクタ26、シェード28およびホルダ部材50には平面視において重複する部分が存在しないので、これらを単一の射出成形品として成形する際、これに用いられる金型の構造は簡易なものとなる。
【0043】
図6(a)は、車両用灯具10からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0044】
図6(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLは左配光のロービーム用配光パターンであって、そのカットオフラインは下段カットオフラインCL1と上段カットオフラインCL2とが傾斜部CL3を介して繋がれた段付カットオフラインCLとして形成されている。この段付カットオフラインCLは、シェード28の上向き反射面28aの前端縁28a1の反転投影像として形成されるようになっている。
【0045】
下段カットオフラインCL1は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線よりも右側(すなわち対向車線側)において水平方向に延びるように形成されている。この下段カットオフラインCL1はH-Vを水平方向に通るH-H線の0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0046】
上段カットオフラインCL2は、V-V線よりも左側(すなわち自車線側)において水平方向に延びるように形成されている。この上段カットオフラインCL2は、H-H線の上方側に位置しており、H-H線からの上方変位量は0.1~0.3°程度の値に設定されている。
【0047】
傾斜部CL3は、V-V線よりも右側において下段カットオフラインCL1の左端部に位置するように形成されている。
【0048】
図6(b)は、図6(a)のb部詳細図であって、ロービーム用配光パターンPLの要部を示す図である。
【0049】
図6(b)にも示すように、段付カットオフラインCLの傾斜部CL3は、その上部領域よりも下部領域において傾斜角度が小さくなっている。
【0050】
具体的には、傾斜部CL3の傾斜角度は、その上端縁から下端縁へ向けて徐々に小さくなっており、上段カットオフラインCL2との接続位置Apにおける傾斜角度が45°程度であり、その下端縁の傾斜角度は0°であって、これにより下段カットオフラインCL1と滑らかに繋がっている。
【0051】
このようにロービーム用配光パターンPLとして、その段付カットオフラインCLの傾斜部CL3の傾斜角度が、その上部領域よりも下部領域において小さくなるように設定されたものとすることにより、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図った上で車両前方走行路の遠方視認性向上を図るようになっている。
【0052】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0053】
本実施形態に係る車両用灯具10は、光源24と投影レンズ22との間に配置されたシェード28によって光源24からの出射光の一部を遮光することにより、ロービーム用配光パターンPLのカットオフラインとして下段カットオフラインCL1と上段カットオフラインCL2とが傾斜部CL3を介して繋がれた段付カットオフラインCLを形成する構成となっているが、傾斜部CL3の傾斜角度がその上部領域よりも下部領域において小さくなるようにシェード28の形状が設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0054】
すなわち、仮に、段付カットオフラインCLの傾斜部CL3の代わりに、図6(b)において破線で示す傾斜部CL3´のように傾斜角度を全体的に急峻にした場合には、車両前方走行路の遠方視認性が低下しやすくなってしまい、一方、図6(b)において2点鎖線で示す傾斜部CL3”のように傾斜角度を全体的に緩やかにした場合には、対向車ドライバや前走車ドライバ等に対するグレアが生じやすくなってしまう。
【0055】
これに対し、本実施形態において形成される段付カットオフラインCLの傾斜部CL3は、その上部領域の傾斜角度が大きいので、対向車ドライバや前走車ドライバ等に対するグレア防止を図ることが可能となり、一方、その下部領域の傾斜角度が小さいので、車両前方走行路の遠距離領域の視認性向上を図ることが可能となる。
【0056】
このように本実施形態によれば、ロービーム用配光パターンPLを形成するように構成された車両用灯具10において、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図った上で、車両前方走行路の遠方視認性向上を図ることができる。
【0057】
その際、本実施形態においては、傾斜部CL3の傾斜角度がその上端縁から下端縁へ向けて徐々に小さくなるようにシェード28の形状が設定されているので、対向車ドライバ等に対するグレア防止と車両前方走行路の遠方視認性向上との両立を図ることが容易に可能となる。
【0058】
しかも本実施形態においては、傾斜部CL3の下端縁が下段カットオフラインCL1と滑らかに繋がるようにシェード28の形状が設定されているので、車両前方走行路の遠方視認性向上を最大限に図ることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態に係る車両用灯具10は、光源24を上方側から覆うように配置された状態で光源24からの出射光を投影レンズへ向けて反射させるリフレクタ26を備えており、このリフレクタ26で反射した光源24からの出射光の一部をシェード28によって遮光するように構成されているので、ロービーム用配光パターンPLを所望するパターン形状で形成することが容易に可能となる。
【0060】
その際、シェード28は、リフレクタ26からの反射光を投影レンズへ向けて上向きに反射させる上向き反射面28aを備えており、この上向き反射面28aの前端縁28a1において段付カットオフラインCLを形成するように構成されているので、ロービーム用配光パターンPLの明るさを増大させることができる。
【0061】
さらに、図2、4に示すように、シェード28の上向き反射面28aにおける斜面領域28aSは、上向きの凸曲線状の鉛直断面形状で灯具前後方向に延びるように形成されているので、この斜面領域28aSからの反射光を左右方向に拡散させることができ、これによりロービーム用配光パターンPLに配光ムラが発生してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0062】
上記実施形態においては、ロービーム用配光パターンPLの段付カットオフラインCLとして、傾斜部CL3の傾斜角度が上端縁において45°程度で形成されるとともに下端縁において0°で形成されるものとして説明したが、その上端縁における傾斜角度が45°以外の値に設定されたものとすることも可能であり、また、その下端縁における傾斜角度が0°以外の値に設定されたものとすることも可能でる。
【0063】
上記実施形態においては、灯具ユニット20のシェード28として、その上向き反射面28aの斜面領域28aSと右側領域28aRとの接続位置Aが、光軸Axの下方近傍に位置しているものとして説明したが、この位置から上下方向あるいは左右方向に変位した位置に設定された構成とすることにより、ロービーム用配光パターンPLとして段付カットオフラインCLにおける傾斜部CL3と上段カットオフラインCL2との接続位置ApをH-Vのやや上方位置から上下方向あるいは左右方向に変位させるようにすることも可能である。
【0064】
上記実施形態においては、灯具ユニット20のシェード28として、その上向き反射面28aの前端縁28a1および後端縁28a2が左右両側へ向けて灯具前方側へ湾曲して延びるように形成されているものとして説明したが、これらが左右両側へ向けて直線状に延びるように形成された構成とすることも可能である。
【0065】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0066】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0067】
図7は、本変形例に係る車両用灯具における灯具ユニット120の要部を示す、図5と同様の図である。
【0068】
図7に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、シェード128の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0069】
すなわち、本変形例のシェード128は、その上向き反射面128aの斜面領域128aSが上向きの凸状多角形の鉛直断面形状で灯具前後方向に延びるように形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。このシェード128においても、その斜面領域128aSと右側領域128aRとの接続位置Aは、光軸Axの下方近傍に位置設定されている。
【0070】
本変形例のシェード128においては、その斜面領域128aSを構成する凸状多角形の表面が、その下半部128aS1においては右側領域128aRとの接続位置Aから45°程度の傾斜角度で斜め上方に延びており、その上半部128aS2においては15°程度の傾斜角度で斜め上方に延びるように形成された状態で左側領域128aLと折れ線状に繋がっている。
【0071】
図8(a)は、本変形例に係る車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンPL-1を示す、図6(a)と同様の図であり、また、図8(b)は、ロービーム用配光パターンPL-1の要部を示す、図6(b)と同様の図である。
【0072】
図8(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPL-1の基本的な形状は、上記実施形態の場合と同様であって、下段カットオフラインCL1-1と上段カットオフラインCL2-1とが傾斜部CL3-1を介して繋がれた段付カットオフラインCL-1を有している。
【0073】
図8(b)に示すように、ロービーム用配光パターンPL-1においても、段付カットオフラインCL-1の傾斜部CL3-1は、その上部領域CL3-1aよりも下部領域CL3-1bにおいて傾斜角度が小さくなっている。また、段付カットオフラインCL-1における傾斜部CL3-1と上段カットオフラインCL2-1との接続位置Apは、上記実施形態の場合と同じ位置に設定されている。
【0074】
ただし、段付カットオフラインCL-1における傾斜部CL3の傾斜角度は、その上部領域CL3-1aにおいては45°程度の値に設定されており、その下部領域CL3-1bにおいては、15°程度の値に設定されている。これは、シェード128の斜面領域128aSの傾斜角度が、その下半部128aS1においては45°程度の値に設定されており、その上半部128aS2においては15°程度の値に設定されていることによるものである。
【0075】
本変形例の構成を採用した場合においても、ロービーム用配光パターンPL-1は、その段付カットオフラインCL2-1の傾斜部CL3-1の傾斜角度が、その上部領域CL3-1aよりも下部領域CL3-1bにおいて小さくなるように設定されているので、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図った上で車両前方走行路の遠方視認性向上を図ることが可能となる。
【0076】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0077】
図9は、本変形例に係る車両用灯具210を示す、図1と同様の図である。
【0078】
図9に示すように、本変形例の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、灯具ユニット220のシェード228の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0079】
すなわち、本変形例のシェード228においても、その上向き反射面228aは、右側領域228aRが光軸Axよりも僅かに下方側において水平面に沿って延びるように形成されており、また、左側領域228aLが斜面領域228aSを介して光軸Axよりも上方側において水平面に沿って延びるように形成されているが、左側領域228aLの一部が下方に変位した状態で形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0080】
具体的には、左側領域228aLは、斜面領域228aSから左方向に一定量離れた位置から左端縁部までの外側領域228aL1が一般領域に対して下方に変位している。この外側領域228aL1は、光軸Axを含む水平面よりも僅かに上方において水平方向に延びるように形成されている。
【0081】
図10(a)は、本変形例に係る車両用灯具210からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンPL-2を示す、図6(a)と同様の図であり、また、図10(b)は、ロービーム用配光パターンPL-2の要部を示す、図6(b)と同様の図である。
【0082】
図10(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPL-2の基本的な形状は、上記実施形態の場合と同様であって、下段カットオフラインCL1-2と上段カットオフラインCL2-2とが傾斜部CL3-2を介して繋がれた段付カットオフラインCL-2を有している。
【0083】
図10(b)に示すように、ロービーム用配光パターンPL-2においても、段付カットオフラインCL-2の傾斜部CL3-2の形状は上記実施形態の場合と同様であり、その傾斜部CL3-2と上段カットオフラインCL2-2との接続位置Apは、上記実施形態の場合と同じ位置に設定されている。
【0084】
ただし、段付カットオフラインCL-2の下段カットオフラインCL1-2は、傾斜部CL3-2から右側に一定量離れた位置から一段高くなっている。
【0085】
具体的には、下段カットオフラインCL1-2は、V-V線から右側4°付近の位置から右端縁部までの右端部領域CL1-2RがH-H線の下方近傍(具体的にはH-H線から0.1~0.3°程度下方の位置)において水平方向に延びるように形成されている。これは、シェード228の上向き反射面228aにおける左側領域228aLの外側領域228aL1が一般領域よりも下方に変位していることによるものである。
【0086】
本変形例の構成を採用した場合においても、ロービーム用配光パターンPL-2は、その段付カットオフラインCL-2の傾斜部CL3-2の傾斜角度が、その上部領域よりも下部領域において小さくなるように設定されているので、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図った上で車両前方走行路の遠方視認性向上を図ることが可能となる。
【0087】
その上で、本変形例においては、シェード228の上向き反射面228aにおける左側領域228aLの外側領域228aL1が下方に変位しており、これによりロービーム用配光パターンPL-2は下段カットオフラインCL1-2の右端部領域CL1-2Rが一段高くなっているので、対向車ドライバ等に対するグレア防止を図った上で対向車線側の路肩部分等の視認性向上を図ることが可能となる。
【0088】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0089】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10、210 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20、120、220 灯具ユニット
22 投影レンズ
22a 前面
22b 後面
24 光源
24a 発光面
26 リフレクタ
26a 反射面
28、128、228 シェード
28a、128a、228a 上向き反射面
28a1 前端縁
28a2 後端縁
28aL、128aL、228aL 左側領域
28aR、128aR、228aR 右側領域
28aS、128aS、228aS 斜面領域
30 基板
40 ヒートシンク
42 本体部
44 放熱フィン
50 ホルダ部材
50a 水平フランジ部
50b フレーム部
128aS1 下半部
128aS2 上半部
228aL1 外側領域
A 斜面領域と右側領域との接続位置
Ap 傾斜部と上段カットオフラインとの接続位置
Ax 光軸
CL、CL-1、CL-2 段付カットオフライン
CL1、CL1-1、CL1-2 下段カットオフライン
CL1-2R 右端部領域
CL2、CL2-1、CL2-2 上段カットオフライン
CL3、CL3-1、CL3-2 傾斜部
CL3-1a 上部領域
CL3-1b 下部領域
E エルボ点
F 後側焦点
PL、PL-1、PL-2 ロービーム用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10