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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024134839
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】磁気記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H10B 61/00 20230101AFI20240927BHJP
   H10N 50/80 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045242
(22)【出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直紀
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和也
(72)【発明者】
【氏名】島野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】趙 亨峻
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA20
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD01
4M119DD17
4M119DD26
4M119DD37
4M119DD45
4M119EE22
4M119EE27
4M119GG01
4M119GG07
4M119JJ12
4M119JJ14
4M119JJ15
5F092AA20
5F092AB07
5F092AC12
5F092AD25
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB43
5F092BB55
5F092BC03
5F092CA08
5F092EA05
(57)【要約】
【課題】 優れた特性を有する磁気記憶装置を提供する。
【解決手段】 実施形態に係る磁気記憶装置は、下部構造100と、下部構造上に設けられ、導電材料で形成された下部電極61と、下部電極の上方に設けられた上部電極62と、下部電極と上部電極との間に設けられた磁気抵抗効果素子40と、下部電極の側面に設けられた第1の部分71及び前記磁気抵抗効果素子の側面に設けられた第2の部分72を含み、導電材料の酸化物で形成された酸化物絶縁層70とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造と、
前記下部構造上に設けられ、導電材料で形成された下部電極と、
前記下部電極の上方に設けられた上部電極と、
前記下部電極と前記上部電極との間に設けられた磁気抵抗効果素子と、
前記下部電極の側面に設けられた第1の部分及び前記磁気抵抗効果素子の側面に設けられた第2の部分を含み、前記導電材料の酸化物で形成された酸化物絶縁層と、
を備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項2】
前記酸化物絶縁層は、前記下部構造上に設けられ且つ前記下部電極に隣接して設けられた第3の部分をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記下部構造は、層間絶縁層を含み、
前記第3の部分は、前記層間絶縁層上に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記下部構造は、柱状電極を含み、
前記下部電極は、前記柱状電極に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記下部電極は、前記柱状電極の上部分に基づく凹部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記下部電極は、前記柱状電極の上面に向かって突出する部分を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記下部構造は、前記柱状電極の側面を囲む層間絶縁層をさらに含む
ことを特徴とする請求項4に記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記下部電極の上面は平坦化されている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
前記導電材料は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、マグネシウム(Mg)及びガドリニウム(Gd)から選択された元素を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
前記磁気抵抗効果素子は、可変の磁化方向を有する第1の磁性層と、固定された磁化方向を有する第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に設けられた非磁性層とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項11】
前記下部構造は、前記下部電極を介して前記磁気抵抗効果素子に接続されたスイッチング素子を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項12】
第1の方向に延伸し、前記スイッチング素子に接続された第1の配線と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に延伸し、前記上部電極を介して前記磁気抵抗効果素子に接続された第2の配線と、
をさらに備える
ことを特徴とする請求項11に記載の磁気記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に磁気抵抗効果素子を含むメモリセルが集積化された磁気記憶装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7160572号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
優れた特性を有する磁気記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気記憶装置は、下部構造と、前記下部構造上に設けられ、導電材料で形成された下部電極と、前記下部電極の上方に設けられた上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に設けられた磁気抵抗効果素子と、前記下部電極の側面に設けられた第1の部分及び前記磁気抵抗効果素子の側面に設けられた第2の部分を含み、前記導電材料の酸化物で形成された酸化物絶縁層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の基本的な概略構成を模式的に示した斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルが設けられた領域の構成を模式的に示した断面図である。
図3】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図4】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図5】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図6】第1の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図7】第2の実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセルが設けられた領域の構成を模式的に示した断面図である。
図8】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図9】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図10】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
図11】第2の実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法の一部を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気記憶装置の基本的な概略構成を模式的に示した斜視図である。
【0009】
図1に示すように、磁気記憶装置は、X方向に延伸する複数の第1の配線10と、Y方向に延伸する複数の第2の配線20と、複数の第1の配線10と複数の第2の配線20との間に設けられた複数のメモリセル30とを含んでいる。第1の配線10及び第2の配線20の一方はワード線に対応し、第1の配線10及び第2の配線20の他方はビット線に対応している。なお、X方向、Y方向及びZ方向は、互いに交差する方向である。具体的には、X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交している。
【0010】
メモリセル30は、磁気抵抗効果素子40とセレクタ(スイッチング素子)50とが直列接続された構造を有しており、セレクタ50上に磁気抵抗効果素子40が積層されている。
【0011】
図2は、メモリセル30が設けられた領域の構成を模式的に示した断面図である。
【0012】
図2に示した構造は、半導体基板(図示せず)の上方に設けられており、セレクタ50及び層間絶縁層81を含む下部構造100と、下部構造100上に設けられた下部電極61と、下部電極61の上方に設けられた上部電極62と、下部電極61と上部電極62との間に設けられた磁気抵抗効果素子40と、酸化物絶縁層70と、層間絶縁層82とを含んでいる。
【0013】
磁気抵抗効果素子40は、MTJ(magnetic tunnel junction)素子であり、記憶層(第1の磁性層)41と、参照層(第2の磁性層)42と、トンネルバリア層(非磁性層)43とを含んでいる。
【0014】
記憶層41は、可変の磁化方向を有する強磁性層であり、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)及びボロン(B)を含有するCoFeB層で形成されている。可変の磁化方向とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わることを意味する。
【0015】
参照層42は、固定された磁化方向を有する強磁性層であり、反強磁性結合を有する2つの層を含んでいる。具体的には、参照層42は、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)及びボロン(B)を含有するCoFeB層と、コバルト(Co)及びプラチナ(Pt)の超格子層とが積層された構造を有している。固定された磁化方向とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わらないことを意味する。
【0016】
トンネルバリア層43は、記憶層41と参照層42との間に設けられた絶縁層であり、例えば、マグネシウム(Mg)及び酸素(O)を含有するMgO層で形成されている。
【0017】
記憶層41の磁化方向が参照層42の磁化方向に対して平行である場合には、磁気抵抗効果素子40は相対的に抵抗が低い低抵抗状態を呈し、記憶層41の磁化方向が参照層42の磁化方向に対して反平行である場合には、磁気抵抗効果素子40は相対的に抵抗が高い高抵抗状態を呈する。したがって、磁気抵抗効果素子40は、抵抗状態に応じて2値データを記憶することが可能である。
【0018】
磁気抵抗効果素子40は、垂直磁化を有するSTT(spin transfer torque)型の磁気抵抗効果素子である。すなわち、記憶層41の磁化方向はその主面に対して垂直であり、参照層42の磁化方向はその主面に対して垂直である。
【0019】
なお、図2では、記憶層41が参照層42の下層側に位置するボトムフリー型の磁気抵抗効果素子が示されているが、記憶層41が参照層42の上層側に位置するトップフリー型の磁気抵抗効果素子を用いることも可能である。
【0020】
下部構造100は、セレクタ50と、層間絶縁層81とを含んでいる。
【0021】
セレクタ50は、2端子型のスイッチング素子であり、電極51と、柱状電極52と、電極51と柱状電極52との間に設けられたセレクタ材料層(スイッチング材料層)53とを含んでいる。電極51はセレクタ50の下部電極として機能し、柱状電極52はセレクタ50の上部電極として機能する。電極51は図1に示した第1の配線10に接続されており、柱状電極52は後述する下部電極61に接続されている。
【0022】
電極51と柱状電極52との間に閾値電圧以上の電圧が印加されると、セレクタ50はオフ状態からオン状態に移行し、セレクタ50にオン電流が流れる。その結果、セレクタ50に直列に接続された磁気抵抗効果素子40に電流が流れ、磁気抵抗効果素子40に対して書き込み或いは読み出しを行うことが可能となる。
【0023】
層間絶縁層81は、シリコン酸化物で形成されており、セレクタ50の側面(電極51の側面、柱状電極52の側面及びセレクタ材料層53の側面)を囲んでいる。また、柱状電極52の上部分は、層間絶縁層81の上面から突出している。
【0024】
下部電極61は、磁気抵抗効果素子40に対する下部電極として機能し、下部構造100上に設けられている。具体的には、下部電極61は、柱状電極52上及び層間絶縁層81上に設けられ、柱状電極52の上部分を覆っており、柱状電極52に接続されている。上述したように、柱状電極52の上部分が層間絶縁層81から突出しているため、下部電極61の下面は柱状電極52の上部分に基づく凹部を有している。一方、下部電極61の上面は平坦化されている。また、下部電極を61介して磁気抵抗効果素子40とセレクタ50とが接続されている。
【0025】
下部電極61は導電材料で形成され、下部電極61用の導電材料の酸化物は絶縁性を有する絶縁物である。具体的には、下部電極61用の導電材料は、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、マグネシウム(Mg)及びガドリニウム(Gd)から選択された元素を含有している。
【0026】
上部電極62は、磁気抵抗効果素子40に対する上部電極として機能し、図1に示した第2の配線20に接続されている。すなわち、上部電極62を介して磁気抵抗効果素子40と第2の配線20とが接続されている。
【0027】
酸化物絶縁層70は、下部電極61用の導電材料の酸化物で形成されている。具体的には、酸化物絶縁層70は、下部電極61のパターンが形成される際に生じたエッチング生成物(導電材料)の酸化物で形成されている。酸化物絶縁層70は、第1の部分71、第2の部分72及び第3の部分73を含んでいる。
【0028】
第1の部分71は、下部電極61の側面に設けられた部分に対応しており、下部電極61の側面に沿って設けられている。第2の部分72は、磁気抵抗効果素子40の側面に設けられた部分に対応しており、磁気抵抗効果素子40の側面に沿って設けられている。本実施形態では、第2の部分72は、磁気抵抗効果素子40の側面及び上部電極62の側面に設けられた部分に対応しており、磁気抵抗効果素子40の側面及び上部電極62の側面に沿って設けられている。第3の部分73は、下部構造100上に設けられた部分であって且つ下部電極61に隣接して設けられた部分に対応する。具体的には、第3の部分73は、層間絶縁層81上に設けられ且つ隣接する下部電極61間に設けられている。
【0029】
層間絶縁層82は、シリコン酸化物で形成されており、酸化物絶縁層70を覆うように設けられている。
【0030】
次に、本実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法を、図3図6及び図2を参照して説明する。
【0031】
まず、図3に示すように、半導体基板(図示せず)の上方に、セレクタ50及び層間絶縁層81を含む下部構造100を形成する。具体的には、セレクタ50を形成した後に、セレクタ50を覆う層間絶縁層81を形成し、さらに層間絶縁層81を平坦化する。この平坦化処理の際に、セレクタ50の柱状電極52の上面の高さと層間絶縁層81の上面の高さとを一致させることは難しい。本実施形態では、柱状電極52の上面の方が層間絶縁層81の上面よりも高く、柱状電極52の上部分が層間絶縁層81の上面から突出している。
【0032】
次に、図4に示すように、図3の工程で得られた下部構造100上に下部電極層61Lを形成する。具体的には、下部電極層61Lを堆積した後にCMP(chemical mechanical polishing)を行う。このCMP処理により、平坦化された上面を有し且つ柱状電極52の上部分を覆う下部電極層61Lが得られる。このように、下部電極層61Lは柱状電極52の上部分を覆い、下部電極層61Lの上面は平坦化されているため、CMP処理後の下部電極層61Lの厚さは厚くなっている。CMP処理で、柱状電極52の上面が露出しないようにする。仮に柱状電極52の上面が露出したとすると、CMP速度の違いによって平坦な表面が得られないおそれがある。したがって、CMP処理後の下部電極層61Lの上面の位置が柱状電極52の上面の位置よりも高くなるようにCMP処理を行う。
【0033】
次に、図5に示すように、図4の工程で得られた構造上に磁気抵抗効果素子層を形成する。さらに、磁気抵抗効果素子層上にハードマスクを形成し、ハードマスクをマスクとして用いて、磁気抵抗効果素子層及び下部電極層61Lをパターニングする。具体的には、IBE(ion beam etching)を用いてパターニングを行う。これにより、磁気抵抗効果素子40のパターン及び下部電極61のパターンが得られる。また、ハードマスクの厚さが減少し、磁気抵抗効果素子40上には、厚さの減少したハードマスクが上部電極62として残る。
【0034】
上述したパターニング工程によって、隣接する磁気抵抗効果素子40は完全に分離される。一方、下部電極層61Lの厚さが厚いため、パターニングによって下部電極61間の下部電極層61Lを完全に除去しようとすると、ハードマスクが消失するおそれがある。そのため、隣接する下部電極61間には下部電極層61Lの一部が残っている。なお、パターニングによって下部電極61間の下部電極層61Lを完全に除去することが可能であれば、隣接する下部電極61間に下部電極層61Lが残っていなくてもよい。
【0035】
また、パターニングを行った後、IBEによるエッチングで生成されたエッチング生成物が、磁気抵抗効果素子40の側面及び上部電極62の側面に付着しており、エッチング生成物層90が形成される。エッチング工程では、下部電極層61Lが最後にエッチングされる。そのため、エッチング生成物層90は、下部電極層61Lの導電材料で実質的に形成されている。
【0036】
次に、図6に示すように、図5の工程で得られた構造に対して酸化処理を行う。この酸化処理により、酸化物絶縁層70が形成される。具体的には、下部電極61の側面に形成された第1の部分71と、磁気抵抗効果素子40の側面及び上部電極62の側面に形成された第2の部分72と、下部構造100の層間絶縁層81上に形成された第3の部分73とを含む酸化物絶縁層70が形成される。
【0037】
第1の部分71は、下部電極61の側面部分が酸化されることで形成される。したがって、第1の部分71は下部電極61用の導電材料の酸化物で形成される。第2の部分72は、エッチング生成物層90が酸化されることで形成される。すでに述べたように、エッチング生成物層90は、下部電極層61L用の導電材料で実質的に形成されている。したがって、第2の部分72も下部電極61用の導電材料の酸化物で形成される。また、第3の部分73は、図5のパターニング工程の後に隣接する下部電極61間に残った下部電極層61Lが酸化されることで形成される。したがって、第3の部分73も下部電極61用の導電材料の酸化物で形成される。
【0038】
すでに述べたように、下部電極61用の導電材料の酸化物は絶縁物である。そのため、酸化物絶縁層70の第1の部分71、第2の部分72及び第3の部分73はいずれも、絶縁物で形成される。
【0039】
なお、図5のパターニング工程の後に、隣接する下部電極61間に下部電極層61Lが残っていない場合には、上述した酸化処理工程で酸化物絶縁層70の第3の部分73は形成されない。
【0040】
図6の工程の後、酸化物絶縁層70を覆う層間絶縁層82を形成することで、図2に示すような構造が得られる。
【0041】
以上のように、本実施形態では、図6の酸化処理工程によって、酸化物絶縁層70の第1の部分71、第2の部分72及び第3の部分73が形成される。この酸化物絶縁層70は、下部電極61用の導電材料の酸化物で形成されており、下部電極61用の導電材料の酸化物は絶縁物である。したがって、本実施形態では、以下に述べるように、絶縁性に優れた磁気記憶装置を得ることが可能である。
【0042】
すなわち、本実施形態では、図5のパターニング工程(エッチング工程)で磁気抵抗効果素子40の側面及び上部電極62の側面に下部電極61用の導電材料が付着してエッチング生成物層90が形成されても、図6の工程でエッチング生成物層90が酸化されて酸化物絶縁層70の第2の部分72が形成される。したがって、磁気抵抗効果素子40の電気的なショート不良を防止することが可能である。
【0043】
また、図5のパターニング工程の後に隣接する下部電極61間に残った下部電極層61Lも図6の工程で酸化され、酸化物絶縁層70の第3の部分73が形成される。したがって、隣接する下部電極61間での電気的なショート不良を防止することが可能である。また、図5のパターニング工程の後に隣接する下部電極61間に下部電極層61Lの一部が残っていてもよいため、ハードマスクの厚さを薄くすることが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、図4の工程で、柱状電極52の上部分を覆う厚い下部電極層61Lが形成され、下部電極層61Lの上面が平坦化されており、CMP処理後の下部電極層61Lの上面の位置が柱状電極52の上面の位置よりも高くなっている。そのため、図3の工程で形成された下部構造100の上面が平坦でなくても、平坦化された下部電極層61L上に磁気抵抗効果素子40を形成することができる。仮に、非平坦面上に磁気抵抗効果素子40を形成したとすると、非平坦面の形状が磁気抵抗効果素子40を構成する層(記憶層41、参照層42、トンネルバリア層43)に反映され、磁気抵抗効果素子40を構成する層の平坦性が損なわれることになる。その結果、磁気抵抗効果素子40の特性が悪影響を受けるおそれがある。
【0045】
本実施形態では、平坦化された厚い下部電極層61Lが形成されるため、磁気抵抗効果素子40を構成する各層を平坦に形成することができ、上述したような問題を防止することが可能である。
【0046】
以上のことから、本実施形態では、優れた特性を有する磁気記憶装置を得ることが可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。なお、基本的な事項は上述した第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態で説明した事項の説明は省略する。
【0048】
図7は、第2の実施形態に係る磁気記憶装置のメモリセル30が設けられた領域の構成を模式的に示した断面図である。
【0049】
図2及び図7からわかるように、本実施形態の基本的な構造は、第1の実施形態の構造と同様である。ただし、第1の実施形態では、柱状電極52の上部分が層間絶縁層81から突出しており、下部電極61の下面が柱状電極52の上部分に基づく凹部を有していたが、本実施形態では、柱状電極52の上面が層間絶縁層81の上面に対して凹んでおり、下部電極61の下面が柱状電極52の上面に向かって突出している。すなわち、下部電極61が、柱状電極52の上面に向かって突出する部分を有している。
【0050】
次に、本実施形態に係る磁気記憶装置の製造方法を、図8図11及び図7を参照して説明する。
【0051】
まず、図8に示すように、第1の実施形態の図3の工程と同様にして、半導体基板(図示せず)の上方に下部構造100を形成する。ただし、本実施形態では、層間絶縁層81を平坦化する際に、柱状電極52の上面の方が層間絶縁層81の上面よりも低くなり、柱状電極52の上面が層間絶縁層81の上面に対して凹んでいる。
【0052】
次に、図9に示すように、第1の実施形態の図4の工程と同様にして、下部構造100上に下部電極層61Lを形成する。本実施形態でも、下部電極層61Lの上面は平坦化されており、下部電極層61Lの厚さは厚くなっている。具体的には、CMPによる平坦化処理前の下部電極層61Lの上面の位置が層間絶縁層81の上面の位置よりも高くなっており、平坦化処理後も下部電極層61Lの上面の位置が層間絶縁層81の上面の位置よりも高くなっている。したがって、平坦化処理前も及び平坦化処理後も、柱状電極52の上面及び層間絶縁層81の上面は下部電極層61Lで覆われている。
【0053】
次に、図10に示すように、第1の実施形態の図5の工程と同様にして、磁気抵抗効果素子40、下部電極61及び上部電極62を形成する。本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、磁気抵抗効果素子40の側面及び上部電極62の側面にエッチング生成物層90が形成され、隣接する下部電極61間には下部電極層61Lの一部が残っている。
【0054】
次に、図11に示すように、第1の実施形態の図6の工程と同様にして、酸化処理を行う。この酸化処理により、第1の実施形態と同様に、第1の部分71、第2の部分72及び第3の部分73を含む酸化物絶縁層70が形成される。すなわち、下部電極61用の導電材料の酸化物で形成された酸化物絶縁層70が形成される。
【0055】
図11の工程の後、酸化物絶縁層70を覆う層間絶縁層82を形成することで、図7に示すような構造が得られる。
【0056】
以上のように、本実施形態でも、基本的な構造及び基本的な製造方法は第1の実施形態と同様であり、第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10…第1の配線 20…第2の配線 30…メモリセル
40…磁気抵抗効果素子 41…記憶層(第1の磁性層)
42…参照層(第2の磁性層) 43…トンネルバリア層(非磁性層)
50…セレクタ(スイッチング素子) 51…電極
52…柱状電極 53…セレクタ材料層(スイッチング材料層)
61…下部電極 62…上部電極
70…酸化物絶縁層 71…第1の部分
72…第2の部分 73…第3の部分
81、82…層間絶縁層 90…エッチング生成物層
100…下部構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11